説明

放電試験器を用いた欠陥シミュレーション方法および放電試験器

【課題】信頼性を試験する経費を相当に低減することのできるケーブルの欠陥シミュレーション方法および放電試験器を提供する。
【解決手段】放電試験器を用いた欠陥シミュレーション方法において、高電圧発生器30から電極を介して試験電圧32を連続ケーブルに印加し、検出器44により絶縁破壊を認識して表示し、欠陥カウンタ48により合算する。所定のレベルと持続時間と周波数での欠陥認識の信頼性を試験する試験電圧32を固定スパークギャップに印加し、これらのパルス駆動試験電圧を放電試験器の高電圧発生器30により生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の放電試験器を用いた欠陥シミュレーション方法と請求項8に記載の放電試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、ケーブルや絶縁電線は所定の絶縁破壊抵抗を持たねばならない。ケーブルや絶縁電線については、放電試験装置が長期に亘り利用可能とされ、これは様々な規格に従い試験電圧の助けを借りて絶縁欠陥について電線の絶縁を試験するものである。この目的に合わせ、数年に亘り欧州規格EN50356もまた存在してきており、それはこの種の装置の設計と加えて種々の試験電圧もまた記述し特定しており、さらに絶縁における欠陥の認識に関する感度を試験することのできる手順を規定している。改定版の欧州規格が、EN62230:2007である。この規格は、異なる試験電圧形態に基づくものであり、それは40〜62Hzの交播電圧や、仮想的な正弦波曲線と500Hzと1MHzの間の周波数を有する交播電圧や、急速昇圧と強烈に減衰する降圧とを有するパルス電圧である。放電試験器はさらに、欠陥のある絶縁あるいは被覆に起因してケーブルの絶縁体や外被が特定の試験電圧を維持せず、接地導体に対する絶縁破壊が発生するときに、欠陥を光学的かつ/または音響的に表示する表示システムを含むものである。欠陥検出器は、各個別欠陥が示されるようデジタルカウンタをトリガーしなければならない。それはまた、ケーブル稼働の最後まで欠陥を合算しなければならない。このカウンタは、次の欠陥を記録して表示が手動で消されるまで、表示を保持しなければならない。
【0003】
放電試験器の感度については、人工的に発生させた欠陥を電極とグラウンドとの間で切り換えたときに欠陥表示を中断させる必要がある。この目的に合わせ、いわゆる欠陥シミュレータを用いることが知られている。それは、シミュレーションする各欠陥について、スパークギャップ内に交播電圧や高周波電圧では0.025秒の持続期間、直流電圧では0.0005秒の持続時間の放電を生成するよう調整するものである。この種の少なくとも20回の一連の放電がトリガー対象とされ、ここでこれらに1秒を上回るタイムラグを持たせてはならない。欠陥検出器の感度は、規定された放電ごとに多少とも違わずに一回のパルスが記録されるよう調整される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記載した要件に合致する既知の欠陥シミュレータは、恒久的に接地電位にある電極を担持する変速機を介して電動モータにより駆動される絶縁ディスクを備える。静止ニードル電極が電極に対向配置してあり、この静止ニードル電極は試験電圧に設定される。ニードル電極とディスク電極との間の距離は、予め規定されている。ニードル電極の寸法もまた、予め規定されている(添付資料B〜EN62230:2007)。放電試験器装置を用いるケーブル製造プラントのオペレータは、それゆえにシミュレータの助けを借りて時間の経過と共に装置を試験する義務を負うものである。1年に少なくとも1回と、加えて最初の組み込み後と装置の毎修理ごとと大きな調整後にも、感度の総合評価を遂行することが推奨されている。
【0005】
本発明の目的は、信頼性を試験する経費を相当に低減することのできる方法あるいは放電試験器を開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1と請求項8とにより達成される。
【0007】
請求項1に記載の本発明による方法では、欠陥検出器の試験感度に合わせた高電圧が所定寸法の静止する標準的なスパークギャップに印加され、高電圧発生器が短い定間隔で所定のレベルと持続時間と周波数の試験電圧(試験用高電圧)を生成する。シミュレーション方法あるいは試験方法がEU規格の規定に準拠する場合、標準的なスパークギャップに試験電圧を印加する時点間の間隔はせいぜい1秒である。試験電圧を印加する最大の持続時間は、交播電流と高周波電圧の場合0.025秒であり、直流電流の場合0.0005秒である。試験電圧の切り換え回数は、少なくとも20回である。
【発明の効果】
【0008】
本発明を用いることで、人工的なスパークギャップの機械的な適用に代え、放電試験器自体は規格に従う試験電圧が固定スパークギャップに印加されるよう制御される。本発明による方策を通じ、電極先端と人工的なスパークギャップを有する対向電極との間の距離は一回調整することができる。それは、それが生成される仕方の一切の許容範囲、例えば既知のシミュレータの回動にも依存しない。本発明による試験機能を用いた放電試験器を装備するのに必要な追加の経費は、無視しうる。試験電圧の精度で最大接触電流の維持に関するEU規格に掲載された点検対策は、同様に少額の追加の経費と一体化することができる。したがって、これまで用いられてきた放電点検器を試験する比較的高価な個別の試験装置は不要となる。本発明では、欠陥シミュレータは追加の試験電圧および短絡電流計測と合わせ放電試験器内に一体化される。
【0009】
請求項8によれば、本発明による放電試験器は標準的な寸法を有するスパークギャップを有しており、このギャップは高電圧発生器の試験器電圧端子と加えてクロック発生器にも接続することができ、このクロック発生器は所定の周波数と発生率でもって高電圧発生器をオン動作させ、所定長さの時間後にその都度オフ動作させる。好ましくは、制御部は記憶するプログラムに従ってクロック発生器を制御する高電圧発生器に一体化される。こうして、放電試験器はそれ自体で試験することができる。製造プラントのオペレータは、個別の試験装置を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】既知の設計の放電試験器を概略的に示す。
【図2】例えば図1に示す放電試験器用の既知の欠陥シミュレータを概略的に示す。
【図3】本発明による放電試験器の動作のための回路図を示す。
【図4】本発明による欠陥シミュレータの動作のための異なる図を示す。
【図5】本発明による欠陥シミュレータのためのスパークギャップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、図面に基づきより詳細に説明する。
【0012】
放電試験器の両端で開口する筺体10は、ヒンジ14を介してフード16が関節式に連結された絶縁プレート12を有する。18に示す安全スイッチは、フード16が開いたときに開成し、これによりフード内部に達した時点で高電圧との接触は皆無となる。この高電圧はすなわち試験電極20に対し試験電圧として印加されるものであり、この電極上には幾つかの並列ビーズチェーン22が吊り下げられている。ケーブル24は試験電極20のv形凹部内とビーズチェーン22のカーテンを通って移動する。試験電極は、26に示す試験電圧端に接続されている。その絶縁体28が試験対象であるケーブルの導体29は、接地電位にある。図3は、図1に示す放電試験器を動作させる回路配置を概略的に示すものである。これは、最大10mAの安全電流限界(最大許容接触電流)を有する高電圧発生器30を含んでいる。その高電圧は、試験電圧端である32に例えば直流電圧や交播電圧や高周波電圧として放出される。それは、図1の電極20に印加される。34において、所望の高電圧が高電圧発生器30に対し指定される。36に示すトリガーは、本発明による実施形態では、図4の第1番目と2番目の線に示す如く、試験電圧端32のトリガーを可能にする。18には図1に示す安全スイッチが見てとれ、安全スイッチはフード16が開いたときに試験電圧を遮断する。
【0013】
個々の試験電圧端32の実際の値のためのディスプレイ38が、高電圧発生器30に接続されている。40に試験電圧の代替ディスプレイが示されており、代替ディスプレイは、本発明による実施形態では、試験電圧ディスプレイ38とは無関係に所定の許容範囲に対するその適合性ついて試験電圧の点検を可能にする。電流−電圧変換器42が、発生器30に接続してある。絶縁体28において絶縁破壊が発生した場合、それが高電圧の顕著な降圧と電流の上昇とにより発信される。電流の上昇は、電流変換器42が属する検出器44内で計測される。これらの変化は、整流器と閾値スイッチ46とを介し欠陥ディスプレイ50だけでなく欠陥カウンタ48にも達する。検出器の感度は、47において調整することができる。
【0014】
本発明との相違点を別にすれば、上記の特徴を有する放電試験器は既知である。
【0015】
図2は、先行技術による欠陥シミュレータを示すものである。絶縁ディスク50は、駆動モータ52と変速機54の助けを借りて垂直軸周りに回転駆動される。第1の電極56は絶縁ディスク50上に配置されており、58に示す如く恒久的に接地電位とされている。対向電極としてのニードル電極60が、プレート電極56がディスク50の回転に合わせ描く円に整列配置されている。試験電圧が電極60に印加され、電極60が電極56に対向するや否や、スパークが生成される。電極60の試験電圧は発生器30から来るため、図3に従うこの方法で検出器44に対し欠陥がシミュレーションされる。それゆえ、欠陥シミュレータが規格に従って動作している、すなわち回転絶縁ディスクの所定の毎分回転数および速度が維持され、電極60,56の互いの距離とニードル電極60の形状が規格に準拠すれば、正しく動作しているかどうか明らかにすることができる。
【0016】
図5は、プレート電極72に対向配置されたニードル電極70を示す。電極70,72の実施形態は、図2に示す電極56,60の形態に対応する。これはまた、電極70,72の互いの距離に関係する。両電極70,72は、静止したままである。図3には図示されていないクロック発生器の助けを借り、36において図3に示す発生器30の試験電圧がオン/オフ切り換えられる。図4の上面図において、25msの持続時間を有するせいぜい1秒のオンパルス74の期間が生成されることが見てとれる。図示の試験電圧は図5に示す電極70に印加され、いずれの場合もスパークを発生する。スパークギャップ70,72に発生器30の試験電圧32が印加されない場合は、図4の2番目の線図に示すような試験電圧曲線75が生ずる。オン期間74の期間中交播する高電圧が生成されることが、見てとれる。しかしながら、スパークギャップ70,72を高電圧発生器30に接続すると、絶縁破壊が生じ、試験電圧はスパークギャップの電弧電圧にまで降圧され、図4の3番目の線図に示すような試験電圧曲線76が生ずる。認識された絶縁破壊が欠陥信号を生起させ、信号は図4の最後の線図に見分けられる如く検出器44により矩形パルスに変換される。欠陥パルスは、欠陥カウンタ48あるいは欠陥ディスプレイ50に与えられる。標的とする高電圧発生器のオン/オフ動作ならびに生成された試験電圧のスパークギャップへの印加を介して欠陥シミュレーションが行なえるようになったことが識別可能であり、このことは図2に記載の欠陥シミュレーションに置き換わるものである。試験電圧発生器30のトリガー動作は、放電試験器をしかるべく修正した場合、高電圧の所要曲線について放電試験器の一部とすることができ、図2に記載の欠陥シミュレーションの如く、別個の装置を必要としない。例えば所定のプログラムに従い、高電圧発生器30のオン/オフ動作の対応するトリガー動作を介して、放電試験器それ自体による試験を行なうことができる。所定時間内で所定数のシミュレーションされた欠陥がまた多少とも違わずに同数の欠陥メッセージをトリガーするかが明らかになる。
【0017】
当然ながら、図5に示すスパークギャップのトリガー中は、図1に示す装置の通常の試験作業は中断される。それゆえ、図示しないスイッチを設け、これにより試験電極20すなわちスパークギャップに高電圧発生器30を任意選択的に接続することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電試験器を用いた欠陥シミュレーション方法で、高電圧発生器の助けを借りて電極を介して試験電圧を連続ケーブルに印加し、検出器により絶縁破壊を認識して表示し、欠陥カウンタにより合算する方法であって、所定のレベルと持続時間と周波数での欠陥認識の信頼性を試験する試験電圧を固定スパークギャップに印加し、これらのパルス駆動試験電圧を放電試験器の高電圧発生器により生成すること、を特徴とする方法。
【請求項2】
2つの連続する試験電圧間の間隔が、1秒未満の持続時間を有すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試験電圧の最大持続時間は、交播電圧または高周波数電圧の場合0.025秒とするか、あるいは直流電圧の場合0.0005秒とすること、を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
試験電圧の数は少なくとも20であること、を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
追加の独立した高電圧計測装置の助けを借り、調整され表示された試験電圧の精度を試験すること、を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
最大許容接触電流の持続を追加の独立した計測装置の助けを借りて試験すること、を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
欠陥認識の信頼性の試験を所定のプログラムに従って遂行し、シミュレーションされた所定数の欠陥が所定時間内に多少とも違わぬ同数の欠陥メッセージをトリガーしたかどうか明らかにし、かつ/または表示された固定電圧の精度および/または接触電圧レベルを試験し、信頼性試験が肯定的に完了したときに信号を生成すること、を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ケーブルや電線の絶縁体に適用することのできる試験電極と、試験電極に接続することのできる高電圧発生器と、高電圧発生器に割り当てられた欠陥検出器と、欠陥検出器に接続された欠陥カウンタとを備える放電試験器であって、高電圧発生器に接続することのできる静止スパークギャップを設け、所定のレベルと持続時間と周波数の試験電圧が生成されるよう、クロック発生器が高電圧発生器をパルス駆動すること、を特徴とする放電試験器。
【請求項9】
制御部は、記憶したプログラムに従ってクロック発生器を制御する高電圧発生器に一体化されること、を特徴とする請求項8に記載の放電試験器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215145(P2011−215145A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78098(P2011−78098)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511082609)シコラ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】