説明

新交通システム

【課題】車両の上部構造に空調装置を支持するための強度を必要とせず、車両を軽量化でき、走行安定性の低下を防ぐことができる新交通システムを提供する。
【解決手段】走行路2を有すると共に走行路2に沿って設けられたガイド3を有する軌道4と、軌道4に沿って走行する車両5とを備え、車両5が走行路2上を走行するゴムタイヤ22を有すると共にガイド3にガイドされてゴムタイヤ22を操舵する操舵部23を有する新交通システム1において、車両5の床下に空調ユニット29を設け、空調ユニット29の吐出側に空調ダクト20を接続すると共に空調ダクト20を車両5の床を貫通して車両5の客室11内に延ばし、かつ、空調ダクト20の吐出口38を客室11の側面に上向きに設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドを有する軌道と、この軌道上をタイヤで走行する車両とを備えた新交通システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
新交通システムの車両には空調装置が設けられている。この空調装置は、家庭用のエアコンと基本的には同じ構造であり、コンプレッサと、凝縮器と、蒸発器と、ファンと、膨張弁とからなる。図8(a)に示すように新交通システムの車両には、コンプレッサと凝縮器と蒸発器とを備える空調ユニット50を天井51に設けるタイプのものと、図8(b)に示すように空調ユニット50を床下に設け、空調ユニット50からの調和空気をダクト52を介して天井51に送るタイプのものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−291636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、新交通システムの車両はゴムタイヤで走行するものであるため、鉄道車両ほどの積載能力はなく、車重を軽くすることが求められる。
【0005】
しかしながら、天井51に空調ユニット50を設けるタイプの場合、1両当たり500〜1000kgもの空調ユニット50が天井51に設けられることとなり、車両の上部構造に相当な強度が必要になり、車両自体が重くなり、重心が高くなって走行安定性が低下するという課題があると共に、客室を広くすることが困難になり、屋根上に空調ユニットを設けるとむき出しの空調ユニットが外観を損ね、天井直下に空調ユニットを設けるとその機械音が客室内に漏れるという問題があった。
【0006】
また、床下に空調ユニット50設け、空調ユニット50からの調和空気をダクト52を介して天井51に送るタイプの場合、車両の上部構造にダクト52とダクト52を支持するシェル(図示せず)を設けなければならず、上部構造に強度が必要になり、車両自体が重くなり、重心が高くなって走行安定性が低下するという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、車両の上部構造に空調装置を支持するための強度を必要とせず、車両を軽量化でき、走行安定性の低下を防ぐことができる新交通システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、走行路を有すると共に走行路に沿って設けられたガイドを有する軌道と、該軌道に沿って走行する車両とを備え、該車両が上記走行路上を走行するゴムタイヤを有すると共に上記ガイドにガイドされて上記ゴムタイヤを操舵する操舵部を有する新交通システムにおいて、上記車両の床下に空調ユニットを設け、該空調ユニットの吐出側に空調ダクトを接続すると共に該空調ダクトを上記車両の床を貫通して上記車両の客室内に延ばし、かつ、空調ダクトの吐出口を上記客室の側面に上向きに設けたものである。
【0009】
上記客室の側面には窓枠が設けられ、上記空調ダクトの吐出口が上記窓枠の下部に形成されるとよい。
【0010】
上記空調ダクトは、上記床下に設けられ水平方向に延びる床下ダクト部と、該床下ダクト部に上方に延びて設けられる立上りダクト部とを備えるとよい。
【0011】
上記空調ユニットが上記車両の前後の床下に設けられるとよい。
【0012】
上記空調ユニットの吸気側に吸気ダクトを接続すると共に該吸気ダクトの吸気口を上記客室の前後面の下部に設けるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の上部構造に空調装置を支持するための強度を必要とせず、車両を軽量化でき、走行安定性の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は新交通システムの車両の側面図である。
【図2】図2は図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図3は車両に設けられる空調装置の斜視図である。
【図4】図4は車両内の空気の流れを示す斜視説明図である。
【図5】図5は新交通システムの車両の正面説明図である。
【図6】図6は車両の操舵部の平面説明図である。
【図7】図7は他の実施の形態を示す新交通システムの車両の側面図である。
【図8】図8(a)は従来の新交通システムの車両の説明図であり、図8(b)は従来の他の車両の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図5に示すように、新交通システム1は、走行路2を有すると共に走行路2に沿って設けられたガイド3を有する軌道4と、軌道4に沿って走行する車両5とを備える。走行路2はゴムタイヤで走行できるように形成される。ガイド3は、走行路2の両側に設けられたガイドレール6からなる。ガイドレール6は、車両5を走行路2に沿って走行させるように案内するためのものであり、走行路2と並行に延びる鋼材からなる。ガイドレール6は、走行路2側の側面に平滑なガイド面7を有する。
【0016】
図1に示すように、車両5は、客室11を形成する車体8と、車体8の底部に走行方向に離間して複数設けられた台車9とを備える。
【0017】
図1及び図4に示すように、車体8は、車体下部に位置され車両全体を支持する強度部材として機能するアンダーフレーム10と、アンダーフレーム10上に設けられ客室11の壁12と天井13を構成するボディー14とからなる。アンダーフレーム10上には床板を構成するキーストンプレート(図示せず)が設けられる。ボディー14は、主にFRPなどの軽量材で構成され、上下に延びる複数の支柱15と、支柱15間の下側に設けられ客室11の内壁を形成するパネル16と、支柱15間の上側に設けられる窓枠17と、窓枠17に設けられる窓ガラス18と、支柱15間の乗降口を開閉するためのスライド扉19とを備える。具体的には、軽量材は、支柱15、パネル16及びスライド扉19に用いられる。窓枠17は矩形状に形成されており、窓枠17の下部には、後述する空調ダクト20からの調和空気を吐出するための開口21が形成されている。開口21は、窓枠下部に沿って延びるスリット状に形成されている。また、窓枠17は客室11の左右両側に左右対称に配置される。
【0018】
図5及び図6に示すように、台車9は、走行路2上を走行するゴムタイヤ22と、ガイド3にガイドされてゴムタイヤ22を操舵する操舵部23とを備える。操舵部23は、ガイドレール6から反力をとってゴムタイヤ22を操舵するものであり、ゴムタイヤ22を上下に延びる軸24回り旋回自在に支持する軸受(図示せず)に設けられ前後に延びる左右一対の操舵フレーム25と、左右の操舵フレーム25に連結され操舵フレーム25を連動させるための連結フレーム26と、それぞれの操舵フレーム25の両端に設けられガイドレール6のガイド面7に当接されるガイド輪27とを備える。
【0019】
図1、図2及び図3に示すように、車両5には、空調装置28が設けられる。空調装置28は、車両5の前後の床下、すなわち、アンダーフレーム10の前後に設けられる2つの空調ユニット29と、これら空調ユニット29の吐出側にそれぞれ接続され客室11内に調和空気を供給するための空調ダクト20と、空調ユニット29の吸気側にそれぞれ接続され客室11内から空気を吸い込むための吸気ダクト30とを備える。
【0020】
空調ユニット29は、コンプレッサ(図示せず)と凝縮器(図示せず)と蒸発器(図示せず)と、ファン(図示せず)と、膨張弁(図示せず)をユニット化してなる。空調ユニット29は、上面の左右両側に客室11内の空気を取り込むための吸気ダクト30に接続される吸気側接続部31を有し、車両長手方向の中央側の面の左右両側に客室11内に調和空気を供給するための空調ダクト20に接続される吐出側接続部32を有する。また、空調ユニット29には、外気を取り込むと共に客室11内の空気を車両5外に排出するための吸排気口(図示せず)が形成されており、客室11内の空気を一部換気しながら調和するようになっている。空調ユニット29は、アンダーフレーム10に吊り下げるように設けられている。
【0021】
空調ダクト20は、空調ユニット29の吸気側に接続され床下、すなわちアンダーフレーム10に設けられ水平方向に延びる床下ダクト部33と、床下ダクト部33に上方に延びて設けられる立上りダクト部34、35とを備える。床下ダクト部33は、空調ユニット29の左右両側の吐出側接続部32にそれぞれ接続されると共に、車両5の側部に沿って車両5の長手方向中央に向けて延びるように形成されている。立上りダクト部34、35は、床下ダクト部33の基端側に接続される第1立上りダクト部34と、床下ダクト部33の先端側に接続される第2立上りダクト部35とからなる。第1立上りダクト部34と第2立上りダクト部35は、それぞれ車両5の床を貫通して客室11内に鉛直に延ばされており、上端に水平方向に延びる吐出部36、37を有する。吐出部36、37は、上向きに開口する吐出口38を有し、客室11の側面に上向きに設けられる。具体的には、吐出部36、37は、窓枠17のスリット状の開口21に吐出口38を重ね合わせるようにして窓枠17に設けられており、窓枠17の下部に設けられることで窓枠17の下部に吐出口38を形成するようになっている。また、第1立上りダクト部34と第2立上りダクト部35は、アンダーフレーム10に強固に支持されており、ボディー14に負荷を掛けないようになっている。
【0022】
吸気ダクト30は、空調ユニット29の左右の吸気側接続部31から上方に延びると共に車両5の床を貫通して形成される。吸気ダクト30は、先端に吸気口39を有し、かつ、先端を車両5の長手方向中央に向けるように屈曲されている。図1及び図4に示すように、吸気口39に臨む客室11の前後面の下部には開口40が形成されており、客室11内の空気を吸気口39に通すようになっている。
【0023】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0024】
空調ユニット29は吸気ダクト30を通じて客室11の前後の下部からそれぞれ空気を吸引し、空気の温度を予め設定された温度にして調和空気にしたのち、調和空気を空調ダクト20を介して客室11内に吐出する。このとき、空調ダクト20の吐出口38は客室11の側面に上向きに設けられると共に、窓枠17の下部に沿うスリット状に形成されているため、広い範囲からゆっくりと上向きに吹き出し、客室11の側面に沿って上昇する。このため、調和空気が乗客に直接当たることはない。また、調和空気は、数mの空調ダクト20を通ったのち客室11内に吹き出すこととなるため、空調ユニット29の機械音は、空調ダクト20内で減衰され、客室11内を騒々しくすることはない。
【0025】
左右両側の窓枠17の下部から上昇した調和空気は、天井13に沿って客室11の左右方向の中央に流れたのち、合流し、下方に流れるように循環し、客室11内の温度を均等にする。
【0026】
客室11内で循環した空気の一部は客室11の前後面の下部に設けられた吸気口39から吸引され、空調ユニット29に供給される。
【0027】
また、従来の新交通システムの車両にあっては、金属の車輪で走行する鉄道車両の技術が転用されていたため、ボディーは主にステンレスやアルミニウム合金で製作され、ボディーにて車両全体の剛性と強度を確保する構造となっており、空調装置の重量は特に問題とはならなかったが、新交通システムのコスト低減を図る上で車両の軽量化は重要であり、車両の軽量化のためにボディーを軽量化しようとすると空調装置の支持構造のために十分な軽量化は困難であったが、車両5の床下に空調ユニット29を設け、空調ユニット29の吐出側に空調ダクト20を接続すると共に空調ダクト20を車両5の床を貫通して車両5の客室11内に延ばし、かつ、空調ダクト20の吐出口38を客室11の側面に上向きに設けたため、空調ユニット29、空調ダクト20及び吸気ダクト30をアンダーフレーム10で支持でき、ボディー14を容易に軽量化できる。また、車両5の重心を低くでき、走行安定性を高めることができる。そして、客室11の上部空間を広くすることができる。またさらに、空調ユニット29を床下に隠すことができ、車両5の外観を損なうことがなく、空調ユニット29の機械音も空調ダクト20内で減衰でき、客室11内に機械音が漏れるのを防ぐことができる。そして、調和空気が乗客の頭部に直接当たるのを防ぐことができる。
【0028】
また、空調ダクト20の吐出口38が窓枠17の下部に形成されるものとしたため、客室11の側面に広い範囲に亘る吐出口38を簡易な構造で容易に、かつ、美しい外観で形成できる。
【0029】
空調ダクト20は、床下に設けられ水平方向に延びる床下ダクト部33と、床下ダクト部33に上方に延びて設けられる立上りダクト部34、35とを備えるものとしたため、床下の空間を有効に利用でき、客室11内を広くできると共に、客室11内に延びる立上りダクト部34、35をアンダーフレーム10で支持できる。
【0030】
空調ユニット29が車両5の前後の床下に設けられるものとしたため、車両5の重量バランスを良好にできると共に、客室11内の前後の温度差を小さくできる。
【0031】
空調ユニット29の吸気側に吸気ダクト30を接続すると共に吸気ダクト30の吸気口39を客室11の前後面の下部に設けたため、客室11内で循環した後の空気を吸気でき、効率よく客室11内を冷房又は暖房できる。
【0032】
なお、上述の実施の形態では空調装置28は、車両5の前後の床下の前後に設けられる2つの空調ユニット29を備え、空調ユニット29は、コンプレッサと凝縮器と蒸発器と、ファンと、膨張弁をユニット化してなるものとしたが、これに限るものではない。
【0033】
図7に示すように、空調装置60は、複数の蒸発器ユニット61と、これら蒸発器ユニット61に冷媒管63、64を介して接続されるコンプレッサ・凝縮器ユニット62とを備えるセパレート型としてもよい。この場合、蒸発器ユニット61は、蒸発器(図示せず)とファン(図示せず)を備えて構成されるとよく、車両5の前後下部にそれぞれ設けられるとよい。コンプレッサ・凝縮器ユニット62は、コンプレッサ(図示せず)と凝縮器(図示せず)とファン(図示せず)と膨張弁(図示せず)を備えて構成されるとよく、車両5の中央下部に設けられるとよい。具体的には、蒸発器ユニット61は、アンダーフレーム10の前後にそれぞれ吊り下げるようにして設けられるとよく、コンプレッサ・凝縮器ユニット62はアンダーフレーム10の中央に吊り下げるようにして設けられるとよい。
【0034】
蒸発器ユニット61は、上面の左右両側に吸気ダクト30を接続されるとよく、車両長手方向の中央側の面の左右両側に空調ダクト20を接続されるとよい。蒸発器ユニット61には、外気を取り込むための吸気口(図示せず)が形成されるとよい。
【0035】
冷媒管63、64は、コンプレッサ・凝縮器ユニット62から蒸発器ユニット61に冷媒を流入させる流入側冷媒管63と、蒸発器ユニット61からコンプレッサ・凝縮器ユニット62に冷媒を流出させる流出側冷媒管64とからなり、蒸発器ユニット61とコンプレッサ・凝縮器ユニット62を介してループ状に接続されるとよい。
【符号の説明】
【0036】
1 新交通システム
2 走行路
3 ガイド
4 軌道
5 車両
11 客室
17 窓枠
20 空調ダクト
22 ゴムタイヤ
23 操舵部
29 空調ユニット
30 吸気ダクト
33 床下ダクト部
34 第1立上りダクト部(立上りダクト部)
35 第2立上りダクト部(立上りダクト部)
38 吐出口
39 吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を有すると共に走行路に沿って設けられたガイドを有する軌道と、該軌道に沿って走行する車両とを備え、該車両が上記走行路上を走行するゴムタイヤを有すると共に上記ガイドにガイドされて上記ゴムタイヤを操舵する操舵部を有する新交通システムにおいて、上記車両の床下に空調ユニットを設け、該空調ユニットの吐出側に空調ダクトを接続すると共に該空調ダクトを上記車両の床を貫通して上記車両の客室内に延ばし、かつ、空調ダクトの吐出口を上記客室の側面に上向きに設けたことを特徴とする新交通システム。
【請求項2】
上記客室の側面には窓枠が設けられ、上記空調ダクトの吐出口が上記窓枠の下部に形成された請求項1記載の新交通システム。
【請求項3】
上記空調ダクトは、上記床下に設けられ水平方向に延びる床下ダクト部と、該床下ダクト部に上方に延びて設けられる立上りダクト部とを備える請求項1又は2記載の新交通システム。
【請求項4】
上記空調ユニットが上記車両の前後の床下に設けられた請求項1〜3のいずれかに記載の新交通システム。
【請求項5】
上記空調ユニットの吸気側に吸気ダクトを接続すると共に該吸気ダクトの吸気口を上記客室の前後面の下部に設けた請求項1〜4のいずれかに記載の新交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247560(P2010−247560A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96156(P2009−96156)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)