説明

放射線治療装置用治療台

【課題】 放射線治療装置用の治療台の位置精度を高くする。
【解決手段】 治療台の上に、x軸を長手方向とする剛性の高い梁を設置する。その梁の上に、x軸方向に摺動可能な架台を載せ、架台の上に患者が載せられる天板を固定する。天板は、その天板の端部において架台に固定されることにより、片持ち梁の構造となっている。天板と梁との間には、天板に患者が載せられて撓んだときに天板と梁が接触しないように充分な隙間がある。こうした治療台において、患者が載せられると、天板は撓む。そこで患者の表皮に付けられたマーキングを用いた位置合わせが行われる。次いで、天板(架台)が梁に対して移動して、患者が治療位置まで移動させられる。天板は撓んだまま移動されるため、最初に行われた位置合わせからのずれは少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置用治療台及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置は、放射線が正確に患部に集中して照射されるように、高い精度が要求される。放射線治療装置用に用いられる治療台にも高い位置精度が求められる。
【0003】
放射線ビームを、天板上に寝載した患者の病巣部の所望の一点(治療の対象点)に集中させ、かつ該病巣部の回りに回動させて多方向より照射するようにした定位法と呼ばれる放射線照射法を使用する放射線照射装置に係わり、特に、天板の移動時における撓みを防止して天板の高さを一定に保ち、照射する放射線ビームを、常に確実に前記病巣部の所望の一点に集中させるのに好適な放射線治療装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
支持柱上に取り付けられたベースフレーム、上記ベースフレーム上に上記ベースフレームの長手方向にスライド移動可能に連結された中間フレーム、上記中間フレーム上に上記中間フレームの長手方向にスライド移動可能に連結された治療寝台となる天板を備え、患者を寝かせた上記天板を治療方向に移動し、放射線照射位置に位置合わせして治療を行う放射線治療台において、上記天板を治療方向に移動させるにともなって、上記天板と上記中間フレームとの第一の連結部、若しくは上記第一の連結部並びに上記中間フレームと上記ベースフレームとの第二の連結部が上記支持柱に近づくよう構成されていることを特徴とする放射線治療台が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−134041号公報
【特許文献2】特開2002−219183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1A及び図1Bを参照すると、放射線治療装置101と治療台102の側面図が示されている。治療台102は支持台103と、支持台103の上部に載せられた天板104とを備えている。天板104は、支持台103の上を摺動して放射線治療装置101の方へ移動することができる。天板104が放射線治療装置101の方へ移動した状態が図1Bに示されている。
【0007】
図1Aに示される、天板104の概ね全ての面積が支持台103の上に支持されている場合を天板104の開始位置と呼ぶことにする。図1Bに示される、天板104が開始位置から移動され一部が放射線治療装置101の内部に入っている場合を天板104の治療位置と呼ぶことにする。治療位置において、天板104は片側だけを支持台102に支持される片持ち梁の状態となり、図1Bに示されるΔHだけ下方に撓む。そのため、例えば患者の体表面に描かれたマーキング105を用いて開始位置で患者の位置を位置合わせしても、治療位置においては撓みの分だけずれてしまうという問題がある。
【0008】
図1Bに示される状態でマーキングを用いた位置合わせをしようとすると、放射線治療装置101が作業の妨げとなり位置合わせが行いにくい。
【0009】
本発明の目的は、患部の位置合わせが正確に行われる放射線治療装置用の治療台とその使用方法を提供することである。
本発明の他の目的は、患部の位置合わせが行いやすい放射線治療装置用の治療台とその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明による放射線治療装置用治療台(9)は、支持台(14)と、支持台(14)の上部に取り付けられ、鉛直方向から見たときに支持台(14)との重なりが最も大きい第1位置と支持台(14)との重なりが最も小さい第2位置とに配置されることが可能な天板(18)とを備えている。天板(18)の上に患者(P)が載せられたときの天板(18)の撓みの大きさは、第1位置と第2位置とで同じである。
【0012】
本発明による放射線治療装置用治療台(9)は、放射線治療装置(1)のアイソセンタ(10)に対してy軸の負方向に設置された支持台(14)と、支持台(14)の上部に、y軸方向に摺動可能に設置された支持具(16)と、支持具(16)により片持ち梁として支持された天板(18)とを備えている。支持台(14)と天板(18)との間には、患者(P)が載せられることにより天板が撓んだとき、天板(18)と支持台(14)とが接触しないような隙間19がある。
【0013】
本発明による放射線治療装置用治療台(9)において、支持台(14)のy軸の正方向には、y軸に平行で照射ヘッド(2)のアイソセンタを通る軸を中心軸として照射ヘッド(2)が移動するようにガイドし、支持具(16)がy軸の正方向に動かされたとき天板(18)が中心部へ入るリング(3)が設置されている。
【0014】
本発明による放射線治療装置用治療台(9)は、リング(3)の外部において患者(P)の体表面に位置決めをするためのレーザービームを照射するレーザー装置(22)を備えている。
【0015】
本発明による放射線治療装置用治療台(9)の使用方法は、放射線の照射が行われる位置から離れた開始位置において、支持台(14)に支持された架台(16)に片持ち梁として支持された天板(18)に患者(P)を寝載するステップと、開始位置において、患者(P)の重量により天板(18)が撓んだ状態で、患者(P)の体表面のマーキング(20)により位置決めを行うステップと、天板(18)が撓んだままの状態で、天板(18)を放射線治療が行われる位置まで移動するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、患部の位置合わせが正確に行われる放射線治療装置用の治療台とその使用方法が提供される。
更に本発明によれば、患部の位置合わせが行いやすい放射線治療装置用の治療台とその使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明による放射線治療装置用治療台について詳細に説明する。
【0018】
図2を参照すると、治療台9と、放射線治療装置1とが図示されている。放射線治療装置1は、放射線発生装置2を備えている。放射線発生装置2は、可動部材5に搭載されている。放射線治療装置1はガイド3を備えている。ガイド3は周回軌道15を備えている。可動部材5は、周回軌道15に沿って移動可能である。この移動は制御装置8により制御されている。
【0019】
放射線治療装置1は支持部材4を備えている。支持部材4は軸受けを介してガイド3を支持しており、ガイド3はその軸受けの軸4aの周りに回転可能である。この回転は制御装置8により制御されている。
【0020】
可動部材5のガイド3に沿った回転運動、及び軸4aの周りのガイド3の回転運動によって、放射線発生装置2から照射される放射線(X線など)は、固定点であるアイソセンタ10に対して様々な方向から照射される。
【0021】
治療台9は、支持台12を備えている。支持台12の上には、支持梁14が支持されている。支持梁14は、長手方向(図2に示されるy軸方向)に延長するとアイソセンタ10に向かう方向に設置されている。支持梁14は、加重に対する撓みの少ない剛な素材により形成されている。支持梁14は治療に使用されるX線などの放射線を透過する必要がないため、こうした剛な材料を選定することは容易である。
【0022】
支持梁14の上には、架台16が設置されている。架台16は、支持梁14の長手方向に自在に摺動できる。好ましくは、架台16と支持梁14とはリニアガイドにより滑らかに摺動可能である。図2においては、架台16はアイソセンタ10から最も遠い側にある状態で描かれている。
【0023】
架台16の上には患者Pを寝載するための天板18が固定されている。固定されている場所は、天板18のうちアイソセンタ10から最も遠い側の端部である。天板18と支持梁14との間には、天板18に患者が横たわったときに患者の体重によって天板18が撓んだときに天板18と支持梁14とが接触しないように充分な隙間19がある。
【0024】
天板18は、放射線の吸収線量が大きくならないことが求められるため、支持梁14と比較すると撓みが小さくなるような剛性を持たせることは困難である。
【0025】
アイソセンタ10よりもy軸の負方向に寄った側には、レーザー発振器22が取り付けられている。レーザー発振器22は、レーザーが天板18の上に寝た患者Pの方に向かう向きに固定されている。レーザー発振器22は、例えばx軸に直交する治療台9の両側面の壁と、治療台9の真上の天井とに設置される。
【0026】
図3を参照すると、治療台9の可動部分が詳細に描かれている。支持台12はz軸ガイド24により、床面に対してz軸方向(鉛直方向)に摺動可能である。支持台12に対して支持梁14は、x軸ガイド26によりx軸方向(y軸及びz軸に直交する方向)に摺動可能である。支持梁14に対して架台16及び天板18は、y軸ガイド28によりy軸方向に摺動可能である。x軸ガイド26、y軸ガイド28、及びz軸ガイド24は制御装置8により制御されている。好ましくは、x軸ガイド26、y軸ガイド28、及びz軸ガイド24はリニアベアリング(リニアガイド)である。
【0027】
こうした放射線治療装置1と治療台9とは、以下のように動作する。
【0028】
図2に示されるように架台16が支持梁14のy軸負方向の端部にある状態で、体表面にマーキング20を付けられた患者Pが天板18の上に横たわる。天板18は、患者Pの体重により撓む。隙間19があることにより、天板18は撓んでも支持梁14に接触しない。
【0029】
レーザー発振器22により患者Pにレーザーが照射される。オペレータは、制御装置8を介してx軸ガイド、y軸ガイド28、及びz軸ガイド24を操作して、レーザーによる体表面のスポットがマーキング20と一致するように、天板18の位置を調節する。この調整は、患者Pがリング3から離れた広い作業場所で行われるために、患者P、マーキング20、及びレーザーのスポットが視認しやすく、作業効率が良い。
【0030】
y軸ガイド28により、天板18がアイソセンタ10に近づけられ、その結果、患部がアイソセンタ10に近づけられる。図4を参照すると、患部がアイソセンタ10に位置しているときの治療台9と放射線治療装置1とが示されている。天板18は、図2の場合と同じく架台16により端部において支えられている。従って、天板18の撓みの大きさは、患者Pが治療台9に載ったとき(開始位置)と、患者Pが放射線治療を受ける位置(治療位置)になるまで天板18が引き出されたときとで同じである。架台16を支持する支持梁14は剛性が高いため、撓みはごく小さい。例えば0.1mmのオーダーである。更に支持梁14の撓みを小さくするためには、柱により支持梁14を床面に固定することが好ましい。
【0031】
開始位置と治療位置とで天板18の撓みの大きさが変わらないことにより、開始位置におけるマーキング20を用いた位置合わせに狂いが生じることなく患者Pは治療位置まで移動する。そのため、治療のための位置合わせが正確かつ迅速にできる。
【0032】
好ましくは、x軸ガイド26、y軸ガイド28、及びz軸ガイド24が取り付けられている個所には各々、デジタルスケールが設置され、治療台9のx軸、y軸、及びz軸の座標が数十μ程度の精度で正確に測定される。さらに、放射線治療装置1はレーザー発振器22に対して正確に位置決めされたレーザー発振器(図示せず)を備える。両者のレーザー発振器22の相対的な位置関係は正確に測定されている。こうした場合、開始位置でマーキング20とレーザーのスポットとが合う位置が定点とされ、その定点は、数十μ程度の精度で正確に測定される。この定点からデジタルスケールで位置を測定しながら天板18をアイソセンタ10の方へ伸ばすことにより、正確に患部がアイソセンタに位置付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aは、天板の撓みを説明するための図である。
【図1B】図1Bは、天板の撓みを説明するための図である。
【図2】図2は、放射線治療装置と治療台を示す。
【図3】図3は、治療台の可動部分を示す。
【図4】図4は、放射線治療装置と治療台を示す。
【符号の説明】
【0034】
1…放射線治療装置
2…放射線発生装置
3…ガイド
4…支持部材
5…可動部材
7…解析装置
8…制御装置
10…アイソセンタ
12…支持台
14…支持梁
16…架台
18…天板
19…隙間
20…マーキング
22…レーザー発振器
24…z軸ガイド
26…x軸ガイド
28…y軸ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台の上部に取り付けられ、鉛直方向から見たときに前記支持台との重なりが最も大きい第1位置と前記支持台との重なりが最も小さい第2位置とに配置されることが可能な天板
とを具備し、
前記天板の上に患者が載せられたときの前記天板の撓みの大きさは、前記第1位置と前記第2位置とで同じである
放射線治療装置用治療台。
【請求項2】
放射線治療装置のアイソセンタに対してy軸の負方向に設置された支持台と、
前記支持台の上部に、前記y軸方向に摺動可能に設置された支持具と、
前記支持具により片持ち梁として支持された天板
とを具備し、
前記支持台と前記天板との間には、患者が載せられることにより前記天板が撓んだとき、前記天板と前記支持台とが接触しないような隙間がある
放射線治療装置用治療台。
【請求項3】
請求項2に記載された放射線治療装置用治療台であって、
前記支持台の前記y軸の正方向には、前記y軸に平行で前記照射ヘッドのアイソセンタを通る軸を中心軸として照射ヘッドが移動するようにガイドし、前記支持具が前記y軸の正方向に動かされたとき前記天板が中心部へ入るリングが設置されている
放射線治療装置用治療台。
【請求項4】
請求項3に記載された放射線治療装置用治療台であって、
更に、前記リングの外部において前記患者の体表面に位置決めをするためのレーザービームを照射するレーザー装置
を具備する
放射線治療装置用治療台。
【請求項5】
放射線の照射が行われる位置から離れた開始位置において、支持台に支持された架台に片持ち梁として支持された天板に患者を寝載するステップと、
前記開始位置において、前記患者の重量により前記天板が撓んだ状態で、前記患者の体表面のマーキングにより位置決めを行うステップと、
前記天板が撓んだままの状態で、前記天板を前記放射線治療が行われる位置まで移動するステップ
とを具備する
放射線治療装置用治療台の使用方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−51215(P2006−51215A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235557(P2004−235557)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】