説明

斜板式油機の軸受冷却構造

【課題】軸受がケース内中空部の両端に配置される斜板式油機において、両軸受周辺の温度上昇を有効に防止する技術を提供しようとする。
【解決手段】回転シャフト1の軸受4,5がケース2内中空部3の両端に配置される斜板式油機を対象とする。そのような油機において、回転シャフト1内にその軸方向に沿った貫通孔9を形成させ、その一端側開口90を、一方の軸受4側となる回転シャフト1端部に、他端側開口91を、他方の軸受5の外側における回転シャフト1外周面に、それぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、斜板式油圧ポンプやモータ等油機の軸受冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
斜板式油圧ポンプやモータ等の油機における回転シャフトは、ケース内中空部に挿通された状態で任意の箇所で軸受により支持される。軸受の位置も油機によって様々であるが、例えば図2に示すように、軸受40,50がケース20内中空部30の両端に配置される形態もある(他に、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44467、図1、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のような斜板式油機のケース20内中空部30には作動油が充填されており、回転シャフト10はもちろんのこと、軸受40,50を含めたシャフト周りの器具は潤滑な動作が可能な状態となっている。さらに回転シャフト10及びそのシャフト周りの器具の動作によって、作動油は中空部30内を適度に流動し、これにより作動油の滞留によって生じてしまう局部的な温度上昇を防ぐものとなっている。
【0005】
しかし、図2に示すような、軸受40,50が中空部30の両端に配置されている構造の場合、端部となる両軸受40,50内部は作動油の流動がその内部でしか生じないので、そこに滞留する作動油の温度が上昇し、結局、両軸受40,50周辺の温度が局部的に上昇してしまっていた。
【0006】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、軸受がケース内中空部の両端に配置される斜板式油機において、両軸受周辺の温度上昇を有効に防止する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、この発明に係る斜板式油機の軸受冷却構造は、回転シャフトの軸受がケース内中空部の両端に配置される斜板式油機の軸受冷却構造において、回転シャフト内にその軸方向に沿った貫通孔を形成させ、その一端側開口を、一方の軸受側となる回転シャフト端部に、他端側開口を、他方の軸受の外側における回転シャフト外周面に、それぞれ設けたことを特徴とするものである。
【0008】
以上の構成により、本発明では、回転シャフト内の貫通孔が、両軸受の外側に跨って形成されることになり、このため、その貫通孔内には、両軸受の外側から作動油が流入することになる。このような状態において、油機が動作し、回転シャフトが回転すると、貫通孔の他端側の開口が、回転シャフトの外周面に設けられることにより、回転の遠心力によってその開口に向かって貫通孔内の作動油は流れることになる。この流れによって、開口外に出た作動油は、他端側の軸受の隙間を通ってケース内中空部に流れていく一方、貫通孔の一端側の開口からは、作動油が吸い込まれ、それに伴って、ケース内中空部の作動油が一端側の軸受の隙間を通って該軸受の外側に流入していく。このように、貫通孔が油通路となり、その油通路において遠心力により生じる流れによって、両軸受内の作動油も貫通孔を介して流動していく。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、両軸受内の作動油も、油機の動作にともなって自動的にケース内を循環することになるので、軸受内部の作動油が高温になることもなく、このため、両軸受周辺のいずれも局所的に高温となることが有効に防止できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態例の説明図であり、斜板式油圧ポンプの断面図である。
【図2】従来の斜板式油圧ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る具体的実施形態例を図1に基づき説明する。なお、本発明が以下の形態例に限定されるものでないことは当然である。
【0012】
本形態例は斜板式油圧ポンプにおける具体例であり、図示のように、回転シャフト1は、ポンプケース2内中空部3に挿通され、該中空部3両端に配置される軸受4,5によって回転自在に支承されている。また、ポンプケース2内中空部3の回転シャフト1周りには、回転シャフト1の回転機構であるシリンダバレル6、ピストン7、斜板8等が配置され、それらはケース2内中空部3に充填される作動油により、前記回転シャフト1、両軸受4,5とともに潤滑な動作が可能な状態となっている。
【0013】
前記回転シャフト1内には、その軸方向に沿って貫通孔9が形成されている。該貫通孔9の一端側開口90は回転シャフト1端部に設けられる。また、他端側開口91は、他方側軸受5の外側における回転シャフト1外周面に設けられる。すなわち、回転シャフト1内の貫通孔9が、両軸受4,5の外側に跨って形成される。なお、図示上、他端側の開口91は1箇所となっているが、その開口91から延びる垂直孔9aを反対側の外周面に貫通させてそこにもう1箇所開口を設けても良い。
【0014】
以上の構成により、本形態例では、前記貫通孔9内には、両軸受4,5の外側から作動油が流入することになるが、このような状態において、バレル6やピストン7が動作し、回転シャフト1が回転すると、回転の遠心力によって、貫通孔9の他端側の開口91から作動油が流出していき、さらに他端側の軸受5の隙間を通ってケース2内中空部3に流れていく。その一方、貫通孔9の一端側の開口90からは、作動油が吸い込まれ、それに伴って、ケース2内中空部3の作動油が一端側の軸受4内部に流入していき、また貫通孔9に流れていく。このように、貫通孔9が油通路となり、その油通路において遠心力により生じる流れによって、両軸受4,5内の作動油も貫通孔9を介して流動していく。
【0015】
したがって、本形態例では、両軸受4,5内の作動油も、回転シャフト1の動作にともなって自動的にケース2内を循環することになるので、軸受4,5内の作動油が高温になることもなく、このため、両軸受4,5周辺のいずれも局所的に高温となることが有効に防止できるものとなっている。
【0016】
なお、本発明が以上の形態に限定されないことは上述したとおりであり、特許請求の範囲の構成を満足させる形態であれば、上記形態を適宜変更しても当然にその技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、斜板式油機であって、ケース内中空部の両端に、回転シャフトを支承する軸受が配置される構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 回転シャフト
2 ケース
3 中空部
4,5 軸受
9 貫通孔
90 一端側開口
91 他端側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトの軸受がケース内中空部の両端に配置される斜板式油機の軸受冷却構造において、回転シャフト内にその軸方向に沿った貫通孔を形成させ、その一端側開口を、一方の軸受側となる回転シャフト端部に、他端側開口を、他方の軸受の外側における回転シャフト外周面に、それぞれ設けたことを特徴とする斜板式油機の軸受冷却構造。

【図1】
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【図2】
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