説明

教材用気化ロケット

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は教材用または玩具として使用できるロケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】化学および化学技術の基本は実験であり、化学は実験に基いて発展してきた。中高校生に化学の本質を理解させ、化学の面白さ、楽しさを分かってもらうためにも実験は重要である。このような観点から、従来化学の授業において種々の実験が行われ、実験に基いて化学の内容を説明している。例えば、化学反応の速度を教える場合に、鉄と酸素の反応、過酸化水素の分解反応等の実験を行っている。
【0003】また、物理で熱機関の熱効率を説明する際には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの熱効率の数値だけの説明である。
【0004】化学や物理の実験として水の噴射によるロケットが教材として既に存在している。このようなロケットとしては、例えば実開昭60−195097号公報のものが知られている。このロケットはロケット本体に空気を注入し、水を噴出させて推進させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の化学の授業において行われている化学反応の速度を調べる実験は、化学反応という観点からするとよくできているが、生徒の興味、関心は低い。
【0006】物理で熱効率の計算をする実験は簡単にはできなかった。
【0007】また、前述の水噴射によるロケットは、生徒の興味を引き、生徒は面白がって勉強をするが、実開昭60−195097号公報に開示されているようなロケットは機構が複雑であり高価なものとなってしまう。また、空気を注入し、水を噴出させて推進させるだけであるので、教材としては説明するべき応用範囲が狭いものである。
【0008】
【発明の目的】本発明の目的は、身近な物質でよく知っている反応を利用し、寝ている生徒も思わず起きるような面白い実験であり、しかも簡単で且つ安価に作ることができるような実験用教材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも4気圧以上の圧力に耐える薄壁のプラスチック製ボトルがロケット本体をなし、該ボトルの口部となる首部には突出部があり、該ボトルの口部に着脱可能に係合する金属製のキャップがあり、該キャップの中央には小孔が開けられており、前記ロケット本体の首部には尾翼が設けられ、該尾翼は少なくとも3枚の羽根と該羽根を連結し中央に首部受け入れ孔を形成する受け部からなり、該受け部には前記ボトルの突起と係合する孔が設けられていることを特徴とする教材用気化ロケットを用いて前述の目的を達成した。
【0010】
【実施例】図1は本発明の教材用気化ロケットの正面図である。図2は図1に示した気化ロケットのロケット本体とキャップを示す斜視図である。図3は本発明の気化ロケットに使用可能な市販の飲料用ボトルの斜視図である。図4は本発明の気化ロケットの尾翼を構成する1枚の羽根を示す平面図である。図5は本発明の気化ロケットの尾翼を示す斜視図である。
【0011】本発明の教材用気化ロケット(なお、本発明の名称「気化ロケット」は、湾岸戦争時に使用された気化爆弾の名前から発想し命名した)はロケット本体1と尾翼3とから構成される。
【0012】ロケット本体1は薄壁プラスチック製ボトルからなり、この薄壁は少なくとも4気圧以上の圧力に耐えるようにすることが望ましい。薄壁の耐久力を少なくとも4気圧以上にするのは、アルコールを爆発させた際に燃焼温度を1200℃としてどの位の圧力になるかを計算してみると、密閉状態で約5気圧であり、本発明のボトルでは完全な密閉状態ではなく、孔が開いているので4気圧程度耐えるものであれば十分安全である。ボトル1の口部となる首部11には金属製のキャップ2と係合する雄ねじ12が設けられ、また首部11には半径方向に突出した鍔状の係合突出部13が設けられている。ボトルの口部には金属製キャップ2が係合し、この金属製キャップ2にはボトルの雄ねじ12と係合する雌ねじ22が設けられ、またキャップ2の中央には小孔21が設けら、この小孔21は燃料噴出用ノズルの役目を果たす。
【0013】尾翼3はロケットの飛行安定性を高めるとともに、ロケットの発射台の役目を兼ねるものである。
【0014】尾翼3の羽根の数は特に限定されないが3枚から5枚程度でよい。図4に尾翼3の羽根が3枚の場合の、そのうちの1枚の羽根を示している。図4において尾翼3となる部材30は羽根部31とロケット本体1の首部受入れ孔34(図5参照)を形成するための受け部32と糊付部35を有しており、受け部32にはロケット本体1の突出部13と係合するための長方形状をした孔33が設けられている。厚紙またはプラスチック等で図4に示す形状のものを3枚作り、折曲げ線36、37で折曲げて、中央に三角形の首部受入れ孔34を形成するように糊付部35により互いに貼り合わせ、矢羽根形状の尾翼3を作る。糊付部35を互いに貼り合わせるには両面接着テープを使ったり、ホッチキスで止めたり、或いは接着剤を使用すればよい。
【0015】ロケット本体1にキャップ2を締め、上下を逆さまにして尾翼3の首部受入孔34に首部11およびキャップ2を入れ、ロケット本体首部11の突出部13を尾翼3の受け部32の孔33に係合させ、ロケット本体1と尾翼3とを一体化させる。このようにして本発明の気化ロケットが完成する。
【0016】本発明の気化ロケットは教材用として特別に製造してもよいが、ロケット本体1およびキャップ2は市販の飲料用PETボトルを利用して製作することができる。すなわと、PETボトルに入った飲料を購入し、飲料を飲んだ後にその空ボトルを利用することができる。飲料用PETボトルは0.5〜3.0リットルの何れもが利用可能である。飲料用のPETボトルであれば炭酸飲料、ウーロン茶、ジュース、ビール等が入っているものも何れもが利用できる。但し、炭酸飲料のPETボトルの場合は、図3に示すような形状であり、本体10の下側の円筒形の底部40を強く引っ張ると円筒形の底部40が外れて本体10自体の底14が現れる。ボトル本体10自体の底14は丸い格好をしているので、ロケットの雰囲気がでるので好ましい。市販のPETボトルに空気を入れてどの位の圧力に耐えるかを試したところ、約7気圧まで入れたところで蓋の部分が取れた。従って市販のPETボトルは蓋の部分が弱いが、7気圧まで耐えるので本発明の気化用ロケット本体として十分に使用可能である。
【0017】市販のPETボトルの口金20の中央に直径が4〜10mmの丸い小孔(ノズル)21を開けることにより本発明のロケットのキャップ2とすることができる。
【0018】本発明の教材用気化ロケットを飛ばす場合は次のようにして行う。
【0019】先ず、キャップ3を外して、ロケット本体1内に燃料となるアルコール(メタノール、エタノール)を約1cc程度入れて、ロケット本体1を回しながら約1〜2分間アルコールを蒸発させ、余分なアルコールは元の容器に戻す。
【0020】次にキャップ2を締めてロケット本体1を逆さにして、尾翼3の首部受入れ部34にロケット本体1の首部11を入れ、突出部13を尾翼3の孔33に引っ掛ける。
【0021】首部受入れ部34下方の点火箇所38に火を近付ける。この場合、点火した際に高温ガスが噴出するため、火傷をしないようにノズル21の下方に手を入れないように注意する。従って、火をつける場合は手元と火の間の距離が開いていることが好ましいので、チャッカマン(登録商標)ような着火器具を利用するとよい。
【0022】火によってロケット本体1内部のアルコールに着火し、アルコール蒸気の急速な燃焼時の温度上昇で内部の気体が膨脹し、キャップ2のノズル21からガスが噴出する。これが推進力となり、ロケットが飛び上がる。実験によれば、1.5リットルのボトルで、4〜10mmのノズルを開けた場合、約10メートル位上昇した。
【0023】前述した実施例では、燃料としてアルコールを用いたが、可燃性ガス(メタン(都市ガス)プロパン、ブタン(使い捨てガスライター))等を利用することができる。
【0024】高温の燃焼ガスは、断熱膨脹によって直ぐ冷めるので温度が高くてもボトルが熱で溶けることはない。
【0025】また、燃料をロケット本体1にどの程度入れるかについては、爆発限界の関係で燃料が多過ぎても少な過ぎても上手く飛ばない(爆発限界の説明に役立つ)。上手く飛ばすには、アルコールの場合は蒸気をボトル内部に飽和させるようにすればよい。ガスの場合は完全燃焼するように化学反応式から計算して体積を求め、注射器で充填すればよい。
【0026】また、本発明のロケットは燃料を種々変えることにより、燃料によりどような違いが出てくるかを観察することができたり、ノズル21の大きさを変えることにより推進力の経時変化を測定することが可能である。この場合推進力はコンマ何秒の間で変わるので推進の状態などはビデオに撮って計算すればよい。推進力を計る場合は尾翼3を取付けずに秤の上にロケット本体1を図1と逆さにして立て、キャップ2のところに火を付け、秤を押す力を記録してこれを計算すればよい。
【0027】ロケットの上がる高さは、ロケットの大きさや燃料或はノズルの大きさによって変化する。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、ロケットが飛び上がることから、生徒達が非常に興味を持ち、教え易い状態とすることができる。
【0029】また、本発明におけるロケットの推進力は酸素と燃料との反応であり、アルコールにしても可燃ガスにしても身近な反応なので生徒に分かり易い。しかも、この燃焼機構は実物のロケットと同じであり、実験に一層の興味をひかせることができる。
【0030】本発明のロケットは市販の飲料用PETボトル等を利用することができ、安価に製作することができる。
【0031】本発明によれば種々の化学や物理の授業内容を説明するのに役に立つ。
【0032】例えば化学分野では、反応速度の単元における速い反応、遅い反応の説明(反応速度の物質の状態による変化)、反応速度の違いによるエネルギーの質的変化の説明(内燃機関)、都市ガス、有機溶媒の実験で爆発力、爆発限界、爆発の様子の説明、完全燃焼の化学反応式から必要なガス量を計算し実際に実験すること、シャルルの法則の説明(燃焼ガスが吹き出す理由)、気体の状態方程式とアルコールの蒸気圧からアルコールの量の計算すること、アルコールを蒸発する際の蒸発熱を肌で感じること等を教える際に役立てられる。
【0033】物理分野では、作用、反作用の説明(ロケットの原理の説明)、熱による気体分子の熱運動の変化の説明、空気圧ロケットの高度と比較することによって気化ロケットの内圧を推定すること、気化ロケット内圧の推定から内部の温度を計算すること、アルコールの燃焼熱と気化ロケットの上昇高度から熱効率の計算をすること、断熱膨脹の説明(中でアルコールが燃えるのにボトルが溶けない)、ロケットの加速度の測定などを教える際に役立てられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の教材用気化ロケットの正面図である。
【図2】図1に示した気化ロケットのロケット本体とキャップを示す斜視図である。
【図3】本発明の気化ロケットに使用可能な市販の飲料用ボトルの斜視図である。
【図4】本発明の気化ロケットの尾翼を構成する1枚の羽根を示す平面図である。
【図5】本発明の気化ロケットの尾翼を示す斜視図である。
1 ロケット本体
2 キャップ
3 尾翼
11 首部
13 突出部
21 ノズル
31 羽根
33 孔
34 首部受入れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも4気圧以上の圧力に耐える薄壁のプラスチック製ボトルがロケット本体をなし、該ボトルの口部となる首部には突出部があり、該ボトルの口部に着脱可能に係合する金属製のキャップがあり、該キャップの中央には小孔が開けられており、前記ロケット本体の首部には尾翼が設けられ、該尾翼は少なくとも3枚の羽根と該羽根を連結し中央に首部受け入れ孔を形成する受け部からなり、該受け部には前記ボトルの突起と係合する孔が設けられていることを特徴とする教材用気化ロケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2519147号
【登録日】平成8年(1996)5月17日
【発行日】平成8年(1996)7月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−322601
【出願日】平成3年(1991)11月11日
【公開番号】特開平5−134599
【公開日】平成5年(1993)5月28日
【出願人】(591272907)
【参考文献】
【文献】特開昭64−27650(JP,A)