説明

整備計画策定方法

本発明は、例えば航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備のための、整備計画策定方法に関する。この方法は、a)過去に実施したターボ機械の整備から得られたデータを、例えば実施した様々な整備作業とそれら整備作業の実施対象となったターボ機械の様々な運転負荷とを関連付けるなどして構造化した、構造化データの形でデータベースに格納するステップと、b)これから整備をしようとするターボ機械の整備当初計画を策定するために、前記データベースに基づいて、実施すべき一連の整備作業を、それら整備作業の作業種別及び作業手順を指定することにより編成するステップと、c)整備最終計画を策定するために、これから整備をしようとするターボ機械の検査を実施し、その検査結果に基づいて、前記整備当初計画において指定された実施すべき一連の整備作業の作業種別及び/または作業手順に対して補正及び/または補足を加えるステップとを、少なくとも含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備のための、整備計画策定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンエンジンの整備のための、従来の整備方式では、航空機用ガスタービンエンジンの運転時間ないし飛行時間、及び/または、始動回数、及び/または、着陸回数を基準として、整備実施間隔を厳密に定めて、整備を実施するようにしていた。また、従来の整備方式では、これから整備しようとする航空機用ガスタービンエンジンがあるとき、先ず、その航空機用ガスタービンエンジンの検査を実施し、そして、専らその検査結果に基づいて、一連の整備作業を指定するようにしていた。航空機用ガスタービンエンジンの整備のためのこのような従来公知の整備方式には、航空機用ガスタービンエンジンの検査結果が出るまでは、実施すべき一連の整備作業を指定した整備計画を策定することができないという短所が付随していた。そしてそのことが、航空機用ガスタービンエンジンの整備の着手から完了までに要する時間を短縮することを妨げる1つの制約要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、例えば航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備のための、より効率的で、より調整が容易な整備計画策定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載した整備計画策定方法によって達成される。本発明にかかる整備計画策定方法は、a)過去に実施したターボ機械の整備から得られたデータを、例えば実施した様々な整備作業とそれら整備作業の実施対象となったターボ機械の様々な運転負荷とを関連付けるなどして構造化した、構造化データの形でデータベースに格納するステップと、b)これから整備をしようとするターボ機械の整備当初計画を策定するために、前記データベースに基づいて、実施すべき一連の整備作業を、それら整備作業の作業種別及び作業手順を指定することにより編成するステップと、c)整備最終計画を策定するために、これから整備をしようとするターボ機械の検査を実施し、その検査結果に基づいて、前記整備当初計画において指定された実施すべき一連の整備作業の作業種別及び/または作業手順に対して補正及び/または補足を加えるステップとを、少なくとも含むものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る方法によれば、過去に実施した整備から得られた経験値を用いて、これから実施しようとするターボ機械の整備のための整備当初計画を策定する。そして、この整備当初計画の策定の後に、そのターボ機械の検査を実施し、その検査結果に基づいて、この整備当初計画に補正及び/または補足を加え、もって整備最終計画を策定する。
【0006】
それゆえ、本発明に係る方法によれば、整備作業の作業工程計画、整備作業に要する作業機器や作業員などの作業資源の資源計画、それに、期限管理計画を、検査の実施に先立って、いずれも当初計画として策定することができ、ひいては、例えば航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備の、その着手から完了までに要する時間を短縮することができる。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態に係る様々な特徴としては、従属請求項に記載したものなどがあり、それらについては以下の説明の中で詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、例えば航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備のための、整備計画策定方法に関するものであり、本発明に係る整備計画策定方法によれば、整備の着手から完了までに要する時間を顕著に短縮することができる。
【0009】
本発明の方法は、航空機用ガスタービンエンジンの整備計画を策定するという用途に適したものであるが、ただしこの用途だけに限定されず、例えば定置型ガスタービンなどのその他の型式のターボ機械の整備計画の策定にも適用することができる。
【0010】
本発明に係る方法では、過去に実施した航空機用ガスタービンエンジンの整備から得られたデータを、構造化データの形でデータベースに格納し、この構造化データは例えば、実施した様々な整備作業と、それら整備作業の実施対象となった航空機用ガスタービンエンジンの様々な運転負荷とを関連付けるなどして構造化したデータである。
【0011】
更に具体的に説明するならば、整備作業については、その作業種別として例えば、部品洗浄作業、及び/または、部品コーティング除去作業、及び/または、部品コーティング作業、及び/または、部品交換作業などがあり、また、運転負荷については例えば、運転時間ないし飛行時間、及び/または、始動回数、及び/または、着陸回数などがあり、そのような整備作業と運転負荷とを関連付けるようにする。そして、その関連付けにおける関連性(コリレーション)を、複数の事象分岐ノードを含むディシジョンツリーの形に構造化してデータベースに格納する。
【0012】
これから整備をしようとする航空機用ガスタービンエンジンがあるとき、先ず、その航空機用ガスタービンエンジンの整備当初計画を策定するようにし、その策定のためには、そのデータベースに基づいて、実施すべき一連の整備作業を、それらの作業種別及び作業手順を指定することにより編成する。またそれに加えて、これから整備をしようとする航空機用ガスタービンエンジンの整備実施時期も、そのデータベースに基づいて決定するようにしてもよく、そうすれば、その航空機用ガスタービンエンジンの運転負荷に基づいた最適な整備実施時期を決定することができる。
【0013】
この整備当初計画の策定は、構造化データの形でデータベースに格納されている、過去に実施した航空機用ガスタービンエンジンの整備において得られた経験値のみに基づいて行われ、これから整備をしようとする航空機用ガスタービンエンジンの検査結果を必要とはしない。
【0014】
こうしてデータベースに基づいて整備当初計画を策定したならば、続いて、これから整備をしようとする航空機用ガスタービンエンジンの検査を実施し、そして、その検査結果に基づいて、整備当初計画において指定された実施すべき一連の整備作業の作業種別及び/または作業手順に対して、補正及び/または補足を加え、それによって整備最終計画を策定する。従って本発明によれば、先に策定した整備当初計画に対して、検査結果に基づいて変更を加えるだけでよい。
【0015】
本発明によれば、過去に実施したエンジン整備から得られた経験値を利用するため、これから整備をしようとする航空機用ガスタービンエンジンに必要とされる整備範囲を、整備当初計画の策定という形で予め計画に組込むことが可能である。また、その整備当初計画を策定する上で、その航空機用ガスタービンエンジンの検査を先行して実施する必要はない。その航空機用ガスタービンエンジンの評価ないし検査は、作業当初計画の策定の後に、それとは別のステップとして実行するものであって、作業当初計画において指定された一連の整備作業に対して補正及び/または補足を加えるために実行するに過ぎない。そのため、整備作業の作業内容を早期に把握することができ、その把握した作業内容を、作業工程計画、資源計画、それに、期限管理計画に組込むことが可能である。またそれによって、航空機用ガスタービンエンジンの整備の着手から完了までに要する時間を顕著に短縮することが可能となっている。
【0016】
過去に実施した整備から得られた経験値は、技術上の関連性(コリレーション)を示すものとして、ディシジョンツリーの形に構造化して蓄積し、それによって、あり得る全ての技術上のディシジョンのあらゆる組合せが表されるようにしている。そのディシジョンツリーは、複数の事象分岐ノードを含み、過去に実施した整備から得られた経験値ないしデータを構造化データの形で格納するものであり、また、新たに整備を実施しようとする際に、整備当初計画を策定するために参照されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用ガスタービンエンジンなどのターボ機械の整備のための、整備計画策定方法において、
a)過去に実施したターボ機械の整備から得られたデータを、実施した様々な整備作業とそれら整備作業の実施対象となったターボ機械の様々な運転負荷とを関連付けるなどして構造化した、構造化データの形でデータベースに格納するステップと、
b)これから整備をしようとするターボ機械の整備当初計画を策定するために、前記データベースに基づいて、実施すべき一連の整備作業を、それら整備作業の作業種別及び作業手順を指定することにより編成するステップと、
c)整備最終計画を策定するために、これから整備をしようとするターボ機械の検査を実施し、その検査結果に基づいて、前記整備当初計画において指定された実施すべき一連の整備作業の作業種別及び/または作業手順に対して補正及び/または補足を加えるステップと、
を少なくとも含むことを特徴とする整備計画策定方法。
【請求項2】
これから整備をしようとするターボ機械の整備実施時期を前記データベースに基づいて決定すると共に、前記整備当初計画を策定するために、実施すべき一連の整備作業の作業種別と作業手順とを前記データベースに基づいて編成する、
ことを特徴とする請求項1記載の整備計画策定方法。
【請求項3】
過去に実施したターボ機械の整備から得られたデータを、複数の事象分岐ノードを含むディシジョンツリーの形に構造化して格納し、その構造化は、部品洗浄作業、及び/または、部品コーティング除去作業、及び/または、部品コーティング作業、及び/または、部品交換作業などの整備作業と、運転時間、及び/または、始動回数、及び/または、着陸回数などの運転負荷とを、関連付けるものである、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の整備計画策定方法。

【公表番号】特表2010−503786(P2010−503786A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527694(P2009−527694)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001620
【国際公開番号】WO2008/031413
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(391028384)エムテーウー・アエロ・エンジンズ・ゲーエムベーハー (26)
【住所又は居所原語表記】DACHAUER STRASSE 665,80995 MUENCHEN,GERMANY