説明

放電管点灯装置及びトランスコア

【課題】トランスの温度上昇を抑制し、放電管点灯装置の小型化を図ることができる放電管点灯装置、及び、同トランスのトランスコアを提供する。
【解決手段】中央鉄心部18と、この中央鉄心部18の両端間を繋ぐヨーク19とを備えたトランスコア15において、ヨーク19の幅側端縁には、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部20が形成されている。このトランスコア15は、放電管点灯装置10のシャーシ12の底部に切り起こされた4つのシャーシ側爪部16によって、肉厚部20がシャーシ12に当接する状態で保持される。また、シャーシ12に固定されるカバー13には、4つのカバー側爪部22が切り起こされており、このカバー側爪部22によってトランスコア15がシャーシ12に押さえつけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスを備えた放電管点灯装置、及び、同トランスのトランスコアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるものがある。
すなわち、特許文献1に記載のものにおいては、ベース部と、このベース部に嵌合されるカバー部とからなるケース内において、ベース部に設けられた枠状のトランス抑え部によって、トランスのコイル部が抑えられている。また、カバー部に設けられた押え突片によってトランスのプリント基板が押さえられている。そして、この構成により、ネジを用いることなくトランスをベース部に対して容易に固定できるとされている。
【0003】
また、特許文献2に記載のものにおいては、板ばねに対し、天井部と、板ばねの両側からトランスコアを抱きかかえる両腕部と、ベース板へのネジ止め用の孔が設けられた取付片とが形成されている。そして、両腕部に抱きかかえられた状態のトランスコアの中央部が、天井部によって弾性的に押さえられることにより一対のトランスコアがベース板に固定される。
【特許文献1】特開平8−45747号公報
【特許文献2】特開2000−182847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、誘電体バリヤ放電ランプ等の放電管を点灯させるための放電管点灯装置において、トランスは、金属シャーシに対しブラケットを介して固定されるとともに、シャーシに固定されるカバーによって覆われていた。そして、このカバー内には、主にトランスから発生する熱を点灯装置の外部に逃がすための広い空間が設けられ、この空間を介した放熱によってトランスの過度の温度上昇が防止されるとともに電力損失の増大が抑制されていた。従って、シャーシ及びカバーによって構成される放電管点灯装置の筐体が、空間の分だけ大きくなるのを避けることができなかった。
【0005】
この発明の目的とするところは、トランスの温度上昇を抑制し、放電管点灯装置の小型化を図ることができる放電管点灯装置、及び、同トランスのトランスコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中央鉄心部と、この中央鉄心部の両端間を繋ぐヨークとを備えたトランスコアを、ベース部材に固定した放電管点灯装置において、前記ヨークの幅側端縁を前記ベース部材に当接させたことを特徴とする。このような構成によれば、トランスで発生した熱は、ベース部材に当接するヨークからベース部材に直接伝達され、さらにベース部材から放電管点灯装置の外部に逃がされる。このため、放電管点灯装置の筐体内に放熱用の広い空間を設けなくても、トランスコアが効率良く冷却される。従って、トランスの温度上昇を抑制し、放電管点灯装置の小型化を図ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、前記ヨークの幅側端縁に、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部を形成し、この肉厚部を前記ベース部材に当接させたことを特徴とする。このような構成によれば、トランスコアの熱は、ヨークの肉厚部のより広い接触面を通じて効率良くベース部材に逃がされる。ここで、トランスコアは、そのヨークにおける幅側端縁の肉厚部の肉厚が他の部分よりも厚くなるだけであるので、トランスの体積はそれほど増大しない。このため、トランスコアの冷却効率が向上し、トランスの温度上昇が一層抑制されるので、放電管点灯装置をさらに小型化することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に加えて、前記ベース部材を金属板から形成するとともに爪部を切り起こし、この爪部によって前記トランスコアを位置決め保持したことを特徴とする。このような構成によれば、トランスコアをベース部材に固定するための別部品を必要としないので、別部品を装着するための空間をトランスの周囲に設ける必要がない。このため、部品点数及び組立工数を削減することができるとともに、放電管点灯装置を小型化することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明に加えて、金属板から形成されるとともに前記ベース部材に固定される蓋体を備え、この蓋体に切り起こした爪部によって前記トランスコアを同ベース部材に押さえつけたことを特徴とする。このような構成によれば、ベース部材と蓋体とにより構成される筐体の内部において、トランスコアを確実に固定することができる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、中央鉄心部と、この中央鉄心部の両端間を繋ぐヨークとを備えたトランスコアにおいて、前記ヨークの幅側端縁に、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部を形成したことを特徴とする。このような構成によれば、ヨークをベース部材に当接させた状態でトランスコアをベース部材に固定することにより、ヨークとベース部材との接触面を通じてトランスコアの熱が効率良くベース部材に伝達される。ここで、トランスコアは、そのヨークの幅側端縁に形成された肉厚部の肉厚が他の部分よりも厚くなるだけであるので、トランスの体積はそれほど増大しない。このため、トランスコアの冷却効率が向上し、トランスの温度上昇が一層抑制されるので、放電管点灯装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記各肉厚部は、前記中央鉄心部側に向かって突出することにより肉厚が増大するように形成されていることを特徴とする。このような構成によれば、肉厚部がヨークの外方へ突出しないため、トランスが放電管点灯装置の筐体内に占める容積が増大せず、筐体の小型化に有利となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、トランスの温度上昇を抑制し、放電管点灯装置の小型化を図ることができる放電管点灯装置、及び、同トランスのトランスコアを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明を具体化した一実施形態について図1〜図5を用いて説明する。
図1に示すように、放電管点灯装置10は、図示しないインバータや、トランス11が固定されるベース部材としてのシャーシ12を備え、このシャーシ12には、蓋体としてのカバー13が着脱可能に固定されるようになっている。シャーシ12及びカバー13は、いずれも導電性の金属板からプレス成形されており、放電管点灯装置の筐体14を構成する。なお、放電管点灯装置10は、バッテリから供給される直流をインバータにより交流に変換した後、この交流をトランス11によって昇圧させ、図示しない放電管に出力する。
【0014】
図2に示すように、シャーシ12の底部には、トランス11のトランスコア15を固定するための4つのシャーシ側爪部16がシャーシ12の内側に向かって切り起こされている。トランスコア15は、この4つのシャーシ側爪部16によって挟持されることによりシャーシ12の底部内面上に位置決め保持されている。また、トランスコア15は、同じ形状の一対の半コア体17を突き合わせて構成され、図示しない1次コイル及び2次コイルが設けられる中央鉄心部18と、この中央鉄心部18の両端間を繋ぐ一対の板状のヨーク19とを備えている。そして、中央鉄心部18とヨーク19との間には、空間が形成されている。
【0015】
図4及び図5(a),(b)に示すように、ヨーク19の幅方向(図4における上下方向)における下側端縁には、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部20が形成されている。この肉厚部20は、その下側ほど中央鉄心部18側に向かって突出することにより肉厚が増大するように形成されている。そして、図3(a),(b)に示すように、トランスコア15は、この肉厚部20をシャーシ12の底部内面に当接させた状態で、前記シャーシ側爪部16によって位置決め保持される。なお、各半コア体17の上側における中央鉄心部18とヨーク19との接続部分において、ヨーク19には、1次コイル又は2次コイルの端子を配置するための切欠き部21が形成されている。
【0016】
また、図2に示すように、前記カバー13には、シャーシ12の底部内面上に位置決めされたトランスコア15をシャーシ12に押し付けるための4つのカバー側爪部22がカバー13の内側に向かって切り起こされている。また、カバー13には、カバー側爪部22毎に対応して開口部22aが形成されている。図3(b)に示すように、この各カバー側爪部22は、シャーシ12に対してカバー13が固定された状態において、トランスコア15のヨーク19の上面にそれぞれ当接する。従って、トランスコア15は、シャーシ側爪部16とカバー側爪部22とにより、筐体14内において固定保持される。さらに、カバー13には、トランス11やインバータで発生した熱を筐体14の外部に放出するための網状の開口部23が広い範囲に亘って形成されている。
【0017】
さて、図示しない放電管への電力供給に伴って、1次コイル及び2次コイルの発熱や鉄損等によりトランスコア15の温度が上昇する。トランスコア15の熱は、シャーシ12の底部上面に当接する肉厚部20の広い接触面を通じてシャーシ12側に効率良く逃がされる。また、トランスコア15の熱は、トランスコア15にそれぞれ当接する各シャーシ側爪部16及び各カバー側爪部22を通じてもシャーシ12及びカバー13に効率良く逃がされる。このとき、トランスコア15から熱が伝えられる各カバー側爪部22が、それぞれ開口部22aに面しているので、放熱効率が一層向上する。さらに、トランスコア15の熱は、筐体14内の空気を介して、トランスコア15に対面する各開口部22aと、網状の開口部23とからも筐体14の外部に逃がされる。このため、トランスコア15の過度の温度上昇が抑制され、電力伝達損失の増大が抑制される。
【0018】
次に、以上詳述した本実施形態が有する効果を列記する。
(1) この実施形態によれば、トランス11で発生した熱が、トランスコア15におけるヨーク19の下側端縁に形成された肉厚部20を通じて熱伝導性のシャーシ12に効率良く逃がされる。従って、トランス11からの放熱用の広い空間を筐体14内に設ける必要がないので、放電管点灯装置10を小型化することができる。
【0019】
(2) 金属板からなるシャーシ12の底部に切り起こした複数のシャーシ側爪部16によってトランスコア15を位置決め保持するとともに、同じくカバー13に切り起こした複数のカバー側爪部22によってトランスコア15をシャーシ12側に押さえつけた。従って、上記特許文献2の構成とは異なり、トランスコア15をシャーシ12に固定するための別部品を必要とせず、別部品を装着するための空間をトランスコア15の周囲に設ける必要がない。このため、部品点数及び組立工数を削減することができるとともに、放電管点灯装置10を一層小型化することができる。
【0020】
(3) 肉厚部20は、中央鉄心部18側に向かって突出することにより肉厚が増大するように形成されている。従って、肉厚部20を設けても、トランスコア15がヨーク19の外方へ突出することはなく、筐体14内に占める容積が増大しないので、筐体14の小型化に有利となる。
【0021】
(4) ヨーク19の下側端縁のみに肉厚部20を形成したので、トランスコア15の上側は従来と同様な大きさのまま開口している。このため、肉厚部20があっても、中央鉄心部18への1次コイル及び2次コイルの組み付け作業が容易なままとなる。
【0022】
なお、この発明は、次のように変更して具体化することもできる。
・ 図5(a)に二点鎖線で示すように、トランスコア15におけるヨーク19の上側端縁に肉厚部20と同様な肉厚部30を設けるとともに、この肉厚部30の上面30aにカバー13の内面を当接させてトランスコア15をシャーシ12に押さえつける構成とする。この場合には、トランスコア15の熱が、前記肉厚部20を通じてシャーシ12に効率良く放熱されることに加え、この肉厚部30を通じてカバー13に効率良く放熱される。従って、トランスコア15の冷却効率が一層向上し、トランスコア15の温度上昇が一層抑制されるため、筐体14内の空間をより小さくして放電管点灯装置10をさらに小型化することができる。
【0023】
・ この発明を、肉厚部20を備えないトランスコア15を備えた放電管点灯装置10に具体化する。
・ この発明を、冷陰極管、熱陰極管、あるいは、一般蛍光灯の点灯装置に具体化する。
【0024】
以下、上記実施形態から把握される技術的思想を記載する。
請求項3に記載の放電管点灯装置において、金属板から形成されるとともに前記ベース部材に固定される蓋体を備え、この蓋体の内面によって前記トランスコアを同ベース部材に押さえつけたことを特徴とする放電管点灯装置。この構成によれば、トランスコアの温度上昇を一層抑制し、放電管点灯装置をさらに小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の放電管点灯装置を示す分解斜視図。
【図2】同じく要部を示す放電管点灯装置の分解斜視図。
【図3】(a)は放電管点灯装置の平面図、(b)は(a)におけるa−a線断面図。
【図4】トランスコアにおける半コア体を示す斜視図。
【図5】(a)はトランスコアの縦断面図、(b)は同じく別の位置における縦断面図。
【符号の説明】
【0026】
10…放電管点灯装置、11…トランス、12…ベース部材としてのシャーシ、13…蓋体としてのカバー、15…トランスコア、16…爪部としてのシャーシ側爪部、18…中央鉄心部、19…ヨーク、20…肉厚部、22…爪部としてのカバー側爪部、30…肉厚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央鉄心部と、この中央鉄心部の両端間を繋ぐヨークとを備えたトランスコアを、ベース部材に固定した放電管点灯装置において、
前記ヨークの幅側端縁を前記ベース部材に当接させたことを特徴とする放電管点灯装置。
【請求項2】
前記ヨークの幅側端縁に、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部を形成し、この肉厚部を前記ベース部材に当接させたことを特徴とする請求項1に記載の放電管点灯装置。
【請求項3】
前記ベース部材を金属板から形成するとともに爪部を切り起こし、この爪部によって前記トランスコアを位置決め保持したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放電管点灯装置。
【請求項4】
金属板から形成されるとともに前記ベース部材に固定される蓋体を備え、この蓋体に切り起こした爪部によって前記トランスコアを同ベース部材に押さえつけたことを特徴とする請求項3に記載の放電管点灯装置。
【請求項5】
中央鉄心部と、この中央鉄心部の両端間を繋ぐヨークとを備えたトランスコアにおいて、
前記ヨークの幅側端縁に、他の部分よりも肉厚とされた肉厚部を形成したことを特徴とするトランスコア。
【請求項6】
前記各肉厚部は、前記中央鉄心部側に向かって突出することにより肉厚が増大するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のトランスコア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−194356(P2007−194356A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10136(P2006−10136)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)