説明

整流子の製造方法

【課題】整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる整流子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1金型32aは、内径型33aと外径型34aとからなる二重構造を有し、内径型33aの内側封止部42,43の周方向幅W1,W2と、外径型34aの外側封止部52,53の周方向幅W3,W4はそれぞれ、爪間部S1,S2の周方向幅T1,T2よりも小さく設定され、内側封止部42,43と外側封止部52,53とは爪間部S1,S2内で径方向に互いに当接するように構成される。そして、各内側封止部42,43を各折り曲げ端部14a,15aの周方向一端面14b,15bに、各外側封止部52,53を各折り曲げ端部14a,15aの周方向他端面14c,15cにそれぞれ当接させ、その状態で円筒素材22の内側に樹脂材料を封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直流モータの整流子は、電機子の回転軸に固着される樹脂製の円筒形状の絶縁体と、その絶縁体の外周面に導電性を有する複数のセグメントを取着したものである。各セグメントには、電機子のコアに巻回されたコイルの端部が結線されるライザが設けられている。そして、セグメントの外周面には給電ブラシが摺接され、その給電ブラシから印加される直流電源がセグメントを介して電機子のコイルへと供給されるようになっている。
【0003】
ところで、上記のような整流子の製造方法としては、例えば特許文献1のように、まず、金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入してその円筒素材の内側に絶縁体を成形し、その後、円筒素材を軸方向に沿って切断することで絶縁体の外周に複数のセグメントが成形されるようになっている。尚、各セグメントのライザの形成方法としては、例えば、円筒素材の軸方向端部に軸方向突出片を複数成形し、その軸方向突出片を径方向外側に折り曲げて、その先端部を円筒素材の軸方向中央側に向けることでフック状のライザが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−137096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような整流子の製造方法において、円筒素材の軸方向端部が平面状ではなく段差が付いている場合、円筒素材の内側への樹脂封入の際に、金型で円筒素材の軸方向端部を押さえ付けても段差部分に隙間が生じ、その隙間から樹脂が外側にはみ出してしまう。このような円筒素材の軸方向端部の段差は、例えば、上記のようにライザをフック状に折り曲げ形成する場合に形成される。そして、段差部分からこのはみ出した樹脂は、モータの組み付け後に剥がれ落ちた場合には、モータ内の異物となってしまう。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる整流子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入し、該円筒素材の内側に絶縁体を成形した後、前記円筒素材を軸方向に沿って切断することで前記絶縁体の外周に複数のセグメントを成形する整流子の製造方法であって、前記円筒素材の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部を有する段差状に形成され、前記金型は、内径型と外径型とからなる二重構造を有し、前記内径型及び前記外径型には、前記各突出部の周方向の隙間に挿入される内側封止部及び外側封止部がそれぞれ設けられ、前記内側封止部及び前記外側封止部は、その周方向幅が前記突出部間の前記隙間の周方向幅よりも小さく設定されるとともに、該隙間内で径方向に互いに当接するように構成され、前記各内側封止部を前記各突出部の周方向一端面に、前記各外側封止部を前記各突出部の周方向他端面にそれぞれ当接させ、その状態で前記円筒素材の内側に前記樹脂材料を封入することを特徴とする。
【0008】
この発明では、円筒素材の内側に樹脂材料を封入する際に、内径型の各内側封止部と外径型の各外側封止部を各突出部の周方向の隙間に挿入し、各内側封止部を各突出部の周方向一端面に、各外側封止部を各突出部の周方向他端面に当接させることで、その隙間をシールすることが可能となる。これにより、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、円筒素材の軸方向端部と金型の間から成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の整流子の製造方法において、前記各セグメントの軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザと、径方向内側に折り曲げ形成されて前記絶縁体内に埋設される中爪とが形成され、前記ライザ及び前記中爪の折り曲げ端部が前記突出部として構成されることを特徴とする。
【0010】
この発明では、結線用のライザと、絶縁体内に埋設される中爪とが折り曲げによって成形されるため、整流子を容易に成形することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の整流子の製造方法において、前記金型には、前記円筒素材の内側に樹脂材料を流入するための流入路が前記内径型及び前記外径型を貫通して前記円筒素材の内側に連通するように形成され、前記流入路における前記内径型と前記外径型の境目箇所にはシール部材が設けられたことを特徴とする。
【0011】
この発明では、シール部材によって樹脂材料が流入路における内径型と外径型との隙間から漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
従って、上記記載の発明によれば、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の整流子を示す斜視図。
【図2】セグメントの素材を示す斜視図。
【図3】打ち抜き素材を示す斜視図。
【図4】円筒素材を示す斜視図。
【図5】円筒素材のライザ及び中爪を折り曲げた状態を示す斜視図。
【図6】金型による樹脂封入工程の態様を模式的に示す断面図。
【図7】(a)第1金型と円筒素材の軸方向端部との間のシール構造を示す拡大断面図、(b)第2金型と円筒素材の軸方向端部との間のシール構造を示す拡大断面図。
【図8】第1金型と円筒素材の軸方向端部との間のシール構造を示す模式図。
【図9】第1金型と円筒素材の軸方向端部との間のシール構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、整流子10は、熱硬化性樹脂よりなる円筒状の絶縁体11と、該絶縁体11の外周面に固定された8個のセグメント12とから構成されている。絶縁体11の径方向の中央部には、軸方向に貫通する圧入孔11aが形成されており、この圧入孔11aに電機子の回転軸(図示略)が圧入されて同回転軸に一体回転可能に固定される。
【0015】
8個のセグメント12は、導電性の金属材料(例えば銅)よりなり、周方向に等角度間隔に並設されるとともに、軸方向に延びる略短冊状をなしている。周方向に隣り合うセグメント12間には、軸方向に沿って延びる分断溝13がそれぞれ設けられており、この分断溝13によって周方向に隣り合うセグメント12同士が離間され、互いに絶縁分離されている。尚、各分断溝13は、各セグメント12の厚さ(径方向の厚さ)よりも径方向内側に向かって深く形成されており、絶縁体11にまで形成されている。
【0016】
各セグメント12の軸方向一端部(図1において上端部)には、ライザ14が形成されている。このライザ14は、径方向外側に折り曲げ形成されるとともに、その先端部がセグメント12の長手方向中央側を向くように形成されている。また、ライザ14は、各セグメント12の周方向中央部に形成されている。尚、このライザ14は、電機子を構成する電機子コイル(図示略)と結線される。
【0017】
また、各セグメント12の軸方向両端部には、それぞれ第1中爪15及び第2中爪16が形成されている。ライザ14側の端部に形成された第1中爪15は、各セグメント12においてライザ14の周方向両側にそれぞれ形成されている。一方、ライザ14及び第1中爪15とは反対側の端部に形成された第2中爪16は、第1中爪15と軸方向に対向する位置に一対形成されている。
【0018】
第1及び第2中爪15,16は、ライザ14とは反対に径方向内側に折り曲げ形成されている。そして、第1及び第2中爪15,16の先端部は、セグメント12の長手方向中央側を向くように形成されて絶縁体11内に埋設されている。このように、第1及び第2中爪15,16が絶縁体11内に埋め込まれることによって、各セグメント12は絶縁体11に対して連結保持されるようになっている。
【0019】
上記のような整流子10のセグメント12において、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16が延出されたセグメント12の軸方向端面12aは、整流子10の軸線Lと直交する同一平面上に形成されている。そして、各セグメント12のライザ14及び第1及び第2中爪15,16の軸方向端の折り曲げ部分である折り曲げ端部14a,15a,16aは、軸方向端面12aから軸方向に突出する突出部として構成されている。尚、ライザ14及び第1中爪15の各折り曲げ端部14a,15aは、軸方向の突出量が略均一となるように形成されている。また、各第2中爪16の折り曲げ端部16aの軸方向の突出量は略均一となるように形成されている。
【0020】
次に、上記の整流子10の製造方法について図2〜図9に従って説明する。
図2及び図3に示すように、まず、金属板材20から打ち抜き素材21をプレスにより複数打ち抜く。各打ち抜き素材21は略矩形状に成形され、その短手方向(長手方向と直交する方向)の一端面には、それぞれ8個のライザ14と第1中爪15が、他端面には8個の第2中爪16がそれぞれ短手方向に延出形成されている。尚、ライザ14は、打ち抜き素材21の長手方向に等間隔に形成されている。
【0021】
次に、打ち抜き素材21を丸めて、図4に示す円筒素材22を成形する。このとき、ライザ14と第1及び第2中爪15,16は、円筒素材22の軸線と平行な直線状をなしている。
【0022】
その後、図5に示すように、各ライザ14を径方向外側に折り曲げて、その先端部が円筒素材22の軸方向中央側を向くように成形する。また、第1及び第2中爪15,16を径方向内側に折り曲げて、その先端部が円筒素材22の軸方向中央側を向くように成形する。ここで、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16の軸方向端の折り曲げ部分である折り曲げ端部14a,15a,16aは、円筒素材22の軸方向端面22aから軸方向に突出しており、この各折り曲げ端部14a,15a,16aによって円筒素材22の軸方向両端部は軸方向の凹凸を有する段差状を形成される。
【0023】
次に、図6に示すように、金型31を用いた樹脂封入工程を行う。金型31は、図6において上側の第1金型32aと下側の第2金型32bからなり、円筒素材22は、ライザ14及び第1中爪15が設けられた側の軸方向端部が第1金型32aを向くように金型31内に配置される。第1金型32aは、内径型33aと外径型34aとからなる二重構造で構成されている。第2金型32bも同様に、内径型33bと外径型34bとからなる二重構造で構造されている。
【0024】
図6に示すように、第1金型32aの内径型33aは、略円盤状の基部41から絶縁体11の圧入孔11aを成形するための円柱部41aが軸方向に延出形成されている。基部41は、絶縁体11を成形するためのキャビティを構成している。この基部41の外周縁部には、外径側に突出する複数の内側封止部42,43が形成されている。
【0025】
図8及び図9に示すように、内側封止部42は、周方向に隣り合うライザ14と第1中爪15の折り曲げ端部14a,15a間の各隙間(爪間部S1)に挿入されるものであり、内側封止部43は、周方向に隣り合う第1中爪15間の各隙間(爪間部S2)に挿入されるものである。各内側封止部42,43は、径方向から見て矩形状をなしている(図8参照)。また、各内側封止部42,43間には、第1中爪15との干渉を防ぐべく径方向内側に凹む凹部44が形成されている。
【0026】
内側封止部42の周方向幅W1は、爪間部S1の周方向幅T1よりも小さく設定されている。また、内側封止部43の周方向幅W2は、爪間部S2の周方向幅T2よりも小さく設定されている。そして、各内側封止部42,43は、各折り曲げ端部14a,15aの周方向一端面14b,15b(時計回り方向の後方側端面)と当接するように構成されている。また、各内側封止部42,43は、各爪間部S1,S2において円筒素材22の軸方向端面22aと軸方向に当接する(図8参照)。
【0027】
一方、外径型34aは、図6及び図7(a)に示すように、内径型33aの基部41の上面と当接する略円盤状の天井部51を有している。天井部51は、各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に当接する。この天井部51の外周縁部には、軸方向の内径型33a側に突出する複数の外側封止部52,53が形成されている。
【0028】
図8及び図9に示すように、外側封止部52は、前記各爪間部S1に挿入されるものであり、外側封止部53は、前記各爪間部S2に挿入されるものである。そして、各外側封止部52,53は、各爪間部S1,S2において円筒素材22の軸方向端面22aと軸方向に当接するようになっている(図8参照)。
【0029】
外側封止部52の周方向幅W3は、爪間部S1の周方向幅T1よりも小さく設定されている。また、外側封止部53の周方向幅W4は、爪間部S2の周方向幅T2よりも小さく設定されている。そして、各外側封止部52,53は、各折り曲げ端部14a,15aの周方向他端面14c,15c(時計回り方向の前方側端面)と当接するように構成されている。
【0030】
上記のような外側封止部52と内側封止部42とは、図9に示すように、爪間部S1内で径方向に重なる、即ち、径方向に互いに当接する。同様に、外側封止部53と内側封止部43とは、爪間部S2内で径方向に互いに当接する。
【0031】
図7(b)に示すように、下側の第2金型32bも、その内径型33bと外径型34bにそれぞれ、内側封止部61と外側封止部62を有しているが、上記第1金型32aの内側封止部43及び外側封止部53と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
図6に示すように、第2金型32bの内径型33bの基部63は、第1金型32aの内径型33aの基部41とで絶縁体11を成形するためのキャビティを構成している。外径型34bの底面部64は、内径型33bの基部63と当接するとともに、各第2中爪16の折り曲げ端部16aと軸方向に当接する。また、外径型34bの底面部64には、円筒素材22の外周面と当接する円筒状の外周壁部65が立設されており、この外周壁部65の軸方向基端部に前記外側封止部62が形成されている。
【0033】
第2金型32bには、樹脂材料を円筒素材22の内側に封入するための流入路66が形成されている。流入路66は、内径型33bと外径型34bを貫通して円筒素材22の内側と連通されている。尚、この流入路66において、内径型33bと外径型34bとの境目箇所には、Oリング67が介在されている。これにより、流入路66を通る樹脂材料が内径型33aと外径型34aとの隙間から漏れ出てしまうことが抑制されるようになっている。
【0034】
樹脂封入工程では、まず、第2金型32bに対して円筒素材22を第2中爪16側の軸方向端部から配置する。ここで、折り曲げ端部16aを外径型34bに軸方向に当接させるとともに、爪間部S3において内側封止部61及び外側封止部62を円筒素材22の軸方向端面22aに軸方向に当接させる。このとき、各折り曲げ端部16aの軸方向突出量にばらつきが生じていたとしても、その寸法のばらつきは各折り曲げ端部16aの撓みによって吸収される。そして、爪間部S3内において内側封止部61を各折り曲げ端部16aの周方向一端面に、各外側封止部62を各折り曲げ端部16aの周方向他端面にそれぞれ当接させる。これにより、円筒素材22の第2中爪16側の軸方向端部と第2金型32bとの間がシールされる。
【0035】
その後、第1金型32aを円筒素材22のライザ14側の軸方向端部に配置する。このとき、各折り曲げ端部14a,15aを外径型34aの天井部51と軸方向に当接させる。爪間部S1,S2においては、内側封止部42,43及び外側封止部52,53を円筒素材22の軸方向端面22aに当接させる。このとき、各折り曲げ端部14a,15aの軸方向突出量にばらつきが生じていたとしても、その寸法のばらつきは各折り曲げ端部14a,15aの撓みによって吸収される。その後、各内側封止部42,43を各折り曲げ端部14a,15aの周方向一端面14b,15bに当接させ、各外側封止部52,53を各折り曲げ端部14a,15aの周方向他端面14c,15cに当接させる。これにより、円筒素材22のライザ14側の軸方向端部と第1金型32aとの間がシールされるようになっている。
【0036】
上記のように円筒素材22を金型31に配置した後、第2金型32bの流入路66から円筒素材22の内側に樹脂材料を封入して絶縁体11を成形する。このとき、円筒素材22のライザ14及び第1中爪15側の爪間部S1,S2が第1金型32aの内側封止部42,43及び外側封止部52,53によってシールされ、第2中爪16側の爪間部S3が第2金型32bの内側封止部61及び外側封止部62によってシールされるため、爪間部S1〜S3から成形樹脂が径方向外側にはみ出てしまうことが抑制されるようになっている。
【0037】
その後、絶縁体11と一体をなす円筒素材22の外周面の複数箇所に分断溝13(図1参照)を軸方向に沿って成形して円筒素材22を切断する。これにより、互いに電気的に絶縁された8個のセグメント12が成形され、図1に示す整流子10が完成する。
【0038】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)第1金型32aは、内径型33aと外径型34aとからなる二重構造を有し、内径型33a及び外径型34aには、各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間(爪間部S1,S2)に挿入される内側封止部42,43及び外側封止部52,53がそれぞれ設けられる。この内側封止部42,43の周方向幅W1,W2及び外側封止部52,53の周方向幅W3,W4はそれぞれ、爪間部S1,S2の周方向幅T1,T2よりも小さく設定され、内側封止部42,43と外側封止部52,53とは爪間部S1,S2内で径方向に互いに当接するように構成される。そして、各内側封止部42,43を各折り曲げ端部14a,15aの周方向一端面14b,15bに、各外側封止部52,53を各折り曲げ端部14a,15aの周方向他端面14c,15cにそれぞれ当接させ、その状態で円筒素材22の内側に樹脂材料を封入する。これにより、円筒素材22の内側に樹脂材料を封入する際に、内側封止部42,43及び外側封止部52,53によって爪間部S1,S2をシールすることが可能となる。このため、整流子10の絶縁体11を第1金型32aで樹脂成形する際、円筒素材22の軸方向端部と第1金型32aの間から成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することが可能となる。また、本実施形態では、第2金型32bと円筒素材22の軸方向端部との間においても、第1金型32aと同様の内側封止部61及び外側封止部62によって爪間部S3がシールされ、これにより、円筒素材22の軸方向端部と第2金型32bの間から成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することが可能となる。
【0039】
(2)各セグメント12の軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザ14と、径方向内側に折り曲げ形成されて絶縁体11内に埋設される第1及び第2中爪15,16とが形成され、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部15a,16aが突出部として構成される。これにより、結線用のライザ14と、絶縁体11内に埋設される第1及び第2中爪15,16とが折り曲げによって成形されるため、整流子10を容易に成形することが可能となる。
【0040】
(3)第1金型32aには、円筒素材22の内側に樹脂材料を流入するための流入路66が内径型33a及び外径型34aを貫通して円筒素材22の内側に連通するように形成され、流入路66における内径型33aと外径型34aの境目箇所にはOリング67が設けられる。このため、Oリング67によって樹脂材料が流入路66における内径型33aと外径型34aとの隙間から漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【0041】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、内側封止部42,43,61及び外側封止部52,53,62を、例えばテフロン(登録商標)よりなる耐熱ゴム部材で構成してもよい。この構成によれば、内側封止部42,43,61及び外側封止部52,53,62が各折り曲げ端部14a,15a,16aと弾性的に当接するため、それらの間に隙間を生じにくくすることが可能となり、その結果、シール性を向上させることができる。
【0042】
・上記実施形態の第1金型32aの天井部51に対し、第2金型32bの外周壁部65のような円筒素材22の外周面と当接する外周壁部を設けてもよい。
・上記実施形態では、平板状の打ち抜き素材21を丸めて円筒素材22に成形した後にライザ14と第1及び第2中爪15,16を折り曲げ成形したが、これに特に限定されるものではなく、図3に示すような平板状の状態(円筒素材22とする前の状態)においてライザ14と第1及び第2中爪15,16を折り曲げ成形してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、セグメント12の個数(ライザ14の個数)を8個としたが、これに特に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、絶縁体11とセグメント12との固定を強固にすべく、各セグメント12に設けた第1及び第2中爪15,16を絶縁体11に埋設して構成しているが、これ以外に例えば、セグメント12に第1及び第2中爪15,16を設けずに、セグメント12の内周面に絶縁体11の外周面と係止する係止部を設けてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、金属板材20から打ち抜いた打ち抜き素材21を丸めて円筒素材22を成形したが、これに特に限定されるものではなく、例えば、金属製の管状材を用いてその長手方向に必要寸法切断し、次いでライザ等を形成したものであってもよい。
【0045】
・上記実施形態では、円筒素材22の軸方向端部に形成される突出部がライザ14と第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部14a,15a,16aで構成されているが、これに特に限定されるものではなく、ライザ14や第1及び第2中爪15,16のような爪部以外の突出部で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…整流子、11…絶縁体、12…セグメント、14…ライザ、15…第1中爪、16…第2中爪、14a,15a,16a…突出部としての折り曲げ端部、14b,15b…折り曲げ端部の周方向一端面、14c,15c…折り曲げ端部の周方向他端面、22…円筒素材、31…金型、32a…第1金型、32b…第2金型、33a,33b…内径型、34a,34b…外径型、42,43,61…内側封止部、52,53,62…外側封止部、66…流入路、67…シール部材としてのOリング、S1,S2,S3…爪間部、W1,W2…内側封止部の周方向幅、W3,W4…外側封止部の周方向幅、T1,T2…折り曲げ端部間(爪間部)の周方向幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入し、該円筒素材の内側に絶縁体を成形した後、前記円筒素材を軸方向に沿って切断することで前記絶縁体の外周に複数のセグメントを成形する整流子の製造方法であって、
前記円筒素材の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部を有する段差状に形成され、
前記金型は、内径型と外径型とからなる二重構造を有し、
前記内径型及び前記外径型には、前記各突出部の周方向の隙間に挿入される内側封止部及び外側封止部がそれぞれ設けられ、
前記内側封止部及び前記外側封止部は、その周方向幅が前記突出部間の前記隙間の周方向幅よりも小さく設定されるとともに、該隙間内で径方向に互いに当接するように構成され、
前記各内側封止部を前記各突出部の周方向一端面に、前記各外側封止部を前記各突出部の周方向他端面にそれぞれ当接させ、その状態で前記円筒素材の内側に前記樹脂材料を封入することを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の整流子の製造方法において、
前記各セグメントの軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザと、径方向内側に折り曲げ形成されて前記絶縁体内に埋設される中爪とが形成され、
前記ライザ及び前記中爪の折り曲げ端部が前記突出部として構成されることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の整流子の製造方法において、
前記金型には、前記円筒素材の内側に樹脂材料を流入するための流入路が前記内径型及び前記外径型を貫通して前記円筒素材の内側に連通するように形成され、
前記流入路における前記内径型と前記外径型の境目箇所にはシール部材が設けられたことを特徴とする整流子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90490(P2013−90490A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230143(P2011−230143)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】