説明

新しいパルプ及びパルプ化の方法

本発明は新しいパルプに関する。それは、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌されるリグノセルロース材料から得られる。本発明はリグノセルロース材料をパルプ化する方法及びリグノセルロース材料を軟化させる方法にも関する。処理される材料は好ましくは木、軟材又は硬材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しいパルプを対象にする。それは、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌されたリグノセルロース材料から導かれる。本発明はリグノセルロース材料をパルプ化する方法及びリグノセルロース材料を軟化させる方法も対象にする。
【背景技術】
【0002】
パルプ
パルプは紙、板紙、繊維板、及び同様の工業製品の製造用原料である。精製された形では、それはレーヨン用セルロース、セルロースエステル、及び他のセルロース由来の製品のもととなる。
【0003】
繊維質の植物は植物繊維から得られる。したがって再生可能な資源である。パルプは最古のバビロニア及びエジプト文明以来、文房具(例えばパピルス)の資源として用いられている。
【0004】
分離した繊維の再結合による凝集シート(cohesive sheet)の形成である製紙の起源は、西暦105年の中国で竹、桑の樹皮、及びぼろ切れを用いたツァイ-ルン(Ts'ai-Lun)による結果と考えられている。製紙の資源としての木の使用は1800年代半ばまでは商業的に適用されなかった。今日、使われる主要な木材‐パルプ化の方法、例えば、砕木(groundwood)、ソーダ、二酸化硫黄(SO2)又は酸性亜硫酸塩、及び硫酸塩又はクラフトの方法が、1844年、1853年、1866年、及び1870年にそれぞれ開発された。それらの開発以来、基本的な方法は改良され、また適合させられている。そして技術は非常に洗練されている。
【0005】
ほとんどの産業のように、製造にとって最もエネルギー効率が良く、清潔な方法を開発する多くの研究努力と同様に、1970年代の環境とエネルギーの関心は、パルプ・製紙工場の運転に大きな変化を生じさせた。多くの場合、短期の実際的結果は、廃液の放出を最少にする方法(例えばスクラバー、集塵器、溜池など)を付け足した。
他の傾向は、砕木法を改良し、パルプ品質、収穫とチップ化(chipping)における一層の木の使用、パルプ化で悪臭を放つ硫黄化合物及び漂白から生じる腐食性の塩素化合物の除去又は最少化を向上させることにより、高収率パルプの利用を増大させることである。
【0006】
パルプ化の過程の前に、木材は、収穫、バーキング(barking)、チップ化、及びスクリーニングの過程によって処理される。パルプ化のためのチップ化の目的は、繊維の過度の切断又は損傷なしで、加工化学物質の浸透と拡散を可能とするサイズまで木材を小さくすることである。約20mm長のチップは、かなりの自由流動性であり、空気圧によって又はベルト上で輸送され得る。そして積み重ねて又は容器に貯蔵できる(カーク‐オスメール(Kirk-Othmer)著、「化学技術百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」第3版、p. 379‐391)。
【0007】
現在のパルプは機械パルプと化学パルプに細分できる。
【0008】
前述の機械パルプは砕木パルプ、熱機械パルプ(TMP)及び化学熱機械パルプ(CMTP)に細分される。砕木パルプは、ホイールの軸と木の軸を平行にして、濡れた回転砥石に湿った木を押しつけることによって調製される。研摩する区域周辺の温度は180〜190℃になり得る。水の動きとパルプの除去は熱を制御し、消す。それ故に、木材の炭化(charring)を防止している。そのような処理の後に、砕木パルプは個々の繊維に加えて繊維束、破断繊維、粒子をかなりの割合(70〜80質量%)で含む。その繊維は本質的には、もとの細胞壁のリグニンを無傷に保った木材である。それらは、したがって、とても堅く、かさ張り、化学パルプ繊維のようには崩れない。砕木パルプが約95%の収率で得られるので、それらのコストは比較的低い。木以外の主要で直接的なコストは電力である。それは通常紙のグレードで約49〜75kJ(11.7〜17.9kcl)/トンである。
【0009】
熱機械パルプ(TMP)は、木材チップ(wood chips)を可鍛性にするために110〜150℃でそれらを前蒸熱(presteaming)することによって調製される。湿ったリグニンのガラス転移点より上で加熱されるとき、木の熱可塑化が起こる。これらのチップが高い一貫性で、精製機で繊維に解されるとき、個々の繊維全体が解き放たれ、中層で分離が起こり、リボン状の材料が細胞壁のS1層から製造される。フィブリル化(fibrillization)の量は、精製条件による。また、それはパルプの特性に重要である。この材料は、砕木の光散乱係数よりは低いものの、高い光散乱係数を有する。またとても柔軟であり、紙へ良好な結合及び表面平滑性を与える。長い繊維の割合の増加は、TMP‐パルプの裂け(tearing)特性を高めるが、この部分の繊維は堅く、結合にほとんど貢献しない。砕木パルプより繊維破砕はとても少ない。
【0010】
化学熱機械パルプ(CTMP)はTMPと同じ方法で調製されるが、チップはpH9〜10で亜硫酸ナトリウムによって穏やかに前処理される。この過程で、チップは化学物質に含浸され、130〜170℃で蒸され、続いて精製される。収率は90〜92%であり、TMPより2〜3%低い。作業変数を調整することによってある範囲の特性を得られるが、一般に、CTMPパルプは同種の熱機械パルプよりはるかに長い繊維の割合と低い粒子の割合を有する。無傷な繊維はTMP繊維より柔軟であり、それ故に、より良好なシート成形性及び結合特性が得られる。CTMPパルプ化が、特に高密度な硬材のパルプ化に適するという報告がある。
【0011】
化学パルプ化では、十分なリグニンが中層から溶かされ、もしあったとしてもほとんど機械的作用を受けずに繊維を分離させる。しかしながら、細胞壁リグニンの一部は繊維中に保持される。そして蒸解中にこれを除去する試みは、パルプの過剰な分解という結果になるであろう。この理由で、約3〜4質量%のリグニンが通常は硬材の化学パルプ中に残り、また4〜10質量%が軟材の化学パルプ中に残る。完全にリグニンを分解除去したパルプを製造するつもりなら、リグニンは続いて分離加工の漂白によって除去される。
【0012】
木材に接触した蒸解液の濃度は脱リグニン化の割合に影響を及ぼす。化学物質がチップに浸透する時に、木の組織を通した化学物質の拡散及び試薬濃度の減少に時間を要するので、脱リグニン化はチップの中心で、それらよりも遅く進行する。パルプの主要な部分を蒸熱し過ぎないために、より大きいチップの中心が適切に脱リグニン化される前に、通常は蒸解が停められる。それ故に、得られたパルプは繊維に分解されていない木材の断片の一部を含む。それはスクリーニングによって分離される。そして蒸解釜に戻されるか機械的に繊維に分解される。
【0013】
支配的な化学木材‐パルプ化の方法は、クラフト法か硫酸塩法である。アルカリパルプ化液又は蒸解溶液は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを約3対1の割合で含む。クラフトの名(ドイツ語で力を意味する)は、本来のソーダ法のように水酸化ナトリウムのみを用いるならば得られるパルプと比較して、蒸解液に硫化ナトリウムが含まれるときに製造された更に強いパルプを特徴付ける。代替用語、すなわち硫酸法は、回収過程のメーキャップ(makeup)化学物質のような硫酸ナトリウムの使用に由来する。硫酸ナトリウムは、回収炉で有機物由来の(organic-derived)カーボンにより硫化ナトリウムに還元される。
【0014】
硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムの溶液は下記式のような平衡状態にある。
【0015】
【化1】

【0016】
したがって水溶性の硫化ナトリウムは、水酸化物イオンの源であり、化学的な電荷を調整する際に考慮されなければならない。あるシステムが北米産業で開発されたことで、酸化ナトリウム(Na2O)に対する当量として水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの双方を表現することにより、それらを等価な基準に置けた。混合物中の硫化ナトリウムの割合(パーセント)は、硫化ナトリウム(Na2S)と水酸化ナトリウム(NaOH)の双方がNa2Oとして表現されるときに、硫化度として知られる。化学的な電荷、溶液組成、加熱時間、並びに反応の時間及び温度は、蒸解される材種又は種混合及びパルプの意図的な用途の関数である。良質紙用に漂白できるグレードのパルプ(bleachable-grade pulp)の製造ではサザンパイン・チップの条件の典型的な組合せは、活性アルカリ18%、硫化度25%、溶液‐木材の比(liquor to wood-ratio)4:1、最初の加熱域において170℃で90分、及び第二域において170℃で90分である。硬材は主として、より低い初期のリグニン含有量のために、より低い激しい条件(vigorous condition)を要する。
【0017】
クラフト法は、高度に発達した、可鍛性の、そして効率的な方法だが、その使用のために幾つかの問題と不利点がある。個々の工場でエネルギー、水、及び化学物質の要求を最少にする努力をしている。さらに、この方法の化学にはもともと二つの問題がある。すなわち、炭水化物の低収率及び悪臭を放つ有機硫黄化合物の形成である。
【0018】
商業的に適用されているクラフト法の一つの改良が、多硫化物法である。硫黄元素が硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムの溶液に加えられた時、硫黄は溶解し、一般式Na2x(ここで、xは2〜5であり、平衡条件と硫黄がどれだけ加えられるかによって決まる)の錯体混合物を形成する。硫黄のNa2xは酸化剤であり、クラフトパルプ化の条件下では、ヘミアセタールの働きを相対的に耐アルカリ性(alkali-stable)のアルドン酸に変換する。多硫化物法による収率の増加は、木材を基準に約10%で加えられた硫黄の量に比例する。
【0019】
一つの追加されたパルプ化の方法が亜硫酸塩パルプ化である。本来の亜硫酸塩パルプ化法では、木材は二酸化硫黄(SO2)と石灰の水溶液でパルプ化された。亜硫酸カルシウムは、pH2を超えるときに極めて限定的な溶解度を有する。そして、過剰なSO2ガスはpHを前述の水準より下に保つために蒸解釜中に維持された。したがって、この方法を酸法となるようなクラフト法又はソーダ法と対比することができる。現在、カルシウム以外の塩基がSO2溶液と共に使用される。そして、亜硫酸塩パルプ化とは、pHの全範囲がパルプ化の全て又は一部に利用される様々な方法を言う。マグネシウム、ナトリウム、及びアンモニアはカルシウムの替わりとして使用される。硫化マグネシウムではpH5を超えると溶解度が減少するが、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸アンモニウムはpH1〜14で可溶性である。
【0020】
以前に議論されたパルプ化方法に加えて、いくつかの半化学(semichemical)パルプ化方法がある。半化学法と高収率の化学法との区別はとても小さい。また機械法と全化学法との区別はさらに大きな事項となる。半化学法は本質的には、部分的に蒸解されたチップから繊維を分離するために機械的な処理が必要となるポイントで化学法を止めるような化学的脱リグニン化である。半化学パルプを製造するために、いかなる既知の化学法も使用できる。このパルプは、それほど柔軟ではないが、機械パルプより化学パルプに類似している。それが結合において繊維壁の破裂に依存していないからである。収率は、15〜20%のリグニン含有量を伴って、60〜85%である。リグニンは繊維表面に集まる。
【0021】
マイクロ波
有機合成に関する最近の文献から、反応の発生に必要なエネルギーがマイクロ波照射を用いるシステムに導かれるとき、有機反応の反応時間が注目に値するほど減少することが知られている。マイクロ波エネルギー用に一般的に用いられる周波数は、2.45GHzである。有機合成においてマイクロ波技術を用いる分野で入手でき、幅広く、連続的に増加している文献がある。このトピックの要約記事の例は、1994年にミンゴス(Mingos)によって出版された(D. マイケル P. ミンゴス(D. Michael P. Mingos)著、「有機合成におけるマイクロ波("Microwaves in chemical synthesis")」、ケミストリー・アンド・インダストリー(Chemistry and industry)、第1巻、1994年8月、p. 596〜599)。ルーピー(Loupy)らはマイクロ波照射下の不均一触媒作用に関するレビューを最近になって発表した(ルーピー, A.(Loupy, A.)、ペティット, A.(Petit, A.)、ハメリン, J.(Hamelin, J.)、テキシアー‐ビュレ, F.(Texier-Boullet, F.)、ヤチャウル, P.(Jachault, P.)、マテ, D.(Mathe, D.)著、「集中的なマイクロ波を用いる新しい無溶媒の有機合成("New solvent-free organic synthesis using focused microwave ")」、シンセシス("Synthesis")、1998年、p. 1213〜1234)。もう一つの代表的な記事は、ストラウスによって発表された(C.R. ストラウス(Strauss)著、「環境的に良性な有機化学製品の開発に対する組み合わせのアプローチ(" A combinatorial approach to the development of Environmentally Benign Organic Chemical Preparations ")」、Aust. J. chem.、1992年、第52巻、p. 83〜96)。
【0022】
機械パルプ化におけるマイクロ波
カナダ特許第2008526号明細書(CA2008526)は、しみ込まれたリグノセルロース材料のマイクロ波加熱を用いるパルプの製造を開示する。しみ込みは、触媒とキレート剤の存在下で最先端のパルプ化溶液(Na2SO3‐溶液)により実行される。前述の化学物質のしみ込みに続いて、マイクロ波透過型の蒸解釜において照射により材料が生じる。この後に、個別の機械的精製の工程が続く。マイクロ波処理の主な利点は、蒸解時間及び消費エネルギーの減少である。
【0023】
スコット(Scott)ら(TAPPI Fall Technol. Trade Fair、p. 667〜676)は、「エネルギー節約のためのマイクロ波照射ログ及び機械パルプの改良された紙特性(" microwaving logs for energy savings and improved paper properties for mechanical pulps ")」の方法を報告した。この処理は、さらなる化学物質のいかなるしみ込みもなしに、機械パルプ化の前処理として実行される。次の機械パルプ化のエネルギー消費は、最高使用電力レベルの15%まで減少した。明らかに、木の材料は、水の急速な蒸発と、このようなリグノセルロース材料の急速な断裂によって柔らかくなった。
【0024】
木材とセルロースの分解におけるマイクロ波
フィンランド特許第20031156号明細書(FI20031156)はイオン液体中のリグノセルロース材料を溶解するマイクロ波支援(microwave-assisted)の方法を開示する。この溶解は完全であり、いかなる種類のリグノセルロース材料(軟材及び硬材を含む)にも適用できる。この溶解は水が実質的に存在しない条件で実行されなければならない。溶解した材料成分は、結果的に生じるイオン液体溶液から分離できる。
【0025】
ロジャーズ(Rogers)らは、マイクロ波の分野において、純セルロース繊維をイオン液体に溶解する方法を2002年に発表した(スァトロスキ, R.P.(Swatloski, R.P.)、スピア S.K.(Spear S.K.)、ホルブレイ, J.D.(Holbrey, J.D.)、ロジャース, R.D.(Rogers, R.D.)著、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティJournal of American Chemical Society、2002年、第124巻、p. 4974〜4975)。またここで、この溶解は水が実質的に存在しない条件で実行されなければならない。
【0026】
セルロース用の他の非誘導体化有機溶媒は、「総合的セルロース化学("Comprehensive Cellulose Chemistry")」第1巻、Wiley-VCH、p. 59〜67に広く記載されている。他にも、異なった水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液がセルロースの効果的な溶媒となることが証明された。完全な溶解はすぐに達成される。水が過剰な量で常に存在するので、前述の溶媒はセルロースの誘導体化において実用的ではない。
【0027】
【特許文献1】カナダ特許第2008526号明細書
【特許文献2】フィンランド特許第20031156号明細書
【非特許文献1】カーク‐オスメール(Kirk-Othmer)著、「化学技術百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」、第3版、p. 379‐391
【非特許文献2】D. マイケル P. ミンゴス(D. Michael P. Mingos)著、「有機合成におけるマイクロ波("Microwaves in chemical synthesis")」、ケミストリー・アンド・インダストリー(Chemistry and industry)、第1巻、1994年8月、p. 596〜599
【非特許文献3】ルーピー, A.(Loupy, A.)、ペティット, A.(Petit, A.)、ハメリン, J.(Hamelin, J.)、テキシアー‐ビュレ, F.(Texier-Boullet, F.)、ヤチャウル, P.(Jachault, P.)、マテ, D.(Mathe, D.)著、「集中的なマイクロ波を用いる新しい無溶媒の有機合成("New solvent-free organic synthesis using focused microwave ")」、シンセシス("Synthesis")、1998年、p. 1213〜1234
【非特許文献4】C.R. ストラウス(C.R. Strauss)著、「環境的に良性な有機化学製品の開発に対する組み合わせのアプローチ(" A combinatorial approach to the development of Environmentally Benign Organic Chemical Preparations ")」、Aust. J. chem.、1992年、第52巻、p. 83〜96
【非特許文献5】スコット(Scott)他著、「エネルギー節約のためのマイクロ波照射ログ及び機械パルプの改良された紙特性(" microwaving logs for energy savings and improved paper properties for mechanical pulps ")」、TAPPI Fall Technol. Trade Fair、p. 667〜676
【非特許文献6】スァトロスキ, R.P.(Swatloski, R.P.)、スピア S.K.(Spear S.K.)、ホルブレイ, J.D.(Holbrey, J.D.)、ロジャース, R.D.(Rogers, R.D.)著、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)、2002年、第124巻、p. 4974〜4975
【非特許文献7】「総合的セルロース化学("Comprehensive Cellulose Chemistry")」、第1巻、ワイレー・VCH(Wiley-VCH)、p. 59〜67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
パルプ化は重要であり、そして世界で最もエネルギーを消費するような産業の一つである。気候変動、連続的な人口の増大、及びこのようなエネルギー消費のために、工業のすべての分野では新しい、エネルギー効率の良い生産技術を求める大きな要求がある。パルプ化では、悪臭を放つ硫黄化合物の除去又は最少化は、さらなる利点となるだろう。
【0029】
この発明の対象は、新しいパルプ材料を提供することである。
【0030】
この発明のもう一つの対象は、リグノセルロース材料をパルプ化する方法を提供することである。
【0031】
この発明のさらなる対象は、リグノセルロース材料を軟化させる方法を提供することである。
【0032】
さらなる対象は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
セルロースは、前述の水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液に完全に溶解することが知られている。木材は水が実質的に存在しない条件でイオン液体に溶解することも知られている。
【0034】
マイクロ波の分野において、木の材料中のセルロースを水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液に溶解させる試験を行ったとき、食塩水に溶解したのはセルロースではなく木の材料中のリグニンだったことが、驚くべきことに発見された。
【0035】
意外にも、実質的な脱リグニン化が行われ、セルロースが細く長い繊維の束として無傷のまま残存したことを完了するような方法で撹拌を行うことができた。本発明は、新しい種類のパルプ及びそれを調製する方法を提供する。
【0036】
塩濃度と撹拌時間を調整することによって、脱リグニン化は避けられた。そして同時に、木の材料は劇的に軟化した。
【0037】
脱リグニン化(パルプ化)及びリグノセルロース材料の軟化の双方において、前述の結果に達するためには、驚くほどに短い処理が求められた。木材のようなリグノセルロース材料は、マイクロ波の場の中で1分間撹拌した後では、既に脱リグニン化と軟化のどちらかになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明によれば新しいパルプが提供される。そのパルプはマイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌されたリグノセルロース材料から生じる。
【0039】
撹拌は、前述の溶液中でリグノセルロース材料をかき混ぜながら又はかき混ぜずに行うことができる。
【0040】
リグノセルロース材料は、実質的にいかなるリグノセルロース材料でもありえる。パルプ用繊維の主要な資源は、軟材と硬材のような木材である。他の資源としては、わら、植物、及びトウが挙げられる。パルプ繊維は自然界で発見される任意の維管束植物から主に抽出できる。また、わら、植物(例えば、米、アフリカハネガヤ、小麦及びサバーイ(sabai))、トウ及びアシ(例えば、主にバッガス(bagasses)又はサトウキビ)、数種類の竹、靭皮繊維(例えば、黄麻、亜麻、ケナフ麻、リネン、カラムシ、及び大麻)、葉繊維(例えば、アガバ(agaba)又はマニラ麻及びサイザル)のような非木材資源からも抽出できる。
【0041】
好ましいリグノセルロース材料は、軟材と硬材のような木材である。
【0042】
リグノセルロース材料は、自然界で発見されるような原形であることができる。又は、それは部分的に加工され得る。本発明の好ましい一実施態様では、リグノセルロース材料は木材チップからなる。すなわち、リグノセルロース木材は、マイクロ波照射下の水溶性テトラアルキルアンモニウム塩溶液中で前述の材料を撹拌する前に、バーキングとチップ化を受けた。
【0043】
水又は前述のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液をリグノセルロース材料にしみ込ませることにより、リグノセルロース材料を前処理できる。
【0044】
テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量は、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは10〜40質量%となり得る。テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンは下記の化学式で示される。
【0045】
【化2】

【0046】
ここで、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である。また、塩のアニオンはハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物でありえる。
【0047】
好ましくは、アニオンは塩化物又は水酸化物である。最も好ましくは、アニオンは水酸化物である。
【0048】
特に好ましいテトラアルキルアンモニウム塩は、R1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、また塩のアニオンが水酸化物であるような塩である。
【0049】
水と混和できるとき、他の有機イオン化合物も、本発明によってマイクロ波照射下でリグノセルロース材料を撹拌する際の塩成分として使用できる。イオン液体として知られるような、こうした様々なイオン化合物が、フィンランド特許第20031156号明細書(FI20031156)に記載されている。
【0050】
撹拌は、40℃〜270℃の温度で、好ましくは70℃〜210℃の温度で、最も好ましくは120℃〜190℃の温度で行うことができる。
【0051】
マイクロ波照射下でテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のリグノセルロース材料を撹拌するときに、圧力を利用することも可能である。利用するときは、圧力は20バールより低いことが好ましく、10バールより低いことがさらに好ましく、2〜9バールの間であることが最も好ましい。
【0052】
撹拌時間は、使用される塩とその濃度、リグノセルロース材料の性質及び濃度によって、また、おそらく利用される圧力だけでなく撹拌温度によって、1分〜24時間の間で変えることができる。
【0053】
本発明のパルプは、紙、板紙、繊維板、及び同様の工業製品の製造用原料として使用できる。
【0054】
本発明によれば、リグノセルロース材料をパルプ化する方法も提供される。この方法では、リグノセルロース材料は、部分的に又は完全に脱リグニン化をするためにマイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌される。
【0055】
パルプ化の方法では、撹拌は、前述の溶液中でリグノセルロース材料をかき混ぜながら又はかき混ぜずに行うことができる。
【0056】
リグノセルロース材料は、実質的にいかなるリグノセルロース材料でもありえる。パルプ用繊維の主要な資源は、軟材と硬材のような木材である。他の資源としては、わら、植物、及びトウが挙げられる。パルプ繊維は自然界で発見される任意の維管束植物から主に抽出できる。また、わら、植物(例えば、米、アフリカハネガヤ、小麦及びサバーイ(sabai))、トウ及びアシ(例えば、主にバッガス(bagasses)又はサトウキビ)、数種類の竹、靭皮繊維(例えば、黄麻、亜麻、ケナフ麻、リネン、カラムシ、及び大麻)、葉繊維(例えば、アガバ(agaba)又はマニラ麻及びサイザル)のような非木材資源からも抽出できる。
【0057】
好ましくは、使用されるリグノセルロース材料は、軟材と硬材のような木材である。
【0058】
リグノセルロース材料は、自然界で発見されるような原形であることができる。又は、それは部分的に加工され得る。本発明の好ましい一実施態様では、リグノセルロース材料は木材チップからなる。すなわち、リグノセルロース木材は、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で前述の材料を撹拌する前に、バーキングとチップ化を受けた。
【0059】
水又は前述のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液をリグノセルロース材料にしみ込ませることにより、リグノセルロース材料を前処理できる。
【0060】
パルプ化の方法では、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量は、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは10〜40質量%となり得る。テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンは下記の化学式で示される。
【0061】
【化3】

【0062】
ここで、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である。また、塩のアニオンはハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物でありえる。
【0063】
好ましくは、アニオンは塩化物又は水酸化物である。最も好ましくは、アニオンは水酸化物である。
【0064】
パルプ化の方法において、特に好ましいテトラアルキルアンモニウム塩は、R1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、また塩のアニオンが水酸化物であるような前述の塩である。
【0065】
水と混和できるとき、他の有機イオン化合物も、本発明のパルプ化の方法に塩成分として使用できる。利用できる化合物は、フィンランド特許第20031156号明細書に例示されている。
【0066】
本発明のパルプ化の方法では、撹拌は40℃〜270℃の間の温度で、好ましくは70℃〜210℃の間の温度で、最も好ましくは120℃〜190℃の間の温度で行うことができる。
【0067】
マイクロ波照射下でテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のリグノセルロース材料を撹拌するときに、圧力を利用することも可能である。利用するときは、圧力は20バールより低いことが好ましく、10バールより低いことがさらに好ましく、2〜9バールの間であることが最も好ましい。
【0068】
撹拌時間は、使用される塩とその濃度、リグノセルロース材料の性質及び濃度によって、また、おそらく利用される圧力だけでなく撹拌温度によって、1分〜24時間の間で変えることができる。
【0069】
本発明のパルプ化の方法では、リグノセルロース材料の脱リグニン化が部分的に又は完全になる方法で前述のパラメータを選択することが有利になる。
【0070】
パルプ化されたリグノセルロース材料は、紙、板紙、繊維板、及び同様の工業製品の製造用原料として使用できる。
【0071】
本発明によれば、リグノセルロース材料を軟化させる方法も提供される。この方法では、リグノセルロース材料は、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌される。
【0072】
軟化の方法では、撹拌は前述の溶液中でリグノセルロース材料をかき混ぜながら又はかき混ぜずに行うことができる。
【0073】
前述の軟化の方法では、リグノセルロース材料は、実質的にいかなるリグノセルロース材料でもありえる。パルプ用繊維の主要な資源は、軟材と硬材のような木材である。他の資源としては、わら、植物、及びトウが挙げられる。パルプ繊維は自然界で発見される任意の維管束植物から主に抽出できる。また、わら、植物(例えば、米、アフリカハネガヤ、小麦及びサバーイ(sabai))、トウ及びアシ(例えば、主にバッガス(bagasses)又はサトウキビ)、数種類の竹、靭皮繊維(例えば、黄麻、亜麻、ケナフ麻、リネン、カラムシ、及び大麻)、葉繊維(例えば、アガバ(agaba)又はマニラ麻及びサイザル)のような非木材資源からも抽出できる。
【0074】
好ましくは、使用されるリグノセルロース材料は、軟材と硬材のような木材である。
【0075】
リグノセルロース材料は、自然界で発見されるような原形であることができる。又は、それは部分的に加工され得る。本発明の好ましい一実施態様では、リグノセルロース材料は木材チップからなる。すなわち、リグノセルロース木材は、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で前述の材料を撹拌する前に、バーキングとチップ化を受けた。
【0076】
水又は前述のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液をリグノセルロース材料にしみ込ませることにより、リグノセルロース材料を前処理できる。
【0077】
本発明の軟化の方法では、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量は、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは10〜40質量%となり得る。テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンは下記の化学式で示される。
【0078】
【化4】

【0079】
ここで、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である。また、塩のアニオンはハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物でありえる。
【0080】
好ましくは、アニオンは塩化物又は水酸化物である。最も好ましくは、アニオンは水酸化物である。
【0081】
軟化の方法において、特に好ましいテトラアルキルアンモニウム塩は、R1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、また塩のアニオンが水酸化物であるような前述の塩である。
【0082】
水と混和できるとき、他の有機イオン化合物も、本発明の軟化の方法に塩成分として使用できる。利用できる化合物は、フィンランド特許第20031156号明細書に例示されている。
【0083】
本発明の軟化の方法では、撹拌は40℃〜270℃の間の温度で、好ましくは70℃〜210℃の間の温度で、最も好ましくは120℃〜190℃の間の温度で行うことができる。
【0084】
本発明の軟化の方法では、圧力を利用することも可能である。利用するときは、圧力は20バールより低いことが好ましく、10バールより低いことがさらに好ましく、2〜9バールの間であることが最も好ましい。
【0085】
撹拌時間は、使用される塩とその濃度、リグノセルロース材料の性質及び濃度によって、また、おそらく利用される圧力だけでなく撹拌温度によって、1分〜24時間の間で変えることができる。
【0086】
本発明の軟化の方法では、リグノセルロース材料が軟化されるだけで、パルプ化されない方法で前述のパラメータを選択することが有利になる。それ故に、実質的な脱リグニン化は本発明の軟化工程の間に起きない。リグノセルロース材料の組織は、次の加工の工程のエネルギー及び/又は化学物質の消費を減らす方法で、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液によって裂かれ、また含浸される。
【0087】
軟化したリグノセルロース材料は、紙、板紙、繊維板、及び同様の工業製品の製造用原料として使用できる。
【0088】
本発明は新しいパルプを完成させる。それは急速かつエネルギー効率の良い方法で製造できる。脱リグニン化の程度は調整できる。また、結果として生じるパルプは細く、長い繊維からなる高品質なものである。本発明は、リグノセルロース材料を軟化させる方法も達成する。前述の軟化させられた、可鍛性の材料は次に、よりエネルギー効率の良い方法で、さらに加工され得る。それ故に、本発明は、低エネルギー消費と、このような環境保全上の利点をもたらす。また、悪臭を放つ有機硫黄化合物の形成は避けられる。使用されたテトラアルキルアンモニウム塩は比較的安い化学製品である。そして、それはリサイクルされることが好ましい。
【実施例】
【0089】
下記の実施例は、前述の発明を実施例に限定することなく本発明を説明する。実施例1〜10において、処理されたリグノセルロース材料は、20mm長の木材チップから切り取られるフィンランド産軟材の棒であった。棒は、長い繊維を助けるために木材の薄層と平行に切られた。棒を切る元々の理由はマイクロ波反応装置の限定的サイズ(すなわち5ml)であった。
【0090】
実施例1
170℃、マイクロ波場‐5分間における40%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0091】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で170℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって、長い繊維粒子を含む暗くて茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、完全に別々の繊維だけでなく、分離した淡いベージュ色の繊維の束の双方が生じた。
【0092】
実施例2
170℃、マイクロ波場‐5分間における20%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0093】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの20%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で170℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって、長い繊維の粒子を含む暗くて茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、完全に別々の繊維だけでなく、分離した淡いベージュ色の繊維の束の双方が生じた。このパルプ組成物は、実施例1のものと比較して少しだけ無傷だった。
【0094】
実施例3
170℃、マイクロ波場‐5分間における10%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0095】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの10%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で170℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって、長い繊維の粒子を含む暗くて茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、分離した淡いベージュ色の繊維の束及び実施例2のものと比べて無傷なパルプ組成物の双方が生じた。
【0096】
実施例4
170℃、マイクロ波場‐30分間における10%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0097】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの10%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で170℃、30分間で撹拌した。
この撹拌によって、長い繊維の粒子を含む暗くて茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、分離した淡いベージュ色の繊維の束及び実施例1のものと似たパルプ組成物の双方が生じた。
【0098】
実施例5
120℃、マイクロ波場‐5分間における40%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0099】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で120℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって、長い繊維の粒子を含む暗くて茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、完全に別々の繊維だけでなく、分離した淡いベージュ色の繊維の束の双方が生じた。このパルプ組成物は実施例2のものと似ていた。
【0100】
実施例6
120℃、マイクロ波場‐5分間における5%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0101】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの5%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で120℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって、幾つかの木製の棒及び長い繊維の粒子を含む茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、劇的に軟化した木の棒と、前記の棒から分離された幾つかの粒子が生じた。
【0102】
実施例7
80℃、マイクロ波場‐5分間における40%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0103】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で80℃、5分間で撹拌した。
この撹拌によって幾つかの木製の棒及び長い繊維の粒子を含む茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、劇的に軟化し、かつ部分的に分離した木の棒と、前記の棒からも分離している幾つかの粒子が生じた。
【0104】
実施例8
80℃、マイクロ波場‐30分間における10%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0105】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの10%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で80℃、30分間で撹拌した。
実施例7のように、この撹拌によって、幾つかの木製の棒及び長い繊維粒子を含む茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、劇的に軟化し、かつ部分的に分離した木の棒と、前記の棒からも分離している幾つかの粒子が生じた。
【0106】
実施例9
70℃、マイクロ波場‐1時間における10%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の処理
【0107】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの10%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で70℃、1時間で撹拌した。
ここで、この撹拌によって、幾つかの木製の棒を含む透明な、淡く茶色がかった溶液ができた。水による洗浄で、劇的に軟化し、かつ部分的に分離した木の棒が生じた。
【0108】
実施例10
170℃、マイクロ波場‐5分間における40%水酸化ナトリウム(NaOH)中の軟材の比較処理
【0109】
約750mgの軟材の棒を4.5mlの40%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に混ぜ、磁気かくはん子付きの密閉反応管中で170℃、5分間で撹拌した。
ここで、この撹拌によって、粘液性で茶色がかった、非繊維質の有機材料の一部を生じさせながら、繊維材料の破壊が起きた。
【0110】
実施例11
マイクロ波場なしの40%水酸化テトラブチルアンモニウム水中の軟材の比較処理
【0111】
約2000mgの軟材の棒を12mlの40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(NaOH)に混ぜ、磁気かくはん子付きのフラスコ中で95℃、終夜で撹拌した。
またここで、この撹拌によって、粘液性で茶色がかった、非繊維質の有機材料の一部を生じさせながら、繊維材料の破壊が起きた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で撹拌を受けたリグノセルロース材料から導かれるパルプ。
【請求項2】
リグノセルロース材料が軟材又は硬材であることを特徴とする請求項1に記載のパルプ。
【請求項3】
テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量が、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、そして最も好ましくは10〜40質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルプ。
【請求項4】
テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンが下記の化学式
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である)で示され、
テトラアルキルアンモニウム塩のアニオンがハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパルプ。
【請求項5】
1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、またテトラアルキルアンモニウム塩のアニオンが水酸化物であることを特徴とする請求項4に記載のパルプ。
【請求項6】
撹拌が、40℃〜270℃の温度で、好ましくは70℃〜210℃の温度で、そして最も好ましくは120℃〜190℃の温度で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパルプ。
【請求項7】
部分的に又は完全に脱リグニン化するために、マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中でリグノセルロース材料を撹拌することを特徴とするリグノセルロース材料をパルプ化する方法。
【請求項8】
リグノセルロース材料が軟材又は硬材であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量が、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、そして最も好ましくは10〜40質量%であることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンが下記の化学式
【化2】

(式中、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である)で示され、
テトラアルキルアンモニウム塩のアニオンがハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、またテトラアルキルアンモニウム塩のアニオンが水酸化物であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
撹拌が、40℃〜270℃の温度で、好ましくは70℃〜210℃の温度で、そして最も好ましくは120℃〜190℃の温度で行われることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
マイクロ波照射下のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液中で、リグノセルロース材料を撹拌することを特徴とするリグノセルロース材料を軟化させる方法。
【請求項14】
リグノセルロース材料が軟材又は硬材であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
テトラアルキルアンモニウム塩水溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩の含有量が、1〜75質量%、好ましくは5〜60質量%、そして最も好ましくは10〜40質量%であることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
テトラアルキルアンモニウム塩のカチオンが下記の化学式
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4は独立してC1〜C30アルキル基、C3〜C8炭素環式基又はC3〜C8複素環式基である)で示され、
テトラアルキルアンモニウム塩のアニオンがハロゲン、擬似ハロゲン、過塩素酸塩、C1〜C6カルボン酸塩又は水酸化物であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1、R2、R3及びR4が独立してC4アルキル基であり、またテトラアルキルアンモニウム塩のアニオンが水酸化物であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
撹拌が、40℃〜270℃の間の温度で、好ましくは70℃〜210℃の間の温度で、そして最も好ましくは120℃〜190℃の間の温度で行われることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−516086(P2009−516086A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539461(P2008−539461)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000362
【国際公開番号】WO2007/054610
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(504156500)
【Fターム(参考)】