説明

放射能除染施設付原子力発電所

【課題】 原子炉が制御不能状態の状態に陥り、圧力容器が爆発の危険性が増大してベントの実施が必要に迫ったときに放出するガスに含まれる放射能を除染せずに放出するのは危険性が大きすぎるので除染施設を併設して発電所内で処理を行い、外部には排出しない設備が必要である。
【解決手段】 原子力発電所内で発生した放射能は全て発電所内で除染処理して外部に排出しないシステムが必要であるが所内で発生したガスや汚染された循環水を除染処理するタワー構造の大型の除染システムを構築して全て内部処理して外部に一切出すことなく処理する除染システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は原子力発電所で発生した放射能を含む気体や汚染水を施設外の周辺地域に放出拡散するのを防止し、施設内で放射能を含む気体や汚染水を超低レベルに除染処理する原子力発電所の放射能除染施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1986年のチェルノブイリ原子力発電所の爆発によりウクライナの地方都市ではいまだ許容基準以上の放射能のため住民は避難したままでいつ帰郷出来るかの、めども立たない状態であり原子力発電所で一端重大な事故が発生して周辺地域に放射能が放出拡散すると重大で深刻な放射能の汚染問題となる。また2011年3月11日の福島第一原子力発電所の津波による全電源停止が発生し、冷却水循環停止により、燃料棒のメルトダウンおよび水素爆発により高濃度の放射能が周辺地域に拡散し、30キロ圏内外の住民の避難となり、農産物、畜産業、漁業関係の放射能汚染による市場出荷停止に始まり、莫大な保障問題の発生が起こった。このように現状の原子力発電所の設置場所が海岸沿いや川や湖の近辺に多く立地しており、事故等で原子炉建屋内の圧力容器や格納容器が破壊されたとき、内部の放射能が大気中に放出され、広い範囲の周辺地域が放射能で汚染されると重大な結果を招くことになる。
【0003】
原子力発電所施設の構造は建設前や建設時に事故対策を十分考慮して建設されたはずであるが想定外という言葉の基で発生した事故に対して対処できない場合、前記したように悲惨な結果を招くことになる。そのため今後も国民が文化的な生活を維持継続していくためには市民生活や産業の振興および発展していくための電力需要を賄うためには現在のエネルギー技術や自然再生エネルギーだけでは需要を満たしきれず、新たなエネルギー技術の開発があるまでは原子力発電に当面は頼らねばならない。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】 昭53−110793
【特許文献2】 昭61−84588
【特許文献3】 特許第2883938号
【特許文献4】 平2−85795
【特許文献5】 2010−101144
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の原子力発電施設は海岸沿いや冷却水源のある平地に原子炉建屋やタービン建屋等と付帯施設が建設されているのが標準的スタイルである。原子力発電施設は事故に対して対応策はそれぞれに十分講じているが福島第一原発の事故例にもあるように想定外の要因で放射能放出事故が発生する可能性は今後も在り得る。現状の原子力発電所においては爆発等で格納容器や圧力容器が破壊するか、またはベントの実施で放射能が周辺地域に拡散するのを防止するのは現状では極めて困難といえる。原子炉の放射能で汚染した冷却循環水の除染処理や原子炉建屋内の空気中の放射能の除染処理を完全に行い発電所施設外への放射能の拡散防止対策をほどこして放射能除去を施設内で除去してから外部への放出を完全に行うことは難しい問題である。しかし原子炉が何らかの原因で爆発事故等が発生した場合、周辺地域や海洋への放射能拡散により周辺地域が汚染すると極めて重大な結果をもたらす事が改めて証明された結果となったが、このような事態を再発させないためにも絶対に放射能拡散防止することの出来る原子力発電所のシステムを確立する必要がある。
【0006】
仮に外部電源喪失し、非常電源が停止して一時冷却水が循環が停止しても原子炉や燃料プールへの冷却水の供給を継続すると共に、また格納容器の圧力が高まりベントを実施しても放射能を含んだ気体や蒸気を原発施設外に放射能の拡散流出するのを防ぐ安全対策を講じることが必要である。福島第一原発では原子炉の循環水が長時間にわたり停止した際に圧力が上昇したのでベントを実施したがこの圧力は配管を通して排気塔から放出されたが、これはまさに周辺地域に放射能をまき散らしたことである。この事は今後の原子力発電所では絶対やってはならないことである。また立地条件として活断層があるところには原子力発電所の建設は取り止める事も重要となる。全電源喪失という事態が発生しても複数で多重の安全対策システムを講じながら、電源復旧するまで複数の対応策の構築、原子炉建屋、タービン建屋内で発生した汚染水の一時貯蔵槽、そして電源回復時の汚染水の除染施設の完備等が必要で原子力発電所内では発生する放射能は所内で除染処理して外部には一切出さないという基本的な考え方に基づくことが必要である。福島第一原発のように地震による津波対策として津波の波高以上の防潮堤の建設も重要な要因であることは言うまでもない。
【0007】
原子力発電施設を建設して、安全に運用して行く際に何らかの要因で事故が発生しても原子炉施設から放射能物質が周辺地域に放出拡散を防止する方法としてIPC特許分類のG21C1/00@Dを検索すると先行技術文献の特許文献2の地下式原子力発電所のような方式がたくさん検索される。こうした技術はすでに公知であるが余り普及しているようには見えない。その理由として考えられるのは建設費の高騰にあると思える。しかし安全対策を最優先して極力こうした地下方式等を採用して原子力発電を活用する方法を取ることが結果的に事故を起こして損害額や補償額を計算すると安価に済む事になると予想できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
福島第一原子力発電所の事故のように津波による全電源喪失で原子炉に冷却水を循環注入が出来なくなり水素爆発を起こして、放射能が周辺地域に拡散すると言う最悪の結果を招いてしまったことは、まことに残念であり、またタービン建屋の地下室にたまった汚染水が外洋に流失してしまうという事態も発生した。2度とこのような事故を起こさないようにしなければならない。そのためには既存の原子力発電所や新設の発電所等に本願発明のような放射能除染システムを備えた施設を設置して、最大の安全対策を講じて周辺地域に居住する住民の原発事故発生の不安を取り除き、安全対策が取られているから絶対に心配ないという安心感の持たれる原子力発電所にしなければならない。現代社会の電力需要を満たすためにも、また原子力発電所の周辺地域住民の生存権を脅かすような現状での原子力運営指針は改善しなければならない。
【0009】
上記問題を解決するために本願発明は事故で原子炉が高圧になり、爆発する危険性が増大してベントを実施した際に排出した放射能を含む蒸気や気体を隔壁気密構造にした大型の閉鎖貯留用空洞トンネルに外気に触れることなく、管路で送気して閉鎖後貯留用トンネル内で上部に設置した配管から散水シャワーによる除染、散水した水を蓄積して残留した気体を圧縮して下部水タンクに導きタンク下部の管路から気泡として放出して再度除染水に放射能を含む気体を水に接触させ、水に放射能を移す事により気体の除染を行う。低レベルになった気体は更に次の上部タンクに移動して気体に含まれる残留放射能を吸着性の良い化学物質で出来た多層構造の各フィルターに気体を通過させて放射能の除染行う。各フィルターを通過した気体は更に粘土質の放射能の吸着の良い粘土質土壌で作成したフィルターに通過させて除染を行い安全なレベルに放射能を低減する。この際、放射能除去フィルターはヨウ素、セシウム134、セシウム137、ストロンチューム、プルトニューム等の放射能物質を除染する各フィルターを個別に設置しそれぞれに通過除染を行うものである。それぞれのフィルターには最適な吸着物質を使用した専門メーカーの製品を使用するので常にその時代の最先端の効率の良い製品が選別して使用する事が可能となる。
【0010】
格納容器のベントを実施した際の除染作業を説明したが、ベントを実施しない通常時には原子炉建屋内やタービン建屋内の空気の放射線レベルが上昇した際には前記した貯留用空洞トンネルに送風して除染作業を実施する事も出来るような構造設計をして使用できるようにして置く事も重要である。原子炉建屋、タービン建屋の内部の若干でも放射能を含んだ空気は直接外部に放出することはなく、常に内部で除染されるので安全性は確保される。
【0011】
次に原子炉建屋、タービン建屋内に溜まった汚染水も一端地下の貯留槽に一時貯留して置き除染層の除染作業が停止しているときにポンプで地下から上層のの滞留水除染用貯留槽のタンクに送水して薬液注入後、放射性物質能の除染、油成分の除去、海水が含まれる場合は塩分の除去、有機成分が含まれる場合はその除去作業等を行い、外部に排出しないで再度循環水として発電所内で燃料貯蔵プールの冷却水や循環水として利用可能な設計となっている。
【0012】
地震等で原子炉に制御棒が投入され核反応が停止しても腹水器の冷却水の循環や燃料プールへの冷却水は継続して注水しなければならず停止することは出来ない。仮に全電源喪失する事態が発生しても冷却や注水は継続する対策として本願発明に於いては冷却水用貯留タンクが格納容器よりも高い位置にあるので重力の作用で格納容器や燃料貯蔵プール内の水が蒸発しても不足分はタンクより重力の作用で補充されようになっており、メルトダウンの心配は払拭されるので福島第一原発の事故のようなことは起こらない。仮に電源が喪失したとしても貯蔵されている水量と蒸発する水量には時間的余裕があるのでその間に電源の復旧が行える時間が確保されて外部電源や非常用電源の回復作業が行える。
【0013】
何らかの原因で原子炉本体に制御棒が投入され、原子炉本体は発電を停止しても圧力容器や燃料プールの冷却は継続して行わねばならないので電源の確保は至上命令であり、絶対条件である。本願発明では電源停止状態が一週間から10日間位電源か回復しなくても非常用蓄電池のみの少量の電源のみでもベントしたガスの除染作業が継続可能とするものでその間に電源回復作業が行えるものである。予備電源の回復作業や外部電源の復旧作業による早期の電源回復を行い原発の安定した冷温停止を図る事を目的とするものである。さらに原子力発電所の事故対策として原子炉が万が一事故により原子炉が制御不能となっても原子炉外の大気中に放射能の放出はしないで貯留槽トンネル内に封じ込めて汚染された放射物質を貯留槽トンネル内で除染処理をする方式の除染施設付原子力発電所となるものである。
【発明の効果】
【0014】
すべての原子力発電所がそうであるように本システムの原子力発電施設も事故のない安定運転が最大目的であり、将来的に事故が仮に発生しても安全に人的被害や放射能汚染の発生を防止することを目的とするもので、周辺地域への放射能汚染の被害を防止するものである。今後も人類が文明的で快適な生活を継続するには現状においてまだ自然エネルギーや再生エネルギーのみでは技術的に電力需要を満たすことには無理がある。それを補うにはやはり将来的には当面原子力発電に頼ららずを得ない。将来もっと安全なエネルギー技術が開発されれば原子力発電を廃止することも考えられるがCO2削減からも原状では原子力発電を継続せざるを得ないのが実情である。また本願特許は沸騰型原子炉にも加圧水型原子炉にも対応するのですでに建設稼動している原子炉に本願システムを増設して外部に放射能の放出を阻止できるので将来的な事故時の対応として安全であると同時に原子力発電所の最大の不安要因を払拭できる最大の解決策と成り得るものである。旧来の原子力発電は安全運転を前提とした目標の元に事故対策に対する安全策を基本にした多重的なシステムを重点的に配備する事を目的としているように見える。福島第一原発の事故のようによく想定外という表現耳にしたがその想定外の事故に対する対策を講じてこなかった事が莫大な損害事故発生になった言えるのではないだろうか。そのため本願発明のように建設費が多額になっても転ばぬ先の杖でこれからの原子力発電所には絶対必要な施設と言える物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明は原子力発電所に付随して放射能除染施設を建設して放射能を含む気体や万一事故が発生してベントした際の放出ガスや、汚染された原子炉建屋内やタービン建屋内の滞留水をそれぞれ専用の貯留槽に導き、それぞれに対応した複数の放射能の除染作業を行い人体に影響のないレベルに低減して発電所内で再利用する事が可能になるものである。そのため原子力発電所外の周辺近郊地域には原子力発電所で発生した放射性物質を含む有害物質は一切排出されないので安心して近隣地域住民は心配なく居住できるようにするものである。
【0016】
本願発明の原子力発電所を建設する場合新規に建設する場合とすでに建設されている原子力発電所を本願方式に改造する場合とに分類して実施例を説明すると、新規に建設する場合は揚水ダムのある山間部に建設する場合や新たに揚水ダムを建設する場合には実施例1のようになり、すでに建設され運用されている場合の原子力発電所本願方式に改造する場合は実施例2と実施例3のようになる。
【実施例1】
【0017】
これから新規に原子力発電所を建設する場合、本願発明の実施例としてはその最適地として向いているのは揚水発電所である。揚水発電所に原子力発電所を併設することである。その最大の要因はは非常時の原子力発電所内の電源の確保が容易である。非常時外部電源が停止しても揚水発電所で発電した電力は常時原子力発電所内で使用できるからである。非常時外部電源の停止、非常用自家発電の停止等重複した事故が発生しても揚水発電所においては上部ダムから下部ダムへの放水による発電が可能であるので容易に発電して電力の供給が可能となる。普段は原子力発電所の夜間の余剰電力を利用して下部ダムから上部ダムへの揚水作業を行い上部ダムにいつも水力を蓄積して発電可能な体制が確立しておけるので安全対策としては最適である。更に原子力発電所の発電が停止して冷却機能が作動しなくなっても上部ダムの水で強制的に格納容器や圧力容器の冷却矢燃料貯蔵プールの冷却水を注入を続けられる事が上げられる。このように冷却水の確保、電源の確保等が容易である。
【0018】
また揚水発電所は所在地が山間部であるため用地代が安価であるため建設費が抑制できるメリットがある。建設場所が山間部であるため新たな工事用、作業用進入路を建設しなければならない問題が発生するが現在の機械化された土木工事からすればさほどの困難さはない。発電所の大部分は地中化するため景観的にも見た目の危険性が排除され、一番の目的は原子力発電所からは放射性物質は地中で除染処理されるので外部に排出されることはなく、周辺地域に済む少ない住民も安心して居住が出来る。
【0019】
図1のように原子炉本体である格納容器9は図2の大型の遂道25の内部に建設されタービン13と腹水器12が格納容器と繋がり、下部ダム15と冷却水用の冷却水管路18と腹水器12、更に地下汚染水貯留槽19とも繋がっている。図1の上部ダム2の水を除染タワー最上部の第1層の除染水取り入れ口3に接続して循環処理水として図8の第1層33に貯めて浄化装置34を通過後第2層36、第3層37に貯留される。図1に戻って原子炉格納容器9と除染タワー7はベントした際の排気ダクト5により図8の除染タワーの第6層46と接続される。更に上部ダムと下部ダムは用水発電用の水路4が設置され昼間は必要時発電を行い、夜間は余剰電力を使用して揚水ポンプ16として下部ダムの水を上部ダムに汲み上げ昼間の活用に利用される。原子炉やタービン13及び腹水器12からの漏洩した水や滞留水は地下汚染水貯留槽19に貯留後、非常時以外の通常時に地下汚染水貯留槽のポンプで汚染水汲み上げ配管54を通して図8の第7層50にくみ上げて油分分離装置65、凝集沈殿装置66を通してつぎの複数ある各除染室51に流して除染作業を行うものである。更に図1の原子炉建屋8とタービン建屋内11の空気も放射能濃度を測定して必要が生じた場合は送風機で第4層40に送気してフィルター除染を行うこをも可能である。もちろん非常時の外部電力の送電施設や非常用発電装置、非常用蓄電池等の施設も配備して多重化して、多角的な電源の確保も完備されるものである。
【0020】
本方式の原子力発電所の除染設備タワーの概要及び除染施設の運用方法ならびに除染作業の大まかな工程を説明すると図1の側面図にように揚水発電所の上部ダムと下部ダムの中間位置の山腹に遂道を必要な長さを掘削して、遂道内面を鉄筋コンクリートで強化補強し内部にそれぞれの施設を図1のように配置して核反応による発生する熱を利用して電力を発生させる施設となるものである。
【0021】
図2は山腹に掘削される各遂道の正面図で各遂道が図のように山腹に配置され、必要時以外はハッチで閉鎖され外部とは完全に遮断される。除染施設となるタワー構造の各施設の配置は図1の側面図では10段になる構造で設計されているが発電所の発電能力等により構造は自由に設計されるものであり別段特定するものでなく必要な施設が配置されていいればよい。除染タワーの概要は図8に示すように最上部の第1層の貯留槽の除染水取り入れ口3に上部ダム2から除染用冷却処理水が取り込まれ浄化装置34を通過して第2層36と第3層37が貯留槽として利用される。第5層42と第6層48は非常時にベントされた際のガスをここに原子炉から排出ダクト5により誘導してこの中に入れられる。ベント排出したガスは高温高圧のため自然に流れ込む事になる。第5層内に取り付けられている圧力センサーと温度センサーと排出ダクト5内の圧力センサー及び温度センサーが(図示されていない)が一定の数値に安定したら排出ダクト遮蔽水放出バルブ39が開弁して、排出ダクト遮蔽水貯留槽38内部の水が弁の下部の配管を通して第6層に放出する。この水が排出ダクト遮蔽用水位液面47の図で示された点線部分の水位に達すると排出ダクト5と第6層は水で遮断され通気不能の状態となる。この時図8の排出ダクト遮蔽フロートバルブ63は第6層入口とダクト部分を閉鎖して通気出来ない状態にする。
【0022】
ベントして排出されたガスは第6層、第5層に閉じ込められた状態でこのガスに含まれる放射能は除染水で散水による水除染作業を行う。水除染は第3層37に貯留されている除染水を除染水排出バルブ56を開弁して散水配管60を通じて5層と第6層の天井部に配管支持具43で多数吊り下げられた状態で配置された配管下部の細部の穴からシャワー状態で散水して層内のガスに含まれる放射能を散水除染する。除染水排出バルブ56の開弁は排出バルブ遮蔽フロートバルブ63の閉弁動作と連動して行うものである。第5層と第6層に散水を始めた除染水は第6層の下部に蓄積していくが、開始時は第6層48の点線47で表示されている水面位置であるが散水配管60により散水により層内の水位が上昇していく事によりガスが層内上部に圧縮されることにとより第6層分にあった気体は第5層に押し上げられていく。散水作業の継続により第6層の最上部まで水に満たされると第6層上部のフロートバルブ45が動作して第6層と第5層が遮断される。そして散水配管44も第6層と第5層の連結部分である散水配管バルブ44が閉じて第6層の散水作業は終了する。第5層42の散水配管60の散水作業は引き続き継続して行われる。第5層も除染水の水位の上昇は続く、それにより気体の圧力は高まり気体排出口58から排出される気体は除染ガス放出管62を通じて第6層の水面下部に敷設してある管の上部の小さな穴から気泡として第6層に溜まっている除染水中に放出されて更に気泡中の放射能は除染水に取り込まれる事により放出ガスの放射能は更に低減していく。第6層に気泡として放出した気体分は上昇しても第5層には前記した弁45の閉鎖により第5層には排出されずに第6層の上部にあるガス吸い込み口46から吸い込まれ、第4層に排出することになる。第6層ガス排出管61は第4層のフィルター室に連結されている。この連結口のバルブは前記した第6層が満水時に作用したフロートバルブの作用で第6層ガス排出バルブ59は開弁して第4層と通気状態になる。そのため第6層の気体はフィルター室に自動的に流れていく。第5層と第6層で2度にわたる水による除染工程を行い、放射能が低減した気体は第4層40にて放射能除去フィルターを通過させて更に除染作業を行う。
【0023】
第4層のフィルター室は図8では5室設けられており、各室にはヨウ素、セシウム134、セシウム137、ストロンチューム、プルトニューム等と吸着の良い化学物質により作成された各フィルターが必要枚数が各フィルター室内に設置されており第6層ガス排出管61を通じて入ってきた気体分はフィルターに通過接触させて除染を行う。フィルター室の最終除染には放射能の吸着の良い土壌をフィルターとして通過させて除染を行う。このようにベントで排出した気体は水による2回の除染工程更にフィルター層を通過して除染作業を繰り返し安全な放射能レベルに低減するものであり、多くのフィルター層通過させ安全性を最大限確保する多重システムになっている。安全なレベルまで放射能の低下を確認して原子炉建屋等の内部に循環して再使用されるが一部排気塔1からも排出する場合もある。第5層、第6層の放射能で汚染した除染水は気体分の除染作業の終了後第6層の下部にある汚染水放出バルブ64を開弁して第7層47に汚染水が流し込まれる事になる。
【0024】
この第7層に油分分離装置62と凝集沈殿装置63が配置されており、汚染水はこの装置を通過して汚染水除染室51に入っていく。図8では汚染水除染室51は3室並んでおり、汚染水はそれぞれの除染室で並列して処理を行い除染効率を高めることが可能となる。世界的に実績のあるメーカーの除染システムを多数各室に採用する事で能力の比較及び故障停止率を測り、事後対策の目安にすることの資料に出来る。常に最新の除染能力の高い除染設備を設置して効率の良い除染を行う事が可能となる。第7層で除染された水は第8層から第10層に貯留して、燃料貯蔵プールや原子炉格納容器、圧力容器の補充水や腹水器等の冷却水として利用する。
【0025】
ベントしたガスが第6層と第5層で水除染が完了し、除染を終了したガスが第4層のフィルター室を通過して再除染を完了する。第6層と第5層に溜まった汚染水も第7層に設置されている油分分離装置、凝集沈殿装置を通過後、放射能除染施設を通過して除染が終了した除染水は下層になる第8層から第10層に貯留して、最初の除染工程が終了する。この初期除染工程は非常事態が発生して全電源喪失状態でも非常用バッテリー等による小電力による電源でも発電所の計器類が稼動させる電力で初期段階の除染作業を遂行可能となる。原子炉本体の圧力容器内の燃料棒のメルトダウンを回避して最悪の事態を招かないための予防処置となるものである。初期段階の除染作業を終了すると各層のフロートバルブや他の弁は初期状態に戻して次の除染工程に入る事になる。第6層と第5層の汚染水が第7層に流下して無くなると排出ダクト遮蔽フロートバルブ61が開弁するとベント排出ダクト5内に1回目で第6層に送気出来なかった放射能を含む残留ガスを送気ファンにより再度第6層に送気して残留放射能の除染作業を実施する事になる。この時原子炉が非常停止した理由が電源停止による場合は電源再開が2度目の除染工程に入る条件となるが電源が回復すれば冷却ポンプの駆動やその他の装置の正常運転開始の確認が出来るものとなる。実施例1の場合は揚水発電所と除染タワーが同一場所にあるので非常事態の発生や全電源喪失等の場合には安定冷却への前処置をしたり、電源復旧を図る場合には極めて有利である。
【0026】
図8の塩分離淡水化装置配置室35は実施例1の揚水発電所においては上部ダムは真水であるために必要としない。これは実施例2、実施例3の場合のみに除染タワーの第1層に配置されるものである。
【0027】
地震発生や原子炉各所で異常事態が発生し、原子炉の制御棒が投入され核反応が停止しも燃料棒の表面温度は摂氏500度内部温度は1800度と高温状態にあり、格納容器、圧力容器を水棺しても冷却を停止するとメルトダウンが起こる可能性があることは周知の事実であるがこの状態では毎時100トンの水が蒸発すると想定されている。非常時に全電源喪失が発生して腹水器の冷却循環が停止した場合でも自動的に毎時100トンの注水は継続するとした場合、電源復旧まで一週間必要としたとき100毎時/トン×24時間×7日=16,800トンの冷却水が継続して注水循環する水量が必要となる。最悪の事態を想定してこの水量を貯留することが必要となるので除染タワーの設計時この水量を考慮して設計する必要がある。ただし第一実施例のように揚水ダムの原子力発電所を建設する場合は上部ダムに十分な水量を確保されている場合はこの注水用冷却水の用量を余り多く確保の必要性は低いが第2実施例や第3実施例のように海岸線に建設されている原子力発電所に本方式の除染タワーを建設する場合は十分冷却水の容量の確保は考慮しておく必要性がある。
【0028】
このように本願発明は原子力発電所において放射能に汚染された気体や汚染水を除染施設があるタワー構造の建屋に誘導して除染作業を行い外部に漏洩排出拡散することを防止して周辺地域が放射能で汚染されるのを防ぐ施設である。過去の原子力発電所の事故からも判るように一端放射能が周辺地域に拡散すると長期に渡る期間、周辺住民は居住できなくなり多大な損害が発生することになる。その被害損害はすでに人類は経験済みで将来的にも安全対策を十分に認識して将来的に新たなエネルギー源を確保する技術が確立するまでは地球温暖化対策の面からも原子力発電に依存せざるを得ない現状では事故対策には十分考慮して当たらなければならない。
【0029】
ベントの実施により最初に排出したガスを除染タワーの第6層と第5層で除染が終了すれば非常事態の状況により、揚水発電の電力や非常電源が使用可能とする余裕があればベント排出ダクト内に遮蔽されていた残留ガスを第6層にファンを駆動して送気し、水除染を再開して除染を継続しても良いし、地下汚染水貯留タンク19に溜まった汚染水を第7層にポンプアップして除染を開始しても良い、また格納容器内や圧力容器内に水素ガスの発生があれば窒素ガスの注入等を開始しながら圧力容器周辺の冷却水注入作業の継続した実行、建屋や施設内各所の放射能に汚染した空気の換気誘導して除染処理を実施する等作業員の健康管理を考慮した除染作業を行い発電再開への情報を中央制御室に集中統合して必要に応じて判断し総合的な安全管理運営が必要となる。
【実施例2】
【0030】
実施例2の除染タワー施設はすでに海岸沿い等に建設されている原子力発電所が安全対策を強化するために本願発明を採用して除染タワーを増設する場合の実施例を図3に示している。この場合原子炉施設の背後に山や丘陵地がある場合に適している。実施例2の場合は実施例1同様に除染タワー自体を背後の山等の地中に遂道を掘削してそれぞれの穴に鉄筋コンクリートで補強して使用するものである。地中内部に除染タワーを設置して事故で最悪の事態が発生しても放射能を周辺地域に拡散しないよう除染タワーにベントした気体や汚染水を導き除染するものである。施設の構造等実施例1とほとんど同じであるが非常事態時に海沿いであるため地震津波による被害を想定して、非常電源の設置場所や防波堤や複数の電源確保による対策等を講じておく事が必要であり、最悪の事態が発生した時の水源の確保と共に海水を使用する事態も考慮して塩分除去装置を設置して真水の貯蔵する施設も用意しておく必要がある。図4は図3の平面図で海中から冷却水を地下の水路で取り込み冷却用としてタービン建屋、汚染水地下貯蔵タンクに取り入れ冷却用として使用できる配置となっている。汚染水地下貯蔵タンクは汚染水が溜まった際にはポンプ(P)で除染タワーに汲み上げ緊急時で無い時除染作業をして除染水は再利用を行う。また地中に埋設するのは非常事態時に地中に埋設して周辺地域に放射能の拡散を防止する事にある。
【実施例3】
【0031】
実施例3の場合は実施例2のように海岸沿いの原子力発電所の背後に山間丘陵地が無い場合図5のように除染タワーを鉄筋或いは鉄骨構造のコンクリートで建設した建屋内に設置して除染作業を実施するものである。図6は配置図の平面図を示し、図7は除染タワーの構造の正面図で中央部に各除染施設を収容するタワー構造の坑道を建設して、正面図両サイド部には作業用坑道が併設されている。この場合実施例1や実施例2のように地中に建設するのでその構造は円形にする方が建設が容易であるが実施例3の場合は平地に高層階の建屋構造に建設するので図7のような構造で建設するほうが工法的にも予算的にも容易である。大きな構造物であるために費用の高騰など問題点は多いが事故が発生した場合の事を考慮すれば安全対策として克服しなければならい問題である。この場合も緊急時真水の供給が停止する事を考慮して海水の使用の必要性が発生する事も考慮して実施例2の場合と同様に図8に爪されているように除染タワー第1層の後部に塩分分離淡水が装置35を設置して緊急時用の事故対策として設置しておく事が安全対策上必要である。特段設置場所は特定されず適当の場所ならばどこでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
世界的に脱原発の世論が高まる中の現状での原子力発電所の電力供給の継続は安全運転に対する不安が完全に払拭されない限り脱原発運動の減少は望めにくい、そのために本願発明による原子力発電所の建設稼動は放射能事故が発生しても発電所周辺地域への放射能拡散を防止して山中或いは除染施設内に封じ込めてしまい、放射能に汚染された発電所内の汚染水や内部空気は内部に設置されている除染装置で除染してから排出するものとするであるので外部には拡散が防止される。従来の原子力発電所で事故が発生したとして、その場合放射能性ガスが周辺地域に放出拡散すると周知のように被害地は住宅地から農地山林に始まり、農産物、海産物、畜産業界に汚染が拡大すると莫大な補償問題が発生する。場合によって数十年単位の期間その地域に居住できなくなる恐れが発生しうる。
【0033】
本方式での実施例1、実施例2の発電所建設はトンネル掘削用マシンで掘削して内面は鉄筋コンクリートで補強すれば早期のトンネル掘削工事の完了が可能であるし、施設の外部に覆われる部分は岩盤であるため建設費も平地に建設するよりもむしろ安価に建設が可能と判断できる。前記したように事故時に発生する補償額を勘案すると工事額の費用問題などは対象外であると判断できる。各層の除染タワー内の各種センサー類やモニターの通信回線は中央制御室に集中統合して極力自動化を図ると共に人力で手動で操作する部分や箇所は各層へは作業坑道を通じて入坑して操作が可能となる。非常事態が発生して電源が喪失した場合でも半自動で電源回復までベントした気体や汚染水の除染作業止めることなく継続が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】 揚水ダム方式での本方式の原子炉及び除染施設配置図
【図2】 従来方式の原発施設の配置図
【図3】 既設海岸沿い原子力発電所及び除染施設の地中化による配置図
【図4】 既設海岸沿いの発電所除染施設地上方式配置の平面図
【図5】 既設発電所の平地上に除染施設の建設方式
【図6】 図5の方式の配置平面図
【図7】 図5の方式の除染施設の構造図
【図8】 除染タワー詳細図
【符号の説明】
【0035】
1 排気塔
2 上部ダム
3 除染水取り入れ口
4 揚水ダム水路
5 ベント排出ダクト
6 排気ダクト
7 除染タワー
8 原子炉建屋
9 格納容器
10 燃料貯蔵プール
11 タービン建屋
12 腹水器
13 タービン
14 中央制御室
15 下部ダム
16 揚水発電機
17 汚染水排出管路
18 冷却水管路
19 地下汚染水貯留槽
20 汚染水汲み上げポンプ
21 作業用坑道
22 第1層
23 第2層
24 第10層
25 原子炉建屋遂道
26 地下汚染水貯留槽
27 工事作業用坑道
28 冷却水管路
29 海
30 防波堤
31 第5層
32 除染水汲み上げ管路
33 第1層
34 浄化装置配置室
35 塩分分離淡水化装置配置室
36 第2層
37 第3層
38 排出ダクト遮蔽水貯留槽
39 排出ダクト遮蔽水放出バルブ
40 第4層
41 除染水配管
42 第5層
43 除染水配管支持具
44 除染水散水配管閉鎖バルブ
45 第6層、第5層連絡管閉鎖バルブ
46 第6層排出ガス取り込み口
47 排気ダクト閉鎖用水上部液面
48 第6層
49 気泡放出配管
50 第7層
51 汚染水除染処理室
52 第8層
53 第9層
54 汚染水汲み上げ配管
55 第10層
56 除染水排出バルブ
57 ガス除染フィルター室
58 第5層気体排出口
59 第6層ガス排出バルブ
60 散水配管
61 第6層ガス排出管
62 除染ガス放出管
63 排出ダクト遮蔽フロートバルブ
64 汚染水放出バルブ
65 油分分離装置
66 凝集沈殿装置
67 除染循環水放出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所に於けるベントした排出ガスの除染システムの構造に於いて、排出ガスを格納するトンネルを上下二段に重力の作用で上段から下段に水が流れ落ちるように交互に傾斜角を持つ貯留槽を配置し、前記二段状のトンネルの一段おいて上段に前記二段のトンネルの内部を満たす容量のトンネルを2段配置して内部に放射能を除染する清水を満たし、前記二段のトンネルの下段側に原子炉格納容器から排出したガスを前記二段のトンネルに収納後、前記二段トンネルの上部トンネルに貯留している清水を前記2段トンネル内天井部に敷設した配管によりシャワー状に散水して除染作業を行う、前記二段トンネルの下段トンネル底部に散水した除染水を蓄積し、下部タンクのガスを上部タンクに圧縮貯留後下部タンクと上部タンクの連絡坑を閉鎖し、下部タンクにガスを上部タンクに圧縮蓄積したガスを配管を通じて気泡状に満水になった下部タンク底部の配管から水中から再度循環放出して、ガス内の放射能を満水状態の下部トンネルの除染水に放射能を転移させるとともに前記2段状タンクが満水状態になるまで散水して下部タンクに放出したガスを前記2段状タンクの上のタンクのフィルター除染室を複数備えるタンクに放出してガス内残留放射能をフィルター除染を行うと同時に、前記2段状タンクに満水に蓄積した汚染水は前記2段状の下部に配置したトンネルのタンクにバルブを開放して流出し、油分分離装置を通過して凝集沈殿装置を通過後、複数の除染システムを通して汚染水を低濃度に除染し、更にその下部にあるタンクに原子炉循環水として再使用するために貯留する構造をした各層トンネルが交互に傾斜角を持たせ重力により自然に降下流出する事を特徴とするタワー構造の原子力発電所内で発生した放射能を内部処理する除染システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88419(P2013−88419A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239579(P2011−239579)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【特許番号】特許第4974258号(P4974258)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(310011963)