説明

放射能測定用検体容器

【課題】密閉可能で取り扱いの容易な放射能測定用の検体容器を提供する。
【解決手段】放射能濃度を測定したい検体が入れられ、放射能測定装置にて検体の放射能濃度を測定するための検体容器1である。有底円筒状の容器本体2と、この容器本体2の上部に形成された開口部4を開閉する蓋3とを備える。蓋3は、容器本体2の開口部4に着脱可能にねじ込まれて設けられる。蓋3をした状態では、容器本体2内は密閉される。ペットボトルから構成して使い捨てとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能濃度を測定したい検体が入れられ、放射能測定装置にて検体の放射能濃度を測定するのに用いられる放射能測定用検体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射能濃度の測定は、専門機関において専門家により行われてきたが、福島第一原子力発電所の事故を機に、一般の事業者や家庭にも、放射能濃度の測定についてのニーズが急拡大している。
【0003】
ところが、すべての事業所や家庭に、高価な放射能測定装置を設置するのは現実的ではない。そのため、従来からの専門機関に様々な検体についての放射能濃度の測定の依頼が集中し、処理しきれない状況にある。そして、このような専門機関による測定には、時間だけでなく、比較的高額な費用も要した。
【0004】
そこで、本件発明者らは先に、これまで放射能濃度の測定に縁のなかった者でも、自分自身で手軽に放射能濃度の測定を行えるシステムを提案し、既に特許出願を済ませている(特願2011−221184)。ただ、この場合でも、従来公知の検体容器を使用する場合には、従来公知の検体容器は、放射能濃度の測定に不慣れな者にとって容易に取り扱える構造にはなっておらず、放射能濃度の測定の普及を阻害する要因の一つとなっていた。
【0005】
また、検体が野菜などである場合、細かく刻んで、検体容器内に隙間なく詰め込むことが望まれるが、従来の検体容器には、検体を詰め込むための工夫はなされていない。
【0006】
さらに、マリネリ容器に代表される従来の検体容器は、高価であり、繰り返しの使用が前提である。検体容器を使い捨てにしない場合、検体容器の洗浄が必要となり、洗浄が不十分であれば、測定結果に悪影響を与えるおそれもある。また、検体をビニール袋に入れ、それを検体容器に入れることも行われているが、突起のある岩石を含む土砂など、検体によってはビニール袋が破けるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、密閉可能で取り扱いの容易な放射能測定用検体容器を提供することにある。また、他の課題は、検体を詰め込みやすい放射能測定用検体容器を提供することにある。さらに、他の課題は、密閉性および耐衝撃性のある使い捨て容器とすることができ、使い捨てとすることで測定結果の信頼性を向上できる放射能測定用検体容器を提供することにある。そして、これらを具備した容器を提供することにより、食品等の放射能濃度の測定を少数の専門家が高コストで行うものではなく、一般大衆が低コストで大量に行うことができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、放射能濃度を測定したい検体が入れられ、放射能測定装置にて前記検体の放射能濃度を測定するための容器であって、有底円筒状の容器本体と、この容器本体の上部に形成された開口部を開閉する蓋とを備え、前記蓋は、前記容器本体の開口部に着脱可能にねじ込まれて設けられることを特徴とする放射能測定用検体容器である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、容器本体の開口部にねじ込んで蓋をすることができるので、容器本体を簡易に密閉することができ、検体容器の取り扱いが容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記容器本体内の空間を狭めることが可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の放射能測定用検体容器である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、刻んだ野菜などが検体である場合、容器本体に検体を入れた後、容器本体内の空間を狭めるよう操作することで、容器本体に検体を隙間なく詰めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記容器本体を上下に伸縮可能に、前記容器本体の周側壁に蛇腹状部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、容器本体に検体を入れた後、蛇腹状部を縮めることで、容器本体に検体を隙間なく詰めることができる。また、検体容器の使用前および使用後には、蛇腹状部を縮めてコンパクトに収納ないし廃棄することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記容器本体の底部には、前記放射能測定装置の検出器へのはめ込み部となる円筒状の窪みが形成されており、前記蛇腹状部は、前記容器本体の周側壁の内、前記窪みの上端部より上方に設けられることを特徴とする請求項3に記載の放射能測定用検体容器である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、放射能測定装置の検出器へのはめ込み部を有するマリネリ容器とすることができる。しかも、そのはめ込み部よりも上方位置において蛇腹状部を設けたので、放射能測定装置の検出器へのセットを適切に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記容器本体には上壁が形成されており、この上壁の中央部に、上方へ突出して口部が形成されており、この口部に、前記蓋が着脱可能に設けられ、前記上壁は、前記容器本体の径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面を形成されており、前記容器本体の口部に前記蓋を取り付けた状態で、前記蓋の上面は、前記容器本体の周側壁の上端部と同一か低くなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射能測定用検体容器である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、容器本体の上壁は径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面を形成されており、容器本体の口部に蓋を取り付けた状態で、蓋の上面は容器本体の周側壁の上端部と同一か低くなる。従って、容器本体の大きさ(直径および高さ)を、従来の放射能測定装置専用の検体容器に合わせておけば、従来公知の既存の放射能測定装置にも対応可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記容器本体は、ペットボトルから形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射能測定用検体容器である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、容器本体をペットボトルから構成することで、密閉性および耐衝撃性のある検体容器とすることができる。また、使い捨て容器とすることもでき、その場合には測定結果の信頼性を向上することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記容器本体内の空間を狭めるように、前記容器本体内に前記蓋をねじ込み可能であることを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、容器本体内に蓋をねじ込んでいくことで、容器本体内の空間を狭めて、容器本体に検体を隙間なく詰めることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記容器本体の底部には、前記放射能測定装置の検出器へのはめ込み部となる円筒状の窪みが形成されており、この窪みの上部は、先細りに形成されていることを特徴とする請求項7に記載の放射能測定用検体容器である。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、放射能測定装置の検出器へのはめ込み部を有するマリネリ容器とすることができる。また、窪みの上部を先細りに形成したので、容器本体内に蓋をねじ込んでいくことで、容器本体内の窪みの周囲の円環状溝内に検体を詰め込みやすい。
【0024】
さらに、請求項9に記載の発明は、前記容器本体は、検体が入れられることで所定の形状に膨らむ柔軟な素材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器である。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、柔軟な素材で形成されているので、容器本体に検体を入れた後、容器本体を外から押し付けるなどしつつ、容器本体内に検体を隙間なく詰めることができる。また、検体容器の使用前および使用後には、検体容器をつぶしておくことでコンパクトに収納ないし廃棄することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、密閉可能で取り扱いの容易な放射能測定用検体容器を実現することができる。また、実施の形態によっては、検体を詰め込むための構造を付与することもできる。さらに、実施の形態によっては、密閉性および耐衝撃性のある使い捨て容器とすることができ、使い捨てとすることで測定結果の信頼性を向上することができる。そして、ひいては、食品等の放射能濃度の測定を少数の専門家が高コストで行うものではなく、一般大衆が低コストで大量に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の放射能測定用検体容器の実施例1を示す概略斜視図であり、蓋を外した状態を示している。
【図2】図1の検体容器の蓋をした状態を示す図である。
【図3】図1の検体容器の使用状態を示す概略縦断面図であり、放射能測定装置に検体容器をセットした状態を示している。
【図4】実施例1の変形例を示す図である。
【図5】本発明の放射能測定用検体容器の実施例2を示す概略縦断面図である。
【図6】実施例2の変形例を示す図である。
【図7】本発明の放射能測定用検体容器の実施例3を示す概略縦断面図である。
【図8】実施例3の変形例を示す図である。
【図9】本発明の放射能測定用検体容器の実施例4を示す概略縦断面図である。
【図10】図9におけるX−X矢視図である。
【図11】本発明の放射能測定用検体容器の実施例5を示す概略縦断面図である。
【図12】実施例5の変形例を示す図である。
【図13】放射能測定用検体の搬送用梱包箱の一例を示す概略斜視図であり、(A)は蓋を外した状態、(B)および(C)は使用状態を順に示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の放射能測定用検体容器は、各種検体が入れられ、放射能測定装置にて検体の放射能濃度を測定するための容器である。
【0029】
検体とは、放射能濃度を測定したい対象物(試料)であり、固体、液体、または両者の混合物である。検体は、その内容を特に問わないが、たとえば、食品、食材、食肉、農産物、液体(水など)、草木、土壌などである。これらは、所望により適宜粉砕されて、検体容器に入れられて、放射能測定装置により放射能濃度(Bq/kgまたはBq/l)が測定される。なお、放射能測定装置は、特に問わないが、たとえばシンチレーション検出器またはゲルマニウム半導体検出器である。
【0030】
検体容器は、有底筒状(典型的には有底円筒状)の容器本体と、この容器本体の上部の開口部を開閉する蓋とを備える。容器本体の開口部は、容器本体の上部において、全域で開口するよう形成されてもよいし、一部で開口するよう形成されてもよい。後者の場合、容器本体の上部には上壁が形成され、その上壁の一部(典型的には容器本体の径方向中央部)において、開口部が形成される。この際、容器本体の上壁に、上方へ突出して口部(首部ということもできる)が形成され、その口部にキャップ状の蓋が着脱可能に設けられてもよい。
【0031】
既存の放射能測定装置に対応できるように、検体容器の大きさは、従来公知の検体容器の大きさに揃えるのがよい。容器本体に口部(首部)を形成する場合には、容器本体の上壁は径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面を形成され、容器本体の口部に蓋を取り付けた状態で、蓋の上面が容器本体の周側壁の上端部と同一か低くなるよう形成してもよい。この場合、容器本体の大きさ(直径および高さ)を従来の検体容器に合わせておけば、従来公知の既存の放射能測定装置にも対応可能となる。
【0032】
いずれにしても、蓋は、容器本体の開口部に着脱可能にねじ込まれて設けられる。容器本体に蓋を最後までねじ込んで締めた状態では、容器本体内は密閉される。
【0033】
検体が刻んだ野菜などである場合、放射能濃度の測定結果の信頼性を高めるには、容器本体に検体を隙間なく詰め込む必要がある。そのために、検体容器は、容器本体内の空間を狭めることが可能に構成されるのが好ましい。たとえば、容器本体の周側壁の一部または全部を蛇腹状に形成し、検体を入れた後に蛇腹状部を縮めることで、容器本体に検体を押し詰めることができるようにする。あるいは、容器本体の中空穴内に蓋をねじ込んでいくことで、容器本体内の空間を狭めて、容器本体に検体を押し詰めることができるようにしてもよい。
【0034】
容器本体の底部には、放射能測定装置の検出器(エンドキャップ)へのはめ込み部となる円筒状の窪みが形成されていてもよい。この場合、検体容器は、マリネリ容器となり、放射能測定装置の検出器に容器本体の窪みをはめ込んで、放射能測定装置にセットされる。一方、容器本体の底部に窪みを形成しない場合、検体容器は放射能測定装置の検出器の上に載せられるなどしてセットされる。
【0035】
検体容器は、その素材を特に問わないが、使い捨て容器とする場合、従来公知の飲料用ペットボトルと同様に、容器本体はペットボトルから形成するのがよい。あるいは、従来公知の浮き輪と同様に、検体容器は柔軟な素材で形成し、検体が入れられることで所定の形状に膨らむ構成としてもよい。
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて、さらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
図1および図2は、本発明の放射能測定用検体容器の実施例1を示す概略図であり、図1は蓋を外した状態、図2は蓋をした状態を示している。また、図3は、本実施例の検体容器の使用状態を示す概略縦断面図である。
【0037】
本実施例の検体容器1は、容器本体2と蓋3とからなり、容器本体2の開口部4に対し蓋3は着脱可能にねじ込まれる。容器本体2の開口部4に蓋3をした状態では、容器本体2内は密閉される。
【0038】
容器本体2は、典型的には、透明素材により有底円筒状に形成される。本実施例の容器本体2は、周側壁上部に径方向内側へ延出して上壁5が形成されており、この上壁5の中央部には、上方へ突出して口部(首部)6が形成されている。この口部6において、容器本体2の内外は連通される。口部6の外周面にはネジ7が形成されている。
【0039】
一方、蓋3は、本実施例ではキャップ状とされ、下方へのみ開口する短円筒状に形成されており、その内周面はネジ穴8とされている(図3)。従って、容器本体2の口部6に蓋3をねじ込んで取り付けることができ、口部6に蓋3を最後までねじ込むことで、容器本体2内は密閉される。
【0040】
容器本体2の上壁5は、水平面でもよいが、その場合、口部6および蓋3が上方へ突出した形となってしまい、従来公知の検体容器の大きさに揃えて既存の放射能測定装置9内にセットすることができない。そこで、本実施例では、容器本体2の上壁5を逆円錐台状に形成している。つまり、容器本体2の上壁5は、径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。そして、容器本体2の口部6に蓋3を取り付けた状態で、蓋3の上面が容器本体2の周側壁の上端部と同一か低くなるよう形成される。これにより、容器本体2の大きさ(直径および高さ)を従来の検体容器に合わせておけば、既存の放射能測定装置9にも対応可能となる。なお、上壁5は、全体が逆円錐台状に形成される必要はなく、外周部や口部6周辺においては円環状の水平面として残されていてもよい。
【0041】
口部6の内径は、図示例では後述する窪み10の外径より小さいが、場合により窪み10の外径よりも大きくしてもよい。検体が液体である場合には、口部6の内径は小さくて足りるが、検体が固体(たとえば野菜を刻んだもの)の場合には、割り箸などの棒材を用いて検体を突きつつ、容器本体2内に検体を隙間なくしっかり詰め込めることができるように、口部6から差し込んだ棒材の先端部が、容器本体2の底部(容器本体2内の底部の少なくとも外周部)に当てることができるようにしておくのもよい。
【0042】
容器本体2の底部の中央部には、放射能測定装置9の検出器(エンドキャップ)11へのはめ込み部となる円筒状の窪み10が形成されている。よって、本実施例の検体容器1は、マリネリ容器となる。
【0043】
本実施例の検体容器1は、その素材を特に問わないが、通常、透明な合成樹脂を用いて形成される。また、ペットボトルから形成すれば、安価に、検体容器1を使い捨てにすることもできる。つまり、従来公知の飲料用ペットボトルと同様に、容器本体2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成され、蓋3は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などから形成されてもよい。従来のように検体容器1をその都度洗浄して使い回す場合には、洗浄不足により測定結果に悪影響を及ぼすおそれがあるが、検体容器1を使い捨てとすることで、そのような不都合を防止することができる。
【0044】
検体容器1の使用時には、容器本体2の口部6から検体を入れて、容器本体2の口部6に蓋3をしっかり締めた後、検体容器1を放射能測定装置9にセットして、検体の放射能濃度を測定すればよい。
【0045】
放射能測定装置9は、検体容器1を収容して検体の放射能濃度を測定する装置である。放射能測定装置9は、従来公知の各種の装置を用いることができるが、たとえばシンチレーション検出器が用いられる。この場合、検体に含まれる放射性核種からの微量なガンマ(γ)線を検出して、検体の重量または容積を用いつつ、放射性核種ごとの放射能濃度(Bq/kgまたはBq/l)を測定する。但し、放射性核種ごとではなく全体としての放射能濃度を測定してもよい。
【0046】
放射能測定装置9は、その構成を特に問わないが、図示例では、放射能検出器(ここではシンチレーション検出器)11を備えた測定台12と、その上部を覆う扉13とから構成される。測定台12の扉13,13を閉じた状態では、測定台12とその扉13との間に、検体容器1を収容する閉鎖空間が形成され、この閉鎖空間は、測定台12や扉13に設けられた鉛14により外部と遮蔽される。外部と遮蔽されるので、検体の放射能濃度を正確に測定することができる。
【0047】
測定台12の扉13について説明すると、図示例では、測定台12の上に被せられる下方へ開口する円筒材が左右に二つ割りされて、左右二つの扉13,13を有する。そして、各扉13は、後方においてヒンジで結合されており、図3において左右方向外側へ開く構成とされている。なお、扉13の上面には、取手15が設けられている。
【0048】
このような構成の放射能測定装置9への検体容器1のセットは、測定台12の扉13を開けた状態で、検体容器1の底部の窪み10を放射能測定装置9の検出器11にはめ込めばよい。そして、測定台12の扉13を閉じて、放射能濃度の測定がなされる。検体容器1は密閉されているので、液漏れなどの心配がなく、放射能測定に不慣れな者でも容易に取り扱うことができる。
【0049】
図4は、本実施例1の変形例を示す概略斜視図である。この変形例の検体容器1は、図1の検体容器と同様の構成であるが、容器本体2の底部に窪み10を形成していない点で異なる。この場合、検体容器1は放射能測定装置9の放射能検出器11の上に載せられるなどしてセットされる。なお、検体容器1の大きさは、放射能測定装置9の前記閉鎖空間の大きさに応じて適宜に変更されることは言うまでもない。
【実施例2】
【0050】
図5は、本発明の放射能測定用検体容器1の実施例2を示す概略縦断面図である。本実施例の検体容器1も、基本的には前記実施例1の検体容器1と同様である。そのため、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0051】
本実施例2の検体容器1は、容器本体2に上壁5が形成されておらず、容器本体2は、周側壁上方において全域で開口する。そして、容器本体2の外周面の上部にはネジ7が形成されている。より具体的には、容器本体2は、上端部の設定領域が若干小径に形成されており、その小径部の外周面にネジ7が形成されている。
【0052】
一方、蓋3は、容器本体2と同一の外径を有する短円筒状であり、下方へのみ開口し、その中空穴はネジ穴8とされている。容器本体2に蓋3を被せてねじ込むことで、検体容器1を密閉することができる。
【0053】
本実施例の場合、検体容器1は、上面を水平面とすることができ、従来公知の検体容器の大きさに揃えやすい。また、容器本体2の底壁中央部には、前記実施例1と同様に、放射能測定装置9の検出器11へのはめ込み部となる窪み10が形成されている。但し、変形例として図6に示すように、この窪み10を省略することも可能である。
【実施例3】
【0054】
図7は、本発明の放射能測定用検体容器1の実施例3を示す概略縦断面図である。本実施例の検体容器1も、基本的には前記実施例1の検体容器1と同様である。そのため、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0055】
本実施例3では、容器本体2の周側壁の一部が蛇腹状に形成されており、この蛇腹状部16にて容器本体2を上下に伸縮可能である。検体が刻んだ野菜などである場合、二点鎖線で示すように蛇腹状部16をある程度伸ばした状態で、蛇腹状部16のある高さまで容器本体2に検体を入れた後、実線で示すように蛇腹状部16を縮めることで、容器本体2に検体を押し詰めることができる。
【0056】
なお、蛇腹状部16を縮める際、容器本体2内の空気を外部へ排出するために、容器本体2に対し蓋3を外すか緩めておく。あるいは、蓋など、適宜の位置に微小な空気抜き孔17を設けておけば、容器本体2に対し蓋3を締めた状態で、蛇腹状部16を縮めることもできる。なお、空気抜き孔17は、検体容器1の輸送時にはシールなどで塞がれるか、所定以上の圧力がかかった場合にのみ開く構成とされている。
【0057】
容器本体2の底壁中央部には、前記実施例1と同様に、放射能測定装置9の検出器11へのはめ込み部となる窪み10が形成されている。これに伴い、蛇腹状部16は、容器本体2の周側壁の内、窪み10の上端部より上方に設けるのがよい(「蛇腹状部16の下端部の高さH1」≧「窪み10の上端部の高さH2」)。
【0058】
一方、変形例として図8に示すように、容器本体2の底部の窪み10を省略することも可能である。その場合、容器本体2の周側壁の全部を蛇腹状部16とすることもできるし、容器本体2の周側壁の上下方向一部においてのみ蛇腹状部16とすることもできる。
【0059】
いずれにしても、本実施例の構成によれば、蛇腹状部16の伸縮を利用して、容器本体2内に検体を詰めやすい。また、検体容器1の使用前や使用後には蛇腹状部16を縮めておくことで、コンパクトに収納、保管ないし廃棄することができる。
【実施例4】
【0060】
図9および図10は、本発明の放射能測定用検体容器1の実施例4を示す概略図であり、図9は縦断面図、図10はそのX−X矢視図である。本実施例の検体容器1も、基本的には前記実施例1の検体容器1と同様である。そのため、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0061】
本実施例4の検体容器1は、容器本体2に上壁5が形成されておらず、容器本体2は、周側壁上方において全域で開口する。容器本体2の内周面の上部にはネジが形成されている。つまり、容器本体2の中空穴の上部は、ネジ穴18に形成されている。
【0062】
一方、蓋3は、容器本体2の内径と対応した外径を有する短円筒状であり、上方へのみ開口し、外周面にはネジ19が形成されている。従って、容器本体2の中空穴(上部のネジ穴18)に蓋3をねじ込んで取り付けることができる。しかも、蓋3は、容器本体2内に埋没するまで、容器本体2内にねじ込み可能とされている。容器本体2への蓋3のねじ込みを容易にするために、蓋3には、図10に示すように、たとえば十字形状のリブ20が設けられるなどして、取手が設けられている。
【0063】
検体が刻んだ野菜などである場合、ネジ穴18のある高さまで容器本体2に検体を入れた後、容器本体2の中空穴に蓋3をねじ込んでいき、容器本体2内の容積を狭めればよい。これにより、容器本体2に検体を押し詰めることができる。なお、蓋3には適宜の位置に、実施例3と同様の空気抜き孔17が形成されており、容器本体2に蓋3をねじ込む際には、容器本体2内の空気が空気抜き孔17から外部へ排出される。
【0064】
容器本体2の底壁中央部には、前記実施例1と同様に、放射能測定装置9の検出器11へのはめ込み部となる円筒状の窪み10が形成されている。この際、窪み10の上部10aは、上方へ行くに従って先細りとなる円錐状に形成しておくのが好ましい。これにより、容器本体2内に蓋3をねじ込む際、検体は、窪み10の周囲の円環状溝内に詰められることになる。
【実施例5】
【0065】
図11は、本発明の放射能測定用検体容器1の実施例5を示す概略縦断面図である。本実施例の検体容器1も、基本的には前記実施例1の検体容器1と同様である。そのため、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0066】
前記実施例1の検体容器1は、空の状態でも形を保つよう形成されたが、本実施例5の検体容器1は、空の状態では潰すことができる。つまり、本実施例の検体容器1は、従来公知のビニール製の浮き輪と同様に、内部に検体や空気などをつめない限り、形を保たない柔軟な素材(たとえば軟質塩化ビニール樹脂)で形成されている。そして、容器本体2は、検体が入れられることで所定の形状に膨らみ自立し、検体容器1として利用することができる。但し、この状態でも、手で押さえれば、容器本体2を変形させることは可能であるから、容器本体2に検体を入れた後、容器本体2内に検体を詰めることができる。
【0067】
この場合も、容器本体2の底壁中央部には、前記実施例1と同様に、放射能測定装置9の検出器11へのはめ込み部となる円筒状の窪み10が形成されている。但し、変形例として図12に示すように、容器本体2の底部の窪み10を省略することも可能である。
【0068】
いずれにしても、本実施例の構成によれば、検体容器1の変形を利用して、容器本体2内に検体を詰めることができる。また、検体容器1の使用前や使用後にはつぶしておくことで、コンパクトに収納、保管ないし廃棄することができる。
【0069】
本発明の放射能測定用検体容器1は、前記各実施例(各変形例を含む)の構成に限らず適宜変更可能である。特に、容器本体2に蓋3がねじにより着脱可能であれば、容器本体2や蓋3の形状、大きさ、材質などは適宜に変更可能である。
【0070】
また、前記実施例では、放射能測定装置9としてシンチレーション検出器に用いる例について説明したが、これ以外の各種の放射能測定装置9にも同様に適用可能である。
【0071】
また、前記実施例1、実施例3および実施例5では、口部6の外周部にキャップ状の蓋3を被せるようねじ込む例について説明したが、口部6の内側に栓状の蓋3をねじ入れるようにしてもよい。また、口部6を省略して、容器本体2の上壁5に形成した開口部に、栓状の蓋3をねじ入れるようにしてもよい。
【0072】
さらに、前記各実施例において、容器本体2の周側壁には、適宜、液体量を把握するための目盛を付してもよい。たとえば内容量が100mlごとに上下に目盛を付すことで、検体容器1内に入れた液体の量を把握可能としてもよい。
【0073】
最後に、検体(試料)の放射能濃度の測定を専門機関や検査業者に依頼したい依頼者が、検体を専門機関などに搬送(郵送・宅配など)する場合に役立つ梱包材について説明する。従来、依頼者が検体を準備し専門機関などに送付する際、マリネリ容器などの専用容器を利用できない場合もある。その場合、検体を重量ではなく容量で準備したい場合、検体をマリネリ容器に適した容量(たとえば1リットル)に計量することが困難な場合もあった。また、梱包が不十分な場合、搬送時の負荷や衝撃により、検体が漏れ出すおそれもあった。そこで、図13に示すような梱包材を用いてもよい。
【0074】
図13は、放射能測定用検体の搬送用梱包箱21の一例を示す概略斜視図であり、(A)は蓋を外した状態、(B)および(C)は使用状態を順に示している。梱包箱21は、発泡スチロールまたは積層段ボールなどから形成され、箱本体22と蓋23とからなる。
【0075】
箱本体22は、典型的には直方体状であり、その中央部には、上方へのみ開口して穴24が形成されると共に、その穴24の底壁の中央部には、マリネリ容器の円筒状の窪みと対応した円筒状の突部25が上方へ突出して形成されている。このようにして、箱本体22には、マリネリ容器の内容積およびサイズと同一の穴24が形成されている。なお、箱本体22の上面には、前記穴24を取り囲むように、円環状の凹溝26が形成されている。
【0076】
一方、蓋23は、典型的には長方形の板状であり、その下面には、円環状の凸部27が形成されている。この凸部27の大きさは、箱本体22の凹溝26の大きさに対応している。従って、箱本体22の凹溝26に蓋23の凸部27をはめ込みつつ、箱本体22の上面に蓋23の下面を当接して蓋23を閉じることができる。
【0077】
梱包箱21の使用に当たっては、同図(B)に示すように、ビニール袋(ポリ袋)28を箱本体22の穴24に沿わせるように広げて配置し、そのビニール袋28内に検体29を入れればよい。箱本体22の穴24の大きさは、マリネリ容器の内容量およびサイズと同一であるため、検体29の計量を正確で簡単に行うことができる。そして、同図(C)に示すように、ビニール袋28の口に封30をした後、箱本体22に蓋23をして、専門機関などに送付する。
【0078】
従来のようにマリネリ容器を梱包材で包むのではなく、梱包箱21そのものに検体が入れられるので、その一体性により検体そのものを十分に保護することができ、検体の漏れを防止できる。また、検体が液体ではなくペースト状程度の固体であれば、その形状をある程度維持するため、専門機関などにおいて梱包箱21からマリネリ容器への移設も容易である。
【0079】
なお、ここでは、マリネリ容器に対応した穴24を梱包箱に形成する例を説明したが、穴24の形状や大きさを変えることで、その他の放射能濃度測定用の各種の専用容器にも同様に適用可能である。また、箱本体22の上面に凹溝26、蓋23の下面に凸部27を形成したが、これとは逆に、箱本体22の上面に凸部、蓋23の下面に凹溝を形成してもよいし、箱本体22と蓋23とはその他の構成で閉められてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 検体容器
2 容器本体
3 蓋
4 開口部
5 上壁
6 口部
7 ネジ
8 ネジ穴
9 放射能測定装置
10 窪み
11 放射能検出器
12 測定台
13 扉
14 鉛
15 取手
16 蛇腹状部
17 空気抜き孔
18 ネジ穴
19 ネジ
20 リブ
21 梱包箱
22 箱本体
23 蓋
24 穴
25 突部
26 凹溝
27 凸部
28 ビニール袋
29 検体
30 封

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能濃度を測定したい検体が入れられ、放射能測定装置にて前記検体の放射能濃度を測定するための容器であって、
有底円筒状の容器本体と、この容器本体の上部に形成された開口部を開閉する蓋とを備え、
前記蓋は、前記容器本体の開口部に着脱可能にねじ込まれて設けられる
ことを特徴とする放射能測定用検体容器。
【請求項2】
前記容器本体内の空間を狭めることが可能に構成された
ことを特徴とする請求項1に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項3】
前記容器本体を上下に伸縮可能に、前記容器本体の周側壁に蛇腹状部が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項4】
前記容器本体の底部には、前記放射能測定装置の検出器へのはめ込み部となる円筒状の窪みが形成されており、
前記蛇腹状部は、前記容器本体の周側壁の内、前記窪みの上端部より上方に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項5】
前記容器本体には上壁が形成されており、
この上壁の中央部に、上方へ突出して口部が形成されており、
この口部に、前記蓋が着脱可能に設けられ、
前記上壁は、前記容器本体の径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面を形成されており、
前記容器本体の口部に前記蓋を取り付けた状態で、前記蓋の上面は、前記容器本体の周側壁の上端部と同一か低くなる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項6】
前記容器本体は、ペットボトルから形成される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項7】
前記容器本体内の空間を狭めるように、前記容器本体内に前記蓋をねじ込み可能である
ことを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項8】
前記容器本体の底部には、前記放射能測定装置の検出器へのはめ込み部となる円筒状の窪みが形成されており、
この窪みの上部は、先細りに形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の放射能測定用検体容器。
【請求項9】
前記容器本体は、検体が入れられることで所定の形状に膨らむ柔軟な素材で形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の放射能測定用検体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−88408(P2013−88408A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232332(P2011−232332)
【出願日】平成23年10月23日(2011.10.23)
【出願人】(311014624)
【出願人】(511241424)
【Fターム(参考)】