説明

新規のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】長期間の繰り返し使用において残像などの異常画像が発生せず、安定した感度特性および帯電特性を実現する新規のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な結晶型を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用するレーザープリンターの露光光源としては半導体レーザーやLED等長波長の光源が主に使用されている。現在最もよくデジタル記録方式に用いられているLDの発光波長域は近赤外光領域(780nm)にあり、LEDの発光波長の650nmより長波長である。このため前記電子写真用感光体への要求事項に加え、可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有することが望まれる。この観点から、スクエアリリウム染料、トリフェニルアミン系トリスアゾ顔料、フタロシアニン顔料(特許文献1の特開昭48−34189号公報、及び特許文献2の特開昭57−14874号公報)等が、デジタル記録用の光導電体として提案されている。特にフタロシアニン顔料は、長波長域まで感光波長域を持つと共に高い光感度を有し、また中心金属や結晶形の種類によって様々な特性のバリエーションが得られることからデジタル記録用の光導電体として盛んに研究が行われている。これまで知られている良好な感度を示すフタロシアニン顔料としては、ε型銅フタロシアニン(特許文献3の特公昭51−1662号公報)、X型無金属フタロシアニン(特許文献4の米国特許第3,816,118号明細書)、τ型無金属フタロシアニン(特許文献5の特開昭58−182639号公報)、A(β)型チタニルフタロシアニン、B(α)型チタニルフタロシアニン、Y型チタニルフタロシアニン[非特許文献1のY.Fujimaki,Proc.IS&T’s7th International Congress on Advances in Non−Impact Printing Technologies,1,269]、II型クロロガリウムフタロシアニン(特許文献6の特開平5−98181号公報)、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン[特許文献7の特開平5−263007号公報、非特許文献2のk.Daimon,et al.:J.Imaging Sci.Technol.,40,249]等が挙げられる。
【0003】
これらのフタロシアニン顔料の分光波長域は近赤外域にまで達しており、前記半導体レーザー等の光源に対して極めて高感度を示すものである。しかしながら、上述のフタロシアニン顔料を電子写真感光体に用いた場合、感度的には充分であるものの、繰り返し疲労による帯電性の低下や、温度、湿度依存性が大きいこと、さらには長期間の繰り返し使用において残像といった異常画像が発生するなど実用上の多くの問題を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期間の繰り返し使用において残像などの異常画像が発生せず、安定した感度特性および帯電特性を実現する新規のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(1)項乃至(6)項に記載の「ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶」、「電子写真感光体」、「画像形成方法」、「画像形成装置」および「画像形成装置用プロセスカートリッジ」を包含する本発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
(1)「CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶。」
(2)「CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、10.4°、13.3°、16.6°、22.5°、24.5°、28.0°に回折ピークを示す前記(1)項記載のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶。」
(3)「導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を設けた積層型の電子写真感光体において、該電荷発生層に前記(1)項又は(2)項に記載のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を含有することを特徴とする電子写真感光体。」
(4)「前記(3)項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。」
(5)「前記(3)項に記載の電子写真感光体を搭載したことを特徴とする画像形成装置。」
(6)「前記(3)項に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。」
【発明の効果】
【0006】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、長期間の繰り返し使用において残像などの異常画像が発生せず、安定した感度特性および帯電特性を実現する新規なヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジが提供されるという極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の1構成例を示す断面概要図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の他の1構成例を示す断面概要図である。
【図3】本発明に係る電子写真感光体の更に他の1構成例を示す断面概要図である。
【図4】本発明に係る電子写真感光体の更に他の1構成例を示す断面概要図である。
【図5】本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概要図である。
【図6】本発明の画像形成装置に用いられる帯電手段の1例を示す概要図である。
【図7】本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置の1例を説明するための概略図である。
【図8】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概要図である。
【図9】合成例1による本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトル図である。
【図10】合成例2による本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトル図である。
【図11】合成例3による本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトル図である。
【図12】合成例4による本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトル図である。
【図13】40万枚ラン後に、実機による残像評価のため出力された文字部とハーフトーン部が混在するA4チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細かつ具体的に説明する。
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンは新規化合物であり、上記したように、CuKα線によるX線回析スペクトルにおいてブラック角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回析ピークを示す化合物である。尚、本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は、前記特許文献7の特開平5−263007号公報に記載されたV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンとは、X線回折スペクトルにおいて異なっている。
本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の製造方法は、ハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸誘導体を有機溶剤中で反応させることで合成することができるスルフォン酸エステル誘導体を加水分解することにより、本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンを製造することができる。ハロゲン化ガリウムフタロシアニンとしてはクロロガリウムフタロシアニン、ブロモガリウムフタロシアニン、ヨウ素ガリウムフタロシアニン等が挙げることができ、これらは公知の方法によって合成することができる。例えば、クロロガリウムフタロシアニンは非特許文献3のD.C.Acad.Sci.,(1965)、242,1026に記載の三塩化ガリウムとジイミノイソインドリンを反応させる方法により合成することができる。
【0009】
ブロモガリウムフタロシアニンは特許文献8の特開昭59−133551号公報に記載の三臭化ガリウムとフタロニトリルを反応させる方法により合成することができる。ヨウ素ガリウムフタロシアニンは特許文献9の特開昭60−59354号公報に記載の三ヨウ化ガリウムとフタロニトリルを反応させる方法により合成することができる。またヒドロキシガリウムフタロシアニンは上述のハロゲン化ガリウムフタロシアニンを加水分解することで得ることができる。加水分解は酸加水分解でもよいし、アルカリ加水分解でもよい。酸加水分解については例えば、非特許文献4のBull.Soc.Chim.France,23(1962)に記載のクロロガリウムフタロシアニンを硫酸を用いて加水分解する方法により得ることができる。またアルカリ加水分解については非特許文献5のInrog.Chem.(19),3131,(1980)に記載のアンモニアを用いて加水分解する方法により得ることができる。
【0010】
次いで得られたハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸誘導体を反応させることで一般式(A)のガリウムフタロシアニン化合物を合成できるが、用いる原料のガリウムフタロシアニンとしてはハロゲン化ガリウムフタロシアニンの方が好ましく用いることができる。これは前述した通り、その製造法によるところであり、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造方法においては酸やアルカリを用いた加水分解処理を行う際に分解物の生成が免れない。
【0011】
これに対してハロゲン化ガリウムフタロシアニンについては加水分解の工程を設けないで製造することが可能であることから、本発明においても合成原料としては分解物の生成がない、また、製造工程の少ないハロゲン化ガリウムフタロシアニンを良好に用いることができる。
【0012】
【化1】

[但し、一般式(A)中、Xは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基を表わす。置換基としては、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アリール基、カルボキシ基、シアノ基などがあげられる。R1〜R16はそれぞれ独立して、水素、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アリール基、などが挙げられる。nは1から2の整数である。]
【0013】
ここで用いられるスルフォン酸誘導体としては、例えば、メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、ブタンスルフォン酸、ペンタンスルフォン酸、ヘキサンスルフォン酸、ヘプタンスルフォン酸、オクタンスルフォン酸、ヘキサデカンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルフォン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルフォン酸、2−クロロエタンスルフォン酸、2−ブロモエタンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、p−クロロベンゼンスルフォン酸、ニトロベンゼンスルフォン酸、ピリジンスルフォン酸、1−ナフタレンスルフォン酸、4−アミノナフタレン−1−スルフォン酸、アントラキノン−2−スルフォン酸、1,3−ベンゼンジスルフォン酸、1,5−ナフタレンジスルフォン酸、1,3−プロパンジスルフォン酸、1,4−ブタンジスルフォン酸等が挙げられる。理由は明確ではないが、本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を得るには、メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、ブタンスルフォン酸、ペンタンスルフォン酸、ヘキサンスルフォン酸、ヘプタンスルフォン酸、オクタンスルフォン酸、ヘキサデカンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルフォン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルフォン酸、2−クロロエタンスルフォン酸、2−ブロモエタンスルフォン酸、1,3−プロパンジスルフォン酸、1,4−ブタンジスルフォン酸等が適している。
【0014】
ハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸誘導体との量比は、一般式(A)のnが2のときはスルフォン酸誘導体は、二分の一モル程度が適している。一般式(A)のnが1のときはスルフォン酸誘導体は、等モル以上が適しており、用いるスルフォン酸誘導体の反応性などにより異なるが、1.1倍モルから500倍モルが、適している。また、反応させる温度で液体の場合は、溶剤として用いても良い。ここで用いられる有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ニトロベンゼン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。
反応温度は、0℃から200℃好ましくは20℃から150℃の温度で30分から50時間反応させて合成できる。
【0015】
次に得られたスルフォン酸エステル誘導体の加水分解について説明する。本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニンを製造するには有機溶剤を用いた塩基性加水分解が適している。
適切な有機溶剤は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0016】
触媒として適切な塩基としては、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどが使用できる。
また、反応溶剤としても用いられるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドは、特に適している。
加水分解に用いる水の量は、一般式(A)で示されるガリウムフタロシアニン化合物に対して等モル以上であれば良い。
反応温度は、一般式(A)で示されるガリウムフタロシアニン化合物の加水分解性および触媒の有無によって異なるが、0〜300℃、好ましくは20〜250℃であり、加熱時間としては30分〜20時間が望ましい。
【0017】
次に、電子写真感光体の構成については図面を参照して以下に詳しく説明する。本発明の感光体(1)は、図1に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(3)と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(4)が積層された構成をなしている。
【0018】
また、本発明の感光体(1)は、図2に示すように、導電性支持体(2)と、電荷発生層(3)との間に、下引き層(6)、あるいは中間層を形成してもよい。
また、本発明の感光体(1)は、図3に示すように、電荷輸送層(4)の上に保護層(5)を形成してもよい。
更に、本発明の感光体(1)は、図4に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層の感光層(7)を有した単層型感光体の態様をなしてもよい。
【0019】
[導電性支持体]
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
【0020】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0021】
[感光層]
次に、感光層について説明する。積層構成の感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されることによって構成されている。
【0022】
[電荷発生層]
前記電荷発生層は、電荷発生物質を含む層である。該電荷発生物質として、本発明で用いられるCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を少なくとも含有する。
【0023】
電荷発生物質は本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶と従来公知の電荷発生物質を混合して用いても良い。従来公知の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、インジゴ顔料、ピロロピロール顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクエアリウム顔料等が挙げられる。
【0024】
電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。バインダー樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し、0〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0025】
前記電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散し、これを導電性支持体上、もしくは下引き層や中間層上に塗布し、乾燥することにより形成される。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質の分散前、あるいは分散後のどちらでも構わない。
前記電荷発生層の形成に用いられる前記溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられるが、これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
前記電荷発生層の形成用塗工液は、電荷発生物質、溶媒及びバインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていてもよい。
上記塗工液を用いて電荷発生層を塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。塗工後には、オーブン等で加熱乾燥される。本発明における電荷発生層の乾燥温度としては、50℃以上160℃以下が好ましい。
【0026】
[電荷輸送層]
次に電荷輸送層について説明する。電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散した塗工液を、塗布、乾燥することにより形成される。また、電荷輸送層の塗工液には、必要に応じて、単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。電荷輸送物質の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましいものである。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。これらは2種以上併用してもよい。
電荷輸送層の膜厚は、解像度や応答性の点から、10〜50μmであることが好ましく、15〜35μmがさらに好ましい。
塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の公知の方法を用いることができるが、電荷輸送層は膜厚をある程度厚く塗る必要があるため、粘性の高い液で浸漬塗工法に塗工する方法ことが好ましい。
塗工後の電荷輸送層は、電荷発生層で用いられる熱的手段により加熱乾燥される。乾燥温度は塗工液に含有される溶媒によっても異なるが、80〜200℃あることが好ましく、110〜170℃がより好ましい。また、乾燥時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上がさらに好ましい。
【0027】
[単層]
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。上述した電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散乃至溶解させ、電荷発生機能、及び電荷輸送機能を一つの層で実現した感光体である。
感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどの従来公知の方法を用いて塗工して形成できる。
電荷輸送物質には、前述した正孔輸送物質と電子輸送物質の双方が含有されることが好ましい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
単層の感光層に用いられる電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、有機溶剤及び各種添加剤等に関しては、前述の電荷発生層及び電荷輸送層に含有されるいずれの材料をも使用することが可能である。
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。また、電荷輸送物質の量は、0〜190質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。また、感光層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0028】
[下引き層]
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層の間に、下引き層を設けることができる。下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、このような樹脂は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
また、前述の電荷発生層や電荷輸送層と同様に、溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
【0029】
[保護層]
本発明においては、感光体の最表面に耐摩耗性向上のために、保護層を設けることができる。保護層としては、電荷輸送成分とバインダー成分とを重合させた高分子電荷輸送物質型、フィラーを含有させたフィラー分散型、反応性官能基を有する構成材料を硬化させた硬化型などが知られているが、本発明においては従来公知のいずれの保護層に対しても使用することができる。
【0030】
[画像形成装置]
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。図5は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図5に示すように、感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電ローラ(12)、転写前チャージャ(15)、転写チャージャ(18)、分離チャージャ(19)、クリーニング前チャージャ(21)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
帯電部材は、コロナ帯電等の非接触帯電方式やローラあるいはブラシを用いた帯電部材による接触帯電方式が一般的であり、本発明においてはいずれも有効に使用することが可能である。特に、帯電ローラは、コロトロンやスコロトロン等に比べてオゾンの発生量を大幅に低減することが可能であり、感光体の繰り返し使用時における安定性や画質劣化防止に有効である。
しかし、感光体と帯電ローラとが接触していることにより、繰り返し使用によって帯電ローラが汚染され、それが感光体に影響を及ぼし異常画像の発生や耐摩耗性の低下等を助長する原因となっていた。
特に、耐摩耗性の高い感光体を用いる場合、表面の摩耗によるリフェイスがしにくいことから、帯電ローラの汚染を軽減させる必要があった。
【0031】
そこで、図6に示すように、帯電ローラ(12)にギャップ形成部材(12a)を設け、感光体(1)に対してギャップを介して近接配置させることによって、汚染物質が帯電ローラに付着しにくく、あるいは除去しやすくなり、それらの影響を軽減することが可能である。
この場合、感光体と帯電ローラとのギャップは小さい方が好ましく、例えば、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
しかし、前記帯電ローラを非接触とすることによって、放電が不均一になり、感光体の帯電が不安定になる場合がある。このような問題は、直流成分に交流成分を重畳させることによって帯電の安定性を維持し、これによりオゾンの影響、帯電ローラの汚染の影響及び帯電性の影響を同時に軽減することが可能となる。
【0032】
一方、図5に示す画像露光部(13)、除電ランプ(11)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等からは、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程において感光体(1)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(1)への露光は、感光体1に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0033】
電子写真感光体(1)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
転写手段には、一般に前述の帯電器を使用することができるが、図5に示すように、転写チャージャ(18)と、分離チャージャ(19)とを併用したものが効果的である。
また、このような転写手段を用いて、感光体からトナー像を紙に直接転写されるが、本発明においては感光体上のトナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙に転写する中間転写方式であることが感光体の高耐久化、あるいは高画質化においてより好ましい。
【0034】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0035】
また、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。しかし、中間転写方式は、一枚のフルカラー画像を得るのに4回のスキャンが必要となるため、感光体の耐久性が大きな問題となっていた。本発明における感光体は、ドラムヒーターなしでも画像ボケが発生しにくいことから中間転写方式の画像形成装置に組み合わせて用いることが容易であり、特に有効かつ有用である。中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0036】
図5に示す現像ユニット(14)により、感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(17)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(1)上に残存するトナーも生ずる。
このようなトナーは、ファーブラシ(22)、あるいはクリーニングブレード(23)により、感光体(1)から除去される。このクリーニング工程は、クリーニングブラシだけで行なわれたり、ブレードと併用して行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。クリーニングは、前述のとおり転写後に感光体(1)上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のクリーニングブレード(23)、あるいはファーブラシ(22)等によって感光体(1)が繰り返し擦られることにより、感光体(1)の摩耗が促進されたり、傷が入ったりすることによって異常画像が発生することがある。
また、クリーニング不良によって感光体の表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体の寿命を大幅に低減させることにつながる。
特に、耐摩耗性の向上のために最表面層に保護層をもうけた感光体の場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくいことから、フィルミングや異常画像の発生を助長することになる。したがって、感光体のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化及び高画質化に対し非常に有効である。
感光体のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに分類される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため、小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるが、摩擦係数の安定性は高いことから感光体の高耐久化に対しては有効である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化及び高画質化に対しては非常に有効な手段である。
【0037】
これらの潤滑性物質としては、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉末等が挙げられるが、特に現像剤に混合させる場合には粉末状である必要があり、特にステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく、きわめて有効に使用することができる。ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、トナーに対して0.01〜0.5質量%が好ましく、0.1〜0.3質量%がより好ましい。
【0038】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。従って、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置にきわめて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べきわめて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0039】
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図7において、感光体(1C)(シアン),(1M)(マゼンタ)、(1Y)(イエロー)、(1K)(ブラック)は、ドラム状の感光体(1)であり、これらの感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(12C)、(12M)、(12Y)、(12K)、現像部材(14C)、(14M)、(14Y)、(14K)、クリーニング部材(15C)、(15M)、(15Y)、(15K)が配置されている。
帯電部材(12C)、(12M)、(12Y)、(12K)は、感光体(1)の表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する。この帯電部材(12C)、(12M)、(12Y)、(12K)と、現像部材(14C)、(14M)、(14Y)、(14K)との間の感光体(1)の裏面側より、図示しない露光部材からのレーザー光(13C)、(13M)、(13Y)、(13K)が照射され、感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)を中心とした4つの画像形成要素(10C)、(10M)、(10Y)、(10K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(25)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(25)は、各画像形成ユニット(要素)(10C)、(10M)、(10Y)、(10K)の現像部材(14C)、(14M)、(14Y)、(14K)と、クリーニング部材(15C)、(15M)、(15Y)、(15K)との間で感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)に当接しており、転写搬送ベルト(25)の感光体(1)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(26C)、(26M)、(26Y)、(26K)が配置されている。各画像形成要素(10C)、(10M)、(10Y)、(10K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0040】
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(10C)、(10M)、(10Y)、(10K)において、感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)が、矢印方向(感光体(1)と連れ周り方向)に回転する帯電部材(12C)、(12M)、(12Y)、(12K)により帯電され、次に、感光体(1)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(13C)、(13M)、(13Y)、(13K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
次に現像部材(14C)、(14M)、(14Y)、(14K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(14C)、(14M)、(14Y)、(14K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙(17)は給紙コロ(24)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(16)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(25)に送られる。
転写搬送ベルト(25)上に保持された転写紙(17)は搬送されて、各感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
感光体上のトナー像は、転写ブラシ(26C)、(26M)、(26Y)、(26K)に印加された転写バイアスと感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)との電位差から形成される電界により、転写紙(17)上に転写される。そして、4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(17)は、定着装置(27)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体(1C)、(1M)、(1Y)、(1K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(15C)、(15M)、(15Y)、(15K)で回収される。
なお、図7の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(10C)、(10M)、(10Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0041】
更に、図7において帯電部材は感光体と当接しているが、図6に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
【0042】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
前記プロセスカートリッジとは、本発明の光電変換素子を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも1つを具備し、画像形成装置に着脱可能とした装置(部品)である。
プロセスカートリッジの一例を図8に示すが、ここでは除電手段は記載されていない。
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基いて、より詳細かつ具体的に説明するが、これらの各例は、本発明についての理解を容易ならしめるためのものであって、本発明を制限するためのものではない。以下の説明において、「部」および「%」は別段の断りない場合、「質量部」および「質量%」を表わす。
【0044】
[参考合成例1]
[クロロガリウムフタロシアニンの合成]
最初に本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の原料となるクロロガリウムフタロシアニンの合成例を示す。なお、以下の記載において「部」は「重量部」を意味する。
脱水ジメチルスルフォキシド200部に1,3−ジイミノイソインドリン30部、三塩化ガリウム8部を加え、Ar気流下にて150℃、12時間反応させた後、生成したクロロガリウムフタロシアニンを濾別した。このウェットケーキをメチルエチルケトンおよびN,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、乾燥することで22部(70.3%)のクロロガリウムフタロシアニン結晶を得た。
【0045】
[ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成]
上述のクロロガリウムフタロシアニン5部を氷冷した濃硫酸150部に溶解し、この硫酸溶液を氷冷したイオン交換水500部に徐々に滴下することでヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を析出させた。結晶を濾別した後、ウェットケーキを2wt%のアンモニア水500部で洗浄し、その後、イオン交換水で十分に洗浄を行った。乾燥することで4.6部のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を得た。
【0046】
[(合成実施例1]
[(1)一般式(A)(n=1)のガリウムフタロシアニン化合物の合成]
次に一般式(A)で示されるガリウムフタロシアニン化合物およびこれを加水分解して得られる次に本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の合成例を示す。
ジメチルスルホキシド100mlにクロロガリウムフタロシアニン1.24部、ヘプタデカフルオロオクタンスルフォン酸20.0部を加え、110℃に加温し7時間反応させた。室温まで冷却後微量の不溶部を濾過して除いた。得られた溶液にイオン交換水約150mlを加え、室温で6時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで1.94部(90%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:1079.92(理論値は1080.01:C40H16F17GaN8O3Sとして)を認めた。さらに元素分析を行った結果を下表に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
これらの結果より、下記式(G)のガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0049】
【化2】

【0050】
[(2)上記式(G)のガリウムフタロシアニン化合物の加水分解]
式(G)のガリウムフタロシアニン化合物2.16部、水0.2部をN,N−ジメチルホルムアミド100部に加え、還流下に6時間反応させた。冷却後、得られた結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド100部で2回、メチルエチルケトン100部で1回、およびイオン交換水100部で2回洗浄した後、乾燥することで1.11部(92%)のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:598.07(理論値は598.078:C32H17GaN8Oとして)を認めた。この結果より、ヒドロキシガリウムフタロシアニンであることを確認した。
さらに、このヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを以下に示す条件で測定した。粉末X線回折スペクトルを図9に示す。
X線管球:Cu(波長1.54Å)
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2deg/min
走査範囲:2〜35deg
時定数:2sec
【0051】
このスペクトルより、ブラッグ角(2θ±0.3°)7.82°、27.88°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。また、ブラッグ角(2θ±0.3°)10.18°、13.18°、16.46°、22.60°、24.40°にも、回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。
【0052】
[合成実施例2]
[(1)一般式(A)(n=1)のガリウムフタロシアニン化合物の合成]
ジメチルスルホキシド100mlにクロロガリウムフタロシアニン1.24部、トリフルオロメタンスルフォン酸6.0部を加え、110℃に加温し7時間反応させた。室温まで冷却後微量の不溶部を濾過して除いた。得られた溶液にイオン交換水約100mlを加え、室温で3時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで1.43部(98%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。ここで得られた一部をN,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、以下の分析を行った。
LDI−TOFMS(ネガティブ)により、m/z:730.07(理論値は730.03:C33H16F3GaN8O3Sとして)を認めた。さらに元素分析を行った結果を下表に示す。
【0053】
【表2】

これらの結果より、下記式(D)のガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0054】
【化3】

【0055】
[(2)上記式(D)のガリウムフタロシアニン化合物の加水分解]
式(D)のガリウムフタロシアニン化合物0.73部、水0.1部をN,N−ジメチルホルムアミド60部に加え、還流下に7時間反応させた。冷却後、得られた結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド60部で2回、メチルエチルケトン60部で1回、およびイオン交換水60部で3回洗浄した後、乾燥することで0.49部(81%)のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:598.06(理論値は598.078:C32H17GaN8Oとして)を認めた。この結果より、ヒドロキシガリウムフタロシアニンであることを確認した。
またこの化合物の粉末X線回折スペクトルを図10に示す。このスペクトルより、ブラッグ角(2θ±0.3°)7.82°、27.86°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。また、ブラッグ角(2θ±0.3°)10.12°、13.16°、16.38°、22.58°、24.26°にも、回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。
【0056】
[合成実施例3]
[(1)式(D)のガリウムフタロシアニン化合物の加水分解]
式(D)のガリウムフタロシアニン化合物1.10部、4−ジメチルアミノピリジン0.10部、水0.1部をN,N−ジメチルホルムアミド100部に加え、130℃に加温しに7時間反応させた。冷却後、得られた結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド100部で3回、メチルエチルケトン100部で1回、およびイオン交換水100部で2回洗浄した後、乾燥することで0.81部(90%)のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:598.06(理論値は598.078:C32H17GaN8Oとして)を認めた。この結果より、ヒドロキシガリウムフタロシアニンであることを確認した。
この化合物の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。このスペクトルより、ブラッグ角(2θ±0.3°)7.84°、27.84°に新たな主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。この合成例では、[前記特許文献7の特開平5−263007号公報、前記非特許文献2のk.Daimon,et al.:J.Imaging Sci.Technol.,40,249]記載のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶に基づく、7.50°、28.38°などの回折ピークも観察され、結晶型が混在していることが確認された。
【0057】
[合成実施例4]
[(1)一般式(A)(n=1)のガリウムフタロシアニン化合物の合成]
ジメチルスルホキシド100mlにクロロガリウムフタロシアニン1.24部、ノナフルオロ−1−ブタンスルフォン酸6.0部を加え、110℃に加温し7時間反応させた。室温まで冷却後微量の不溶部を濾過して除いた。得られた溶液にイオン交換水約100mlを加え、室温で4時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで1.67部(95%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。
ここで得られた一部を、ジメチルスルホキシドに溶解し、シリカゲルで吸着処理を行なった。シリカゲルを、濾別し得られたジメチルスルホキシドにほぼ等量のイオン交換水を加えて、結晶を析出させた。これを濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥し、精製処理を行なった。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:879.97(理論値は880.02:C36H16F9GaN8O3Sとして)を認めた。さらに元素分析を行った結果を下表に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
これらの結果より、下記式(F)のガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0060】
【化4】

【0061】
[(2)上記式(F)のガリウムフタロシアニン化合物の加水分解]
式(F)のガリウムフタロシアニン化合物0.88部、水0.1部をN,N−ジメチルホルムアミド60部に加え、還流下に6時間反応させた。冷却後、得られた結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド60部で2回、メチルエチルケトン60部で1回、およびイオン交換水60部で2回洗浄した後、乾燥することで0.53部(88%)のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。
この化合物について、以下の分析を行った。LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:598.07(理論値は598.078:C32H17GaN8Oとして)を認めた。この結果より、ヒドロキシガリウムフタロシアニンであることを確認した。
この化合物の粉末X線回折スペクトルを図12に示す。このスペクトルより、ブラッグ角(2θ±0.3°)8.16°、28.06°に新たな主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。この合成例では、[特開平5−263007号公報、k.Daimon,et al.:J.Imaging Sci.Technol.,40,249]記載のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶に基づく、7.86°、などの回折ピークも観察され、結晶型が混在していることが確認された。
【0062】
[合成例5]
[(1)一般式(A)(n=1)のガリウムフタロシアニン化合物の合成]
ジメチルスルホキシド100mlにクロロガリウムフタロシアニン1.24部、メタンスルフォン酸3.8部を加え、110℃に加温し9時間反応させた。室温まで冷却後微量の不溶部を濾過して除いた。得られた溶液にイオン交換水約150mlを加え、室温で3時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで1.25部(92%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。ここで得られた一部をN,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、以下の分析を行った。
LDI−TOFMS(ネガティブ)により、m/z:676.19(理論値は676.06:C33H19GaN8O3Sとして)を認めた。さらに元素分析を行った結果を下表に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
これらの結果より、下記式(C)のガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0065】
【化5】

【0066】
[(2)上記式(C)のガリウムフタロシアニン化合物の加水分解]
式(C)のガリウムフタロシアニン化合物0.68部、水0.1部をN,N−ジメチルホルムアミド60部に加え、還流下に7時間反応させた。冷却後、得られた結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド60部で3回、メチルエチルケトン60部で1回、およびイオン交換水60部で2回洗浄した後、乾燥することで0.43部(71%)のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。この化合物について、以下の分析を行った。
LDI−TOFMS(ポジティブ)により、m/z:598.07(理論値は598.078:C32H17GaN8Oとして)を認めた。この結果より、ヒドロキシガリウムフタロシアニンであることを確認した。
この化合物の粉末X線回折スペクトルは、[合成例3]の図11と同様であり、ブラッグ角(2θ±0.3°)7.92°、27.82°に新たな主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が得られたことを確認した。
【0067】
[電子写真感光体実施例]
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが本発明はこれら実施例により制約を受けるものではない。なお、部は全て重量部である。
【0068】
[電子写真感光体実施例1]
厚さ、2mmのアルミニウム板上(電子写真特性評価用)および長さ380mm、φ100mmアルミニウムシリンダー上(実機評価用)に下記組成の中間層用塗工液を用いて塗布後、130℃/20分間乾燥を行ない、約3.5μmの中間層を形成した。続いて下記組成の電荷発生層用塗工液をφ2mmのジルコニアボールとともに振動ミル分散を6時間行い、この塗工液を用いて塗布後、100℃/30分間乾燥を行ない、約0.3μmの電荷発生層を形成した。さらに、下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて塗布後、130℃/20分間乾燥を行ない、約35μmの電荷輸送層を形成して実施例1の電子写真感光体を作製した。塗布はいずれもブレード塗工法(電子写真特性評価用)および浸漬塗工法(実機評価用)を用いた。
【0069】
(中間層用塗工液)
酸化チタンCR−EL(石原産業社製):50部
アルキッド樹脂ベッコライトM6401−50(固形分50重量%、大日本インキ化学工業社製):15部
メラミン樹脂L−145−60(固形分60重量%、大日本インキ化学工業社製):8部
2−ブタノン:120部
【0070】
(電荷発生層用塗工液)
前記合成例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン:3.0部
ポリビニルブチラール(「XYHL」UCC製):2部
メチルエチルケトン:150部
【0071】
(電荷輸送層用塗工液)
ポリカーボネートZポリカ(帝人化成社製;パンライトTS−2050):10部
下記構造式で示される電荷輸送性化合物(1):7部
テトラヒドロフラン:80部
シリコーンオイル(KF50−100cs、信越化学工業社製):0.002部
【0072】
【化6】

【0073】
[電子写真感光体実施例2]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンを合成実施例2のものに変更した以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体実施例2の電子写真感光体を作製した。
【0074】
[電子写真感光体実施例3]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンを合成実施例3のものに変更した以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体実施例3の電子写真感光体を作製した。
【0075】
[電子写真感光体実施例4]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンを合成例4のものに変更した以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体実施例4の電子写真感光体を作製した。
【0076】
[電子写真感光体実施例5]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンを合成例5のものに変更した以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体実施例5の電子写真感光体を作製した。
【0077】
[電子写真感光体比較例1]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンを前記アシッドペースト法より得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンに変更した以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体比較例1の電子写真感光体を作製した。
【0078】
[電子写真感光体比較例2]
電子写真感光体実施例1で用いた電荷発生層用塗工液のヒドロキシガリウムフタロシアニンをY型チタニルフタロシアニン(東洋インキ製造社製;リオフォトン−TOPA)に変えた以外は電子写真感光体実施例1と同様に電子写真感光体比較例2の電子写真感光体を作製した。
【0079】
[電子写真特性評価]
アルミニウム板上に作製した電子写真感光体実施例1〜5の感光体および電子写真感光体比較例1および2の電子写真感光体について市販の静電気帯電試験装置(川口電機製作所製 EPA8100型)を用いて暗所で−5KVのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後、電子写真感光体の表面電位Vm(−V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、電子写真感光体の表面電位V0(−V)を測定し、暗減衰率V0/Vm求めた。次いで、電子写真感光体表面での光量が5μW/cmの780nm単色光を30秒間照射した後、電子写真感光体の表面電位V30(−V)を測定した。また感度としてV0が半減するために要する露光量をE1/2(μJ/cm)として測定した。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
このようにして初期特性を求めた後、以下のようにして疲労特性を測定した。静電気帯電試験装置を用い、タングステン光照射とコロナ帯電を同時に行い、感光体の表面電位が−800Vで帯電電流が7μAになるように光量とコロナ放電電圧を調節しながら2時間の帯電露光を行った。このサンプルについて初期特性と同様にVm(−V)、V0(−V)、V0/Vm、V30(−V)、E1/2(μJ/cm)を測定した。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】

【0083】
[実機評価]
先に作製した実施例1〜12の感光体および比較例1〜5の電子写真感光体をプロセスカートリッジに装着し、RICOH Pro C900(リコー製プロダクションプリンター)に搭載した。
試験時のプロセス条件としては未露光部の帯電電位が−800Vとなるように帯電部材への印可電圧を設定した。現像バイアスは−500Vに設定した。通紙条件としてはA4全面に対して、画像面積率が6%相当の文字が平均的に書かれているチャートを40万枚印刷した。試験環境としては常温常湿度として温度:23℃、相対湿度:55%、高温高湿度環境として温度:30℃、相対湿度:80%および低温低湿度環境として温度:10℃、相対湿度:15%の3つの環境条件で同様の印刷試験を行なった。
画像評価は40万枚の画像印刷後において、日本画像学会発行テストチャートNo.5−2を出力して、画像濃度、解像度およびカラー色の再現性について評価した。これらの画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、悪いものを×で表わした。さらに残像の評価として40万枚の画像印刷後、未露光部の帯電電位が−500Vとなるように帯電部材への印加電圧を設定、転写電流は100μAとなるように転写部材への印加電圧を設定し、図13に示す文字部とハーフトーン部が混在するA4チャートを出力した。出力画像のハーフトーン部における残像の程度を4段階で評価し、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、悪いものを×で表わした。結果を表7に示す。
【0084】
【表7】

【0085】
以上の結果から、本発明の感光体は、新規なヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、を用い、長期間の繰り返し使用において残像などの異常画像が発生せず、安定した感度特性および帯電特性を実現するものであることが分かる。
【符号の説明】
【0086】
1 感光体
1C、1M、1Y、1K 感光体
2 導電性支持体
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護層
6 下引き層
7 単層型感光層
10C、10M、10Y、10K 画像形成要素
11 除電ランプ
12 帯電ローラ
12a ギャップ形成部材
12C、12M、12Y、12K 帯電部材
13 画像露光部
13C、13M、13Y、13K レーザー光
14 現像ユニット
14C、14M、14Y、14K 現像部材
15 転写前チャージャ
15C、15M、15Y、15K クリーニング部材
16 レジストローラ
17 転写紙
18 転写チャージャ
19 分離チャージャ
20 分離爪
21 クリーニング前チャージャ
22 ファーブラシ
23 クリーニングブレード
24 給紙コロ
25 転写搬送ベルト
26C、26M、26Y、26K 転写ブラシ
27 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開昭48−34189号公報
【特許文献2】特開昭57−14874号公報
【特許文献3】特公昭51−1662号公報
【特許文献4】米国特許第3,816,118号明細書
【特許文献5】特開昭58−182639号公報
【特許文献6】特開平5−98181号公報
【特許文献7】特開平5−263007号公報
【特許文献8】特開昭59−133551号公報
【特許文献9】特開昭60−59354号公報
【非特許文献】
【0088】
【非特許文献1】Y.Fujimaki,Proc. IS&T’s7th International Congress on Advances in Non−Impact Printing Technologies,1,269
【非特許文献2】k.Daimon,et al.:J.Imaging Sci. Technol.,40,249
【非特許文献3】D.C.Acad.Sci.,(1965),242,1026
【非特許文献4】Bull.Soc.Chim.France,23(1962)
【非特許文献5】Inrog.Chem.(19),3131,(1980)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、28.0°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶。
【請求項2】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.3°)8.0°、10.4°、13.3°、16.6°、22.5°、24.5°、28.0°に回折ピークを示す請求項1記載のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶。
【請求項3】
導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を設けた積層型の電子写真感光体において、該電荷発生層に請求項1又は2記載のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項4】
請求項3に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項3に記載の電子写真感光体を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−82783(P2013−82783A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222440(P2011−222440)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】