説明

断熱パネル及び環境試験装置

【課題】断熱パネル内の結露を低減させるとともに断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制する。
【解決手段】一端部50aにおいて本体部40a内側の空間に連通し、他端部50bが断熱パネル40の外側で開口する接続管50と、接続管50内に配設される吸湿材52と、吸湿材52に吸着された水分を放出させる吸湿材再生手段54とを備えている。吸湿材52は、加熱されることにより放湿可能な吸湿材である。吸湿材再生手段54は、吸湿材52を加熱可能なヒータ54aと、このヒータ54aを制御するヒータ制御部54bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネル及び環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び2に開示されているように、板金等の複数のパネル材を中空状に組み付け、その内部に断熱材が設けられた断熱パネルが知られている。この断熱パネルは、パネル材を、その端部同士で繋ぎ合わせた中空状に構成されるものである。具体的には、パネル材の端部を折り曲げて、この折り曲げられた端部同士を重ね合わせてリベットによって締結することで中空状に構成されている。このため、例えば断熱パネルで囲まれた庫内の圧力が変動すると、断熱パネル内外に圧力差が生ずることにより、パネル材の接合部を通して空気が流通し得る。そして、庫内の圧力が低下したときには、庫外から断熱パネル内に外気が侵入し、外気に含まれる水分が断熱パネル内で結露して蓄積されることがある。特許文献2では、その対策として、庫外側のパネル材の接合部に水蒸気透過率の低いシール材を設ける一方、庫内側のパネル材の接合部に開口部を設けるようにしている。これにより、庫外側からの外気の侵入を抑制する一方、外気の侵入があったとしても、その外気を庫内側へ放出し、断熱パネル内で結露することを抑制するようにしている。なお、特許文献1のものでも、庫内側のパネル材に開口部を設けることにより、断熱パネル内に侵入した外気を庫内側へ放出するようにしている。
【特許文献1】特開2007−17144号公報
【特許文献2】特開2007−17145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1及び2に開示された従来の断熱パネルにおいては、パネル材の接合部を通して庫外から侵入した外気を庫内側へ放出するので、水分を含んだ外気が断熱パネル内を通過することがある。このため、庫内側のパネル材の接合部に開口部を設けることにより、外気が庫内側に放出され易いようにしているとはいえ、少なからず断熱パネル内に水分が残留することは避けられない。特に、庫内側の温度が低温であれば、断熱パネル内で結露することは避けられないため、それが繰り返されて水分が蓄積することにより、断熱パネルの断熱性能が劣化するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、断熱パネル内の結露を低減させるとともに断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明は、中空状の本体部と、この本体部の内側に設けられた断熱材とを備えている断熱パネルであって、一端部において前記本体部内側の空間に連通し、他端部が前記断熱パネルの外側で開口している接続管と、前記接続管内に配設される吸湿材と、前記吸湿材に吸着された水分を放出させる吸湿材再生手段とを備えている断熱パネルである。
【0006】
本発明の断熱パネルでは、本体部内側の空気が冷却されて収縮すると、本体部内側の気圧が低下するので、接続管を通して外気が流入する。この接続管の中には吸湿材が設けられているので、接続管を流れる外気は、吸湿材によって除湿された上で本体部内側の空間に流入する。このため、外気が本体部内側に流入するとしても断熱材の濡れを抑制することができる。したがって、本体部内側の空気の冷却が繰り返されて、外気が繰り返し本体部内に流入するとしても、本体部内側で水分が蓄積されることを抑制することができるので、断熱パネルの断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。しかも、断熱パネルには吸湿材再生手段が設けられているので、本体部内の加熱及び冷却が繰り返されたとしても、吸湿材の性能が劣化することを抑制することができる。
【0007】
ここで、前記吸湿材は、加熱されることにより放湿可能な吸湿材によって構成されるのが好ましい。
【0008】
本発明は、試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、前記断熱パネルによって構成される壁体を備え、前記吸湿材再生手段は、前記吸湿材を加熱可能なヒータと、このヒータを制御するヒータ制御部とを有し、前記ヒータ制御部は、前記試験室内の昇温開始に合わせ、又は前記試験室内の昇温開始までに、前記ヒータの駆動を開始する環境試験装置である。
【0009】
本発明では、試験室内が冷却されると、その壁体を構成する断熱パネルの試験室側の壁面が冷却される。これに伴い、断熱パネル内の空気が冷やされて気圧が低下する。このため、断熱パネル内に接続管を通して外気が流入するが、この接続管の中には吸湿材が設けられているので、接続管を流れる外気は吸湿材によって除湿された上で断熱パネル内に流入する。このため、外気が本体部内側に流入するとしても断熱材の濡れを抑制することができる。したがって、本体部内の空気の冷却が繰り返されて、外気が繰り返し本体部内に流入するとしても、本体部内で水分が蓄積されることを抑制することができるので、断熱パネルの断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。しかも、試験室内の昇温開始に合わせてヒータが吸湿材の加熱を開始すれば、試験室内の昇温に伴って断熱パネル内の空気が加熱されて、この空気が接続管を通して外部に排出される際に、吸湿材から離脱した水分を同伴させることができ、一方、試験室内の昇温開始までにヒータが吸湿材の加熱を開始する場合には、試験室の加熱に伴って本体部内側の空気が接続管を通して外部へ流出する際に吸湿材がすでに放湿温度になっているので、本体部内の空気が排出され始める際にも、吸湿材から放出された水分を空気に同伴させて外部へ排出することができる。すなわち、本体部内の昇圧に伴って生ずる空気の流動を利用して水分を排出することができる。また、吸湿材のリフレッシュをすることができ、吸湿材の延命を図ることができる。
【0010】
本発明は、試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、前記断熱パネルによって構成される壁体を備え、前記吸湿材再生手段は、前記吸湿材を加熱可能なヒータと、このヒータを制御するヒータ制御部とを有し、前記ヒータ制御部は、前記試験室内の昇温が完了するまで前記ヒータを駆動する環境試験装置である。
【0011】
本発明では、試験室内が冷却されると、その壁体を構成する断熱パネルの試験室側の壁面が冷却される。これに伴い、断熱パネル内の空気が冷やされて気圧が低下する。このため、断熱パネル内に接続管を通して外気が流入するが、この接続管の中には吸湿材が設けられているので、接続管を流れる外気は吸湿材によって除湿された上で断熱パネル内に流入する。このため、外気が本体部内側に流入するとしても断熱材の濡れを抑制することができる。したがって、本体部内の空気の冷却が繰り返されて、外気が繰り返し本体部内に流入するとしても、本体部内で水分が蓄積されることを抑制することができるので、断熱パネルの断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。しかも、断熱パネル内の空気の膨張に伴って空気が外部へ流出するときにはヒータが駆動されるので、断熱パネル内の空気は排出される間、吸湿材を放湿温度に維持することができる。したがって、本体部内の昇圧に伴って生ずる空気の流動を水分排出に最大限利用することができる。
【0012】
また本発明は、試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、パネル材によって中空状に形成された本体部と、この本体部内に設けられた断熱材とを有し、前記試験室の壁体として構成される断熱パネルと、前記本体部に挿入されて一端部が前記本体部内側の空間内に開口する一方、他端部が前記断熱パネルの外側で開口している接続管と、前記本体部内側の空間内で前記接続管内に配設され、加熱されることにより放湿可能な吸湿材と、を備え、前記接続管の、前記吸湿材が配設された部位が試験室側の前記パネル材と接触している環境試験装置である。
【0013】
本発明では、試験室内が冷却されると、その壁体を構成する断熱パネルの試験室側のパネル材が冷却される。これに伴い、断熱パネル内の空気が冷やされて気圧が低下するが、このとき、接続管を通して外気が断熱パネル内に流入する。この接続管内には吸湿材が設けられているので、流入した外気は吸湿材によって除湿され、その上で接続管の一端部から本体部内側の空間に流入する。このため、外気が本体部内側に流入するとしても断熱材の濡れを抑制することができる。したがって、本体部内の空気の冷却が繰り返されて、外気が繰り返し本体部内に流入するとしても、本体部内で水分が蓄積されることを抑制することができるので、断熱パネルの断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。一方、試験室内が加熱されると、その壁体を構成する断熱パネルの試験室側のパネル材が加熱される。これに伴い、吸湿材が加熱されるため、吸湿材に吸着された水分が放出される。このとき本体部内の空気が加熱によって膨張するので、接続管を通して外部へ流出し、水分はこの空気とともに排出される。したがって、試験室内を加熱することによって、吸湿材のリフレッシュをすることができ、吸湿材の延命を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、断熱パネル内の結露を低減させることででき、しかも断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る環境試験装置10は、試料Wを収納可能な試験室12を備えており、この試験室12に収納された試料Wに熱負荷を与えることができるものである。すなわち、この環境試験装置10は、試料Wを低温と高温に交互に曝して試料Wに熱ストレスを与える熱衝撃試験装置、あるいは試料Wを所定条件の雰囲気に曝し続けて試料Wに熱負荷を与える恒温槽又は恒温恒湿槽として構成されている。試料Wとしては、例えば半導体チップが実装されたプリント基板等を挙げることができる。
【0017】
環境試験装置10は、加熱室14、冷却室16、及び前記試験室12を画定する壁体18と、この壁体18に取り付けられた開閉扉22とを有している。加熱室14は、試験室12との間で循環する空気を加熱するための部屋で、試験室12内を昇温させるために使用される。加熱室14には、ヒータ24と送風機26とが配設されている。冷却室16は、試験室12との間で循環する空気を冷却するための部屋で、試験室12内を降温させるために使用される。冷却室16には、冷却器28と送風機30と補助加熱器32とが配設されている。補助加熱器32は、試験室12に供給される空気が目標温度よりも低温になった場合に駆動される。
【0018】
試験室12と加熱室14との間の高温側仕切り壁35には、吸入口35aと吹出し口35bが設けられており、これら吸入口35a及び吹出し口35bにはそれぞれ開閉ダンパー35cが配設されている。吸入口35aは、試験室12内の空気を加熱室14に導入するための開口部である。吹出し口35bは、加熱室14で加熱された高温の空気を試験室12に流入させるための開口部である。開閉ダンパー35cは、試験室12内を昇温させるときに吸入口35a及び吹出し口35bを開放する一方、試験室12内を降温させるときに吸入口35a及び吹出し口35bを閉じる。
【0019】
試験室12と冷却室16との間の低温側仕切り壁36には、吸入口36aと吹出し口36bが設けられており、これら吸入口36a及び吹出し口36bにはそれぞれ開閉ダンパー36cが配設されている。吸入口36aは、試験室12内の空気を冷却室16に導入するための開口部である。吹出し口36bは、冷却室16で冷却された低温の空気を試験室12に流入させるための開口部である。開閉ダンパー36cは、試験室12内を降温させるときに吸入口36a及び吹出し口36bを開放する一方、試験室12内を昇温させるときに吸入口36a及び吹出し口36bを閉じる。
【0020】
壁体18は、試験室12を構成する壁体20と、加熱室14を構成する壁体19と、冷却室16を構成する壁体21とからなるが、これら壁体19,20,21は何れも、図2に示すように、断熱パネル40によって構成されている。断熱パネル40は、複数のパネル材42が組み付けられた構成の中空状の本体部40aと、この本体部40aの内側に設けられた断熱材40bとを備えている。
【0021】
パネル材42は例えばステンレス板等の板金からなり、断熱パネル40の本体部40aは、例えば折り曲げ加工したパネル材42や平板状のままのパネル材42の縁部同士を接合することによって中空状に形成されている。具体的に、室外側のパネル材42については、パネル材42の縁部を折り曲げ、その折り曲げられた縁部同士を重ね合わせて溶接し、接合部42aとしている。ここでの溶接は例えばスポット溶接とすることができる。このパネル材42同士の接合部42aには、シール材45が施されており、外部の空気が接合部42aを通して本体部40a内になるべく侵入しないようにしている。一方、室内側のパネル材42については、縁部を折り曲げ、その折り曲げられた縁部同士を重ねて溶接している。この溶接部42cでの溶接は例えばアルゴン溶接とすることができる。アルゴン溶接により全周シールとなる。
【0022】
断熱材40bは、グラスウール等の繊維状の断熱材40bである。パネル材は板金等の金属製のため、パネル材42を通して室内の熱が伝達し易く、その影響で、本体部40a内の空気が膨張、収縮し易い。なお、冷却室16を構成する断熱パネル40の断熱材40bは、ウレタン発泡剤等の連続気泡を有する樹脂で構成してもよい。
【0023】
前記開閉扉22は、試験室12を構成する壁体20に設けられた試料Wの出し入れ口を開閉可能に設けられている。この開閉扉22も壁体20と同様に断熱性を有している。すなわち、開閉扉22は、複数のパネル材44を中空状に組み付けるとともにその内部に断熱材22aが配設された構成となっている。この断熱材22aは、グラスウール等の繊維状の断熱材22aである。
【0024】
図1に示すように、断熱パネル40には、接続管50と、この接続管50内に配設された吸湿材52と、吸湿材再生手段54とが設けられている。接続管50は、その一端部50aが本体部40aにおける室外側のパネル材42に接続されている。そして、接続管50内の空間は一端部50aにおいて本体部40a内側の空間に連通している。接続管50の他端部50bは大気中に開放している。つまり、接続管50の他端部50bは断熱パネル40の外側で開口している。
【0025】
吸湿材52は、空気中の水分を吸着可能なものであり、加熱されることにより吸着した水分を放出する。吸湿材52は、例えば、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、イモゴライト、アロフェン、活性化アルミナ、活性炭、活性ボーキサイト等の何れかによって構成されている。
【0026】
なお、シリカゲルであれば100℃〜200℃で水分を放出し、ゼオライトであれば200℃〜300℃で水分を放出し、活性化アルミナであれば170℃〜300℃で水分を放出するので、吸湿材52の温度を検出する検出手段を設けておいて、この検出手段による検出温度に基づいて後述のヒータ54aを駆動制御するようにしてもよい。こうすれば、吸湿材52の耐熱温度以上に吸湿材52を加熱することを防止できるので、吸湿材52の劣化防止を図ることができる。この場合において、管理温度によって加熱時間を調整するようにしてもよい。そうすれば、加熱時間を最適化でき、省エネ化を図ることができる。なお、図1には、接続管50は、吸湿材52が配設された部位が太く形成された例を示しているが、この構成に限られるものではない。
【0027】
吸湿材再生手段54には、ヒータ54aと、ヒータ制御部54bとが含まれる。ヒータ54aは、吸湿材52を加熱可能なものであり、例えば図示のように、接続管50の外側から接続管50を加熱するように設けられていてもよく、あるいは接続管50の中に設けられていてもよい。
【0028】
ヒータ54aは、ヒータ制御部54bによって駆動制御される。ヒータ制御部54bは、環境試験装置10を制御するコントローラ56の一機能として設けられるものであり、環境試験装置10の動作と関連付けてヒータ54aを駆動制御する。すなわち、低温曝しから高温曝しに移行する際にヒータ54aを駆動する一方、それ以外のときにはヒータ54aをオフする。
【0029】
ここで、本実施形態の環境試験装置10の運転動作について説明する。以下に説明する運転動作は、試験室12内の試料Wを高温雰囲気と低温雰囲気に交互に繰り返して曝す熱衝撃試験を行うときの運転動作である。
【0030】
試験室12内に試料Wをセットした状態で高温雰囲気に曝すときには、高温側仕切り壁35の吸入口35a及び吹出し口35bを開放する一方、低温側仕切り壁36の吸入口36a及び吹出し口36bを閉じる。そして、ヒータ24及び送風機26を駆動して、加熱室14で空気を加熱するとともにこの高温に加熱された空気を加熱室14と試験室12との間で循環させる。これにより試験室12内が所定の温度まで昇温し、この所定の温度に一定時間維持され、試料Wの高温曝しが行われる。
【0031】
一定の時間が経過すると、今度は高温側仕切り壁35の吸入口35a及び吹出し口35bを閉じる一方、低温側仕切り壁36の吸入口36a及び吹出し口36bを開放する。そして、冷却器28及び送風機30を駆動して、冷却器28で空気を冷却するとともにこの低温に冷却された空気を冷却室16と試験室12との間で循環させる。これにより試験室12内が所定の温度まで低下し、この所定の温度に一定時間維持され、試料Wの低温曝しが行われる。以降、高温曝しと低温曝しを交互に繰り返すことにより、試料Wに熱的ストレスを付加することができる。この高温曝しでの試験室12内の温度と低温曝しでの試験室12内での温度との差は、例えば50℃以上であるのが好ましい。
【0032】
高温曝しから低温曝しへ移行した際には、試験室12を構成する壁体20の内壁20bが試験室12内の低温空気によって次第に冷却されるため(図3(a)の領域A)、壁体20(断熱パネル40)の内部空間STも次第に冷却され、これに伴い、壁体20内の空気が収縮する(図3(b))。この結果、外気が接続管50を通して内部空間ST内に流入するが、このとき図3(d)に示すように接続管50のヒータ54aがOFFとなっていて、吸湿材52は高温になっていないので、接続管50内を流れる外気に含まれる水分は吸湿材52に吸着される(図3(c))。したがって、除湿された空気を内部空間STに導入することができるので、内部空間STに水分が蓄積されることを抑制することができる。その後、低温曝しが継続される間は、内部空間ST内の空気温度が低温で安定し、断熱パネル40内外の気圧が均衡するため、接続管50内の空気は停滞する。
【0033】
一方、低温曝しから高温曝しへ移行した際には、試験室12を構成する壁体20の内壁20bが試験室12内の高温空気によって次第に加熱されるため(図3(a)の領域B)、壁体20の内部空間STも次第に加熱され、これに伴い、壁体20内の空気が膨張する(図3(b))。この結果、内部空間ST内の空気の一部が接続管50を通して外部へ放出される。このとき図3(d)に示すように、接続管50のヒータ54aがONされていて、吸湿材52が高温になるので、吸湿材52に吸着されていた水分が放出される(図3(c))。このため、接続管50を通して外部へ排出される空気と一緒に水分が排出される。したがって、内部空間ST内での圧力変動が抑制されるとともに、吸湿材52のリフレッシュが行われる。そして、ヒータ54aは試験室12内の昇温が完了するまで駆動され、昇温の終了に合わせてヒータ54aの駆動が停止される。このため、本体部40a内の昇圧に伴って空気が流動する際には、吸湿材52を放湿温度に維持できるとともに、この空気の流動を水分排出に最大限利用することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、本体部40a内側の空気が冷却されて収縮すると、本体部40a内側の気圧が低下するので、接続管50を通して外気が流入する。この接続管50の中には吸湿材52が設けられているので、接続管50を流れる外気は、吸湿材52によって除湿された上で本体部40a内側の空間に流入する。このため、外気が本体部40a内側に流入するとしても断熱材40bの濡れを抑制することができる。したがって、本体部40a内側の空気の冷却が繰り返されて、外気が繰り返し本体部40a内に流入するとしても、本体部40a内側で水分が蓄積されることを抑制することができるので、断熱パネル40の断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。しかも、断熱パネル40には吸湿材再生手段54が設けられているので、本体部40a内の加熱及び冷却が繰り返されたとしても、吸湿材52の性能が劣化することを抑制することができる。特に本実施形態では、試験室12の加熱に伴って本体部40a内側の空気が接続管50を通して外部へ流出する際に、吸湿材52から放出された水分を空気に同伴させて外部へ排出することができる。すなわち、本体部40a内の昇圧に伴って生ずる空気の流動を利用して水分を排出することができる。また、吸湿材52のリフレッシュをすることができ、吸湿材52の延命を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、図3(a)〜(d)に示すように、低温曝し(低温試験)から高温曝し(高温試験)への移行に合わせてヒータ54aの駆動を開始する、言い換えると室内温度が低温曝しの温度から上昇し始めるのと同時にヒータ54aの駆動を開始する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、低温曝しから高温曝しに移行する前にヒータ54aの駆動を開始するようにしてもよい。この場合には、本体部40a内の昇圧に伴って本体部40a内の空気が実質的に排出開始されるときまでに、吸湿材52が放湿温度になっているようにヒータ54aを駆動するのが好ましい。また、前記実施形態では、試験室12内の昇温完了と同時にヒータ54aを停止するようにしたが、これに代え、試験室12内の昇温が完了する少し前にヒータ54aを停止するようにしてもよい。この場合でも、昇温完了時に吸湿材52が放湿温度であれば、昇温が完了するまで吸湿材52からの水分の放出が可能である。
【0036】
また前記実施形態では、壁体18の内部空間Sが、加熱室14を構成する壁体19の内部空間SHと、試験室12を構成する壁体20の内部空間STと、冷却室16を構成する壁体21の内部空間SLとに仕切られる構成について示したが、この構成に限られるものではない。すなわち、壁体18の内部空間Sが、加熱室14を構成する壁体19の内部空間SHと、試験室12を構成する壁体20の内部空間STと、冷却室16を構成する壁体21の内部空間SLとに亘る1つの空間として形成される構成であってもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、壁体18によって区画される室内空間が断熱壁35,36によって3つの空間(試験室12、加熱室14、冷却室16)に仕切られた3ゾーン構成としたが、これに限られるものではない。例えば図4に示すように、壁体18によって区画される室内空間が断熱壁によって仕切られていない一槽構造の環境試験装置70としてもよい。この環境試験装置70では、室内空間が試験室12として構成されるが、この試験室12は、仕切り板72により、試料Wがセットされる試料室12aと、試験室12内の空気を加熱又は冷却する空調室12bとに仕切られている。仕切り板72には試料室12aと空調室12bとを連通させる連通孔が設けられている。空調室12bには、送風機26、加熱器(ヒータ)24、冷却器28等が配設されている。そして、送風機26を駆動することにより、試料室12aと空調室12bとの間で空気が循環し、加熱器24を駆動することにより、試験室12内の空気を加熱する一方、冷却器28を駆動することにより試験室12内の空気を冷却する。この環境試験装置70においても、試験室12内の空気の加熱又は冷却に伴って、壁体18が加熱又は冷却されることにより、内部空間ST(S)内の空気が膨張又は収縮し、接続管50を通して空気が流通する。したがって、3ゾーン構成の環境試験装置10と同様に、断熱性能の劣化や水漏れの発生を抑制することができる。なお、接続管50の一端部50aが加熱器24の近傍に接続されていれば、加熱器24の熱を吸湿材52の加熱にも利用することが可能となる。すなわち加熱器24をヒータ54aによる加熱の補助として利用することができる。また、一槽構造の環境試験装置70においても、前述した種々の形態を採用することができる。
【0038】
また、前記実施形態では、吸湿材再生手段54が設けられる構成としたが、これに限られるものではない。すなわち、図5に示すように、吸湿材52が壁体20の内壁20bに接触または近接していれば、吸湿材再生手段54を別個に設ける必要がなくなる。具体的に、この実施形態では、接続管50が外壁20aを構成するパネル材42を貫通して壁体20(断熱パネル40)内に挿入されている。そして、接続管50の一端部50aが本体部40aの内側の空間内で開口する一方、他端部50bは、壁体20の外側で開口している。この接続管50には、壁体20の内壁20bを構成するパネル材42と接触している部位が存在し、その部位に吸湿材52が収納されている。この実施形態では、試験室12内が加熱されると、その壁体20を構成する断熱パネル40の試験室12側のパネル材42が加熱される。これに伴い、吸湿材52が加熱されるため、吸湿材52に吸着された水分が放出される。このとき壁体20内の空気が膨張して接続管50を通して外部へ流出するので、水分は外部へ排出される。したがって、試験室12内の昇温に応じて吸湿材52のリフレッシュがなされ、吸湿材52の延命を図ることができる。
【0039】
図5の態様は、3ゾーン構成の環境試験装置10にも一槽構造の環境試験装置70にも適用できるが、一槽構造の環境試験装置70の場合、接続管50のうち吸湿材52が収納された部位が、加熱器24に近接するように配置されていてもよい。この場合、加熱器24の熱を吸湿材52の加熱に効率よく利用できる。またこれらの環境試験装置10,70において、低温試験及び高温試験とは別に、吸湿材52から放湿させるための乾燥運転を行うようにしてもよい。そうすれば、低温試験で試験が終了した場合等でも、吸湿材52の再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置の全体構成を概略的に示す断面図である。
【図2】前記環境試験装置の壁体の一部を概略的に示す断面図である。
【図3】前記環境試験装置の運転動作を説明するための概念図であり、(a)は試験室内温度の変化を表し、(b)は内部空間内の空気の膨張・平衡・収縮の推移を表し、(c)は吸湿材の吸着・放出の推移を表し、(d)はヒータのオン・オフの推移を表している。
【図4】一槽構造の態様の環境試験装置を概略的に示す断面図である。
【図5】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられる試験室の壁体の一部を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
W 試料
10 環境試験装置
12 試験室
18 壁体
20 壁体
40 断熱パネル
40a 本体部
40b 断熱材
50 接続管
50a 一端部
50b 他端部
52 吸湿材
54 吸湿材再生手段
54a ヒータ
54b ヒータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の本体部と、この本体部の内側に設けられた断熱材とを備えている断熱パネルであって、
一端部において前記本体部内側の空間に連通し、他端部が前記断熱パネルの外側で開口している接続管と、
前記接続管内に配設される吸湿材と、
前記吸湿材に吸着された水分を放出させる吸湿材再生手段とを備えている断熱パネル。
【請求項2】
前記吸湿材は、加熱されることにより放湿可能な吸湿材によって構成される請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、
請求項2に記載の断熱パネルによって構成される壁体を備え、
前記吸湿材再生手段は、前記吸湿材を加熱可能なヒータと、このヒータを制御するヒータ制御部とを有し、
前記ヒータ制御部は、前記試験室内の昇温開始に合わせ、又は前記試験室内の昇温開始までに、前記ヒータの駆動を開始する環境試験装置。
【請求項4】
試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、
請求項2に記載の断熱パネルによって構成される壁体を備え、
前記吸湿材再生手段は、前記吸湿材を加熱可能なヒータと、このヒータを制御するヒータ制御部とを有し、
前記ヒータ制御部は、前記試験室内の昇温が完了するまで前記ヒータを駆動する環境試験装置。
【請求項5】
試験室内の温度を変えることによって当該試験室内の試料に熱負荷を与え得る環境試験装置であって、
パネル材によって中空状に形成された本体部と、この本体部内に設けられた断熱材とを有し、前記試験室の壁体として構成される断熱パネルと、
前記本体部に挿入されて一端部が前記本体部内側の空間内に開口する一方、他端部が前記断熱パネルの外側で開口している接続管と、
前記本体部内側の空間内で前記接続管内に配設され、加熱されることにより放湿可能な吸湿材と、を備え、
前記接続管の、前記吸湿材が配設された部位が試験室側の前記パネル材と接触している環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−281912(P2009−281912A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135183(P2008−135183)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】