説明

放熱器およびその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は放熱器およびその製造方に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、オーディオ機器や、OA機器等に組み込まれて、電子部品の放熱を行う放熱器は知られている。この種のものは、図8に示すように、アルミニウム製の押出し型材101の表面を削り起こして放熱フィン102を形成することにより製造される。しかしながら、押出し型材101を使用したのでは、製造上の制約からベース101aの幅(w)を450mm以下、厚さ(t)を2.5mm以上にしなければならず、放熱器の大きさに制約を受ける。この制約を取り除くために、従来、平板状のパネルに中空突出部を設けて、この中空突出部を削り起こして放熱フィンを形成した放熱器が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の構成では、放熱フィンの枚数やサイズによるところの放熱効果に限界があり、それ以上には、放熱効果を高めることができないという問題がある。また、図8に示すものでは、放熱器に流す風向は一方向に限定され、それに直交する方向には風を流すことができないという問題がある。
【0004】そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、放熱器の大きさに制約を受けることがなく、且つ、放熱器に流す風向に制限を受けることがなく、更には、従来のものに比べて放熱効果を十分に高めることができる、放熱器およびその製造方を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第1の発明は、板部材の両面に圧着防止剤を用いて膨管予定部をプリントし、前記板部材の上下にそれぞれ別の板部材を重ねて圧延、圧着し、その後、前記膨管予定部に高圧空気を導入して膨管部を形成することにより、パネル本体を製造し、前記パネル本体の一面の膨管部を削り起こして放熱フィンを形成し、前記パネル本体の他面の膨管部には熱伝達媒体を循環又は封入する回路を形成したことを特徴とするものである。
【0006】また、第2の発明は、最小1.2mm程度にまで厚さの薄い、板部材の両面に圧着防止剤を用いて膨管予定部をプリントし、前記板部材の上下にそれぞれ別の板部材を重ねて圧延、圧着し、その後、前記膨管予定部に高圧空気を導入して膨管部を形成することにより、パネル本体を製造し、電子部品を取付けるためのスペースを避けるようにして、一面の膨管部を、この膨管部の長手方向に削り起こしてリング状の放熱フィンを形成するとともに、他面の膨管部には熱伝達媒体を循環又は封入する回路を形成したものである。
【0007】
【作用】第1、第2の発明によれば、パネル本体の一面の膨管部を削り起こして放熱フィンを形成するので、その放熱フィンはリング状になるので、放熱器に流す風の向きは、従来のように一方向に限定されることがなくなり、例えば、放熱フィンの面に直交する方向へも風を流すことができる。また、従来のように押出し型材を使用しないので、製造上の制約も受けなくなり、放熱器の大きさに制限を受けない。更には、パネル本体の他面の膨管部には熱伝達媒体を循環又は封入する回路が形成され、これによれば例えばヒートパイプが形成されるので、放熱効果を格段に高めることができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明による放熱器の一実施例を図面を参照して説明する。
【0009】図1において、1は放熱器のパネル本体を示し、この本体1は平板状のパネルに複数条の膨管部(中空突出部)3を形成することにより製造される。
【0010】すなわち、この実施例では、本体1はアルミニウ製であり、例えばロールボンド製法により製造される。なお、この明細書においては、以下、アルミニウムの語は純アルミニウムのほかにアルミニウム合金を含むものとする。
【0011】パネル本体1の製造について説明すると、まずアルミニウム板100を設け、このアルミニウム板100の両面に圧着防止剤を用いて膨管予定部101をプリントし、アルミニウム板100の上下にはそれぞれアルミニウム板102,103を重ねて圧延、圧着し、その後、膨管予定部101に高圧空気を導入して、それらの部分を膨管する。
【0012】づきに、この実施例によれば、上記のようにして製造したパネル本体1の一面に放熱フィンを形成する。
【0013】まず、図2及び図3において、パネル本体1の一面の膨管部3(図1)に、図示を省略した削り起こし刃を当て、この削り起こし刃を膨管部3の長手方向(a方向)に前進、移動させる。これにより、膨管部3は削り起こされ、1列目の放熱フィン5aが形成される。
【0014】ついで、削り起こし刃を後退させ、その位置で、上記と同様に削り起こし刃を再び膨管部3に当て、膨管部3の長手方向(a方向)に前進、移動させて、2列目の放熱フィン5bを形成する。
【0015】さらに、この削り起こし操作を順に繰り返して、3列目以降複数列に亘る放熱フィン5c…を形成する。
【0016】このように製造された放熱フィン5は、図2R>2に示すように、その形状がほぼリング状に形成される。
【0017】つぎに、パネル本体1の他面の膨管部3(図1)には、熱伝達媒体を封入して、公知手段としてのヒートパイプ200を形成する。
【0018】しかして、この実施例によれば、ロールボンド製法によりパネル本体1を製造するので、従来工法と異なり、ベ−ス1aの厚さ(t)は最少1.2mm程度にまで可能になる。また、伝熱面積の大きさは押出型材のような限界がなく自由に設計できる。例えば、本実施例であれば、1000mm×2660mm(W×L)程度にまで大きくとれる。
【0019】さらに、従来と異なり、本体1の肉厚を薄くできるので、軽量化が図れ、また、膨管部3のパターンは任意に変更が可能になる。
【0020】また、放熱フィン5は、その形状がほぼリング状に形成されるので、放熱器として使用する際には、放熱フィン5の面に風通し孔が開口したのと同じ構成になるので、従来の風を通す方向(X方向)のほかに、例えば図2に示すように、放熱フィン5の面に直交する方向(Y方向)にも風を通すことができるので、従来のものに比べて、二方向に風を流せる、きわめて使い勝手に優れる放熱器を提供することができる。
【0021】さらに、この実施例の特徴として、パネル本体1の一面には放熱フィン5を形成するとともに他面にはヒートパイプ200を形成するので、従来のものに比べて、放熱効果を格段に向上させることができる。なお従来では放熱フィンとヒートパイプを別々に製造し、その後、それぞれをブレージングやその他の方法で接合することは行われていたが、これだと製造コストがアップするとともに重量が増し、さらには放熱フィンとヒートパイプ間の熱抵抗が増大するという欠点がある。この実施例によれば、これらすべての問題を簡単な構成により解消できるという効果をも奏する。
【0022】図4は、この放熱器に電子部品を取付けた具体例を示している。
【0023】パネル本体1の一面には、電子部品110を取付けるためのスペースが設けられ、具体的には、そこを避けるようにして、放熱フィン5が形成される。他面には全域に亘る膨管部3が設けられ、そこにはヒートパイプ熱伝達媒体が封入されている。これによれば、電子部品110から発生する熱は、パネル本体1の一面の複数枚の放熱フィン5を通じて放熱されるとともに、他面のヒートパイプを通じて吸熱側Aから放熱側Bに送られ、その放熱側Bの放熱フィン5を通じて放熱される。従って、放熱器の放熱効率は従来のものに比べて格段に向上する。
【0024】図5〜図7は、本発明の参考例を示している。
【0025】この本体1には高さの高い膨管部31と、高さの低い膨管部33とが形成されている。この高さの低い膨管部33には、ヒートパイプ熱伝達媒体が封入され、この放熱器は、ヒートパイプ式放熱器を構成している。
【0026】そして、高さの高い膨管部31は、上記の実施例と同様に、複数段に亘って削り起こされ、そこにはリング状の放熱フィン35が形成される。
【0027】この場合の製造法としては、まず高い膨管部31を削り起こして放熱フィン35を形成した後、低い膨管部33に熱伝達媒体を封入する。
【0028】これによれば、図6からも明らかなように、パネル本体1の板面には、リング状の放熱フィン35のほかにヒートパイプ回路33が設けられるので、上記の実施例と同様に放熱効率を向上させることができる。また、この場合には、パネル本体1の板面に高低のある膨管部を形成しているが、同じ高さの膨管部を形成し、1列または複数列毎に膨管部を削り起こすようにしてもよい。
【0029】この製造法としては、削り起こし刃の刃先を、膨管部を跨ぐように切り欠いておき、その削り起こし刃を用いて削り起こせばよい。
【0030】なお、上記の実施例において、パネル本体1の膨管部3,33には、熱伝達媒体を封入して、ヒートパイプを形成する例について説明したが、この膨管部3,33には冷媒を循環させることにより、本発明による放熱器を、熱交換器として機能させることも可能である。
【0031】以上、一実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0032】例えば、本体1はロールボンド製法により製造したものに限らず、平板状のアルミニウム製、或いはステンレス製のパネルにチューブ(中空突出部)を接合し、このチューブを削り起こして放熱フィンを形成したものでもよい。また、本体1はアルミニウム板が3層のものを説明しているが、それに限定するものではなく、4層以上のものであってもよい。
【0033】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、パネル本体の一面の膨管部を削り起こして放熱フィンを形成するとともに、パネル本体の他面の膨管には例えばヒートパイプを形成したので、放熱フィンはリング状になるので、従来の風を通す方向のほかに、例えば放熱フィンの面に直交する方向にも風を通すことができるので、二方向以上に風を流せる、使い勝手に優れるものになるとともに、従来のものに比べ、放熱効率に優れる放熱器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による放熱器の一実施例を示す斜視図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】放熱器に電子部品を取付けた例を示す斜視図である。
【図5】本発明による放熱器の他の実施例を示す斜視図である。
【図6】同じく平面図である。
【図7】同じく側面図である。
【図8】従来の放熱器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 本体
3,31,33 膨管部(中空突出部)
100 アルミニウム板
101 膨管予定部
102 アルミニウム板
200 ヒートパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 板部材の両面に圧着防止剤を用いて膨管予定部をプリントし、前記板部材の上下にそれぞれ別の板部材を重ねて圧延、圧着し、その後、前記膨管予定部に高圧空気を導入して膨管部を形成することにより、パネル本体を製造し、前記パネル本体の一面の膨管部を削り起こして放熱フィンを形成し、前記パネル本体の他面の膨管部には熱伝達媒体を循環又は封入する回路を形成したことを特徴とする放熱器の製造方法。
【請求項2】 最小1.2mm程度にまで厚さの薄い、板部材の両面に圧着防止剤を用いて膨管予定部をプリントし、前記板部材の上下にそれぞれ別の板部材を重ねて圧延、圧着し、その後、前記膨管予定部に高圧空気を導入して膨管部を形成することにより、パネル本体を製造し、電子部品を取付けるためのスペースを避けるようにして、一面の膨管部を、この膨管部の長手方向に削り起こしてリング状の放熱フィンを形成するとともに、他面の膨管部には熱伝達媒体を循環又は封入する回路を形成したことを特徴とする放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3495098号(P3495098)
【登録日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【発行日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−171995
【出願日】平成6年6月30日(1994.6.30)
【公開番号】特開平8−18262
【公開日】平成8年1月19日(1996.1.19)
【審査請求日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【参考文献】
【文献】特開 平4−72795(JP,A)
【文献】特開 平6−159894(JP,A)
【文献】特開 平5−60483(JP,A)
【文献】特開 平4−224357(JP,A)
【文献】特開 平4−340091(JP,A)