説明

放射線硬化積層柔軟包装材及び放射線硬化性接着剤組成物

【課題】薬剤、食品、飲料等級の製品を包含するのに適した積層柔軟包装材(20)を提供する。
【解決手段】該積層柔軟包装材は、放射線硬化性貼合せ用接着剤組成物(24)により、他の柔軟包装材の少なくとも一層(22)と接着した柔軟包装材料の層(26)を含む。放射線硬化貼合せ用接着剤(24)は、一種以上の放射線硬化性カルボン酸官能性モノマーを少なくとも50%、及び、有機ジルコネート等を0.1〜20%含む、放射線硬化性貼合せ用接着剤組成物から調製される。また、一種以上の放射線硬化性カルボン酸官能性モノマーを少なくとも50%、及び、有機ジルコネート等を0.1〜20%含む、放射線硬化性貼合せ用接着剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化積層柔軟包装材に関するものである。また、本発明は、該積層柔軟包装材の形成において、使用するのに適当な放射線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柔軟包装は、食品、非食品、及び薬剤用に広く使用されている。柔軟包装には、プラスチックフィルム、紙、及びアルミホイルの様々な種類を含む、広範囲の異なった種類の材料を使用する。該プラスチックフィルムは、ポリオレフィン、ポリエステル、及びポリアミドの様々な種類を含む。該フィルムは、ホモポリマー、コポリマー、及びポリマーブレンドの様々な組合せであってもよい。該フィルムは、単一層であってもよく、又は同時押出し成形された多層であってもよい。また一般に、該フィルムは、得られる包装材の性能を高めるように被覆されるか、蒸着されるか、又は別の方法で処理される。包装材は、所望の遮断性、外観、コスト、高揚感、印刷適性、封止性、開封容易性、及び再密閉性を含む種々の要素に基づき選択される。
【0003】
柔軟包装材の2つの主類には:1)同時押出し成形フィルムのモノ−ウェブを含む、モノ−ウェブ包装;及び2)積層包装がある。大抵、積層包装は、得られる包装材の所望の特性を得るため、二つ以上のウェブを結合するのに都合よいという事実ために、望ましい。積層包装構造を使用する理由は:1)保護、及び良い外観を与えるため、層間に図画を加えるため;2)個々の層の遮断特性を利用して、製品の鮮度を維持するため;3)プリント用の熱安定性ウェブと、該包装材を封止するヒートシール性ウェブとを結合するため;4)消費者へのアピールを最大限にするように、所望の感触、及び取扱適性を与えるため;5)充填、配送、及び消費者の取り扱いの統合性を維持する目的で、包装強度を高めるためである。
【0004】
積層包装に使用される層を接着するため、幾つかの異なる技術が使用されている。積層技術には、押出し貼合せ、及び接着剤貼合せの二つの種類がある。押出し貼合せは、包装材の二つのウェブの間に、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂の層を溶かし、かつ溶着することを含む。一般に、積層柔軟包装材に使用される接着剤の異なる種類は:1)一成分の溶媒ベース;2)二成分の溶媒ベース;3)一成分の水ベース;4)二成分の水ベース;及び二成分の無溶媒を含む。
【0005】
溶媒ベース接着剤には固有の制限があり、該制限は:1)揮発性有機化合物(VOCs)の放出;2)溶媒の焼却、又は回収装置の高いコスト;3)可燃性;及び4)該包装材中の残留溶剤の分析、及び制御を含む。水ベース接着剤には固有の制限があり、該制限は:1)長期乾燥装置の必要性;2)熱感受性包装用フィルムの乾燥に使用する熱の影響;3)周囲の湿度値に依る乾燥速度の変化;及び4)接着剤を貼付け装置で乾燥しているため、開始、及び終了の困難性を含む。
すべての二成分系(溶媒ベース、水ベース、又は無溶媒)には固有の不利な点があり、:1)該二成分の正確な混合の必要性;2)該混合成分のポットライフの制限;及び3)最終の接着性に達成するように、該二成分の反応に必要とする時間遅延(一般に、2日〜5日。)を含む。二成分無溶媒接着剤に関連する、他の制限は、:1)貼付け装置を加熱する必要性;及び2)硬化システムに基づいた、イソシアネートの副生成物である、残余の毒性の芳香族アミンを含む。
【0006】
潜在的に、放射線硬化性接着剤は、これらの他の柔軟包装貼合せ用接着剤を越える、多くの利点を提供することができる。これらは:1)安定な一部分の組成;2)ほとんどないか、全くないVOCs;及び3)直ぐに硬化する、充満している接着剤能力を提供することができる。UV硬化性貼合せ用接着剤は、該接着剤を硬化するため、UV光を透過するのに十分に透明な包装材の少なくとも一層を必要とする。該接着剤を硬化するためにEB硬化は、不透明、又は印刷された包装材を透過できる付加的な利点を有する。
【0007】
放射線硬化性貼合せ用接着剤の開発における、重要な課題は:1)所望の包装材の貼付けに適切な接着性、及び耐薬品性を与えること;及び2)食品、及び薬剤の包装を可能にする、低臭気、低汚染、及び低移行性を有することである。一般に、インク、及び塗料のような放射線硬化性物質は、比較的低分子量である反応性モノマー、及びオリゴマーをベースとする。該成分は、UV、又はEB照射で、高分子量ポリマーに転化されるように設計される。該低分子量成分の高い転化率を達成することができる;しかし通常、多少の残存量のモノマー、又はオリゴマーが残る。これらの残存成分が、該包装材の臭気、汚染、及び移行の問題の原因となる。該放射線硬化性インク、及び塗料の技術では、柔軟積層包装材に伴う、同様の問題を取り組んでおらず、このため、当業者は、該問題を取り組むことが、積層物に使用する放射線硬化性接着剤に伴う問題に取り組む場合、該放射線硬化性インク、及び塗料の技術を調べるような動機はないであろう。
【0008】
食品包装の適用において、放射線硬化性材料の使用に関する問題の議論を、PCT出願番号WO02/081576(チャタジー(Chatterjee))に見ることができ、これを、本明細書中に、引用により取り込んでいる。チャタジーによって、開示された組成物は、水を含んでおり、放射線硬化性インク、又は塗料と取って代わる。これは、該水が、包装材の二層の間にトラップされるので、貼合せ用接着剤で行うことはできず、このため、チャタジーは、積層形成において使用する放射線硬化性接着剤に関連した該問題の取り組みにおいて、助けにはならない。
【0009】
放射線硬化性貼合せ用接着剤において、最初、該残存低分子量成分は、包装材の二層の間にある硬化した接着剤の中に見られる。アルミホイルのような一種の包装材は、よい遮断材であり、かつ食品、又は薬剤製品の中に、低分子量成分の移行を防ぐのに効果的である。ポリオレフィンベース材のような、他の包装材は、低分子量の有機化合物の移行に対して、遮断効果が低いことが知られている。従って、適当に硬化した場合、実質的に積層柔軟包装材の層を介した移行を減らすような、放射線硬化性接着剤物質が必要である。
【0010】
また、特に、該包装材が、高反応性液体、又はある活性を有する食品を含んでいる場合、柔軟包装材は、通常の使用の間、該層の離層の問題を有する。また、離層は、加工、又は包装の間の問題でもあり得る。これは、閉鎖、充填、封止、及び熱加工の付加を含み得る。従って、適当に硬化した場合、通常の使用の間、該層の離層を防ぐのに十分な接着力を示す、放射線硬化性接着剤物質が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2002/081576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、その内容物に、残存放射線硬化性モノマーの浸出がなく、かつ通常の使用の間に該層の離層を防止する十分な接着力を示す、放射線硬化積層柔軟包装材を提供することである。
【0013】
もう一つの目的は、その内容物に、放射線硬化性モノマーの浸出がなく、かつ通常の使用の間に該層の離層を防ぐのに十分な接着力を示す、積層柔軟包装材を形成するように使用することができる、放射線硬化性貼合せ用接着剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的、及び他の目的は、意外にも、カルボン酸官能性モノマー、及び有機チタネート化合物(チタン酸エステル、又はチタン酸塩)を配合した放射線硬化性貼合せ用接着剤を用いることにより達成される。本発明は、放射線硬化貼合せ用接着剤により、ともに接着された柔軟包装材の少なくとも二層を含み、薬剤、又は食品等級の製品を包含するのに適当な新規積層柔軟包装材を提供するものであり、ここで、該放射線硬化性貼合せ用接着剤は、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも50%、及び有機チタネート、有機ジルコネート(ジルコン酸エステル、又はジルコン酸塩)、有機アルミネート(アルミン酸エステル、又はアルミン酸塩)、及び有機亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種を約0.1〜約20%含む。有機チタネート、及び有機ジルコネートが、好ましく、有機チタネートが最も好ましい。
【0015】
また、本発明は、該放射線硬化性貼合せ用接着剤は、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートを少なくとも50重量%、及び有機チタネート、有機ジルコネート、有機アルミネート、及び有機亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種を0.1〜20重量%含む、新規放射線硬化性貼合せ用接着剤を提供するものである。有機チタネート、及び有機ジルコネートが、好ましく、有機チタネートが最も好ましい。また、本発明は、該柔軟包装材で包装された製品に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、放射線硬化積層柔軟包装材の横断面図を示す。
【図2】図2は、放射線硬化積層柔軟包装材の横断面図を示す。
【図3】図3は、放射線硬化積層柔軟包装材の横断面図を示す。
【図4】図4は、放射線貼合せ方法の側面図を示す。
【図5】図5は、包装された製品の横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(放射線硬化性貼合せ用接着剤)
該放射線硬化性貼合せ用接着剤(以下、“放射線硬化性接着剤組成物”と呼ぶ。)は、一種以上のカルボン酸官能性放射線硬化性モノマー(以下、“カルボン酸官能性モノマー”と呼ぶ。)を少なくとも50重量%含む。好ましくは、該放射線硬化性接着剤組成物が、一種以上のカルボン酸官能性モノマーを少なくとも80重量%、さらに好ましくは、一種以上のカルボン酸官能性モノマーを少なくとも90重量%含む。すべての重量%は、他に記述しない限り、放射線硬化性組成物の全重量に基づく。必要であれば、該放射線硬化性組成物は、従来のカルボン酸のない官能性モノマーを含むことができ、好ましくは、実質的に、該放射線硬化性接着剤の放射線硬化性モノマーのすべてが、少なくとも一個のカルボン酸官能基を含む。
【0018】
好ましくは、該放射線硬化性接着剤を使用して、放射線硬化積層体を形成する場合、該積層体が、50ppb未満の未硬化モノマーの抽出量を示すように、該カルボン酸官能性モノマーを選択する。実施例5に示すように、当業者は、容易にカルボン酸官能性モノマーを選択することができ、所望の柔軟包装材にとって、適当な抽出値を与えることができるであろう。
【0019】
好ましくは、該カルボン酸官能性モノマーが、約100〜約3,000の数平均分子量を有し、さらに好ましくは、約150〜約2,000の数平均分子量を有し、最も好ましくは、約200〜約1,500の数平均分子量を有する。カルボン酸官能性モノマーの最も単純な種類は、アクリル酸である。しかし、アクリル酸は、臭気、毒性、及び低分子量のため、望ましくない。従って、好ましい放射線硬化性接着剤組成物は、実質的にアクリル酸を含まない。
【0020】
当業者は、周知の反応機構に基づき、容易に所望のカルボン酸官能性モノマーを形成することができるであろう。例えば、ヒドロキシ官能基と無水物との間の周知の反応を用いて、ヒドロキシ官能基、及び所望の放射線硬化性官能基との両方を含む化合物を、無水物と反応させ、所望のカルボキシル化合物官能性モノマーを形成することができる。制限はないが、適切な無水物を挙げると、無水フタル酸;無水マレイン酸;トリメリト酸無水物;テトラヒドロフタル酸無水物;ヘキサヒドロフタル酸無水物;テトラクロロフタル酸無水物;アジピン酸無水物;アゼライン酸無水物;セバシン酸無水物;コハク酸無水物;グルタル酸無水物;マロン酸無水物;ピメリン酸無水物;スベリン酸無水物;2,2-ジメチルコハク酸無水物;3,3-ジメチルグルタル酸無水物;2,2-ジメチルグルタル酸無水物;ドデセニルコハク酸無水物;メチルナド酸無水物;オクテニルコハク酸無水物、及びHET無水物などがある。
【0021】
ヒドロキシ官能基、及び放射線硬化性官能基を含む該化合物(“ヒドロキシ官能性放射線硬化性化合物”)は、望ましい適用に適当な、所望のどの放射線硬化性官能基でも含むことができる。好ましくは、該放射線硬化性官能基は、不飽和エチレンを含む。適当な不飽和エチレンの例を挙げると、アクリレート、メタクリレート、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、N−置換アクリルアミド、−ビニルアミド、マレイン酸エステル、又はフマル酸エステルがある。好ましくは、該不飽和エチレンは、アクリレート、又はメタクリレート基により、与えられる。“(メタ)アクリレート”の用語の使用は、アクリレート、又はメタクリレートのどちらかであるか、又はこれらの混合物を示す。
【0022】
制限はないが、(メタ)アクリレート基を含む適当なヒドロキシ官能性放射線硬化性化合物の例を挙げると、次のものが含まれる:2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート;1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート;ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート;ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート;及び次式で表されるヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートである:
【0023】
【化1】

(式中R1は、水素原子、又はメチル基であり、かつnは1〜5の整数である)。市販されているものの例を挙げると、“Tone”プレポリマー(ドウ ケミカル(Dow Chemical))として売られているヒドロキシ末端(メタ)アクリレートプレポリマーがある。該(メタ)アクリレート化合物は、単一か、又はそれら二つ以上の混合物のどちらでも使用することができる。これらの(メタ)アクリレート化合物のうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ビニルエーテル官能基を有するヒドロキシ官能性放射線硬化性化合物の例を挙げると、例えば、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、及びトリエチレングリコールモノビニルエーテルがある。
【0024】
好ましくは、該放射線硬化性官能基は、アクリレート、又はメタクリレートであり、アクリレートが最も好ましい。特に好ましい、カルボン酸官能性モノマーは、次式で示される2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とコハク酸無水物との反応生成物である。
【化2】

【0025】
また、所望であれば、該カルボン酸官能性モノマーを、適当なジカルボン酸官能性化合物とヒドロキシ官能性放射線硬化性化合物との反応により形成することができる。しかし、この方法は、ヒドロキシ基とカルボン酸基との反応の間、水が生成するので、好ましくなく、該放射線硬化性接着剤組成物のカルボキシル化合物モノマーを用いる前に、水を取り除かなければならない。
【0026】
また、カルボン酸官能性モノマー、及びオリゴマーを、ポリアンヒドリド、及び/又はポリオールの種々の組み合わせにより、形成することができる。また、好ましくはないが、アクリル酸のオリゴマー形態を、該カルボン酸官能性モノマーとして使用することができ、例えば、アクリル酸を、周知の自己付加反応により、二量体化、又は三量体化し、該オリゴマーを形成することができる。安定な二量体化合物は、ベータカルボキシエチルアクリレート(“BCEA”)である。しかし、通常、BCEAは、残存量のアクリル酸を含むので、好ましくない。
【0027】
当業者は、所望の適用において、適当な粘度を与えるように、容易に放射線硬化性接着剤組成物を配合することができるであろう。通常、該ウェブへの塗布を容易にするように、適用温度において、該放射線硬化性接着剤組成物の粘度を低く(例えば、約3,000センチポアズ以下に)すべきである。通常、該適用温度は、室温(25℃)である。しかし、より高い適用温度を、所望のように、利用することができる。好ましくは、該カルボン酸官能性モノマーは、希釈モノマーの使用を避けるため、低い粘度を有し、柔軟包装材の層に、該放射線硬化性接着剤を塗布するのに適当な粘度を与える。該カルボキシル化合物官能性モノマーの適当な粘度は、適用温度で、約50〜約10,000センチポアズであり、さらに好ましくは、適用温度で、約100〜約5,000センチポアズである。
【0028】
また、カルボン酸官能性モノマーの特定の組合せは、これらの接着性を向上させ、かつ移行性を減少させるので、有用であることが見出されている。特に、ヒドロキシアクリレートと置換アルケンコハク酸無水物、又はフタル酸無水物との反応から形成されたモノマーは、完成した積層体の耐水性を改善するような配合において有用である。該モノマーを、様々な割合で使用することができる。好ましい割合は、実施例5に示すように、接着する特定の材料に依存するであろう。当業者は、本明細書の記述に基づき、過度の実験をすることなしに、容易にカルボン酸官能性モノマーの適当な組合せを選択することができ、選択した柔軟包装材の層に、所望の移行性、及び接着性を与えることができるであろう。
【0029】
該放射線硬化性接着剤を、可視光、紫外光などに曝すことにより硬化するように配合する場合、該硬化速度を高める重合開始剤として、一種以上の光開始剤、及び/又は光増感剤を使用することができる。制限はないが、適当な光開始剤、及び光増感剤の例を挙げると、:2,2'-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-ターシャリー−ブチベンゾオキサゾール);1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン;キサントン;フルオレノン;アントラキノン;3-メチルアセトフェノン;4-クロロベンゾフェノン;4,4'-ジメトキシベンゾフェノン;4,4'-ジアミノベンゾフェノン;ミヒラーケトン;ベンゾフェノン;ベンゾインプロピルエーテル;ベンゾインエチルエーテル;ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン;メチルベンゾイルギ酸チオキサントン;ジエチルチオキサントン;2-イソプロピルチオキサントン;2-クロロチオキサントン;2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン;及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドがある。市販されているものの例を挙げると、IRGACURE 184、369、500、651、819、907、及び2959、及びDarocur 1173(シバ ゲイジー(Ciba Geigy));LucirinTPO(ビーエーエスエフ(BASF));及びEbecryl P36、及びP37(ユーシービー社(UCB co.))がある。
【0030】
好ましくは、光重合開始剤を、該放射線硬化性接着剤組成物に利用する。さらに、該光重合開始剤の使用は、光開始剤、又は該光開始剤の残存物の移行の可能性を減少させる。制限はないが、適当な光重合開始剤の例を挙げると、市販のKIP100、KIP150、及びEsacureKK(ランベルチ(Lamberti))がある。
【0031】
所望であれば、一種以上の光開始剤、及び/又は光増感剤を、全組成物の約0.1〜約10重量%の量で、該放射線硬化性接着剤塗料中に混合することができる。もし、電子ビームに曝し、ラジカル硬化システムを利用するように、該放射線硬化性接着剤組成物を配合するならば、一般に光開始剤は有益でない。しかし、カチオン硬化システムにおいては、電子ビームで硬化を行う場合でさえ、光開始剤は有益である。本明細書の記述に基づき、放射線硬化性接着剤組成物を配合する当業者は、過度の実験をすることなしに、所望の適用のために、容易に適当な硬化システムに従って配合することができる。
【0032】
また、該放射線硬化性接着剤は、放射線硬化性オリゴマーを含むことができる。通常、モノマーの分子量に関して、これらのより高い分子量のため、オリゴマーは、移行とは関係がない。(メタ)アクリレート官能性オリゴマーが、好ましい。制限はないが、これらは、エポシキ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートを有するアクリル系誘導体オリゴマー、及び商品名Sarbox(Sartomer)で販売されている、マレイン酸無水物の共重合体をベースとした、(メタ)アクリレートを有するオリゴマーを含む。
【0033】
一種以上のチタネート化合物を混合することにより、積層構造において、適切に硬化させる場合、改善した接着強さ、及び改善した耐水性を与えるように、該接着剤組成物を配合することができる。多種のチタネート化合物を使用することができるが、特定のチタネートは、カルボン酸官能性モノマーの存在において、これらの安定性のため、好ましい。また、特定のチタネートは、優れた接着性を与える。チタネート化合物の有用な水準は、該組成物の全重量に基づき、約0.1〜約20重量%であり、好ましくは、約1〜約15重量%である。
【0034】
有機チタネートは、周知の化合物種である。有機チタネートの二つの主な種は、トレトラアルキルチタネート、及びチタネートキレートである。テラアルキルチタネートは、一般構造 Ti(OR)4を有し、ここで、Rは、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール等のような、有機アルコールの残基である。該チタネートキレートの有機部分は、チタンに配位することができる、一以上の活性なサイトを有する。チタネートキレートの有機部分の例を挙げると、トリエタノールアミン、アセトアセトナト、及びエチルアセトアセテートがある。有機チタネートの議論は、デュポン(DuPont)から入手できる商品名Tyzor製品の一般小冊子(General Brochre for Tyzor)が役に立つ。
【0035】
有機チタネートの商業的な使用がいくつか知られている。これらは、エステル化反応の触媒、有機及び無機材料の表面改質、ゲル−ゾルの形成試薬、及びポリマーの架橋剤を含む。本発明の放射線硬化性貼合せ用接着剤組成物において、該有機チタネートの使用は、今まで知られていない。
【0036】
本発明は、包装材に塗布する放射線硬化性貼合せ用接着剤において、有機チタネート化合物の混合に関するものである。特に、カルボン酸官能性モノマーをベースとし、有機チタネート化合物を混合することの利点を見出している。該有機チタネート化合物の主な利点は、該積層包装材において、防湿性、及び耐薬品性とともに、強い接着を与えることである。
【0037】
カルボン酸官能性モノマーを混合している有機チタネートの市販例を挙げると、KR 39DS(ケンリッチ ペトロケミカルズ(Kenrich Petrochemicals))がある。この有機チタネートは、三個のアクリル酸基、及び一個のジエチレングリコールモノメチルエーテル基を有する。しかし、このチタネートを、添加したカルボン酸官能性モノマーを含む接着剤配合物に混合した場合、該酸性基は、遊離のアクリル酸を出し、平衡に達するであろう。アクリル酸は、臭気、毒性、及び低分子量の問題のため、望ましくなく、むしろ避けるべきである。
【0038】
我々は、実質的にアクリル酸を含まないカルボン酸官能性モノマーをベースとした有機チタネート化合物の使用が有利であることを見出している。これらは、先に記述したヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応生成物であるカルボン酸官能性モノマーを含む。
【0039】
所望の有機チタネート化合物を、該カルボキシル化合物官能性モノマーとアルキルチタネートとの反応により、形成することができる。これは、対応するアルキルアルコールの置換、及び蒸発を含む。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレートとコハク酸無水物とのハーフ−エステルを、テトライソプロピルチタネートとともに反応させてもよい。この反応は、イソプロピルアルコールの蒸発を駆動としている。一部の例では、キレート基、及びアルキル基の両方を有する有機チタネートを使用することが望ましい。例を挙げると、ビス−トリエタノールアミンジイソプロピルチタネートがある。この場合、該イソプロピルアルコール基のみが、該カルボン酸モノマーに置換されるだろうと予想するであろう。
【0040】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート−無水物ハーフ−エステルとアルキルチタネートとの反応により形成されたこれらの化合物は、新規物質である。該新しいカルボンモノマーチタネート化合物を、実施例1に示すように調製し、かつ単離してもよい。あるいは、これらの化合物を実施例3〜7に示すように、カルボン酸官能性モノマーを含む、該接着剤配合物中に、所望の有機チタネートを混合することにより、現場で形成してもよい。通常、食品の適用にとって、該接着剤の中に、遊離アルキルアルコールが存在することは望ましくない。このような場合、該混合物を減圧下、加熱、混合、散布、又は加工することにより、該混合物から該アルコールを消散させることができる。
【0041】
また、該有機チタネートの代わりに、有機ジルコネート、有機アルミネート、及び/又は有機亜鉛が、接着剤組成物の存在下、改善した接着性を与えるであろう。しかし、有機チタネート、及び有機ジルコネートが好ましく、有機チタネートが最も好ましい。また、放射線硬化性接着剤は、該組成物中に、添加剤、例えば、充填剤、フロー剤、消泡剤、顔料、染料、又は、分散された、又は可溶化された樹脂状物質を含んでいてもよい。そのような添加剤の選択、及び使用は、当該技術中の範囲内である。
【0042】
適当に硬化した場合、本発明で使用される該カルボン酸官能性モノマーは、ポリオレフィン保護フィルムのような、低い表面エネルギーの層に対し、十分な接着性有する予期しない組合せであり、離層を防ぎ、かつ実質的に、未硬化フリー−モノマー形態で層を通る移行を防ぐことが見出された。
また、該放射線硬化性接着剤組成物は、後述するような、改善した積層柔軟包装材の形成に使用することができる。
【0043】
(積層柔軟包装材)
該積層柔軟包装材の形成は、周知であり、かつそれゆえ、本明細書中では、詳細に議論しない。従来の技術を使用し、かつ従来の貼合せ用接着剤を、本明細書中に記述した該放射線硬化性貼合せ用接着剤に置き換え、本明細書中に記述した該新規積層柔軟包装材を、容易に製造することができる。該放射線硬化性接着剤を塗布する好ましい方法は、ロール塗布、グラビア、オフセットグラビア等のような、周知のウェブ塗布法の使用を含む。所望のように、該接着剤を、プリントとともにインライン、又は個々の積層において、オフラインで塗布し、硬化してもよい。
【0044】
ポリオレフィンのような、低い表面エネルギーの層を使用する場合、好ましくは、接着した該層の表面を、接着性が高まるように、表面処理する。表面処理は、周知であり、かつ従来のどの表面処理方法でも、特定の適用において、所望のように使用することができる。適当な表面処理方法の例を挙げると、コロナ処理、化学的処理、プラズマ、及び火炎処理がある。好ましくは、ポリオレフィンベースの層を利用する場合、放射線硬化性接着剤を用いて接着する前に、最初、コロナ処理、又は火炎処理を、該表面に適用する。
【0045】
該積層柔軟包装材を、図1〜3を参照して記述する。図1〜3に示すように、該積層柔軟包装材20は、該新規放射線硬化接着剤24により、柔軟包装材第一層26に積層した、少なくとも一層の柔軟包装材第二層22を含み、ここで、層26は、完成した包装材の内側になる層である。また、該積層柔軟包装材20は、所望のように、他の層を含むことができる。制限はないが、該少なくとも一層の第二層22、及び第一層26の適当な材料の例を挙げると、紙、アルミホイル、蒸着フィルム、被覆フィルム、プリントフィルム、同時押し出し成形フィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンベースフィルム、白色のポリオレフィンベースフィルム、ポリアミドベースフィルム、コポリマーフィルム、及び種々のポリマーブレンドを含むフィルムがある。好ましくは、該第一層26は、ポリオレフィンベースである。
【0046】
本明細書中で記述した該放射線硬化性貼合せ用接着剤を、改善した積層柔軟包装材を供給するように使用することができ、実質的にモノマーの移行による汚染の問題を軽減する。該放射線硬化性接着剤組成物のカルボン酸モノマーは、従来の放射線硬化性接着剤に使用されるモノマーよりも、該柔軟包装材(特にポリオレフィン)の層を通る移行が、十分に低いことが見出されている。また、使用の間に該積層柔軟包装材の離層を防ぐために適当に硬化させた場合、本発明に使用される該カルボン酸モノマーは、多種の包装材に対し、十分な接着性を与えることが見出されている。
【0047】
本明細書中で記述した該放射線硬化性接着剤組成物を、塗布し、かつ従来の技術(例えば、該層を直接通る中圧水銀ランプのUV光)を使用して、硬化することができる。該放射線硬化性接着剤組成物の硬化に、紫外(UV)光を使用する場合、実質的に、該UV光を吸収、又は遮蔽により、該放射線硬化性接着剤の硬化を妨げることがなく、又は抑制することのない高分子材料を選択するべきである。従って、UVでの硬化が望む場合、好ましくは、該第二層22、又は該第一層26の少なくとも一層は、実質的に透明である。実質的に透明な層22を、適当な、どの材料からでも形成することができる。実質的に透明である、適当な高分子材料の例を挙げると、ポリオレフィン、ポリエステル、及びポリスチレンがある。好ましくは、該層22は、ポリオレフィンから形成される。
【0048】
代わりに、電子ビーム照射(EB)を、該放射線硬化性接着剤組成物の硬化に、使用してもよい。EBでの硬化を利用する場合、該層22、及び該層26は、実質的に透明である必要はない。制限はないが、ポリオレフィンを該層22に使用する場合、及び/又は好ましい層26に使用するのに適当なポリオレフィン例を挙げると、エチレン、ブチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン等のホモポリマー、又はコポリマーがある。好ましいポリオレフィンベースフィルムは、ポリプロピレン、及び高密度ポリエチレン(HDPE)、又は線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリイソブチレン(PIB)のようなポリエチレンを含む。二軸延伸(BOPP)、又は延伸ポリプロピレン(OPP)のような、ポリプロピレンの延伸形態を、所望のように使用することができる。
【0049】
所望であれば、層22、又は層26に使用する該ポリオレフィンを、遮断、取扱、外観、又は封止性を高めるように、他の物質を用いて、被覆、ブレンド、コポリマー化、又は同時押出し成形することができる。これらの改質は、該層22、又は26にとって、“ポリオレフィンベース”、及び“ポリオレフィン含有”の定義で含まれる。一般の被覆は、ポリビニリデンクロライド(PVdC)、アクリル系誘導体ベースの被覆、及び種々の他の遮断、及びヒートシールの被覆を含む。また、該ポリオレフィンは、真空蒸着法を使用し、金属の薄層を受けることができる。柔軟包装のフィルムを製造するために使用する一般のポリオレフィンコポリマーは、エチレンとビニルアセテート(EVA)、及びエチレンとビニルアルコール(EVOH)、エチレンとアクリル酸、エチレンとエチルアクリレートのコポリマーを含む。これらの改質の多くが公知であり、ポリオレフィンの遮断性を改善するという事実にもかかわらず、今でも、包装された製品の不快臭、臭気を防ぐような耐移行性貼合せ用接着剤が望まれている。
【0050】
さらに、積層柔軟包装材の使用における適当な層の例を、米国特許第5,399,396号で明らかにしており、本明細書中に引用により取り込んでいる。他の適当な層が、ダイアン・テュウェド(Diane Twede)、及びロン・ゴダード(Ron Goddard)の“Packaging Materials”第2版、Pira International、Surry、UK 1998に記載されている。
【0051】
積層柔軟包装材の他の例を、図2に示す。該積層柔軟包装材は、その内表面上に裏面プリント28であるポリオレフィンを含む透明な層26を含み、かつ次いで該放射線硬化性接着剤組成物24を用いて、層22を接着する。この型の包装材において、該プリント材は、該包装材の内表面上で読めるようにする。
【0052】
図3に示すように、積層柔軟包装材のもう一つの例は、その内表面上に裏面プリント28である透明な層22を含み、かつ次いで、放射線硬化性接着剤組成物24を用いて、層26を接着する。この型の包装材において、該プリント材は、該包装材の外表面上で読めるようにする。
【0053】
図には示さないが、さらに、積層柔軟包装材の例を挙げると、その外表面上にプリント材を有する白色のポリオレフィン層に、該放射線硬化性接着剤組成物を用いて、ともに接着された透明な層がある。該プリントを、周知のインク、及び/又は電子写真技術のような、従来のどの方法を使用しても行うことができる。好ましい方法は、連続ラインにおいてプリントを貼る、フレキソ印刷機、又はグラビア印刷機を使用することを含む。
【0054】
該層22、層26、及び接着層24を、特定の適用において所望のように、どの厚さにでも作成することができる。例えば通常、該層22は、約0.1〜5ミルの厚さであり、好ましくは、約0.3〜3ミルの厚さである。通常、該接着層24は、約0.03〜約1ミルの厚さであり、好ましくは、約0.05〜約0.2ミルの厚さである。通常、該層26は、約0.1〜約5ミルの厚さである。
【0055】
該積層柔軟包装材を、従来のどの方法を使用しても、形成することができる。図4には、2-層柔軟積層包装材、及び任意の3-層柔軟積層包装材を形成する、放射線貼合せ方法の例を示す。本発明の放射線硬化性接着剤を使用し、多くの層を共に接着することができる。
【0056】
柔軟包装材の第一層101の巻きを解く。該第一層101を、ロール、又は該包装材に図画を貼るために使用される印刷機から、直接供給することができる。接着剤塗料103を、塗りローラー102を用いて、該層101に塗り、接着剤塗料層104を形成する。これは、簡易化した図である。約6ローラーまで用いる方法を含む、多種の型のロール塗布法を使用することができる。該接着剤塗料103を入れている接着剤溜めは、開閉することができる。また、湿潤接着剤を、供給システムから汲み出すことができる。該接着剤103、及びローラー102を含む該接着剤塗布システムを、周囲温度にするか、又は所望の塗布重量、及び流動性にし、促進するように加熱してもよい。
【0057】
柔軟包装材の第二層105の巻きを解き、かつニップローラー106を使用して、該接着剤塗料層104に貼付け、2-層積層体107を形成する。該ニップローラー106を、例えば、ゴム、スチール、及びセラミックを含む、種々の異なる物質で作ることができる。最高の性能、及び外観になるように、ロール圧力を、設定することができる。該ローラー106を周囲温度にするか、又は加熱してもよい。
【0058】
任意の第二積層接着剤塗りローラー108を、第二接着剤塗料109を塗布するように使用することができ、該積層体107上に、接着剤塗料110を形成する。任意の柔軟包装材の第三層111の巻きを解き、かつ任意の第二セットの積層ニップローラー112を用いて、該接着剤塗料110に貼付け、3-層積層体113を形成する。
【0059】
次いで、電子ビーム発生装置、又はUVランプ装置114が、該積層体113に、加速電子をあてるか、又はUVを照射して、該接着剤塗料104、及び/又は110の少なくとも一つを硬化する。もし、UVを使用するならば、該柔軟包装材の層は、該接着剤を硬化するため、少なくとも一部分で、UVを透過させなければならない。加速電子は、不透明な包装材の層を通ることができるので、不透明、又はプリント材には、EBを使用することができる。該接着剤を硬化するため、EB加速ポテンシャルは、少なくとも該包装材の層を透過するように十分に高くすべきである。該装置は、作業者が、該UV光、又はEB発生に関連した二次X線に曝されないように遮蔽すべきである。任意の予備ローラー、又はビームダンプ116を、硬化方法の過剰な熱を抑制するため、冷却することができる。
【0060】
エネルギーサイエンス社(Energy Science Inc.(ESI))、及びアドバンスドエレクトロンビームス(Advanced Electron Beams(AEB))を含む多数の業者が市販している、電子ビーム発生装置を利用することができる。該包装材中への電子の透過は、該ビームの加速ポテンシャルにより決まる。一般に、大抵の柔軟包装材の貼合せにとって、約60〜250 KVのポテンシャルの範囲が適当である。好ましくは、約70〜170 KVの範囲である。該材料に対し適用する全電子ビームエネルギー(線量)を、Mradの単位で測定する。本発明の接着剤の硬化には、線量約0.5〜6.0 Mradの範囲が適当である。好ましくは、線量約1.0〜4.0 Mradの範囲である。
【0061】
硬化積層体117を、任意の後硬化ウェブ加工に進ませることができ、通常、該加工は、トリミング、スリッチング、及び/又はシーチングを含む。該硬化積層体117を、包装材の積層ウェブに対し、ロール119を形成するように、巻き戻すことができる。好ましくは、接着剤104、及び110の両方は、本発明の放射線硬化性接着剤である。しかし、所望であれば、該接着剤の一つは、非放射線硬化性であってもよい。多層積層体において、接着層の少なくとも一層は、本発明の放射線硬化性接着剤を含まなければならない。放射線硬化性接着剤を、硬化装置114の前に塗布しなければならない。非放射線硬化性接着剤は、硬化装置114の前、又は後に塗布することができる。これは、実例の目的のための簡易化した図である。通常、他のウェブ処理、洗浄、取扱、及び塗料付属物は、部分、又は該方法である。
【0062】
迅速なEB、又はUV硬化は、すばやいインライン加工を可能にする。しかし、他の種の貼合せ用接着剤を用いたインライン加工は、該接着剤が、短時間で十分に硬化しないため、困難である。該改善した積層柔軟包装材を、飲料、薬剤、医療用及び歯科用装置、及び食品を包むのに使用することができる。好ましい例を挙げると、スナック食品の包装、混合即席の乾燥食品、食肉の包装、チーズの包装、及びフレーバー飲料の容器がある。また、非食品工業、又は消費者包装に、該改善した積層柔軟包装を使用することが、望ましいであろう。非食品への使用に対し、風味、又は、及び移行は関係ないかもしれないが、これらの新しい放射線硬化性貼合せ用接着剤を用いて達成された、迅速な接着、及び耐離層性が、所望されるであろう。工業、及び消費者非食品への用途例を挙げると、ウェット、及びドライワイプ製品の包装がある。
【0063】
該包装は、従来のどの方法を使っても形成することができる。該柔軟包装材122の中にある、包装された物質120の横断面図を、図5に図示する。該柔軟包装材122のエッジ124を、所望のように、接着剤を使用するヒートシール法、又はコールドシール法のような、従来のどの封止方法を使っても、封止することができる。
【0064】
さらに次に、次の制限的でない実施例、及び比較例を参照して、本発明を記述する。該放射線硬化性接着剤組成物のカルボン酸官能性モノマーの移行を、食品工業規格を用いてテストしている。該テストの結果は、該カルボン酸官能性モノマーの積層柔軟包装材の層を通る移行が、従来の放射線硬化性接着剤に利用されているモノマーよりも十分に低い程度であることをはっきりと示した。従って、該改善された放射線硬化性接着剤組成物は、未硬化モノマーの柔軟包装層を通る移行、及び包装された製品内容物への未硬化モノマーの汚染の危険性を十分に減らした接着層を提供することができる。
【0065】
また、テストの結果は、本発明の放射線硬化性接着剤が、適当に硬化する場合、改善した接着性、及び耐離層性を(特に流動性がある場合に)示すことを明らかにした。次の実施例により、本発明の新しい、及び改善した接着剤組成物を説明する。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、及びコハク酸無水物とのハーフ−エステルであるカルボン酸官能性モノマー(HEA-スクシネートモノマー)4.4モル当量と、チタニウムテトライソプロキシド1.0モル当量との反応により、UV/EB硬化性チタネート化合物を調製した。該混合物を減圧下、加熱することにより、イソプロピルアルコールを取り除いた。得られた生成物は、粘性の高い、赤みを帯びた透明な液体であった。乾燥灰を加熱することにより、TiO2として重量測定し、決定したチタン含有量は、4.8%であった。これは、予測したチタン含有量の理論値4.8%と正確に一致しており、該生成物が、該チタネート1モルにつき、4モルのHEA-スクシネートが結合している新しいチタネート化合物であることを示す。
【0067】
(実施例2)
実施例1の該有機チタネート化合物を、表1に示す接着剤配合物中に用いた。比較として、”A”の配合物には、チタネートを入れなかった。各接着剤の薄膜約0.1ミルを、様々な柔軟包装材の層に貼り付けた。柔軟包装材の第二層に、該湿潤接着剤を塗り、かつ得られた積層体をEB照射(165 kV、線量3.0 Mrad)により硬化させた。得られた積層体の接着強さを、T型剥離配置において、30.48 cm(12インチ)/分のスピードで、引張試験装置を用いて測定した。下の表に、その結果を示す。その結果は、該チタネート化合物の存在下、oPP/蒸着oPPの積層体の接着強さが強まることを示している。また、その結果は、該チタネートが、該二つのポリエステル(PET)フィルム層の耐水性を改善していることを示している。
【0068】
【表1】

【0069】
(実施例3)
一連のチタネート化合物を、表2に示すようなUV硬化性貼合せ用接着剤に混合した。ポリプロピレンフィルムに、該接着剤を約0.2ミルの厚さで塗布した。ポリプロピレンフィルムの第二層を、該湿潤接着剤の上に配置した。次いで、積層体を形成するように30.48 m(100フィート)/分のコンベアー速度で、300 w/0.025 m(1インチ)の中圧水銀アークランプを用い、フィルムの先端からUVを曝露し、該接着剤を硬化させた。該積層体の接着強さを、T型剥離試験により測定した。その結果は、該チタネートが存在するすべての場合において、接着強さの大幅な増加を示している。安定性について、室温で、一ヶ月間保管できることを確認した。トリエタノールアミンチタネートを含む混合物は、液体のままであり、沈殿はなく(ppt)、かつ粘性の顕著な変化はなかった。
【0070】
【表2】

【0071】
(実施例4)
トリエタノールアミンチタネートを4.0パーセントまで、ベンゾフェノン二無水物1当量とカプロラクトンベースのヒドロキシアクリレート(Tone M-100)2当量との反応生成物である、二官能性モノマーを10パーセントまで、及び二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー(Sartomer CN 973)を15パーセントまで含む、接着剤組成物を評価するための実験計画を行った。該配合のバランスを、HEA-スクシネートモノマーから構成した。該テストの配合物を、オフセットグラビアコーターを用いて、内側の包装層のウェブ上に塗布した。該接着剤の重量を、0.54+0.09 kg(1.2+0.2ポンド)/278.7 m2(3,000 ft2)に調節した。外側の包装材のウェブを、該湿潤接着剤にはさんだ。次いで、移動ウェブに電子ビーム(165 kV、線量3.0 Mrad)を曝露し、該積層体を硬化させた。該積層体の接着強さを、T型剥離試験により測定した。T型剥離データ分析から得た最適な接着剤配合を、表3に示す。その結果は、該接着剤配合物中のチタネート化合物の利点を示している。
【0072】
【表3】

【0073】
(実施例5)
2-ヒドロキシアクリレート(HEA)と、酸無水物とのハーフ−エステルであるモノマーの異なる3種を含む接着剤組成物を評価するための実験計画を行った。3種の無水物は、コハク酸無水物、フタル酸無水物、及び2-ドデセニルコハク酸無水物(DSA)とした。該組成物は、HEA-スクシネートを少なくとも20%、HEA-フタレートを80パーセントまで、HEA-DSAを80パーセントまで、及びトリエタノールアミンチタネートを8%まで含ませた。また、すべての組成物には、フッ素系界面活性剤を0.2%含ませた。該接着剤を、実施例4に記述した方法で、塗布し、かつ硬化させた。0.025 m(1インチ)幅の細長い一片を1時間水中に浸漬した後、直ぐにT型剥離試験を行うことにより、該積層体の耐水性を測定した。T型剥離データ分析から得た最適な接着剤配合を表4に示す。また、比較として、96%のHEA-スクシネート、4%のトリエタノールアミンチタネート配合物のT型剥離の結果を示す。その結果は、耐水性の改善を達成するためには、該配合物中にHEA-スクシネート、及びHEA-ドデセニルスクシネートモノマーを有することが有意であることを示している。
【0074】
【表4】

【0075】
(実施例6)
HEA-スクシネートを94.9重量%、トリエタノールアミンチタネートを4%、及びフッ素系界面活性剤を0.1%を含む、接着剤配合物を調製した。エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、及び線形低密度ポリエチレン(LLDPE)とをベースとする同時押出し成形した包装用フィルムのウェブ上に、該接着剤を塗布した。ポリエステル(PET)包装用フィルムのウェブを、該湿潤接着剤にはさみ、かつ電子ビーム(110 kV、線量3.0 Mrad)を用いて、該PET側を通して、移動ウェブを曝露することにより、該接着剤を硬化させ、積層体を形成させた。66℃で2時間、続いて40℃で238時間、Miglyol 812を用いて、該積層体を、該LLDPE側から抽出処理した。このプロトコルは、食品に適用する包装材の適性をテストする方法として、FDAにより認可されている。該テストを、独立の試験所で、3連で行い、かつ適切なコントロールで確認した。検出限界50 PPBで、抽出物において、接着剤成分は検出されなかった。
【0076】
(実施例7)
表5に示すような、5種の接着剤配合物を調製した。該接着剤を、0.7ミルの延伸ポリプロピレン(oPP)フィルムの二層の接着に使用した。該接着剤を、実施例4に記述した手順を用いて、塗布し、かつEBで硬化させた。該oPPフィルムを分離するすべての試みは、該oPPフィルムが直ぐに裂けてしまう結果を得た。これは、該接着剤の優れた接着を明らかにしている。該貼合せフィルムを、積層領域の各6.5 cm2(各1.0平方インチ)に対して95%のエタノールを10ミリリットル含んだ片面テストセルに積み重ねた。該積層体を、40℃で、10日間抽出した。これは、食品の適用において使用する、包装材の適性を決める方法として、FDAにより認可されているテストプロトコルである。3種の接着剤成分の抽出の結果を、表5に示す。本実施例から明らかとなった重要な点は:1)低い抽出量を達成するための、高水準のカルボン酸モノマーの重要性(A、B、Cの全カルボン酸官能性モノマーは、D(59.8%)、E(39.8%)と比較して、91.8%である。);2)該配合物中に、多数のカルボン酸官能性モノマーを用いる利点(A対B、及びCの抽出量の結果を比較);及び3)抽出されたトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)モノマーの高水準は、該カルボン酸官能性アクリレートモノマー(HEA-スクシネート、及びHEA-フタレート)の極低い抽出量に関連する。本実施例における、該カルボン酸官能性モノマーは、一官能性であるが、TMPTAは、三官能性モノマーである。当業者は、多官能性物質に伴い、より低い抽出量になることを予想するであろう。このように、該低抽出量のカルボン酸官能性モノマーは、意外なことであり、予期しなかったことである。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例8)
HEA-スクシネートモノマーをベースとする有機ジルコネート化合物は、実験名称TLF-9566として、デュポン(Dupont)により調製された。この有機ジルコネートを、表6に示す接着剤配合物中に用いた。比較として、“A”の配合物には、該ジルコネートを入れなかった。各接着剤の薄膜(約0.1ミル)を、様々な柔軟包装材の層に塗布した。柔軟包装材の第二層に、該湿潤接着剤を塗り、かつ得られた積層体をEB照射(165 kV、線量3.0 Mrad)により硬化させた。得られた積層体の接着強さを、T型剥離試験で決定した。その結果を表6の下に示す。その結果は、該ジルコネート化合物の存在下、oPP/蒸着oPPの積層体の接着強さが強まることを示している。また、その結果は、該ジルコネートが、該二つのポリエステル(PET)フィルム層の耐水性を改善していることを示している。
【0079】
【表6】

【0080】
該試験結果は、該改善した放射線硬化性接着剤組成物が、改善した接着性を有する接着層を供給することを可能にし、かつ実質的に、未硬化モノマーの包装材を通る移行、及び包装された製品内容物への未硬化モノマーの汚染の危険性を減らすことを明らかにしている。
【0081】
本発明の請求項は、詳細に、かつその特定の実施態様の参照により記述されているが、その精神、及び範囲から外れることなく、本発明の請求項に対し、様々な変化、及び改質をすることができることが、当該技術として理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性貼合せ用接着剤であって:
a)ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも80重量%、及び
b)有機ジルコネートを0.1〜20重量%を含む、前記放射線硬化性貼合せ用接着剤。
【請求項2】
放射線硬化性貼合せ用接着剤であって:
a)ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも80重量%、及び
b)有機ジルコネート、有機アルミネート、及び/又は有機亜鉛からなる群から選択された、少なくとも一種を0.1〜20重量%含む、前記放射線硬化性貼合せ用接着剤。
【請求項3】
放射線硬化貼合せ用接着剤により、ともに接着された柔軟包装材の少なくとも二層を含む積層柔軟包装材であって、該放射線硬化性貼合せ用接着剤が:
a)ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも80%、及び
b)有機ジルコネート化合物を約0.1〜約20%を含む、前記放射線硬化性貼合せ用接着剤。
【請求項4】
放射線硬化貼合せ用接着剤により、ともに接着された柔軟包装材の少なくとも二層を含む積層柔軟包装材であって、該放射線硬化性貼合せ用接着剤が:
a)ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と有機無水物との反応により形成されたハーフ−エステルである、一種以上のカルボン酸官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも80%、及び
b)有機ジルコネート、有機アルミネート、及び有機亜鉛からなる群から選択された、少なくとも一種を約0.1〜約20%を含む、前記放射線硬化性貼合せ用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153322(P2011−153322A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103745(P2011−103745)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2003−562208(P2003−562208)の分割
【原出願日】平成15年1月21日(2003.1.21)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】