説明

救急車両

【課題】車室外で行われる作業の作業効率のみならず、車室内で行われる作業の作業効率をもより一層向上させることができる救急車両を得る。
【解決手段】車体右側部18のリヤサイドドア22の奥側には閉鎖空間30が形成されており、かかる閉鎖空間30内に外側扉乗員腰部拘束装置36及び内側扉54を備えた収納庫32が設置されている。また、酸素ボンベ50の収納部の上端側には車室外と車室内とを連通する開口部52が形成されており、開閉部材53によって開閉可能とされている。従って、車室外及び車室内のいずれからも、酸素ボンベ50にアクセスできると共に収納庫32に収納された資機材にアクセスすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内或いは車室外からの作業性を考慮した救急車両に関する。
【背景技術】
【0002】
救急車両には、種々の救命用の資機材及びレスキュー用の資機材等が装備されている。また、近年、救急救命士の活動範囲が見直されるに至り、搭載すべき資機材も増加してきている。
【0003】
このように救急車両には種々の資機材が搭載されているのであるが、これらの資機材の中には処置室内に設置しておく必要があるものもあれば、むしろレスキュー用の資機材のように車両外部に設置しておいた方が作業効率上好ましいものもある。また、清・汚水タンク等のように処置室に内容物が零れると衛生上好ましくない資機材もある。
【特許文献1】特表2001−524352号公報(段落番号[0052]、図13a、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現状の救急車両では車両側面の上部に開閉可能な蓋を設けて、レスキュー用工具専用のサイド収納ボックスを設けたり、或いは特許文献1に開示された技術のように酸素ボンベのみを外部からアクセス可能な区域に設置するといった技術が開示されているに過ぎない。
【0005】
以上を背景として、車内処置室と区画しつつ車内外からアクセス可能な空間をより一層設け、救命活動及びレスキュー作業の作業効率を向上させることが可能な救急車両が望まれていた。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車室外で行われる作業の作業効率のみならず、車室内で行われる作業の作業効率をもより一層向上させることができる救急車両を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る救急車両は、車両後部に設けられた処置室と、車両後端部に配置され、開放することにより処置室への出入りが可能となる後部ドアと、車両側部に配置され、開放することにより処置室への出入りが可能となる一方の側部ドアと、反対側の車両側部に配置され、開放することにより処置室と隔成された資機材収納空間へのアクセスが可能となる他方の側部ドアと、を有する救急車両であって、前記処置室を含む車室内から前記資機材収納空間へのアクセスを可能とするアクセス手段を備えている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の救急車両において、前記資機材収納空間には、前記処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能な収納庫が設置されている、としている。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の救急車両において、前記資機材収納空間には、前記処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能なように酸素ボンベが設置されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の救急車両において、前記他方の側部ドアは、車両側面に沿ってスライドするスライドドアとして構成されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、処置室へは後部ドア又は一方の側部ドアを開放させることにより出入りすることができる。また、他方の側部ドアを開放させると、処置室と隔成された資機材収納空間に収納された資機材を車室外から容易に取り出してレスキュー活動等の作業を行うことができる。
【0012】
ところで、資機材収納空間には種々の資機材を収納することができるが、例えば酸素ボンベ等は車室外のみならず、車室内からもアクセスして利用できる方が救命作業を迅速に行うことができる。本発明では、資機材収納空間へのアクセスを可能とするアクセス手段を設けたので、このような場合にはアクセス手段を用いれば資機材手段空間へアクセスすることができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、資機材収納空間には、処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能な収納庫が設置されているので、処置室内でも使い車室外でも使うような資機材を収納させておくと、いずれの場面でも迅速な活動を行うことができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、資機材収納空間には、処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能なように酸素ボンベが設置されているので、車室内及び車室外のいずれからでも酸素ボンベの弁操作や残圧確認等を容易かつ迅速に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、他方の側部ドアは車両側面に沿ってスライドするスライドドアとして構成されているので、資機材収納空間を広く確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る救急車両は、処置室と隔成された資機材収納空間への車室内からのアクセスを可能とするアクセス手段を設けたので、車室外で行われる作業の作業効率のみならず、車室内で行われる作業の作業効率をもより一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る救急車両は、請求項1記載の発明において、資機材収納空間に、処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能な収納庫を設置したので、作業効率の更なる向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る救急車両は、請求項1記載の発明において、資機材収納空間に、処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能なように酸素ボンベを設置したので、救急車両においては重要な酸素ボンベに関する作業効率の更なる向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項4記載の本発明に係る救急車両は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、他方の側部ドアを、車両側面に沿ってスライドするスライドドアによって構成したので、種々の資機材を取り出し易くレイアウトして収納することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る救急車両の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0021】
図5には、本実施形態に係る救急車両10の外観斜視図が示されている。この図に示されるように、救急車両10は、車体左側部12にフロントサイドドア14及びリヤサイドドア16を備えている。フロントサイドドア14はスイング式のドアとされ、リヤサイドドア16はスライド式のドアとされている。なお、図5には、救急車両10の車体左側部12のみが描かれているが、図1に示されるように、車体右側部18も同様にスイング式のフロントサイドドア20とスライド式のリヤサイドドア22とを備えている。さらに、図示した車両は救急車両10であるため、バックドアも備えており、5ドア車として構成されている。
【0022】
図1には、上記救急車両10に搭載された本実施形態に係る資機材収納装置24の全体斜視図が示されている。この図に示されるように、資機材収納装置24は、救急車両10の車体右側部18に設けられており、以下に詳細に説明する。
【0023】
リヤサイドドア22の閉止状態において、当該閉止状態のリヤサイドドア22と対向する位置には、車室内空間(処置室)26と隔成するための仕切り壁28が車体右側部18に沿って立設されている。仕切り壁28は車体フロアから車体ルーフまで延在されており、リヤサイドドア22の大きさに匹敵する凹部を構成している。
【0024】
上記リヤサイドドア22が閉止状態にされると、リヤサイドドア22と仕切り壁28とで資機材収納空間としての閉鎖空間30が形成されるようになっており、この閉鎖空間30を資機材収納スペースとして利用する構成である。
【0025】
ちなみに、この実施形態では、閉鎖空間30内の略右半分(運転席後方)には、縦型の収納庫32が設置されている。収納庫32の上部正面側には、開閉可能な片開きの外側扉36が設けられている。この外側扉36の正面部には、車外救急活動で使用するレスキュー工具34が図示しない固定装置(取付金具)によって固定されている。さらに、収納庫32の下部には抽斗式又は回転ドア式のバッテリ収納部38が設定されており、(救急車両であるがために)メンテナンスの頻度が高いバッテリが収納されるようになっている。また、閉鎖空間30の略左半分の下部側には凹部40が形成されており、この凹部40内に酸素を充填するために取り出す頻度が高い一対の酸素ボンベ50が収納されている。
【0026】
ここで、図1及び図3に示されるように、上述した酸素ボンベ50を収納している凹部40の奥壁42の上部には、車室内空間(処置室)26と凹部40の内方とを連通するアクセス手段としての開口部52が形成されている。この開口部52には、車両上下方向へのスライド動作により開口部52を開閉するアクセス手段としての開閉部材53が配設されている。
【0027】
さらに、図1、図3、図4に示されるように、上述した収納庫32の車外側の面には前述したアクセス手段としての外側扉36が配設されているが、それだけではなく、収納庫32の車内側の面には片開きタイプのアクセス手段としての内側扉54が配設されている。従って、外側扉36及び内側扉54のいずれを開放させても、収納庫32の内部空間58に手が届くようになっている。なお、収納庫32には、サブストレッチャ60や心臓マッサージ器62等、車室外及び車室内のいずれにおいても使用することがある資機材が収納されている。
【0028】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0029】
本実施形態に係る資機材収納装置24を備えた救急車両10は元々5ドア車で構成された車両を使っているため、車体右側部18に設けられている既存のリヤサイドドア22に着眼し、当該リヤサイドドア22と対向する位置に仕切り壁28を設置することにより、当該リヤサイドドア22と仕切り壁28とで閉鎖空間30が形成される。そして、この閉鎖空間30を資機材収納装置24として利用することとしたので、作業者は車体右側部18側のリヤサイドドア22を開放させることにより、各種資機材を車室外から容易に取り出してレスキュー活動等の作業を行うことができる。
【0030】
一方、車室内空間(処置室)26へは、バックドア又は車体左側部12側のリヤサイドドア16を開放させることにより出入りすることができる。
【0031】
ところで、資機材収納装置24には種々の資機材を収納することができるが、例えば酸素ボンベ50等は車室外のみならず、車室内空間(処置室)26からもアクセスして利用できる方が救命作業を迅速に行うことができる。本実施形態に係る救急車両10では、酸素ボンベ50が収納される凹部40の奥壁42の上端部に開口部52を設け、当該開口部52を開閉部材53によって開閉可能に構成したので、必要なときには開閉部材53を上げれば車室内空間(処置室)26から容易に酸素ボンベ50のバルブ操作や残圧確認等の必要な作業を行うことができる。
【0032】
また、収納庫32についてもリヤサイドドア22を開放して車室外から外側扉36を開放させれば、内部に収納されたサブストレッチャ60や心臓マッサージ器62等を容易に持ち出すことができる。一方、収納庫32の内側にも内側扉54を設けたので、車室内空間(処置室)26側からも内側扉54を開放させれば、収納庫32の内部に収納されたサブストレッチャ60や心臓マッサージ器62等を容易に取り出すことができる。つまり、収納庫32内に収納された資機材については車室外からも車室内からもアクセスすることができる。従って、いずれの場面でも迅速な活動を行うことができる。
【0033】
以上より、本実施形態に係る救急車両10によれば、車室外で行われる作業の作業効率のみならず、車室内で行われる作業の作業効率をもより一層向上させることができる。
【0034】
加えて、本実施形態によれば、スライドドアであるリヤサイドドア22を利用して閉鎖空間30を形成して、そこを資機材収納装置24として利用する構成を採ったので、閉鎖空間30を広く確保することができる。従って、かかる資機材収納装置24内に設置されかつ車室外及び車室内のいずれかもアクセス可能な収納庫32の類を単体であれば大きなものを設置することができ、或いは小さめのものであれば複数個設置することができるというメリットがある。このように車室外及び車室内の双方からアクセス可能な収納庫32の類を大型化できたり、複数個設置できたりすると、救命作業・レスキュー作業等の作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0035】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した本実施形態では、スライド式のリヤサイドドア22を閉鎖空間30の引き戸として利用したが、請求項1及び請求項2記載の発明には、スライド式のリヤサイドドア22以外のスイング式のリヤサイドドア等も含まれる。また、必ずしも5ドア車である必要はなく、4ドア車でもよいし、3ドア車でもよい。
【0036】
さらに、上述した本実施形態では、酸素ボンベ50を収納する凹部40の上端部に内外を連通する開口部52を形成し、更に当該開口部52を開閉部材53によって開閉する構成を採ったが、これに限らず、開閉部材53を省略して開口部52のみを形成する構成を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る救急車両に搭載される資機材収納装置の全体構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示される救急車両を車室内空間(処置室)側から見た外観斜視図である。
【図3】図1に示される資機材収納装置の要部を車外側から見た状態で示す斜視図である。
【図4】図1に示される資機材収納装置の要部を車内側から見た状態で示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る救急車両の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 救急車両
16 リヤサイドドア(一方の側部ドア)
18 車体右側部
22 リヤサイドドア(他方の側部ドア)
24 資機材収納装置
26 車室内空間(処置室)
30 閉鎖空間(資機材収納空間)
32 収納庫
34 レスキュー工具(資機材)
36 外側扉(アクセス手段)
50 酸素ボンベ(資機材)
52 開口部(アクセス手段)
53 開閉部材(アクセス手段)
54 内側扉(アクセス手段)
58 サブストレッチャ(資機材)
60 心臓マッサージ器(資機材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に設けられた処置室と、
車両後端部に配置され、開放することにより処置室への出入りが可能となる後部ドアと、
車両側部に配置され、開放することにより処置室への出入りが可能となる一方の側部ドアと、
反対側の車両側部に配置され、開放することにより処置室と隔成された資機材収納空間へのアクセスが可能となる他方の側部ドアと、
を有する救急車両であって、
前記処置室を含む車室内から前記資機材収納空間へのアクセスを可能とするアクセス手段を備えている、
ことを特徴とする救急車両。
【請求項2】
前記資機材収納空間には、前記処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能な収納庫が設置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の救急車両。
【請求項3】
前記資機材収納空間には、前記処置室を含む車室内及び車両外部である車室外の双方からアクセス可能なように酸素ボンベが設置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の救急車両。
【請求項4】
前記他方の側部ドアは、車両側面に沿ってスライドするスライドドアとして構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の救急車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−112202(P2007−112202A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303112(P2005−303112)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591159055)トヨタテクノクラフト株式会社 (19)