説明

放電ランプ

【課題】 バルブの表面にキズを生じにくくすることで、強度の高い放電ランプを提供する。
【解決手段】 本発明の放電ランプは、ガラスバルブ1と、ガラスバルブ1に設けられた電極3とを具備しており、ガラスバルブ1の表面には潤滑層4が形成されていることを特徴とする。この潤滑層4は、シリコーン、シリコーンオイル、窒化ホウ素または界面活性剤から選択された少なくとも一の材料を含有してなるのが望ましい。また、潤滑層4が形成されたガラスバルブ1表面の動摩擦係数は、0.20未満であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコン等のバックライトの光源として用いられる放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源には、外面電極蛍光ランプや冷陰極蛍光ランプが主流である。これらのランプは、内面に蛍光体層が形成されたガラスバルブの端部に電極が設けられてなり、電極に電力を供給することでランプが点灯する構造となっている。
【0003】
ここで、特に外面電極蛍光ランプは、ガラスバルブの外面に電極が形成された構造であるので、特開2008−135348号公報のように、バックライトへのランプの実装を簡素化するため、電極が形成されたガラスバルブ部分を一対の狭持片を有する給電端子に嵌め込むでランプをバックライトに取り付ける構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなバックライトへのランプの実装工程において、ランプが破損するなどの問題が発生している。この問題について発明者が検証した結果、梱包、輸送、取り扱い時等に生じたガラスバルブ表面のキズが原因であることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、バルブの表面にキズを生じにくくすることで、強度の高い放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の放電ランプは、バルブと、前記バルブに設けられた電極とを具備する放電ランプであって、前記バルブの表面には潤滑材がコーティングされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブの表面にキズを生じにくくすることで、強度の高い放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図。
【図2】実施例と従来例の梱包による強度変化について説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図。
【図4】第2の実施の形態の放電ランプと従来例のオゾン発生電圧について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の放電ランプについて図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。
【0011】
蛍光ランプの容器は、例えば、硬質ガラスからなるガラスバルブ1で構成されている。ガラスバルブ1は両端部が封着により密閉された細長い筒型形状であり、その内部には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。ここで、希ガスとしてはネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンなどの単体または混合ガスを用いることができ、特にはネオンとアルゴンの混合ガスが適している。また、ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲に、例えばRGBの3波長蛍光体で構成された蛍光体層2が形成されている。
【0012】
ガラスバルブ1の両端部の外表面には、電極3が形成されている。この電極3は、超音波振動が加えられた溶融半田が注がれた半田槽にガラスバルブ1の端部をディップする、いわゆる超音波半田ディップにより形成された半田電極である。この電極3の材料としては、ガラスとのなじみが良好なスズ、スズとインジウムまたはスズとビスマスなどに、アンチモン、亜鉛、アルミニウムなどを添加した金属材料を使用することができる。
【0013】
ガラスバルブ1の一対の外部電極間の外表面には、潤滑層4が形成されている。この潤滑層4は、シリコーン、シリコーンオイルまたは界面活性剤から選択された少なくとも一の材料を含有する潤滑剤からなる被膜であり、これにより潤滑層4を形成していない場合よりもガラス表面の潤滑性が向上する。この被膜は、ガラス表面に潤滑剤をコーティングすることにより形成可能であり、その膜厚はだいたい1μm以下となる。このように、ガラスバルブ1の外表面に潤滑性の高い潤滑層4を形成することで、梱包、輸送、取り扱い時等のランプ同士の接触、ガラスよりも硬い金属部材等との接触が生じても、ガラスバルブ1の表面で引っかかりにくくなる。そのため、ガラス表面にキズが生じにくくなるので、強度劣化が少なくなり、破損しにくいランプを実現できる。
【0014】
下記に本実施の形態の放電ランプの一実施例を示す。なお、以下で説明する試験は特に言及しない限り寸法、材料等はこの仕様に基づいて行っている。
【0015】
(実施例)
ガラスバルブ1;硼珪酸ガラス、全長=360mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、
放電媒体;水銀、ネオン:アルゴン=9:1の混合ガス、ガス圧=2.7kPa、
蛍光体層2;RGBの3波長蛍光体
電極3;スズ−亜鉛−アンチモン、全長=20mm、
潤滑層4;シリコーン・エマルジョン(東レ・ダウコーニング株式会社製のシリコーンと界面活性剤を含有する材料)を外部電極間のバルブ表面に形成、動摩擦係数=0.17。
【0016】
この実施例のランプと、潤滑層を形成していない従来のランプについて、強度試験を行った。その結果を図2に示す。強度試験は、それぞれのランプを50本まとめてエアーキャップの上に配置、エアーキャップを丸めていき、両端を閉じて固定する梱包を所定回数行ったときの強度を測定したものである。なお、図中の強度はガラスバルブ1を300mmのピッチで2点保持したのち、そのピッチの中間点を10mm/secのスピードでプッシュプルゲージで押し、ランプが破損したときのゲージの値である。
【0017】
結果からわかるように、従来のランプは、1回梱包で約0.49kgf、3回梱包で約0.46kgf、5回梱包で約0.47kgfと梱包回数が増えるにつれて強度が低下する傾向があった。これは、梱包のたびにランプ同士が擦れ合い、表面のキズが増えたためである。潤滑層を形成していない従来のランプの梱包前の強度が、平均で約0.54kgfであったことからすると、梱包等による強度の低下は大きいといえる。
一方、実施例のランプは、1回梱包で約0.55kgf、3回梱包で約0.55kgf、5回梱包で約0.53kgfと、従来例と同様に梱包回数が増えるにつれて強度が低下する傾向はあるが、その低下割合は従来のランプと比較すると少ない。これは、表面に潤滑性を持たせたことで、ガラス表面にキズが発生しにくくなったためと考えられる。実際、5回梱包後の両ランプのガラス表面の目視可能なキズを数えたところ、従来例のランプは250個であったのに対し、実施例は140個であったことから、潤滑性が高いほどキズがつきにくくなることは明らかである。
【0018】
なお、潤滑層4はほぼ透明であるので、光の出射を妨げたり、発光色を変化させたりという弊害は無視できる。また、実施例の1回梱包後の強度が、従来のランプの梱包前の強度よりも高いことから、潤滑層4を形成することで多少強度が上がるという効果も得ることができる。なお、外面電極蛍光ランプに限らず、冷陰極蛍光ランプや熱陰極蛍光ランプ等でも、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0019】
次に、潤滑剤を変えて同様の試験を行った。その結果、ワックス・コーティング剤(武蔵ホルト株式会社製のシリコーンオイルと界面活性剤を含有する材料)や、窒化ホウ素粉末水性分散体(日本黒鉛工業株式会社製の窒化ホウ素を含有するる材料)などであれば、上記実施例と同様の効果が得られることが確認された。そして、効果が確認された潤滑剤の共通点から、未コーティング時よりも潤滑性が向上していればキズに対してかなりの効果が得られ、すなわち潤滑剤をコーティングしたガラスの動摩擦係数が、従来のガラスの動摩擦係数である0.20未満、望ましくは0.19以下、さらに望ましくは0.18以下であれば、ガラスの表面にキズが生じにくいランプを実現できることがわかった。また、動摩擦係数を低下させるには、シリコーン、シリコーンオイル、窒化ホウ素または界面活性剤などを含有する材料を用いればよく、特には透明性も高いシリコーン、シリコーンオイルまたは界面活性剤などを含有する材料であるのが望ましい。
【0020】
したがって、第1の実施の形態では、ガラスバルブ1の表面に潤滑層4を形成したことで、ガラス表面の潤滑性が高まるため、梱包、輸送、取り扱い時等にランプ同士が接触、ガラスよりも硬い金属部材等とランプが接触しても、ガラスバルブ1の表面にキズが生じにくくなり、強度劣化が少ない破損しにくいランプを実現することができる。そのため、バックライトの大型化、簡素化により従来よりもランプに強度が要求されるようになっている近年のランプ事情においては、とても重要な発明である。
【0021】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0022】
この実施の形態では、潤滑層4を管軸方向中央側の電極3の端部を覆うように形成している。この実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
また、本実施の形態では、電極3の管軸方向中央側の端部付近におけるオゾンの発生を抑制できるという効果も得ることができる。すなわち、外部電極蛍光ランプでは、電圧印加時に電極3の管軸方向中央側の端部とガラス部分とでコロナ放電が発生し、オゾンが発生しやすくなるという問題がある。この問題は、図3のような、電極3を、金属板を巻いてなる筒状の金属部材31と半田層32とで構成した電極3の管軸方向中央側の厚みが大きい外部電極蛍光ランプにおいては、さらに問題となりやすい。このオゾンが発生する電圧は、ランプのサイズにかかわらずAC2000Vrms前後である。これに対して、本実施の形態のように、潤滑層4を管軸方向中央側の電極3の端部を覆うと、当該電極部分とガラス間でのコロナ放電の発生を抑制できるので、オゾンの発生を抑制することができる。
【0024】
上記具体的な効果を、従来のランプと第2の実施の形態のランプのオゾン発生電圧について説明するための図である図4を参照して説明する。結果からわかるように従来例のランプでは平均2100Vrmsでオゾンが発生しているのに対し、実施例のランプでは平均2900Vrmsまでオゾンの発生を抑制できているから、実施例のランプの方がオゾンが発生しにくいのは明らかである。このようなオゾン発生電圧の上昇は、ランプに印加可能な電圧限界が高くなるということであるので、この発明を利用すれば従来よりも長尺の外部電極蛍光ランプを実現することができるようになる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラスバルブ
2 蛍光体層
3 電極
4 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、前記バルブに設けられた電極とを具備する放電ランプであって、
前記バルブの表面には潤滑層が形成されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記潤滑層が形成された前記バルブ表面の動摩擦係数は、0.20未満であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記潤滑層は、シリコーン、シリコーンオイル、窒化ホウ素または界面活性剤から選択された少なくとも一の材料を含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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