説明

断熱シート

【課題】断熱性、透明性に優れ、機械的強度に優れた断熱シートを提供すること。
【解決手段】外郭の平均厚さが10nm以下で、かつ平均粒子空孔径が70nm以下の中空粒子が連結したシート状の構造体を有し、シート平均空孔径が70nm以下、シート空孔率が90〜99体積%、かつ光透過率が85%以上であることを特徴とする断熱シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノレベルの空孔を有する中空粒子が連結した構造体を断熱材層とする断熱シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅や、オフィス用ビル等の建物において、冷暖房に係るエネルギーの出入りの大部分はガラス窓やガラス扉を介するものである。建物の室内と外気との間におけるエネルギーの移動を低減するために、例えば二重窓や複層ガラスが利用されているが、断熱効果が不十分であり、また真空断熱窓は、性能は高いものの、長期間真空を維持するのが困難である。
【0003】
また、既存のガラス窓等をそのまま利用し、断熱化を図る方法として、例えばガラス面に空隙構造を有する断熱フィルムを貼付して断熱性を向上する方法が提案されているが、空隙構造に含まれる空孔径が可視光の波長と比較して大きいため、採光は可能であるが、窓としての透視性の機能が著しく損なわれるという欠点があった(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、樹脂シート中に発泡により微細な気泡を形成した断熱シートが提案されているが、空孔率が小さく樹脂からの伝導伝熱が抑制できない為、断熱性や透明性が不十分なものであった(例えば、特許文献2)。
【0005】
更に中空粒子を使い断熱性を高める試みが知られている。中空粒子は個々の粒子がとじており、すぐれた断熱性を示すが、機械的強度を高めてシート状の使用に耐えるよう加工するためには中空粒子と共にバインダーが使用され(例えば、特許文献3)、この結合材バインダーによる熱伝導や、結合材による透明性が低下するという欠点があった。
【0006】
一方、断熱性、光透過性に優れた透明断熱材料として、極めて低密度なシリカの乾燥ゲル体であるシリカエアロゲルが検討されているが、その低密度と脆性に起因して機械的強度が極めて小さく、可撓性もなくシート化が困難であるため、ポリマーフォームとの複合化により機械的強度の向上が試みられている(非特許文献1)が、透明性、断熱性は不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−205236号公報
【特許文献2】特開2004−66638号公報
【特許文献3】特開2008−200922号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】依田、外4名「新規シリカエアロゲル複合体の作成と断熱材料への応用」化学工学会第40回秋季大会講演要旨集、H305、社団法人 化学工学会、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、断熱性、透明性に優れ、機械的強度に優れた断熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.外郭の平均厚さが10nm以下で、かつ平均粒子空孔径が70nm以下の中空粒子が連結したシート状の構造体を有し、シート平均空孔径が70nm以下、シート空孔率が90〜99体積%、かつ光透過率が85%以上であることを特徴とする断熱シート。
【0012】
2.前記中空粒子が、下記一般式(1)で表される一種以上の基で表面修飾されていることを特徴とする前記1に記載の断熱シート。
【0013】
一般式(1)
−R−X
(式中、nは1〜10の整数であり、Rは、単結合、あるいは二価以上の結合手をもつ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは水素原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基から選ばれる置換基を表す。)
3.前記中空粒子の外郭が、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料を含有することを特徴とする、前記1または2に記載の断熱シート。
【0014】
4.前記中空粒子が多官能性化合物で連結されていることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の断熱シート。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高い断熱性と透明性を両立させることができ、これを貼付したガラス窓やガラス扉は透明性を維持しつつ断熱性が大きく向上し、また、機械的強度が優れた断熱シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】断熱シートの構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施態様に限定されるものではない。
(断熱シートの構成)
上記課題に鑑み、シートの断熱性、光透過性を確保すると共に、機械的強度を向上させ得る断熱材層の構造について鋭意検討を進めた結果、微少な中空粒子を直接、連結させたシート状の構造体にすることが有効であることを見出した。3次元で連結した構造体とすることで機械的強度が大きく向上し、軽量で、機械強度が高く、ハンドリング性も良好な断熱シートが得られる。本発明の断熱シートは、平均厚さが10nm以下である外郭を有し、平均粒子空孔径が70nm以下の中空粒子が連結したシート状の構造体から形成され、シート平均空孔径が70nm以下、シート空孔率が90〜99体積%、かつ光透過率が85%以上であることを特徴とする断熱シートである。シート状の構造体は断熱材層として機能する。
【0019】
本発明において、中空粒子が連結したシート状の構造体とは、中空粒子同士を化学的に結合させた3次元で連結したシート状の構造体をいう。
【0020】
中空粒子を連結させるには、外郭表面に反応性基を有するか、あるいは反応性基を導入した粒子を配列させた後、粒子同士を化学的に反応させて結合させることが好ましい。また、粒子外郭表面の反応性基と反応する多官能性化合物を添加してこれらを反応させて結合させることも好ましい方法である。
【0021】
また、構造体中の中空粒子の平均粒子空孔径とシート平均空孔径を共に70nm以下、とすることで、断熱材層中の空孔径のほとんどが空気成分の気体の平均自由行程(70nm)を下回るメソ孔となるため、伝導伝熱が極めて小さくなり、高い断熱性を発現することができる。
【0022】
シート空孔率は90〜99体積%である。より好ましくは95〜99体積%である。シート空孔率が99体積%を超えると構造体の強度が低下し、シート形態を維持することが困難となる。また、90体積%より低い場合は断熱性が低下する。
【0023】
中空粒子の平均粒子空孔径は、中空粒子の内径の平均値であり、空気の伝導伝熱を抑制する為に70nm以下である。好ましくは、50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。下限は製造上の実用的な見地から5nm以上が好ましい。
【0024】
外殻の平均厚さは10nm以下である。1nm以上、7nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上、5nm以下である。殻の厚さが10nmを超えると光透過率が低下する。1nm以上であると、粒子の機械的強度が増してシート形状の維持が容易となる。
【0025】
中空粒子は機械的強度を確保する上で、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料を含有する外郭で形成されることが好ましい。また、中空粒子に反応性基を導入して粒子間での結合、あるいは中空粒子が多官能性化合物で連結させた構造とすることで、更に断熱材層の強度を向上させることができる。
【0026】
本発明の断熱シートは、本発明に係る断熱材層のみをシート化した構成や、ガラス、あるいは透明樹脂等の透明基材上に本発明に係る断熱材層を形成させた構成で用いることができるが、透明基材と多孔性骨格の断熱材層を有する構成が好ましい。例えばガラス、あるいは透明樹脂等の透明基材上に形成することは、機械的強度を確保してハンドリングが容易であると共に、断熱性能を大きく向上させた透明な断熱シートが得られることから好ましい態様である。図1は断熱シートの構成の例を示す断面図である。例えば、図1(a)に示されるように、透明基材20上に断熱材層10が形成された形態、図1(b)に示されるように、2枚の透明基材20の間に断熱材層10がサンドイッチされた形態、図1(c)に示されるように、断熱材層10が透明基板20両面に形成された形態等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0027】
(中空粒子)
本発明に係る中空粒子とは、粒子の内部に空孔を有する粒子をいう。空孔とは、空気等のガス、真空空間等が存在している部分をいう。中空粒子における空孔の外側部分は外郭とも呼ばれる。本発明における中空粒子としては、外郭が閉塞されて面を形成しているものやナノレベルの外径を有する粒子が、網目状につながって多孔性の面を形成しているもの等が挙げられるが、外郭の平均厚さが10nm以下で、平均粒子空孔径が70nm以下の粒子であればどのような形態の中空粒子を用いても差し支えない。また、中空粒子の外郭を構成する材料としては、機械的強度を確保し、ハンドリング性のよいシートを得るために、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料を含有することが好ましい。具体的には下記1)〜3)の材料から1)、3)単独、あるいは少なくとも1)または3)を含む複数の組み合わせで選ばれた材料が好ましい。
【0028】
1)有機材料、2)無機材料、3)有機・無機ハイブリッド材料
有機材料としては、例えばスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
無機材料としては、シリコーン樹脂等の樹脂材料や、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物等が用いられるがこれらに限定されるものではない。これらの中で、微細な空孔を形成する上で粒径や構造体のサイズの制御のし易さから、シリカが好ましく用いられる。
【0030】
また有機・無機ハイブリッドとは有機の基と無機成分が結合した化合物であり、例えば、前記樹脂にケイ酸メチルあるいはケイ酸エチル、またはそれらのオリゴマー等のシランカップリング剤等で無機成分を結合させたものや、有機基が結合したシランカップリング剤を縮合したもの、あるいはチタンやジルコニア等のアルコキシド等を有機基に結合させたもの等が用いられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、微細な空孔を形成する上で粒径や構造体のサイズの制御のし易さから、シランカップリング剤を有機基に結合した材料が好ましく用いられる。
【0031】
中空粒子を形成する際、外郭材料自体を有機・無機ハイブリッド化した材料を用いたり、有機成分を含有する構造体と無機成分を含有する構造体の構成単位を連結させた複合材料を用いても差し支えない。
【0032】
断熱材として用いる中空粒子が連結した構造体は、例えば上記シランカップリング剤で無機成分を結合させた中空粒子の場合、中空粒子を溶媒に分散させた粒子分散液を乾燥させることによって容易に得られるが、溶媒が乾燥する際の界面応力によって粒子が破壊されるおそれがある為、表面修飾剤による表面修飾により粒子表面に疎水基を導入することで界面応力を抑制することができる。ここで本発明における表面修飾とは、粒子表面に新しい原子団などを導入することを言う。導入する疎水基としては、下記一般式(1)で表わされる基で表面修飾された粒子が好ましく用いられる。
【0033】
一般式(1)
−R−X
式中、nは1〜10の整数であり、Rは、単結合、あるいは二価以上の結合手をもつ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは水素原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基から選ばれる置換基を表す。具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、iso−ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0034】
また、表面修飾で上記疎水基として反応性基を導入することが好ましい。反応性基は中空粒子間を結合させたり、導入した反応性基と反応する多官能性化合物を用いて中空粒子を結合する基であり、結合によって断熱材層の機械的強度を向上させることができ好ましい。反応性基としては、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、アルコキシド等が挙げられる。反応性基を導入する場合、例えば反応性基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基を末端に有するシランカップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤等が挙げられる。これらの中で、末端にエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、あるいはビニル基を有するものが好ましく用いられる。
【0035】
中空粒子がシリカ等の金属アルコキシドから形成されたものの場合は、中空粒子表面のアルコキシドを加水分解して縮合反応させる事によって結合すればよい。これらの中で、反応性の制御のし易さから、アルコキシドの縮合反応を利用する方法が好ましい。
【0036】
中空粒子同士を連結させるため多官能性化合物を用いることも好ましい。中空粒子を連結させる際用いられる多官能性化合物としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基等の反応性基を2つ以上有する化合物であって、中空粒子表面の反応性基と反応して粒子を架橋させて構造体を形成するものである。例えば、多官能(メタ)アクリレートとして(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコーリジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が、多官能エポキシ化合物として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル及びダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルエーテルトリフェニルメタン、テトラグリシジルエーテルテトラフェニルエタン、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル等が、多官能オキセタン化合物として、多官能フェノール化合物とオキセタンクロライドの反応生成物、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、カルド型等の2官能オキセタン化合物、トリスフェノールメタン型、トリスクレゾールメタン型等の3官能オキセタン化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、カリックスアレーン型等の多官能オキセタン化合物等が挙げられる。これら多官能性化合物は樹脂組成物中に1種のみでなく、複数種を併用して用いてもよい。
【0037】
中空粒子の製造方法としては、例えば、親油性成分である樹脂モノマーを有機溶剤に溶解させた後、樹脂モノマーの重合反応を促進する親水性の反応成分を含む水溶液に乳化分散させて分散液液滴界面で重合反応させることによって中空粒子を製造することができる。その他にも、所定の粒径のナノ粒子のテンプレートを分散させた分散液に金属アルコキシドやシランカップリング剤といったゾルゲル溶液や反応性の樹脂モノマー溶液を添加してテンプレート表面にシェル層を被覆した後、内部のテンプレートを溶解させて中空化させる等の方法で中空粒子を得ることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
(安定剤)
本発明の中空粒子が有機材料で形成される場合は、粒子製造時にフェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤の中から選ばれた一種以上の安定剤を追加して添加してもよい。これら安定剤を適宜選択し、添加することで、断熱材層の劣化、あるいは使用環境における断熱材層の耐熱性、耐光性等の物性変動を高度に抑制することができる。
【0039】
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[即ち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。
【0040】
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド等が挙げられる。
【0041】
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されるものであれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデンビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0042】
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0043】
これらの安定剤の配合量は本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、有機材料100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0044】
(透明基材)
本発明で好ましく用いられる透明基材としては可撓性のあるガラス基板や樹脂製の基板が好適である。樹脂基材に用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
透明基材の厚みとしては、断熱シートとしてのハンドリングを考慮し、50〜1000μm、好ましくは70〜500μmである。
【0046】
(断熱シートの製造方法)
次に本発明の断熱シートの製造方法について説明する。
【0047】
本発明の断熱シートは、中空粒子が連結したシート状の構造体を有する断熱材層を形成して得られる。前記構造体を形成する方法としては、外郭の平均厚さが10nm以下で、かつ平均粒子空孔径が70nm以下の中空粒子が連結したシート状の構造体を有し、シート平均空孔径が70nm以下、シート空孔率が90〜99体積%、かつ光透過率が85%以上であれば特に制限されない。
【0048】
例えば、前記の方法等によって予め製造しておいた中空粒子の分散液をキャスト等の方法にて基板上に中空粒子を製膜して粒子間を結合させて構造体シートを形成後、シートを乾燥させる方法、多官能性化合物を添加した中空粒子分散液をキャスト等の方法にて基板上に中空粒子を製膜し、更に多官能性化合物によって粒子間を連結させて構造体シートを形成後、シートを乾燥させる方法により断熱シートを製造することができる。他にも平均粒子空孔径が70nm以下のナノ微粒子をコアテンプレートとし、このナノ微粒子を含む分散液にシェル剤を添加してナノサイズのコアシェル粒子を形成すると同時にこのコアシェル粒子を結合させたシートを形成後、コア粒子を溶媒等で溶解させて中空粒子が連結した構造体シートを形成・乾燥させる方法、シェル剤を含む溶液に平均径が70nm以下のナノバブルを吹き込み、バブル界面でシェル剤を反応させて中空粒子を形成後、分散液の溶媒を除去すると同時に粒子間を連結させる方法等で断熱シートを製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
シート平均空孔径を調整する方法としては、骨格を形成する材料の濃度を調整する方法が挙げられる。濃度が低いとシート平均空孔径が大きくなり、濃度が高いとシート平均空孔径が小さくなる。
【0050】
外郭の厚さを調整する方法としては、外郭を形成する材料の濃度を調整する方法が挙げられる。濃度が低いと外郭の厚さが薄くなり、濃度が高いと厚さが厚くなる。
【0051】
また、平均粒子空孔径を調整する方法としては、粒子形成時のコアとして用いる粒子径の選択やバブルの径を調整する方法が挙げられる。
【0052】
シート平均空孔径は小角X線散乱測定装置を用いて、散乱強度から算出することができる。
【0053】
平均粒子空孔径は電子顕微鏡観察で、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる空孔径をランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。ここで、本発明に係る平均粒子空孔径とは、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を2本の平行線で挟んだ距離の内最小の距離を指す。
【0054】
中空粒子の外郭の平均厚さは電子顕微鏡写真の画像解析で、光透過率は分光光度計等を使用してJIS R 3106に基づいて、シート空孔率は断熱材層の体積と質量の実測値を元にして算出することで、及び熱伝導率は熱線プローブ式熱伝導率測定装置用いてそれぞれ公知の方法で測定できる。
【0055】
乾燥方法については特に限定されないが、乾燥に伴う界面張力に基づく粒子間の凝集を抑制するため、超臨界乾燥法を用いることが好ましい。超臨界乾燥を行う際に用いられる超臨界流体である溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素、水等の単独系又は2種以上の混合系を挙げることができる。
【0056】
超臨界乾燥法としては、溶媒を直接臨界条件まで昇温昇圧した後に減圧するオートクレーブ法や、炭酸ガスの超臨界条件まで昇温昇圧し、炭酸ガスにより溶媒を抽出除去する超臨界炭酸ガス抽出法など、適宜の手法により行うことができる。オートクレーブ法は、オートクレーブ中に溶媒を含有する多孔性構造体を入れ、その溶媒の臨界点以上の温度、圧力まで上昇させた後に溶媒を徐々に除き、最終的に常温常圧の状態に戻すことによって乾燥させればよい。
【0057】
本発明においては、断熱性、透明性と共に機械的強度を確保する上で、粒子状構造体と中空粒子の両成分を含む多孔性骨格からなる断熱材層を形成する事が好ましく、これは、前記の粒子状骨格を形成し得る塗工液に中空粒子を添加した塗工液を塗布後、溶媒を乾燥して作製される。
【0058】
断熱材層の厚さは、必要とされる断熱性や透明性等を考慮して適宜選択されるが、例えば、窓ガラス用透明断熱シートとして用いる場合には、10μm〜5mmが好適である。10μm未満では断熱性が不十分となり、5mmより厚くなるとハンドリングが悪くなり、窓への貼り付け作業が困難となる恐れがある。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0060】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(製造例1)
特開2007−70484号公報に記載の方法に準じ、エポキシ樹脂を外郭とした中空粒子を製造した。エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)20部、トルエン70部、ヘキサデカン10部からなる親油性反応成分を、エチレンジアミン10部、水400部に乳化剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライド2部を加えた親水性反応成分に添加した。その後、超音波ホモジナイザーにて強制乳化してナノサイズの親油性反応成分を含む重合液滴が親水性反応成分を含む極性媒体中に分散した、油中水型分散液を調製した。撹拌機、ジャケット、還流冷却器及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、重合槽を80℃まで昇温して重合を開始した。4時間重合し、その後1時間の熟成期間をおいた後、重合槽を室温まで冷却した。得られたスラリーを脱水し、その後真空乾燥により残存親油性成分を除去して中空粒子Aを得た。中空粒子Aの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0062】
(製造例2)
製造例1において、エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)を用いる代りに分子内の水酸基を有するエポキシ樹脂;エピコート828ptbp(ジャパンエポキシレジン社製)を加えた樹脂組成物、エピコート828:エピコート828ptbp=1:1(質量比)を用いる以外は製造例1と同様の操作にて中空粒子を得た。その後、この中空粒子10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.5部とメタノール70部とを混合し、アンモニア水溶液(3N)3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Bを得た。中空粒子Bの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0063】
(製造例3)
製造例1において、エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)を用いる代りに分子内の水酸基を有するエポキシ樹脂;エピコート828ptbp(ジャパンエポキシレジン社製)を加えた樹脂組成物、エピコート828:エピコート828ptbp=1:1(質量比)を用いる以外は製造例1と同様の操作にて中空粒子を得た。その後、この中空粒子10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.2部と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、及びメタノール70部とを混合し、アンモニア水溶液(3N)3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Cを得た。中空粒子Cの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0064】
(製造例4)
平均粒径50nmの炭酸カルシウム粒子を用いて調製した10%炭酸カルシウム水分散液170部に、28%のアンモニア水8部を加え10分撹拌し、テトラエトキシシラン20を加え、室温で1時間撹拌を行った。その後60℃に昇温し、3時間撹拌を行い、室温まで冷却しシリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得た。
【0065】
得られたシリカ被覆炭酸カルシウム分散液200部にメタノールを190部を添加し、10%の硝酸水溶液を180部を加え、炭酸カルシウムの溶出を行った。次に、蒸留水200部を加え、限外ろ過膜を用いて200部の水溶液を排出させた。この操作を3回繰り返してシリカの外郭からなる中空粒子を得た。
【0066】
次に、得られた中空粒子の10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.5部とメタノール70部とを混合した後、28%アンモニア水溶液3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Dを得た。中空粒子Dの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0067】
(製造例5)
平均粒径50nmの炭酸カルシウムを用いて調製した10%炭酸カルシウム水分散液170部に、28%のアンモニア水8部を加え10分撹拌し、テトラエトキシシラン20部を加え、室温で1時間撹拌を行った。その後60℃に昇温し、3時間撹拌を行い、室温まで冷却しシリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得た。
【0068】
得られたシリカ被覆炭酸カルシウム分散液200部にメタノールを190部を添加し、10%の硝酸水溶液を180部を加え、炭酸カルシウムの溶出を行った。次に、蒸留水200部を加え、限外ろ過膜を用いて200部の水溶液を排出させた。この操作を3回繰り返して平均厚さが5nm、平均内径が50nmのシリカの外郭からなる中空粒子を得た。
【0069】
次に、得られた中空粒子の10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.2部と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、及びメタノール70部とを混合した後、28%アンモニア水溶液3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Eを得た。中空粒子Eの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0070】
(製造例6)
平均粒径50nmの炭酸カルシウムを用いて調製した10%炭酸カルシウム水分散液170部に、28%のアンモニア水8部を加え10分撹拌し、テトラエトキシシラン:メチルエトキシシラン=1:1(質量比)20部を加え、室温で1時間撹拌を行った。その後60℃に昇温し、3時間撹拌を行い、室温まで冷却しシリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得た。
【0071】
得られたシリカ被覆炭酸カルシウム分散液200部にメタノールを190部を添加し、10%の硝酸水溶液を180部を加え、炭酸カルシウムの溶出を行った。次に、蒸留水200部を加え、限外ろ過膜を用いて200部の水溶液を排出させた。この操作を3回繰り返して有機無機ハイブリッドシリカの外郭からなる中空粒子Fを得た。中空粒子Fの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0072】
(製造例7)
製造例6で得られた中空粒子Fの10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.5部、及びメタノール70部とを混合した後、28%アンモニア水溶液3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Gを得た。中空粒子Gの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0073】
(製造例8)
製造例6で得られた中空粒子Fの10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.2部と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、及びメタノール70部とを混合した後、28%アンモニア水溶液3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Hを得た。中空粒子Hの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0074】
(製造例9)
製造例6において、平均粒径50nmの炭酸カルシウム粒子を用いる代りに平均粒径30nmの炭酸カルシウム粒子を用いる他は製造例6と同様の操作にて平均厚さが3nm、平均内径が30nmの有機無機ハイブリッドシリカの外郭からなる中空粒子を得た。次に、この中空粒子10部、表面修飾剤としてメチルトリエトキシシラン1.2部と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、及びメタノール70部とを混合した後、28%アンモニア水溶液3部を加えて室温で15時間撹拌した。反応後の分散液を水洗、濾過した後、真空乾燥して表面修飾した中空粒子Iを得た。中空粒子Iの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ30nm、3nmであった。
【0075】
(製造例10)
製造例9において、平均粒径30nmの炭酸カルシウム粒子を用いる代りに平均粒径65nmの炭酸カルシウム粒子を用いる他は製造例9と同様の操作にて有機無機ハイブリッドシリカの外郭からなり、表面修飾した中空粒子Jを得た。中空粒子Jの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ65nm、7nmであった。
【0076】
(製造例11)
製造例1において、エピコート828を20部用いる代りに60部用いる以外は製造例1と同様の操作にて中空粒子Kを得た。中空粒子Kの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、12nmであった。
【0077】
(製造例12)
製造例4において、平均粒径50nmの炭酸カルシウム粒子を用いる代りに平均粒径72nmの炭酸カルシウム粒子を用いる他は製造例4と同様の操作にて表面修飾した中空粒子Lを得た。中空粒子Lの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ72nm、7nmであった。
【0078】
(製造例13)
製造例9において、平均粒径50nmの炭酸カルシウム粒子を用いる代りに平均粒径72nmの炭酸カルシウム粒子を用いる他は同様の操作にて有機無機ハイブリッドシリカの外郭からなり、表面修飾した中空粒子Mを得た。中空粒子Mの平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ72nm、7nmであった。
【0079】
(製造例14)
製造例1で得られた中空粒子Aを水に添加し、40体積%分散液を調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記分散液を乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート101を得た。
【0080】
超臨界乾燥法は超臨界炭酸ガス抽出法を用いた。塗工したポリエチレンテレフタレートシートを高圧容器中に入れ、これに炭酸ガスを導入して16MPaまで昇圧後、80℃まで加熱し、さらに16MPa、80℃において炭酸ガスによる抽出を行った後、常温常圧の状態に戻すことによって乾燥した。
【0081】
(製造例15)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例2で得られた中空粒子Bを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート102を得た。
【0082】
(製造例16)
製造例3で得られた中空粒子Cを水に添加し、40体積%分散液を調製した後、これに分散液100部に対して重合開始剤VA−060(水溶性アゾ系開始剤;和光純薬社製)を0.1部となるように添加し、次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記分散液を乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工し、60℃で、1hr加熱後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート103を得た。
【0083】
(製造例17)
製造例3で得られた中空粒子Cを水に添加し、40体積%分散液を調製した後、これに分散液100部に対して、多官能性化合物としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを3部、重合開始剤VA−060(水溶性アゾ系開始剤;和光純薬社製)を分散液中に0.1部となるように添加し、次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記分散液を乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工し、60℃で、1hr加熱後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート104を得た。
【0084】
(製造例18)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例4で得られた中空粒子Dを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート105を得た。
【0085】
(製造例19)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例5で得られた中空粒子Eを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート106を得た。
【0086】
(製造例20)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例6で得られた中空粒子Fを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート107を得た。
【0087】
(製造例21)
他の製造例では、中空粒子の分散液を作成後、塗工し断熱材層を形成させたが、製造例21では以下の方法により、中空粒子形成と同時に中空粒子を連結させた。
【0088】
テトラエトキシシラン5部、平均粒子径50nmの炭酸カルシウム粒子50部、水20部、エタノール25部、28%アンモニア水溶液2部からなる混合物を混錬してスラリーを調製した。このスラリーを二軸押し出し機を用いて60℃に加熱しながら乾燥膜厚が200μmのシートとなるように押し出し成型を行い、次に、シートを押し出す工程で1N塩酸水溶液のバスを通過させて炭酸カルシウムを溶解後、シートを水洗し、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に貼合した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート108を得た。中空粒子の平均粒子空孔径と外郭の平均厚さは、それぞれ50nm、5nmであった。
【0089】
(製造例22)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例7で得られた中空粒子Gを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート109を得た。
【0090】
(製造例23)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例8で得られた中空粒子Hを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート110を得た。
【0091】
(製造例24)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例8で得られた中空粒子Hを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート111を得た。
【0092】
(製造例25)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例9で得られた中空粒子Iを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート112を得た。
【0093】
(製造例26)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例10で得られた中空粒子Jを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート113を得た。
【0094】
(製造例27)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例11で得られた中空粒子Kを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート201を得た。
【0095】
(製造例28)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例12で得られた中空粒子Lを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート202を得た。
【0096】
(製造例29)
製造例6で得られた中空粒子Fを水に添加し、30体積%分散液を調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記分散液を乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート203を得た。
【0097】
(製造例30)
製造例14において、中空粒子Aを用いる代りに製造例13で得られた中空粒子Mを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート204を得た。
【0098】
(製造例31)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例8で得られた中空粒子Hを用い、中空粒子の分散液を20体積%とする他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート205を得た。
【0099】
(製造例32)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例13で得られた中空粒子Mを用いる他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート206を得た。
【0100】
(製造例33)
製造例17において、中空粒子Cを用いる代りに製造例8で得られた中空粒子Hを用い、中空粒子の分散液を45体積%とする他は同様の操作にて中空粒子からなる断熱材層を形成した断熱シート207を得た。
【0101】
前記製造例14〜33で得られた断熱シート101〜113(本発明)及び断熱シート201〜207に以下の評価をおこなった。
【0102】
(断熱シートの物性評価方法)
以下、実施例にて作成した断熱シートの物性評価方法について記す。
【0103】
(1)中空粒子の外郭の平均厚さ
得られた中空粒子について、先ず、電子顕微鏡写真から無作為に中空粒子を100個選び、画像処理ソフトにて粒子一個につき10箇所の外郭の厚さを解析して数平均値を求め、更に、選択した全粒子の数平均値を算出して中空粒子外郭の平均厚さを求めた。
【0104】
(2)中空粒子の平均粒子空孔径
得られた中空粒子について、先ず、電子顕微鏡写真から無作為に中空粒子を100個選び、選ばれた中空粒子の平均粒子空孔径を解析し、その数平均値を算出して平均粒子空孔径を求めた。
【0105】
(3)シート平均空孔径
透明断熱シートのシート平均空孔径は、小角X線散乱測定装置(商品名:RU−200、リガク社製)を用いて小角X線散乱の測定により行った。測定値は10点の平均値を用いた。
【0106】
測定条件:λ(CuKα)=0.154nm、45kV、70mA
解析方法:上記測定機器を用いて、小角領域(2θ<10°)で測定を行い、散乱光プロファイルから、断熱層中の平均空孔径(nm)を算出した。
【0107】
(4)シート空孔率
断熱材層の空孔率Aは、断熱材層の体積と質量から得られる密度Bと断熱材層を構成する材料自体の密度Cから算出した。
【0108】
A=((C−B)/C)×100(%)
(5)光透過率
紫外可視分光光度計(日本分光V−570)にて光透過率を測定し、JIS R 3106に基づいて光透過率を求めた。
【0109】
(6)熱伝導率
熱線プローブ式熱伝導率測定装置(京都電子製QTM−500)を用い測定を行った。
【0110】
(7)曲げ特性
製造例にて得られたシートについて、シートの中央を支点に、断熱材層を外側にしてシートの内側が120度の角度をなすように折り曲げ、断熱材層の割れ発生の有無を目視で確認し、下記の基準に基づいて曲げ特性を評価した。
【0111】
○: 折り曲げ部に割れの発生なし
△: 折り曲げ部に一部割れの発生あり
×: 折り曲げ部全体に割れの発生あり。
【0112】
上記の評価結果を表1、表2に示す。なお表中○は、表面修飾剤または、多官能性化合物が使用されたことを示し、×は使用されなかったことを示す。また、表中、表面修飾剤の欄の括弧内は表面修飾剤により導入した疎水基を表し、以下の略号を用いた。
Me基:メチル基
MO基:メタクリロキシ基
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1、表2の物性評価結果から明らかなように、本発明に係わる断熱シート101〜113は、機械的強度(曲げ特性)に優れると共に、高い断熱性、透明性を有していることがわかる。
【符号の説明】
【0116】
10 断熱材層
20 透明基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭の平均厚さが10nm以下で、かつ平均粒子空孔径が70nm以下の中空粒子が連結したシート状の構造体を有し、シート平均空孔径が70nm以下、シート空孔率が90〜99体積%、かつ光透過率が85%以上であることを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
前記中空粒子が、下記一般式(1)で表される一種以上の基で表面修飾されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。
一般式(1)
−R−X
(式中、nは1〜10の整数であり、Rは、単結合、あるいは二価以上の結合手をもつ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは水素原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基から選ばれる置換基を表す。)
【請求項3】
前記中空粒子の外郭が、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の断熱シート。
【請求項4】
前記中空粒子が多官能性化合物で連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−102204(P2012−102204A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250595(P2010−250595)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】