説明

放射線治療チャンバおよび方法

患者を受け入れるために適合された略気密のエンクロージャ、前記エンクロージャの内部に配置される放射線源、前記エンクロージャの内部に配置されかつ前記放射線源に対して作用配置にある患者支持システム、前記エンクロージャに流動的に連結されるスクリュー圧縮機および流出口流量調整装置、を有する放射線治療チャンバが提供される。前記放射線治療チャンバを使用し、処置を必要とする被検者を処置するための方法もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、完全に引用して本願明細書に組み込まれている2007年2月12日に出願された整理番号第60/889484号の仮出願の利益を請求する。
【0002】
技術分野
本発明は、放射線治療のための装置および方法に関する。より詳細には、本発明は、放射線治療と組み合わせて使用される高圧チャンバに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
放射線治療または放射線療法は、悪性細胞を制御する癌治療法の一部であるイオン化放射線の医療用途に、関連する。放射線治療は、悪性腫瘍(癌)の処置のために広く使用されており、かつ、他の癌治療法と組み合わせることと同様に、主たる療法として使用することが可能である。最も多く見られる癌のタイプは、何らかの方法で、放射線治療を使用して処置することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線治療は、腫瘍のサイズを減少させ、場合によってはそれらを根絶することが可能である。放射線を使用することにより、腫瘍を縮小させ、別な方法では不可能である外科的な除去を、可能とすることができる。なぜなら、腫瘍およびそれらの転移は、痛みを引き起こす可能性があるが、それらの癌性領域への照射は、痛みを著しく減少させることができる。放射線治療は、他の処置が不可能であったり、または成功していない場合に、一時的緩和(不治の癌からの症状を緩和)および疼痛寛解のために、しばしば使用される。
【0005】
放射線治療の主要な制限の1つは、充実性腫瘍の細胞が、酸素不足になることである。これは、充実性腫瘍が、通常それらの血液供給よりも早く成長し、ヒポキシア(hypoxia)として知られている低酸素状態を引き起こすためである。酸素は、DNAに対する放射線障害を永久的とするため、腫瘍の低酸素状態が進行するほど、放射線の効果に対する耐性が増加する。多くのリサーチが、この問題を解決するために充てられており、高圧酸素タンク、増加した酸素を運ぶ代用血液、ミソニダゾール(misonidazole)やメトロニダゾール(metronidazole)等の低酸素細胞放射線増感剤、ティラパザミン(tirapazamine)等の低酸素症細胞毒素の使用を含んでいる。
【0006】
しかし、放射線治療の有効性を増加させる方法および装置の必要性が、いまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
一の様相においては、放射線治療チャンバが、提供される。前記チャンバは、患者を受け入れるために適合される略気密のエンクロージャ、前記エンクロージャの内部に配置される放射線源、前記エンクロージャの内部に配置されかつ前記放射線源に対して作用配置(working arrangement)にある患者支持システム、前記エンクロージャの流入口に流動的(fluidly)に連結される圧縮機、および、前記エンクロージャの流出口に流動的に連結される流出口流量調整装置、を有する。
【0008】
前記放射線源は、約1〜25のMVの範囲のエネルギを有するX線を発生させる能力を有する。前記放射線源は、エンクロージャに関して長手方向および円周方向に前記放射線源が移動し得るように適合される支持ブレースによって、前記エンクロージャの屋根部、側壁部あるいは床部に取り付けることが可能である。前記患者支持システムは、患者保持セクションと、前記放射線源に関して患者の位置を調整するために適合される駆動機構と、を有する。
【0009】
別の様相においては、処置の必要がある被検者を処置するための方法が、提供される。当該方法は、上記の放射線治療チャンバの内部に、前記被検者を配置すること、処置ターゲット領域が前記放射線源と位置合せされるように、前記被検者を位置決めすること、前記チャンバを、ターゲット圧力になるように加圧すること、および、前記被検者を、放射線の有効量(effective amount)で処置すること、を有する。治療の間、前記チャンバは、前記ターゲット圧力を維持され、かつ、連続的に換気されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る放射線治療チャンバの一実施形態の側面図である。
【図2】二重ロック入口およびエアロックを有する放射線治療チャンバの一実施形態を示している断面図である。
【図3】チャンバ内部における放射線源および患者支持システムの配置の一例を示している一部破断斜視図である。
【図4】被検者を位置決めし、処置ターゲット領域を放射線源と位置合わせすることを示している斜視図である。
【図5】本発明に係る実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面の簡単な説明
図1は、放射線治療チャンバの一実施形態の側面図である。
【0012】
図2は、二重ロック入口およびエアロックを有する放射線治療チャンバの一実施形態を示している。
【0013】
図3は、チャンバ内部における放射線源および患者支持システムの配置の一例を示している。
【0014】
図4は、被検者を位置決めし、処置ターゲット領域を放射線源と位置合わせすることを示している。
【0015】
図5は、実施形態のフローチャートを提示している。
【0016】
詳細な説明
放射線治療チャンバが、提供される。前記チャンバは、患者を受け入れるために適合されかつ流入口および流出口を有する略気密のエンクロージャ、エンクロージャの内部に配置される放射線源、エンクロージャの内部に配置されかつ放射線源に対して作用配置にある患者支持システム、エンクロージャの流入口に流動的に連結される圧縮機、および、エンクロージャの流出口に流動的に連結される流出口流量調整装置(outlet flow modulator)を有する。
【0017】
図1を参照し、放射線治療チャンバ10のエンクロージャ12は、好ましくは、垂直に配向(vertically−oriented)された略円柱状構造である。エンクロージャ12は、米国機械学会(American Society of Mechanical Engineers)によって設定された圧力容器のためのガイドラインに従って、組み立てなければならない。これらのガイドラインに関する順守は、エンクロージャ12が高圧あるいは低圧の環境に耐えることができることを、確実にする。好ましくは、エンクロージャは、鋼あるいはアルミニウムから構成される。
【0018】
エンクロージャ12は、患者を取り囲むように適合される。さらに、エンクロージャ12は、後述される放射線源および患者支持システムに対応するために、充分な容積を有しなければならない。実施形態によっては、エンクロージャはまた、処置を受けている患者を観察あるいは補助することができる医療職員のための部屋を有することが可能である。
【0019】
図1を参照し、エンクロージャ12は、エンクロージャ12の壁部に沿って配置される少なくとも一つの窓13を、さらに有することが可能である。実施形態によっては、窓はまた、エンクロージャの屋根部に配置することが可能である。重要であることは、エンクロージャが低圧の状態下にある場合に、フレッシュ空気がエンクロージャに流入すること、あるいは、高圧の状態下で操作される場合に、エンクロージャから漏出することを、窓が、許容しないことである。圧力容器のための窓は、例えば、引用して本願明細書に組み込まれている米国特許第6639745号あるいは第4986636号によって示されるように、周知である。
【0020】
エンクロージャ12へのアクセスは、シール自在開口部14を介して、得ることが可能である。好ましくは、シール自在開口部は、エンクロージャ12への容易なアクセスを許容するように。設計される。したがって、シール自在開口部を十分大きくすることにより、過剰に屈むことなく、ユーザが立って入ることを可能とする。また、必要に応じ、医療職員が担架上の患者を放射線チャンバ10に運び入れることを可能とするように、好ましくは、十分に幅が広い。
【0021】
シール自在開口部14は、長年にわたって開発されてきた様々なタイプの閉鎖メカニズム16によって、閉鎖することが可能である。適当な閉鎖メカニズムは、例えば、完全に引用して本願明細書に組み込まれている米国特許第5433334号、第5327904号および第6352078号に、記載されている。
【0022】
実施形態によっては、放射線治療チャンバは、二重ロック入口を含むことが可能である。二重ロック入口は、チャンバが大気圧以外の圧力下にある状態で、チャンバの内外における容易なアクセスを可能にする。図2を参照し、放射線治療チャンバ20は、メインエンクロージャ22と出入口エンクロージャ24とを有する。ユーザが、メインエンクロージャ22に一旦入ると、内側閉鎖メカニズム26を使用して閉鎖される。メインエンクロージャは、その後、可逆圧縮機21を使用して所望の圧力に到達させることが可能である。例えば、患者が依然として処置を受けている状態で、医療職員が離れることを必要とする場合、出入口エンクロージャ24は、外側閉鎖メカニズム28を閉じることによって密封され、そして、出入口エンクロージャ24は、メインエンクロージャ22と同じ圧力にさせられる。そして、内側閉鎖メカニズム26が開放されることにより、ユーザは、メインエンクロージャ22から出入口エンクロージャ24へ移動することが可能である。その後、内側閉鎖メカニズム26は、閉鎖され、出入口エンクロージャ24の圧力は、大気圧にさせられる。次に、外側閉鎖メカニズム28は、開放され、ユーザが、エントリエンクロージャ24を後にすることを許容する。処置の間に、ユーザがメインエンクロージャ22に入ることを可能にするためには、本プロセスを逆にする必要がある。
【0023】
実施形態によっては、二重ロック入口に加えてまたはその代わりに、放射線治療チャンバはまた、エアロックを含むことが可能である。図2に示されるエアロック29は、チャンバが大気圧以外の圧力に維持される場合において、チャンバの圧力を変えることなく、チャンバの内外を小物体が通過することを可能とする。エアロック29は、二重ロック入口と同じ原理に基づいて作動する。エアロックの容積は、出入口エンクロージャの容積より非常に小さいので、エアロックを使用し、食品、水、薬剤、医療機器等の小物体を、作動中のチャンバの内外を通過させることは、より経済的である。
【0024】
火事あるいは爆発の危険度を減少させるために、チャンバは、好ましくは、純酸素の代わりに空気によって加圧することが可能である。実施形態によっては、ユーザに、純酸素を供給しかつチャンバから流出した気体を除去する個別の酸素マスクを与えることが可能である。適当な酸素マスクは、口および鼻を単純にカバーすることができるもの、あるいは、首の周囲にシールを有するフレキシブルな透明ヘルメットの一種とすることも可能である。したがって、チャンバはまた、チャンバの内側あるいは外側に用意される酸素タンク等の純酸素源を含むことを必要とする可能性がある。
【0025】
好ましくは、チャンバはまた、ユーザの安全性および快適さを確実にする機能を含んでいる。前記機能は、知られており、照明装置、温度制御装置、湿度制御装置、圧力リリーフ弁、消火システム、インターコム、および、これらの組み合わせを含んでいるが、これらに限定されるものではない。チャンバはまた、好ましくは、閉回路カメラネットワークあるいは類似物を含んでおり、処置の間の何時でも、医療職員は、チャンバの内部の患者を観察することが可能である。
【0026】
図3を参照し、放射線源32は、チャンバ30の内部に配置される。それは、従来技術において一般的に使用される適当な放射装置とすることが可能であり、例えば、通常の外部ビーム放射線治療装置、仮想シミュレーション放射線治療装置、3次元原体照射装置(3− dimensional conformal radiotherapy apparatus)、および、振幅変調放射線治療装置(intensity− modulated radiotherapy apparatus)等である。適当な一例は、完全に引用して本願明細書に組み込まれている米国特許第6778850号、第6977987号および第7020245号に、開示されている。放射線源は、好ましくは、約200キロボルトから25メガボルトの範囲、より好ましくは、1〜25メガボルトの範囲のエネルギを有するX線を発生させる能力を有する。それは、支持ブレース34を使用し、チャンバの屋根部、側壁部あるいは床部に取り付けることが可能である。支持ブレース34は、エンクロージャ36に関して長手方向あるいは円周方向に放射線源を移動させ、あるいは、ピボットさせることができるタイプとすることが可能である。あるいは、放射線源を、独立した放射装置の一部とすることも可能である。
【0027】
放射線チャンバ30はまた、チャンバの内部に配置される患者支持システム38を含んでいる。後述されるように、患者支持システム38は、放射線源32に対して作用配置にあり、それらの位置を互いに関して調整することができ、患者の処置ターゲット領域を放射線源と位置合せすることが可能であることを意味する。患者支持システム38は、患者保持セクション38aおよび駆動機構38bを有する。駆動機構38aは、エンクロージャ36の長手方向および横方向あるいは上下に、患者保持セクション38bを移動させるように、適合されている。駆動機構38bは、患者保持セクションをピボットさせることも可能である。患者支持システムの適当な例は、完全に引用して本願明細書に組み込まれている米国特許第6094760号および第7011447号に、開示されている。実施形態によっては、放射線源および患者支持システムは、例えば、完全に引用して本願明細書に組み込まれている米国特許第6888919号等に開示されている支持ブレースあるいは類似物によって連結することが可能である。患者支持システム38は、患者を患者保持セクションに固定するための装置39を含むことも可能である。
【0028】
図1をもう一度参照し、放射線チャンバ10は、ホースあるいは管19aを経由してエンクロージャ12に流動的に連結される可逆圧縮機18aと、ホースあるいは管19bによってエンクロージャに連結される空気流量調整装置18bと、を含んでいる。特定の用途のために所望されるように、適当な圧縮機は、エンクロージャを1気圧と6気圧との間の圧力まで加圧し、あるいは、エンクロージャを約0.1気圧まで減圧する性能を有する。好ましくは、一秒未満において完全に開閉することが可能である高速調整弁が、使用される。流量調整装置は、周知技術であり、例えば、完全に引用して本願明細書に組み込まれているフィッシャーコントロールズインターナショナル(Fisher Controls International)社の制御バルブハンドブック(Control Valve Handbook)第4版(2005)に記載されている。流出口調整装置弁の適当な一例は、ミシガン州(MI)ミルフォード(Milford)所在のラディウス(Radius)、LLSによって製造される電気空気式位置決め装置(パーツ# RX−1000シリーズ;R−AD−012)である。当業者は、圧縮機および流出口流量調整装置を選択し、組み合わせることで、チャンバ内においてターゲット圧力を達成かつ維持することが可能であると同時に、チャンバを、フレッシュ空気の供給によって連続的に換気することを許容する圧縮機および流出口流量調整装置を選択することが、確実に可能である。
【0029】
一般的な多人数用高圧チャンバにおいて、医療グレードの圧縮機は、最高125psi(重量ポンド毎平方インチ)の圧力で、一次空気を供給する。その後、この空気は、一連の空気タンクにおいて高圧に維持される前において、アフタークーラ、オイル分離器、空気乾燥機およびある種の濾過パッケージ等の一連の調整装置を通過する。適当な動作を維持するために、空気タンクは、チャンバが必要とする空気量の少なくとも2回分を保持する容量を、一般的に有する。
【0030】
タンクからの圧縮空気は、別の空気乾燥機を通過し、空気の冷却プロセスの間に捕集される可能性がある凝縮が除去されると同時に、タンクに潜在性のものをセット(setting latent)し、次に、水分離器に通過し、空気乾燥機によって生成された凝縮が除去され、その後、何がしかの微粒子濾過システムを通過する。最後のステップにおいて、空気圧は、調整用フローバルブ(regulator flow valve)を使用し、チャンバによって必要な操作圧まで低下するように調整される。チャンバが一旦加圧されると、追加の「フレッシュ」な空気は、チャンバに供給されない。したがって、医療ガイドラインの範囲内で空気品質を維持し、かつ、患者をいくぶん快適に保つために、チャンバの内部空気は、二酸化炭素のために洗浄され、かつ、ある形態の内部空気調和ユニットを経由して循環させる必要がある。
【0031】
保持タンクからチャンバに圧縮空気を伝達するために、多段の設備と、多数の減圧(reduction)弁、制御弁およびレリーフ弁と、を必要とすることに加え、上記のプロセスもまた、患者に大きな不快感が生じさせる。チャンバがその操作圧に到達する間に、チャンバの内部での空気の再加圧によって、断熱的(adiabatic)な熱が発生する。反対に、チャンバの減圧の間に、空気は急速に冷却される。温度におけるこれらの激しい変化は、チャンバの占有者にとって極めて不快である。
【0032】
好ましい実施形態において、可逆圧縮機は、スクリュー圧縮機を有する。スクリュー圧縮機は、セメント、小麦粉、塩および粉ミルク等の乾燥したバルク材を移送し、また、化学工場およびリファイナリ(refinery)で見出される非活性で腐食性かつ爆発性である無数の気体を搬送、昇圧(boost)あるいは圧縮するために、一般的に使用される。しかし、出願人は、圧力チャンバのためにスクリュー圧縮機を使用することが、結果的に多くの利点をもたらすことを、思いがけなく発見した。これらの利点は、付加的な設備を必要することなく、低圧および高圧の両方の状態下においてチャンバの動作を可能にすること、高PSIに空気を加圧し、それを貯蔵し、そして、多段の調整装置を使用し、人間の使用に適しているようにする代わりに、ユーザが、1つの連続的なアクションで、チャンバのための空気を加圧および使用することを可能にすること、必要とされる設備の数量を削減すること、患者の不快感を解消させること、フレッシュ空気の循環を可能にすること、を含んでいるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
通常、スクリュー圧縮機は、その設計の高圧限界に到達するまで、いかなる制限にも対しても、その流れ曲線を維持する一定の大容量の空気を、供給することが可能である。一実施形態において、高速調整弁の使用により、一定流量でチャンバの周囲空気を供給しかつチャンバを通過して流れるその排気能力を制限することによる最終結果は、極めて制御可能かつ持続可能な速度(rate)での加圧である。あるいは、排気能力を一定値に維持し、スクリュー圧縮機からの空気の流量を変化させることによって加圧することが可能である、ターゲット圧力値が一旦達成されると、プログラム可能な工業用自動制御装置を使用することによって、それは、可能である。
【0034】
好ましくは、処置の全圧力曲線の間、空気を一定流量(CFM)で供給しているスクリュー圧縮機によって、システムコンピュータは、ターゲット圧力をプラスマイナス0.01PSIで連続的に制御すると同時に、フレッシュ空気を供給することによりチャンバを連続的に換気することが可能であるだろう。換言すれば、システムが加圧された定常状態に到達する場合に、圧縮機および流出口流量調整装置を調整することによって、それを維持することが可能であり、チャンバへ流入するフレッシュ空気の量、質量は、チャンバから流出およびシステム外に排出される空気の量と等しい。用語「フレッシュ空気」は、縮機によって供給されかつチャンバを加圧するために以前に使用されていない空気を、意味する。
【0035】
したがって、一実施形態において、チャンバ内の圧力の維持は、ポンプによって空気をチャンバに連続的に送り込み、チャンバから大気へ空気を連続的に排出し、そして、チャンバ内の圧力を連続的にモニタし、入力量あるいは出力量を調整し、チャンバ内の圧力を維持することによって達成される。
【0036】
スクリュー圧縮機が、空気を殺菌する最高340°Fの温度の乾燥したオイルフリーの空気を供給し、その後、断熱的な圧縮熱を快適な55〜85°Fに低下させる高効率熱交換器を供給することで、空気を、流量が制御された冷水源を使用することによって冷却することが可能である。前記プロセスにより生成される凝縮は、容易に捕集しかつ除去することが可能である。ミスト濾過は、好ましくは、1/10ミクロン以上の特定の物質の99.9%を除去する。いつも空気が高圧チャンバに到達する前に、その温度を事前に調整することによって、占有者は、チャンバの内部温度の不快な上昇あるいは降下を、決して感知しない。
【0037】
既知のスクリュー圧縮機であれば、使用することが可能である。適当な一例は、ペンシルヴェニア州(PA)コーツヴィル(Coatesville)所在のエアゼンユーエスエー(Aerzen USA)によって製造および販売されているエアゼンスクリュー圧縮機ユニット「DELTA SCREW VM/VML」を含んでいるが、これに限定されるものではない。これらの圧縮機は、空気および中性ガスのドライかつクリーンな圧縮のために、特に設計される。これらは、8500立方フィート毎分(cfm)(14400m/h)かつ30psig(ゲージpsi)まで、あるいは、5600cfm(9500のm/h)かつ最大51psigの空気および不活性ガスのオイルフリー圧縮のために使用することが可能である。これらの機械はまた、85%の連続減圧あるいは25.5”Hg(水銀柱インチ)にまで低下させる非常に高効率の乾式(dry)スクリュー真空ポンプとして、使用することが可能である。
【0038】
別の態様においては、処置の必要がある被検者を処置するための方法が、提供される。図4aを参照し、被検者40は、まず、上記の通り、放射線治療チャンバの内部の患者支持システム42に、配置される。次に、被検者40は、図4bに示すように、処置ターゲット領域44が放射線源46に位置合せされるように、位置決めされる。これは、患者保持セクション、放射線源あるいは両方を移動させることによって、達成することが可能である。例えば、図4bにおいては、まず、患者支持システム42が、図4bの矢印48によって示されるように、長手方向に移動される。次に、放射線源が、図4cの矢印49によって示されように、支持ブレース47に沿った円周方向に移動される。その結果、処置ターゲット領域44は、図4cにて図示されるように、放射線源46に位置合せされる。
【0039】
その後、圧力チャンバ内の圧力は、被検者に対する望ましい効果に基づき、増加させることが可能である。前記圧力は、本願明細書において、ターゲット圧力として参照される。可変チャンバの圧力は、最大で6気圧、好ましくは、約1.5気圧と3気圧との間、より好ましくは、約2.0〜2.4気圧である。最後に、被検者は、放射線の有効量に曝露されることになる。有効量は、被検者に対して処方される場合に、患者の状態の改善を結果として生じるのに十分である放射線の量を意味する。改善は、場合によって様々な方法で決定される。さらに、改善は、治癒を意味せず、患者の状態における二義的(marginal)な変化だけを含む場合もある。
【0040】
当業者は、確実に、異なる状態のための有効量を決定することができる。有効量は、処置される癌のタイプおよびステージに従い変化する。治癒的(根治的)なケースの場合、固形上皮性腫瘍のための一般的な服用量は、50から70グレイ(「Gy」)までの範囲で変化する一方、リンパ腫腫瘍は、20〜40Gyで処置される。予防的(補助的(adjuvant))な服用量は、一般的に、2Gyフラクション(fraction)で約50〜60Gyである(乳房癌、頭部癌および頚部癌のそれぞれのため)。患者に化学療法が施されているか否か、外科手術の前あるいは後において放射線治療が施されるか否か、また、外科手術の成功の度合いを含め、多くの他のファクターは、服用量を選択する際に考慮することが可能である。投薬は、分割することが可能である。例えば、成人のための一般的な分割(fractionation)スケジュールは、週につき5日で1日につき1.8〜2Gyである。患者を高圧環境に配置することによって、より少ない化学療法を使用したり、および/または、効果が増大した放射線を使用したりすることが可能である。
【0041】
図5は、スクリュー圧縮機システム50を有する変圧チャンバのためのプロセスフローチャートの非限定の実施形態を提示している。オイルフリー空気は、放出弁52を含むことが可能である圧縮機51から、340°Fかつ30psiで、吐出されることが可能である。高温は、空気を殺菌し、いかなる生物学的あるいは微生物的な生命を即座に破壊する。空気は、それから、限定されない熱交換器53を通過し、空気温度を約65°Fまで低下させることが可能である。反対に、プロセスの減圧サイクルの間に、供給空気を予熱し、チャンバの内部温度を、快適な70〜72℃Fに維持することが可能である。空気の温度は、冷水供給装置55の流量を制御する調節弁54によって、制御することが可能である。このように温度を制御することが可能であるのは、空気がチャンバ内で1回のみ圧縮され、そして、流れを一定に制御することにより、その圧力に維持されるためである。これに反して、一般的なチャンバにおいては、空気がチャンバの内部で再圧縮されるので、チャンバ内の空気の温度を制御することができない。
【0042】
次に、供給空気は、プレフィルタ56を通過し、急速冷却プロセスによって生成される凝縮を除去し、そして、ミスト分離器57を通過し、サブミクロンの粒子を除去しかつ残留水分を減少させる。本応用のためには、1/10ミクロン以上の大きさの粒子を99.98%の割合で除去し、かつ、0.5ppmまで残留水分を削減させることが可能であるミスト分離器を使用することが望ましい。状況に応じて、空気流の圧縮あるいは濾過プロセスにおいて生成される音を、70dB未満までに減少させることが可能である音響減衰器、サイレンサ、58を通過させることが可能である。その後、空気は、後述される一連の一次制御装置59を通過し、圧力計61および逆止弁62を経由し、チャンバ60に導入される。チャンバの後において、空気は、システムから排出される前に、空気速度ヒューズ63、遮断弁64、一連の二次制御装置65、サイレンサ66、流出口フロー調整弁67、および、別のサイレンサ68を通過する。チャンバ内の圧力は、調整弁67によって達成されかつ制御することが可能である。好ましくは、高速調整弁を使用することで、一秒未満において完全に開閉することが可能である。チャンバは、緊急開放弁69を含むことも可能である。
【0043】
空気の流量および物理的な性質は、2セットの制御装置59および65によって制御することが可能である。一次制御装置セット59は、温度センサ59aおよび圧力センサ59bを有する。二次制御装置セット65は、温度センサ65aおよび圧力センサ65bを有する。加えて、排気空気はまた、酸素パーセントおよび二酸化炭素のための空気品質システム51を使用し、サンプリングすることが可能である。これらのデータは、空気流量を調整して、目標の圧力、温度等を達成することが可能である制御ユニット(図示せず)に供給される。どのようなタイプの制御装置も、本願明細書において記載されている方法のために使用することが可能である。好ましくは、例えば、比例−積分(PI)あるいは比例−積分−微分制御装置(PID制御装置)等のフィードバック制御装置が、利用される。好ましくは、プロセッサからの連続的な更新が、空気流れの正確な制御を可能にする5msの速度で、実行される。
【0044】
本願明細書において引用された全ての刊行物、特許公報および非特許公報の両方は、本発明が関する当業者の技術のレベルを表示している。これらの刊行物の全ては、あたかも、各々の独立した刊行物が、引用して組み込まれたとして、具体的かつ個別的に示されるのと同一の程度に、引用して本願明細書に完全に組み込まれている。
【0045】
本発明は、特定の実施形態に関して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および応用の単なる実例にすぎないことが、理解されるだろう。したがって、以下の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、例示の実施形態に対し、多数の修正をなし、また、別のアレンジを工夫することが可能であることが、理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を受け入れるために適合されかつ流入口および流出口を有する略気密のエンクロージャ、
前記エンクロージャの内部に配置される放射線源、
前記エンクロージャの内部に配置されかつ前記放射線源に対して作用配置にある患者支持システム、
前記エンクロージャの前記流出口に流動的に連結される流出口流量調整装置、および、
前記エンクロージャの前記流入口に流動的に連結される圧縮機、
を有しており、
前記圧縮機および前記流出口流量調整装置は、組み合わされることによって、前記エンクロージャのターゲット圧力を維持する一方、フレッシュ空気の供給によって前記エンクロージャを、連続的に換気する
ことを特徴とする放射線治療チャンバ。
【請求項2】
略気密の前記エンクロージャは、高圧あるいは低圧に耐える能力を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項3】
前記放射線源は、X線源であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項4】
前記放射線源は、約1〜25MVの範囲のエネルギを有するX線を発生させる能力を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に放射線治療チャンバ。
【請求項5】
前記放射線源は、エンクロージャに関して長手方向および円周方向に前記放射線源が移動し得るように適合される支持ブレースによって、前記エンクロージャの屋根部、側壁部あるいは床部に取り付けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項6】
前記放射線源は、独立した装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項7】
前記患者支持システムは、
患者保持セクションと、
前記放射線源に関して患者の位置を調整するために適合される駆動機構と、
を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項8】
前記エンクロージャへのアクセスを提供するために適合されるシール自在開口部と、
前記シール自在開口部を密封するために適合される閉鎖メカニズムと、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項9】
前記圧縮機は、可逆圧縮機であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線治療チャンバ。
【請求項10】
処置を必要とする被検者を処置するための方法であって、
患者を受け入れるために適合されかつ流入口および流出口を有する略気密のエンクロージャ、前記エンクロージャの内部に配置される放射線源、前記エンクロージャの内部に配置されかつ前記放射線源に対して作用配置にある患者支持システム、前記エンクロージャの前記流出口に流動的に連結される流出口流量調整装置、および、前記エンクロージャの前記流入口に流動的に連結されるスクリュー圧縮機、を有する放射線治療チャンバの内部に、前記被検者を配置すること、
前記チャンバを、ターゲット圧力になるように加圧すること、
処置ターゲット領域が前記放射線源と位置合せされるように、前記被検者を位置決めすること、および、
前記被検者を、放射線の有効量で処置する一方、前記圧縮機および前記流出口流量調整装置を組み合わせて使用し、前記エンクロージャを連続的に換気すると共に前記ターゲット圧力を維持すること、
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記放射線源は、約1〜25MVの範囲のエネルギを有するX線を発生させる能力を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線源は、エンクロージャに関して長手方向および円周方向に前記放射線源が移動し得るように適合される支持ブレースによって、前記エンクロージャの屋根部、側壁部あるいは床部に取り付けられることを特徴とする請求項10又はる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者支持システムは、
患者保持セクションと、
前記放射線源に関して患者の位置を調整するために適合される駆動機構と、
を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−517707(P2010−517707A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549301(P2009−549301)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/053719
【国際公開番号】WO2008/100931
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509227045)
【Fターム(参考)】