説明

放射線画像読取装置、フィルム状ホルダおよび放射線画像の読み取り方法

【課題】容易に放射線画像の読み取り作業を行い、画像記録体を一定の基準面で正確に高解像に読み取ることができる放射線画像読取装置、フィルム状ホルダおよび放射線画像の読み取り方法を提供する。
【解決手段】放射線画像が記録された画像記録体から画像読取を行う放射線画像読取装置100であって、画像記録体が保持されたフィルム状ホルダを支持し、画像読取時にスライドする支持部110と、支持部110上で、一端が固定され、自由端側でフィルム状ホルダを被覆するホルダ被覆部120と、ホルダ被覆部120の自由端に連結してフィルム状ホルダを支持部に固定するホルダ固定部127と、画像読取時にスライドする画像記録体の表面を基準曲面に合せるガイド部130と、基準曲面に合わされた画像記録体の表面から放射線画像を読み取る読取部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像が記録された画像記録体から画像読取を行う放射線画像読取装置、フィルム状ホルダおよび放射線画像の読み取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線等の放射線画像データの撮影にはIP(Imaging Plate)が用いられる。このようなIPから放射線画像を読み取る装置は、読み取りヘッドを回転させる読み取り機構を固定位置に設置し、湾曲させたIPを搬送させながら画像データを読み取る方式が取られることが多い。そのような読み取り装置では、IP自身を調整面に対してベルト駆動機構で押し付け、ベルトの摩擦力でIPを搬送する機構が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の放射線画像読取装置は、円筒面で画像記録体の記録面を支持し、複数のプーリごとに掛けられた搬送ベルトにより、円筒面の軸方向へ画像記録体を搬送し、搬送された画像記録体に記録された放射線照射画像の読み出しと消去を連続して行っている。このとき搬送ベルトは、画像記録体の記録面を円筒面に押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−060750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような搬送機構を有する放射線画像読取装置では、IP表面を基準面に合せながらIPを搬送するため、IPをベルトで強力に押さえつける必要がある。そのため、IP表面が円筒状の支持面に強く押され、その状態で滑りながら搬送され、表面に多くの傷がつくことがある。
【0006】
そのため、IPの表面には擦り傷が発生し、結果としてX線の読み取り画像にも影響を与える。すなわち、IP表面の傷が深くなると、IP自身が外部雰囲気の影響を受けX線に対する感度特性が変わったり、表面の傷の部分で読み取り用のレーザ光が散乱され、傷起因の画像が見られるようになったりする。そして、観測したい画像の誤認や誤判定に影響するため、使用が難しくなる。
【0007】
これに対し、本発明者らは、画像記録体の表面に傷をつけずに読み取ることを可能にする放射線画像読取装置を発明した。そのような放射線画像読取装置では、画像記録体の表面を第1の基準曲面に至るまで画像記録体を弾性的に押圧し、読み取り時には画像記録体の表面を第2の基準曲面に合せる。このようにして、画像記録体にかかる圧力を調整する。しかし、画像記録体を支持部に固定する作業には、精密さが必要となり、作業現場などで読み取りを行う場合には必ずしも好適とは言えない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、容易に放射線画像の読み取り作業を行い、画像記録体を一定の基準面で正確に読み取ることができる放射線画像読取装置、フィルム状ホルダおよび放射線画像の読み取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る放射線画像読取装置は、放射線画像が記録された画像記録体から画像読取を行う放射線画像読取装置であって、画像記録体が保持されたフィルム状ホルダを支持し、画像読取時にスライドする支持部と、前記支持部上で、一端が固定され、自由端側で前記フィルム状ホルダを被覆するホルダ被覆部と、前記ホルダ被覆部の自由端に連結して前記フィルム状ホルダを前記支持部に固定するホルダ固定部と、画像読取時にスライドする前記画像記録体の表面を基準曲面に合せるガイド部と、前記基準曲面に合わされた画像記録体の表面から放射線画像を読み取る読取部とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように本発明の放射線画像読取装置は、ホルダ固定部により被覆部の自由端に連結することで、容易にフィルム状ホルダを支持部に固定することができる。これにより、容易に放射線画像の読み取り作業を行い、画像記録体を一定の基準面で正確に読み取ることができる。
【0011】
(2)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結できる位置で、前記ホルダ被覆部の自由端を仮止めする仮止め部を更に備えることを特徴としている。これにより、被覆部の自由端を仮止めし、その後固定することができるため、読取操作の作業性が向上する。
【0012】
(3)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結しているか否かを判定する判定部と、前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結していないと判定されたときには、前記読取部に電力を供給しない制御部とを更に備えることを特徴としている。これにより、誤って読取用のレーザが作業者に照射されることがなくなり、安全を確保することができる。
【0013】
(4)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結しているか否かを判定する判定部と、前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結していないと判定されたときには、操作を無効にする制御部とを更に備えることを特徴としている。これにより、被覆部が支持部を覆った状態でなければ、操作ができなくなるため、誤って読取用のレーザが作業者に照射されることがなくなり、安全を確保することができる。
【0014】
(5)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記ガイド部の表面が、不織布で形成されていることを特徴としている。これにより、画像記録体の表面に傷をつけることなく、画像記録体の表面の位置を正確に固定することができ、感度ムラの無い画像信号を得ることができる。
【0015】
(6)また、本発明に係るフィルム状ホルダは、上記の放射線画像読取装置で用いられるフィルム状ホルダであって、本体の表面上に、プレート状の画像記録体をその両端で保持するための一対のポケットを有することを特徴としている。
【0016】
(7)また、本発明に係る放射線画像の読み取り方法は、上記のフィルム状ホルダを用いた放射線画像の読み取り方法であって、異なるサイズの画像記録体に対して、前記一対のポケットの間隔をそれぞれの画像記録体のサイズに適合させた複数のフィルム状ホルダを用いて読み取りを行うことを特徴としている。これにより、異なるサイズの画像記録体を用いる場合にも、簡単に読み取り作業を進めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易に放射線画像の読み取り作業を行い、画像記録体を一定の基準面で正確に読み取ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る放射線画像読取装置を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る放射線画像読取装置およびフィルム状ホルダを示す正面図である。
【図3】本発明に係る放射線画像読取装置およびフィルム状ホルダを示す正面図である。
【図4】固定ユニットを示す断面図である。
【図5】読取部を示す側面図
【図6】読取部を示す正面断面図である。
【図7】読取部における励起光および輝尽光の経路を示す図である。
【図8】画像記録体の位置合せの方法を示す模式図である。
【図9】本発明に係る放射線画像読取装置を示す断面図である。
【図10】(a)(b)本発明に係る放射線画像読取装置を示す断面図である。
【図11】本発明に係る放射線画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。
【図13】本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。
【図14】(a)(b)本発明に係るフィルム状ホルダを示す正面図および断面図である。
【図15】(a)(b)いずれもフィルム状ホルダおよび画像記録体を示す断面図である。
【図16】(a)(b)本発明に係るフィルム状ホルダを示す正面図および断面図である。
【図17】画像記録体とその撮影用ケースを示す正面図である。
【図18】画像記録体とその撮影用ケースを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(装置の全体構成)
図1は、放射線画像読取装置100を示す斜視図、図2および図3は、放射線画像読取装置100およびフィルム状ホルダ210を示す正面図である。図2および図3に示すように、放射線画像読取装置100は、平面形状で放射線画像が記録された画像記録体220が収容されたフィルム状ホルダ210ごと画像読取を行う。その際には、円筒形状に曲げた画像記録体220に対して読み取りがなされる。放射線画像読取装置100は、固定ユニット105および可動ユニット107を備えている。なお、放射線はX線や中性子線等であり、画像記録体220は、たとえばIP(Imaging Plate)である。
【0021】
固定ユニット105は、ベース部109、一対のガイド部130、読取部400、読取用駆動部410およびスキャンガイド135を備え、読取部400と回転ヘッド439が回転することにより、画像記録体220の表面を走査し、画像記録体220の画像信号を読み取る。一方、可動ユニット107は、一対の支持部110、スライド部115、ホルダ被覆部120を備えており、スライドすることで画像記録体220の表面の読取走査位置を変更する。
【0022】
一対の支持部110は、円環状に形成されており、その形状は読取部400の回転ヘッド439の回転中心を中心とし、一定の外径を有している。円環状の表面には僅かに段差が設けられており、外段面111と、内段面112が形成されている。一対の支持部110の一対の内段面112は、画像記録体220が保持されたフィルム状ホルダ210の送り方向の両端を支持する。そして、モータ等の駆動により画像読取時に所定方向にスライドする。
【0023】
ホルダ被覆部120は、画像記録体220ごとフィルム状ホルダ210を覆い、画像記録体220の表面が第1の基準曲面に至るまで画像記録体220を弾性的に押圧する。ホルダ被覆部120は、支持部110上で、一端が固定されており、他端すなわち自由端側でフィルム状ホルダ210を被覆する。なお、ホルダ被覆部120の自由端側には取手126が設けられている。
【0024】
ホルダ被覆部120は、容易に円弧上に湾曲可能な押えばね板と弾性材料の層を有しており、フィルム状ホルダ210に当接する弾性材料の層の表面はフィルム等により形成されている。押えばね板のバネ性により、伸ばした状態のフィルム状ホルダ210をホルダ被覆部120で覆うのが容易になり、フィルム状ホルダ210を所望の位置で確実に固定することができる。弾性材料の層は、たとえば、スポンジや繊維層のような3次元網目構造を有する有機物の層で形成されている。
【0025】
押さえフック127(ホルダ固定部)は、ホルダ被覆部120の自由端のバー121に連結してフィルム状ホルダ210を支持部110に固定する。回転ヘッド439と画像記録体220との間隔は一定に保たれる必要がある。そのため、ガイド部130に画像記録体220が正確に押圧される必要がある。押さえフック127は、取手126の付いたレバー機構と連動するように設けられており、取手を動かしたときレバー機構により押さえフック127とバー121とを連結し、適正に画像記録体220を押圧し、その状態をロックすることができる。これにより、容易に放射線画像の読み取り作業を行い、画像記録体220を一定の基準面で正確に読み取ることができる。
【0026】
ロックされた状態では、画像記録体220はガイド部130に接触し、その表面の位置が第2の基準曲面になるように合わされている。なお、ホルダ固定部がバーの構成で自由端がフックの構成であってもよい。また、これらは連結し固定できる構成であれば、必ずしもフックとバーでなくてもよい。
【0027】
仮止めフック128(仮止め部)は、押さえフック127がホルダ被覆部120のバー121に連結できる位置で、ホルダ被覆部120の自由端を仮止めする。これにより、被覆部の自由端を仮止めし、その後固定することができるため、読取操作の作業性が向上する。仮止めフック128はホルダ被覆部120のバネ性でバー121が引っ掛かる程度の傾斜を有する。
【0028】
ホルダ被覆部120は、バネ性を有しているため、固定する際に自由端が振れてしまい操作が難しい場合がある。そのようなときでも自由端を仮止めし、その後固定すれば、段階的に操作を行うことができ容易にホルダ被覆部120を固定することができる。なお、仮止めフック128がバーの構成でホルダ被覆部120の自由端がフックの構成であってもよい。また、これらは仮止めできる構成であれば、必ずしもフックとバーでなくてもよい。
【0029】
ホルダ被覆部120は、一対の支持部110の一対の内段面112で両端を支持された、画像記録体220が装着されたフィルム状ホルダ210を押さえる。ホルダ被覆部120は一対の支持部110の一対の外段面111に両端を支持されてフィルム状ホルダ210を挟持する。また、画像記録体220自体をフィルム状ホルダ210に装着させることにより、フィルム状ホルダ210の形状を事前に基準曲面と同等位置にポジショニングさせることができる。
【0030】
図4は、固定ユニット105を示す断面図である。図4に示すように、読取部400は、一対のガイド部130の中間に設けられている。読取部400は、回転ヘッド439を有し、読取用駆動部410と接続されている。一対のガイド部130は、ベース部109上の固定位置に形成され、スライドする画像記録体220の表面を第2の基準曲面に合せる。したがって、読取部400を覆う円環状に形成されていることが好ましい。
【0031】
ベース部109には、操作パネルが設けられている。操作パネルには、スキャンボタン、オープンボタン、サイズ選択ボタン、モード選択ボタン、緊急停止ボタンおよび液晶表示画面が設けられている。画像記録体220の表面を合せる円環の外側面は、回転ヘッド439の回転中心を中心とした一定の外径に形成されていることが好ましい。一対のガイド部130は、スライドする画像記録体220に当接したとき、画像記録体220の表面を押し返して読み取り用の第2の基準曲面に合わせる。
【0032】
また、一対のガイド部130の表面には不織布131が設けられている。これにより、画像記録体220がガイド部130に当接したときに画像記録体220の表面の損傷を防止できる。また、一対のガイド部130は、画像記録体220の表面の位置を合せる面の端部に丸面取りが形成されていることが好ましい。なお、ガイド部130は、容易に取り換えることができる。摩耗、ごみの付着等により交換の必要が生じた場合には交換可能である。
【0033】
なお、ガイド部130が所定位置に固定されているかを光学的または機械的に検出できるように安全機構を設けることができる。その場合には、後述の多重安全機構に連動させ、多重の安全機構を構成することが可能である。
【0034】
読取部400は、一対のガイド部130の中間に設置され、画像記録体220に記録された放射線画像を読み取る。これにより、一対のガイド部130の中間において第2の基準曲面に表面を合わされた画像記録体220から記録された放射線画像を読み取ることが可能になる。したがって、正確に放射線画像を読み取ることができる。
【0035】
スキャンガイド135は、可動ユニット107が移動して装置からせり出したときの移動代を確保するためのガイド板である。スキャンガイド135は、可動ユニット107のスライド方向に対して板の表面を水平にして、ベース部109の一部として設けられている。スキャンガイド135は、装置に対して着脱可能であり、装置を使用しないときには取り外され、使用時には設置される。また、可動ユニット107の移動時に、光洩れを防止するとともに作業者の指を挟まないようにしている。
【0036】
図4に示すように、読取用駆動部410は、回転ヘッド439を回転させる。読取用駆動部410は、定速回転制御がなされることが好ましい。回転ヘッド439は、読取用駆動部410の回転駆動力により回転する。回転ヘッド439の回転軸は、一対のガイド部130の円環面の中心軸と同一である。
【0037】
(読取部の構成)
図5および図6は、読取部400を示す側面図および正面断面図である。図6は、図5に示す断面cを矢印の向きから見た図である。図5および図6に示すように、読取部400は、読取台405、読取用駆動部410、回転部415、発電部420、励起光照射部430、検出部440を備えている。読取部400の内部に設置されたレーザ光源431から直接に画像記録体220にレーザを照射しており、途中に光路を変更させるポリゴンミラーなどの部品を有しておらず、レーザ光を発散させない。また、レーザ光源431と画像記録体220とが近い構成をとるため、焦点が発散せず、レーザ光が小さい焦点で画像記録体220に入射し、高解像度で画像を読み取ることができる。
【0038】
読取台405は、各部を支持する台である。読取用駆動部410は、サーボモータ411、プーリ412、ベルト413、プーリ414により構成されている。サーボモータ411(第1のモータ)は、電力によりロータが回転しプーリ412に回転駆動力を発生させ、ベルト413を介してプーリ414に伝える。サーボモータ411は、定速回転制御がなされることが好ましい。これにより、精密な角度制御が可能になる。また、回転部415に安定した高速回転をさせることができる。
【0039】
回転部415は、プーリ414から伝達された回転駆動力により回転する。回転部415の回転軸は、一対のガイド部130の円環面の中心軸と同一である。発電部420は、回転部415の回転運動により電圧を発生させる。発電部420は、電磁材料製のロータ422および回転部415上に設けられた巻線を有するステータ423を有するステッピングモータ424(第2のモータ)により構成されている。このように発電部420は、回転部415の回転をステッピングモータ424に与えることにより、これを電力に変換し発電する。なお、ロータ422は、固定用金具421により静止して固定されており、これに対しステータ423が回転部415とともに回転することで発電が生じる。
【0040】
発電部420にステッピングモータ424を用いることでモータ内の極数を多くして容易に周波数の高い電圧を得ることができる。その結果、安定した電圧を得ることができる。また、周波数の高い電圧であれば、その電圧の平滑化に大きい容量のコンデンサが不要となり、平滑用回路を小型化することができる。たとえば、ステータ423は、巻線の極を3以上有することが好ましい。発電部420は、コンデンサ要素として固体コンデンサを用いた平滑用電気回路により、発生した電圧を直流電圧に平滑化する。このように、コンデンサ要素に固体コンデンサを用いることで、回路を小型化することができる。
【0041】
励起光照射部430は、発電部420の発電により得られた電力により励起光を発生させて、画像記録体220に照射する。励起光照射部430は、回転部415に固定され、回転部415とともに回転しつつ、回転部415の回転により発生した電圧により励起光を照射する。これにより、励起光を照射のために屈折または反射させる構成の必要がなくなり、装置の構成を簡略化することができる。また、回転部415の回転運動から電圧を発生させるため、回転部内へ電力を供給するのが容易となり、摺動子等による送電を不要にし、装置寿命を長くすることができる。励起光照射部430は、リード線427、429、電圧調整部428、レーザ光源431、コリメートレンズ432、選択ミラー434、照射口435、集光レンズ436、回転ヘッド439を有している。
【0042】
電圧調整部428は、リード線427により発電部420に、リード線429によりレーザ光源431に接続されており、電圧を調整し、発電の電力をレーザ光源431に供給する。
【0043】
図7は、読取部400における励起光および輝尽光の経路を示す図である。読取部400は、励起光を発生させて、回転しつつ励起光を画像記録体220に照射する。読取部400は、レーザ光源431、コリメートレンズ432、選択ミラー434、および集光レンズ436を有している。
【0044】
レーザ光源431は、レーザ光を発生させる。回転部415に組み込むためには半導体を用いた小型のものが好ましい。選択ミラー434は、ダイクロイックミラーであり、赤色の励起光は透過させるが青色の輝尽光は反射する性質を有している。照射口435は、レーザ光を通過させ、励起光として画像記録体220に当てるとともに、画像記録体220が発する輝尽光を集光レンズ436まで通過させる。集光レンズ436は、輝尽光を集光し平行光線とする。
【0045】
検出部440は、励起光が画像記録体220に照射されて輝尽光を検出する。励起光が画像記録体に照射されることで放射された輝尽光を検出する検出部440は、フィルタ441および光電子増倍管443(PMP)を有している。フィルタ441は、赤色光をカットし、青色光を透過する。光電子増倍管443は、フィルタ441を透過した輝尽光を検出し、輝尽光の強度に応じた電圧を発生させる。なお、光電子増倍管443は、検出部440の構成の一例であり、必ずしもこれに限られない。
【0046】
次に、読取部400内および画像記録体220と読取部400との間における励起光および輝尽光の経路を説明する。レーザ光源431から照射されたレーザ光は、コリメートレンズ432により拡散ビームから平行ビームに変換される。そして、選択ミラー434、集光レンズ436を透過し、画像記録体220に当たる。画像記録体220は、励起光を受けると記録されたX線強度に応じた強度の輝尽光を発生する。輝尽光は集光レンズ436で集光され、平行光線となる。平行光線となった輝尽光は選択ミラー434で反射され、フィルタ441で赤色光がカットされる。フィルタ441を透過した輝尽光は光電子増倍管443により検出される。
【0047】
(画像記録体の位置合わせ)
図8は、画像記録体220の位置合せの方法を示す模式図である。図8に示すように、最初にホルダ被覆部120により支持部110に押圧することで画像記録体220の表面を第1の基準曲面に合せておいて、画像記録体220をスライドさせ、当接する一対のガイド部130により第2の基準曲面に合せることで画像読み取りが行われる。
【0048】
放射線画像読取装置は100、一対のガイド部130により画像記録体220の表面を、読取時に第2の基準曲面に合せる結果、精度の高い位置合せにより正確に放射線画像を読み取ることができる。また、放射線画像読取装置100は、画像記録体220の表面を第1の基準曲面に至るまでフィルム状ホルダ210および画像記録体220を弾性的に押圧し、固定位置に形成された一対のガイド部130で第2の基準曲面に合せているため、画像記録体220にかかる圧力を調整でき、わずかな圧力で押し付ける機構を持たせ、表面の損傷を防止することができる。
【0049】
このように1回の調整で面を出すのではなく、2段階で画像記録体220の面出しを制御するため、画像記録体220の表面の読み取り基準面(第2の基準曲面)における接触摩擦力を小さくさせることができる。第1の基準曲面は、画像記録体220が一対のガイド部130により押し返され、第2の基準曲面においてホルダ被覆部120が有する弾性材料により、ガイド部130に対して適当な圧力で押圧されるように、設定されている。
【0050】
(フィルム状ホルダの固定)
図9および図10(a)、(b)は、放射線画像読取装置100の断面図である。いずれも読み取り位置での断面を示している。図9は、ホルダ被覆部120を解放した状態を示している。フィルム状ホルダ210を設置する際には、ホルダ被覆部120の固定端側にフィルム状ホルダ210を差し込み、フィルム状ホルダ210にホルダ被覆部120を被せる。そして、ホルダ被覆部120の自由端を仮止めし、その後固定する。
【0051】
図10(a)、(b)は、それぞれホルダ被覆部120を仮止めした状態、固定した状態を示している。仮止めの状態では、ホルダ被覆部120の自由端側のバー121が、固定された仮止めフック128に係止されている。仮止めフック128が適正な位置に設けられているため、バー121は、レバー機構により取手126を上げたとき押さえフック127が当接する位置に仮止めされる。固定状態では、押さえフック127がバー121を引っ掛け、所定の位置までバー121を押し込み、ホルダ被覆部120を支持部110側へ押圧している。図示しないが、固定状態のホルダ被覆部120をたとえばソレノイドによる電磁ロック機構でロックしておくことが好ましい。その場合、閉じた状態のレバー機構の一端を電磁ロック機構で固定することができる。そして、操作パネルのオープンボタンが押されて所定時間ロックが外れ、所定時間経過後には自動的にロックがかかるように制御することができる。
【0052】
(放射線画像読取装置の電気的構成)
放射線画像読取装置100は、主に内部の制御部310による電気的な制御を行う。図11は、放射線画像読取装置100の電気的構成を示すブロック図である。放射線画像読取装置100は、制御部310、モータドライバ331、ステッピングモータ332、サーボモータドライバ341、読取用駆動部410、読取部400、検出部440、プリアンプ322、A/D変換部321、消去ランプ342、電源343、USB接続部344およびメモリ345を備えている。
【0053】
制御部310は、ユーザの操作に応じて各部を制御する回路である。制御部310は、モータドライバ331へモータ駆動のためのパルスを送信する。モータドライバ331は、制御部310から発信されるパルスを受けて、ステッピングモータ332を同期させて駆動させる。その結果、パルスに応じた速さで可動ユニット107をスライドさせ、画像記録体220を搬送することができる。このように、制御部310は、モータドライバ331を介してステッピングモータの駆動を制御している。その一方で、制御部310はサーボモータドライバ341を制御し、読取用駆動部410を回転させることで、読取部400を回転させる。また、画像記録体220からの輝尽光を検出部440で検出し、プリアンプ322で増幅し、A/D変換部321でデジタル信号に変換する。
【0054】
判定部311は、押さえフック127がホルダ被覆部120の自由端のバー121に連結しているか否かを判定する。その結果、制御部310は、押さえフック127がホルダ被覆部120の自由端のバー121に連結していないと判定されたときには、読取部400に電力を供給しない。これにより、誤って読取用のレーザが作業者に照射されることがなくなり、安全を確保することができる。この方法は、回転ヘッド439の回転によりモータを駆動し、発電機によりレーザを発生させる機構では特に有効である。従来の装置では、回路の異常により直接にレーザの電源が入り、一定位置にレーザが照射され続ける可能性があるが、放射線画像読取装置100では、読取用駆動部410が回転しない限り、レーザの電源が入らないため安全性に優れている。なお、制御部310は、押さえフック127がホルダ被覆部120の自由端のバー121に連結していないと判定されたときに、操作を無効にしてもよい。
【0055】
たとえば、ホルダ被覆部120の先端の取手が所定位置にあるか否かをフォトセンサかマイクロスイッチで検出することで、ホルダ被覆部120の開閉を検知し、ホルダ被覆部120が閉まっていないと、レーザの照射を不可にすることができる。具体的には、押さえフック127のレバー機構の一端に対してベース部109にソレノイドを設け、電磁ロック機構を構成するとともにノーマルクローズの回路を構成することができる。このようにして押さえフック127がホルダ被覆部120を固定していないときには回路が開いた状態となり、異常を検知する仕様とすることで、連動して動作する安全機構を実現できる。また、さらにレバー機構の一端がホルダ固定の位置にあるときに機械的にノーマルクローズの回路が閉じた状態になるように機械的な構成でさらに安全機構を多重にしてもよい。
【0056】
また、フィルム状ホルダ210の有無を検出する機構を有していてもよい。たとえば、フィルム状ホルダ210をホルダ被覆部120に設置したときに、フィルム状ホルダ210の有無を検知できるように支持部110またはホルダ被覆部120にフォトセンサを設けることができる。フォトセンサを設けることで、フィルム状ホルダ210が所定位置から傾いていることも検出することができる。
【0057】
プリアンプ322は、検出部440が検出した信号を増幅する。A/D変換部321は、プリアンプ322が増幅したアナログの検出信号をデジタル信号へ変換し、制御部310に信号を伝達する。USB接続部344はPC等とのインタフェースとして機能する。メモリ345は、高速に画像データを記憶することが可能なメモリである。PC等とともにメモリ345を併用することで、USBによるデータ転送のバックアップとして一時的に画像データを記憶しておくことができる。
【0058】
(装置の動作)
次に、放射線画像読取装置100の動作を説明する。図12および図13は、本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。まず、画像記録体220をフィルム状ホルダ210に接着し、フィルム状ホルダ210をホルダ被覆部120で覆い、第1の基準曲面に一致するように保持する。このとき、読み取り面以外の部分としてフィルム状ホルダ210を円筒形の支持部110の内段面112に沿わせて画像記録体220を曲げ、画像記録体220をフィルム状ホルダ210とともに半円形に曲げる。
【0059】
次に、読取部400を駆動して、図12および図13に示すように、可動ユニット107を一定速度でスライドさせ、画像の読み取りを行う。このとき、一対のガイド部130に画像記録体220の表面が当接することで押し返され、読取位置において第2の基準曲面に画像記録体220の表面が一致している。このようにして、正確に放射線画像を読み取ることができ、かつ、画像記録体220の表面に損傷が生じるのを防止できる。
【0060】
(フィルム状ホルダ)
図14(a)、(b)は、フィルム状ホルダ210を示す正面図および断面図である。フィルム状ホルダ210は、その本体部211の表面上に、プレート状の画像記録体220を保持するための一対のポケット213を有する。ポケット213は、画像記録体220の端部に勘合する空隙形状を有している。これにより、フィルム状ホルダ210の一端を一方のポケット213に差し込み、他端を曲げて他方のポケット213に差し込むことで、容易にフィルム状ホルダ210に画像記録体220を装着することができる。また、フィルム状ホルダ210から画像記録体220を簡単に外すことができる。
【0061】
ポケット213は、たとえば、画像記録体220と同じ厚さを有するプラスチック板を重ねて接着することで形成することができる。ポケット213は、放射線画像読取装置100への挿入方向の両端に設けられている。
【0062】
図15(a)、(b)、(c)はいずれもフィルム状ホルダ210および画像記録体220を示す断面図である。画像記録体220をフィルム状ホルダ210に装着する際には、画像記録体220の一端を一方のポケット213に挿入し、画像記録体220を湾曲させて、他端を反対側のポケット213に挿入する。このようにして、画像記録体220を動かないように保持することができる。
【0063】
異なるサイズの画像記録体220に対して、一対のポケット213の間隔をそれぞれの画像記録体220のサイズに適合させた複数のフィルム状ホルダ210を用いて読み取りを行うことも可能である。また、ポケット213の一方の位置を変更可能なフィルム状ホルダ230を用いて、任意のサイズの画像記録体220の読取が可能である。図16(a)、(b)は、フィルム状ホルダ230を示す正面図および断面図である。フィルム状ホルダ230は、小さいサイズの画像記録体220向けに作られたものである。フィルム状ホルダ210と同様に、本体部231において放射線画像読取装置100への挿入方向の両端にポケット233を有している。ポケット233は、画像記録体220の端部に勘合する空隙形状を有している。
【0064】
(撮影用ケース)
次に、画像記録体220を撮影に用いる際の実施形態について説明する。図17および図18は、画像記録体220とその撮影用ケース500を示す正面図である。図17および図18に示すように、画像記録体220を貼り付けたフィルム状ホルダ210を撮影用ケース500に入れて、撮影することが好ましい。撮影用ケース500とフィルム上ホルダ210を併用することにより画像記録体220の撮影面を手で触ることなく一連の撮影、読取の操作ができる。
【0065】
撮影用ケース500は、フィルム状ホルダ210を収納可能なサイズの箱状に形成されており、カバー、後方散乱防止シートを備えている。カバーは、たとえばプラスチック製であり、X線等の撮影用の放射線を透過する。画像記録体220を撮影用ケース500に挿入する際には、後方散乱防止シートが画像記録体220の裏面に位置する向きに挿入する。したがって、露光側と後面側の識別がしやすい構成であることが好ましい。撮影用ケース500は、スチール等を用いて、強固に形成されていることが好ましい。これにより破損を防止することができる。また、このような撮影用ケース500を用いることで、画像記録体220を平板状にした状態で撮影できる。
【符号の説明】
【0066】
100 放射線画像読取装置
105 固定ユニット
107 可動ユニット
109 ベース部
110 支持部
111 外段面
112 内段面
115 スライド部
120 ホルダ被覆部
121 バー
126 取手
127 押さえフック(ホルダ固定部)
128 仮止めフック(仮止め部)
130 ガイド部
131 不織布
135 スキャンガイド
210、230 フィルム状ホルダ
211、231 本体部
213、233 ポケット
220 画像記録体
310 制御部
311 判定部
321 変換部
322 プリアンプ
331 モータドライバ
332 ステッピングモータ
341 サーボモータドライバ
342 消去ランプ
343 電源
344 接続部
345 メモリ
400 読取部
405 読取台
410 読取用駆動部
411 サーボモータ
412 プーリ
413 ベルト
414 プーリ
415 回転部
420 発電部
421 固定用金具
422 ロータ
423 ステータ
424 ステッピングモータ
427、429 リード線
428 電圧調整部
430 励起光照射部
431 レーザ光源
432 コリメートレンズ
434 選択ミラー
435 照射口
436 集光レンズ
439 回転ヘッド
440 検出部
441 フィルタ
443 光電子増倍管
500 撮影用ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像が記録された画像記録体から画像読取を行う放射線画像読取装置であって、
画像記録体が保持されたフィルム状ホルダを支持し、画像読取時にスライドする支持部と、
前記支持部上で、一端が固定され、自由端側で前記フィルム状ホルダを被覆するホルダ被覆部と、
前記ホルダ被覆部の自由端に連結して前記フィルム状ホルダを前記支持部に固定するホルダ固定部と、
画像読取時にスライドする前記画像記録体の表面を基準曲面に合せるガイド部と、
前記基準曲面に合わされた画像記録体の表面から放射線画像を読み取る読取部とを備えることを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結できる位置で、前記ホルダ被覆部の自由端を仮止めする仮止め部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結しているか否かを判定する判定部と、
前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結していないと判定されたときには、前記読取部に電力を供給しない制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結しているか否かを判定する判定部と、
前記ホルダ固定部が前記ホルダ被覆部の自由端に連結していないと判定されたときには、操作を無効にする制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記ガイド部の表面は、不織布で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線画像読取装置で用いられるフィルム状ホルダであって、
本体の表面上に、プレート状の画像記録体をその両端で保持するための一対のポケットを有することを特徴とするフィルム状ホルダ。
【請求項7】
請求項6記載のフィルム状ホルダを用いた放射線画像の読み取り方法であって、
異なるサイズの画像記録体に対して、前記一対のポケットの間隔をそれぞれの画像記録体のサイズに適合させた複数のフィルム状ホルダを用いて読み取りを行うことを特徴とする放射線画像の読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−113066(P2012−113066A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260635(P2010−260635)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り ものづくりNext↑2010「非破壊検査フェア」、社団法人日本能率協会、社団法人日本プラントメンテナンス協会、財団法人製造科学技術センター、社団法人日本非破壊検査工業会、平成22年11月17日から平成22年11月19日
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】