説明

放射線遮蔽体付動作補助装置

【課題】 放射線環境が厳しい作業場所においても瓦礫の撤去作業や重量物の運搬作業が可能な動作補助装置を提供する。
【解決手段】 作業者に装着され、作業者の少なくとも足の動作力をアシストする動作補助装置部と、動作補助装置部に地面から所定の高さを有して配置され、動作補助装置部の周囲を包囲して固定された遮蔽体部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線環境が厳しい作業場所において、作業者への被ばく線量を低減し、なおかつ、作業者への負担を低減することを可能とした放射線遮蔽体付動作補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、重量物運搬時の作業者への負担軽減を目的として、作業者の手足の動作力をパワーアシストする動作補助装置(以下、ロボットスーツともいう)が様々開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、人間の背中及び両足に装着され、人間の両足をアシストする装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-25053
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
東日本大震災をきっかけとして、放射線環境が厳しい作業場所においても瓦礫の撤去作業や重量物の運搬作業が可能なロボットスーツが求められている。しかしながら、特許文献1の装置では、作業者はほぼむき出しの状態となるため、作業者を遮蔽することができない。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、作業者への被ばく線量を低減することが可能な放射線遮蔽体付動作補助装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放射線遮蔽体付動作補助装置は、作業者に装着され、作業者の少なくとも足の動作力をアシストする動作補助装置部と、動作補助装置部に地面から所定の高さを有して配置され、動作補助装置部の周囲を包囲して固定された遮蔽体部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射線遮蔽体付動作補助装置によれば、作業者への被ばく線量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置の装着法を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置の他の装着法を示す図である。
【図4】本発明の実施形態のキャノピーを備えた放射線遮蔽体付動作補助装置を示す図である。
【図5】動作補助装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態である放射線遮蔽体付動作補助装置について、図を参照して詳細に説明をする。
【0010】
図5は、本実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置に用いられる動作補助装置の構成を示す図である。図5(a)は動作補助装置単体の図であり、図5(b)は、動作補助装置を人間に装着した状態を示す図である。
【0011】
図5(a)に示すように、動作補助装置100は、一般に市販されているものであり、胴部101に腕部102a、102bと足部103a、103bとが備わる。腕部102a、102bと足部103a、103bとには、モーター等のアクチュエーター(不図示)と6軸力センサ等のセンサ類(不図示)が備わる。
【0012】
図5(b)に示すように、作業者Aは自身の足を足部103a、103bに固定し、自身の胴体を胴部101に固定する。
【0013】
足部103a、103bに備わる6軸力センサが、作業者Aの脚の動きを検知し、アクチュエーターにより、作業者Aの脚力をアシストする。
【0014】
そして、腕部102a、102bにより重量物Bを持ち上げて保持し、足部103a、103bを動作させることにより、動作補助装置100が装着された作業者Aは作業場所内で移動する。
【0015】
なお、図に示す動作補助装置100はあくまでも一例であり、本実施形態の放射線遮蔽体動作補助装置に用いられる動作補助装置は、図5に示すものに限られず他の構成の動作補助装置、例えば、腕のない動作補助装置などを用いることも可能である。
【0016】
図1は、本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置を示す図である。図に示すように、本実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置1は、動作補助装置部100と遮蔽体部200とを有する。なお、構成の明確化のため図では装着する作業者を省略している。
【0017】
遮蔽体部200は略円筒状の形状をしており、動作補助装置部100の周囲を包囲して動作補助装置部100に取り付けられる。遮蔽体部200は、複数の数十cm幅の短冊状の鉛マット201を円筒状に並べて構成される。
【0018】
本実施形態では、数十センチ幅の鉛マット201をカーテン状に配置する。鉛マット201同士は接続してもよく、しなくてもよい、接続した場合には遮蔽性能が安定し、接続しない場合には、鉛マット201がある程度可動するため、作業者の動作の自由度が増す。また、作業者の動作の自由度をさらに増加させるため、鉛マット201の裾部分には切り込みを入れてもよい。
【0019】
鉛マットは鉛を含有して製造されるためかなりの重量があるが、本実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置では、動作補助装置部100からの脚力のアシスト力があるため、放射線からの遮蔽性能を維持しつつ、作業者の移動が可能となる。
【0020】
動作補助装置部100の腕部102は、遮蔽体部200に設けられた穴部200aより、遮蔽体部200の外部へ出る。必要に応じて、作業者の手(腕)をこの穴部200aから出せるようにして、作業を行えるようにしてもよい。穴部200aは鉛マット201に設けてもよいし、複数の短冊状の鉛マット201を並べた際のマット間の隙間を利用してもよい。
【0021】
また、穴部200aには、遮蔽用の蓋を設けてもよく、腕部102もしくは作業者の手(腕)は作業時のみ遮蔽体部200の外部へ出し、移動時には遮蔽体部200の内部に格納してもよい。
【0022】
また、動作補助装置部100の足部103a、103bの動作を阻害しないために、本実施形態の遮蔽体部200は歩ける程度、もしくは、段差を乗り越えられる程度に、足部103a、103bの最下部(すなわち地面)から所定の高さhを有して配置される。
【0023】
図2は、本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置の装着法を示す図である。図に示すように、遮蔽体部200は、動作補助装置部100の背部に常時固定される後部遮蔽体部200bと、作業者の装着の際に取り外される前部遮蔽体部200bに分割される。
【0024】
前部遮蔽体部200bの鉛マット201の上部にはフック202が設けられ、動作補助装置部100の上部に設けられた円弧状のバー104に、フック202を引っ掛けることにより、前部遮蔽体部200bは動作補助装置部100に取り付けられる。
【0025】
図3は、本発明の実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置の他の装着法を示す図である。図に示すように、後部遮蔽体部200bが動作補助装置部100の背部に常時固定される点で装着法は共通する。さらに、後部遮蔽体部200bには、2つのヒンジ部203aを備えるアーム203が取り付けられる。
【0026】
アーム203には、開閉遮蔽体部200d、200eが取り付けられ、ヒンジ203aにより図中のA方向に開閉可能となっている。
【0027】
作業者が放射線遮蔽体付動作補助装置1を装着する際には、開閉遮蔽体部200d、200eを開いて、作業者が放射線遮蔽体付動作補助装置1を装着し、装着完了後に、開閉遮蔽体部200d、200eを閉めて、体の周囲を覆う遮蔽体部200とする。
【0028】
なお、放射線遮蔽体付動作補助装置1の装着法は上述した方法に限られるものではなく、円筒状の遮蔽体部200の下から作業者が潜り込んでもよい。さらに、円筒状の遮蔽体部全体を動作補助装置部に脱着可能としてもよい。
【0029】
なお、上述した実施形態では、放射線に敏感な内臓及び生殖器をガードするため主に作業者の胴部を遮蔽することを主眼としたが、頭部の遮蔽が必要な場合には、図4に示すような鉛ガラス製の半球状のキャノピー300を、バー104やアーム203にさらに取り付ければよい。この場合にはキャノピー300の重量は動作補助装置部100が負担することになるため、作業者への負担は少なくなる。
【0030】
また、鉛やタングステンと鉛ガラスで構成されるフルフェースのヘルメットをかぶってもよいが、この場合にはヘルメットの重さが作業者の首にかかることになり作業の負担となるため、別途バー104やアーム203に固定する手段を設けるのがよい。
【0031】
また、上記実施形態では遮蔽体として鉛マットを用いたが、鉛マット以外に、樹脂タングステンシート(厚さ数mm程度のタングステンを含んだ樹脂からなるフレキシブルシート)を用いることもできる。この場合には、遮蔽体を短冊状にせずに樹脂タングステンシートをカーテン上に巻きつければよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の放射線遮蔽体付動作補助装置によれば、作業者への放射線を遮蔽する遮蔽体部を備えるため、放射線環境が厳しい作業場所においても作業者への被ばく線量を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1:放射線遮蔽体付動作補助装置
100:動作補助装置部
101:胴部
102:腕部
103:足部
200:遮蔽体部
201:鉛マット
202:フック
203:アーム
300:キャノピー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に装着され、前記作業者の少なくとも足の動作力をアシストする動作補助装置部と、
前記動作補助装置部に地面から所定の高さを有して配置され、前記動作補助装置部の周囲を包囲して固定された遮蔽体部と、
を有することを特徴とする放射線遮蔽体付動作補助装置。
【請求項2】
前記遮蔽体部は、前記動作補助装置部に脱着可能であることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽体付動作補助装置。
【請求項3】
前記遮蔽体部は、前記動作補助装置部の前部に脱着可能な前部遮蔽体部と、前記動作補助装置部の後部に固定された後部遮蔽体部とからなることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽体付動作補助装置。
【請求項4】
前記遮蔽体部は、前記動作補助装置部の前部で開閉可能な開閉遮蔽体部と、前記動作補助装置部の後部に固定された後部遮蔽体部とからなることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽体付動作補助装置。
【請求項5】
前記遮蔽体部は、鉛マット、もしくは、樹脂タングステンシートであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の放射線遮蔽体付動作補助装置。
【請求項6】
作業者の頭部遮蔽用のキャノピーをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の放射線遮蔽体付動作補助装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68515(P2013−68515A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207246(P2011−207246)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)