説明

断熱材及びその製造方法

【課題】優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る断熱材は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、前記金属酸化物微粒子間に、前記金属酸化物微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造を有する。本発明に係る断熱材の製造方法は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する養生工程と、養生された前記乾式加圧成形体を乾燥する乾燥工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材及びその製造方法に関し、特に、断熱材の強度の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱伝導性が低く、断熱性に優れた断熱材として、シリカ微粒子と無機繊維と結合剤とを混合し、プレス成形を行った後、機械加工することによって得られる断熱材があった(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−513349号公報
【特許文献2】特表平11−514959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、結合剤を使用するため、例えば、脱脂を行う必要があり、この脱脂によって断熱材の強度が低下するという問題があった。また、結合剤の使用によって環境への負荷が増大していた。このように、結合剤を使用する場合には、脱脂等に伴う工程数、所要時間及びエネルギーの増大といった問題があった。
【0005】
これに対し、結合剤を使用することなく、プレス圧を調整して断熱材の密度を増加させることによって強度を高めることも可能である。しかしながら、この場合、例えば、密度の増加に伴い固体伝熱も増加するため、断熱材の断熱性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、前記金属酸化物微粒子間に、前記金属酸化物微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造を有することを特徴とする。本発明によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材を提供することができる。
【0008】
また、前記金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子を含むこととしてもよい。また、前記断熱材は、次の(a)又は(b):(a)嵩密度が180kg/m以上、300kg/m以下であって、圧縮強度が0.6MPa以上;、(b)嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上;の嵩密度及び圧縮強度を有することとしてもよい。
【0009】
また、前記金属酸化物微粒子は、アルミナ微粒子を含むこととしてもよい。この場合、1000℃における加熱線収縮率が3%以下であることとしてもよい。
【0010】
また、前記断熱材は、50〜98質量%の前記金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の前記補強繊維と、を含むこととしてもよい。また、前記断熱材は、結合剤を含まないこととしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材の製造方法は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する養生工程と、養生された前記乾式加圧成形体を乾燥する乾燥工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材の製造方法を提供することができる。
【0012】
また、前記養生工程において、前記金属酸化物微粒子の一部を溶出させて、前記金属酸化物微粒子間に液状の架橋構造を形成し、前記乾燥工程において、前記架橋構造を固化することとしてもよい。
【0013】
また、前記金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子を含むこととしてもよい。また、前記金属酸化物微粒子は、アルミナ微粒子を含むこととしてもよい。
【0014】
また、前記乾式加圧成形体は、50〜98質量%の前記金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の前記補強繊維と、を含むこととしてもよい。また、前記乾式加圧成形体は、結合剤を含まないこととしてもよい。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、前記いずれかの方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る断熱材の製造方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る乾式加圧成形体に含まれる金属酸化物微粒子の一次粒子及び当該一次粒子により形成された孔構造を概念的に示す説明図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る断熱材に含まれる金属酸化物微粒子の一次粒子及び当該一次粒子により形成された孔構造を概念的に示す説明図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る乾式加圧成形体に含まれる金属酸化物微粒子の一次粒子の様子を概念的に示す説明図である。
【図3B】図3Aに示す金属酸化物微粒子の一次粒子間に液状の架橋構造が形成された様子を概念的に示す説明図である。
【図3C】本発明の一実施形態に係る断熱材において、図3Aに示す金属酸化物微粒子の一次粒子間に硬化された架橋構造が形成された様子を概念的に示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例において、養生条件を変えて断熱材の圧縮強度を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る比較例において、養生条件を変えて断熱材の圧縮強度を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図6A】本発明の一実施形態に係る実施例において得られた断熱材の透過型電子顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
【図6B】本発明の一実施形態に係る実施例において得られた乾式加圧成形体の透過型電子顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る実施例において得られた断熱材の嵩密度と圧縮強度との相関関係を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る実施例において、断熱材の浸水後の厚さ収縮率を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る実施例において、断熱材の浸水後の圧縮強度を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る実施例において、断熱材の圧縮強度、加熱線収縮率及び熱伝導率を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0019】
まず、本実施形態に係る断熱材の製造方法(以下、「本方法」という。)について説明する。図1は、本方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。図1に示すように、本方法は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する養生工程S1と、養生された当該乾式加圧成形体を乾燥する乾燥工程S2と、を含む。
【0020】
養生工程S1において養生される乾式加圧成形体は、金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む断熱材原料から作製される。金属酸化物微粒子は、平均粒径が50nm以下のものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0021】
金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物としては、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気中で当該微粒子から溶出するもの(水に溶解するもの)であれば特に限られず、例えば、シリカ及び/又はアルミナを好ましく使用することができ、シリカを特に好ましく使用することができる。
【0022】
すなわち、金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を含むことが好ましく、シリカ微粒子を含むことが特に好ましい。金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、本方法により製造される断熱材の強度を特に効果的に高めることができる。金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、当該金属酸化物微粒子は、さらにアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。金属酸化物微粒子がアルミナ微粒子を含む場合、本方法により製造される断熱材の耐熱性をも効果的に高めることができる。
【0023】
シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造されたもの又は湿式法で製造されたものの一方又は両方を使用することができ、気相法で製造されたものを好ましく使用することができる。
【0024】
すなわち、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造された乾式シリカ微粒子(無水シリカ微粒子)及び/又は乾式アルミナ微粒子(無水アルミナ微粒子)を使用することができ、湿式法で製造された湿式シリカ微粒子及び/又は湿式アルミナ微粒子を使用することもでき、中でも当該乾式シリカ微粒子及び/又は乾式アルミナ微粒子を好ましく使用することができる。
【0025】
より具体的に、例えば、気相法で製造されたフュームドシリカ微粒子及び/又はフュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができ、中でも親水性フュームドシリカ微粒子及び/又は親水性フュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができる。シリカ微粒子のシリカ(SiO)含有量及びアルミナ微粒子のアルミナ(Al)含有量は、例えば、それぞれ95重量%以上であることが好ましい。
【0026】
金属酸化物微粒子の平均粒径(より具体的には、金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径)は、50nm以下であれば特に限られず、例えば、2nm以上、50nm以下とすることができ、2nm以上、30nm以下とすることもできる。
【0027】
金属酸化物微粒子のBET法による比表面積は、例えば、50m/g以上であることが好ましい。より具体的に、この比表面積は、例えば、50m/g以上、400m/g以下であることが好ましく、100m/g以上、400m/g以下であることがより好ましい。
【0028】
補強繊維としては、断熱材を補強できるものであれば特に限られず、無機繊維及び有機繊維の一方又は両方を使用することができる。無機繊維としては、補強繊維として使用できるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0029】
具体的に、無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、シリカ−アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維、ロックウール及びバサルト繊維からなる群より選択される1種以上を使用することができ、ガラス繊維、シリカ−アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維等のシリカ系繊維及び/又はアルミナ系繊維を好ましく使用することができる。なお、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維は、生体溶解性の無機繊維である。すなわち、無機繊維としては、非生体溶解性無機繊維及び生体溶解性無機繊維の一方又は両方を使用することができる。
【0030】
有機繊維としては、補強繊維として使用できるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。具体的に、有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びポリオレフィン繊維からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0031】
補強繊維の平均繊維長は、例えば、0.5mm以上、20mm以下であることが好ましく、1mm以上、10mm以下であることがより好ましい。平均繊維長が1mm未満である場合には、補強繊維を適切に配向させることができないことがあり、その結果、断熱材の機械的強度が不足することがある。平均繊維長が20mmを超える場合には、成形時の粉体流動性が損なわれて成形性が低下すると共に、密度ムラにより加工性が低下することがある。
【0032】
補強繊維の平均繊維径は、例えば、1μm以上、20μm以下であることが好ましく、2μm以上、15μm以下であることがより好ましい。平均繊維径が20μmを超える場合には、補強繊維が折れやすくなることがあり、その結果、断熱材の強度が不足することがある。
【0033】
したがって、補強繊維としては、例えば、平均繊維長が0.5mm以上、20mm以下であって、且つ平均繊維径が1μm以上、20μm以下であるものを好ましく使用することができる。
【0034】
乾式加圧成形体は、上述したような金属酸化物微粒子と補強繊維とを乾式で混合することにより乾式混合物を作製し、次いで、当該乾式混合物を乾式で加圧成形することにより作製する。
【0035】
具体的に、例えば、金属酸化物微粒子の乾燥粉体と補強繊維の乾燥粉体とを含む断熱材原料を、所定の混合装置を使用して乾式混合し、次いで、得られた乾式混合物を所定の成形型に充填し乾式プレス成形することにより、乾式加圧成形体を作製する。
【0036】
なお、混合及び成形を乾式で行うことにより、湿式の場合に比べて、原料や成形体の管理が容易であり、また、製造に要する時間を効果的に短縮することができる。
【0037】
乾式加圧成形体における金属酸化物微粒子及び補強繊維の含有量は、最終的に製造される断熱材に要求される特性に応じて任意に決定することができる。すなわち、乾式加圧成形体は、例えば、50〜98質量%の金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の補強繊維と、を含むことができ、65〜80質量%の金属酸化物微粒子と5〜18質量%の補強繊維とを含むこととしてもよい。
【0038】
補強繊維の含有量が2質量%未満の場合には、断熱材の強度が不足することがある。補強繊維の含有量が20質量%を超える場合には、成形時の粉体流動性が損なわれて成形性が低下すると共に、密度ムラにより断熱材の加工性が低下することがある。
【0039】
また、乾式加圧成形体は、金属酸化物微粒子及び補強繊維のみを含む場合には、例えば、80〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜20質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むこととしてもよく、85〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜15質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むこともできる。
【0040】
乾式加圧成形体は、結合剤を含まないこととしてもよい。すなわち、本方法においては、後述する養生によって断熱材の強度を効果的に向上させることができるため、結合剤を使用する必要がない。
【0041】
この場合、乾式加圧成形体は、水ガラス接着剤等の無機結合剤や、樹脂等の有機結合剤といった、従来使用されていた結合剤を実質的に含有しない。したがって、結合剤の使用に伴う従来の問題を確実に回避することができる。また、乾式加圧成形を行う温度は、特に制限はないが、例えば、5℃以上、60℃以下の温度で行うことができる。
【0042】
乾式加圧成形体は、さらに他の成分を含むこととしてもよい。すなわち、乾式加圧成形体は、例えば、輻射散乱材を含むこととしてもよい。輻射散乱材は、輻射による伝熱を低減することのできるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。具体的に、輻射散乱材としては、例えば、炭化珪素、ジルコニア、珪酸ジルコニウム及びチタニアからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0043】
輻射散乱材の平均粒径は、例えば、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、1μm以上、20μm以下であることがより好ましい。輻射散乱材としては、遠赤外線反射性のものを好ましく使用することができ、例えば、1μm以上の波長の光に対する比屈折率が1.25以上であるものが好ましい。
【0044】
輻射散乱材を使用する場合、乾式加圧成形体は、例えば、50〜93質量%の金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の補強繊維と、5〜40質量%の輻射散乱材とを含むことができ、65〜80質量%の金属酸化物微粒子と、5〜18質量%の補強繊維と、15〜30質量%の輻射散乱材とを含むこととしてもよい。
【0045】
なお、上述した乾式加圧成形体における金属酸化物微粒子の含有量は、当該金属酸化物微粒子が複数種類の金属酸化物微粒子(例えば、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子)を含む場合、当該複数種類の金属酸化物微粒子の合計含有量(例えば、シリカ微粒子の含有量とアルミナ微粒子の含有量との合計)である。
【0046】
養生工程S1においては、上述のようにして作製された乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する。この養生は、乾式加圧成形体を温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気内で所定時間保持することにより行う。
【0047】
すなわち、例えば、水を収容した加熱可能な密閉容器(具体的には、例えば、到達温度が100℃以上の所定値に設定されたオートクレーブ)内に乾式加圧成形体を載置し、当該乾式加圧成形体を100℃以上の温度に加熱された密閉状態で所定時間保持することにより、当該乾式加圧成形体を養生する。
【0048】
養生を行う温度は、100℃以上であって当該養生の効果が得られる範囲であれば特に限られない。すなわち、養生温度は、例えば、100℃以上、220℃以下が好ましく、120℃以上、200℃以下がより好ましく、160℃以上、180℃以下が特に好ましい。
【0049】
養生を行う圧力は、大気圧より高い値であって当該養生の効果が得られる範囲であれば特に限られない。すなわち、養生圧力は、例えば、0.2MPa以上とすることができる。より具体的に、養生圧力は、例えば、0.2MPa以上、0.9MPa以下とすることができ、0.7MPa以上、0.9MPa以下とすることもできる。
【0050】
養生を行う時間は、当該養生の効果が得られる範囲であれば特に限られない。すなわち、養生時間は、例えば、0.5時間以上とすることができる。より具体的に、養生時間は、例えば、0.5時間以上、16時間以下とすることが好ましく、2時間以上、8時間以下とすることがより好ましい。養生時間が長すぎると断熱材の強度が却って低下することがある。
【0051】
続く乾燥工程S2においては、養生工程S1において養生された乾式加圧成形体を乾燥させる。すなわち、乾燥工程S2においては、養生時に乾式加圧成形体に浸み込んだ、水蒸気に由来する水分を除去する。
【0052】
乾燥の方法は、乾式加圧成形体から不要な水分を除去できる方法であれば特に限られない。すなわち、例えば、乾式加圧成形体を100℃以上の温度で保持することにより、当該乾式加圧成形体を効率よく乾燥させることができる。
【0053】
本方法においては、こうして、最終的に、養生及び乾燥後の乾式加圧成形体を、断熱材として得る。本方法によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材を製造することができる。すなわち、本方法によれば、嵩密度を過剰に高めることなく、断熱材の強度を効果的に向上させることができる。また、本方法によれば、結合剤を使用することなく、十分な強度を備えた断熱材を製造することができる。
【0054】
ここで、本方法における養生によって断熱材の強度が向上する機構について説明する。図2Aには、乾式加圧成形体に含まれる金属酸化物の一次粒子(金属酸化物微粒子)M及び当該一次粒子Mにより形成された孔構造Saを概念的に示す。図2Bには、養生が施された断熱材に含まれる金属酸化物の一次粒子(金属酸化物微粒子)M及び当該一次粒子Mにより形成された孔構造Sbを概念的に示す。
【0055】
また、図3A、図3B及び図3Cは、乾式加圧成形体又は断熱材に含まれる多数の一次粒子のうち隣接する2つの一次粒子M1,M2に着目して、養生による断熱材の強度向上の機構を説明するための概念図である。すなわち、図3Aは、乾式加圧成形体に含まれる一次粒子M1,M2の様子を概念的に示し、図3Bは、当該乾式加圧成形体の養生中に当該一次粒子M1,M2間に液状の架橋構造Lが形成される様子を概念的に示し、図3Cは、養生後の断熱材おいて当該一次粒子M1,M2間に硬化された架橋構造Bが形成された様子を概念的に示す。
【0056】
まず、養生前の乾式加圧成形体は、図2Aに示すように、乾式加圧成形により凝集した一次粒子Mと、当該一次粒子Mにより形成された二次粒子Saを有している。この二次粒子Saには、一次粒子Mによって囲まれた孔Pが形成されている。
【0057】
そして、図2Aに示す多数の一次粒子Mのうち、図3Aに示すように隣接する2つの一次粒子M1,M2に着目すると、当該一次粒子M1,M2は単に分子間力により付着しているのみである。
【0058】
これに対し、乾式加圧成形体の養生を開始すると、図3Bに示すように、一次粒子M1,M2から溶出した金属酸化物を含む液体からなる架橋構造Lが形成される。
【0059】
すなわち、養生中の一次粒子M1,M2間には、溶出した金属酸化物を含む液状の架橋構造Lが形成される。なお、金属酸化物がシリカである場合、その溶出反応としては、次のようなケイ酸塩反応が考えられる:「SiO+2HO→HSiO→H+HSiO」。
【0060】
その後、養生を終了し、養生後の乾式加圧成形体を乾燥することにより、一次粒子M1,M2間に形成されていた架橋構造Lが固化される。すなわち、養生及び乾燥後の断熱材においては、図3Cに示すように、一次粒子M1,M2の間に、硬化された架橋構造Bが形成される。
【0061】
具体的に、例えば、金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、断熱材は、当該金属酸化物微粒子の一次粒子M1,M2の間に、当該シリカ微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造Bを有することとなる。なお、例えば、金属酸化物微粒子がシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む場合、図3Cに示す2つの一次粒子M1,M2は、両方がシリカ微粒子であってもよく、両方がアルミナ微粒子であってもよく、一方がシリカ微粒子で他方がアルミナ微粒子であってもよい。
【0062】
こうして、本方法により製造される断熱材は、図2Bに示すように、架橋構造Bで連結された多数の一次粒子Mによって形成された孔構造Sbを有することとなる。この孔構造Sbは、一次粒子Mの一部が溶出することにより形成された結果、あたかも当該一次粒子Mが融着して形成されたような多孔構造として観察される(例えば、透過型電子顕微鏡観察)。
【0063】
また、孔構造Sbには、図2Bに示すように、架橋構造Bで連結された一次粒子Mによって囲まれた孔Pが形成されている。孔構造Sbに形成された孔Pの径は、例えば、10〜200nmである。断熱材は、このような孔構造Sbを有することにより、優れた断熱性を発揮する。
【0064】
また、この架橋構造Bは、溶出された金属酸化物を含む。また、架橋構造Bにより連結された一次粒子M1,M2(図3C)の形状及び/又は大きさは、養生(特に、金属酸化物の溶出)によって変化し、養生前の一次粒子M1,M2(図3A)のそれとは異なるものとなり得る。
【0065】
なお、乾式加圧成形体にアルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ金属水酸化物を添加することで金属酸化物微粒子からの金属酸化物の溶出を促進することも可能であるが、本実施形態に係る乾式加圧成形体は、アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ金属水酸化物は含まず、本実施形態に係る断熱材は、これら水酸化物に由来するアルカリ土類金属及びアルカリ金属を含まない。
【0066】
このような架橋構造Bの形成によって、一次粒子M間の結合が強化され、その結果、断熱材の強度を効果的に高めることができる。なお、金属酸化物微粒子と補強繊維との間にも同様の架橋構造が形成される。
【0067】
本実施形態に係る断熱材(以下、「本断熱材」という。)は、このような本方法により好ましく製造することができる。本断熱材は、例えば、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、当該金属酸化物微粒子間に、当該金属酸化物微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造を有する。
【0068】
すなわち、本断熱材は、上述した乾式加圧成形体の原料として使用される金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、且つ上述の架橋構造で連結された金属酸化物微粒子により形成された孔構造を有する。このため、本断熱材は、その嵩密度が比較的低い場合であっても、優れた強度を備える。
【0069】
例えば、本断熱材は、次の(a)又は(b):(a)嵩密度が180kg/m以上、300kg/m以下であって、圧縮強度が0.6MPa以上;、(b)嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上;の嵩密度及び圧縮強度を有する。
【0070】
すなわち、この場合、本断熱材は、嵩密度が180kg/m以上、300kg/m以下であって、圧縮強度が0.6MPa以上の断熱材、又は嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上の断熱材である。例えば、金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、このような大きな圧縮強度をより効果的に達成することができる。
【0071】
本断熱材が上記(a)の嵩密度及び圧縮強度を有する場合、当該嵩密度は、例えば、200kg/m以上であってもよい。より具体的に、本断熱材は、例えば、嵩密度が200kg/m以上、250kg/cm以下であって0.6MPa以上(例えば、0.6MPa以上、1.5MPa以下)であってもよく、嵩密度が250kg/m超、300kg/cm以下の場合においては0.8MPa以上(例えば、0.8MPa以上、2.0MPa以下)であってもよい。
【0072】
なお、本断熱材の圧縮強度は、そのプレス面(乾式加圧成形体製造時の乾式プレス面)に対して垂直方向に荷重をかけたときの破断強度(MPa)である。
【0073】
本断熱材における金属酸化物微粒子及び補強繊維の含有量は、要求される特性に応じて任意に決定される。すなわち、本断熱材は、例えば、50〜98質量%の金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の補強繊維と、を含むことができ、65〜80質量%の金属酸化物微粒子と5〜18質量%の補強繊維とを含むこととしてもよい。
【0074】
補強繊維の含有量が2質量%未満の場合には、本断熱材の強度が不足することがある。補強繊維の含有量が20質量%を超える場合には、密度ムラにより本断熱材の加工性が低下することがある。
【0075】
また、本断熱材は、金属酸化物微粒子及び補強繊維のみを含む場合には、例えば、80〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜20質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むこととしてもよく、85〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜15質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むこともできる。
【0076】
なお、上述した本断熱材における金属酸化物微粒子の含有量は、当該金属酸化物微粒子が複数種類の金属酸化物微粒子(例えば、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子)を含む場合、当該複数種類の金属酸化物微粒子の合計含有量(例えば、シリカ微粒子の含有量とアルミナ微粒子の含有量との合計)である。
【0077】
本断熱材は、結合剤を含まないこととしてもよい。すなわち、本断熱材は、上述した架橋構造を有することにより、その強度が効果的に向上しているため、結合剤を含む必要がない。
【0078】
この場合、本断熱材は、水ガラス接着剤等の無機結合剤や、樹脂等の有機結合剤といった、従来使用されていた結合剤を実質的に含有しない。したがって、結合剤の使用に伴う従来の問題を確実に回避することができる。
【0079】
本断熱材は、さらに他の成分を含むこととしてもよい。すなわち、本断熱材は、例えば、上述したような輻射散乱材を含むこととしてもよい。本断熱材が輻射散乱材を含む場合、本断熱材は、例えば、50〜93質量%の金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の補強繊維と、5〜40質量%の輻射散乱材と、を含むことができ、65〜80質量%の金属酸化物微粒子と、5〜18質量%の補強繊維と、15〜30質量%の輻射散乱材と、を含むこととしてもよい。
【0080】
金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、本断熱材における当該シリカ微粒子の含有量は、要求される特性に応じて任意に決定される。
【0081】
すなわち、本断熱材は、例えば、55質量%以上のシリカ微粒子を含み、嵩密度が180kg/m以上、300kg/m以下であって、圧縮強度が0.6MPa以上であることとしてもよい。この場合、シリカ微粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であってもよく、65質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。
【0082】
また、本断熱材は、例えば、40質量%以上のシリカ微粒子を含み、嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上であることとしてもよい。この場合、シリカ微粒子の含有量は、例えば、45質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。
【0083】
また、本断熱材は、例えば、15質量%以上のシリカ微粒子を含み、嵩密度が400kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上であることとしてもよい。
【0084】
なお、これらの場合、シリカ微粒子の含有量は、例えば、上述のとおり、98質量%以下であることとしてもよく、93質量%以下であることとしてもよく、80質量%以下であることとしてもよい。
【0085】
また、本断熱材がアルミナ微粒子を含む場合(特に、本断熱材がシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む場合)、本断熱材は、優れた強度に加えて、優れた耐熱性をも備える。
【0086】
すなわち、この場合、本断熱材は、例えば、その1000℃における加熱線収縮率が3%以下とすることができる。また、本断熱材は、1150℃における加熱線収縮率が15%以下とすることもできる。
【0087】
これらの場合、本断熱材は、例えば、5質量%以上のアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。アルミナ微粒子の含有量は、例えば、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。
【0088】
また、アルミナ微粒子を含む本断熱材は、例えば、その1000℃における加熱線収縮率が1%以下であることとしてもよい。この場合、本断熱材は、例えば、25質量%以上のアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。アルミナ微粒子の含有量は、例えば、30質量%以上であってもよく、35質量%以上であってもよい。
【0089】
また、アルミナ微粒子を含む本断熱材は、例えば、その1150℃における加熱線収縮率が10%以下であることとしてもよい。この場合、本断熱材は、例えば、40質量%以上のアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。アルミナ微粒子の含有量は、例えば、45質量%以上であってもよい。
【0090】
また、アルミナ微粒子を含む本断熱材は、例えば、その1150℃における加熱線収縮率が3%以下であることとしてもよい。この場合、本断熱材は、例えば、60質量%以上のアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。さらに、本断熱材は、嵩密度が300kg/m超であることとしてもよい。
【0091】
なお、これらアルミナ微粒子を含む本断熱材は、例えば、5質量%以上のシリカ微粒子を含むこととしてもよく、10質量%以上のシリカ微粒子を含むこととしてもよい。上述したアルミナ微粒子の含有量とシリカ微粒子の含有量とは任意に組み合わせることができる。
【0092】
本断熱材がシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む場合、当該シリカ微粒子及びアルミナ微粒子の合計含有量は、例えば、上述のとおり、98質量%以下であることとしてもよく、93質量%以下であることとしてもよく、80質量%以下であることとしてもよい。
【0093】
また、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む本断熱材は、上述した優れた耐熱性(低い加熱線収縮率)に加えて、優れた強度を備えることができる。すなわち、本断熱材は、例えば、さらに圧縮強度が0.4MPa以上であることとしてもよい。より具体的に、本断熱材は、例えば、15質量%以上のシリカ微粒子と、10質量%以上のアルミナ微粒子と、を含み、嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.4MPa以上であることとしてもよい。
【0094】
また、本断熱材は、例えば、5質量%以上のシリカ微粒子と、10質量%以上のアルミナ微粒子と、を含み、嵩密度が400kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.4MPa以上であることとしてもよい。この場合、圧縮強度は、例えば、0.5MPa以上とすることができ、0.6MPa以上とすることもできる。
【0095】
また、本断熱材は、従来のように密度を高めることなく十分な強度を達成しているため、固体伝熱の増加による断熱性能の低下を効果的に回避することができており、その結果、優れた断熱性能を備えている。
【0096】
すなわち、本断熱材は、例えば、600℃における熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である断熱材とすることができる。さらに、本断熱材の600℃における熱伝導率は、例えば、好ましくは0.05W/(m・K)以下であり、より好ましくは0.04W/(m・K)以下である。
【0097】
また、本断熱材は、例えば、800℃における熱伝導率が0.09W/(m・K)以下である断熱材とすることができる。さらに、本断熱材の800℃における熱伝導率は、例えば、好ましくは0.06W/(m・K)以下であり、より好ましくは0.05W/(m・K)以下である。
【0098】
また、本断熱材は、例えば、1000℃における熱伝導率が0.10W/(m・K)以下である断熱材とすることができる。さらに、本断熱材の800℃における熱伝導率は、例えば、好ましくは0.09W/(m・K)以下である。
【0099】
本断熱材の600℃、800℃又は1000℃における熱伝導率の下限値は特に限られないが、例えば、0.02W/(m・K)である。すなわち、本断熱材は、例えば、600℃における熱伝導率が0.02W/(m・K)以上、0.08W/(m・K)以下の断熱材である。また、本断熱材は、例えば、800℃における熱伝導率が0.02W/(m・K)以上、0.09W/(m・K)以下の断熱材である。また、本断熱材は、例えば、1000℃における熱伝導率が0.02W/(m・K)以上、0.10W/(m・K)以下の断熱材である。
【0100】
なお、本断熱材は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子の一次粒子が、分子間力等により会合して二次粒子を形成し、当該二次粒子が補強繊維間に散在した構造を有している。
【0101】
そして、本断熱材は、上述のとおり、金属酸化物微粒子の使用によって、その内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された孔構造を有する。その結果、本断熱材は、低温域から高温域までの幅広い温度範囲で優れた断熱性能を発揮することができる。
【0102】
このように、本断熱材は、比較的低い密度で、優れた断熱性と高い強度を兼ね備えている。したがって、本断熱材は、例えば、加工を要する一般工業炉用断熱材や、燃料電池の改質器用の断熱材として好ましく利用することができる。
【0103】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0104】
[断熱材の製造]
一次粒子の平均粒径が約13nmの無水シリカ微粒子(親水性フュームドシリカ微粒子)と、平均繊維径11μm、平均繊維長6mmのEガラス繊維とを含み、結合剤を含まない乾式加圧成形体を作製した。
【0105】
すなわち、95質量%のシリカ微粒子及び5質量%のEガラス繊維を含む断熱材原料を混合装置に投入し、乾式混合した。そして、得られた乾式混合粉体から、乾式プレス成形により、寸法150mm×100mm×厚さ25mmの板状の乾式加圧成形体を作製した。
【0106】
具体的に、まず、乾式混合粉体を、所定の脱気機構が付属した成形型に適量充填した。そして、所望の嵩密度が得られるように、乾式プレス成形を行った。すなわち、乾式プレス成形においては、乾式加圧成形体の嵩密度が250kg/mとなるようにプレス圧を調節した。成形後は、乾式加圧成形体を速やかに成形型から取り出した。
【0107】
次に、乾式加圧成形体を市販のオートクレーブ内に入れた。そして、オートクレーブの加熱を開始し、2時間かけて室温から170℃まで温度を上昇させた。さらに、オートクレーブ内において、乾式加圧成形体を温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で所定時間(0.5時間、1時間、2時間、3時間、6時間又は9時間)保持することにより、当該乾式加圧成形体の養生を行った。その後、養生された乾式加圧成形体をオートクレーブから取り出し、105℃で乾燥した。
【0108】
こうして、95質量%のシリカ微粒子と5質量%のEガラス繊維とを含み、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生された断熱材を得た。また、同様に、乾式加圧成形体を160℃で2時間保持した以外は同様の条件で養生した断熱材、及び乾式加圧成形体を180℃で2時間保持した以外は同様の条件で養生した断熱材も得た。
【0109】
さらに、比較の対象として、上述のようにして作製した乾式加圧成形体を温度80℃、相対湿度90%RHで加圧することなく所定時間(3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、100時間、250時間又は400時間)保持することで養生された断熱材も得た。
【0110】
[圧縮強度の評価]
各断熱材の圧縮強度を、万能試験装置(テンシロン RTC−1150A、株式会社オリエンテック)を用いて測定した。すなわち、断熱材から寸法30mm×15mm×厚さ25mmの試験体を切り出した。次いで、この試験体のプレス面(30mm×15mm)に対して垂直方向に(すなわち、当該試験体の当該プレス面に垂直な表面(15mm×25mm)に対して)荷重を負荷した。
【0111】
そして、試験体が破断したときの荷重(最大荷重)(N)を、荷重を負荷した表面(プレス面に垂直な表面)の面積(m)で除した値を圧縮強度(MPa)として評価した。また、同様に、養生前の乾式加圧成形体及びオートクレーブで加熱を開始してから170℃に到達した時点(すなわち、養生時間が0時間)の乾式加圧成形体についても、同様に圧縮強度を評価した。
【0112】
図4及び図5には、それぞれオートクレーブを用いた高湿加圧養生(「A/C養生」)及び80℃の高湿養生(「蒸気養生」)により得られた各断熱材の養生条件(養生温度(℃)及び養生時間(hr))と圧縮強度(各断熱材から切り出した8つの試験体の圧縮強度の最大値、最小値及び算術平均値)とを対応させて示す。
【0113】
図4及び図5に示すように、養生前の乾式加圧成形体の圧縮強度の平均値は0.21MPaであった。これに対し、図4に示すように、A/C養生によって、断熱材の圧縮強度は顕著に増加した。
【0114】
すなわち、極めて短時間のA/C養生によって、圧縮強度の平均値は0.8MPa以上に増加し、特に、養生時間が0.5時間超、6時間未満の場合には、圧縮強度は1.0MPa以上にまで増加した。一方、図5に示すように、蒸気養生によっても断熱材の圧縮強度は増加したが、A/C養生ほど効果的ではなかった。
【0115】
このように、A/C養生によって、断熱材の嵩密度を維持したまま、その圧縮強度の顕著な増加を極めて効率よく達成することができた。なお、結果を図示していないが、温度120℃又は200℃でのA/C養生によっても同様に断熱材の圧縮強度を増加させることができた。
【実施例2】
【0116】
[断熱材の製造]
一次粒子の平均粒径が約13nmの無水シリカ微粒子(親水性フュームドシリカ微粒子)と、平均繊維径11μm、平均繊維長6mmのEガラス繊維と、平均粒径1.8μmの炭化珪素(SiC)からなる輻射散乱材とを含み、結合剤を含まない乾式加圧成形体を作製した。
【0117】
すなわち、75質量%のシリカ微粒子、5質量%のEガラス繊維及び20質量%の輻射散乱材を含む断熱材原料を使用して、上述の実施例1と同様に板状の乾式加圧成形体を作製した。
【0118】
そして、上述の実施例1と同様に、オートクレーブ内において、乾式加圧成形体を温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で所定時間(2時間、4時間、8時間又は16時間)保持することにより、A/C養生が施された断熱材を製造した。
【0119】
[熱伝導率の評価]
各断熱材の600℃における熱伝導率を周期加熱法にて測定した。すなわち、断熱材から切り出した試験体内に温度波を伝播させ、その伝播時間から熱拡散率を測定した。そして、この熱拡散率と、別途測定した比熱及び密度と、から熱伝導率を算出した。なお、温度波としては、温度振幅が約4℃、周期が約1時間である温度の波を使用した。また、試験体内の2つの地点を温度波が通過するのに要する時間を伝播時間とした。なお、乾式加圧成形体についても同様に熱伝導率を測定した。その結果、各断熱材及び乾式加圧成形体の600℃における熱伝導率は、いずれも0.03〜0.05W/(m・K)であり、優れた断熱性を有していた。
【0120】
[透過型電子顕微鏡観察]
170℃で4時間のA/C養生により得られた断熱材及び養生前の乾式加圧成形体を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。図6A及び図6Bには、それぞれ断熱材及び乾式加圧成形体のTEM写真を示す。
【0121】
まず、養生前の乾式加圧成形体は、図6Bに示すように、乾式プレス成形により集合した一次粒子(シリカ微粒子)Mにより形成された孔構造を有していた。この孔構造には、一次粒子Mによって微細な孔P(図6Bにおいて孔径は50nm以下)が形成されていた。
【0122】
これに対し、A/C養生が施された断熱材は、図6Aに示すように、架橋構造Bで連結された一次粒子(シリカ微粒子)Mにより形成された孔構造を有していた。この孔構造においても、一次粒子Mによって微細な孔P(図6Aにおいて孔径は50nm以下)が形成されていた。
【0123】
したがって、A/C養生によって断熱材の強度が顕著に向上する理由の一つとして、養生前には見られない架橋構造Bの生成が考えられた。しかも、この架橋構造Bの生成後も、孔構造が保持されていたことは、上述のように、A/C養生後の断熱材が優れた断熱性を有することを裏付けるものであった。
【0124】
[発塵性の評価]
170℃で4時間のA/C養生により得られた断熱材及び養生前の乾式加圧成形体の発塵性を評価した。すなわち、断熱材及び乾式加圧成形体から切り出した試験体の表面に、面積1260mmの粘着テープ(596−921、アスクル株式会社製)を貼り付けた。次いで、この粘着テープを剥がし、当該粘着テープに付着した粉塵の重量を電子天秤で測定した。
【0125】
その結果、乾式加圧成形体から採取された粉塵量は約6.0×10−5(g/cm)であったのに対し、断熱材から採取された粉塵量は、約2.0×10−5(g/cm)であった。
【0126】
すなわち、A/C養生が施された断熱材の発塵性は、養生前の乾式加圧成形体に比べて顕著に低減された。このA/C養生による発塵性の低減は、上述のように一次粒子であるシリカ微粒子同士が架橋構造によって連結されたことによるものと考えられた。
【実施例3】
【0127】
[断熱材の製造]
乾式プレス成形時のプレス圧力を調整して、様々な嵩密度(220〜280kg/m)の乾式加圧成形体及び断熱材を製造した。まず、比較例Iとして、上述の実施例1と同様に、シリカ微粒子とEガラス繊維とを含む乾式加圧成形体を製造した。次いで、実施例Iとして、上述の実施例1と同様、比較例Iに係る乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、断熱材を製造した。
【0128】
また、比較例IIとして、補強繊維としてEガラス繊維に代えてS2ガラス繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長6mm)を使用したこと以外は上述の実施例1と同様にして、シリカ微粒子と当該S2ガラス繊維とを含む乾式加圧成形体を製造した。さらに、実施例IIとして、上述の実施例1と同様、比較例IIに係る乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、断熱材を製造した。
【0129】
[圧縮強度の評価]
こうして得られた2種類の断熱材(実施例I及び実施例II)及び2種類の乾式加圧成形体(比較例I及び比較例II)の圧縮強度を、上述の実施例1と同様にして測定した。
【0130】
図7には、圧縮強度を測定した結果を示す。図7の横軸及び縦軸は、断熱材及び乾式加圧成形体の嵩密度(kg/m)及び圧縮密度(MPa)をそれぞれ示す。図7において、黒塗り四角印及び上側の実線は実施例Iに係る断熱材、黒塗り三角印及び下側の実線は実施例IIに係る断熱材、白抜き菱形印及び上側の破線は比較例Iに係る乾式加圧成形体、及び白抜き丸印及び下側の破線は比較例IIに係る乾式加圧成形体の結果を示す。
【0131】
図7に示すように、A/C養生が施されていない乾式加圧成形体の圧縮強度は、その嵩密度が220〜230kg/mの場合には0.2MPa以下と非常に低く、嵩密度が約280kg/mに増加した場合であっても約0.5MPa程度に過ぎなかった。
【0132】
これに対し、A/C養生が施された断熱材の圧縮強度は、その嵩密度が220kg/m以上、250kg/cm以下の場合において0.6MPa以上(0.6〜1.2MPa)であり、さらに、その嵩密度が250kg/m超、280kg/cm以下の場合においては0.8MPa以上(0.8〜1.4MPa)であった。
【0133】
このように、嵩密度が同程度の場合において、A/C養生により得られた断熱材の圧縮強度は、乾式加圧成形体に比べて顕著に高かった。すなわち、A/C養生によって、断熱材の嵩密度を不必要に増加させることなく(固体伝熱の増加によって断熱性を低下させることなく)、その強度を効果的に向上できることが確認された。
【実施例4】
【0134】
[断熱材の製造]
まず、比較例IIIとして、シリカ微粒子と、S2ガラス繊維(マグネシアシリケートガラス繊維)と、炭化珪素とを含み、結合剤を含まない乾式加圧成形体及を作製した。すなわち、上述の実施例1と同様に、75質量%のシリカ微粒子、5質量%のS2ガラス繊維及び20質量%の炭化珪素を含む断熱材原料を使用して、板状の乾式加圧成形体を作製した。
【0135】
次いで、実施例IIIとして、上述の実施例1と同様、比較例IIIに係る乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、断熱材を製造した。
【0136】
[浸水後の特性の評価]
比較例IIIに係る乾式加圧成形体及び実施例IIIに係る断熱材のそれぞれから、長さ150mm、幅100mm、厚さ25mmの板状の試験体を作製し、当該試験体の全体を水中に1時間浸した。その後、試験体を水中から取り出して、105℃で24時間、乾燥機にて乾燥させた。この乾燥後の試験体の寸法(長さ、幅及び厚さ)を、浸水後の寸法として測定した。なお、浸水及び乾燥によって、試験体は収縮し、その寸法は低減された。
【0137】
そして、試験体の浸水前の寸法と浸水後の寸法との差分の、当該浸水前の寸法に対する割合を収縮率(%)として評価した。また、浸水後の試験体の圧縮強度を、上述の実施例1と同様に評価した。
【0138】
図8には、厚さの収縮率を評価した結果を示す。図8の横軸は嵩密度(kg/m)を示し、縦軸は厚さ収縮率(%)を示す。図9には、浸水後に圧縮強度を測定した結果を示す。図9の横軸は嵩密度(kg/m)を示し、縦軸は浸水後の圧縮密度(MPa)を示す。図8及び図9において、黒塗りの丸印は実施例IIIに係る断熱材の結果を示し、白抜きの四角印は比較例IIIに係る乾式加圧成形体の結果を示す。
【0139】
図8に示すように、製造時に養生された実施例IIIに係る断熱材の厚さ収縮率は、養生が施されていない比較例IIIに係る乾式加圧成形体のそれに比べて顕著に低く抑えられた。特に、嵩密度が少なくとも380kg/m以上の断熱材の厚さは、実質的に収縮しなかった。なお、実施例IIIに係る断熱材及び比較例IIIに係る乾式加圧成形体の長さ及び幅の収縮率もまた、同様の傾向を示した。
【0140】
また、図9に示すように、浸水後の実施例IIIに係る断熱材の圧縮強度は、浸水後の比較例IIIに係る乾式加圧成形体のそれに比べて高く維持された。特に、嵩密度が少なくとも380kg/m以上の断熱材は、乾式加圧成形体に比べて顕著に高い圧縮強度を示した。
【0141】
このように、製造時に養生された断熱材は、一時的に水が浸み込んだ場合であっても、その寸法の低減(収縮)及び圧縮強度の低下(強度劣化)が効果的に抑制されることが確認された。
【実施例5】
【0142】
図10に示すような様々な11種類の断熱材を準備し、その特性を評価した。図10には、各断熱材に含まれる金属酸化物微粒子、補強繊維及び輻射散乱材の含有量(質量%)、常態での圧縮強度(MPa)、上述の実施例4と同様に測定された浸水後の圧縮強度(MPa)、1000℃における加熱線収縮率(%)、1150℃における加熱線収縮率(%)、及び600℃、800℃、1000℃における熱伝導率(W/(m・K))を示している。
【0143】
なお、図10の「金属酸化物微粒子(質量%)」欄で括弧内に記載されている数値は、使用された金属酸化物微粒子の合計量に対するシリカ微粒子の含有量及びアルミナ微粒子の含有量のそれぞれの割合(%)を示している。また、図10において、「#250」、「#350」及び「#450」は、それぞれ嵩密度「250kg/m」、「350kg/m」及び「450kg/m」を示す。また、図10において「−」が示されている特性は評価が行われなかったことを示す。
【0144】
[断熱材の製造]
実施例IVとして、金属酸化物微粒子としてシリカ微粒子のみを含む断熱材を製造した。具体的に、まず、上述の実施例1と同様、75質量%のシリカ微粒子、5質量%のS2ガラス繊維及び20質量%の炭化珪素を含み、結合剤を含まない板状の乾式加圧成形体を作製した。次いで、上述の実施例1と同様、この乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、実施例IVに係る断熱材を製造した。
【0145】
また、実施例V〜XIとして、金属酸化物微粒子としてシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む断熱材を製造した。具体的に、まず、上述の実施例1と同様、合計で75質量%のシリカ微粒子及びアルミナ微粒子、5質量%のS2ガラス繊維又はアルミナ繊維、及び20質量%の炭化珪素又は珪酸ジルコニウムを含み、結合剤を含まない板状の乾式加圧成形体を作製した。次いで、上述の実施例1と同様、この乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、実施例V〜XIに係る断熱材を製造した。
【0146】
なお、アルミナ微粒子としては、一次粒子の平均粒径が約13nmの無水アルミナ微粒子(親水性フュームドアルミナ微粒子)を使用した。アルミナ繊維としては、平均繊維径7μm、平均繊維長6mmのアルミナ繊維(Alが72%、SiOが28%)を使用した。珪酸ジルコニウムとしては、平均粒径1.0μmの珪酸ジルコニウム(ZrSiO)を使用した。
【0147】
また、比較例IV〜VIとして、金属酸化物微粒子としてアルミナ微粒子のみを含む断熱材を準備した。すなわち、比較例IVとして、シリカ微粒子に代えてアルミナ微粒子を使用したこと以外は上述の実施例IVと同様に、断熱材を製造した。
【0148】
比較例Vとしては、60質量%のアルミナ微粒子、5質量%のアルミナ繊維、及び35質量%の珪酸ジルコニウムを含む、市販の板状の乾式加圧成形体を準備した。
【0149】
さらに、上述の実施例1と同様、比較例Vに係る乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、比較例VIに係る断熱材を製造した。
【0150】
[圧縮強度の評価]
準備された断熱材の圧縮強度を、常態の圧縮強度として、上述の実施例1と同様に評価した。また、上述の実施例4と同様に、浸水後の圧縮強度を評価した。
【0151】
図10に示すように実施例IV〜XIに係る断熱材は、いずれも優れた強度を示した。すなわち、例えば、嵩密度が450kg/mの場合(#450)、比較例IV〜VIに係る断熱材の圧縮強度(常態)は、0.34MPa以下であったのに対して、実施例IV〜XIに係る断熱材のそれは、0.6MPa以上であった。
【0152】
また、比較例V,VIに係る断熱材は、浸水によって崩壊し、浸水後の圧縮強度を測定することができなかった。これに対し、実施例IV,VIII,X,XIに係る断熱材は、浸水前(常態)と比べると浸水後の圧縮強度は低下したものの、浸水後も崩壊することなく、所定の圧縮強度を維持した。
【0153】
なお、シリカ微粒子の含有量が増加するにつれて、断熱材の圧縮強度も増加する傾向があった。
【0154】
[加熱線収縮率の評価]
各断熱材から、長さ150mm、幅30mm、厚さ15mmの板状の試験体を作製した。この試験体を、電気炉中、1000℃又は1150℃で24時間加熱し、加熱後の当該試験体の長さを測定した。そして、次の式により、加熱線収縮率を算出した:加熱線収縮率(%)={(X−Y)/X}×100。なお、この式において、Xは加熱前の長さ(mm)であり、Yは加熱後の長さ(mm)である。
【0155】
図10に示すように、いずれの断熱材も、1000℃における加熱線収縮率は5%以下であり、優れた耐熱性を示した。特に、実施例V〜XIに係る断熱材は、1000℃における加熱線収縮率が1.5%以下であった。
【0156】
なお、アルミナ微粒子の含有量が増加するにつれて、加熱線収縮率は低下する傾向があった。また、アルミナ微粒子を含まない実施例IVに係る断熱材も、嵩密度が450kg/mの場合には、1000℃における加熱線収縮率が3%以下であった。
【0157】
実施例V〜XIに係る断熱材の1150℃における加熱線収縮率は、いずれも25%以下であり、特に、嵩密度が450kg/mの場合には、15%以下であった。また、シリカ微粒子の含有量が37.5質量%を超えると、1150℃における加熱線収縮率は、10%以下であった。さらに、嵩密度が350kg/m又は450kg/mの場合には、アルミナ微粒子の含有量が56質量%を超えると、1150℃における加熱線収縮率は、3%以下であった。
【0158】
[熱伝導率の評価]
各断熱材の600℃、800℃又は1000℃における熱伝導率(W/(m・K))を周期加熱法にて測定した。すなわち、各断熱材から切り出した所定サイズの試験体内に温度波を伝播させ、その伝播時間から熱拡散率を測定した。そして、この熱拡散率と、別途測定した比熱及び密度と、から熱伝導率を算出した。なお、温度波としては、温度振幅が約4℃、周期が約1時間である温度の波を使用した。また、試験体内の2つの地点を温度波が通過するのに要する時間を伝播時間とした。
【0159】
図10に示すように、いずれの断熱材も優れた断熱性(低い熱伝導率)を示した。すなわち、いずれの断熱材も、600℃における熱伝導率は、0.045(W/m・K)以下であった。また、いずれの断熱材も、800℃における熱伝導率は、0.050(W/m・K)以下であった。また、いずれの断熱材も、1000℃における熱伝導率は、0.085(W/m・K)以下であった。
【0160】
このように、シリカ微粒子を含む断熱材は、優れた断熱性と優れた強度とを兼ね備えることが確認された。また、シリカ微粒子に加えてアルミナ微粒子をも含む断熱材は、優れた断熱性及び優れた強度に加えて、さらに優れた耐熱性をも備えることが確認された。
【符号の説明】
【0161】
B 架橋構造、L 液状の架橋構造、M,M1,M2 一次粒子、P 孔、Sa 二次粒子、Sb 孔構造、S1 養生工程、S2 乾燥工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、
前記金属酸化物微粒子間に、前記金属酸化物微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造を有する
ことを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子を含む
ことを特徴とする請求項1に記載された断熱材。
【請求項3】
次の(a)又は(b):
(a)嵩密度が180kg/m以上、300kg/m以下であって、圧縮強度が0.6MPa以上;、
(b)嵩密度が300kg/m超、500kg/m以下であって、圧縮強度が0.8MPa以上;
の嵩密度及び圧縮強度を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された断熱材。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子は、アルミナ微粒子を含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された断熱材。
【請求項5】
1000℃における加熱線収縮率が3%以下である
ことを特徴とする請求項4に記載された断熱材。
【請求項6】
50〜98質量%の前記金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の前記補強繊維と、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された断熱材。
【請求項7】
結合剤を含まない
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された断熱材。
【請求項8】
平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する養生工程と、
養生された前記乾式加圧成形体を乾燥する乾燥工程と、
を含む
ことを特徴とする断熱材の製造方法。
【請求項9】
前記養生工程において、前記金属酸化物微粒子の一部を溶出させて、前記金属酸化物微粒子間に液状の架橋構造を形成し、
前記乾燥工程において、前記架橋構造を固化する
ことを特徴とする請求項8に記載された断熱材の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子を含む
ことを特徴とする請求項8又は9に記載された断熱材の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物微粒子は、アルミナ微粒子を含む
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載された断熱材の製造方法。
【請求項12】
前記乾式加圧成形体は、50〜98質量%の前記金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の前記補強繊維と、を含む
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載された断熱材の製造方法。
【請求項13】
前記乾式加圧成形体は、結合剤を含まない
ことを特徴とする請求項8乃至12いずれかに記載された断熱材の製造方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれかに記載された製造方法により製造された
ことを特徴とする断熱材。

【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2A】
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【図2B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−145217(P2012−145217A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88318(P2011−88318)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【特許番号】特許第4860005号(P4860005)
【特許公報発行日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】