説明

放射線検出装置

【課題】高温環境下で高感度なγ線の計測を可能とし、さらに部品の劣化を抑制することのできる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線検出装置は、γ線6が入射される円筒形の発光素子1と、発光素子1からの光7を集光する円筒形の集光素子2と、断面が楕円形で内壁が鏡面を形成し、楕円形状の鏡面の一方の焦点位置又はこの近傍に発光素子1が設置され、他方の焦点位置又はこの近傍に集光素子2が設置される筒状容器14と、集光素子2に接続され外部に光7を導出する光伝達ケーブル3と、発光素子1よりも低温環境に設置されかつ光伝達ケーブル3の他端に接続されて光7を検出する光検出器4と、検出された光7を信号化する信号処理回路5と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境の下で放射線の検出を行なう放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温環境の下で放射線の検出を行なう放射線検出装置としてシンチレーション検出器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシンチレーション検出器は、入射するγ線エネルギにほぼ比例した強さの光を発するシンチレータと、その光を検出し電気信号に変換する光電子増倍管と、電気信号を処理する信号処理回路とから構成されている。シンチレーション検出器は通常、受光光量を大きくするために、シンチレータに光電子増倍管を直接接合する構造になっている。
【特許文献1】特開昭56−785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のシンチレーション検出器においては、受光光量を大きくするために、シンチレータに光電子増倍管を直接接合する構造を採用している。
【0005】
このために、シンチレーション検出器を高温環境下に設置すると、光電子増倍管が高温の影響を受け、出力信号の変動や部品の劣化が発生していた。すなわち、このシンチレーション検出器を高温環境下に設置すると、光電子増倍管が高温の影響を受け、高温環境下で高感度なγ線の計測が困難であるという課題があった。
【0006】
また、このシンチレーション検出器を高温環境下に設置すると、放射線検出装置の部品の劣化が促進されるという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、高温環境下で高感度なγ線の計測を可能とし、さらに部品の劣化を抑制することのできる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の放射線検出装置においては、放射線が入射される円筒形の発光素子と、この発光素子からの光を集光する円筒形の集光素子と、断面が楕円形で内壁が鏡面を形成し、この楕円形状の鏡面の一方の焦点位置又はこの近傍に前記発光素子が設置され、この他方の焦点位置又はこの近傍に前記集光素子が設置される筒状容器と、前記集光素子に接続され外部に前記光を導出する光伝達ケーブルと、前記発光素子よりも低温環境に設置されかつ前記光伝達ケーブルの他端に接続されて前記光を検出する光検出器と、前記検出された光を信号化する信号処理回路と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の放射線検出装置においては、放射線が入射される発光素子と、この発光素子の少なくとも一端にかつこの発光素子の発光面に向けて設置された凹面鏡と、この凹面鏡の焦点位置又はこの近傍に設けられ前記発光素子からの光を集光する集光素子と、前記発光素子よりも低温環境に設置されかつ前記光伝達ケーブルの他端に接続されて前記光を検出する光検出器と、前記検出された光を信号化する信号処理回路と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放射線検出装置によれば、発光素子を楕円形状の筒状容器の一方の焦点位置又はこの近傍に設置し、集光素子を他方の焦点位置又はこの近傍に設置することにより、高温環境下で高感度なγ線の計測を可能としている。
【0011】
また、集光素子に光伝達ケーブルを介して光検出器を接続し光を検出することにより、この光検出器は高温環境の影響が大幅に制限され、部品の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る放射線検出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態の放射線検出装置の構成を示すブロック図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態の放射線検出装置の変形例の構成を示す斜視図である。
【0014】
まず、第1の実施の形態の放射線検出装置の構成について、図1、図2を用いて説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されかつ高エネルギの放射線であるγ線6又はX線が入射される円筒形の発光素子1と、この発光素子1からの光を集光する円筒形の集光素子2と、この発光素子1及び集光素子2を内蔵する筒状容器14を有する。一例として、この発光素子1としてシンチレータが用いられている。また、筒状容器14は、一例として、断面が楕円形で内壁が鏡面を形成し、この楕円形状の鏡面の一方の焦点位置又はこの近傍に発光素子1が設置され、他方の焦点位置又はこの近傍に集光素子2が設置される。
【0016】
この集光素子2の接続された光伝達ケーブル3の他端には、発光素子1よりも低温環境に設置され光7を検出する光検出器4が設けられている。
【0017】
このように構成された本実施の形態において、放射線検出装置が高温環境の測定場所に設置された場合に、発光素子1に高エネルギの放射線であるγ線6又はX線が入射されたときに、発光素子1は励起エネルギにより光7を発する。断面形状が楕円の筒状容器14の一方の焦点位置又はこの近傍に設置された発光素子1からの光7は、筒状容器14の内壁を形成する鏡面で反射し、筒状容器14の他方の焦点位置又はこの近傍に設置された集光素子2に入射される。
【0018】
この集光素子2に接続された光伝達ケーブル3の他端には、発光素子1よりも低温環境に設置され光伝達ケーブル3からの光7を検出する光検出器4が接続されている。
【0019】
本実施の形態によれば、発光素子1を筒状容器14の一方の焦点位置又はこの近傍に発光素子1が設置され、この他方の焦点位置又はこの近傍に集光素子2を設置することにより、集光効率を高め検出可能な放射線量の範囲を広げ、高温環境下で高感度なγ線の計測を可能としている。
【0020】
また、集光素子2に光伝達ケーブル3を介して光検出器4を接続し、入射された光7を検出することにより、この光検出器4は高温環境の影響が大幅に制限され、部品の劣化を抑制することができる。
【0021】
次に、第1の実施の形態の放射線検出装置の変形例について、図2を用いて説明する。図2は、図1の放射線検出装置に中継器8を追加して設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0022】
本図に示すように、集光素子として、波長変換ファイバであるガラス波長シフトファイバ15が使用されている。照射された光7をこのガラス波長シフトファイバ15の内部に閉じ込めている。中継器8を介して、ガラス波長シフトファイバ15を光伝達ケーブル3に接続している。この光伝達ケーブル3によって光7を外部に導出している。この光伝達ケーブル3の他端には光検出器4(図1も参照)が接続されている。
【0023】
本実施の形態によれば、照射された光7をこのガラス波長シフトファイバ15の内部に閉じ込め、このガラス波長シフトファイバ15に接続した光伝達ケーブル3によって光7を外部に導出することにより、この光伝達ケーブル3の接続された光検出器4は高温環境の影響が大幅に制限され、部品の劣化を抑制することができる。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の構成を一部透視して示す正面図である。
【0025】
まず、第2の実施の形態の放射線検出装置の構成について、図3を用いて説明する。
【0026】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の少なくとも一端にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9と、この凹面鏡9の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子16からの光7を集光する集光素子2を有する。この集光素子2には、光伝達ケーブル3が接続されている。この光伝達ケーブル3の他端には、発光素子16よりも低温環境に設置され光7を検出する光検出器4(図1も参照)が接続されている。
【0027】
本実施の形態によれば、発光素子1の発光面に向けて凹面鏡9を設置し、この凹面鏡9の焦点を結ぶ位置又は近傍に集光素子2を設置して反射光7の集光効率を高めることにより、検出可能な放射線量の範囲を広げることができる。また、光伝達ケーブル3を介して反射光7を検出することにより、高温環境下で高感度なγ線6の計測を可能としている。
【0028】
図4は、本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の変形例の構成を一部透視して示す正面図である。図4は、図3の凹面鏡9に貫通孔9aを追加して設けたものであり、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0029】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の少なくとも一端にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9と、この凹面鏡9の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子16からの光7を集光する集光素子2を有する。この凹面鏡9の中心部に貫通孔9aが開口されている。この貫通孔9aを経由して、集光素子2に接続した光伝達ケーブル3を外部に取り出している。この光伝達ケーブル3の他端には、発光素子16よりも低温環境に設置され光7を検出する光検出器4(図1も参照)が接続されている。
【0030】
本実施の形態によれば、凹面鏡9の中心部に開口した貫通孔9aを経由して、光伝達ケーブル3を外部に取り出している。このために、発光素子16からの光7をケーブルで遮ることがないので、集光効率を高めることができる。また、光伝達ケーブル3を介して反射光7を検出することにより、高温環境下で高感度なγ線6の計測を可能としている。
【0031】
図5は、本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の他の変形例の構成を示す断面図である。図5は、図3の発光素子16に貫通孔16aを追加して設けたものであり、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0032】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の少なくとも一端にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9と、この凹面鏡9の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子16からの光7を集光する集光素子2を有する。この発光素子16の中心軸に貫通孔16aが開口されている。この貫通孔16aを経由して、集光素子2に接続した光伝達ケーブル3を外部に取り出している。この光伝達ケーブル3の他端には、発光素子16よりも低温環境に設置され光7を検出する光検出器4が接続されている。
【0033】
本実施の形態によれば、発光素子16の中心軸に開口した貫通孔16aを経由して、光伝達ケーブル3を外部に取り出している。このために、凹面鏡9に開口することがないので、集光効率を高めることができる。また、光伝達ケーブル3を介して反射光7を検出することにより、高温環境下で高感度なγ線6の計測を可能としている。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置のさらに他の変形例の構成を示す正面図である。図6は、図3の発光素子16に接合部10を追加して設けたものであり、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0035】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の一端にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9と、この凹面鏡9の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子1からの光7を集光する集光素子2を有する。この発光素子1と凹面鏡9との間には、伸縮性のある物質で作製された接合部10が設けられている。
【0036】
本実施の形態によれば、発光素子16と凹面鏡9との間に伸縮性のある接合部10を設けることにより、発光素子16及び凹面鏡9の熱膨張率に差による接合面の破損を防止することにより、高温環境下で高感度なγ線の計測を可能としている。
【0037】
図7は、本発明の第3の実施の形態の放射線検出装置の構成を一部透視して示す正面図である。
【0038】
図7は、図3の凹面鏡9の内部にミラー11を追加して設けたものであり、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0039】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の少なくとも一端にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9と、この凹面鏡9の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子16からの光7を集光するミラー11を有する。このミラー11からの光7は、凹面鏡9の中心に設けられた貫通孔9bを経由し、凹面鏡9の外部に設けられたレンズ12で集光され、さらに、光伝達ケーブル3に入射される。
【0040】
本実施の形態によれば、凹面鏡9で集光した光を、焦点付近に設置したミラー11で反射し、凹面鏡9の中心に設けられた貫通孔9bを経由して光伝達ケーブル3に入射する。かくして、集光素子2を透過する際の光の減衰を排除して集光効率をさらに高めることができる。また、光伝達ケーブル3を介して反射光7を検出することにより、高温環境下で高感度なγ線6の計測を可能としている。
【0041】
図8は、本発明の第4の実施の形態の放射線検出装置の構成を示す正面図である。
【0042】
図8は、図3の発光素子1の両面に凹面鏡9、13を設けたものであり、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0043】
本図に示すように、放射線検出装置は、高温環境に設置されかつγ線6が入射される発光素子16と、この発光素子16の両面にかつこの発光素子16の発光面に向けて設置された凹面鏡9、13と、この凹面鏡9、13の焦点位置又はこの近傍に設けられ発光素子16からの光7を集光する集光素子2、2aを有する。この集光素子2、2aには、光伝達ケーブル3、3aがそれぞれ接続されている。この光伝達ケーブル3、3aの他端には、発光素子16よりも低温環境に設置され光7を検出する光検出器4(図1も参照)がそれぞれ接続されている。
【0044】
本実施の形態によれば、発光素子1の両面に凹面鏡9、13、集光素子2、2a及び光伝達ケーブル3、3aを設けることにより、集光効率をさらに高めることができる。
【0045】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放射線検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の放射線検出装置の変形例の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の構成を一部透視して示す正面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の変形例の構成を一部透視して示す正面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置の他の変形例の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の放射線検出装置のさらに他の変形例の構成を一部透視して示す正面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態の放射線検出装置の構成を一部透視して示す正面図。
【図8】本発明の第4の実施の形態の放射線検出装置の構成を一部透視して示す正面図。
【符号の説明】
【0047】
1…発光素子、2、2a…集光素子、3、3a…光伝達ケーブル、4…光検出器、5…信号処理回路、6…γ線、7…光、8…中継器、9、13…凹面鏡、9a、9b…貫通孔、10…接合部、11…ミラー、12…レンズ、14…筒状容器、15…ガラス波長シフトファイバ、16…発光素子、16a…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が入射される円筒形の発光素子と、
この発光素子からの光を集光する円筒形の集光素子と、
断面が楕円形で内壁が鏡面を形成し、この楕円形状の鏡面の一方の焦点位置又はこの近傍に前記発光素子が設置され、この他方の焦点位置又はこの近傍に前記集光素子が設置される筒状容器と、
前記集光素子に接続され外部に前記光を導出する光伝達ケーブルと、
前記発光素子よりも低温環境に設置されかつ前記光伝達ケーブルの他端に接続されて前記光を検出する光検出器と、
前記検出された光を信号化する信号処理回路と、
を有することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記集光素子は、前記光伝達ケーブルに光学的に接続する波長変換ファイバを具備してなること、を特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
放射線が入射される発光素子と、
この発光素子の少なくとも一端にかつこの発光素子の発光面に向けて設置された凹面鏡と、
この凹面鏡の焦点位置又はこの近傍に設けられ前記発光素子からの光を集光する集光素子と、
前記発光素子よりも低温環境に設置されかつ前記光伝達ケーブルの他端に接続されて前記光を検出する光検出器と、
前記検出された光を信号化する信号処理回路と、
を有することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項4】
前記光伝達ケーブルは、前記凹面鏡の略中心に開口された貫通孔を経由してこの凹面鏡の外部に取り出されてなること、を特徴とする請求項3記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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