説明

断熱材複合タイル及びその製造方法

【課題】断熱材とタイル本体との付着性が極めて良好な断熱材複合タイルを提供する。
【解決手段】凹部又は中空部を有するタイル本体1と、タイル本体1の凹部又は中空部内において発泡により形成された発泡樹脂よりなる断熱材とを有する断熱材複合タイル。タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸が形成されている。タイル本体内面と断熱材との接合面積が増加し、また、凹凸の形状によっては良好な投錨効果を得ることができ、これにより、タイル本体の内面と断熱材との付着性が極めて良好なものとなる。このため、断熱材複合タイルが破損してもタイルの破片は断熱材によりつなぎとめられ、これが飛散することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル本体の凹部又は中空部内に、発泡樹脂よりなる断熱材を設けた断熱材複合タイル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空部を有した中空のタイル本体の該中空部内に発泡樹脂よりなる断熱材を設けることにより、タイルの断熱性を向上させることができる。
【0003】
特開2002−30786号公報の第[0019]段落には、予め発泡用樹脂液を所定形状に発泡成形しておき、この発泡体をタイル本体の中空部に挿入して接着することにより断熱材複合タイルを製造することが記載されている。
【0004】
また、同号公報の第[0020]段落には、中空のタイル本体の中空部内に発泡用樹脂液を注入し、タイルの左右の開口部をパネルで閉鎖した後、該樹脂液を発泡させることにより、中空部内に発泡樹脂を直接充填することが記載されている。
【0005】
このような断熱材複合タイルにあって、断熱材は、タイルに断熱性を付与するためのものであるが、断熱材とタイル本体との付着力を強くしておくことにより、断熱材複合タイルのタイル本体が破損した場合、断熱材による連結効果でタイル破片をつなぎとめ、これが周囲に飛散するのを防止することができる。
【特許文献1】特開2002−30786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイル本体の中空部内に予め発泡成形した断熱材を接着することにより、タイル本体と断熱材との接着強度を十分に得ることができるが、この場合には、予め断熱材を所定形状に発泡成形する工程、接着剤を塗布する工程、断熱材をタイル本体の中空部に挿入する工程が必要となり、生産性に劣る。
【0007】
樹脂液を中空のタイル本体の中空部内で発泡させて断熱材を直接充填する方法であれば、断熱材の発泡成形と、タイル本体への一体化とを同時に行うことができ、効率的であるが、この場合には、タイル本体内面と断熱材との付着性が十分でないために、タイル破損時に、タイルの破片が飛散する可能性がある。
【0008】
本発明は、断熱材とタイル本体との付着性が極めて良好な断熱材複合タイルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の断熱材複合タイルは、凹部又は中空部を有するタイル本体と、該タイル本体の凹部又は中空部内において発泡により形成された発泡樹脂よりなる断熱材とを有する断熱材複合タイルにおいて、該タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の断熱材複合タイルは、請求項1において、該タイル本体の凹部又は中空部の内面を発泡させることにより前記凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の断熱材複合タイルの製造方法は、凹部又は中空部を有するタイル本体を形成するタイル本体形成工程と、該タイル本体の凹部又は中空部内に発泡樹脂原料を供給し、該凹部又は中空部内にて該発泡樹脂原料を発泡させて断熱材を形成する断熱材形成工程とを有する断熱材複合タイルの製造方法において、該タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸を形成しておき、その後、断熱材形成工程を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4の断熱材複合タイルの製造方法は、請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を押出成形機の押出口から押出成形し、その後、焼成して前記中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、該押出口に凹凸を設けておくことにより、前記凹凸を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項5の断熱材複合タイルの製造方法は、請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を成形して凹部又は中空部を有する成形体を得、該成形体を焼成して前記凹部又は中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、該成形体の凹部又は中空部の内面を部分的に除去することにより、前記凹凸を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項6の断熱材複合タイルの製造方法は、請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を成形して凹部又は中空部を有する成形体を得、該成形体を焼成して前記凹部又は中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、該成形体の凹部又は中空部の内面に炭化珪素を付着させた後焼成し、この焼成工程において炭化珪素によって該内面を発泡させて前記凹凸を形成することを特徴とする。
【0015】
請求項7の断熱材複合タイルの製造方法は、請求項6において、成形体の凹部又は中空部の内面に炭化珪素の粉体のスラリーを付着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の断熱材複合タイルにあっては、タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸が形成されているため、タイル本体内面と断熱材との接合面積が増加し、また、凹凸の形状によっては良好な投錨効果を得ることができ、これにより、タイル本体の内面と断熱材との付着性が極めて良好なものとなる。このため、断熱材複合タイルが破損してもタイルの破片は断熱材によりつなぎとめられ、これが飛散することが防止される。
【0017】
この凹凸は、タイル本体の押出成形時に押出成形機の押出口に凹凸を形成しておくことにより、設計通りの凹凸形状にて形成してもよく、タイル製造用原料を成形して得た成形体の内面に掻き取り等の処置を施して形成してもよい。
【0018】
また、この凹凸は、成形体の内面に炭化珪素(好ましくは炭化珪素粉末のスラリー)を付着させておき、焼成時にこの内面を発泡させることによっても形成することができる。この場合、例えば、押出成形を行う際、押出成形機の押出口は既存のもので良く、また掻き取り処置等も不要であり、工程が平易である。なお、成形体内面に炭化珪素粉体のスラリーを付着させる場合には、炭化珪素の粉体が成形体内面からある程度の深さまで浸透し、成形体内面が発泡し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の断熱材複合タイル及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1(a)〜(c)は本発明の断熱材複合タイルの実施の形態を示す斜視図であり、図2(a)〜(f)は本発明に係るタイル本体の内面の凹凸形状の具体例を示す断面図である。
【0021】
本発明の断熱材複合タイルは、凹部又は中空部を有するタイル本体の凹部又は中空部に発泡樹脂よりなる断熱材が充填されたものである。本発明の断熱材複合タイルの形状には特に制限はなく、例えば、図1(a)に示す如く、四角柱形状の中空部1Aを有する四角筒状のタイル本体1の中空部1Aに発泡樹脂よりなる断熱材2が充填された断熱材複合タイル10A、図1(b)に示す如く、略長四角柱形状の中空部3Aを有する略長四角筒状のタイル本体3の中空部3Aに発泡樹脂よりなる断熱材2が充填された断熱材複合タイル10B、図1(c)に示す如く、有底無蓋の箱形状のタイル本体4の凹部4Aに発泡樹脂よりなる断熱材2が充填された断熱材複合タイル10Cが挙げられるが、何らこれらの形状に限定されるものではない。
【0022】
本発明の断熱材複合タイルにおいては、このようなタイル本体の凹部又は中空部の内面、例えば図1(a),(b)に示すタイル本体1,3の中空部1A,3Aの内壁面の少なくとも一部、或いは図1(c)に示すタイル本体4の凹部4Aの底面及び/又は四側面に凹凸が形成されている。なお、図1(a)〜(c)において、タイル本体の凹部又は中空部内面に形成された凹凸は図示を省略してある。
【0023】
以下にこの凹凸形状及び凹凸の形成方法を、図1(a)に示す断熱材複合タイル10Aのタイル本体1の場合を例示して説明するが、図1(b),(c)に示すタイル本体3,4であっても同様に凹凸を形成することができる。
【0024】
図1(a)に示すタイル本体1は、タイル製造用原料を押出成形機から押出成形することにより中空部を有する成形体を得、この成形体を焼成することにより製造されるが、この中空成形体の成形に当たり、押出成形機の押出口の中空部形成のための中子の外面に凹凸形成のための凹凸部を設けておき、この中子を用いて押出成形することにより、中空部内面に押出方向に延在する凹溝及び/又は凸条からなる凹凸が形成された成形体を得ることができる。従って、このような成形体を焼成することにより、中空部内面に凹凸が形成されたタイル本体を得ることができる。
【0025】
この場合、タイル本体内面の凹凸形状としては特に制限はなく、タイル本体1の内面に、図2(a)に示す如く、断面四角形状の凸条1aが形成されたもの、図2(b)に示す如く、断面三角形状の凸条1bが形成されたもの、図2(c)に示す如く、断面直角三角形状の凸条1cが形成されたもの、図2(d)に示す如く、断面略半円形ないし半楕円形状の凸条1dが形成されたもの、図2(e)に示す如く、断面台形状の凸条1eが形成されたものや、内面が図2(f)に示す如く、断面波形状の凹凸面1fとされたものなどを挙げることができる。ただし、凹凸形状は何ら図2に示すものに限定されるものではない。
【0026】
また、タイル本体内面の凹凸は、押出成形された成形体の中空部の内壁に工具等により掻き取り傷等を付けることにより形成することもできる。この場合には、中空部内で掻き取り工具を移動させて、タイル本体の軸方向に延在する筋状の凹凸を形成しても良く、また、掻き取り工具を中空部内で回転させて螺旋状の凹凸を形成しても良い。焼成後の成形体の内面に凹凸を形成する方法として、サンドブラスト手法等を用いることもできる。
【0027】
タイル本体内面の凹凸はまた、予め成形された成形体の内面に炭化珪素を付着させた後焼成し、この焼成工程において、炭化珪素によって内面を発泡させて形成することもできる。この場合には、平均粒径50〜200μm程度の炭化珪素粉末を5〜30重量%程度の濃度で水に分散させてなるスラリーを調製し、このスラリーを成形体の内面にスプレーするなどして、成形体内面の面積当たりの炭化珪素の付着量として100〜600g/m程度に付着させることが好ましい。このように炭化珪素粉末スラリーを付着させることにより、成形体内面のある程度の深さまで炭化珪素粉末が浸透し、焼成時の発泡で成形体内面にある程度の高低差のある凹凸を形成することができる。なお、この炭化珪素粉末の浸透深さは、タイル本体の肉厚によっても異なるが、0.2〜0.5mm程度で、タイル本体の肉厚の1/10〜1/20程度であることが好ましい。
【0028】
成形体内面を掻き取ることにより凹凸を形成する方法や、上述の炭化珪素による発泡作用を利用して凹凸を形成する方法であれば、図1(c)に示す如く、凹部を有するタイル本体内面への凹凸の形成にも適用することができる。
【0029】
このような凹凸面は、タイル本体内面のうちの一面にのみ設けても良いが、タイルの破片の飛散防止効果を確実に得るためには、全内面に凹凸を形成することが好ましい。
【0030】
また、凹凸の程度としては、タイル本体の肉厚や、タイル本体の大きさ等によっても異なるが、隣接する凹部の最低部と凸部の最高部との高低差(例えば図2(a)〜(f)のhの値)が平均して0.5〜2.0mmであることが好ましい。このように平均高低差が0.5mm以上の凹凸を形成することにより、タイル本体の内面と断熱材との付着性を確実に高めることができる。また、平均高低差が2.0mm以下の凹凸は、比較的容易に形成することができると共に、タイル本体の凹部又は中空部内で生じた発泡樹脂がこの凹部又は中空部内の隅々にまで万遍なく充填される。この平均高低差が小さ過ぎると凹凸を形成したことによる本発明によるタイル本体内面と断熱材との付着性向上効果を十分に得ることができない。この平均高低差が過度に大きいと、発泡樹脂原料の流動が凹凸にはばまれて、タイル本体の凹部又は中空部内の隅々まで発泡樹脂が充填されにくくなり、また、凹凸がタイル本体の肉厚に影響を及ぼし、断熱材複合タイルの重量が大幅に増加したり、タイル本体コストが高くついたりして好ましくない。従って、凹凸の平均高低差は上記範囲において、凹凸の形状等に応じて適宜決定することが好ましい。
【0031】
なお、凹凸形状のうち、図2(d)や図2(e)に示すようなくさび形状の凸条や、図示はしないがアリ溝形状の凹溝を形成した場合には、その投錨効果で、良好なタイル本体内面と断熱材との付着性向上効果を得ることができる。ただし、このような凹凸面を例えば押出成形機時に形成する場合、タイル製造用原料組成や押出成形条件を十分に制御することが重要となる。
【0032】
本発明の断熱材複合タイルは、予めタイル本体の成形体の内面に所定形状の凹凸を形成しておくこと以外は、従来と同様にタイル本体の凹部又は中空部に発泡樹脂原料を注入し、中空タイル本体の両端部又は箱状タイル本体の上部開口をパネルで閉鎖した後、発泡樹脂原料を発泡させることにより製造することができる。
【0033】
図3に示す如く、従来のタイル本体5はその中空部5Aの内壁面は凹凸のない平坦面であり、このためタイル本体内面と断熱材との付着性を十分に得ることはできないが、タイル本体内面に例えば図2(a)〜(f)に示すような凹凸を形成した本発明の断熱材複合タイルであれば、タイル本体内面と断熱材との接合面積を大きくすることができ、また凹凸形状によっては凹凸による投錨効果でタイル本体内面と断熱材との付着性を良好なものとすることができる。このため、断熱材複合タイルが高所から落下するなどして破損した場合でも、タイルの破片が断熱材によりつなぎとめられ、タイルの破片が周囲に飛散することが防止される。また、施工面に施工された断熱材複合タイルに衝撃が加えられて断熱材複合タイルが破損した場合でも、タイルの破片が施工面から落下することなく、そのまま施工面にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の断熱材複合タイルの実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るタイル本体の内面の凹凸形状の具体例を示す断面図である。
【図3】従来の断熱材複合タイルのタイル本体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1,3,4 タイル本体
2 断熱材
1A,3A 中空部
4A 凹部
10A,10B,10C 断熱材複合タイル
1a,1b,1c,1d,1e 凸条
1f 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部又は中空部を有するタイル本体と、
該タイル本体の凹部又は中空部内において発泡により形成された発泡樹脂よりなる断熱材とを有する断熱材複合タイルにおいて、
該タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸が形成されていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項2】
請求項1において、該タイル本体の凹部又は中空部の内面を発泡させることにより前記凹凸が形成されていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項3】
凹部又は中空部を有するタイル本体を形成するタイル本体形成工程と、
該タイル本体の凹部又は中空部内に発泡樹脂原料を供給し、該凹部又は中空部内にて該発泡樹脂原料を発泡させて断熱材を形成する断熱材形成工程とを有する断熱材複合タイルの製造方法において、
該タイル本体の凹部又は中空部の内面に凹凸を形成しておき、その後、断熱材形成工程を行うことを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を押出成形機の押出口から押出成形し、その後、焼成して前記中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、
該押出口に凹凸を設けておくことにより、前記凹凸を形成することを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。
【請求項5】
請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を成形して凹部又は中空部を有する成形体を得、該成形体を焼成して前記凹部又は中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、
該成形体の凹部又は中空部の内面を部分的に除去することにより、前記凹凸を形成することを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。
【請求項6】
請求項3において、前記タイル本体形成工程において、タイル製造用原料を成形して凹部又は中空部を有する成形体を得、該成形体を焼成して前記凹部又は中空部を有するタイル本体を形成する方法であって、
該成形体の凹部又は中空部の内面に炭化珪素を付着させた後焼成し、この焼成工程において炭化珪素によって該内面を発泡させて前記凹凸を形成することを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、成形体の凹部又は中空部の内面に炭化珪素の粉体のスラリーを付着させることを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−37508(P2006−37508A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218912(P2004−218912)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】