説明

新規なスチレンを含有するスチレンブタジエンゴム

本発明はSSBRゴムの改善された組成物に関する。改善された組成物は、転がり抵抗、HBU、摩耗、グリップ性および/または引裂強さのような特性の十分なまたは改善されたバランスを示す。その組成物は効率的でコスト効率の良い方法で作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高スチレン部分および低スチレン部分を含む、改善されたスチレンブタジエンゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)を含む組成物は、多くの場合、シス−ブタジエンゴム(BR)または天然ゴム(NR)のような第二のゴムと組み合わせて、タイヤトレッドのような製品に使用される。発熱性(HBU)、転がり抵抗、グリップ性および/または引裂強さのような組成物の特徴は、SSBRの組成、例えばスチレンおよび組み入れられたブタジエンのビニル含有量に大きく影響を受けると考えられている。典型的には、スチレン含有量、ビニル含有量またはそれらの両方の増加は、グリップ性、引裂強さおよび/またはブレーキ性能のような特性を改善するかもしれないが、HBU、転がり抵抗および/または耐摩耗性のような特性を悪化させるかもしれない。
【0003】
生じる重合体を改変し、かつウェットグリップ性および摩耗バランスのような特性を改善する企てにおいて、種々の方法および組成が試みられてきた。欧州特許出願公開第1637353号明細書に記載されているように、油展高スチレン低ビニルSSBRと、シス−ポリブタジエン、シリカ、プロセスオイルおよび有機ケイ素化合物との混合物が、これらの性質をバランスさせようとする試みにおいて使用されるかもしれない。しかしながら、天然ゴムおよび/または充填剤としてのカーボンブラックと混ぜ合わせたときに、グリップ性および転がり抵抗挙動を改善する追加の化合物が依然として必要である。
【0004】
独国特許発明第3108583号明細書は、目標重合体の最終的なスチレン比率より高いスチレン比率を有する単量体の一部を、溶媒を含む反応帯域の中に入れる方法で、スチレンおよびブタジエンを重合することを提案している。同時に、目標重合体と同じまたは目標重合体より低い質量比率のスチレンを含むスチレン/ブタジエン混合物が、ある時間にわたって反応帯域に仕込まれる。生じる重合体は、二官能カップリング剤でカップリングされる。カップリング効率は約50%である。不運にも、生じる重合体は、鎖の末端において相対的に高いスチレン含有量を有し、重合体鎖の中央において相対的に低いスチレン含有量を有する。そのようなスチレンブロックは、多くの場合、不十分なHBUおよび転がり抵抗特性に帰着する。
【0005】
独国特許発明第2247470号明細書は、ジリチオ開始剤を使用し、重合成長速度以上の速度で反応帯域に単量体混合物を仕込むことを提案している。不運にも、そのようなジリチオ開始剤はコスト効率が良くなく、生じる重合体は、多くの場合、重合体鎖の末端において小さいスチレンブロックを有する。そのようなブロックは、不十分な転がり抵抗および/またはHBUに帰着するかもしれない。
独国特許発明第1300239号明細書においては、開始剤、溶媒、および重合中維持される両方の単量体の特定の比率からなる単量体混合物を含む反応帯域に、より速く反応する単量体が仕込まれる。不運にも、生じる重合体は、長い重合時間の間にほんのわずか増加したスチレン含有量を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1637353号明細書
【特許文献2】独国特許発明第3108583号明細書
【特許文献3】独国特許発明第2247470号明細書
【特許文献4】独国特許発明第1300239号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、SSBR組成物の改善された組成物に対するニーズがある。そのような改善された組成物が転がり抵抗、HBU、摩耗、グリップ性および/または引裂強さのような特性の十分なまたは改善されたバランスを示すならば、望ましいであろう。効率的でコスト効率の良い方法でそのような組成物を作ることができたならば、さらに望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
好都合なことに、前記のニーズの多くを満たし、また他の望ましい特性を有する、改善されたSSBR組成物およびそれを製造する方法が見いだされた。
【0009】
1つの実施態様において、本発明の組成物はスチレンブタジエンゴムを含む。そのスチレンブタジエンゴムは、加硫の前に、次の1つ以上によって特徴づけられる。(a)1つの重合体鎖の中に互いに相溶しない2つ以上の部分、または(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度、または(c)少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値、または(d)スチレン含有量がゴムの全質量を基準として少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分。そのスチレンブタジエンゴムは、少なくとも第二のゴム(例えばタイヤトレッド組成物に使用されるゴム)と相溶しうる部分および前記と同じ第二のゴムと相溶しない部分を含む。
【0010】
もう1つの実施態様において、本発明は、スチレンブタジエンゴムを製造する方法に関する。その方法は、最初に、1つの実施態様においては約80%より高い、別の実施態様においては約88%より高い、別の実施態様においては約99%より高い単量体転化率のスチレンブタジエンゴムの第一の部分を得るのに十分な重合条件下で、モノリチオ開始剤、ランダム化剤および溶媒の存在下で、第一のスチレン:ブタジエンのモル比で、反応器の中にスチレンおよびブタジエンを仕込むことを含む。次に、仕込まれた単量体の総量を基準として約95%より高い、別の実施態様においては約98%より高い、別の実施態様においては約99%より高い最終単量体転化率に重合することによってスチレンブタジエンゴムの第二の部分を得るのに十分な重合条件下で、スチレンブタジエンゴム、ランダム化剤および溶媒の第一の部分の存在下で、スチレン、ブタジエンまたはそれらの混合物が、第二のモル比で反応器の中に仕込まれる。第一および第二のモル比は、次の1つ以上によって特徴づけられるスチレンブタジエンゴムを製造するために選択される。a)1つの重合体鎖中の互いに相溶しない2つ以上の部分、または(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度、または(c)少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値、または(d)スチレン含有量がゴムの全質量を基準として少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分。そのスチレンブタジエンゴムは、第二のゴム(例えばタイヤトレッド組成物に使用されるゴム)と相溶しうる少なくとも1つの部分、および前記と同じ第二のゴムに相溶しない部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、重合体比較例1(C1)および重合体実施例1〜3(E1〜E3)のスチレンブタジエンゴムのガラス転移挙動を示す。
【0012】
【図2】図2は、重合体比較例1〜2(C1〜C2)および重合体実施例4(E4)のスチレンブタジエンゴムのガラス転移挙動を示す。
【0013】
【図3】図3は、重合体比較例1(C1)および重合体実施例1(E1)のある温度範囲にわたる損失正接を示す。
【0014】
【図4】図4は、重合体比較例1(C1)および重合体実施例2〜3(E2〜E3)のある温度範囲にわたる損失正接を示す。
【0015】
【図5】図5は、重合体比較例1〜2(C1〜C2)および重合体実施例4(E4)のある温度範囲にわたる損失正接を示す。
【0016】
【図6】図6は実施例1のサイズ排除クロマトグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「重合体」とは、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、単量体を重合することによって調製された重合体化合物を意味する。総称的な用語「重合体」は、用語「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」ならびに4種以上の単量体を重合することによって作られた重合体を包含する。
【0018】
「組成物」とは、ここで使用するときは、その組成物とともに、その組成物の成分または原料から形成または誘導された反応生成物、加硫された生成物および分解生成物を含む物質の混合物を含む。
【0019】
句「1つの重合体鎖中の部分」の中で使用される「部分」とは、単一の重合体鎖の一部またはセグメントを意味する。異なる部分は相溶しうるかもしれないし相溶しないかもしれない。
【0020】
「ビニル含有量」とは、ここで使用するときは、スチレンブタジエン重合体のブタジエン部分の中のビニル基の質量百分率を意味する。
【0021】
「スチレン:ブタジエンのモル比」とは、ここで使用するときは、特定の部分の重合のために使用されたスチレンのモル数をその特定の部分の重合のために使用されたスチレンとブタジエンのモル数の合計で割った比を意味する。例えば、下記の実施例1では、第一の部分の重合において、248.78g(2.39モル)のスチレンが、247g(4.558モル)のブタジエンとともに仕込まれる。これは0.3438[2.39モル/(2.39モル+4.558モル)]のスチレン:ブタジエンのモル比に帰着する。同様に、実施例1において重合体の第二の部分を重合するために、48.5g(0.466モル)のスチレンが446g(8.247モル)のブタジエンと共に仕込まれる。これは第二の部分について0.0534のスチレン:ブタジエンのモル比に帰着する。したがって、両方の部分のモル比の違いは0.2904(0.3438−0.0534)である。
【0022】
スチレンブタジエンゴム組成物
1つの態様において、本発明は、溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)を含む組成物に関係する。そのゴムは、加硫の前に、次の1つ以上の点で独特である。(a)互いに相溶しない1つの重合体鎖中の2つ以上の部分、または(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度、または(c)少なくとも約0.65の(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値、または(d)スチレン含有量が少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分。(b)に関し、3つ以上のガラス転移温度がある場合は、最も異なる2つが、第三またはそれ以上のガラス転移温度にかかわらず、少なくとも約6℃異なるべきである。同様に、(c)に関し、3つ以上のδ(SBR)値がある場合は、最も異なる2つが、第三またはそれ以上のδ(SBR)値にかかわらず、少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なるべきである。また(d)に関し、スチレン含有量が異なる3つ以上の部分がある場合は、最も異なる2つが、第三またはそれ以上の部分にかかわらず、少なくとも約20質量%異なるべきである。1つの実施態様において、そのゴムは、特徴(a)〜(d)の1つを有する。別の実施態様において、そのゴムは、特徴(a)〜(d)の2つを有する。別の実施態様において、そのゴムは、特徴(a)〜(d)の3つを有する。別の実施態様において、そのゴムは、特徴(a)〜(d)の4つを有する。また、そのスチレンブタジエンゴムは、それが少なくとも第二のゴム(例えばタイヤトレッド組成物に使用されるゴム)と相溶しうる部分および前記と同じ第二のゴムと相溶しない部分を含むという点で独特である。
【0023】
上記のスチレンブタジエンゴムの特性は加硫の前のものである。本発明のスチレンブタジエンゴムは、所望の用途に依存して、加硫されてもよいし、加硫されなくてもよい。スチレンブタジエンゴムを加硫することが望ましい場合は、そのような加硫は特性に影響を与えるかもしれない。特性が影響されるかもしれない程度は、一部、特定の組成およびその特性に依存するとともに、加硫の性質およびタイプにも依存する。
【0024】
「不相溶の」または「相溶しない」とは、2つ以上の部分または成分が混和しないことを意味する。他方、相溶するとは、2つ以上の部分または成分が混和できることを意味する。他の前記の特性に関して、測定方法は、当業者によって使用され、および/または下記の実施例に詳細に記載される。重合体の混和性は、しばしば、例えば、エス・クライウス著、純正応用化学(Pure & Applied Chem.)、第58巻、第12号、第1553頁〜第1560頁に記載されているガラス転移の調査で判断される。混和性の重合体は、例えば膨張率測定、動的機械方法、誘電法、屈折率対温度または示差走査熱量測定法(DSC)、示差熱分析または放射線走査熱量測定法(radioscanning calorimetry)によって測定したときにたった1つのガラス転移温度を有するべきである。
【0025】
本発明の目的のためには、生のSSBRの部分が互いに不混和であるか混和性であるかを特徴づけるためにDSCが用いられ、一方、スチレンブタジエンゴムが少なくとも前記第二のゴムと相溶しない部分を含むかどうか決めるために、加硫された化合物についての損失正接測定が使用される。DSC法については、1つを超えるガラス転移温度の出現は、SSBR組成物の中に混和しない部分があることを示す。たった1つのガラス転移温度の出現は、重合体鎖の部分の相溶性すなわち混和性の証拠として使用された。
【0026】
下記の試験方法に記載されるような加硫された化合物についての損失正接測定値の温度の依存性は、スチレンブタジエンゴムが少なくとも前記第二のゴムと相溶しない部分を含むかどうかを特徴づけるために使用される。少なくとも2つの極大限の出現は、少なくとも前記第二のゴムと相溶しないSSBRの部分があることを示す。望むならば、溶解度パラメーターδ(SBR)((J/cm0.5)は、SSBRの各々の部分についてシュースター(Schuster)ら、ゴムの化学と技術(Rubber Chem. Technology)、1996年、第69巻、p.769に従ってその組成から計算することができる。このパラメーターは、組成物に使用され得る他のゴム、例えば、第二または第三のゴムとの、SSBRの部分の混和性を評価するのに有用であり得る。加硫したとき、加硫された組成物は、損失正接の温度依存曲線における少なくとも2つの極大限によって特徴づけられることが望ましいかもしれない。
【0027】
言いかえれば、本発明のSSBRのある部分は加硫された組成物中で第二のゴムと相溶性であり、一方、本発明のSSBRの別の部分は加硫された組成物中で第二のゴムと不相溶であることが望ましい。前記の溶解度パラメーターは、本発明のSSBRの各々の部分と第二のゴムとの相溶性を評価するのに望ましい方法である。本発明のSSBRのある部分の溶解度パラメーターと第二のゴムの溶解度パラメーターの差の絶対値は、0.65未満であるべきであり、すなわち第二のゴムはSSBRのこの特定の部分と混和性である。本発明のSSBRの他の部分の溶解度パラメーターと第二のゴムの溶解度パラメーターの差の絶対値は、0.65超であるべきであり、すなわち第二の部分は第二のゴムと混和しない。
【0028】
一例として、d(SBR,部分1)=16.5(J/cm0.5、d(SBR,部分2)=17.8(J/cm0.5およびd(シスBR)=16.97(J/cm0.5であると仮定すれば、本発明のSSBRの第一の部分と第二のゴム(例えばシスBR)との相溶性を評価するために、[d(SBR,部分1)−d(シスBR)]の絶対値=ABS[16.5−16.97]=0.47となり、それは部分1が相溶性であることを示す。同様に、本発明のSSBRの第二の部分と第二のゴム(例えばシスBR)との相溶性を評価するために、[d(SBR,部分2)−d(シスBR)]の絶対値=ABS[17.8−16.97]=0.83となり、部分2は不相溶であることを示す。
【0029】
前に記載したように、ある実施態様においては、SSBRは少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。ある実施態様においては、2つ以上のガラス転移温度は、好ましくは少なくとも8℃異なることができ、より好ましくは少なくとも9℃異なることができる。ガラス転移温度Tgは、下記の試験方法に記載するように、測定され計算される。
【0030】
ある実施態様においては、SSBRは、少なくとも約0.65(J/cm0.5異なる2つ以上のδ(SBR)値を有することを特徴とすることができ、別の実施態様においては少なくとも約0.70(J/cm0.5異なる2つ以上のδ(SBR)値を有することを特徴とすることができ、また別の実施態様において少なくとも約0.75(J/cm0.5異なる2つ以上のδ(SBR)値を有することを特徴とすることができる。同様に、ある実施態様においては、SSBRは、スチレン含有量が少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分を有することを特徴とすることができ、別の実施態様においては少なくとも約25質量%異なる2つ以上の部分を有することを特徴とすることができる。ある実施態様においては、スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が約0〜約27質量%である重合体鎖中の部分およびスチレン含有量が約21〜約70質量%である重合体鎖中の第二の部分を含む。同様に、ある実施態様においては、スチレンブタジエンゴムは、重合体鎖中の第二の部分と不相溶の重合体鎖中の第一の部分を含み、前記第一の部分と前記第二の部分の質量比が約90:10〜約10:90である。
【0031】
SSBRは、所望の用途に依存して、SSBRと混合して、1種以上の他のゴムおよび/または添加物を有することができる。有用な他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、シスーポリブタジエン、乳化重合スチレンブタジエンゴム、高ビニルポリブタジエンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。特に好ましい添加物は、例えば、カーボンブラック、シリカおよびそれらの混合物のような充填剤が挙げられる。
【0032】
本発明は、また、本発明の組成物から形成された少なくとも1種の部品を含む物品を提供する。
【0033】
1つの実施態様において、そのような物品はタイヤである。
【0034】
SSBRのムーニー粘度(ML1+4)は、SSBRを製造するために用いられた単量体の量とプロセスに依存して異なる。1つの実施態様において、スチレンブタジエンゴムは、ML1+4が、100℃で、少なくとも約20、好ましくは少なくとも約40、120以下、好ましくは100以下であることを特徴とする。
【0035】
もし所与の用途のために希望するならば、SSBRは、任意の都合のよい方法によってカップリングされおよび/または鎖末端官能基化されてもよい。そのような方法としては、例えば米国特許出願公開第2008/0287601号明細書に記載されたものが挙げられる。カップリングの量はSSBRの望まれる特性および用途に依存して異なることができる。多くの用途において、全質量を基準として約40質量%以下の量でSSBRをカップリングすることが好ましい。同様に、SSBRの1つ以上の部分の鎖末端官能基化は、任意の都合のよい方法によって遂行することができる。官能基を有する鎖末端官能基化されていないスチレンブタジエンゴムの部分よりも少ないスチレン含有量を含むスチレンブタジエンゴムの1つ以上の部分を鎖末端官能基化することがある用途のためには特に好ましいことが見いだされた。これは、例えば、下記に実施例2と実施例3の損失正接を比較するときに示されるように、ある場合には、より望ましい損失正接に帰着することができる。
【0036】
本発明のSSBRを製造するために、任意の有用な方法を用いることができる。特に有用な方法は、最初に、この工程の仕込まれた単量体を基準として約80質量%より高い、別の実施態様においては約88%より高い、また別の実施態様においては約99%より高い単量体転化率でスチレンブタジエンゴムの第一の部分を得るのに十分な重合条件下で、モノリチオ開始剤、ランダム化剤および溶媒の存在下で、第一のスチレン:ブタジエンのモル比で、反応器の中にスチレンおよびブタジエンを仕込むことを含む。単量体は最初にすべてを一度に仕込む必要はない。むしろ、重合体鎖のこの第一の部分のモル比を望まれる水準に維持するのを容易にするために、異なる反応速度に従って、単量体をいくつかに分けて、重合中に漸増的に加えることができる。
【0037】
次に、仕込まれた単量体の総量を基準として約95%より高い、別の実施態様においては約98%より高い、また別の実施態様においては約99%より高い最終的な単量体転化率まで重合することによって、スチレンブタジエンゴムの第二の部分を得るのに十分な重合条件下で、スチレンブタジエンゴムの第一の部分、ランダム化剤および溶媒の存在下で、スチレン、ブタジエンまたはそれらの混合物が第二のモル比で反応器の中に仕込まれる。前の工程と同様に、必要とされる量の単量体を、すべて同時に仕込む必要はない。むしろ、重合体鎖のこの第二の部分のモル比を望まれる水準に維持するのを容易にするために、異なる反応速度に従って、単量体は重合中に漸増的に加えることができる。好都合に、第一および第二のモル比は次の1つ以上を特徴とするスチレンブタジエンゴムを製造するために選択される。a)互いに不相溶の1つの重合体鎖中の2つ以上の部分、または(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度、または(c)少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値、または(d)スチレン含有量が少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分。そのスチレンブタジエンゴムは、少なくとも第二のゴムと相溶性の部分および前記第二のゴムと相溶性でない部分を含む。
【0038】
スチレン:ブタジエンの第一のモル比と第二のモル比の差が約0.155〜約0.5のものを用いるのが特に有用であることが見いだされた。同様に、特に有用なランダム化剤としては、例えば、テトラメチレンジアミン、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルテトラヒドロフリルエーテル、第三級ブチルエチルグライム、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびそれらの混合物を挙げることができる。有用なカップリング剤としては、例えば、四塩化スズ、四塩化ケイ素、ケイ素アルコキシドおよびそれらの混合物を挙げることができる。有用な鎖末端官能基化剤としては、例えば、アミン、アミド、チオグリコール、ケイ素アルコキシド、シラン−スルフィド改質剤およびそれらの混合物からなる群から選択されるものを挙げることができる。
【0039】
本発明を例証する目的のために、ある代表的な実施態様および詳細を示してきたが、本発明の範囲から外れずに、その方法に種々の変形および変更を行なうことができる。
【0040】
試験方法
次の試験方法が、本発明および下記の実施例に適用可能である。
【0041】
分子量分布を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー
重合体の分子量、分子量分布およびカップリング率(CR)は、各々、ポリスチレン標準を基準として、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して測定された。重合体サンプル(9〜11mg)は、各々、10mLのテトラヒドロフランに溶かして、溶液にした。その溶液を0.45μmフィルターを使用して濾過した。100μLのサンプルを、GPCカラム(3 PLgel 10μm MIXED−Bカラムを備えたヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)システム1100)に供給した。屈折率検出が分子量の分析のために検出器として使用された。分子量は、ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)製のEasiCal PS1(Easy AおよびB)ポリスチレン標準を用いた検量線に基づいて、ポリスチレンとして計算された。カラムの分離能に依存して、2つ、3つまたは4つのピークを検出することができる。最も大きい面積および最も長い保持時間のピークの面積は、カップリングしていない重合体の量に相当する。高分離能で、4つのピークが得られた。最も大きい面積および最も長い保持時間の最も高いピークが、カップリングしていない線状重合体の量を表わしていた。分子量Mp(PS)は、ポリスチレンとして計算された、この線状のカップリングしていない重合体の、最も高い質量の分子の、Mwの値である、分子量Mw,top(最も高い強度(質量)でのMw)を意味する。より高い分子量のより小さなピークはカップリングした重合体を表わしていた。カップリング率は、カップリングしていない重合体を含むすべてのピークの面積の合計に対する、カップリングした重合体に対応するすべてのカップリングしたピークの面積の合計の質量分率として計算される。
【0042】
計算例として、実施例1の場合には、図6のSECによって示されるように観察された2つの異なるピークがあった。6.29356E5 nRIUsの面積を有する最も高いピークが19.142分の保持時間で観察され、カップリングしていない重合体の全体を表わす。分子量Mpはポリスチレン標準を基準として244412g/モルであると決定された。第二のピークは17.640分の保持時間で観察され、1.84576E5 nRIUsの面積を有していた。このピークは、カップリングした重合体の全体を表わす。実施例1のカップリング率は、カップリングした重合体のピーク面積を全面積で割ることによって計算され、22.68%であった。(CR=1.84576E5 nRIUs/(1.84576E5 nRIUs+6.29356E5 nRIUs)×100%=22.68%)。その計算は、例えば、SEC結果からの分子量の計算に使用されるソフトウェアで行なうことができる。実施例1の場合は、LC Rev. A.10.02[1757]のためのアジレント・テクノロジー・ケミストリー・ステーションからのシラス(Cirrus)GPCサンプル・レポート(面積レポート)が使用された。
【0043】
単量体転化率を測定するための重量分析
単量体転化率は重合中の重合体溶液の固形物濃度の測定によって決定された。最大の固形分は、仕込まれたすべてのブタジエンΣmiBdおよびスチレンΣmiStの100質量%転化率で得られ、第一の部分については、それぞれ、TSC最大,第一の部分=(ΣmiBd,第一の部分+ΣmiSt,第一の部分)/((ΣmiBd,第一の部分+ΣmiSt,第一の部分+mTMEDA+mNBL+mシクロヘキサン)×100%であり、最終的な重合体については、TSC最大=(ΣmiBd+ΣmiSt)/((ΣmiBd+ΣmiSt+mTMEDA+mNBL+mシクロヘキサン+mカップリング剤+m変性剤)×100%である。予想される単量体転化率に依存して約1g〜10gの重合体溶液の試料を反応器から取り出し、50mLのエタノールの入った200mL三角フラスコの中に直接入れた。エタノールの入った三角フラスコの質量を測定し、試料を入れる前の質量を「A」、試料を入れた後の質量を「B」とした。沈殿した重合体を、秤量された濾紙(ミクロガラス繊維の紙、Φ90mm、MUNKTELL、質量C)上に濾過によってエタノールから取り出し、水分分析計HR73(メトラー・トレド(Mettler-Toledo))を使用して、恒量が達成されるまで、140℃で乾燥した。判定規準5を使用した。最後に、濾紙上の乾燥した試料の最終的な質量「D」を得るためにスイッチ切断判定規準4を使用して、第二の乾燥期間を適用した。試料中の重合体含有量は、「TSC=(D−C)/(B−A)×100%」の式により計算した。最後に、単量体転化率を、第一の部分の場合は「TSC/TSC最大,第一の部分×100%」で、最終的な単量体転化率については「TSC/TSC最大×100%」で計算した。
【0044】
減少した揮発物を測定するための重量分析
ハロゲン水分分析計HR73(メトラー・トレド)を使用して、重合体の合計量を基準として0.5質量%未満の残存水分の値が得られるまで、約5gの重合体試料を120℃で乾燥した。
【0045】
1H−NMR
ビニルおよびスチレン含有量は、1H−NMRを使用して、ISO 21561−2005に従って、核磁気共鳴分光計BRUKER Avance 200および5mmデュアルプローブを使用して測定した。質量比0.05%:99.95%のCDCl/TMSを溶媒として使用した。
【0046】
DSC(Tg)
10K/分の加熱速度を使用した以外は、TmgのためのISO 11357−2(1999)に記載されているように、ガラス転移温度Tgを測定し計算した。次の条件を使用した。
試料の質量:約11mg
試料容器:標準アルミニウム皿
温度範囲:(−140〜100)℃
昇温速度:10K/分
冷却速度:自然冷却
パージガス:Ar 20mL/分
冷却剤:液体窒素
評価方法:高さの半分
装置:ティー・エイ・インスツルメント(TA-Instruments)製DSC 2920
【0047】
ムーニー粘度ML1+4(100℃)
重合体(充填剤もオイルも含まない)のムーニー粘度は、ASTM D1646(2004)に従って、アルファ・テクノロジーズ(Alpha-Technologies)製MV2000Eで、予熱時間1分、回転子運転時間4分、温度100℃で[ML1+4(100℃)]、測定した。
【0048】
レオロジー特性
未加硫配合試料についてのレオロジーの特性の測定は、ASTM D5289−07に従って、回転子なしの剪断レオメーター(MDR 2000年E)を使用して行ない、スコーチ時間(ts)および加硫時間(tx)を測定した。「tx」は、ASTM D5289−07に説明されているような加硫反応の転化率x%を達成するのに必要とされるそれぞれの時間である。試料の試験片はASTM D5289−07に従って調製した。この測定は、加硫反応の転化率95%を達成するために必要な時間t95を測定するために行なわれた。決定されたt95は、各々の試験方法のために下記に述べるような異なる試験について異なる試験片の調製のために必要とされる加硫時間を決定するために使用された。
【0049】
引張強さ、切断時伸びおよび300%伸長時モジュラス
(モジュラス300)は、各々、ASTM D 412−06に従って、ツウィックZ010引張機械で、(試験片をt95に硬化した後の2mm厚さの板から打ち抜かれた)ダンベルダイC、160℃、160〜220バール、周囲雰囲気を使用して測定した。
【0050】
発熱性(HBU)
HBUは、ASTM D 623−07、方法Aに従って、Doli ′Goodrich′屈曲試験機(試料の硬化:t95+5分、寸法:高さ25.4mm、直径17.8mm、160℃、160〜220バール、周囲雰囲気)で測定した。
【0051】
tanδ
異なる温度でのtanδの測定のために、未加硫重合体配合物を、内径60mm、高さ8mmの円板にプレス加工した。ゴムコンパウンドの上記金属円板の中へのプレス成形(約200バールの圧力)は、空気を除去し、かくして気泡の包含を回避し、そして目視で気泡を含まない均質なコンパウンド材料を合成の物質の生成をもたらす。加硫工程(160℃、20分間で、95%の加硫転化率を達成、周囲雰囲気)の完了後に、直径60mm、高さ8mmの均質な円板が得られた。試料は、前記の皿からドリルで孔をあけられ、直径10mm、高さ8mmの寸法を有する。
tanδは、独国ガーボー・クォリメーター・テストアンラーゲン社(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH)製動的分光計Eplexor 150Nを使用し、2Hzの振動数で、0.2%の圧縮動的歪を適用して、測定した。温度による損失正接の変化は、コンパウンド中の第二のゴムとしてのNRの場合には−70℃と+70の間の温度範囲で、そしてコンパウンド中の第二のゴムとしてのシス−BRの場合は−120℃と+70℃の間の温度範囲で、最低温度から出発し、1K/分で温度を上げて測定した。
【0052】
tanδ(60℃または70℃)
tanδ(60℃)、(70℃)は、それぞれ、転がり抵抗挙動を評価するための実験室予測因子として使用した。指数が小さいほど、転がり抵抗は低い(より低い=より良い)。
【0053】
tanδ(20℃)
tanδ(20℃)は、同じ装置および負荷条件を使用して、20℃で測定した。tanδ(20℃)は、グリップ性能の実験室予測因子として使用した。指数が大きいほど、グリップ耐性は良好である(より高い=より良い)。
【0054】
DIN摩耗
DIN摩耗はASTM D5963−04に従って測定した。指数が大きいほど、耐摩耗性は低い(より低いDIN摩耗値=より良い)。試料は、tanδの場合と同様に、調製した。
【0055】
引裂強さ
引裂強さは、ASTM D624−00に従って、t95に硬化した後の2mmの板から打ち抜いたダイCを使用して、測定する。
【実施例】
【0056】
本発明の実施を、次の実施例および比較例を参照してさらに詳しく説明するが、それらの実施例および比較例は本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ代表となるものであると意図される。与えられる実施例は、本発明についての理解を助けるように意図され、当業者に向けられたものである。用いた特定の化学種、特定の条件、関係などは、実例となるように設計されており、限定するものではない。次の実施例で使用される「部」および「%」の呼称はすべて、別段の明示がない限り、質量部および質量%を意味する。
【0057】
すべての比較例および実施例のための成分および条件は、別段の言及がない限り、以下のとおりである。シクロヘキサン(蒸留品)を溶媒として使用した。1,3−ブタジエン(蒸留品)およびスチレン(CaHで乾燥したもの)を単量体として使用した。テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA(メルク))をシクロヘキサンで希釈し、ランダム化剤およびビニル助触媒として使用した。四塩化スズ(フルカ(Fluka))もシクロヘキサンで希釈し、カップリング剤として使用した。メタノール(メルク)を停止反応剤として使用した。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(B.H.T)はサンビット社(Sunvit GmbH)から入手した。重合は、水分および酸素を排除した窒素雰囲気中で行なった。
【0058】
重合体比較例1
4510.8gのシクロヘキサン、385.3gのブタジエン、171.85gのスチレンおよび14.8219mmolのTMEDAを、空気を含まない10リットルの反応器に仕込み、攪拌した混合物を35℃まで加熱した。その後、不純物を反応させるために、反応混合物の色がやや黄色に変わるまで、n−ブチルリチウムを滴下した(滴定工程)。その後、重合体の目標分子量に対応する4.34ミリモルのn−ブチルリチウムの処方量を、重合を開始するためにポンプ経由で直ちに仕込んだ。主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの開始時刻が、重合の開始時刻として使用された。並行して、重合反応を加速し、反応時間を短くするために、反応器の壁の中の熱水によって加熱するか冷却することによって、主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの時点から、0.33℃/分の昇温速度で55℃の最終重合温度Tpmまで、温度を上げた。15分後、転化率を決定し、組成を確認するために、少量の試料を採取した。転化率は28.65質量%であることが分かり、重合体は、スチレン28.3質量%およびブタジエン部分中のビニル65.8質量%からなる。
【0059】
その後、278.98gのブタジエンおよび12.61gのスチレンからなる単量体混合物を60分の時間をかけて一定の供給速度で仕込んだ。少量の試料を採取し、単量体転化率を測定したところ90.31質量%であった。この重合体試料の組成を分析したところ、スチレンは29.9質量%であり、残りのブタジエン部分中のビニルは63質量%であった。さらに40分間反応を行ない、反応を完結させた。その後、6.07gのブタジエンを1分以内に仕込み、12分間反応させた。最後に、22.39gのブタジエンの第二のブタジエン仕込みを1分以内に行い、続けて15分間反応させた。第一のブタジエン添加工程の反応時間は、鎖の25%のカップリングのために0.3549ミリモルの四塩化スズを仕込むために使用された。第五の添加工程の反応時間は、最終的な鎖末端の官能基化のために5.0064ミリモルのn−メチルピロリドンを仕込むために使用された。重合体溶液を、外界温度まで冷却した。反応を停止させるために、攪拌しながら、2モル/モルのメタノール/活性開始剤の比率でメタノールを添加した。その後、酸化防止剤を重合体セメントの中にシクロヘキサン溶液として分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。その後、重合体を小さいかけらに粉砕し、70℃の空気循環乾燥器で30分間乾燥した。最後に、残存揮発物含有率が0.5質量%未満になるまで、重合体のかけらを空気中で周囲条件下で乾燥した。
【0060】
最終的な重合体の組成を測定したところ、スチレンが30.9質量%、ブタジエン部分中のビニルが62.2質量%であった。3つの分析は、表1において計算されるように、第一の部分中のスチレン含有量と残りの部分中のスチレン含有量の差がほんの約3%であり、重合体鎖中のスチレンの均一な分布を示した。
【0061】
重合体実施例1
シクロヘキサン(mシクロヘキサン=4504.2g)、ブタジエン(m1,Bd=122.9g)、スチレン(m1,St=248.78g)および14.8219ミリモルのTMEDA(mTMEDA=73.38g、シクロヘキサン溶液)を、空気を含まない10リットルの反応器に仕込み、攪拌した混合物を35℃まで加熱した。その後、不純物を反応させるために、反応混合物の色がやや黄色に変わるまで、n−ブチルリチウムを滴下した(滴定工程、n−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液mNBL,滴定=5.91g)。その後、重合体の目標分子量に対応する6.23ミリモルのn−ブチルリチウムの処方量(シクロヘキサン溶液としてmNBL,処方=15.82g)を、重合を開始するためにポンプ経由で直ちに仕込んだ。主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの開始時刻は、重合の開始時刻として使用された。並行して、重合反応を加速し、反応時間を短くするために、反応器の壁の中の熱水によって加熱するか冷却することによって、主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの時点から、0.67C/分の昇温速度で55℃の最終重合温度Tpmまで、温度を上げた。5分後、重合体鎖の第一の(高スチレン)部分を重合するために、ブタジエン(m2,Bd=79.09g)を30分の時間をかけて一定の供給速度で仕込み、続けて30分で44.57gのブタジエン(m3,Bd=44.57g))を仕込んだ。転化率を決定し、ゴム分子の第一の部分の構造を確認するために、少量の試料を採取した。
【0062】
第二の部分(低スチレン部分)の重合のために、439.04gのブタジエン(m4,Bd=439.04g)およびスチレン(m2,St=48.5g)を、一緒に、反応器の中に、30分以内に一定の供給速度で仕込んだ。さらに45分間反応を行ない、反応を完結させた。その後、ブタジエン(m5,Bd=7.08g)を1分以内に仕込み、続けて28分間反応させた。ブタジエン添加工程の反応時間は、鎖の25%のカップリングのために0.3564ミリモルの四塩化スズ(シクロヘキサン溶液としてmカップリング剤53.62g)を仕込むために使用された。10分後、最終的な鎖末端の官能基化のために、5.0064mmolのn−メチルピロリドン(シクロヘキサン溶液として:m変性剤51.26g)を仕込んだ。転化率および組成を決定するために、少量の試料を採取した。重合体溶液を外界温度まで冷却した。反応を停止させるために、攪拌しながら、2モル/モルのメタノール/活性開始剤の比率でメタノールを添加した。その後、酸化防止剤を重合体セメントの中にシクロヘキサン溶液として分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。その後、重合体を小さいかけらに粉砕し、70℃の空気循環乾燥器で30分間乾燥した。最後に、残存揮発物含有率が0.5質量%未満になるまで、重合体のかけらを空気中で周囲条件下で乾燥した。
【0063】
重合体比較例2
次の点を変更して、実施例1を繰り返した。4505.2gのシクロヘキサン、1170.54gのブタジエン、200.63gのスチレンおよび14.8219ミリモルのTMEDAを、空気を含まない空の反応器に仕込んだ。
【0064】
反応は4.96ミリモルのブチルリチウムで開始した。5分の反応時間の後に、重合体鎖の第一の部分(高スチレン部分)を完成するために、30分間一定の供給速度で118.58gのブタジエンを仕込んだ。転化率を決定し、ゴム分子の第一の部分の構造を確認するために、少量の試料を採取した。
【0065】
第二の部分(低スチレン部分)の重合のために、303.48gのブタジエンおよび86.94gのスチレンを、一緒に、反応器の中に、15分以内に一定の供給速度で仕込み、続けてすぐに、92.46gのブタジエンを9.77gのスチレンと一緒に30分以内に仕込んだ。さらに20分間反応を行ない、反応を完結させた。その後、7.18gのブタジエンを1分以内に仕込み、続けて28分間反応させた。ブタジエン添加工程の反応時間は、鎖の25%のカップリングのために0.358ミリモルの四塩化スズを仕込むために使用された。10分後、最終的な鎖末端の官能基化のために、5.1679ミリモルのn−メチルピロリドンを仕込んだ。
【0066】
重合体実施例2
4526.8gのシクロヘキサン、75.5gのブタジエン、298.82gのスチレンおよび14.8219ミリモルのTMEDAを、空気を含まない10リットルの反応器に仕込み、攪拌した混合物を35℃まで加熱した。その後、不純物を反応させるために、反応混合物の色がやや黄色に変わるまで、n−ブチルリチウムは滴下した(滴定工程)。その後、重合体の目標分子量に対応する6.55ミリモルのn−ブチルリチウムの処方量を、重合を開始するためにポンプ経由で直ちに仕込んだ。主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの開始時刻は、重合の開始時刻として使用された。並行して、重合反応を加速し、反応時間を短くするために、反応器の壁の中の熱水によって加熱するか冷却することによって、主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの時点から、0.67℃/分の昇温速度で55℃の最終重合温度Tpmまで、温度を上げた。5分後、79.49gのブタジエンの第一の仕込み工程が、一定の供給速度を使用して30分の仕込み時間で始まった。その後、反応時間は許可されなかった。ゴム鎖の第一の部分(高スチレン部分)を完成するために、44.77gのブタジエンの第二の添加工程が直ちに始まり、一定の供給速度で30分間行なわれた。転化率を決定し、構造を確認するために、少量の試料を採取した。
【0067】
一定の供給速度で30分間で489.99gのブタジエンを仕込む第三の添加工程が直ちに始まった。ブタジエンの仕込みを終了した後、40分間反応を続けた。第三の添加工程の反応時間は、鎖の約25%のカップリングのために、30分後に、0.3582ミリモルの四塩化スズを仕込むために使用された。その後、7.18gのブタジエンの最後の添加を1分以内に行い、続けて15分間反応させた。最後の添加工程の反応時間は、最終的な鎖末端の官能基化のために、5.0078ミリモルのn−メチルピロリドンを仕込むために使用された。重合体溶液を外界温度まで冷却した。反応を停止させるために、攪拌しながら、2モル/モルのメタノール/活性開始剤の比率でメタノールを添加した。その後、重合体セメントの中にシクロヘキサン溶液として8.14gのJonolを分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。重合体を小さいかけらに粉砕し、70℃の空気循環乾燥器で30分間乾燥した。最後に、残存揮発物の含有率が0.5質量%未満になるまで、重合体のかけらを空気中で周囲条件下で乾燥した。転化率を決定し、ゴム分子の第一の部分の構造を確認するために、少量の試料を採取した。
【0068】
重合体実施例3
4540.8gのシクロヘキサン、481.8gのブタジエンおよび7.9659ミリモルのTMEDAを、空気を含まない10リットルの反応器に仕込み、攪拌した混合物を35℃まで加熱した。その後、不純物を反応させるために、反応混合物の色がやや黄色に変わるまで、n−ブチルリチウムを滴下した(滴定工程)。その後、重合体の目標分子量に対応する5.29ミリモルのn−ブチルリチウムの処方量を、重合を開始するためにポンプ経由で直ちに仕込んだ。主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの開始時刻は、重合の開始時刻として使用された。並行して、重合反応を加速し、反応時間を短くするために、反応器の壁の中の水によって加熱するか冷却することによって、主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの時点から、0.67C/分の昇温速度で55℃の最終重合温度Tpmまで、温度を上げた。重合体鎖の第一の部分(低スチレン部分)を重合するために、40分以内に反応を完結させた。転化率を決定し、組成を確認するために、試料を採取した。
【0069】
重合体鎖の第二の部分は以下のとおり重合された。第一の部分を取り出さずに、同一の反応器に、74.48gのブタジエンおよび297.71gのスチレンを、一緒に、仕込み時間10分で一定の供給速度で仕込み、引き続いて20分以内に79.19gのブタジエンを仕込み、さらに44.49gのブタジエンを次の30分以内に仕込んだ。その後、さらに10分間反応させた。
【0070】
その後、6.98gのブタジエンを1分以内に仕込み、さらに10分間反応させた。この工程の反応時間は、鎖の約25%のカップリングのために、0.4021ミリモルの四塩化スズを仕込むために使用された。その後、7.08gのブタジエンを1分以内に仕込み、続けて15分間反応させた。最後の添加工程の反応時間は、最終的な鎖末端の官能基化のために、5.513ミリモルのn−メチルピロリドンを仕込むために使用された。転化率を決定し、構造を確認するために、少量の試料を採取した。その後、重合体溶液を外界温度まで冷却した。反応を停止させるために、攪拌しながら、2モル/モルのメタノール/活性開始剤の比率でメタノールを添加した。その後、8.14gのJonolを重合体セメントの中にシクロヘキサン溶液として分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。重合体を小さいかけらに粉砕し、70℃の空気循環乾燥器で30分間乾燥した。最後に、残存揮発物含有率が0.5質量%未満になるまで、重合体のかけらを空気中で周囲条件下で乾燥した。
【0071】
重合体実施例4
4525.7gのシクロヘキサン、295.15gのブタジエン、80.96gのスチレンおよび13.693ミリモルのTMEDAを、空気を含まない10リットルの反応器に仕込み、攪拌した混合物を35℃まで加熱した。その後、不純物を反応させるために、反応混合物の色がやや黄色に変わるまでn−ブチルリチウムを滴下した(滴定工程)。その後、重合体の目標分子量に対応する4.67ミリモルのn−ブチルリチウムの処方量を、重合を開始するためにポンプ経由で直ちに仕込んだ。主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの開始時刻は、重合の開始時刻として使用された。並行して、重合反応を加速し、反応時間を短くするために、反応器の壁の中の熱水によって加熱するか冷却することによって、主要な量のn−ブチルリチウムの仕込みの時点から、0.67℃/minの昇温速度の55℃の最終重合温度Tpmまで、温度を上げた。15分後、94.45gのブタジエンおよび9.98gのスチレンを30分の時間をかけて一定の供給速度で仕込んだ。重合体鎖の第一の(低スチレン)部分を重合するために、さらに20分間反応させて、完結させた。転化率を決定し、ゴム分子の第一の部分の構造を確認するために、少量の試料を採取した。
【0072】
第二の部分(高スチレン部分)の重合のために、185.47gのブタジエンおよび191.51gのスチレンを、一緒に、反応器の中に、15分以内に一定の供給速度で仕込み、引き続いて、103.72gのブタジエンおよび15.5gのスチレンを25分以内に一定の供給速度で添加した。さらに20分間反応を行ない、反応を完結させた。その後、7.08gのブタジエンを1分以内に仕込み、続けて28分間反応させた。
【0073】
ブタジエン添加工程の反応時間は、鎖の25%のカップリングのために、0.3555ミリモルの四塩化スズを仕込むために使用された。10分後、最終的な鎖末端の官能基化のために、4.542ミリモルのn−メチルピロリドンを仕込んだ。転化率を決定し、構造を確認するために、少量の試料を採取した。重合体溶液を外界温度まで冷却した。反応を停止させるために、撹拌しながら、2モル/モルのメタノール/活性開始剤の比率でメタノールを添加した。その後、酸化防止剤を重合体セメントの中にシクロヘキサン溶液として分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。その後、重合体を小さなかけらに粉砕し、70℃の空気循環乾燥器で30分間乾燥した。最後に、残存揮発物含有率が0.5質量%未満になるまで、重合体のかけらを空気中で周囲条件下で乾燥した。
【0074】
実施例1の代表的な計算
前に記述したように、第一の部分の重合が終了した後すぐに、反応器から重合体溶液の試料を取り出した。重合体溶液の固形分は、上記の試験方法に記述したように、9.7217%であると決定された。第一の部分の調製のための現在仕込まれた単量体は、総計495.34gになり(Σm単量体,第一の部分=m1,Bd+m2,Bd+m3,Bd+m1,St、m1,Bd:122.9g、m1,St 248.78g、m2,Bd 79.09g、m3,Bd 44.57g)、そして現在仕込まれた全化学薬品は、総計5094.64gになる(Σmi,単量体,第一の部分 495.34gの単量体、mシクロヘキサン 4504.2g、mTMEDA 73.38g、mNBL 21.73g)。これは9.723%の第一の部分の最大達成可能TSCの中に帰着する(TSC最大,第一の部分=495.34g/5094.64g×100%)。第一の部分のための単量体転化率は、cその時点=TSC/TSC最大×100%により、99.99質量%であると決定され、その結果、重合体鎖の第一の部分として新しく生成した重合体は495.29gであった。重合体の組成は1H−NMRによって調べられ、スチレンを46.8質量%、ブタジエン部分中ビニル単位を53.7%含むことが見いだされた。したがって、重合体鎖の第一の部分の中に231.8gのスチレンおよび263.5gのブタジエンが組み込まれていた。そして、263.5gの組み込まれたブタジエンの53.7%がビニルとして組み込まれた141.5gに相当する。
【0075】
重合体溶液の次の試料は、前に記述したように反応の終わりに抜き出した。重合体溶液の固形分を、上記の試験方法において記述した方法で測定したところ、17.371%であった。全重合体の調製のために仕込まれた全単量体は、総計989.96gになり(Σm単量体=Σm単量体,第一の部分+m4,Bd+m5,Bd+m2,St、ここでm4,Bd=439.4g、m2,St=48.5g、m5,Bd=7.08g)、そして、最終的に仕込まれた化学薬品の合計は総計5694.7gになり(Σm単量体=989.96g、mシクロヘキサン=4504.2g、mTMEDA=73.38g、mNBL=21.73g、mカップリング剤=53.62g、m変形剤=51.26g)、反応の終わりに達成可能な最大値は17.3839%(TSC最大=989.96g/5694.7g×100%)となる。単量体転化率は、c最終=TSC/TSC最大×100%で計算され、99.929質量%であると決定され、形成された重合体の総量は989.17gとなった。重合体の組成は1H−NMRによって調べられ、スチレンが28.5質量%、ブタジエン部分中のビニル単位が63.9質量%であることが見いだされた。したがって、281.9gのスチレンおよび707.3gのブタジエンが全重合体鎖の中に組み入れられていた。組み入れられたブタジエン707.3gの63.9質量%がビニルとして組み入れられた451.9gに相当する。重合体鎖の第二の部分の組成は、最終的な重合体と第一の部分の組成の差から計算することができる。第二の部分として形成された重合体は493.88g(すなわち最終的な重合体989.17gと第一の部分の中に形成された重合体495.29gの差)である。
【0076】
第二の部分の中に組み入れられたスチレンは50.12gであり、それは組み入れられたスチレンの合計281.91gと第一の部分の中に組み入れられたスチレン231.8gの差から求められる。したがって、第二の部分中のスチレン含有量(質量%)は、c第二の部分,スチレン=231.8g/989.17g×100%=10.15%として与えられる。スチレン50.12gと、第二の部分の中に形成された重合体の総量493.88gの差は、第二の部分の中に組み入れられたブタジエン443.76gである。
【0077】
第二の部分の中に組み入れられたビニルは310.44gであり、それは組み入れられたビニルの総量451.94gと第一の部分の中に組み入れられた141.5gの差から求められる。第二の部分の中のビニル含有量(質量%)は、c第二の部分,ビニル=310.44g/443.76g×100=69.96%として与えられる。
【0078】
重合体実施例1〜4および重合体比較例1〜2の測定および計算データ
下記の表1aおよび1bは、上記の重合体実施例1〜3および重合体比較例1〜2の測定および計算データを含む。下記の表2aおよび2bは、上記の重合体実施例4および重合体比較例1および2の測定および計算データを含む。異なる構造の相溶性は、ゴムのガラス転移挙動の評価と組み合わせて溶解度パラメーターの差を比較することによって評価した。鎖および鎖の部分の中の溶解度パラメーターδ(SBR)((J/cm0.5)は、測定または計算された鎖および鎖の各々の部分のスチレンおよびビニル含有量から、シュスター(Schuster)ら、ゴムの化学と技術(Rubber Chem. Technol.)、1996年、第69巻、p.769に記載された方法で計算した。計算の結果を表1に示す。
【0079】
実施例および比較例はすべて、より良い比較のために最終的な重合体が平均で約30%のスチレンおよび70%のブタジエンを含み、ブタジエン部分中のビニル含有量が約62%になるように調製した。割合は前に記載したように1H−NMRによって決定した。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
図1〜2は、重合体比較例1〜2(C1〜C2)および重合体実施例1〜4(E1〜E4)の異なるスチレンブタジエンゴムのガラス転移挙動を含む。図に示されるように、重合体比較例はたった1つのガラス転移温度を示す。一方、重合体実施例は1つを超えるガラス転移温度を示す。これは、図1に示されるように、重合体比較例1が、スチレンおよびビニル単位が均一に分布した構造を有することを示す。それは、また、図2に示されるように、各々の部分の異なるスチレン/ビニル組成にもかかわらず、重合体比較例2が相溶性の部分のみを有することをも示す。対照的に、重合体実施例1〜4は、図1および2に示されるように、異なるスチレン/ビニル組成の少なくとも2つの不相溶の部分を有する。
【0087】
重合体配合物
重合体実施例E1〜E3および重合体比較例(C1)試料を使用し、下記の表3に示す成分とともに、エラストマー重合体として天然ゴムSMR10を50質量%:50質量%の比率で混合して、配合物を調製した。
さらに、重合体実施例E4および重合体比較例(C1およびC2)を使用し、下記の表3の成分とともに、エラストマー重合体として高シス−ポリブタジエン(シス−BR)を50質量%:50質量%の比率で混合物して、配合物を調製した。
配合物はすべて、「380cmバンバリーミキサー」の中で成分を混ぜ合わせ配合することによって作られた。配合物は、引張特性の決定のために、t95分間(95%「転化率」まで硬化するために必要とされる時間としてのASTM D5289−07によるt95、そしてt95は10〜22分の範囲にある。)、160℃で加硫され、他のすべての試験のためにt95+5分間、160℃で加硫された。量はすべてphrゴムを基準とした(ここで、ゴム=スチレン−ブタジエンの量+存在する場合は天然ゴムまたはポリブタジエンの量、両方の成分=100質量単位)。当技術分野において既知のように、「phr」は「ゴム100部あたりの部数」を指称する。重合されたゴムは、第一の配合物においては天然ゴムと50%/50%の質量比で組み合わせて使用され、第二の配合物においてはシス−ポリブタジエンと50%/50%の質量比で組み合わせて使用された。
【0088】
【表7】

【0089】
E1〜E3およびC1と表3の第二のゴムとしてのNRとで作られた加硫された配合物を試験し、結果を下記の表4に示す。E4およびC1〜C2と表3の第二のゴムとしてのBRとで作られた加硫された配合物を試験し、結果を下記の表5に示す。
【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
本発明の重合体E1、E2およびE3の配合物を、重合体鎖に沿って均一に分布したスチレンを含む比較例C1と比較すると、物理的性質(例えばTS、モジュラス、伸び、硬さ、引裂強さ)、HBUおよびDIN摩耗は同一であるが、グリップ性−転がり抵抗バランス(グリップ性予測因子として20℃での損失正接および23℃でのRbを使用し、そして転がり抵抗の実験室用予測因子として60℃の損失正接、70℃での損失正接および60℃でのRBを使用した。)は、著しく改善されることが分かる。グリップ性−転がり抵抗バランスのための標識として20℃での損失正接と60℃での損失正接との差(高いほど良い。)を比較すると、明らかに本発明の重合体の改善が見られる。
【0093】
さらに、温度による損失正接の変化を、E1およびC1については図3に、E2およびE3ならびにC1については図4に、そしてE4ならびにC1およびC2については図5に示す。他方、重合体鎖中の2つの相溶性の部分のみからなりかつたった1つのガラス転移(図2)を示すC2は、スチレン含有量は同一であるが重合体鎖に沿って均一に分布したスチレンを含むC1と、類似した化合物性能(表5)および類似した温度による損失正接の変化(図5)に帰着する。C1およびC2と比較して、新規の本発明の重合体E4の改善されたグリップ性−転がり抵抗バランスも図5に見られる。
【0094】
表4および図4に示されるように、鎖末端変性が重合体鎖の第二の使用されたゴム相溶性の部分でなされる場合に(実施例3に対する実施例2を参照)、最も良好なグリップ性−転がり抵抗性能が得られるように見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを含む組成物であって、加硫前のスチレンブタジエンゴムが、
(a)1つの重合体鎖の中に互いに相溶しない2つ以上の部分を有し、または
(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度を有し、または
(c)少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値を有し、または
(d)各々の部分の全質量を基準としてスチレン含有量が少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分を有し、
スチレンブタジエンゴムが少なくとも第二のゴムと相溶性の部分と前記第二のゴムと相溶性でない部分とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
スチレンブタジエンゴムが(a)互いに相溶しない2つ以上の部分を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スチレンブタジエンゴムが(b)少なくとも約6℃異なる2つ以上のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
スチレンブタジエンゴムが(b)少なくとも約8℃異なる2つ以上のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
スチレンブタジエンゴムが(b)少なくとも約9℃異なる2つ以上のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
スチレンブタジエンゴムが(c)少なくとも約0.65(J/cm0.5超異なる2つ以上のδ(SBR)値を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
スチレンブタジエンゴムは(d)スチレン含有量が少なくとも約20質量%異なる2つ以上の部分を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
スチレンブタジエンゴムは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したとき、ゴムの全質量を基準として40質量%以下の量がカップリングしていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
スチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの部分が鎖末端に官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
鎖末端に官能基を有するスチレンブタジエンゴムの部分が、鎖末端に官能基を有しないスチレンブタジエンゴムの部分よりもスチレン含有量が少ないことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
スチレンブタジエンゴムはML1+4が100℃で約20〜約120であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が第一の部分の全質量を基準として約0〜約27質量%である重合体鎖中の部分、およびスチレン含有量が第二の部分の全質量を基準として約21〜約70質量%である重合体鎖中の第二の部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
重合体鎖中の第二の部分と不相溶の重合体鎖中の第一の部分を含む請求項1に記載の組成物であって、前記第一の部分:前記第二の部分の質量比が約90:10〜約10:90であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
さらに第二のゴム化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のスチレンブタジエンゴムおよび少なくとも1種の他のゴムを含む加硫した組成物であって、
(1)溶解度パラメーターδ(ゴム)と請求項1に記載のスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの部分の溶解度パラメーターδ(SSBR,部分i)との差の絶対値が約0.65(J/cm0.5より小さいこと、および
(2)溶解度パラメーターδ(ゴム)と請求項1に記載のスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの部分の溶解度パラメーターδ(SSBR,部分j)との差の絶対値が約0.65(J/cm0.5より大きいことを特徴とする組成物。
【請求項16】
前記第二のゴム化合物が、天然ゴム、シス−ポリブタジエン、乳化重合スチレンブタジエンゴム、高ビニルポリブタジエンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
さらに少なくとも1種の充填剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
充填剤がカーボンブラックまたはシリカを含むことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が加硫されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
加硫したとき、加硫された組成物が、温度による損失正接の変化において少なくとも2つの極大値を有することを特徴とする請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−520926(P2012−520926A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500814(P2012−500814)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025150
【国際公開番号】WO2010/107555
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510288530)スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】