説明

整形用枕

【課題】 患者毎に適した形状をオーダーメイドすることなく提供でき、しかも患者が寝返りを打ったとしても機能を発揮しやすい整形用枕を提供する。
【解決手段】 就寝者(10)の後頭部(11)を支持する後頭部支持部(21)および頸部(12)を支持する頸部支持部(22)を備えた枕基礎体(20)と、その枕基礎体(20)における後頭部支持部(21)の上面高さを調整する高さ調整機構(30)と、を備えて形成される整形用枕である。 前記の頸部支持部(22)は、幅方向の両端に向かって高さが高くなるように低反発素材にて形成し、前記の後頭部支持部(21)および前記の高さ調整機構(30)は、高反発素材にて形成するとともに、後頭部支持部(21)の上面の高さが頸部支持部(22)の高さよりも低くなるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が就寝時に使用する枕であって、頸椎の治療を目的とする枕に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝している間、頭部を支える枕に関しては、睡眠の質や快適性を向上させるため、様々な技術が開示されている。
たとえば、特許文献1に開示された技術では、頭皮の血行を阻害せずにしかも蒸れを防止する髪の毛に優しい枕が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、仰向け時に後頭部の高さが寝返りを打ったとしても背中よりやや高い位置となるように、自動高さ調整機構を内蔵した枕が開示されている。
【0004】
更に、特許文献3には、睡眠時において頸椎が湾曲状態を維持できるように工夫をすることでおなかの周りの緊張を取り除いたり気道を確保したりすることができる枕が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−49809号公報
【特許文献2】国際公開2006−13798号公報
【特許文献3】特開2009−22317号公報
【0006】
さて、頸椎が理想的な湾曲をしていないことを原因として体調不良となることは、広く知られている。たとえば、頸椎がほとんど湾曲していなかったり湾曲が足りなかったりしていることが原因で、偏頭痛、肩凝りなどの不調を訴える人は少なくない。
そうした人々の多くは、体調不良の軽減、改善、完治のために整形外科にて頸椎治療を受けることとなる。
【0007】
ところが、整形外科における頸椎治療は、治療時および治療直後に効果があっても、改善状態を長く保つことが難しい場合がある。 頸椎の湾曲状態が理想的でない状態にて長期間を経過している患者の場合、頸椎の異常に基づく周囲の筋肉の収縮や血流障害による痛みを発生している。
そこで、頸椎の湾曲を理想的な状態に近づけることができる枕を、その患者に利用してもらうことが考えられる。たとえば、特許文献3に開示された枕であれば、頸椎の湾曲を理想的な状態に近づける機能も期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に開示された枕には、以下のような問題があった。
第一に、患者の後頭部の大きさが一律ではない。したがって、患者ごとにオーダーメイドをしない限り、その患者に適した枕とはならない。
第二に、仮に、患者一人ずつにオーダーメイドで枕を製造したとしても、その患者が寝返りを打った場合には、頸椎の湾曲を理想的な状態に近づける機能が発揮されない。
【0009】
本発明が解決すべき課題は、頸椎の整形が必要な患者毎に適した形状をオーダーメイドすることなく提供でき、しかも患者が寝返りを打ったとしても機能を発揮しやすい整形用枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 就寝者(10)の後頭部(11)を支持する後頭部支持部(21)および頸部(12)を支持する頸部支持部(22)を備えた枕基礎体(20)と、 その枕基礎体(20)における後頭部支持部(21)の上面高さを調整する高さ調整機構(30)と、を備えて形成される整形用枕に係る。
前記の頸部支持部(22)は、幅方向の両端に向かって高さが高くなるように低反発素材にて形成し、 前記の高さ調整機構(30)は、高反発素材にて形成するとともに、就寝者(10)の後頭部(11)と接する面の高さが頸部支持部(22)の高さよりも低くなるように形成する。
【0011】
(用語説明)
本願に言う「高反発素材」および「低反発素材」とは、最も広い概念として、相対的な関係である。すなわち、頸部支持部(22)は高さ調整機構(30)と比べた場合に「低反発」である素材で形成されており、高さ調整機構(30)は頸部支持部(22)よりも「高反発」である素材で形成されている。
より具体的には、たとえば、頸部支持部(22)および高さ調整機構(30)を同じ材質の発泡ウレタンにて形成した場合、頸部支持部(22)に採用される発泡ウレタンにおける気泡の割合が高さ調整機構(30)よりも多くて柔らかい発泡ウレタンを採用する。
同一の材質を採用しなくても良く、たとえば、高さ調整機構(30)に空気や水、ゲル状物質などを密封した袋体を採用しても良い。
【0012】
(作用)
就寝者(10)は、本願発明に係る整形用枕を仰向けになって使用する。すなわち、後頭部(11)を後頭部支持部(21)に、頸部(12)を頸部支持部(22)に、それぞれ支持させる。このとき、就寝者(10)の頸部(12)が理想的なカーブを描くように、高さ調整機構(30)を用いて後頭部支持部(21)の上面高さを調整する。 後頭部支持部(21)の上面の高さは頸部支持部(22)の高さよりも低く、しかも頸部支持部(22)は低反発素材にて形成されているので、就寝者(10)の頸部(12)は、小さな力で押し上げられた状態となり、円滑な血流を確保しやすい。
さらに、頭の位置が固定されやすくなるため、頭位変化性めまい症を抑制することにも寄与する。
【0013】
いずれかの耳が下になるように就寝者(10)が寝返りをすることによって後頭部支持部(21)から後頭部(11)が離れたとしても、就寝者(10)は、その後頭部(11)を後頭部支持部(21)に支持させるように戻りやすい。頸部支持部(22)は幅方向の両端に向かって高さが高くなるように形成されているからである。
【0014】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成することもできる。
すなわち、前記の高さ調整機構(30)は、一または複数の積層体(31,31,・・・)として枕基礎体(20)とは別体で、且つ着脱自在に形成してもよい。
積層体(31)の材質は、高反発素材にて形成する。
【0015】
(作用)
就寝者(10)における後頭部(11)および頸部(12)の寸法の関係にて、後頭部支持部(21)の上面高さが適正な高さとなるように、積層体(31)を何枚積み重ねるかを決定する。そして、決定した枚数の積層体(31)を枕基礎体(20)に装着する。
積層体(31)は、枕基礎体(20)に対して着脱自在としているので、この作業は容易である。
【0016】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することもできる。
すなわち、前記の高さ調整機構は、流体を注入または排出させる高さ調整袋(33)を一または複数備えて、枕基礎体(20)と一体に形成してもよい。
ここで、「流体」とは、空気、水、吸熱機能を備えたゲル体などがある。頸部支持部(22)よりも高反発となるように流体を注入する。
【0017】
(作用)
就寝者(10)における後頭部(11)および頸部(12)の寸法の関係にて、後頭部支持部(21)の上面高さが適正な高さとなるように、流体を注入したり、注入してあった流体を排出させたりする。
なお、流体として、吸熱機能を備えたゲル体または冷水を採用すると、夏季の寝苦しい時期や就寝者(10)の発熱時において、水枕としても機能することとなる。
【発明の効果】
【0018】
第一の発明によれば、頸椎の整形が必要な患者毎に適した形状をオーダーメイドすることなく提供でき、しかも患者が寝返りを打ったとしても機能を発揮しやすい整形用枕を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の実施形態を示す組み立て斜視図である。
【図2】第一の実施形態における使用状態を示す斜視図である。
【図3】第一の実施形態における使用状態を示す側面図である。
【図4】第一の実施形態における使用状態をモデル的に示した図である。
【図5】第一の実施形態を示す側断面図である。
【図6】第二の実施形態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明を実施する形態について、図1から図6を用いて説明する。図1から図5までが第一の実施形態を示し、図6が第二の実施形態を示す。
【0021】
まず、図2に基づいて説明する。
第一の実施形態に係る枕は、頸部の外科的な治療を要する患者に用いられる。
第一の実施形態に係る枕は、その患者が就寝者10となる場合にその後頭部11を支持する後頭部支持部21および頸部12を支持する頸部支持部22を備えた枕基礎体20と、 その枕基礎体20における後頭部支持部21の上面高さを調整する高さ調整機構30と、を備えて形成される。
【0022】
図1に示すように、頸部支持部22は、幅方向の両端に向かって高さが高くなるように形成している。 すなわち、頸部支持部22の中央部22bよりも両端部22a,22aの方が高さは低い。 これは、図4にてモデル的に説明しているが、就寝者10が寝返りを打って後頭部が床面側から離れたとしても、後頭部が床面に近づくように再び寝返りを促すことにより、後頭部が床面側から離れた時間が短くなるように意図した形状を採用している。また、頸部支持部22は、低い反発力の発泡ウレタンを主たる素材として形成している。すなわち、主材たる低反発発泡ウレタンにカバー材を覆い被せている。
この形状および材質の選択により、就寝者10の頸椎を小さな力で押し返すので、変形した頸椎の形状に対して刺激を少なく(就寝者10への違和感を抑え)、正常な状態に(生理的な湾曲に)強制する。また、就寝者10が寝返りを打ったとしても頸椎を整形するという機能を発揮しやすいこととなる。
【0023】
就寝者10は、頸椎の変形を強制する必要がある患者である。 より具体的には、生理的な湾曲をなしていない頸椎となった患者である。「生理的な湾曲」とは、頭蓋骨−頸椎−胸椎3番の椎体および椎間関節において、負荷が均等に配分される理想的な湾曲を言う。
たとえば、生理的な湾曲をなす場合、仰向けとなった人の頸椎は中央付近で盛り上がっている。 一方、よくある変形の例としては、仰向けとなっても横から見た頸椎がほぼ水平となる、いわゆるス「トレートネック」がある。このストレートネックの場合、頸椎の中央付近に集中的な負荷がかかってしまう。
【0024】
生理的な湾曲をなしていない患者に対して、整形外科医が患者における後頭部11および頸部12の寸法の関係にて、後頭部支持部21の上面高さが適正な高さを決定する。そして、その決定された高さに近くなるように、図1に示すような積層体31を後頭部支持部21へ何枚積み重ねるか決定する。 この図1では、2枚の積層体31,31を積み重ねることとして図示している。
【0025】
なお、図3や図5にも示されているが、積層体31,31を積み重ねたとしても、後頭部と接することとなる上面の高さが頸部支持部22における最も低い中央部付近22bの高さよりも低くなるように頸部支持部22は形成されている。 積層体31,31を積み重ねることで、あらゆる患者に適合することが可能とするためである。
【0026】
積層体31,31の主たる素材は、頸部支持部22を形成する発泡ウレタンよりも高反発な発泡ウレタンを採用している。 こちらも、主材たる高反発発泡ウレタンにカバー材を覆い被せている。 重さのある後頭部はあまり沈み込まず、就寝者10が心地よさを感じさせることに寄与している。
また、頭の位置が固定されやすくなるため、頭位変化性めまい症を抑制することにも寄与する。
【0027】
後頭部支持部21の上面と積層体31の下面には、ワンタッチファスナー32を固定しており、枕基礎体20と積層体31とは、容易に着脱できるように形成している。また、積層体31,31同士も着脱自在となるように、ワンタッチファスナー32を固定している。
【0028】
第一の実施形態における寸法は、枕基礎体20の幅方向が約500ミリメートル、奥行き方向が約350ミリメートル、後頭部支持部21の厚さが約30ミリメートル、両端部22a,22aの高さが約110ミリメートル、中央部付近22bの高さが約85ミリメートル、積層体31の厚さが約10ミリメートルとした。
ただし、本願発明がこの寸法によって限定される意図ではない。
【0029】
次に、図6に基づいて、第二の実施形態について説明する。
積層体31は一枚のみとし、後頭部支持部21に高さ調整機能を内蔵している。 すなわち、流体を注入または排出させる高さ調整袋33,33を二つ備えて、枕基礎体20と一体に形成される高さ調整機能である。
高さ調整袋33,33にはそれぞれ、空気を流入させたり空気を排出させるためのバルブ34,34が設けてある。
【0030】
高さ調整袋33,33には空気を流入させることが一般的であるが、水、吸熱機能を備えたゲル体などを流入排出させることとしてもよい。 ただし、頸部支持部22よりも高反発となるようにする。
水や吸熱機能を備えたゲル体などを流入排出させる場合、水枕の代用ともなり、夏季や発熱時に重宝である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明は、医療器具の製造業、枕の製造業、寝具のレンタル業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0032】
10; 就寝者(患者) 11; 後頭部
12; 頸部
20; 枕基礎体 21; 後頭部支持部
22; 頸部支持部 22a; 両端部
22b; 中央部
30; 後頭部支持部 31; 積層体
32; ワンタッチファスナー 33; 袋体
34; バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者の後頭部を支持する後頭部支持部および頸部を支持する頸部支持部を備えた枕基礎体と、
その枕基礎体における後頭部支持部の上面高さを調整する高さ調整機構と、を備えて形成される整形用枕であって、
前記の頸部支持部は、幅方向の両端に向かって高さが高くなるように低反発素材にて形成し、
前記の高さ調整機構は、高反発素材にて形成するとともに、就寝者の後頭部と接する面の高さが頸部支持部の高さよりも低くなるように形成した整形用枕。
【請求項2】
前記の高さ調整機構は、一または複数の積層体として枕基礎体とは別体で、且つ着脱自在に形成した請求項1に記載の整形用枕。
【請求項3】
前記の高さ調整機構は、流体を注入または排出させる高さ調整袋を一または複数備えて、枕基礎体と一体に形成した請求項1に記載の整形用枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245312(P2012−245312A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121570(P2011−121570)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(511132096)医療法人社団医乗会 (1)
【Fターム(参考)】