説明

放電ランプ用電極

【課題】電極部と封着線部とが一体に成形され、量産性に優れた放電ランプ用電極を提供することである。
【解決手段】放電ランプ用電極は、放電ランプ用ガラス管の端縁部内から外に配置され、放電用電極部、上記放電電極部と接合部材が用いられずに一体として接続されたガラス管封着部からなる放電ランプ用電極において、上記放電用電極部は、上記放電ランプ用ガラス管の外側に向かって有底の円筒であり、射出成形法により上記放電ランプ用電極を成形するとき、キャビティの上記放電用電極部の底に相当する位置に設けられたゲートから成形材料が射出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプ用ガラス管の内部に封止される放電ランプ用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放電ランプ用電極は、ガラス管内に突出する有底の円筒状の電極部と、一方の端部が電極部に接続され他端部にリード線が接続される封着線部とが一体に成形されている。そして、電極部の材質は、モリブデン、タングステン等である。また、封着線部は、ガラスシールされるため、石英ガラスと熱膨張係数が近似するタングステン、モリブデンである。さらに外部リード線の材質は、ジィメット線、ニッケル・マンガン線等が使用されている。これら各部は通常抵抗溶接で接合され電極が構成されている。そして、この一体化電極は、粒度がミクロンオーダーのタングステン粉末又はモリブデン粉末に適量のドープ剤と放電特性改良剤を添加し、水素還元した後、有機バインダを加えて射出成形する。得られた成形体を1800℃以上の高温で燒結することにより、相対密度98%程度の電極を得ることができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−63469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タングステン粉末またはモリブデン粉末に有機バインダを加えて金型内のキャビティに射出成形するとき、成形体の外側面に相当するキャビティの面にゲートが設けられているので、焼結した成形体をガラス管内に挿入するために、外側面に残っているゲート跡を修正しなければならず、後加工に工数が掛かってしまうという問題がある。
また、ゲートを成形体の外側面に相当するキャビティ面に設けると、金型内でのキャビティの配置に制約を受けるために、多数個のキャビティが設けることができずに量産性に欠けるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、電極部と封着線部とが一体に成形され、量産性に優れた放電ランプ用電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる放電ランプ用電極は、放電ランプ用ガラス管の端縁部内から外に配置され、放電用電極部、上記放電電極部と接合部材が用いられずに一体として接続されたガラス管封着部からなる放電ランプ用電極において、
上記放電用電極部は、上記放電ランプ用ガラス管の外側に向かって有底の円筒であり、
射出成形法により上記放電ランプ用電極を成形するとき、キャビティの上記放電用電極部の底に相当する位置に設けられたゲートから成形材料が射出される。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わる放電ランプ用電極の効果は、射出成形において円筒状の電極部の内面に相当するキャビティの面にゲートが設けられているので、射出成形後スプルに詰まった成形材料を成形品から除くだけよく、焼結後ゲート跡を均す必要がなく、後処理に掛かる工数が少なくなる。
また、ゲートが電極部の内面に相当するキャビティの面に設けられると、スプルの延長上にキャビティが直線状に設けられるので、複数のキャビティを金型内に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明の実施の形態1に係わる放電ランプ用電極の断面図である。
実施の形態1に係わる放電ランプ用電極1は、図1に示すように、内径が2.7mmの円筒状のガラス管2の端縁部内に挿入され、ガラス管2の内側に向いて開き、ガラス管2の外側に向いて底3を有し、外径が2.7mmの円筒状の放電用電極部5、この底3に接合部材を用いずに底面が一体として接続され、外径が0.8mmの円柱状のガラス管封着部8から構成されている。放電用電極部5の円筒状の側面の厚みは0.35mmである。
そして、放電用電極部5の底3には、射出成形されたとき、金型のランナ6に連なるゲート4の跡が残っている。
また、ガラス管封着部8は、ガラスビーズ7の孔を貫通し、熱処理を施すことにより、ガラス管封着部8とガラス管2の間が封止される。
【0009】

面図である。金型10は、図2に示すように、図示しない射出成形機のノズルに連接されるスプル11から各キャビティ12に延びるランナ6がゲート4で各キャビティ12に連なっている。そして、ゲート4は、放電用電極部5の底3に対応するキャビティ12の面に設けられている。
【0010】
次に、射出成形法を用いた放電ランプ用電極1の作製について説明する。
平均粒度0.8ミクロンのタングステン粉末に3wt%相当のニッケル量になるように硝酸ニッケルを水又はエタノールに溶解してドーピングした。そして、ドープしたタングステン粉末に放電特性改良剤として、酸化ランタンを総量で0.1〜4wt%添加する。
得られた粉末を乾燥した後、水素中で800℃で還元した。しかる後、この還元粉末を射出成形用の有機バインダであるエチレンビニルアセテート・ブチルメタアクリレート・ポリスチレンの共重合体、パラフィンワックス、フタル酸ブチル、ステアリン酸と混練し、金属粉末射出成形用のフィードストックとした。これを150〜160℃に保持した射出成形機に投入し、金型10中に射出成形した。
【0011】
得られた成形体を水素雰囲気中で350℃まで徐昇温し、脱脂した。その後、水素中で1850℃で30分燒結し、燒結体からなる放電ランプ用電極1を得た。そして、放電ランプ用電極1に外部リード線であるニッケル線を抵抗溶接で接合した。その後、ガラス管封着部8をガラスビーズ7の孔に通し、全体をガラス管2に挿入して無酸化雰囲気中でヒーターで加熱して溶着した。
【0012】
このような放電ランプ用電極1は、放電用電極部5の底3の部分に射出成形用のゲート4を設けられているので、射出成形後に必要とする後処理が少なくて済むので、安価な放電ランプ用電極1を提供することができる。
【0013】
また、ゲート4が放電用電極部5の内面に相当するキャビティ12の面に設けられると、ランナ6の延長上にキャビティ12が直線状に設けられるので、複数のキャビティ12を金型10内に設けることができて、量産性に優れる。
【0014】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係わる放電ランプ用電極の断面図である。
この発明の実施の形態2に係わる放電ランプ用電極1Bは、実施の形態1に係わる放電ランプ用電極1とガラス管封着部5Bの外部リード線14を接合する箇所が異なっており、その他は同様であるので、説明において同じ符号を付記して説明する。
実施の形態2に係わる放電ランプ用電極1Bは、実施の形態1と同様に射出成形法により作製される。そして、実施の形態1のガラス管封着部5では、ガラス管封着部5の端面に外部リード線が抵抗溶接されるが、実施の形態2のガラス管封着部5Bの端面に0.6mmの円柱状の切り欠き15が設けられ、その切り欠き部15に外部リード線14を挿入して側面から抵抗溶接16が行える。
【0015】
このような放電ランプ用電極1Bは、外部リード線14を挿入できる切り欠き部15が設けられているので、しっかりと外部リード線14を位置決めしてから抵抗溶接16することができ、接続の強度が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる放電ランプ用電極の断面図である。
【図2】実施の形態1に係わる放電ランプ用電極を射出成形するための金型の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係わる放電ランプ用電極の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1、1B放電ランプ用電極、2 ガラス管、3、 底、4 ゲート、5 放電用電極部、6 ランナ、7 ガラスビーズ、8、8B ガラス管封着部、10 金型、11 スプル、12キャビティ、14 外部リード線、15 切り欠き部、16 抵抗溶接。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ用ガラス管の端縁部内から外に配置され、放電用電極部、上記放電電極部と接合部材が用いられずに一体として接続されたガラス管封着部からなる放電ランプ用電極において、
上記放電用電極部は、上記放電ランプ用ガラス管の外側に向かって有底の円筒であり、
射出成形法により上記放電ランプ用電極を成形するとき、キャビティの上記放電用電極部の底に相当する位置に設けられたゲートから成形材料が射出されることを特徴とする放電ランプ用電極。
【請求項2】
上記ガラス管封着部は、上記放電ランプ用ガラス管の外側に面する端面に外部リード線が挿入できる切り欠き部を有することを特徴とする請求項1に記載する放電ランプ用電極。
【請求項3】
タングステンまたはモリブデンが主成分であることを特徴とする請求項1または2に記載する放電ランプ用電極。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−286585(P2006−286585A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132980(P2005−132980)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(598061519)
【出願人】(505004879)
【出願人】(505159940)
【Fターム(参考)】