説明

断熱性能体験装置及びこれを用いた断熱性能体験方法

【課題】住宅におけるガラス窓や外壁の断熱性能をリアルに判り易く、しかも楽しみながら印象深く体験することができるアミューズメント性の高い断熱性能体験装置を提供する。
【解決手段】この断熱性能体験装置は、常温室1と冷温室2とを仕切る仕切り壁5に、断熱仕様の異なる複数のガラス窓10、11と、断熱仕様の異なる複数の外壁12、13とを夫々配設している。そして、ナレーション装置30によって、常温室1を部屋内、冷温室2を屋外として見立てたクリスマスの夜を想定した物語に乗せて、ガラス窓10、11及び外壁12、13の断熱性能を違いを説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅におけるガラス窓や外壁の断熱性能をリアルにわかり易く、楽しみながら体験するための断熱性能体験装置及びこれを用いた断熱性能体験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、断熱仕様の異なる実際のガラス窓や外壁を並べて比較展示して、それらの断熱性能の違いを体験できるようにした各種施設が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている施設では、体験者を冬季の温度に冷却された冷却室に導いてその体を冷やした後、快適温度に空調された空調室に導いて、体験者に暖を求める状況になってもらう。そして、空調室と冷却室とを仕切る仕切り壁には、断熱仕様の異なる実際のガラス窓や外壁が並設されており、それらの冷輻射の違い等を空調室に導いた体験者に体感してもらうことで、断熱性能の違いを体験できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−208114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような施設においては、実際のガラス窓や外壁の断熱性能をリアルに体験することはできるものの、それらガラス窓や外壁における構造上の違いや断熱性能の違いについての具体的な説明は、案内者が口頭で行っているのが現状であり、今一つ面白味に欠け、アミューズメント性に乏しかった。特に、子供連れの体験者の場合には、子供が退屈がってしまって、落ち着いて案内者の説明を聞くことが出来ないこともあった。
【0006】
そこで、この発明は、上記不具合を解消するため、住宅におけるガラス窓や外壁の断熱性能をリアルに判り易く、しかも楽しみながら印象深く体験することができるアミューズメント性の高い断熱性能体験装置及びこれを用いた断熱性能体験方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の断熱性能体験装置は、常温室1と冷温室2とを仕切る仕切り壁5に、断熱仕様の異なる複数のガラス窓10、11と、断熱仕様の異なる複数の外壁12、13とを夫々配設するとともに、前記常温室1を部屋内、前記冷温室2を屋外として見立てたクリスマスの夜を想定した物語に乗せて、前記ガラス窓10、11及び前記外壁12、13の断熱性能の違いを説明するナレーション装置30を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記常温室1から前記ガラス窓10、11を通して見える前記冷温室2の壁面に、ブラックライト17に反応する蛍光装飾18を施したり、前記常温室1側に、前記外壁12、13表面の温度分布を表示するサーモグラフィ装置20を設けている。
【0009】
この発明の断熱性能体験方法は、上記の断熱性能体験装置を使用して、まず体験者を前記冷温室2に導いて、その体を冬の屋外の寒さを感じる程度まで冷やした後、続いて体験者を前記常温室1へ導いて、前記ナレーション装置30によってクリスマスの夜の部屋内をイメージさせながら前記ガラス窓10、11及び前記外壁12、13の断熱性能を違いを説明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、住宅におけるガラス窓や外壁の断熱性能の違いを、従来のような案内者の単なる口頭による説明ではなく、ナレーション装置によって、常温室を部屋内、冷温室を屋外として見立てたクリスマスの夜を想定した一編の物語に乗せて説明するので、リアルに判り易く体験できるだけでなく、楽しみながら印象深く体験することができる。また、このようにアミューズメント性を高めることで、子供でも退屈せずに楽しむことができ、子供連れの体験者でも落ち着いて断熱性能の違いを体験することができる。
【0011】
さらに、ガラス窓を通して蛍光装飾を目視できるようにすることで、ガラス窓における結露の発生が一目瞭然となり、ガラス窓の断熱性能の違いを視覚的に判り易く認識することができ、より効果的に断熱性能の違いを体験することができる。
【0012】
さらにまた、サーモグラフィ装置によって外壁表面における本来目に見えない熱を映し出すことで、外壁における温度差や下地鉄部材による熱橋の影響等を視覚的に判り易く認識することができ、より効果的に断熱性能の違いを体験することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、この発明の一実施形態に係る断熱性能体験装置を示している。この断熱性能体験装置は、例えば住宅展示場等に設置されるもので、常温室1と冷温室2とが隣接して設けられている。
【0014】
常温室1は、平面視略長方形状に形成され、実際の住宅の部屋と同様に構築されている。そして、室内に設けた空調装置3によって例えば23℃程度の快適温度に調整されている。冷温室2は、平面視略コ字状に形成されており、室内に設けた冷蔵装置4によって例えば0℃程度のクリスマスの夜の外気温を想定した温度に調整されている。
【0015】
そして、常温室1と冷温室2を仕切るL字状の仕切り壁5の長辺部には、断熱仕様の異なる実物の2枚のガラス窓10、11が並設され、仕切り壁5の短辺部には、断熱仕様の異なる実物の2枚の外壁12、13が並設されている。
【0016】
一方のガラス窓10は、遮熱断熱ペアガラスを嵌め込んでなる断熱構造のガラス窓とされ、他方のガラス窓11は、単板ガラスを嵌め込んでなる通常のガラス窓とされている。また、一方の外壁12は、内部の構造材に対して断熱処理を施した断熱外壁とされ、他方の外壁13は、そのような処理がなされていない通常の外壁とされている。
【0017】
また、冷温室2の外周壁14には、外部から冷温室2へと体験者が出入りするための出入り口15が設けられ、仕切り壁5には、冷温室2から常温室1へと体験者が出入りするための出入り口16が設けられている。
【0018】
さらに、常温室1からガラス窓10、11を通して見える冷温室2の外周壁14の内面には、冷温室2に設けたブラックライト17に反応する蛍光剤によって蛍光装飾18が描かれている。この蛍光装飾18は、ソリに乗ったサンタクロースであり、クリスマスの雰囲気を演出している。
【0019】
また、常温室1には、外壁12、13の内装面(常温室1側の表面)の温度分布を表示するサーモグラフィ装置20が設けられており、これによって外壁12、13の構造材である下地鉄部材による熱橋の様子を視認することができるようになっている。
【0020】
この断熱性能体験装置においては、記録媒体に記録されているナレーションを再生して音声出力するナレーション装置30が設けられている。このナレーション装置30によって出力されるナレーションは、常温室1を部屋内、冷温室2を屋外として見立てたクリスマスの夜を想定した物語に乗せて、ガラス窓10、11及び外壁12、13の断熱性能を違いを説明するようになっている。また、ナレーション装置30は、タッチパネル式の操作ディスプレイ31を備えており、この操作ディスプレイ31を操作することで、ナレーションの再生開始や終了を行うようになっている。さらに、操作ディスプレイ31には、常温室1及び冷温室2の照明装置35、ブラックライト17、サーモグラフィ装置20の操作手順もナレーションに合わせて指示されるようになっており、案内者の知識経験がほとんどなくても、適切でスムーズな案内を行うことができる操作環境が整っている。なお、図2において、32はナレーション装置30のスピーカーを示している。
【0021】
そして、図3に示すように、各種の操作スイッチを集中させた操作盤33が設けられ、この操作盤33の各操作スイッチが、制御回路34を介して常温室1及び冷温室2の照明装置35、ブラックライト17、サーモグラフィ装置20に電気的に接続されている。従って、操作盤33におけるスイッチ操作によって、常温室1及び冷温室2の照明装置35、ブラックライト17、サーモグラフィ装置20の作動を集中的にコントロールできるようになっている。
【0022】
次に、上記構成の断熱性能体験装置を使用した断熱性能体験方法について説明する。まず、案内者が体験者を冷温室2に誘導して、その体を冬の夜の屋外の寒さを感じる程度まで冷やした後、続いて体験者を常温室1へ誘導する。
【0023】
常温室1において、案内者は、ナレーション装置30の操作ディスプレイ31に表示されている指示に従って、案内を開始する。すなわち、まず体験者に着席を促し、常温室1及び冷温室2の照明装置35を消灯するとともに、ブラックライト17を点灯して、操作ディスプレイ31の操作により図4(a)に示すナレーションの「シーン1」をスピーカー32から出力させることで、クリスマスの夜の部屋内をイメージさせる。
【0024】
このとき、図5に示すように、断熱構造のガラス窓10は結露せずに透明な状態を維持しており、そのガラス窓10を通してブラックライト17の照射によって浮かび上がった蛍光装飾18をはっきりと認識することができるが、通常のガラス窓11は結露していて、そのガラス窓11を通して蛍光装飾18を見た場合、蛍光装飾18がぼやけて認識し難くなっている。
【0025】
次に、操作ディスプレイ31に新たに表示された指示に従って、体験者の視線を窓ガラス10、11へ誘導し、常温室1及び冷温室2の照明装置35を点灯するとともに、ブラックライト17を消灯して、操作ディスプレイ31の操作により図4(b)に示すナレーションの「シーン2」をスピーカー32から出力させて、断熱構造のガラス窓10と通常のガラス窓11の構造上の違いによる断熱性能の違いを説明する。
【0026】
続いて、操作ディスプレイ31に新たに表示された指示に従って、体験者の視線を外壁12、13へ誘導し、常温室1及び冷温室2の照明装置35を消灯するとともに、サーモグラフィ装置20を作動して、操作ディスプレイ31の操作により図4(c)に示すナレーションの「シーン3」をスピーカー32から出力させて、断熱外壁12と通常の外壁13の構造上の違いによる断熱性能の違いをサーモグラフィ装置20によって映し出された温度分布を参照しながら説明し、省エネルギーを提案する。
【0027】
このとき、図6に示すように、断熱外壁12の内装面に映し出された温度分布においては、低い温度を示す青色部分が少なく、通常の外壁13の内装面に映し出された温度分布においては、内部の構造材に沿って青色部分が現れている。
【0028】
そして、最後に常温室1及び冷温室2の照明装置35を点灯するとともに、体験者に退室を促して、案内を終了する。
【0029】
このように、実際に低温にした屋外と暖かい室内環境を作り、実物のガラス窓や外壁に対して結露や温度差を生じさせて、それらを可視化させながら、クリスマスの夜を想定した一編の物語に乗せて断熱性能の違いを説明することで、住宅におけるガラス窓や外壁の断熱性能の違いを、体験者が五感をフルに使って、リアルにわかり易く、しかも楽しみながら印象深く体験することができる。しかも、このようなクリスマスの夜を演出したアミューズメント性の高い断熱性能体験装置とすることで、子供でも退屈せずに楽しむことができ、子供連れの体験者でも落ち着いて断熱性能の違いを体験することができる。
【0030】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態に係る断熱性能体験装置の全体構成の概略を示す斜視図である。
【図2】同じくその横断面図である。
【図3】同じくそのブロック図である。
【図4】ナレーションを示す図である。
【図5】窓ガラスにおける結露の状態を示す図である。
【図6】外壁の内装面に映し出された温度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・常温室、2・・冷温室、5・・仕切り壁、10、11・・ガラス窓、12、13・・外壁、17・・ブラックライト、18・・蛍光装飾、20・・サーモグラフィ装置、30・・ナレーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温室(1)と冷温室(2)とを仕切る仕切り壁(5)に、断熱仕様の異なる複数のガラス窓(10)(11)と、断熱仕様の異なる複数の外壁(12)(13)とを夫々配設するとともに、前記常温室(1)を部屋内、前記冷温室(2)を屋外として見立てたクリスマスの夜を想定した物語に乗せて、前記ガラス窓(10)(11)及び前記外壁(12)(13)の断熱性能の違いを説明するナレーション装置(30)を設けたことを特徴とする断熱性能体験装置。
【請求項2】
前記常温室(1)から前記ガラス窓(10)(11)を通して見える前記冷温室(2)の壁面に、ブラックライト(17)に反応する蛍光装飾(18)を施した請求項1記載の断熱性能体験装置。
【請求項3】
前記常温室(1)側に、前記外壁(12)(13)表面の温度分布を表示するサーモグラフィ装置(20)を設けた請求項1又は2記載の断熱性能体験装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱性能体験装置を使用して、まず体験者を前記冷温室(2)に導いて、その体を冬の屋外の寒さを感じる程度まで冷やした後、続いて体験者を前記常温室(1)へ導いて、前記ナレーション装置(30)によってクリスマスの夜の部屋内をイメージさせながら前記ガラス窓(10)(11)及び前記外壁(12)(13)の断熱性能を違いを説明することを特徴とする断熱性能体験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−199355(P2007−199355A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17412(P2006−17412)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】