新規なジンクフィンガーヌクレアーゼ及びその用途
本発明は、ゲノム配列の標的化された切断と標的化された変更、ゲノム領域およびそのゲノム領域と相同性がある外来性ポリヌクレオチド間または、ゲノム配列の標的化された切断部位の非相同末端連結による標的化された組換えおよびそのための組成物に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム配列の標的化された切断および変更、標的化された切断に続いて外来性ポリヌクレオチドとゲノム配列間の相同性組換え、または、標的化された切断に続いて非相同性末端連結に有用な方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、制限酵素は、遺伝工学および分子生物学において、重要なツールである。9以上の塩基対(bp)からなったDNAを認識して切ることができる“rare cutter”として知られた新規制限酵素を作るための様々な試みがあって来た。そのうち、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術は、様々なDNA基盤配列の認識および切断に、ジンクフィンガーDNA−認識ドメインおよびDNA−切断ドメインを含むキメラヌクレアーゼである制限酵素を使用することである。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、細胞内に導入された時にゲノム性DNAから標的化された二重鎖切断(double strand break,DSB)を誘導できるから、哺乳類、植物細胞または他の細胞で効率的な遺伝子変更をさせるのに使用され得る。細胞で二重鎖切断が発生すると、細胞は自体的に持っている修理(repair)システムを用いて損傷した部位を直す。この時、損傷した部分と類似したDNA配列を有した供与者DNAを細胞内に導入すると、損傷したDNAと供与者DNA鋳型の間に相同組換えが生じる。遺伝体上の特定部位に所望の変形のために、標的塩基配列を供与者DNA内に組み込ませる。一方、供与者DNAがない場合にも、損傷した細胞は、非相同末端連結(non-homologous end joining,NHEJ)方式で損傷した部位が修理され得る。非相同末端連結(NHEJ)は、2つの切断末端などを共に接合して損傷したDNAを修理し、一般的に変異などを形成しない。しかし、一部の場合に切断されたDNA末端で塩基対などの挿入または欠失が起こるエラーが発生しやすい方向に修理が進行されることもある。従って、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて特定塩基配列の部分に二重鎖切断を生じて非相同末端連結を誘導すると、DNAに突然変異が生じ、ノックアウト細胞株を作ることができる。
【0003】
ジンクフィンガー(ZFs)は、真核細胞のゲノム内に暗号化されている最も豊富なDNA−結合モチーフであって、最もよく理解されている蛋白質−DNA結合メカニズムの1つを提供しているものとして見なされる(Wolfe,S.A.et al.,(2000) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct.,29,183-212;Pabo,C.O. et al.,(2001) Annu. Rev. Biochem.,70,313-340;Moore,M.et al.,(2003) Brief Funct. Genomic. Proteomic.,1,342-355;およびKlug,A.et al.,(2005) FEBS Lett.,579,892-894)。エンジニアリングされたジンクフィンガー蛋白質(ZFP)などは、遺伝子調節およびゲノム修正のためのツールとして重大な潜在力を持っているが、これはそれらが如何なるゲノム内で如何なる実質的に所望の位置に機能的なドメインなどを標的化するのに使用され得るためである。ジンクフィンガー蛋白質などは、DNA塩基配列を認識する時に持つアミノ酸残基などと塩基などとの間の塩基特異的相互作用およびモジュール化的な構造的特徴のために、新しいDNA結合特異性を有する蛋白質をデザインするための様々なフレームワークを提供する。
【0004】
効果的なジンクフィンガーヌクレアーゼを作るためには、遺伝体上の所望の標的DNA配列を認識するジンクフィンガー蛋白質を作ることが必要であり、このために、位置選択的突然変異(SMD)を用いて各対応アミノ酸を1つずつ変える方法またはファージディスプレイのような大規模スケールでスクリーニングする方法など生体外と生体内で様々なジンクフィンガー選択方法などが使用されている(米国特許5,789,538号、5,925,523号、6,007,988号、6,013,453号および6,200,759号;国際公開特許WO95/19431号、WO96/06166号、WO98/53057号、WO98/54311号、WO00/27878号、WO01/60970号、WO01/88197号およびWO02/099084号参考)。しかし、選択を基盤とした方法などは、非常に多くの労働と時間が要求され、訓練された実験者を必要とする。ZFNを作る他の方法は、一般的なDNA組換え技術を使用してすでに良く知られているジンクフィンガーモジュールなどを組み立てて所望の特異性を有するジンクフィンガーアレイを作る方法である。それぞれのジンクフィンガーモジュールは、DNAの3bp(塩基対)を認識し、適切に互いに結合される時に引き起こされるジンクフィンガーアレイなどは、さらに長いDNA配列モチーフなどを特異的に認識することができる。このような方法を使用すると、容易に塩基配列を特異的に認識するジンクフィンガーヌクレアーゼを作ることができるだろう。一部の研究グループなどは、マルチ−フィンガーアレイなどの製作のためのジンクフィンガーモジュールのそれぞれ詳細化され、特性化された別の成果物などを有している。第1には、スクリップス研究所(The Scripps Research Institute)のバルバス研究室(Barbas laboratory)のバルバスモジュールであって、これらのジンクフィンガーモジュールなどは、ファージディスプレイおよび理論的なデザイン方法の組み合わせを使用して開発されたものである。このモジュールなどは、すべてのGNNトリプレット、大部分のANNおよびCNNトリプレット、およびいくつかのTNNトリプレットの認識に有用である。このようなバルバスモジュールなどは、それぞれのジンクフィンガーモジュールなどが実質的に完全な位置上の独立性を有するという仮定下で開発された。すなわち、それらの認識能力は、アレイ内でのそれらの位置または隣接するジンクフィンガーなどの特性などによって大きく影響されないという仮定である。第2に、サンガモバイオサイエンス社(Sangamo BioScienceInc.)でデザインしたサンガモモジュールは、すべてのGNNトリプレットおよびさらに小さい数の非−GNN’トリプレットに対して使用可能である。サンガモモジュールなどは、3−フィンガーアレイ内のモジュールなどの位置は、それらの認識特性に影響を及ぼすことができるという仮定下で開発された。3−フィンガーアレイ内での3つの位置のそれぞれは、そのような位置で与えられたトリプレットのために開発された別個のジンクフィンガーモジュールを有する。しかし、このようなモジュールなどは、自然発生的なモジュールでない人工的なモジュールであって、このようなモジュールを使用してジンクフィンガーヌクレアーゼを製造するのは容易でなく、実際使用時にその効率が非常に低いという問題点がある。特に、これらのモジュールは、GNN−反復配列を標的化することを特徴とする。しかし、このような配列などは、関心のある与えられた遺伝子内でほとんど希薄に生じる問題点がある。例えば、3−フィンガージンクフィンガーヌクレアーゼ対は、平均的に4096bp(46)配列内で一度だけ生じるGNN−反復DNA配列である、5’−NNCNNCNNCNNNNNNGNNGNNGNN−3’を標的化するようにデザインされ得る。4−フィンガージンクヌクレアーゼに対するGNN−反復サイトは、さらに珍しくて、65,536bp(=48)配列で一度だけ生じる。従って、そのようなサイトは、所望の数多くの遺伝子内に現れないこともある。このような見地から、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease)は、大部分がGNN−反復配列を認識しなくて作用するという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,789,538号
【特許文献2】米国特許5,925,523号
【特許文献3】米国特許6,007,988号
【特許文献4】米国特許6,013,453号
【特許文献5】米国特許6,200,759号
【特許文献6】国際公開特許WO95/19431号
【特許文献7】WO96/06166号
【特許文献8】WO98/53057号
【特許文献9】WO98/54311号
【特許文献10】WO00/27878号
【特許文献11】WO01/60970号
【特許文献12】WO01/88197号
【特許文献13】WO02/099084号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wolfe,S.A.et al.,(2000) Annu.Rev.Biophys.Biomol. Struct.,29,183-212
【非特許文献2】Pabo,C.O. et al.,(2001) Annu. Rev. Biochem.,70,313-340
【非特許文献3】Moore,M.et al.,(2003) Brief Funct. Genomic. Proteomic.,1,342-355
【非特許文献4】Klug,A.et al.,(2005) FEBS Lett.,579,892-894)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、ジンクフィンガードメインおよび切断ドメインを含む融合蛋白質であって、前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうち、1つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識して切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて関心領域内の細胞染色質を切断する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を交替する方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を変更する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いた遺伝子治療方法を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、迅速に製造されることができ、ゲノム配列の標的化された切断および変更に非常に有用であるため、遺伝子のノックアウトなどを介した遺伝子治療などに適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このように、標的化されたゲノムの編集を可能にするジンクフィンガーヌクレアーゼ技術を広範囲に適用することは、機能的なジンクフィンガーヌクレアーゼの合成のための便利で、迅速且つ公衆に利用可能な方法の不在によって妨害を受けている。従って、本発明者らは、ヒト細胞内のいくつかの異なるゲノム性サイトのDNA配列を修正できるジンクフィンガーヌクレアーゼを作るために鋭意研究した結果、公衆に使用可能なジンクフィンガーなどを使用する、非常に効率的で、実施するのに容易なモジュール性組み立て方法を使用してジンクフィンガーヌクレアーゼを製造することができ、組み立てられたジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてゲノムで標的化された切断と変更などが従来の方法に比べてより容易であることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造のために使用されたジンクフィンガーの起源、アミノ酸配列および標的下部部位(subsite)などを示す。
【図2】図2は、本発明者らが合成したジンクフィンガーヌクレアーゼの中で代表的な一対のアミノ酸配列を示す;細胞内発現を確認するために含んだHA標識配列と核内伝達信号配列に下線をひいて示し、標的塩基配列と結合すると予想されるジンクフィンガーのαヘリックス部分を太く示した。
【図3】図3は、CCR5コード部位内のZFN標的部位に対する図式的な概要である;ZFN標的部位は、ボックスで示し、数字は、開始コドンに比例してZFN標的部位の位置を示す。網状性ボックスは、Δ32変異の位置を示す。
【図4】図4は、インビトロ転写および翻訳システムを介して生産されたZFNsを使用して行われたDNA切断分析を示した概要図である。
【図5】図5は、アガロースゲル電気泳動を介したDNA切断分析の結果を示した写真である。
【図6】図6は、ZFN活性評価で細胞−基盤単一鎖アニーリング(SSA)を使用することに対する図式的な概要である;ZFN発現プラスミドは、非活性状態、部分的に複製され、破裂した状態であるルシフェラーゼ遺伝子を含んでいるゲノムを有するHEK293細胞に形質導入され、もし、ZFNsが細胞内標的部位を切断すると、DNAはSSAメカニズムによって効果的に復旧され、機能的ルシフェラーゼ遺伝子は回復されるようになる。
【図7】図7は、ZFN活性評価で細胞−基盤単一鎖アニーリング(SSA)を使用することに対する図式的な概要である;細胞のルシフェラーゼ活性は、様々なZFNsが発現されたことを意味する。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。I−SceIの認識部位を含んでいる標的塩基は、陽性対照群として使用された。それぞれのZFN対の活性は、I−SceI対照群に対する百分率で示した。ZFN対とそれらの構成単量体などを示した。追加的な研究に使用したZFN対は、三角形で表記した。平均値と標準偏差(エラーバー)は、少なくとも3回の独立的な実験を介して求めたものである。
【図8】図8は、T7E1分析法を使用してヒト細胞内ZFN−媒介性ゲノム編集の不一致探知に対する図式的な概要である;ゲノム性DNAは、ZFNsをエンコードするプラスミドが形質導入された細胞から精製した。ZFN認識部位を含むDNA断片などは、PCR−増幅し、DNA増幅産物は、熱を加えて溶かして、アニーリングした。もし、DNA増幅産物などが野生型と変異されたDNA配列の両方とも含んでいると、ヘテロ二重鎖が形成されるだろう。T7E1は、ヘテロ二重鎖を認識して切断する。しかし、ホモ二重鎖は切断できない。DNA断片などは、アガロースゲル電気泳動によって評価した。
【図9】図9は、T7E1分析によって明らかになったZFN−媒介性ゲノムの変形を示す;ZFN対は、アガロースゲルの上段に示されている。収得されたDNAバンドの予想される位置は、ゲルパネルの左側に矢印(切られなかった状態)と角括弧(切られた状態)で示した。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。サンガモのCCR5−標的化するZFN対(サンガモCCR5)を本分析に含んだ。
【図10】図10は、Z836ZFN対によって標的されるゲノムの部位に対するDNA配列を示す。ZFN認識要素などは、下線で示した。欠失は点線で示し、挿入された塩基などは、小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。wtは、野生型を示す。
【図11】図11は、Z30およびZ266ZFN対によって標的化されるゲノム部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。
【図12】図12は、Z360およびZ411ZFN対によって標的化されるゲノム部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。
【図13】図13は、Z426およびZ430ZFN対の標的部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。1つ以上の変異が探知された場合、その変異の発生する数は、括弧内に示した。
【図14】図14は、Z891ZFN対の標的部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。1つ以上の変異が探知された場合、その変異の発生する数は、括弧内に示した。
【図15】図15は、様々なZFN−標的部位の変異類型を示す;それぞれのZFN対に対する欠失、挿入、そして、複合的な変異の数を確認し、それらの変異発生数を百分率で示した。
【図16】図16は、野生型と強制的ヘテロ二量体ZFNsに対する時間進行による分析結果である。T7E1不一致探知分析は、細胞から分離したDNAを異なる種類のFokIヌクレアーゼドメインで色々な時間帯で処理した(WT、野生型ヌクレアーゼドメイン;RR/DDまたはKK/EL、強制的ヘテロ二量体ヌクレアーゼドメインなど)。
【図17】図17は、53BP1染色の結果である;野生型と強制的ヘテロ二量体Z891ZFN対いずれもHEK293T/17細胞内に形質導入させ、形質導入した後2日目に細胞内の53BP1フォーカスなど(foci)を免疫蛍光によって観察した。エトポシド(1μM)は、陽性対照群として使用した。
【図18】図18は、図16の結果をプロットしたものである;53BP1フォーカス数に対する分布をプロットしたものである。最小100個の細胞などを2回独立的に測定して、各処理について分析した。
【図19】図19は、突然変異クローンなどのDNA配列を示す;RR/DDZFN二量体を処理した細胞などから制限的希釈によって7個の突然変異クローンなどを分離した。これらのクローン細胞内標的部位のDNA配列を示した。欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。クローン1aと1bは、1つのクローン内の両対立性形質変異の結果から生じたDNA配列を示す。
【図20】図20は、CCR2部位でT7E1分析を示す。ZFN対で処理した細胞からCCR2コード部位に対応するPCR−増幅DNA(ゲルパネルの上部に表示されている)を分析した。CCR2部位で変形を生じたZFN対は“+”で示した。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。サンガモのCCR5−標的化ZFN対(サンガモCCR5)が本分析に含まれている。
【図21】図21は、CCR2部分(locus)でZFNsの脱標的(off-target)効果およびCCR5とCCR2部分でZFN認識要素など(recognition elements)を示す。ZFN対はDNA配列の左側に示した。CCR5とCCR2部分の間で一致する塩基の数は括弧内に示し、不一致する塩基などは太い小文字で示した。ZFN認識要素などのハーフ−部位(half-site)は下線で示した。
【図22】図22は、モジュール交換実験のために使用されたジンクフィンガーなどを示す。
【図23】図23は、新しいZFNなどが同一の配列を認識する本発明のZFNなどを機能的に代替できるどうかを試験するためのモジュール交換分析において、細胞−基盤SSAシステムの結果を示す;“BR4”のように“B”で始まる名称のZFN単量体などは、ただバルバスモジュールのみで構成されているものであり、“SR4”のように“S”で始まる名称のZFN単量体などは、サンガモモジュールのみで構成されたものである。細胞のルシフェラーゼ活性は、様々なZFNなどの発現を示す。p3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用した。I−SceIの認識部位を含む標的配列は、陽性対照群として使用した。それぞれのZFN対の活性は、I−SceI対照群に対する百分率として評価した。ZFN対とそれらの構成単量体などを示した。平均値と標準偏差(エラーバー)は、少なくとも3回の独立的な実験を介して求めたものである。
【図24】図24は、新しいZFNsが同一の配列を認識する本発明のZFNsを機能的に代替できるどうかを試験するためのモジュール交換分析において、T7E1分析を介してZFN−媒介性ゲノム変形を示す;ZFN対とそれらの構成単量体などは、アガロースゲルの上段に表示されている。陽性遺伝子標的化効果を有するZFN対は、“+”で示した。
【図25】図25は、ZFN分析に対する要約である;それぞれの分析で陽性結果を有するZFN対の数または標的部位の数が示されている。
【図26】図26は、異なる類型のZFNsの成功率を示す。成功的なZFN対または標的部位は、T7E1不一致探知分析で陽性結果を有するものとして定義される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一つの態様として、本発明は、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質であって、前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうち、2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識および切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に関するものである。
【0015】
本発明のジンクフィンガードメインは、1つ以上のジンクフィンガーモジュールを介して配列特異性を有する方式でヌクレオチドと結合する蛋白質をいう。ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含む。ジンクフィンガードメインは、たびたびジンクフィンガー蛋白質またはZFPで簡略に表示されたりもする。
【0016】
本発明のジンクフィンガーモジュールとは、亜鉛イオンの配位結合を介して安定化される構造を有するドメインの内部にあるアミノ酸配列領域をいう。本発明のジンクフィンガーモジュールは、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールと同一の配列を有したり、野生型配列のうち、任意のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変形された配列を有する。前記野生型ジンクフィンガーモジュールは、任意の真核細胞、例えば、真菌細胞(例えば、酵母)、植物または動物細胞(例えば、ヒトやマウスのような哺乳動物細胞)から由来することができる。 好ましくは、本発明のジンクフィンガーモジュールは、ヒトなどから由来した図1に示されたアミノ酸配列を含む。
【0017】
ジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガードメインは、それぞれ3bp(塩基対)の下部部位を認識する3つ以上のジンクフィンガーモジュールが直列に連結されている。それぞれのモジュールなどは、独立的にDNA配列を認識するから、3つまたは4つのモジュールから構成されたジンクフィンガードメインは、9または12bp配列に結合することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体として作用し、従って、3−4個のモジュールから構成されたジンクフィンガーヌクレアーゼ1対は、18−24bp配列を特異的に認識する。一つの具体的な例として、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガードメインが3つまたは4つ、好ましくは4つのジンクフィンガーモジュールから構成されている。また、一つの好ましい態様として、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼに含まれているジンクフィンガードメインは、好ましくはジンクフィンガーモジュールを含む。具体的な実施例において、3つのジンクフィンガーモジュールを含むジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的化された切断成功率が9.1%であるのに反して4つのジンクフィンガーモジュールを含むジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的化された切断成功率が26%である。
【0018】
ジンクフィンガードメインは、予め決まったヌクレオチド配列に結合するように加工され得る。ジンクフィンガー蛋白質操作方法の非制限的な例としては、設計(design)および選択である。設計されたジンクフィンガー蛋白質は、自然的に発生しない蛋白質であり、その設計および組成は、主に合理的な基準に応じて出る。設計のための合理的な基準としては、置換法則の適用および現存するZFP設計および結合データに関するデータベースを情報処理するコンピュータアルゴリズムを含む(大韓民国登録特許第0766952号参照)。選択されたジンクフィンガー蛋白質は、自然状態で発見されない蛋白質であり、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたは混成化選択のような実験過程を介して得られた結果物である。
【0019】
前記加工されたジンクフィンガードメインを構成するジンクフィンガーモジュールのうち、最小限2つまたはそれ以上は、野生型ジンクフィンガーモジュールであるのが好ましく、より好ましくは、3つまたはそれ以上の野生型ジンクフィンガーモジュールを含む。一つの具体例において、本発明者らは、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを従来のファージディスプレイまたは点突然変異によって操作され、分離されたジンクフィンガーヌクレアーゼから形成されたものなどに置換するモジュール交換分析を行った。その結果、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼがSSAシステムおよびT7E1分析で明確な活性を示すことを発見した。従って、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、自然的に発生された野生型ジンクフィンガーモジュールを含むのが好ましい。本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたジンクフィンガードメインを含むのがより好ましい。また、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、従来の操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼとは異なり、GNN−反復配列を標的化しない。具体例において、下記の表2に記載されたように、CCR5配列を成功的に変形させた16個のジンクフィンガーヌクレアーゼなどのうちから2つのジンクフィンガーヌクレアーゼ(Z430R3およびZ30F4)がGNNモチーフのない認識−部位(ハーフ−サイト(half-site))要素を認識し、12個のジンクフィンガーヌクレアーゼがGNNおよび非GNNモチーフなどの両方を含む部位を認識する反面、単に2つのジンクフィンガーヌクレアーゼ(Z426F3およびZ360R4)だけがGNN−反復部位を認識する。GNN−反復配列でない部位を標的化できる能力は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術の有用性を大きく広めてあげる。
【0020】
本発明の用語“切断”は、DNA分子の共有結合基本骨格を切断することを意味し、“切断ドメイン”は、DNA切断のための酵素活性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0021】
前記切断ドメインは、エンドまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを得ることができるエンドヌクレアーゼの非制限的な例としては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミング(homing)エンドヌクレアーゼがある。このような酵素などは、切断ドメインの供給源として使用され得る。また、単一鎖切断および二重鎖切断の両方が可能であり、二重鎖切断は、切断ドメインの供給源に応じて発生することができる。これに係って、二重鎖切断活性を有する切断ドメインを切断ハーフドメインとして使用され得る。但し、本明細書では切断ドメインを単一鎖切断および二重鎖切断に対して、混用して使用することができる。
【0022】
切断ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその一部分から由来することができる。一般的に、もし、融合蛋白質が二重鎖切断活性を有する切断ハーフドメインから構成されると、切断のために2つの融合蛋白質が必要である。2つの切断ハーフドメインは、同一のエンドヌクレアーゼ(または、その機能的な断片など)から由来することができ、または各切断ハーフドメインは、互いに異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的な断片など)から由来することができる。さらに、各標的部位に2つの融合蛋白質が結合すると、切断ハーフドメインなどの相互間の空間的配向は、例えば、二量体化によって切断ハーフドメインなどが機能的な切断ドメインを形成するようにする。従って、すべての整数値のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2つの標的部位の間に介在することができる(例えば、2〜50ヌクレオチドまたはそれ以上)。
【0023】
一般的に、それぞれ切断ハーフドメインを含む2つの融合蛋白質を使用すると、各融合蛋白質のジンクフィンガー部分が互いに異なるDNA鎖上に逆方向に接触する。すなわち、一対のZFP/切断ハーフドメイン融合の場合、標的配列は、正反対のDNA鎖上に位置し、2つの蛋白質は逆方向に結合する。
【0024】
制限エンドヌクレアーゼは、多くの種(species)に存在し、DNA(認識部位)に配列特異性結合をすることができ、結合部位の近傍でDNAを切断することができる。一部の制限酵素など(例えば、タイプIIs)は、認識部位から離れているDNAを切断して分離可能な結合ドメインと切断ドメインを持つ。例えば、タイプIIs酵素であるFokIは、1つの鎖上の認識部位から9ヌクレオチド離れた位置で、そして、他の一つの鎖上の認識部位から13ヌクレオチド離れた位置でDNAの二重鎖切断の触媒作用をする。従って、一つの具体例においては、融合蛋白質は、少なくとも1つのタイプIIs制限酵素から出た切断ドメイン(または、切断ハーフドメイン)と1つ以上のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0025】
タイプIIs制限酵素の例としては、FokI、AarI、AceIII、AciI、AloI、BaeI、Bbr7I、CdiI、CjePI、EciI、Esp3I、FinI、MboI、sapI、SspD51などがあるが、これに制限されるのではない。より具体的には、ロバーツらの文献[(2003) Nucleic acid Res.31:418-420]を参照する。一つの具体例においては、TypeIIs制限酵素であるFokIからDNA結合ドメインを分離して得たFokI切断ドメインを切断ドメイン(または、ハーフ切断ドメイン)として使用した。
【0026】
本発明の融合蛋白質は、異なる2つ以上のポリペプチドをペプチド結合で連結して形成させたポリペプチドを意味する。前記ポリペプチドは、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含み、ヌクレオチド配列内の任意の標的部位を切断することができる。本発明において、融合蛋白質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはZFNと混用され得る。
【0027】
融合蛋白質(または、融合蛋白質暗号化ポリヌクレオチド)を設計および製作する方法は、当該技術分野で広く知られている。一つの具体例において、ジンクフィンガードメインと切断ドメインを含む融合蛋白質を暗号化するポリヌクレオチドを製作した。前記ポリヌクレオチドは、ベクターに挿入されることができ、挿入されたベクターは、細胞内に導入され得る。一般的に、融合蛋白質(例えば、ZFP−FokI融合)の構成要素などは、ジンクフィンガードメインが融合蛋白質のアミノ末端(N末端)の近傍に、切断ハーフドメインがカルボキシ末端(C末端)の近傍に位置するように配列されている。これは、FokI制限酵素から由来したもののように、天然型切断ドメイン二量体にある切断ドメインの相対的位置と似ているが、この時、DNA結合ドメインはアミノ末端の近傍に位置し、切断ハーフドメインはカルボキシ末端の近傍に位置する。
【0028】
本発明において、“配列”とは、DNAまたはRNAであり得る様々な長さのヌクレオチド配列を意味する;直線形、円形または枝形であることができ、単一鎖または二重鎖であり得る。
【0029】
本発明において、“結合”とは、蛋白質と核酸どの間のような高分子間の配列特異的または非共有相互作用を意味する。相互作用が全体的に配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成要素などがDNA骨格のリン酸残基と接触することのように、配列特異的である必要はない。このような相互作用は、一般的に解離定数(Kd)値が10−6M−1以下であるのが特徴である。また、“親和度”とは、結合力を意味し、結合親和度の増加は、解離定数(Kd)の減少と関連している。
【0030】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを1対以上含み、標的化関心領域内でDNA配列の切断、交替または変更のための組換えキットに関するものである。
【0031】
一般的に、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、二量体として作用するから、1つのDNA部位を標的化するためには、2つのZFN単量体を用意するのが必要である。ZFN対を構成する2つのZFN単量体のそれぞれは、5〜6bpのスペーサー配列によって分離されている2つの9または12bpの2つのハーフ部位のうち、1つに結合する。1つのハーフ部位に対して同一または類似のDNA結合特異性を有した異なるセットのZFなどから構成された多重単量体ZFNを製作することができる。1つの具体例において、同一または異なるジンクフィンガードメインから構成されたZFN対が表2に示されているが、これに限定されるのではない。前記単一部位は、様々な組み合わせのZFN対によって標的化され得る。
【0032】
本発明において使用された用語“交替”とは、1つのヌクレオチド配列が他のヌクレオチド配列に交替されること(すなわち、情報を持ったセンス配列の交替)を意味し、必ず1つのポリヌクレオチドが他のポリヌクレオチドに化学的または物理的に交替されることを意味するのではない。本発明において使用された用語“変更”とは、突然変異または非相同末端連結によるDNA配列内の変化を意味する。前記の突然変異は、点突然変異、置換、欠失、挿入などを含む。前記交替または変更は、不完全な遺伝情報を有するヌクレオチドを完全な遺伝的情報を有するヌクレオチドに交替または変更させ得る。また、このような突然変異によってヌクレオチド配列にエンコードされたペプチドが機能的に不活性化することもできる。このような方式によって、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、遺伝子治療法手段として使用され得る。一つの具体例において、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)が標的細胞を感染するのに使用される主要共同受容体であるCCR蛋白質をコードするケモカイン(C-C motif)受容体5(CCR5)遺伝子をZFNが欠失させ得ることを確認した。
【0033】
例えば、細胞、核酸、蛋白質またはベクターに対して言及しながら使用される時、“組換え”は、細胞、核酸、蛋白質またはベクターが異種性核酸または蛋白質の導入、または天然核酸または蛋白質の変更によって変形されたり、または細胞がそのように変形された細胞から由来されたことをいう。従って、例えば、組換え細胞は、天然(自然発生)形の細胞内で発見されない遺伝子を発現したり、または、正常的または非正常的に発現される2次コピーの天然遺伝子を発現したり、または全く発現しない。
【0034】
他の一つの態様として、本発明は、(a)関心領域内のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)前記配列に結合するジンクフィンガーモジュールを選択し、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含みながら、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであるジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階;(c)前記工学的に製造されたジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法に関するものである。
【0035】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを製造する方法において、前記(a)段階は、関心領域内のヌクレオチド配列を選択する段階である。前記ヌクレオチド配列は、細胞の内または外に存在することができ、その長さは制限がない。また、前記ヌクレオチド配列は、線形または円形、単一鎖または二重鎖の形態であり得る。
【0036】
前記(b)段階は、関心領域内のヌクレオチド配列と結合するジンクフィンガーモジュールなどを選択し、ジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階である。前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、2つ以上のジンクフィンガーモジュールは、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来するのが好ましく、より好ましくは、図1に示されたジンクフィンガーモジュールから由来し、より好ましくは、図2に示されたジンクフィンガーモジュールから由来する。
【0037】
前記(c)段階は、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階である。前記発現は、生体内または生体外の発現を含む。生体内の発現は、当該分野で知られた方法を用いて行うことができ、例えば、ベクターを用いる方法である。前記ベクターの例として、プラスミドベクター、コズミドベクター、バクテリオファージベクターおよびウイルスベクターなどがあるが、これに制限されない。適した発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーのような発現調節要素の他にも分泌シグナル配列などを目的に応じて含み、様々に製造され得る。
【0038】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて関心領域内の細胞染色質を切断する方法に関するものである。
【0039】
一つの具体的態様として、本発明は(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)第1のヌクレオチド配列と結合する本発明の第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;(c)前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現させて前記細胞内へ導入させる段階;および(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合して前記関心領域内で細胞染色質を切断する段階を含む関心領域内の細胞染色質切断方法である。
【0040】
本発明の前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものである。
【0041】
他の一つの具体的な態様として、本発明は、(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)第1のヌクレオチド配列と結合する本発明の第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;(c)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;および(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合させて前記関心領域内の細胞染色質を切断させる段階;(e)第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む本発明の第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択し、前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;(f)(細胞内で発現されたり、導入された)第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが結合する第1のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合させる段階を含む関心領域内の細胞染色質切断方法である。
【0042】
本発明において“染色質”は、細胞のゲノムを構成する核蛋白質の構造を意味する。細胞の染色質は、核酸、主にDNA、そして、ヒストンおよび非ヒストン系染色体蛋白質を含んだ蛋白質を含む。細胞染色質は、原核細胞、真核細胞(例えば、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、霊長類細胞およびヒト細胞)を含むすべての形態の細胞内に存在することができる。大部分の真核細胞染色質は、ヌクレオソームの形態で存在するが、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3、H4のそれぞれ2つで構成された八量体と結合された略150塩基対のDNAを含み、(有機体に応じて長さが様々な)リンカーDNAがヌクレオソームコアの間に拡張されている。ヒストンHI分子は、一般的にリンカーDNAと結合されている。本発明の目的上、用語“染色質”は、すべての形態の細胞核蛋白質、原核および真核いずれも含む意味として使用される。細胞の染色質は、染色体およびエピソームの染色質のすべてを含む。前記“染色体”は、細胞のゲノムの全部または部分を含む染色質複合体をいう。前記“エピソーム”は、複製性核酸、核蛋白質複合体または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造体である。例としては、プラスミドおよびウイルス性ゲノムがある。
【0043】
他の一つの具体的な態様として、本発明は、(a)関心領域を選択する段階;(b)前記関心領域内の第1のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを提供する段階;(c)前記第1の配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(d)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で同時または、分離して発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガドメインは、前記第1のヌクレオチド配列と結合し、前記第2のジンクフィンガードメインは、前記第2のヌクレオチド配列と結合し、前記結合によって前記ヌクレオチド切断ドメインを位置させて関心領域内の前記細胞染色質を切断させる、関心領域内の細胞染色質切断方法に関するものである。
【0044】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを用いた標的化された切断の場合、ジンクフィンガードメインの結合部位は、切断部位を含むことができたり、結合部位の端が切断部位から1〜50ヌクレオチド離れて位置することができる。切断部位をマッピングする方法は、当該技術分野で広く知られている。
【0045】
通常DNAが切断される部位は、2つの融合蛋白質の結合部位の間に存在する。DNA二重鎖の切断は、2つの単一鎖切断または1、2、3、4、5、6または、それ以上のヌクレオチドなどがオフセットされた“ニック”の結果物である。例えば、天然型FokI制限酵素による二重鎖DNAの切断は、4つのヌクレオチドがオフセットされた単一鎖切断の結果物である。従って、切断は、必ず各DNA鎖上に正確な反対側で生じる必要はない。さらに、融合蛋白質の構造と標的部位との間の距離は、切断が1つのヌクレオチド対の近傍で生じるかどうか、または色々な部位で生じるかどうかに影響を及ぼすことができる。
【0046】
本発明において、“標的部位”は、ジンクフィンガードメインによって認識される核酸配列である。単一標的部位は、一般的に約6または約12塩基対を有する。一般的に、3つのジンクフィンガーモジュールを有するジンクフィンガー蛋白質は、2つの隣接した6〜10塩基対の標的部位を認識し、4つのジンクフィンガーモジュールを有するジンクフィンガー蛋白質は、2つの隣接した9〜12塩基対の標的部位を認識する。用語“隣接した標的部位”は、0〜約5塩基対まで離れている非重複標的部位を意味する。
【0047】
前述したように、融合蛋白質は、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド形態で導入され得る。例えば、それぞれ前述したポリペプチドなどのうちの1つを暗号化する配列を含む2つのポリヌクレオチドが細胞内に導入されることができ、切断は、標的配列の近傍で生じる。または、2つのポリペプチドすべてを暗号化する配列を含む1つのポリヌクレオチドが細胞内に導入され得る。ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはDNAおよび/またはRNAの任意の変異体または類似体であり得る。
【0048】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を交替する方法に関するものである。
【0049】
一つの具体的な態様として、本発明は、細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列交替方法であって、(a)関心領域内で9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階;(d)前記細胞を前記第1のヌクレオチド配列と相同性があるが同一ではない第4のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに接触させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質が関心領域内で切断され、これによって前記第1のヌクレオチド配列と前記第4のヌクレオチド配列との間の相同組換えを容易にして前記第1のヌクレオチド配列を前記第4のヌクレオチド配列に交替することを特徴とする方法に関するものである。
【0050】
本発明は、標的化された組換え効率を高め、非特異的な挿入頻度を減少させることを特徴とする標的化された配列変更方法を提供する。細胞DNAの二重鎖切断は、切断部位の近傍で数千倍程度の相同組換えを刺激するため、このような標的化された切断は、実質的にゲノムのどんな部位でも(相同組換えを介して)配列の変換または置換を可能にする。
【0051】
選択されたゲノム配列の標的化された置換は、融合蛋白質(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)だけでなく、ドナー配列を必要とする。ドナー配列は、融合蛋白質(など)の発現以前、同時または以後のいつでも細胞内に導入され得る。ドナー配列は、通常置換するゲノム配列と同一ではないことが明確である。例えば、相同組換えができる十分な相同性を有している限り、ドナーポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列に対して1つの塩基変化、挿入、欠乏、逆位、または再配列のうちから1つまたはそれ以上を含むことができる。また、ドナー配列は、類似する2つの相同性に接している非相同配列を含むことができる。さらに、ドナー配列は、細胞染色質の関心領域と相同性のない配列を含むことができる。
【0052】
また、前記の方法において、第1のヌクレオチド配列は、遺伝子内に突然変異を含む配列が好ましいかもしれない。この場合、ドナー配列、特に、第4のヌクレオチド配列は、前記遺伝子の野生型配列であるのが好ましい。前記の突然変異は、点突然変異、置換、欠失または挿入などであり得る。
【0053】
また、他の一つの具体的な態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を変更する方法を提供する。
【0054】
具体的に、本発明は、細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列変更方法であって、(a)関心領域内の9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質を関心領域内で切断させ、前記切断部位で前記第1のヌクレオチド配列を変更させることを特徴とする方法に関するものである。
【0055】
本発明において、1つまたは2つ以上のZFPまたはZFP融合蛋白質を暗号化する核酸は、複製および発現のために原核細胞または真核細胞へ形質転換させる発現ベクターにクローニングされ得る。ベクターは、例えば、プラスミド、シャトルベクター、昆虫ベクターなどの真核ベクターまたは原核ベクターを含む。ZFPを暗号化する核酸は、また発現ベクターにクローニングされて植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳類細胞またはヒト細胞、菌類細胞、細菌細胞または原生動物細胞に導入され得る。
【0056】
発現ベクターは、宿主細胞で特定の核酸の転写、および選択的に宿主細胞で発現ベクターの統合または複製が可能にする一連の特性化された核酸要素などであって、組換えまたは合成を介して生成された核酸作製物である。発現ベクターは、ウイルスまたは非−ウイルス起源のプラスミド、ウイルスまたは、核酸断片の部分であり得る。一般的に、発現ベクターは、“発現カセット”を含み、これはプロモーターに作動可能に連結され、転写される核酸を含む。また、発現ベクター用語は、プロモーターに作動可能に連結されたネイキッド(naked)DNAを含む。
【0057】
クローンされた遺伝子または核酸を発現させるために、ZFPまたはZFP融合蛋白質を暗号化する配列は、一般的に転写を誘導するプロモーターを有したベクターにサブクローニングされる。適した細菌性プロモーターまたは原核プロモーターは、当該分野で広く知られている。
【0058】
用語“作動可能に連結された”は、核酸発現調節配列(プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合を意味する。
【0059】
本発明において、“宿主細胞”は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または選択的にジンクフィンガーヌクレアーゼをコード化する発現ベクターまたは核酸を含有する細胞を意味する。宿主細胞は、一般的に発現ベクターの複製または発現をサポートする。宿主細胞は、エシェリキア・コリのような原核細胞、または真核細胞、例えば、酵母、真菌、原生動物、高等植物、昆虫細胞、または両生類細胞、またはCHO、HeLa293、COS−1、HEKのような哺乳類細胞、例えば、培養された細胞(試験管内)、移植片および1次培養物(試験管内および生体外)、および生体内細胞であり得る。
【0060】
“核酸”は、単一または二重鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそれらの重合体を意味する。この用語は、公知のヌクレオチド類似体または、変形された骨格残基または、結合を含有する核酸を含み、これは合成的、自然発生的、および非−自然発生的なことがあり、基準核酸と類似する結合特性を有する。このような類似体の例は、制限なく、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)などを含む。
【0061】
用語“ポリペプチド”、“ペプチド”および“蛋白質”は、本明細書において、相互交換されて使用され、アミノ酸残基の重合体を意味する。また、この用語などは、自然発生アミノ酸重合体および非−自然発生アミノ酸重合体だけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が相応する自然発生アミノ酸の人工化学的擬態体であるアミノ酸重合体にも適用する。
【0062】
用語“アミノ酸”は、自然発生および合成アミノ酸だけでなく、自然発生アミノ酸と類似する方式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬態体を意味する。 自然発生アミノ酸は、遺伝コードによってコード化されるものなどだけでなく、後で変形されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンを含む。アミノ酸類似体は、自然発生アミノ酸と基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されたα−炭素が同一の化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を含む。そのようなアミノ酸類似体は、変形されたR基(例えば、ノルロイシン)または、変形されたペプチド骨格を有するが、自然発生アミノ酸と同一の基本的な化学構造を維持する。アミノ酸擬態体は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を持つが、自然発生アミノ酸と類似する方式で機能する化学的化合物を意味する。
【0063】
本発明において、アミノ酸は、通常的に公知された3−文字記号、またはIUPAC−IUB生化学命名法協約によって推薦された1−文字記号で表現され得る。同様に、ヌクレオチドも通常的に承認された単一の文字コードによって表現され得る。
【0064】
以下、本発明を実施例を介してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例
実施例1:ZFN設計およびZFN−含有プラスミドの製作
3−または、4−フィンガー配列(arrays)をエンコードするDNA断片などは、“Human zinc fingers as building blocks in the construction of artificial transcription factor”(Bae,K.H.et al.Nat Biotechnol 21,275-280(2003))に記載された方法によって組み立てた。これらの3−または、4−フィンガー配列などのうちから様々なDNA結合特異性を有した54個のジンクフィンガーモジュール(以下、ZFモジュールという)を選択した。選択されたZFモジュールおよびこのアミノ酸配列を図1および図2に示した。選択された54個のZFモジュールのうち、31個のZFモジュールは、ヒトゲノムにあるDNA配列から由来したものであり、2つのZFモジュールは、ショウジョウバエ(Drosophila)ゲノムにあるDNA配列から由来したものである(図1)。前記のヒトおよびショウジョウバエから由来したZFモジュールは、トルゼン(ToolGen)モジュールと便宜上、称する。その他の21個のZFモジュールは、ファージディスプレイ技術を使用したZF変異体などのライブラリー(バルバスモジュール)から選択したり、部位特異的突然変異技術によって製作された(サンガモモジュール)。
【0065】
次に、マルチ−フィンガーZFNの設計のために、トルゼンで開発したコンピュータアルゴリズムを使用してヒトケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(CCR5)コード部位のDNA配列にある可能性のあるZFN標的部位を探索した。その探索結果に基づいて、本発明者らは前記54個のZFモジュールを組み合わせた208個のジンクフィンガー蛋白質単量体を合成し、代表的なZFN対のアミノ酸配列を図2に示した。総体的に、これら315個のZFN対でCCR5遺伝子内33個の部位などを標的化しようとした(図3参照)。
【0066】
3または4つのZFモジュールから構成されたジンクフィンガードメインをフラボバクテリウム・オケアノコイテス(Flavobacterium okeanokoites)ゲノムDNAから由来したFokIエンドヌクレアーゼドメインに統合させ、統合された配列をpcDNA3.0プラスミド(インビトロジェン)の改造されたバージョンであるp3クローニングベクタープラスミド内にクローニングした。
【0067】
実施例2:ZFN活性の試験管内(in vitro)および生体内(invivo)分析
2−1.試験管内遺伝子消化分析
先ず、試験管内転写と翻訳(in vitro transcription and translation;IVTT)システムを使用してZFNを準備し、CCR5コード配列を含むDNA断片と共に培養して試験管内制限酵素としての活性を分析した。具体的に、TnT-Quick coupled transcription/translation system(プロメガ)を製作者の使用説明書に記述された方法(in vitro transcription and translation;IVTT)を使用して前記実施例1で設計したZFNsを試験管内を転写および翻訳した。簡略に、ZFNsを暗号化するプラスミド(各0.5μl)をTnT Quick master mix(20μl)および1mMメチオニン(0.5μl)に添加した後、30℃で90分間培養した。CCR5コード配列を含む標的プラスミドは、制限酵素を処理して線形化した後、標的プラスミド(1μg)を前記ZFN IVTT分解物(それぞれ1μl)と共にNEBuffer4(New England Biolabs)で37℃、2時間培養させて消化させた。この反応混合物を65℃の熱で不活性化させた後、13,000rpmで遠心分離した。上澄液を使用してアガロースゲル分析を行った。図4は、前記の分析過程を簡略に示したものであり、その実験結果は図5に示されている。
【0068】
図5に示すように、多くのZFN対など(40%)が標的DNAを効果的に部位−特異的に切断した。
【0069】
2−2:単一鎖アニーリングシステム
本発明者らは、哺乳動物細胞基盤の単一鎖アニーリング(SSA)システムを使用してZFNsがヒト細胞で相同組換えを誘導することができるかどうかを試験した。
【0070】
2−2−1.細胞−基盤分析に使用されるレポータープラスミド
ホタルルシフェラーゼ遺伝子の3’−部分を下記表1のプライマー1と2を使用してpGL3−対照群(プロメガ)から増幅し、増幅された産物をpcDNA5/FRT/TO(インビトロジェン)のBamHIとXhoI部位内にクローニングした。下記表1のプライマー3と4を使用して増幅したルシフェラーゼ遺伝子の5’−部分を前記クローニング結果物のプラスミドのHindIIIとBamHI部位内に連続的にクローニングした。I−SceI結合部位を下記表1のプライマー5と6を使用してレポータープラスミドのBamHI部位内にクローニングした。プライマー7と8を使用して増幅したCCR5コード塩基配列をレポータープラスミドのBamHI部位内にクローニングした。
【0071】
【表1】
【0072】
2−2−2.細胞培養およびレポーター細胞株の設立
前記実施例1でZFNコード配列を有するプラスミドで形質転換させたHEK293T/17(ATCC,CRL-11268TM)細胞とFlp−InTMT−REXTM293細胞(インビトロジェン)を100units/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.1mMの非必須アミノ酸と10%ウシ胎児血清(FBS)が添加されたダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)で培養した。破裂したルシフェラーゼ遺伝子をエンコードするレポータープラスミドを製作者説明書に応じてFlp−InTMT−RexTM293細胞内に安定的に統合させた。要約すると、細胞をレポータープラスミドとpOG44、Flp組換え酵素発現ベクターに形質転換させ、ハイグロマイシンBを使用して選別した。破裂したルシフェラーゼ遺伝子を有しているクローン細胞株を確認し、SSA分析に使用した。
【0073】
2−2−3.SSAシステムを使用した細胞−基盤分析
96−ウェルプレート型の各ウェル当り30,000個のレポーター細胞内に各対のZFN発現プラスミド(それぞれ100ng)をリポフェクタミン2000(インビトロジェン)を使用して形質導入させた。48時間後、ドキシサイクリン(1μg/ml)と共に培養してルシフェラーゼ遺伝子を誘導させた。24時間培養後に、細胞を20μlの1X分解緩衝溶液(プロメガ)で溶解させ、2μlの細胞分解物に10μlのルシフェラーゼ分析試薬(プロメガ)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。
【0074】
2−2−4.結果
ZFNsを暗号化したプラスミドをヒト胎児腎臓細胞(HEK細胞)に形質導入させた。CCR5配列の挿入によって破壊されたホタルルシフェラーゼ遺伝子がゲノムに安定に統合され、部分的に複製された。効果的なZFNsは、CCR5配列内に二重鎖切断(DSB)を生じるはずであり、SSAを介して機能的なルシフェラーゼ遺伝子に復旧できるようにする。ZFNsによるDNA切断効率は、ルシフェラーゼ酵素活性によって測定できる。高効率性のメガヌクレアーゼであるI−SceIを陽性対照群として使用した。前記実験過程を図6に示し、その具体的な実験結果を図7で示した。
【0075】
図7に示すように、多くのZFN対などが相当のルシフェラーゼ活性を示した。315個のZFN対のうち、23個対は、陽性対照群I−SceI対比15−57%のルシフェラーゼ活性を示した。15%より低い活性を示したZFN対なども細胞内で二重鎖切断を誘導することができるが、本発明者らは、非常に高い酵素活性を示した23対に重点を置いてさらなる研究を進行した。23個のZFN二量体などは、CCR5と関連のないDNA配列によって破壊された部分的に複製されたルシフェラーゼ遺伝子を有したゲノムを保有する標的無しレポーター細胞を使用した時、明らかなルシフェラーゼ活性を示さなかった(実験結果は、図示せず)。本結果を介してZFN−媒介性DNA復旧は、CCR5−特異性ということを示唆する。
【0076】
実施例3:ZFNなどで処理したHEK293細胞における突然変異の検出
IVTT分析でエンドヌクレアーゼ活性を示し、細胞−基盤分析でルシフェラーゼ活性を誘導させたZFNsが細胞で内因性の標的配列を修正できるかどうかを調査した。ZFNsによって誘導された二重鎖切断は、エラー発生しやすい非相同末端連結(NHEJ)によって復旧され得る。結果産物であるDNAは、たびたびDSB部位の近くに小さい挿入または欠失(挿入−欠失突然変異)を含む。挿入欠失(indel)突然変異などは、増幅されたDNA断片などを不一致−敏感性T7エンドヌクレアーゼI(T7E1)で処理して検出することができた(図8参照)。
【0077】
具体的に、96−ウェルプレートで前−培養したHEK293T/17細胞をZFN対(それぞれ100ng)を暗号化した2つのプラスミドでリポフェクトアミン2000(インビトロジェン)を使用して形質導入させた。培養72時間後、製作者説明書に記載されたようにG−spinTM遺伝体DNA抽出キット(iNtRON BIOTECHNOLOGY)を使用してZFN−形質導入された細胞からゲノムDNAを抽出した。ZFN標的部位を含むゲノムの部分を増幅し、溶かし且つアニーリングしてヘテロ接合DNAを形成した。Z30部位のためにプライマー9と12を使用し、Z266とZ360部位のためにプライマー10と12、Z410、Z426とZ430部位のためにはプライマー11と12、Z836とZ891部位のためのプライマー13と14を使用した(表1参照)。アニーリングされたDNAを37℃で15分間5unitsのT7エンドヌクレアーゼ1(New England BioLabs)で処理した後、2.5倍体積のエタノールを添加して沈殿させた。沈殿されたDNAをアガロースゲル電気泳動で分析した。その結果を図9に示した。
【0078】
図9に示すように、ZFNが処理された細胞から増幅されたDNAの小さい断片などをT7E1で切断した。各ZFN対は、ZFNなどが8個の異なる部位などを標的化する事実を反映する特有の切断パターンを形成した。さらに、結果として出た、DNAバンドなどのサイズは予想したところようであった。T7E1分析で試験した23個のZFN対のうちで、21個のZFN対は予想したサイズを有した検出可能なDNAバンドなどを示した(実験結果は、図示せず)。
【0079】
また、本発明者らは、IVTT分析で明確なエンドヌクレアーゼ活性を示さなかったり、細胞−基盤SSAシステムで意味のあるルシフェラーゼ活性を示さなかった代表的なZFN対を試験するためにT7E1分析を使用したが、IVTT試験は行わなかった。T7E1分析結果、いずれのZFN対も検出可能な水準でDNA突然変異を誘導しなかった。
【0080】
実施例4:ZFNなどによって誘導された突然変異に対するDNA配列の分析
本発明者らは、CCR5遺伝子内の他の部位をそれぞれ標的化する代表的なZFN対8個を選択して付加的な研究を行った(表2参照)。先ず、任意の個別的な8個のZFNなどがホモ二量体として機能できるかどうかを検査した。単独ZFN単量体それぞれの遺伝子標的化活性度をT7E1分析を使用して評価した。予想した通りに、ZFN単量体などのうち、いずれも検出可能なDNA切断を生じなかった(実験結果は、図示せず)。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明者らは、標的化された領域のDNA配列を確認してZFNなどによって誘導された突然変異などを確認し、突然変異発生率を測定した。8個のZFN対のそれぞれに形質導入された細胞などから増幅されたDNAをクローニングし、配列を確認した。様々な挿入および欠失などがDSB部位近傍で観察された(図10〜14参照)。これらの突然変異パターンなどは、エラー発生しやすいNHEJ−連関突然変異の表示として、これらと類似するパターンなどが他の文献によって報告されたことがある(Bibikova, M., Golic, M., Golic, K.G. & Carroll, D. Targeted chromosomal cleavage and mutagenesis in Drosophilausing zinc-finger nucleases. Genetics 161, 1169-1175 (2002); Morton, J., Davis, M.W., Jorgensen, E.M. & Carroll, D. Induction and repair of zinc-finger nuclease-targeted double-strand breaks in Caenorhabditiselegans somatic cells. Proc Natl Acad Sci U S A 103, 16370-16375 (2006); Santiago, Y. et al. Targeted gene knockout in mammalian cells by using engineered zinc-finger nucleases. Proc Natl Acad Sci U S A105, 5809-5814 (2008))。小さい部分の挿入−欠失突然変異および置換に加えて、本発明者らは、2つのZFN対(図11のZ30と、図12のZ360参照)により相対的に大きい挿入など(それぞれ互いに異なる81ヌクレオチド)を観察した。DNA配列分析によれば、挿入された配列などがZFNなどを暗号化したプラスミドから出たことが明らかになった。
【0083】
区別される部位などを標的化する8個のZFN対は、突然変異率が2.4%から17%に示され(図15参照)、この時、突然変異率は、突然変異クローンの数を分析された全体クローンの数で割って計算した。ZFN誘導突然変異の高い効率性は、ただ10個〜100個の単一細胞由来のコロニーなどをスクリーニングしてクローニングされた突然変異細胞を分離できるということを示唆する。
【0084】
実施例5:ZFN処理後のクローン細胞の分離
5−1.本発明のZFNの非標的化(off-target)効果
他の研究者らの先行研究に示されたように(Szczepek, M. et al. Structure-based redesign of the dimerizationinterface reduces the toxicity of zinc-finger nucleases. Nat Biotechnol25, 786-793 (2007); Miller, J.C. et al. An improved zinc-finger nuclease architecture for highly specific genome editing. Nat Biotechnol25, 778-785 (2007))、あるZFNなどは、非標的化(off-target)効果を持って哺乳動物細胞で発現させた時に細胞毒性を示す。しかし、本発明者らは、本発明のZFNなどで形質転換されたHEK293細胞で明確な成長遅延が観察されなかった。しかし、初期に制限された数の単一細胞コロニーなどをスクリーニングした時、ZFN処理によってゲノム配列が修正されたクローン性突然変異細胞などを分離することができなかった。このような事実は、ZFNによって誘導された突然変異を保有した哺乳類細胞の成長が損傷されたことを示す。
【0085】
従って、本発明者らは、ZFN−誘導突然変異を有する哺乳類細胞の成長が損傷されて修正されない細胞に比べて顕著に成長が抑制されるかどうかを調査するために、ZFN形質導入の後、3日、6日、そして9日目になる日に細胞から分離したDNAに対してT7E1分析を行った。その分析のために、Z891対を選択し、図16に示すように、切断されたDNAの断片などは、3日目になる日に比べて6日目に顕著に減少し、ZFNを処理した以後の9日目になる日では、ほとんど検出できなかった。このような結果は、ZFN媒介性突然変異は、細胞成長に細胞毒性効果を持っていることを示唆する。
【0086】
5−2.本発明のZFNヘテロ二量体の非標的化(off-target)効果
ZFNなどの非標的化(off-target)効果は、主に、ヘテロ二量体およびホモ二量体の両方を形成するZFNなどの活性によって引き起こされる。このような効果は、ホモ二量体を形成できず、ヘテロ二量体だけを形成するFokIヌクレアーゼ変形体を使用することによって、顕著に減少させ得た。従って、ZFNsの細胞毒性効果を減少させるために、本発明者らは、いわゆる強制的なへテロ二量体(obligatory heterodimers)を2つの異なる類型で準備(図16で“RR/DD”二量体などと、“KK/EL”二量体などとして示した)し、T7E1分析を行った。T7E1分析結果、細胞がRR/DDZFN対に形質転換される時、切断されたDNA断片などがZFN処理9日以後でも維持されたこととして明らかになった。強制的なへテロ二量体ZFNの減少した細胞毒性が細胞内DNA切断特異性強化によるものであるということを確認するために、本発明者らは、ZFNを処理した細胞でDSB個数をDSBにリクルートされる蛋白質である53BP1に対する抗体を使用して分析した。具体的に、53BP1に対する核内染色をHEK293T/17細胞で行った。カバー(NUNC)が装着されたLab−Tekのチャンバースライドを使用して細胞を付着させ、3.7%ホルムアルデヒドで固定させてスライドを準備した。続いて、常温(RT)で10分間PBS(phosphate-buffered saline)内0.2%トリトンX−100で処理することによって、細胞を透過性があるように作った。続いて、細胞を5%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で抗−53BP1ウサギポリクローナル抗体(Bethyl Laboratories)とインキュベーションして非特異的染色を遮断させ、続いて、Alexa Fluor488−接合された二次抗体(インビトロジェン−Molecular Probes)とインキュベーションした。スライドをDAPI(シグマ)存在下で搭載して細胞核を対比染色し、免疫蛍光顕微鏡(Carl Zeiss−LSM510)で検査した。その結果を図17および18に示した。図17および18に示すように、RR/DDZFN対で処理した細胞で、対応する野生型ZFN対で処理した細胞と比較した時、53BP1フォーカスなど(foci)の数が顕著に減少した。
【0087】
5−3.ZFNで処理したゲノムでの突然変異確認
次に、96−ウェルプレートで分離成長させた225個の単一細胞コロニーをスクリーニングした後、Z891RR/DDZFN対を用いて7個の互いに異なる突然変異クローンHEK293細胞などを分離した。本発明者らは、これらのクローン細胞内のCCR5領域などのDNA塩基配列を分析してZFN−誘導ゲノム修正を確認した。修正された細胞でゲノムのDNA塩基配列を分析した結果、これら7個のクローンなどのうち、6個のクローンではCCR5対立遺伝子のうち、一ヶ所で欠失あるいは挿入が生じられ、他の1つのクローンは、2つの対立遺伝子で修正が示された(図19参照)。293細胞の遺伝体は、部分的に3つの染色体を示すからCCR5遺伝子が3つ存在する。2つのCCR5対立遺伝子の両方で修正されたクローンで1つの修正されなかった野生型配列が観察された(図19参照)。ZFN処理によって対立遺伝子2つを修正できるということは、選択マーカーを使用せず単一段階でホモ接合ノックアウト細胞を分離できるということを示唆する。
【0088】
実施例6:ホモCCR2部位でCCR−5標的化ZFNなどの非標的化(off-target)効果
CCR2遺伝子は、CCR5遺伝子と非常に高い相同性を有しており、多くのCCR5ZFN認識要素などがCCR2部位でも保存されている。従って、本発明者らは、CCR5部位に対して設計された8個のZFNなどがCCR2部位での相同性または同一配列も変異させ得るかどうかを検査した。CCR2遺伝子にある同一の認識要素などを持っている3つのZFN対(Z360、Z410とZ430)は、T7E1分析で効果的な遺伝体修正を誘導することができた(図20参照)。CCR2遺伝子の場合、Z891対の認識要素はCCR5遺伝子の相応する部分と完璧に一致し、1つの塩基が不一致する12−bpハーフ部位(half-site)から構成されている。予想した通りに、Z891対は、またCCR2部位で相当な遺伝子標的化活性を示した。また、本発明者らは、CCR2部位内の認識要素が各12−bpハーフ部位(half-site)で1つの塩基が不一致するサンガモ社のCCR5標的化ZFN対を試験し、サンガモ社のZFNは、相同性CCR2部位で非標的化(off-target)ゲノム修正を示した(図20参照)。一方、CCR2部位で認識要素が2つ以上の不一致を示すZFN対(Z30、Z266とZ836)は、ZFN活性が観察されなかった。
【0089】
また、本発明者らは、Z891対にHEK293細胞を形質導入させて獲得した7個の突然変異クローン細胞が、意図したCCR5部位での突然変異に加えて高い相同性を有したCCR2部位のDNA塩基配列においても突然変異を誘導するかどうかを実験した。その結果を図21に示した。図20に示すように、Z891対は、T7E1分析でCCR5部位だけでなく、CCR2部分に対しても相当の遺伝子標的化活性を示したが、CCR2部位はこれらのクローン細胞株などで変異が起きなかった。このような結果は、ZNF処理の後、細胞をスクリーニングしてただ意図した標的部位のみ変異が起きて、相同性部位では変異が起きない細胞を分離することができるということを立証した。
【0090】
実施例7:モジュール交換分析
本発明者らは、モジュラー組み立てを介したZFNなどの製作が、なぜゲノム編集において高い成功率を導くのか調査した。具体的に、本発明のZFNを同一のDNA−結合特異性を示すバルバスまたはサンガモのモジュールから製作したZFNで置換するモジュール交換実験を行った。
【0091】
このために、バルバスまたはサンガモモジュールのみで構成された8個の新しいZFN単量体を準備し、これでトルゼンモジュールのみで構成された6個の異なるZFN単量体などを代替した(表3および図22参照)。これらの新しいZFN単量体のそれぞれは、適切な対であるZFN単量体などと対をなすようにし、その結果産物であるZFN対をSSAとT7E1分析を介して検査した。図23および24に示すように、新しく合成されたZFN単量体などのうち、少なくとも1つで構成されたZFN対は、いずれもSSAシステムでなんらの明確な活性を示さなかった(図23参照)。さらに、それらの中でどんなZFNもT7E1分析で遺伝子標的化活性を示さなかった(図24参照)。
【0092】
【表3】
【0093】
このような結果などは、機能的ZFアレイなどのモジュール組み立てにおいて工学的に製作されたZFなどより自然発生ZFなどがより信頼できるような構造を構成するという提案を強力に裏付ける。
【0094】
実施例8:本発明のZFモジュール評価
本発明者らが製作した315個のZFN対に対する統計学的分析は、関心のある追加的な内在性遺伝子の標的化された突然変異のために使用され得る新しいZFN設計の基礎を提供することができる。このために、本発明者らは、SSAシステムで陽性点数を有する23個のZFN対で各ZFの発生頻度数を測定した。続いて、各ZFに対する“活性指数”を全体208ZFN単量体内モジュールの発生頻度数で割ることによって決定した(図1および2)。一部高い活性を示すZFなど、例えば、“QNTQ”と“RSHR”は、それぞれ50%と38%の活性指数を持ち、それらの高い活性指数は、生体内部位特異的なヌクレアーゼ活性を予測できるから、それらのモジュールなどが信頼性があるということを提案している。“QSNK”と“rdae”のような他のZFなどは、本分析で非効率的なモジュールとして示され、活性指数0値を示した。それらの2種類のZFなどのいずれもそれぞれ15回使用したが、そのモジュールなどを含むZFNなどのうち、何も本分析で活性を示さなかった。また、本発明者らは、同一のDNA認識特異性を持ったZFなどの活性指数を比較した。一部のZFなどは、他の標的−等価物モジュールよりも顕著に優れた。例えば、“DSNR”と“HSNK”の両方とも同一のGAC塩基配列を認識した。ZFNなどの製作に“DSNR”を使用すれば、多くの活性ヌクレアーゼ(活性指数=35%)を生産できるようにしたが、一方“HSNK”の統合は、単に非活性ZFNなどのみを生産するようにした(活性指数=0%)。
【0095】
前記の統計学的分析に基づいて、本発明者らは、以後の遺伝子編集研究のために、試験的に37個のZFなど(24個のトルゼンモジュール、1つのサンガモモジュール、12個のバルバスモジュール)を使用することができることを提案する(図1および2参照)。もし、本発明者らが実験にそれら37個のモジュールのみを使用したとすれば、これは現在の比率(24%)よりもはるかに大きい53%の全体的な成功率数値が出てきただろう(図26参照)。それら37個のモジュールのすべては、活性ZFNなどで少なくとも一回ずつは発見された。2つあるいはそれ以上の標的−等価物ZFなどが存在した時、非常に高い活性指数を持ったモジュールを選択した。37個のZFなどは、全体的に3−bp下位部位64個のうち、38個を認識した。与えられた1−kbpのランダムDNA配列の場合、3−フィンガーZFN二量体に対する88[=(38/64)6X1000X2]の可能性のある認識部位など(ハーフ部位などの間に5または6個の塩基スペーサー含む)が存在することができ、4−フィンガー二量体では、31個の認識部位を予想することができる。本発明の成功率を9.1%から26%と(もし、37個のZFなどを使用するとすれば、実際成功率は顕著に高いが、残りは非効率的なモジュールではない)仮定すると、1−kbpの標的配列で平均8部位でZFN−媒介性ゲノム編集が可能であるだろう。このような結果は、大部分の真核遺伝子が本発明のZFN組み立て方法で“標的化”が可能であるということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0096】
多くの遺伝子治療の適用時、前記したジンクフィンガーヌクレアーゼは、CCR5遺伝子をノックアウトさせるのに使用してエイズ患者などでHIV感染に抵抗性のあるT細胞を生産することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム配列の標的化された切断および変更、標的化された切断に続いて外来性ポリヌクレオチドとゲノム配列間の相同性組換え、または、標的化された切断に続いて非相同性末端連結に有用な方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、制限酵素は、遺伝工学および分子生物学において、重要なツールである。9以上の塩基対(bp)からなったDNAを認識して切ることができる“rare cutter”として知られた新規制限酵素を作るための様々な試みがあって来た。そのうち、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術は、様々なDNA基盤配列の認識および切断に、ジンクフィンガーDNA−認識ドメインおよびDNA−切断ドメインを含むキメラヌクレアーゼである制限酵素を使用することである。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、細胞内に導入された時にゲノム性DNAから標的化された二重鎖切断(double strand break,DSB)を誘導できるから、哺乳類、植物細胞または他の細胞で効率的な遺伝子変更をさせるのに使用され得る。細胞で二重鎖切断が発生すると、細胞は自体的に持っている修理(repair)システムを用いて損傷した部位を直す。この時、損傷した部分と類似したDNA配列を有した供与者DNAを細胞内に導入すると、損傷したDNAと供与者DNA鋳型の間に相同組換えが生じる。遺伝体上の特定部位に所望の変形のために、標的塩基配列を供与者DNA内に組み込ませる。一方、供与者DNAがない場合にも、損傷した細胞は、非相同末端連結(non-homologous end joining,NHEJ)方式で損傷した部位が修理され得る。非相同末端連結(NHEJ)は、2つの切断末端などを共に接合して損傷したDNAを修理し、一般的に変異などを形成しない。しかし、一部の場合に切断されたDNA末端で塩基対などの挿入または欠失が起こるエラーが発生しやすい方向に修理が進行されることもある。従って、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて特定塩基配列の部分に二重鎖切断を生じて非相同末端連結を誘導すると、DNAに突然変異が生じ、ノックアウト細胞株を作ることができる。
【0003】
ジンクフィンガー(ZFs)は、真核細胞のゲノム内に暗号化されている最も豊富なDNA−結合モチーフであって、最もよく理解されている蛋白質−DNA結合メカニズムの1つを提供しているものとして見なされる(Wolfe,S.A.et al.,(2000) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct.,29,183-212;Pabo,C.O. et al.,(2001) Annu. Rev. Biochem.,70,313-340;Moore,M.et al.,(2003) Brief Funct. Genomic. Proteomic.,1,342-355;およびKlug,A.et al.,(2005) FEBS Lett.,579,892-894)。エンジニアリングされたジンクフィンガー蛋白質(ZFP)などは、遺伝子調節およびゲノム修正のためのツールとして重大な潜在力を持っているが、これはそれらが如何なるゲノム内で如何なる実質的に所望の位置に機能的なドメインなどを標的化するのに使用され得るためである。ジンクフィンガー蛋白質などは、DNA塩基配列を認識する時に持つアミノ酸残基などと塩基などとの間の塩基特異的相互作用およびモジュール化的な構造的特徴のために、新しいDNA結合特異性を有する蛋白質をデザインするための様々なフレームワークを提供する。
【0004】
効果的なジンクフィンガーヌクレアーゼを作るためには、遺伝体上の所望の標的DNA配列を認識するジンクフィンガー蛋白質を作ることが必要であり、このために、位置選択的突然変異(SMD)を用いて各対応アミノ酸を1つずつ変える方法またはファージディスプレイのような大規模スケールでスクリーニングする方法など生体外と生体内で様々なジンクフィンガー選択方法などが使用されている(米国特許5,789,538号、5,925,523号、6,007,988号、6,013,453号および6,200,759号;国際公開特許WO95/19431号、WO96/06166号、WO98/53057号、WO98/54311号、WO00/27878号、WO01/60970号、WO01/88197号およびWO02/099084号参考)。しかし、選択を基盤とした方法などは、非常に多くの労働と時間が要求され、訓練された実験者を必要とする。ZFNを作る他の方法は、一般的なDNA組換え技術を使用してすでに良く知られているジンクフィンガーモジュールなどを組み立てて所望の特異性を有するジンクフィンガーアレイを作る方法である。それぞれのジンクフィンガーモジュールは、DNAの3bp(塩基対)を認識し、適切に互いに結合される時に引き起こされるジンクフィンガーアレイなどは、さらに長いDNA配列モチーフなどを特異的に認識することができる。このような方法を使用すると、容易に塩基配列を特異的に認識するジンクフィンガーヌクレアーゼを作ることができるだろう。一部の研究グループなどは、マルチ−フィンガーアレイなどの製作のためのジンクフィンガーモジュールのそれぞれ詳細化され、特性化された別の成果物などを有している。第1には、スクリップス研究所(The Scripps Research Institute)のバルバス研究室(Barbas laboratory)のバルバスモジュールであって、これらのジンクフィンガーモジュールなどは、ファージディスプレイおよび理論的なデザイン方法の組み合わせを使用して開発されたものである。このモジュールなどは、すべてのGNNトリプレット、大部分のANNおよびCNNトリプレット、およびいくつかのTNNトリプレットの認識に有用である。このようなバルバスモジュールなどは、それぞれのジンクフィンガーモジュールなどが実質的に完全な位置上の独立性を有するという仮定下で開発された。すなわち、それらの認識能力は、アレイ内でのそれらの位置または隣接するジンクフィンガーなどの特性などによって大きく影響されないという仮定である。第2に、サンガモバイオサイエンス社(Sangamo BioScienceInc.)でデザインしたサンガモモジュールは、すべてのGNNトリプレットおよびさらに小さい数の非−GNN’トリプレットに対して使用可能である。サンガモモジュールなどは、3−フィンガーアレイ内のモジュールなどの位置は、それらの認識特性に影響を及ぼすことができるという仮定下で開発された。3−フィンガーアレイ内での3つの位置のそれぞれは、そのような位置で与えられたトリプレットのために開発された別個のジンクフィンガーモジュールを有する。しかし、このようなモジュールなどは、自然発生的なモジュールでない人工的なモジュールであって、このようなモジュールを使用してジンクフィンガーヌクレアーゼを製造するのは容易でなく、実際使用時にその効率が非常に低いという問題点がある。特に、これらのモジュールは、GNN−反復配列を標的化することを特徴とする。しかし、このような配列などは、関心のある与えられた遺伝子内でほとんど希薄に生じる問題点がある。例えば、3−フィンガージンクフィンガーヌクレアーゼ対は、平均的に4096bp(46)配列内で一度だけ生じるGNN−反復DNA配列である、5’−NNCNNCNNCNNNNNNGNNGNNGNN−3’を標的化するようにデザインされ得る。4−フィンガージンクヌクレアーゼに対するGNN−反復サイトは、さらに珍しくて、65,536bp(=48)配列で一度だけ生じる。従って、そのようなサイトは、所望の数多くの遺伝子内に現れないこともある。このような見地から、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease)は、大部分がGNN−反復配列を認識しなくて作用するという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,789,538号
【特許文献2】米国特許5,925,523号
【特許文献3】米国特許6,007,988号
【特許文献4】米国特許6,013,453号
【特許文献5】米国特許6,200,759号
【特許文献6】国際公開特許WO95/19431号
【特許文献7】WO96/06166号
【特許文献8】WO98/53057号
【特許文献9】WO98/54311号
【特許文献10】WO00/27878号
【特許文献11】WO01/60970号
【特許文献12】WO01/88197号
【特許文献13】WO02/099084号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wolfe,S.A.et al.,(2000) Annu.Rev.Biophys.Biomol. Struct.,29,183-212
【非特許文献2】Pabo,C.O. et al.,(2001) Annu. Rev. Biochem.,70,313-340
【非特許文献3】Moore,M.et al.,(2003) Brief Funct. Genomic. Proteomic.,1,342-355
【非特許文献4】Klug,A.et al.,(2005) FEBS Lett.,579,892-894)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、ジンクフィンガードメインおよび切断ドメインを含む融合蛋白質であって、前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうち、1つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識して切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて関心領域内の細胞染色質を切断する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を交替する方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を変更する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いた遺伝子治療方法を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、迅速に製造されることができ、ゲノム配列の標的化された切断および変更に非常に有用であるため、遺伝子のノックアウトなどを介した遺伝子治療などに適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このように、標的化されたゲノムの編集を可能にするジンクフィンガーヌクレアーゼ技術を広範囲に適用することは、機能的なジンクフィンガーヌクレアーゼの合成のための便利で、迅速且つ公衆に利用可能な方法の不在によって妨害を受けている。従って、本発明者らは、ヒト細胞内のいくつかの異なるゲノム性サイトのDNA配列を修正できるジンクフィンガーヌクレアーゼを作るために鋭意研究した結果、公衆に使用可能なジンクフィンガーなどを使用する、非常に効率的で、実施するのに容易なモジュール性組み立て方法を使用してジンクフィンガーヌクレアーゼを製造することができ、組み立てられたジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてゲノムで標的化された切断と変更などが従来の方法に比べてより容易であることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造のために使用されたジンクフィンガーの起源、アミノ酸配列および標的下部部位(subsite)などを示す。
【図2】図2は、本発明者らが合成したジンクフィンガーヌクレアーゼの中で代表的な一対のアミノ酸配列を示す;細胞内発現を確認するために含んだHA標識配列と核内伝達信号配列に下線をひいて示し、標的塩基配列と結合すると予想されるジンクフィンガーのαヘリックス部分を太く示した。
【図3】図3は、CCR5コード部位内のZFN標的部位に対する図式的な概要である;ZFN標的部位は、ボックスで示し、数字は、開始コドンに比例してZFN標的部位の位置を示す。網状性ボックスは、Δ32変異の位置を示す。
【図4】図4は、インビトロ転写および翻訳システムを介して生産されたZFNsを使用して行われたDNA切断分析を示した概要図である。
【図5】図5は、アガロースゲル電気泳動を介したDNA切断分析の結果を示した写真である。
【図6】図6は、ZFN活性評価で細胞−基盤単一鎖アニーリング(SSA)を使用することに対する図式的な概要である;ZFN発現プラスミドは、非活性状態、部分的に複製され、破裂した状態であるルシフェラーゼ遺伝子を含んでいるゲノムを有するHEK293細胞に形質導入され、もし、ZFNsが細胞内標的部位を切断すると、DNAはSSAメカニズムによって効果的に復旧され、機能的ルシフェラーゼ遺伝子は回復されるようになる。
【図7】図7は、ZFN活性評価で細胞−基盤単一鎖アニーリング(SSA)を使用することに対する図式的な概要である;細胞のルシフェラーゼ活性は、様々なZFNsが発現されたことを意味する。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。I−SceIの認識部位を含んでいる標的塩基は、陽性対照群として使用された。それぞれのZFN対の活性は、I−SceI対照群に対する百分率で示した。ZFN対とそれらの構成単量体などを示した。追加的な研究に使用したZFN対は、三角形で表記した。平均値と標準偏差(エラーバー)は、少なくとも3回の独立的な実験を介して求めたものである。
【図8】図8は、T7E1分析法を使用してヒト細胞内ZFN−媒介性ゲノム編集の不一致探知に対する図式的な概要である;ゲノム性DNAは、ZFNsをエンコードするプラスミドが形質導入された細胞から精製した。ZFN認識部位を含むDNA断片などは、PCR−増幅し、DNA増幅産物は、熱を加えて溶かして、アニーリングした。もし、DNA増幅産物などが野生型と変異されたDNA配列の両方とも含んでいると、ヘテロ二重鎖が形成されるだろう。T7E1は、ヘテロ二重鎖を認識して切断する。しかし、ホモ二重鎖は切断できない。DNA断片などは、アガロースゲル電気泳動によって評価した。
【図9】図9は、T7E1分析によって明らかになったZFN−媒介性ゲノムの変形を示す;ZFN対は、アガロースゲルの上段に示されている。収得されたDNAバンドの予想される位置は、ゲルパネルの左側に矢印(切られなかった状態)と角括弧(切られた状態)で示した。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。サンガモのCCR5−標的化するZFN対(サンガモCCR5)を本分析に含んだ。
【図10】図10は、Z836ZFN対によって標的されるゲノムの部位に対するDNA配列を示す。ZFN認識要素などは、下線で示した。欠失は点線で示し、挿入された塩基などは、小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。wtは、野生型を示す。
【図11】図11は、Z30およびZ266ZFN対によって標的化されるゲノム部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。
【図12】図12は、Z360およびZ411ZFN対によって標的化されるゲノム部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。変異が1つ以上探知された場合、その変異の発生個数を括弧内に示した。
【図13】図13は、Z426およびZ430ZFN対の標的部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。1つ以上の変異が探知された場合、その変異の発生する数は、括弧内に示した。
【図14】図14は、Z891ZFN対の標的部位などに対するDNA配列を示す;ZFN認識要素などは下線で示し、欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。1つ以上の変異が探知された場合、その変異の発生する数は、括弧内に示した。
【図15】図15は、様々なZFN−標的部位の変異類型を示す;それぞれのZFN対に対する欠失、挿入、そして、複合的な変異の数を確認し、それらの変異発生数を百分率で示した。
【図16】図16は、野生型と強制的ヘテロ二量体ZFNsに対する時間進行による分析結果である。T7E1不一致探知分析は、細胞から分離したDNAを異なる種類のFokIヌクレアーゼドメインで色々な時間帯で処理した(WT、野生型ヌクレアーゼドメイン;RR/DDまたはKK/EL、強制的ヘテロ二量体ヌクレアーゼドメインなど)。
【図17】図17は、53BP1染色の結果である;野生型と強制的ヘテロ二量体Z891ZFN対いずれもHEK293T/17細胞内に形質導入させ、形質導入した後2日目に細胞内の53BP1フォーカスなど(foci)を免疫蛍光によって観察した。エトポシド(1μM)は、陽性対照群として使用した。
【図18】図18は、図16の結果をプロットしたものである;53BP1フォーカス数に対する分布をプロットしたものである。最小100個の細胞などを2回独立的に測定して、各処理について分析した。
【図19】図19は、突然変異クローンなどのDNA配列を示す;RR/DDZFN二量体を処理した細胞などから制限的希釈によって7個の突然変異クローンなどを分離した。これらのクローン細胞内標的部位のDNA配列を示した。欠失は点線で示し、挿入された塩基などは小文字で示した。クローン1aと1bは、1つのクローン内の両対立性形質変異の結果から生じたDNA配列を示す。
【図20】図20は、CCR2部位でT7E1分析を示す。ZFN対で処理した細胞からCCR2コード部位に対応するPCR−増幅DNA(ゲルパネルの上部に表示されている)を分析した。CCR2部位で変形を生じたZFN対は“+”で示した。P3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用された。サンガモのCCR5−標的化ZFN対(サンガモCCR5)が本分析に含まれている。
【図21】図21は、CCR2部分(locus)でZFNsの脱標的(off-target)効果およびCCR5とCCR2部分でZFN認識要素など(recognition elements)を示す。ZFN対はDNA配列の左側に示した。CCR5とCCR2部分の間で一致する塩基の数は括弧内に示し、不一致する塩基などは太い小文字で示した。ZFN認識要素などのハーフ−部位(half-site)は下線で示した。
【図22】図22は、モジュール交換実験のために使用されたジンクフィンガーなどを示す。
【図23】図23は、新しいZFNなどが同一の配列を認識する本発明のZFNなどを機能的に代替できるどうかを試験するためのモジュール交換分析において、細胞−基盤SSAシステムの結果を示す;“BR4”のように“B”で始まる名称のZFN単量体などは、ただバルバスモジュールのみで構成されているものであり、“SR4”のように“S”で始まる名称のZFN単量体などは、サンガモモジュールのみで構成されたものである。細胞のルシフェラーゼ活性は、様々なZFNなどの発現を示す。p3は、プラスミドがない状態であり、陰性対照群として使用した。I−SceIの認識部位を含む標的配列は、陽性対照群として使用した。それぞれのZFN対の活性は、I−SceI対照群に対する百分率として評価した。ZFN対とそれらの構成単量体などを示した。平均値と標準偏差(エラーバー)は、少なくとも3回の独立的な実験を介して求めたものである。
【図24】図24は、新しいZFNsが同一の配列を認識する本発明のZFNsを機能的に代替できるどうかを試験するためのモジュール交換分析において、T7E1分析を介してZFN−媒介性ゲノム変形を示す;ZFN対とそれらの構成単量体などは、アガロースゲルの上段に表示されている。陽性遺伝子標的化効果を有するZFN対は、“+”で示した。
【図25】図25は、ZFN分析に対する要約である;それぞれの分析で陽性結果を有するZFN対の数または標的部位の数が示されている。
【図26】図26は、異なる類型のZFNsの成功率を示す。成功的なZFN対または標的部位は、T7E1不一致探知分析で陽性結果を有するものとして定義される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一つの態様として、本発明は、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質であって、前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうち、2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識および切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に関するものである。
【0015】
本発明のジンクフィンガードメインは、1つ以上のジンクフィンガーモジュールを介して配列特異性を有する方式でヌクレオチドと結合する蛋白質をいう。ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含む。ジンクフィンガードメインは、たびたびジンクフィンガー蛋白質またはZFPで簡略に表示されたりもする。
【0016】
本発明のジンクフィンガーモジュールとは、亜鉛イオンの配位結合を介して安定化される構造を有するドメインの内部にあるアミノ酸配列領域をいう。本発明のジンクフィンガーモジュールは、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールと同一の配列を有したり、野生型配列のうち、任意のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変形された配列を有する。前記野生型ジンクフィンガーモジュールは、任意の真核細胞、例えば、真菌細胞(例えば、酵母)、植物または動物細胞(例えば、ヒトやマウスのような哺乳動物細胞)から由来することができる。 好ましくは、本発明のジンクフィンガーモジュールは、ヒトなどから由来した図1に示されたアミノ酸配列を含む。
【0017】
ジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガードメインは、それぞれ3bp(塩基対)の下部部位を認識する3つ以上のジンクフィンガーモジュールが直列に連結されている。それぞれのモジュールなどは、独立的にDNA配列を認識するから、3つまたは4つのモジュールから構成されたジンクフィンガードメインは、9または12bp配列に結合することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体として作用し、従って、3−4個のモジュールから構成されたジンクフィンガーヌクレアーゼ1対は、18−24bp配列を特異的に認識する。一つの具体的な例として、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガードメインが3つまたは4つ、好ましくは4つのジンクフィンガーモジュールから構成されている。また、一つの好ましい態様として、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼに含まれているジンクフィンガードメインは、好ましくはジンクフィンガーモジュールを含む。具体的な実施例において、3つのジンクフィンガーモジュールを含むジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的化された切断成功率が9.1%であるのに反して4つのジンクフィンガーモジュールを含むジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的化された切断成功率が26%である。
【0018】
ジンクフィンガードメインは、予め決まったヌクレオチド配列に結合するように加工され得る。ジンクフィンガー蛋白質操作方法の非制限的な例としては、設計(design)および選択である。設計されたジンクフィンガー蛋白質は、自然的に発生しない蛋白質であり、その設計および組成は、主に合理的な基準に応じて出る。設計のための合理的な基準としては、置換法則の適用および現存するZFP設計および結合データに関するデータベースを情報処理するコンピュータアルゴリズムを含む(大韓民国登録特許第0766952号参照)。選択されたジンクフィンガー蛋白質は、自然状態で発見されない蛋白質であり、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたは混成化選択のような実験過程を介して得られた結果物である。
【0019】
前記加工されたジンクフィンガードメインを構成するジンクフィンガーモジュールのうち、最小限2つまたはそれ以上は、野生型ジンクフィンガーモジュールであるのが好ましく、より好ましくは、3つまたはそれ以上の野生型ジンクフィンガーモジュールを含む。一つの具体例において、本発明者らは、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを従来のファージディスプレイまたは点突然変異によって操作され、分離されたジンクフィンガーヌクレアーゼから形成されたものなどに置換するモジュール交換分析を行った。その結果、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼがSSAシステムおよびT7E1分析で明確な活性を示すことを発見した。従って、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、自然的に発生された野生型ジンクフィンガーモジュールを含むのが好ましい。本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたジンクフィンガードメインを含むのがより好ましい。また、本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼは、従来の操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼとは異なり、GNN−反復配列を標的化しない。具体例において、下記の表2に記載されたように、CCR5配列を成功的に変形させた16個のジンクフィンガーヌクレアーゼなどのうちから2つのジンクフィンガーヌクレアーゼ(Z430R3およびZ30F4)がGNNモチーフのない認識−部位(ハーフ−サイト(half-site))要素を認識し、12個のジンクフィンガーヌクレアーゼがGNNおよび非GNNモチーフなどの両方を含む部位を認識する反面、単に2つのジンクフィンガーヌクレアーゼ(Z426F3およびZ360R4)だけがGNN−反復部位を認識する。GNN−反復配列でない部位を標的化できる能力は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術の有用性を大きく広めてあげる。
【0020】
本発明の用語“切断”は、DNA分子の共有結合基本骨格を切断することを意味し、“切断ドメイン”は、DNA切断のための酵素活性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0021】
前記切断ドメインは、エンドまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを得ることができるエンドヌクレアーゼの非制限的な例としては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミング(homing)エンドヌクレアーゼがある。このような酵素などは、切断ドメインの供給源として使用され得る。また、単一鎖切断および二重鎖切断の両方が可能であり、二重鎖切断は、切断ドメインの供給源に応じて発生することができる。これに係って、二重鎖切断活性を有する切断ドメインを切断ハーフドメインとして使用され得る。但し、本明細書では切断ドメインを単一鎖切断および二重鎖切断に対して、混用して使用することができる。
【0022】
切断ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその一部分から由来することができる。一般的に、もし、融合蛋白質が二重鎖切断活性を有する切断ハーフドメインから構成されると、切断のために2つの融合蛋白質が必要である。2つの切断ハーフドメインは、同一のエンドヌクレアーゼ(または、その機能的な断片など)から由来することができ、または各切断ハーフドメインは、互いに異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的な断片など)から由来することができる。さらに、各標的部位に2つの融合蛋白質が結合すると、切断ハーフドメインなどの相互間の空間的配向は、例えば、二量体化によって切断ハーフドメインなどが機能的な切断ドメインを形成するようにする。従って、すべての整数値のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2つの標的部位の間に介在することができる(例えば、2〜50ヌクレオチドまたはそれ以上)。
【0023】
一般的に、それぞれ切断ハーフドメインを含む2つの融合蛋白質を使用すると、各融合蛋白質のジンクフィンガー部分が互いに異なるDNA鎖上に逆方向に接触する。すなわち、一対のZFP/切断ハーフドメイン融合の場合、標的配列は、正反対のDNA鎖上に位置し、2つの蛋白質は逆方向に結合する。
【0024】
制限エンドヌクレアーゼは、多くの種(species)に存在し、DNA(認識部位)に配列特異性結合をすることができ、結合部位の近傍でDNAを切断することができる。一部の制限酵素など(例えば、タイプIIs)は、認識部位から離れているDNAを切断して分離可能な結合ドメインと切断ドメインを持つ。例えば、タイプIIs酵素であるFokIは、1つの鎖上の認識部位から9ヌクレオチド離れた位置で、そして、他の一つの鎖上の認識部位から13ヌクレオチド離れた位置でDNAの二重鎖切断の触媒作用をする。従って、一つの具体例においては、融合蛋白質は、少なくとも1つのタイプIIs制限酵素から出た切断ドメイン(または、切断ハーフドメイン)と1つ以上のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0025】
タイプIIs制限酵素の例としては、FokI、AarI、AceIII、AciI、AloI、BaeI、Bbr7I、CdiI、CjePI、EciI、Esp3I、FinI、MboI、sapI、SspD51などがあるが、これに制限されるのではない。より具体的には、ロバーツらの文献[(2003) Nucleic acid Res.31:418-420]を参照する。一つの具体例においては、TypeIIs制限酵素であるFokIからDNA結合ドメインを分離して得たFokI切断ドメインを切断ドメイン(または、ハーフ切断ドメイン)として使用した。
【0026】
本発明の融合蛋白質は、異なる2つ以上のポリペプチドをペプチド結合で連結して形成させたポリペプチドを意味する。前記ポリペプチドは、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含み、ヌクレオチド配列内の任意の標的部位を切断することができる。本発明において、融合蛋白質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはZFNと混用され得る。
【0027】
融合蛋白質(または、融合蛋白質暗号化ポリヌクレオチド)を設計および製作する方法は、当該技術分野で広く知られている。一つの具体例において、ジンクフィンガードメインと切断ドメインを含む融合蛋白質を暗号化するポリヌクレオチドを製作した。前記ポリヌクレオチドは、ベクターに挿入されることができ、挿入されたベクターは、細胞内に導入され得る。一般的に、融合蛋白質(例えば、ZFP−FokI融合)の構成要素などは、ジンクフィンガードメインが融合蛋白質のアミノ末端(N末端)の近傍に、切断ハーフドメインがカルボキシ末端(C末端)の近傍に位置するように配列されている。これは、FokI制限酵素から由来したもののように、天然型切断ドメイン二量体にある切断ドメインの相対的位置と似ているが、この時、DNA結合ドメインはアミノ末端の近傍に位置し、切断ハーフドメインはカルボキシ末端の近傍に位置する。
【0028】
本発明において、“配列”とは、DNAまたはRNAであり得る様々な長さのヌクレオチド配列を意味する;直線形、円形または枝形であることができ、単一鎖または二重鎖であり得る。
【0029】
本発明において、“結合”とは、蛋白質と核酸どの間のような高分子間の配列特異的または非共有相互作用を意味する。相互作用が全体的に配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成要素などがDNA骨格のリン酸残基と接触することのように、配列特異的である必要はない。このような相互作用は、一般的に解離定数(Kd)値が10−6M−1以下であるのが特徴である。また、“親和度”とは、結合力を意味し、結合親和度の増加は、解離定数(Kd)の減少と関連している。
【0030】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを1対以上含み、標的化関心領域内でDNA配列の切断、交替または変更のための組換えキットに関するものである。
【0031】
一般的に、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、二量体として作用するから、1つのDNA部位を標的化するためには、2つのZFN単量体を用意するのが必要である。ZFN対を構成する2つのZFN単量体のそれぞれは、5〜6bpのスペーサー配列によって分離されている2つの9または12bpの2つのハーフ部位のうち、1つに結合する。1つのハーフ部位に対して同一または類似のDNA結合特異性を有した異なるセットのZFなどから構成された多重単量体ZFNを製作することができる。1つの具体例において、同一または異なるジンクフィンガードメインから構成されたZFN対が表2に示されているが、これに限定されるのではない。前記単一部位は、様々な組み合わせのZFN対によって標的化され得る。
【0032】
本発明において使用された用語“交替”とは、1つのヌクレオチド配列が他のヌクレオチド配列に交替されること(すなわち、情報を持ったセンス配列の交替)を意味し、必ず1つのポリヌクレオチドが他のポリヌクレオチドに化学的または物理的に交替されることを意味するのではない。本発明において使用された用語“変更”とは、突然変異または非相同末端連結によるDNA配列内の変化を意味する。前記の突然変異は、点突然変異、置換、欠失、挿入などを含む。前記交替または変更は、不完全な遺伝情報を有するヌクレオチドを完全な遺伝的情報を有するヌクレオチドに交替または変更させ得る。また、このような突然変異によってヌクレオチド配列にエンコードされたペプチドが機能的に不活性化することもできる。このような方式によって、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、遺伝子治療法手段として使用され得る。一つの具体例において、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)が標的細胞を感染するのに使用される主要共同受容体であるCCR蛋白質をコードするケモカイン(C-C motif)受容体5(CCR5)遺伝子をZFNが欠失させ得ることを確認した。
【0033】
例えば、細胞、核酸、蛋白質またはベクターに対して言及しながら使用される時、“組換え”は、細胞、核酸、蛋白質またはベクターが異種性核酸または蛋白質の導入、または天然核酸または蛋白質の変更によって変形されたり、または細胞がそのように変形された細胞から由来されたことをいう。従って、例えば、組換え細胞は、天然(自然発生)形の細胞内で発見されない遺伝子を発現したり、または、正常的または非正常的に発現される2次コピーの天然遺伝子を発現したり、または全く発現しない。
【0034】
他の一つの態様として、本発明は、(a)関心領域内のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)前記配列に結合するジンクフィンガーモジュールを選択し、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含みながら、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであるジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階;(c)前記工学的に製造されたジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法に関するものである。
【0035】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを製造する方法において、前記(a)段階は、関心領域内のヌクレオチド配列を選択する段階である。前記ヌクレオチド配列は、細胞の内または外に存在することができ、その長さは制限がない。また、前記ヌクレオチド配列は、線形または円形、単一鎖または二重鎖の形態であり得る。
【0036】
前記(b)段階は、関心領域内のヌクレオチド配列と結合するジンクフィンガーモジュールなどを選択し、ジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階である。前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、2つ以上のジンクフィンガーモジュールは、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来するのが好ましく、より好ましくは、図1に示されたジンクフィンガーモジュールから由来し、より好ましくは、図2に示されたジンクフィンガーモジュールから由来する。
【0037】
前記(c)段階は、ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階である。前記発現は、生体内または生体外の発現を含む。生体内の発現は、当該分野で知られた方法を用いて行うことができ、例えば、ベクターを用いる方法である。前記ベクターの例として、プラスミドベクター、コズミドベクター、バクテリオファージベクターおよびウイルスベクターなどがあるが、これに制限されない。適した発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーのような発現調節要素の他にも分泌シグナル配列などを目的に応じて含み、様々に製造され得る。
【0038】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて関心領域内の細胞染色質を切断する方法に関するものである。
【0039】
一つの具体的態様として、本発明は(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)第1のヌクレオチド配列と結合する本発明の第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;(c)前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現させて前記細胞内へ導入させる段階;および(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合して前記関心領域内で細胞染色質を切断する段階を含む関心領域内の細胞染色質切断方法である。
【0040】
本発明の前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものである。
【0041】
他の一つの具体的な態様として、本発明は、(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;(b)第1のヌクレオチド配列と結合する本発明の第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;(c)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;および(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合させて前記関心領域内の細胞染色質を切断させる段階;(e)第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む本発明の第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択し、前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;(f)(細胞内で発現されたり、導入された)第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが結合する第1のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合させる段階を含む関心領域内の細胞染色質切断方法である。
【0042】
本発明において“染色質”は、細胞のゲノムを構成する核蛋白質の構造を意味する。細胞の染色質は、核酸、主にDNA、そして、ヒストンおよび非ヒストン系染色体蛋白質を含んだ蛋白質を含む。細胞染色質は、原核細胞、真核細胞(例えば、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、霊長類細胞およびヒト細胞)を含むすべての形態の細胞内に存在することができる。大部分の真核細胞染色質は、ヌクレオソームの形態で存在するが、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3、H4のそれぞれ2つで構成された八量体と結合された略150塩基対のDNAを含み、(有機体に応じて長さが様々な)リンカーDNAがヌクレオソームコアの間に拡張されている。ヒストンHI分子は、一般的にリンカーDNAと結合されている。本発明の目的上、用語“染色質”は、すべての形態の細胞核蛋白質、原核および真核いずれも含む意味として使用される。細胞の染色質は、染色体およびエピソームの染色質のすべてを含む。前記“染色体”は、細胞のゲノムの全部または部分を含む染色質複合体をいう。前記“エピソーム”は、複製性核酸、核蛋白質複合体または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造体である。例としては、プラスミドおよびウイルス性ゲノムがある。
【0043】
他の一つの具体的な態様として、本発明は、(a)関心領域を選択する段階;(b)前記関心領域内の第1のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを提供する段階;(c)前記第1の配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(d)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で同時または、分離して発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガドメインは、前記第1のヌクレオチド配列と結合し、前記第2のジンクフィンガードメインは、前記第2のヌクレオチド配列と結合し、前記結合によって前記ヌクレオチド切断ドメインを位置させて関心領域内の前記細胞染色質を切断させる、関心領域内の細胞染色質切断方法に関するものである。
【0044】
本発明のジンクフィンガーヌクレアーゼを用いた標的化された切断の場合、ジンクフィンガードメインの結合部位は、切断部位を含むことができたり、結合部位の端が切断部位から1〜50ヌクレオチド離れて位置することができる。切断部位をマッピングする方法は、当該技術分野で広く知られている。
【0045】
通常DNAが切断される部位は、2つの融合蛋白質の結合部位の間に存在する。DNA二重鎖の切断は、2つの単一鎖切断または1、2、3、4、5、6または、それ以上のヌクレオチドなどがオフセットされた“ニック”の結果物である。例えば、天然型FokI制限酵素による二重鎖DNAの切断は、4つのヌクレオチドがオフセットされた単一鎖切断の結果物である。従って、切断は、必ず各DNA鎖上に正確な反対側で生じる必要はない。さらに、融合蛋白質の構造と標的部位との間の距離は、切断が1つのヌクレオチド対の近傍で生じるかどうか、または色々な部位で生じるかどうかに影響を及ぼすことができる。
【0046】
本発明において、“標的部位”は、ジンクフィンガードメインによって認識される核酸配列である。単一標的部位は、一般的に約6または約12塩基対を有する。一般的に、3つのジンクフィンガーモジュールを有するジンクフィンガー蛋白質は、2つの隣接した6〜10塩基対の標的部位を認識し、4つのジンクフィンガーモジュールを有するジンクフィンガー蛋白質は、2つの隣接した9〜12塩基対の標的部位を認識する。用語“隣接した標的部位”は、0〜約5塩基対まで離れている非重複標的部位を意味する。
【0047】
前述したように、融合蛋白質は、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド形態で導入され得る。例えば、それぞれ前述したポリペプチドなどのうちの1つを暗号化する配列を含む2つのポリヌクレオチドが細胞内に導入されることができ、切断は、標的配列の近傍で生じる。または、2つのポリペプチドすべてを暗号化する配列を含む1つのポリヌクレオチドが細胞内に導入され得る。ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはDNAおよび/またはRNAの任意の変異体または類似体であり得る。
【0048】
他の一つの態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を交替する方法に関するものである。
【0049】
一つの具体的な態様として、本発明は、細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列交替方法であって、(a)関心領域内で9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階;(d)前記細胞を前記第1のヌクレオチド配列と相同性があるが同一ではない第4のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに接触させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質が関心領域内で切断され、これによって前記第1のヌクレオチド配列と前記第4のヌクレオチド配列との間の相同組換えを容易にして前記第1のヌクレオチド配列を前記第4のヌクレオチド配列に交替することを特徴とする方法に関するものである。
【0050】
本発明は、標的化された組換え効率を高め、非特異的な挿入頻度を減少させることを特徴とする標的化された配列変更方法を提供する。細胞DNAの二重鎖切断は、切断部位の近傍で数千倍程度の相同組換えを刺激するため、このような標的化された切断は、実質的にゲノムのどんな部位でも(相同組換えを介して)配列の変換または置換を可能にする。
【0051】
選択されたゲノム配列の標的化された置換は、融合蛋白質(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)だけでなく、ドナー配列を必要とする。ドナー配列は、融合蛋白質(など)の発現以前、同時または以後のいつでも細胞内に導入され得る。ドナー配列は、通常置換するゲノム配列と同一ではないことが明確である。例えば、相同組換えができる十分な相同性を有している限り、ドナーポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列に対して1つの塩基変化、挿入、欠乏、逆位、または再配列のうちから1つまたはそれ以上を含むことができる。また、ドナー配列は、類似する2つの相同性に接している非相同配列を含むことができる。さらに、ドナー配列は、細胞染色質の関心領域と相同性のない配列を含むことができる。
【0052】
また、前記の方法において、第1のヌクレオチド配列は、遺伝子内に突然変異を含む配列が好ましいかもしれない。この場合、ドナー配列、特に、第4のヌクレオチド配列は、前記遺伝子の野生型配列であるのが好ましい。前記の突然変異は、点突然変異、置換、欠失または挿入などであり得る。
【0053】
また、他の一つの具体的な態様として、本発明は、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列を変更する方法を提供する。
【0054】
具体的に、本発明は、細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列変更方法であって、(a)関心領域内の9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質を関心領域内で切断させ、前記切断部位で前記第1のヌクレオチド配列を変更させることを特徴とする方法に関するものである。
【0055】
本発明において、1つまたは2つ以上のZFPまたはZFP融合蛋白質を暗号化する核酸は、複製および発現のために原核細胞または真核細胞へ形質転換させる発現ベクターにクローニングされ得る。ベクターは、例えば、プラスミド、シャトルベクター、昆虫ベクターなどの真核ベクターまたは原核ベクターを含む。ZFPを暗号化する核酸は、また発現ベクターにクローニングされて植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳類細胞またはヒト細胞、菌類細胞、細菌細胞または原生動物細胞に導入され得る。
【0056】
発現ベクターは、宿主細胞で特定の核酸の転写、および選択的に宿主細胞で発現ベクターの統合または複製が可能にする一連の特性化された核酸要素などであって、組換えまたは合成を介して生成された核酸作製物である。発現ベクターは、ウイルスまたは非−ウイルス起源のプラスミド、ウイルスまたは、核酸断片の部分であり得る。一般的に、発現ベクターは、“発現カセット”を含み、これはプロモーターに作動可能に連結され、転写される核酸を含む。また、発現ベクター用語は、プロモーターに作動可能に連結されたネイキッド(naked)DNAを含む。
【0057】
クローンされた遺伝子または核酸を発現させるために、ZFPまたはZFP融合蛋白質を暗号化する配列は、一般的に転写を誘導するプロモーターを有したベクターにサブクローニングされる。適した細菌性プロモーターまたは原核プロモーターは、当該分野で広く知られている。
【0058】
用語“作動可能に連結された”は、核酸発現調節配列(プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合を意味する。
【0059】
本発明において、“宿主細胞”は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または選択的にジンクフィンガーヌクレアーゼをコード化する発現ベクターまたは核酸を含有する細胞を意味する。宿主細胞は、一般的に発現ベクターの複製または発現をサポートする。宿主細胞は、エシェリキア・コリのような原核細胞、または真核細胞、例えば、酵母、真菌、原生動物、高等植物、昆虫細胞、または両生類細胞、またはCHO、HeLa293、COS−1、HEKのような哺乳類細胞、例えば、培養された細胞(試験管内)、移植片および1次培養物(試験管内および生体外)、および生体内細胞であり得る。
【0060】
“核酸”は、単一または二重鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそれらの重合体を意味する。この用語は、公知のヌクレオチド類似体または、変形された骨格残基または、結合を含有する核酸を含み、これは合成的、自然発生的、および非−自然発生的なことがあり、基準核酸と類似する結合特性を有する。このような類似体の例は、制限なく、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)などを含む。
【0061】
用語“ポリペプチド”、“ペプチド”および“蛋白質”は、本明細書において、相互交換されて使用され、アミノ酸残基の重合体を意味する。また、この用語などは、自然発生アミノ酸重合体および非−自然発生アミノ酸重合体だけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が相応する自然発生アミノ酸の人工化学的擬態体であるアミノ酸重合体にも適用する。
【0062】
用語“アミノ酸”は、自然発生および合成アミノ酸だけでなく、自然発生アミノ酸と類似する方式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬態体を意味する。 自然発生アミノ酸は、遺伝コードによってコード化されるものなどだけでなく、後で変形されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンを含む。アミノ酸類似体は、自然発生アミノ酸と基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されたα−炭素が同一の化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を含む。そのようなアミノ酸類似体は、変形されたR基(例えば、ノルロイシン)または、変形されたペプチド骨格を有するが、自然発生アミノ酸と同一の基本的な化学構造を維持する。アミノ酸擬態体は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を持つが、自然発生アミノ酸と類似する方式で機能する化学的化合物を意味する。
【0063】
本発明において、アミノ酸は、通常的に公知された3−文字記号、またはIUPAC−IUB生化学命名法協約によって推薦された1−文字記号で表現され得る。同様に、ヌクレオチドも通常的に承認された単一の文字コードによって表現され得る。
【0064】
以下、本発明を実施例を介してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例
実施例1:ZFN設計およびZFN−含有プラスミドの製作
3−または、4−フィンガー配列(arrays)をエンコードするDNA断片などは、“Human zinc fingers as building blocks in the construction of artificial transcription factor”(Bae,K.H.et al.Nat Biotechnol 21,275-280(2003))に記載された方法によって組み立てた。これらの3−または、4−フィンガー配列などのうちから様々なDNA結合特異性を有した54個のジンクフィンガーモジュール(以下、ZFモジュールという)を選択した。選択されたZFモジュールおよびこのアミノ酸配列を図1および図2に示した。選択された54個のZFモジュールのうち、31個のZFモジュールは、ヒトゲノムにあるDNA配列から由来したものであり、2つのZFモジュールは、ショウジョウバエ(Drosophila)ゲノムにあるDNA配列から由来したものである(図1)。前記のヒトおよびショウジョウバエから由来したZFモジュールは、トルゼン(ToolGen)モジュールと便宜上、称する。その他の21個のZFモジュールは、ファージディスプレイ技術を使用したZF変異体などのライブラリー(バルバスモジュール)から選択したり、部位特異的突然変異技術によって製作された(サンガモモジュール)。
【0065】
次に、マルチ−フィンガーZFNの設計のために、トルゼンで開発したコンピュータアルゴリズムを使用してヒトケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(CCR5)コード部位のDNA配列にある可能性のあるZFN標的部位を探索した。その探索結果に基づいて、本発明者らは前記54個のZFモジュールを組み合わせた208個のジンクフィンガー蛋白質単量体を合成し、代表的なZFN対のアミノ酸配列を図2に示した。総体的に、これら315個のZFN対でCCR5遺伝子内33個の部位などを標的化しようとした(図3参照)。
【0066】
3または4つのZFモジュールから構成されたジンクフィンガードメインをフラボバクテリウム・オケアノコイテス(Flavobacterium okeanokoites)ゲノムDNAから由来したFokIエンドヌクレアーゼドメインに統合させ、統合された配列をpcDNA3.0プラスミド(インビトロジェン)の改造されたバージョンであるp3クローニングベクタープラスミド内にクローニングした。
【0067】
実施例2:ZFN活性の試験管内(in vitro)および生体内(invivo)分析
2−1.試験管内遺伝子消化分析
先ず、試験管内転写と翻訳(in vitro transcription and translation;IVTT)システムを使用してZFNを準備し、CCR5コード配列を含むDNA断片と共に培養して試験管内制限酵素としての活性を分析した。具体的に、TnT-Quick coupled transcription/translation system(プロメガ)を製作者の使用説明書に記述された方法(in vitro transcription and translation;IVTT)を使用して前記実施例1で設計したZFNsを試験管内を転写および翻訳した。簡略に、ZFNsを暗号化するプラスミド(各0.5μl)をTnT Quick master mix(20μl)および1mMメチオニン(0.5μl)に添加した後、30℃で90分間培養した。CCR5コード配列を含む標的プラスミドは、制限酵素を処理して線形化した後、標的プラスミド(1μg)を前記ZFN IVTT分解物(それぞれ1μl)と共にNEBuffer4(New England Biolabs)で37℃、2時間培養させて消化させた。この反応混合物を65℃の熱で不活性化させた後、13,000rpmで遠心分離した。上澄液を使用してアガロースゲル分析を行った。図4は、前記の分析過程を簡略に示したものであり、その実験結果は図5に示されている。
【0068】
図5に示すように、多くのZFN対など(40%)が標的DNAを効果的に部位−特異的に切断した。
【0069】
2−2:単一鎖アニーリングシステム
本発明者らは、哺乳動物細胞基盤の単一鎖アニーリング(SSA)システムを使用してZFNsがヒト細胞で相同組換えを誘導することができるかどうかを試験した。
【0070】
2−2−1.細胞−基盤分析に使用されるレポータープラスミド
ホタルルシフェラーゼ遺伝子の3’−部分を下記表1のプライマー1と2を使用してpGL3−対照群(プロメガ)から増幅し、増幅された産物をpcDNA5/FRT/TO(インビトロジェン)のBamHIとXhoI部位内にクローニングした。下記表1のプライマー3と4を使用して増幅したルシフェラーゼ遺伝子の5’−部分を前記クローニング結果物のプラスミドのHindIIIとBamHI部位内に連続的にクローニングした。I−SceI結合部位を下記表1のプライマー5と6を使用してレポータープラスミドのBamHI部位内にクローニングした。プライマー7と8を使用して増幅したCCR5コード塩基配列をレポータープラスミドのBamHI部位内にクローニングした。
【0071】
【表1】
【0072】
2−2−2.細胞培養およびレポーター細胞株の設立
前記実施例1でZFNコード配列を有するプラスミドで形質転換させたHEK293T/17(ATCC,CRL-11268TM)細胞とFlp−InTMT−REXTM293細胞(インビトロジェン)を100units/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.1mMの非必須アミノ酸と10%ウシ胎児血清(FBS)が添加されたダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)で培養した。破裂したルシフェラーゼ遺伝子をエンコードするレポータープラスミドを製作者説明書に応じてFlp−InTMT−RexTM293細胞内に安定的に統合させた。要約すると、細胞をレポータープラスミドとpOG44、Flp組換え酵素発現ベクターに形質転換させ、ハイグロマイシンBを使用して選別した。破裂したルシフェラーゼ遺伝子を有しているクローン細胞株を確認し、SSA分析に使用した。
【0073】
2−2−3.SSAシステムを使用した細胞−基盤分析
96−ウェルプレート型の各ウェル当り30,000個のレポーター細胞内に各対のZFN発現プラスミド(それぞれ100ng)をリポフェクタミン2000(インビトロジェン)を使用して形質導入させた。48時間後、ドキシサイクリン(1μg/ml)と共に培養してルシフェラーゼ遺伝子を誘導させた。24時間培養後に、細胞を20μlの1X分解緩衝溶液(プロメガ)で溶解させ、2μlの細胞分解物に10μlのルシフェラーゼ分析試薬(プロメガ)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。
【0074】
2−2−4.結果
ZFNsを暗号化したプラスミドをヒト胎児腎臓細胞(HEK細胞)に形質導入させた。CCR5配列の挿入によって破壊されたホタルルシフェラーゼ遺伝子がゲノムに安定に統合され、部分的に複製された。効果的なZFNsは、CCR5配列内に二重鎖切断(DSB)を生じるはずであり、SSAを介して機能的なルシフェラーゼ遺伝子に復旧できるようにする。ZFNsによるDNA切断効率は、ルシフェラーゼ酵素活性によって測定できる。高効率性のメガヌクレアーゼであるI−SceIを陽性対照群として使用した。前記実験過程を図6に示し、その具体的な実験結果を図7で示した。
【0075】
図7に示すように、多くのZFN対などが相当のルシフェラーゼ活性を示した。315個のZFN対のうち、23個対は、陽性対照群I−SceI対比15−57%のルシフェラーゼ活性を示した。15%より低い活性を示したZFN対なども細胞内で二重鎖切断を誘導することができるが、本発明者らは、非常に高い酵素活性を示した23対に重点を置いてさらなる研究を進行した。23個のZFN二量体などは、CCR5と関連のないDNA配列によって破壊された部分的に複製されたルシフェラーゼ遺伝子を有したゲノムを保有する標的無しレポーター細胞を使用した時、明らかなルシフェラーゼ活性を示さなかった(実験結果は、図示せず)。本結果を介してZFN−媒介性DNA復旧は、CCR5−特異性ということを示唆する。
【0076】
実施例3:ZFNなどで処理したHEK293細胞における突然変異の検出
IVTT分析でエンドヌクレアーゼ活性を示し、細胞−基盤分析でルシフェラーゼ活性を誘導させたZFNsが細胞で内因性の標的配列を修正できるかどうかを調査した。ZFNsによって誘導された二重鎖切断は、エラー発生しやすい非相同末端連結(NHEJ)によって復旧され得る。結果産物であるDNAは、たびたびDSB部位の近くに小さい挿入または欠失(挿入−欠失突然変異)を含む。挿入欠失(indel)突然変異などは、増幅されたDNA断片などを不一致−敏感性T7エンドヌクレアーゼI(T7E1)で処理して検出することができた(図8参照)。
【0077】
具体的に、96−ウェルプレートで前−培養したHEK293T/17細胞をZFN対(それぞれ100ng)を暗号化した2つのプラスミドでリポフェクトアミン2000(インビトロジェン)を使用して形質導入させた。培養72時間後、製作者説明書に記載されたようにG−spinTM遺伝体DNA抽出キット(iNtRON BIOTECHNOLOGY)を使用してZFN−形質導入された細胞からゲノムDNAを抽出した。ZFN標的部位を含むゲノムの部分を増幅し、溶かし且つアニーリングしてヘテロ接合DNAを形成した。Z30部位のためにプライマー9と12を使用し、Z266とZ360部位のためにプライマー10と12、Z410、Z426とZ430部位のためにはプライマー11と12、Z836とZ891部位のためのプライマー13と14を使用した(表1参照)。アニーリングされたDNAを37℃で15分間5unitsのT7エンドヌクレアーゼ1(New England BioLabs)で処理した後、2.5倍体積のエタノールを添加して沈殿させた。沈殿されたDNAをアガロースゲル電気泳動で分析した。その結果を図9に示した。
【0078】
図9に示すように、ZFNが処理された細胞から増幅されたDNAの小さい断片などをT7E1で切断した。各ZFN対は、ZFNなどが8個の異なる部位などを標的化する事実を反映する特有の切断パターンを形成した。さらに、結果として出た、DNAバンドなどのサイズは予想したところようであった。T7E1分析で試験した23個のZFN対のうちで、21個のZFN対は予想したサイズを有した検出可能なDNAバンドなどを示した(実験結果は、図示せず)。
【0079】
また、本発明者らは、IVTT分析で明確なエンドヌクレアーゼ活性を示さなかったり、細胞−基盤SSAシステムで意味のあるルシフェラーゼ活性を示さなかった代表的なZFN対を試験するためにT7E1分析を使用したが、IVTT試験は行わなかった。T7E1分析結果、いずれのZFN対も検出可能な水準でDNA突然変異を誘導しなかった。
【0080】
実施例4:ZFNなどによって誘導された突然変異に対するDNA配列の分析
本発明者らは、CCR5遺伝子内の他の部位をそれぞれ標的化する代表的なZFN対8個を選択して付加的な研究を行った(表2参照)。先ず、任意の個別的な8個のZFNなどがホモ二量体として機能できるかどうかを検査した。単独ZFN単量体それぞれの遺伝子標的化活性度をT7E1分析を使用して評価した。予想した通りに、ZFN単量体などのうち、いずれも検出可能なDNA切断を生じなかった(実験結果は、図示せず)。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明者らは、標的化された領域のDNA配列を確認してZFNなどによって誘導された突然変異などを確認し、突然変異発生率を測定した。8個のZFN対のそれぞれに形質導入された細胞などから増幅されたDNAをクローニングし、配列を確認した。様々な挿入および欠失などがDSB部位近傍で観察された(図10〜14参照)。これらの突然変異パターンなどは、エラー発生しやすいNHEJ−連関突然変異の表示として、これらと類似するパターンなどが他の文献によって報告されたことがある(Bibikova, M., Golic, M., Golic, K.G. & Carroll, D. Targeted chromosomal cleavage and mutagenesis in Drosophilausing zinc-finger nucleases. Genetics 161, 1169-1175 (2002); Morton, J., Davis, M.W., Jorgensen, E.M. & Carroll, D. Induction and repair of zinc-finger nuclease-targeted double-strand breaks in Caenorhabditiselegans somatic cells. Proc Natl Acad Sci U S A 103, 16370-16375 (2006); Santiago, Y. et al. Targeted gene knockout in mammalian cells by using engineered zinc-finger nucleases. Proc Natl Acad Sci U S A105, 5809-5814 (2008))。小さい部分の挿入−欠失突然変異および置換に加えて、本発明者らは、2つのZFN対(図11のZ30と、図12のZ360参照)により相対的に大きい挿入など(それぞれ互いに異なる81ヌクレオチド)を観察した。DNA配列分析によれば、挿入された配列などがZFNなどを暗号化したプラスミドから出たことが明らかになった。
【0083】
区別される部位などを標的化する8個のZFN対は、突然変異率が2.4%から17%に示され(図15参照)、この時、突然変異率は、突然変異クローンの数を分析された全体クローンの数で割って計算した。ZFN誘導突然変異の高い効率性は、ただ10個〜100個の単一細胞由来のコロニーなどをスクリーニングしてクローニングされた突然変異細胞を分離できるということを示唆する。
【0084】
実施例5:ZFN処理後のクローン細胞の分離
5−1.本発明のZFNの非標的化(off-target)効果
他の研究者らの先行研究に示されたように(Szczepek, M. et al. Structure-based redesign of the dimerizationinterface reduces the toxicity of zinc-finger nucleases. Nat Biotechnol25, 786-793 (2007); Miller, J.C. et al. An improved zinc-finger nuclease architecture for highly specific genome editing. Nat Biotechnol25, 778-785 (2007))、あるZFNなどは、非標的化(off-target)効果を持って哺乳動物細胞で発現させた時に細胞毒性を示す。しかし、本発明者らは、本発明のZFNなどで形質転換されたHEK293細胞で明確な成長遅延が観察されなかった。しかし、初期に制限された数の単一細胞コロニーなどをスクリーニングした時、ZFN処理によってゲノム配列が修正されたクローン性突然変異細胞などを分離することができなかった。このような事実は、ZFNによって誘導された突然変異を保有した哺乳類細胞の成長が損傷されたことを示す。
【0085】
従って、本発明者らは、ZFN−誘導突然変異を有する哺乳類細胞の成長が損傷されて修正されない細胞に比べて顕著に成長が抑制されるかどうかを調査するために、ZFN形質導入の後、3日、6日、そして9日目になる日に細胞から分離したDNAに対してT7E1分析を行った。その分析のために、Z891対を選択し、図16に示すように、切断されたDNAの断片などは、3日目になる日に比べて6日目に顕著に減少し、ZFNを処理した以後の9日目になる日では、ほとんど検出できなかった。このような結果は、ZFN媒介性突然変異は、細胞成長に細胞毒性効果を持っていることを示唆する。
【0086】
5−2.本発明のZFNヘテロ二量体の非標的化(off-target)効果
ZFNなどの非標的化(off-target)効果は、主に、ヘテロ二量体およびホモ二量体の両方を形成するZFNなどの活性によって引き起こされる。このような効果は、ホモ二量体を形成できず、ヘテロ二量体だけを形成するFokIヌクレアーゼ変形体を使用することによって、顕著に減少させ得た。従って、ZFNsの細胞毒性効果を減少させるために、本発明者らは、いわゆる強制的なへテロ二量体(obligatory heterodimers)を2つの異なる類型で準備(図16で“RR/DD”二量体などと、“KK/EL”二量体などとして示した)し、T7E1分析を行った。T7E1分析結果、細胞がRR/DDZFN対に形質転換される時、切断されたDNA断片などがZFN処理9日以後でも維持されたこととして明らかになった。強制的なへテロ二量体ZFNの減少した細胞毒性が細胞内DNA切断特異性強化によるものであるということを確認するために、本発明者らは、ZFNを処理した細胞でDSB個数をDSBにリクルートされる蛋白質である53BP1に対する抗体を使用して分析した。具体的に、53BP1に対する核内染色をHEK293T/17細胞で行った。カバー(NUNC)が装着されたLab−Tekのチャンバースライドを使用して細胞を付着させ、3.7%ホルムアルデヒドで固定させてスライドを準備した。続いて、常温(RT)で10分間PBS(phosphate-buffered saline)内0.2%トリトンX−100で処理することによって、細胞を透過性があるように作った。続いて、細胞を5%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で抗−53BP1ウサギポリクローナル抗体(Bethyl Laboratories)とインキュベーションして非特異的染色を遮断させ、続いて、Alexa Fluor488−接合された二次抗体(インビトロジェン−Molecular Probes)とインキュベーションした。スライドをDAPI(シグマ)存在下で搭載して細胞核を対比染色し、免疫蛍光顕微鏡(Carl Zeiss−LSM510)で検査した。その結果を図17および18に示した。図17および18に示すように、RR/DDZFN対で処理した細胞で、対応する野生型ZFN対で処理した細胞と比較した時、53BP1フォーカスなど(foci)の数が顕著に減少した。
【0087】
5−3.ZFNで処理したゲノムでの突然変異確認
次に、96−ウェルプレートで分離成長させた225個の単一細胞コロニーをスクリーニングした後、Z891RR/DDZFN対を用いて7個の互いに異なる突然変異クローンHEK293細胞などを分離した。本発明者らは、これらのクローン細胞内のCCR5領域などのDNA塩基配列を分析してZFN−誘導ゲノム修正を確認した。修正された細胞でゲノムのDNA塩基配列を分析した結果、これら7個のクローンなどのうち、6個のクローンではCCR5対立遺伝子のうち、一ヶ所で欠失あるいは挿入が生じられ、他の1つのクローンは、2つの対立遺伝子で修正が示された(図19参照)。293細胞の遺伝体は、部分的に3つの染色体を示すからCCR5遺伝子が3つ存在する。2つのCCR5対立遺伝子の両方で修正されたクローンで1つの修正されなかった野生型配列が観察された(図19参照)。ZFN処理によって対立遺伝子2つを修正できるということは、選択マーカーを使用せず単一段階でホモ接合ノックアウト細胞を分離できるということを示唆する。
【0088】
実施例6:ホモCCR2部位でCCR−5標的化ZFNなどの非標的化(off-target)効果
CCR2遺伝子は、CCR5遺伝子と非常に高い相同性を有しており、多くのCCR5ZFN認識要素などがCCR2部位でも保存されている。従って、本発明者らは、CCR5部位に対して設計された8個のZFNなどがCCR2部位での相同性または同一配列も変異させ得るかどうかを検査した。CCR2遺伝子にある同一の認識要素などを持っている3つのZFN対(Z360、Z410とZ430)は、T7E1分析で効果的な遺伝体修正を誘導することができた(図20参照)。CCR2遺伝子の場合、Z891対の認識要素はCCR5遺伝子の相応する部分と完璧に一致し、1つの塩基が不一致する12−bpハーフ部位(half-site)から構成されている。予想した通りに、Z891対は、またCCR2部位で相当な遺伝子標的化活性を示した。また、本発明者らは、CCR2部位内の認識要素が各12−bpハーフ部位(half-site)で1つの塩基が不一致するサンガモ社のCCR5標的化ZFN対を試験し、サンガモ社のZFNは、相同性CCR2部位で非標的化(off-target)ゲノム修正を示した(図20参照)。一方、CCR2部位で認識要素が2つ以上の不一致を示すZFN対(Z30、Z266とZ836)は、ZFN活性が観察されなかった。
【0089】
また、本発明者らは、Z891対にHEK293細胞を形質導入させて獲得した7個の突然変異クローン細胞が、意図したCCR5部位での突然変異に加えて高い相同性を有したCCR2部位のDNA塩基配列においても突然変異を誘導するかどうかを実験した。その結果を図21に示した。図20に示すように、Z891対は、T7E1分析でCCR5部位だけでなく、CCR2部分に対しても相当の遺伝子標的化活性を示したが、CCR2部位はこれらのクローン細胞株などで変異が起きなかった。このような結果は、ZNF処理の後、細胞をスクリーニングしてただ意図した標的部位のみ変異が起きて、相同性部位では変異が起きない細胞を分離することができるということを立証した。
【0090】
実施例7:モジュール交換分析
本発明者らは、モジュラー組み立てを介したZFNなどの製作が、なぜゲノム編集において高い成功率を導くのか調査した。具体的に、本発明のZFNを同一のDNA−結合特異性を示すバルバスまたはサンガモのモジュールから製作したZFNで置換するモジュール交換実験を行った。
【0091】
このために、バルバスまたはサンガモモジュールのみで構成された8個の新しいZFN単量体を準備し、これでトルゼンモジュールのみで構成された6個の異なるZFN単量体などを代替した(表3および図22参照)。これらの新しいZFN単量体のそれぞれは、適切な対であるZFN単量体などと対をなすようにし、その結果産物であるZFN対をSSAとT7E1分析を介して検査した。図23および24に示すように、新しく合成されたZFN単量体などのうち、少なくとも1つで構成されたZFN対は、いずれもSSAシステムでなんらの明確な活性を示さなかった(図23参照)。さらに、それらの中でどんなZFNもT7E1分析で遺伝子標的化活性を示さなかった(図24参照)。
【0092】
【表3】
【0093】
このような結果などは、機能的ZFアレイなどのモジュール組み立てにおいて工学的に製作されたZFなどより自然発生ZFなどがより信頼できるような構造を構成するという提案を強力に裏付ける。
【0094】
実施例8:本発明のZFモジュール評価
本発明者らが製作した315個のZFN対に対する統計学的分析は、関心のある追加的な内在性遺伝子の標的化された突然変異のために使用され得る新しいZFN設計の基礎を提供することができる。このために、本発明者らは、SSAシステムで陽性点数を有する23個のZFN対で各ZFの発生頻度数を測定した。続いて、各ZFに対する“活性指数”を全体208ZFN単量体内モジュールの発生頻度数で割ることによって決定した(図1および2)。一部高い活性を示すZFなど、例えば、“QNTQ”と“RSHR”は、それぞれ50%と38%の活性指数を持ち、それらの高い活性指数は、生体内部位特異的なヌクレアーゼ活性を予測できるから、それらのモジュールなどが信頼性があるということを提案している。“QSNK”と“rdae”のような他のZFなどは、本分析で非効率的なモジュールとして示され、活性指数0値を示した。それらの2種類のZFなどのいずれもそれぞれ15回使用したが、そのモジュールなどを含むZFNなどのうち、何も本分析で活性を示さなかった。また、本発明者らは、同一のDNA認識特異性を持ったZFなどの活性指数を比較した。一部のZFなどは、他の標的−等価物モジュールよりも顕著に優れた。例えば、“DSNR”と“HSNK”の両方とも同一のGAC塩基配列を認識した。ZFNなどの製作に“DSNR”を使用すれば、多くの活性ヌクレアーゼ(活性指数=35%)を生産できるようにしたが、一方“HSNK”の統合は、単に非活性ZFNなどのみを生産するようにした(活性指数=0%)。
【0095】
前記の統計学的分析に基づいて、本発明者らは、以後の遺伝子編集研究のために、試験的に37個のZFなど(24個のトルゼンモジュール、1つのサンガモモジュール、12個のバルバスモジュール)を使用することができることを提案する(図1および2参照)。もし、本発明者らが実験にそれら37個のモジュールのみを使用したとすれば、これは現在の比率(24%)よりもはるかに大きい53%の全体的な成功率数値が出てきただろう(図26参照)。それら37個のモジュールのすべては、活性ZFNなどで少なくとも一回ずつは発見された。2つあるいはそれ以上の標的−等価物ZFなどが存在した時、非常に高い活性指数を持ったモジュールを選択した。37個のZFなどは、全体的に3−bp下位部位64個のうち、38個を認識した。与えられた1−kbpのランダムDNA配列の場合、3−フィンガーZFN二量体に対する88[=(38/64)6X1000X2]の可能性のある認識部位など(ハーフ部位などの間に5または6個の塩基スペーサー含む)が存在することができ、4−フィンガー二量体では、31個の認識部位を予想することができる。本発明の成功率を9.1%から26%と(もし、37個のZFなどを使用するとすれば、実際成功率は顕著に高いが、残りは非効率的なモジュールではない)仮定すると、1−kbpの標的配列で平均8部位でZFN−媒介性ゲノム編集が可能であるだろう。このような結果は、大部分の真核遺伝子が本発明のZFN組み立て方法で“標的化”が可能であるということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0096】
多くの遺伝子治療の適用時、前記したジンクフィンガーヌクレアーゼは、CCR5遺伝子をノックアウトさせるのに使用してエイズ患者などでHIV感染に抵抗性のあるT細胞を生産することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質であって、
前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、
前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、
前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識および切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)。
【請求項2】
前記ジンクフィンガードメインは、3または4つのジンクフィンガーモジュールを含むものである請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項3】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つである請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項4】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体形態で作用してヌクレオチド配列を切断することを特徴とする請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項5】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1つである請求項4に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項6】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項7】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項6に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項8】
請求項1のジンクフィンガーヌクレアーゼを1対以上含む、標的化された領域内でヌクレオチド配列の切断、交替または、変更のためのキット。
【請求項9】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ対は、同一または異なるジンクフィンガードメインであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ対は、表2に記載されたもののうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項12】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項12に記載のキット。
【請求項14】
(a)関心領域のヌクレオチド配列を選択する段階;
(b)前記配列に結合するジンクフィンガーモジュールを選択し、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含みながら、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであるジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階;
(c)前記ジンクフィンガードメインとヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項15】
前記ジンクフィンガードメインは、3または4つのジンクフィンガーモジュールを含むものである請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項16】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つである請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項17】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体形態で作用してヌクレオチド配列を切断することを特徴とする請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項18】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1つである請求項17に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項20】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項19に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項21】
(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;
(b)第1のヌクレオチド配列と結合する請求項1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現させて前記細胞内へ導入させる段階;および
(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合して前記関心領域内の細胞染色質を切断する段階を含む関心領域内のヌクレオチド切断方法。
【請求項22】
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼは、第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含み、
(e)第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択し、前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;および
(f)(前記細胞内で発現されたり、導入された)第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが結合する第1のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合させる段階を含む請求項21に記載の関心領域内の細胞染色質切断方法。
【請求項23】
前記第1および第2のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項24】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項25】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項26】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項27】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項26に記載の切断方法。
【請求項28】
(a)関心領域を選択する段階;
(b)前記関心領域内の第1のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを提供する段階;
(c)前記第1の配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(d)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で同時または、分離して発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガドメインは、前記第1のヌクレオチド配列と結合し、前記第2のジンクフィンガードメインは、前記第2のヌクレオチド配列と結合し、前記結合によって前記ヌクレオチド切断ドメインを位置させて関心領域内の細胞染色質を切断させる、関心領域内の細胞染色質切断方法。
【請求項29】
前記第1および第2のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項30】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項31】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項28に記載の切断方法。
【請求項32】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項33】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項32に記載の切断方法。
【請求項34】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項33に記載の切断方法。
【請求項35】
細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列交替方法であって、
(a)関心領域内で9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;
(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階;
(d)前記細胞を前記第1のヌクレオチド配列と相同性があるが同一ではない第4のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに接触させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質が関心領域内で切断され、これによって前記第1のヌクレオチド配列と前記第4のヌクレオチド配列との間の相同組換えを容易にして前記第1のヌクレオチド配列を前記第4のヌクレオチド配列に交替することを特徴とする交替方法。
【請求項36】
前記第2および第3のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項37】
前記第4のヌクレオチド配列は、前記関心領域と相同性がある配列などに隣接している関心領域内に存在しない配列を含むことを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項38】
前記第1のヌクレオチド配列が遺伝子内突然変異を含むことを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項39】
前記突然変異は、点突然変異、置換、欠失および挿入から構成される群からいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項38に記載の交替方法。
【請求項40】
前記第4のヌクレオチド配列は、前記遺伝子の野生型配列を含むことを特徴とする請求項38に記載の交替方法。
【請求項41】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項42】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項35に記載の交替方法。
【請求項43】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項44】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項43に記載の交替方法。
【請求項45】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項44に記載の交替方法。
【請求項46】
細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列変更方法であって、
(a)関心領域内の9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;
(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質を関心領域内で切断させ、前記切断部位で前記第1のヌクレオチド配列を変更させることを特徴とする変更方法。
【請求項47】
前記突然変異は、点突然変異、置換、欠失および挿入から構成される群からいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項48】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項49】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項46に記載の変更方法。
【請求項50】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項51】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項50に記載の変更方法。
【請求項52】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項51に記載の変更方法。
【請求項1】
ジンクフィンガードメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質であって、
前記ジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、
前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来し、
前記融合蛋白質は、細胞染色質内の関心領域を含むヌクレオチド配列を認識および切断することを特徴とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)。
【請求項2】
前記ジンクフィンガードメインは、3または4つのジンクフィンガーモジュールを含むものである請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項3】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つである請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項4】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体形態で作用してヌクレオチド配列を切断することを特徴とする請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項5】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1つである請求項4に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項6】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項7】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項6に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項8】
請求項1のジンクフィンガーヌクレアーゼを1対以上含む、標的化された領域内でヌクレオチド配列の切断、交替または、変更のためのキット。
【請求項9】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ対は、同一または異なるジンクフィンガードメインであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ対は、表2に記載されたもののうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項12】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項12に記載のキット。
【請求項14】
(a)関心領域のヌクレオチド配列を選択する段階;
(b)前記配列に結合するジンクフィンガーモジュールを選択し、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含みながら、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであるジンクフィンガードメインを工学的に製造する段階;
(c)前記ジンクフィンガードメインとヌクレオチド切断ドメインを含む融合蛋白質を発現させる段階を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項15】
前記ジンクフィンガードメインは、3または4つのジンクフィンガーモジュールを含むものである請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項16】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つである請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項17】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、二量体形態で作用してヌクレオチド配列を切断することを特徴とする請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項18】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1つである請求項17に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項14に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項20】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項19に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼの製造方法。
【請求項21】
(a)関心領域内の第1のヌクレオチド配列を選択する段階;
(b)第1のヌクレオチド配列と結合する請求項1のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼを前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、前記細胞外で発現させて前記細胞内へ導入させる段階;および
(d)(細胞内で発現されたり、細胞内に導入された)第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが前記配列と結合して前記関心領域内の細胞染色質を切断する段階を含む関心領域内のヌクレオチド切断方法。
【請求項22】
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼは、第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含み、
(e)第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを選択し、前記ヌクレオチド配列を有する細胞内で発現させたり、細胞外で発現して前記細胞内へ導入させる段階;および
(f)(前記細胞内で発現されたり、導入された)第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが結合する第1のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合させる段階を含む請求項21に記載の関心領域内の細胞染色質切断方法。
【請求項23】
前記第1および第2のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項24】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項25】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項26】
前記ヌクレオチド切断ドメインは、タイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項21又は22に記載の切断方法。
【請求項27】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項26に記載の切断方法。
【請求項28】
(a)関心領域を選択する段階;
(b)前記関心領域内の第1のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを提供する段階;
(c)前記第1の配列から2〜50ヌクレオチドほど離れている関心領域内の第2のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(d)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第1のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で同時または、分離して発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガドメインは、前記第1のヌクレオチド配列と結合し、前記第2のジンクフィンガードメインは、前記第2のヌクレオチド配列と結合し、前記結合によって前記ヌクレオチド切断ドメインを位置させて関心領域内の細胞染色質を切断させる、関心領域内の細胞染色質切断方法。
【請求項29】
前記第1および第2のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項30】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項31】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項28に記載の切断方法。
【請求項32】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項28に記載の切断方法。
【請求項33】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項32に記載の切断方法。
【請求項34】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項33に記載の切断方法。
【請求項35】
細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列交替方法であって、
(a)関心領域内で9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;
(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階;
(d)前記細胞を前記第1のヌクレオチド配列と相同性があるが同一ではない第4のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに接触させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの2つ以上は、自然界に存在するジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質が関心領域内で切断され、これによって前記第1のヌクレオチド配列と前記第4のヌクレオチド配列との間の相同組換えを容易にして前記第1のヌクレオチド配列を前記第4のヌクレオチド配列に交替することを特徴とする交替方法。
【請求項36】
前記第2および第3のヌクレオチド配列の間で切断がなされることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項37】
前記第4のヌクレオチド配列は、前記関心領域と相同性がある配列などに隣接している関心領域内に存在しない配列を含むことを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項38】
前記第1のヌクレオチド配列が遺伝子内突然変異を含むことを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項39】
前記突然変異は、点突然変異、置換、欠失および挿入から構成される群からいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項38に記載の交替方法。
【請求項40】
前記第4のヌクレオチド配列は、前記遺伝子の野生型配列を含むことを特徴とする請求項38に記載の交替方法。
【請求項41】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項42】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項35に記載の交替方法。
【請求項43】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項35に記載の交替方法。
【請求項44】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項43に記載の交替方法。
【請求項45】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項44に記載の交替方法。
【請求項46】
細胞染色質で関心領域内の第1のヌクレオチド配列変更方法であって、
(a)関心領域内の9個以上のヌクレオチドを含む第2のヌクレオチド配列と結合する第1のジンクフィンガドメインを工学的に製造する段階;
(b)前記第2のヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドほど離れて位置し、9個以上のヌクレオチドを含む第3のヌクレオチド配列と結合する第2のジンクフィンガードメインを提供する段階;
(c)前記第1のジンクフィンガドメインおよび第2のヌクレオチド切断ドメインを含む第1のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および前記第2のジンクフィンガードメインおよび第3のヌクレオチド切断ドメインを含む第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを細胞内で発現させる段階を含み;
前記第1および第2のジンクフィンガードメインは、3つ以上のジンクフィンガーモジュールを含み、前記ジンクフィンガーモジュールのうちの1つ以上は、自然界に存在する野生型ジンクフィンガーモジュールから由来したものであり、
前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第2配列の結合および前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼと前記第3配列の結合によって切断ドメインを位置させ、前記細胞染色質を関心領域内で切断させ、前記切断部位で前記第1のヌクレオチド配列を変更させることを特徴とする変更方法。
【請求項47】
前記突然変異は、点突然変異、置換、欠失および挿入から構成される群からいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項48】
前記ジンクフィンガーモジュールは、図1に記載されたモジュールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項49】
前記第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼは、表2に記載されたもののうちのいずれか1対である請求項46に記載の変更方法。
【請求項50】
前記第1および第2のヌクレオチド切断ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項46に記載の変更方法。
【請求項51】
前記エンドヌクレアーゼがタイプIIs制限エンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項50に記載の変更方法。
【請求項52】
前記タイプIIs制限エンドヌクレアーゼは、FokIであることを特徴とする請求項51に記載の変更方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図5】
【図9】
【図16】
【図17】
【図20】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図5】
【図9】
【図16】
【図17】
【図20】
【図24】
【公表番号】特表2012−514595(P2012−514595A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544354(P2011−544354)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005315
【国際公開番号】WO2010/076939
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511158616)ツールゲン インコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005315
【国際公開番号】WO2010/076939
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511158616)ツールゲン インコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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