説明

新規の切削油剤

【課題】 鉱油から多種に亘る粘度と、潤滑性や冷却性、並びにフラッシング性や抗菌性を保持し、環境汚染も防止しえる切削油剤を安価に提供する。
【解決手段】
所要の粘度の鉱油に、その放射周波数が20乃至50KHzで放射強度が1.0及至5.0W/cmの超音波を放射し、キャビティーの崩壊による高温高圧反応場と液体の速流によりパラフィン連鎖を切断させて低分子化と低粘度化し、且その放射周波数が100乃至300KHzでその放射強度が20乃至120W/cmの超音波を放射し、微細且緻密な気泡若しくは液滴の生成により性能を安定化し、更にその放射周波数が500乃至2,000KHzで放射強度が20乃至120W/cmの超音波放射で付加機能を付与せしめた切削油剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削油剤に関するもので、更に詳しくは切削油剤に要請される冷却性や潤滑性若しくはフラッシング性等を、化学薬剤を用いることなく発揮しえる新規の切削油剤に係るものである。
【背景技術】
【0002】
経済の成長拡大はひとえに生産と消費の拡大でもあって、この生産拡大のためには膨大数に亘る生産設備機器が寄与しているものであって、かかる膨大数の生産設備機器に係る設備基台や各種の部材或いはギヤー歯車等の形成のためには更なる膨大量に亘る切削や研削或いは穿孔等がなされるものであって、これら切削、研削或いは穿孔に供される金属素材所謂金属ワークに、高硬度の切削刃やドリルを高圧力で接触させながら切削、研削、穿孔するため、高温度の摩擦熱の発生と滑性の低下が招来されて加工作業が不能となることから、金属ワークと切削具との間に切削油を塗着せしめて冷却と滑性を図り加工生産性を維持している。
更には切削や研削或いは穿孔に際して発生する切り粉や砥粉等の除去に加えて、工作機械の摺動面やスクリューの潤滑保持、或いは工作機械やワーク金属の保護や防錆も求められている。
【0003】
ところで現状の切削油剤は、その主成分が石油を素材として分留されてなる鉱油に、多種に亘る化学物質を配合させてなるものであって、その粘度においては少なくとも8cp(センチポアズ)程度から2,000cp程度に亘るものである。
そして切削油剤は2種に亘って区分されるとともに、その一つは不水溶性切削油剤であり、他の一つは水溶性切削油剤であります。
不水溶性切削油剤は、鉱油をベースとした油性の油剤で、希釈せずに原油のまま金属加工に使用するものであって、かかる鉱油は種類による特性が有って切削油剤のベースとしての適性も異なるもので、とりわけ鉱油は炭化水素の混合物であるから炭素鎖の配置によって性質が異なる。
切削油剤のベースとして最適な鉱油は、パラフィン含有量が多く芳香族の少ない鉱油であって、これがためかかる鉱油は特殊な溶剤精製法によって形成されるため、やや割高なものの高い粘度指数を有することから、高い温度でも高粘度を保持するとともに、耐酸化性に優れ寿命が長く且温度による粘度変化が少なく、切り粉/工具間の高温での油膜強度も高く、更には皮膚刺激性が少なく使用安全性に優れ、而も付帯ゴム部材等の膨潤や破断等の劣化も防止できる利点を有する。
【0004】
他方水溶性切削油剤は原液で供給され、使用に際して水に希釈して使用する油剤でエマルジョンタイプやソルブルタイプ或いはソリューションタイプに分けられる。そしてエマルジョンタイプは鉱油と乳化剤とから組成され、水を加えるとともに瞬時に水中へ油滴を懸濁させて乳化エマルジョンを形成するもので、鉱油としては不水溶性切削油剤と同様にパラフィン含有量が多く芳香族の少ないものが選ばれ、且乳化剤としては通常脂肪酸石けんが用いられ、而も石油スルホン酸やノニオン系界面活性剤と併用される。そしてかかる場合にも乳化剤自体鉱油と溶解せぬため、予め乳化剤を鉱油と溶解混合させるため高級アルコールからなるカプラー剤を使用する必要がある。
更にソルブルタイプの水溶性油剤は油滴サイズが小さく透明又は半透明のエマルジョンを形成しエマルジョンの安定性に優れるが、混入油を抱き込んで乳化し持ち出し量が増えたり濃度上昇し易く皮膚炎を生じ易い問題を抱える。
加えてソリューションタイプは鉱油フリーで完全に水に溶解するケミカルソルーションを作る油剤であって、一般的に潤滑性は低いが冷却性や浸透性に優れるため研削加工には好適とされている。
【0005】
しかしながらこれら現状の切削油剤は、その使用に際して切削加工や研削加工或いは穿孔加工に係る金属ワームも多種多様に亘るばかりか、その加工方法により潤滑性を望むものには鉱油をベースとし且広範囲の粘度の不水溶性切削油剤を用意せねばならず、更には冷却性や浸透性を望む場合には、鉱油にカップラー剤と乳化剤とを混合させてなる水溶性切削油剤か、若しくは著しく低粘度の鉱油をベースとして不水溶性切削油剤を用いる等極めて多種類に亘る切削油剤の用意が不可欠となる。
【0006】
そしてこれら切削油剤には潤滑性や冷却性に加えて、切り粉や研粒を流失除去させるフラッシング性の他に、切削加工時のワーク金属と切削工具との間に発生する高発熱に対処しえる高融点潤滑膜形成、即ち金属塩化物や金属硫化物生成のための塩化物や硫化物の配合や、或いは水溶性切削油剤にはカップラーや各種の乳化剤が配合されてなるものであるから、切削や研削、穿孔等加工処理後にはこれら切削油剤の油脂分や化学薬剤を分離処理して排水せねばならず、莫大な処理コストが強いられる。
加えて通常切削や研削、穿孔等は加工機器により連続的に処理されるものであるがら、切削油剤は予め加工機器に設けた貯留槽(クーラントタンク)内に貯留のうえ、送油ポンプ等により切削や研削或いは穿孔部位に滴下給油や流動給油させているが、水溶性油剤は貯留中にバクテリアの繁殖がし易く、このバクテリアの繁殖により油剤が酸性化しエマルジョンが破壊されたり金属の腐食を促進したりし、而も腐敗臭の発生も招来される。
更に鉱油はその生成素材たる石油の分留に伴って、特に高粘度の鉱油中には懸濁固形化し易いタール分等が混在し、これが凝固し送油ポンプを閉塞させたりする等、極めて多くの問題を内在している。
【0007】
発明者等は現状の切削油剤が抱えるこれら多くの問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、鉱油に所要の放射周波数と放射強度を以って超音波を放射することにより、鉱油の主要素材たるパラフィン系炭化水素の分子鎖の切断による粘度変化やOHラジカル生成によるバクテリアの抗菌や化学反応の生成による耐熱性の向上、更には鉱油と水とを直接分散乳化させて乳化剤の削減が可能なることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は石油の分留により形成された鉱油から極めて多種に亘る粘度と潤滑性や冷却性、フラッシング性或いは抗菌性を保持し、且環境汚染をも防止しえる新規な切削油剤を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術手段は、その粘度が少なくとも200センチポアズ以上の鉱油を、所要の容積のクーラントタンク内に貯留のうえ、その放射周波数が20乃至50KHzで且放射強度が1.0乃至5.0W/cm、及びその放射周波数が100乃至300KHzで且放射強度が20乃至120W/cmの超音波を放射せしめて強力なキャビテーション並びに緻密且緩やかなキャビテーションとにより、パラフィン炭化水素の結合鎖を切断して低分子量化によりその粘度が略8乃至1,000センチポアズの低粘度化により潤滑性やフラッシング性と、且OH基の生成よる抗菌性をも保持した不水溶性切削油脂が安価に形成され、かかる不水溶性切削油脂の滴下給油や流動給油により切削や研削或いは穿孔が能率的になされ、更には一旦低粘度化されたパラフィンもその放射周波数が500乃至2,000KHzで放射強度が20乃至120W/cmの超音波照射により、その直進作用や化学反応及び発熱作用とにより側鎖を持つ高級パラフィン化物の生成による高融点潤滑作用も発揮される。
【0010】
加えて所要の粘度の鉱油に対して水が30乃至70容量%割合で混合されたうえ、その上面若しくは下面或いは上下両面よりその放射周波数が20乃至50KHzで且放射強度が1.0乃至5.0W/cmの超音波放射をなすことにより、二液の相界面にキャピラリー波を発生せしめて鉱油液滴を生成し、且超音波振動面と接触させて固体面上キャビテーションにより微粒化せしめて鉱油と水とを分散乳化させた水溶性切削油剤に存するものであり、且この分散乳化させた水溶性切削油剤に更にその放射周波数が100乃至350KHzで放射強度が20乃至120W/cmの超音波放射をなし、固体面上キャビテーションの加乗による超微粒化させて、以って鉱油と水とを一段と安定した分散乳化させた水溶性切削油剤に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如き構成からなるものであって、不水溶性切削油剤においては少なくともその粘度が200センチポアズ以上の適宜粘度の鉱油を、所要の容積のクーラントタンク内に貯留させたうえ、その放射周波数が20乃至50KHzで且放射強度が1.0乃至5.0W/cmと、その放射周波数が100乃至300KHzで且その放射強度が20乃至120W/cmの超音波が放射されるため、特に低周波数の20乃至50KHzの超音波により、鉱油に強力なキャビテーション作用が働き気泡生成と圧壊時の高温高圧反応場と、崩壊時に生じる液体の速い流れにより鉱油を形成するパラフィン炭化水素結合連鎖の切断による低分子化に伴う粘度低下の鉱油が形成され、潤滑性の保持とともに浸透性と且フラッシング性も創出され、更には高温高圧場によりOH基も生成され優れた抗菌性も付与される。
そしてパラフィン連鎖の切断により低分子化された場合にも、その放射周波数が500乃至2,000KHzで放射強度が20乃至120W/cmの超音波が放射されることにより、直進作用や化学反応作用並びに発熱作用等により側鎖を有する高級パラフィン化物の生成もなされ高融点潤滑性も保持される。
【0012】
更に水溶性切削油剤においては適宜粘度の鉱油に対して水を30乃至70容量%割合でクーラントタンク内に混合貯留のうえ、その上面若しくは下面或いは上下面より混合された二相液に対して垂直方向に、その放射周波数が20乃至50KHzで放射強度が1.0乃至5.0W/cmの超音波放射をなすため、二液相界面にキャビラリー波が発生し相界面の波の破断により液滴が生成され、且この液滴が超音波振動面と接触して固体面上キャビテーションにより微粒化されて鉱油と水とが短時に分散乳化される。そして使用する鉱油の粘度と且混合される水の容量割合により所望の粘度と浸透性に加えて冷却性や抗菌性を保持する水溶性切削油剤が簡便に形成できる。
加えてかかる分散乳化された水溶性切削油剤にその放射周波数が100乃至300KHzで放射強度が20乃至120W/cmの超音波照射により、固体面上キャビテーションの加乗により気泡が超微粒化され均質高密度に分散乳化されて浸透性や冷却性と極圧緩和性も保持する水溶性切削油剤が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
その粘度が1,000センチポアズの鉱油を貯留のうえその放射周波数が20乃至50KHzで放射強度が1.0乃至5.0W/cmで且放射時間を1乃至30分間放射せしめて、その粘度が略8乃至220センチポアズの粉度の不水溶性切削油剤を形成する。
【実施例1】
【0014】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1は本発明の製造方法のレイアウト図であって、従来の切削油剤は潤滑性を主目的とした不水溶性切削油剤並びに冷却性を主目的とした水溶性切削油剤とに使い分けされるものの、不水溶性切削油剤にしろ水溶性切削油剤でも切削や研削或いは穿孔等に際しての金属ワーム1A並びに加工工具1Bの素材や加工方法及び加工精度等により、要求される潤滑性や浸透性或いはフラッシング性等も異なるものであるから、これらに対処しえる切削油剤としては、その粘度として数センチポアズから数千センチポアズに亘る膨大種類の切削油剤が要請される。
【0015】
これがため本発明切削油剤とりわけ本発明不水溶性切削油剤1Aでは、予め所要の貯留容量のクーラントタンク2内に所要粘度の鉱油1望ましくはその粘度が200センチポアズ以上の鉱油1を貯留させるとともに、その主要成分たるパラフィン炭化水素化合物の連鎖を切断して低分子量化させて多種の粘度の不水溶性切削油剤7を形成するものであり、併せて潤滑性や浸透性或いはフラッシュ性を保持させるため、その放射周波数が20乃至50KHzで且その放射強度が1.0乃至5.0W/cmの超音波を放射させるものである。
かかる場合において、本発明不水溶性切削油剤7は潤滑性に加えて浸透性やフラッシング性を付与せしめるうえからは、その粘度も略6乃至8センチポアズ程度から最高で数百センチポアズ程度の低粘度化が要請されるもので、かかる対処として鉱油1の主成分たるパラフィン炭化水素の連鎖を切断させるもので、これがためには放射周波数として20乃至50KHz、更に有効には20乃至29.5KHzで且その放射強度においては少なくとも3分程度から最長30分程度でなしえる。
【0016】
そしてパラフィン炭化水素の連鎖を切断させるためのキャビテーションに係る高温高圧反応場や崩壊時に生じる液体の速い流れ等に係る化学反応での還元作用によるOH基の生成と抗菌性の創出もなされる。
更にこの鉱油1には全体に亘って緻密且緩やかにキャビテーションが付加せしめることにより潤滑性や浸透性或いはフラッシング性を均質に保持させるため、その放射周波数が100乃至300KHzで且その放射強度が20乃至120W/cmの超音波を放射させることにより、極めて安定した潤滑性や浸透性或いはフラッシング性が発揮され、切削や研削或いは穿孔等の加工も能率的になされることとなる。
【0017】
そして特徴的なことは、一旦連鎖が切断されて低分子量化されたパラフィンも、その放射周波数が500乃至2,000KHzで且その放射強度が20乃至120W/cmの超音波照射をなすことによって、直進作用や化学反応及び発熱作用等によって側鎖を持つ高級パラフィン化物の生成がなされ、これによる高融点潤滑作用(極圧潤滑)も創出される。
【0018】
而してかかる低周波数超音波放射即ちその放射周波数が20乃至50KHz、並びに中周波数超音波放射即ちその放射周波数が100乃至300KHz及び高周波数超音波放射即ちその放射周波数が500乃至2,000KHzの超音波放射は、クーラントタンク2内において低周波数超音波発振子3A若しくは底部低周波数超音波発振子4Aで、そして中周波数超音波発振子3B若しくは底部中周波数超音波発振子4Bで、更に高周波数超音波発振子3C若しくは底部高周波数超音波発振子4Cがそれぞれのクーラントタンク2A、2B、2Cに配設されてなるとともに鉱油1をクーラントタンク2Aから2Bに、そして2Cへと順次移送させつつ放射させる方法が図2に示されている。
無論クーラントタンク2Aからクーラントタンク2Bへ鉱油1を移送するための第一移送ポンプ5A及び第二移送ポンプ5Bが設けられ、且超音波放射がなされた本発明の新規な不水溶性切断油剤7は供給ポンプ6を介して切削部位や研削部位或いは穿孔部位に滴下若しくは注油がなされる。
【0019】
そして留意すべきは、低周波数超音波放射若しくは中周波数超音波放射は、貯留される鉱油1或いは水溶性切削油剤8の形成のために貯留される鉱油1及び水10にキャビテーション作用を発揮させるものであって、該キャビテーション作用により気泡の生成と分散混合させるうえからは、超音波発振子3A及び4A、或いは3B及び4Bは、貯留される鉱油1或いは混合される水10に対して垂直方向に放射させてやることである。
【0020】
図3は超音波放射が区画クーラントタンク20においてなされる場合の平面説明図であって、区分クーラントタンク20にはそれぞれ所要の容積を以って低周波数超音波放射区画20Aと中周波数超音波放射区画20B及び高周波数超音波放射区画20Cが一体的に区画形成されてなるものであって、当然に低周波数超音波放射区画20Aに貯留される鉱油1若しくは該鉱油1と混合される水10に対しては強力なキャビテーション作用を与えて鉱油1の成分の低分子化と低粘度化を図り、更に中周波数超音波放射区画20Bにおいては微細で緻密な気泡生成と分散混合をさせるうえから、その放射周波数が100乃至300KHzで且その放射強度が20乃至120W/cmの超音波が放射がなされる。更に高周波数超音波放射区画20Cでは、直進作用や化学反応或いは発熱作用等により境界潤滑や極圧潤滑を高め或いは表面保護を高めたりするうえから、その放射周波数が500乃至2,000KHzで且放射強度が20及至120W/cmで超音波放射がなされるよう形成されている。
かかる場合に鉱油1或いは鉱油1と水10とを低周波数超音波放射区画20Aより、中周波数超音波放射区画20Bに移送させたうえ、更に高周波数超音波放射区画20Cへと経由させることでも、或いは鉱油1若しくは鉱油1と水10とを、低周波数超音波放射区画20Aや中周波数超音波放射区画20B、或いは高周波数超音波放射区画20Cに直接貯留させて超音波処理をなすことも可能である。
【0021】
他方水溶性切削油剤は主に切削や研削或いは穿孔等の加工時に発生する高温化を防止することで切削工具の保護や加工性の能率化を目的とするもので、かかる高温化の防止には水ベースの水溶性切削油剤の冷却性が極めて有効である。
これがため現状の水溶性切削油剤では鉱油1に高級アルコールからなるカップラーを介して脂肪酸石けんからなる乳化剤及びノニオン界面滑性剤を水10とともに混合させてなるものであるが、かかる化学的乳化手段では酸や塩類により安定性が損なわれる。加えて鉱油1に水10が混合された場合には微生物やバクテリアの繁殖による臭気発生や送油へ支障も発生し、特には加工後においては油水の分離はもとよりこれら混合された化学薬剤の分離除去には莫大な処理費用が強いられる結果となっている。
【0022】
而して本発明において鉱油1に対して水10を略30乃至70容量%割合で混合し前記クーラントタンク2A、2B、2C内や、区画クーラントタンク20のそれぞれの放射区画、20A、20B、20C内を経由させ若しくは個別に貯留させて超音波放射をなすことにより、放射周波数が20乃至50KHzで且放射強度が1.0乃至5.0W/cmの超音波放射では、その放射が鉱油1と水10との混合物をその上面若しくは下面或いは上下両面から二液相界面に対して垂直になされることにより、キャビラリー波の発生と相界面における波の破断により微細液滴が形成されるとともに、この微細液滴が超音波振動面との接触による固体面上キャビテーションにより著しく微細化と高密度化された分散混合所謂分散乳化がなされる。
【0023】
かかる場合の気泡若しくは液滴のサイズは鉱油1の粘度や放射周波数によっても変化するが、鉱油1の粘度が6センチポアズの物で且放射周波数が20乃至50KHzの場合では略10乃至50μm程度であるが、放射周波数が100乃至300KHzの場合では略0.1乃至0.3μm程度と極めて微細となり分散混合も良好になされる。そしてかかる分散混合された状態で切削や研削或いは穿孔等の加工部位に滴下若しくは注油させることで、潤滑性や冷却性、浸透性或いはフラッシング性が十分に発揮され、更にはその放射周波数が500乃至2,000KHzでその放射強度が20及至120W/cmの超音波放射をなすことにより直進作用や化学反応或いは発熱作用等により、切断されたパラフィンの高級パラフィン化への再合成等により、防錆や境界潤滑或いは極圧潤滑性も創出される。当然の事ながら低周波数超音波放射や中周波数超音波放射或いは高周波数超音波放射に際しては、それぞれ所望する放射周波数及び放射強度を有する発振回路が別に設けられている。
【0024】
以下に本発明における低粘度化試験結果を述べれば、試験に用いた鉱油は主成分がパラフィン炭化水素からなりその動粘度(mm/s40℃)が9,800の物を用いた。
低粘度化試験はステンレス板材を用いて縦、横、高さが10cm内容積1lのクーラントタンクを作成し、その底面及び上面にフェライト磁歪振動子を配位させたうえ、超音波の放射周波数を20KHzと29.5KHz、及びその放射強度を1W/cm並びに3W/cmで放射させ、時間経過とともにその動粘度の変化を測定した結果は次表の通りであって、低周波数で且高い放射強度では、極めて短時間に低粘度化が形成しえる。
【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
所要粘度の鉱油をクーラントタンクに貯留のうえ、放射周波数と放射強度及び放射時間の選択で所望粘度の鉱油が形成しえる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明の製造方法のレイアウト図である。
【図2】 クーラントタンクの超音波放射の説明図である。
【図3】 区画クーラントタンクの平面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 鉱油
1A 金属ワーム
1B 加工工具
2 クーラントタンク
2A 低周波数超音波放射クーラントタンク
2B 中周波数超音波放射クーラントタンク
2C 高周波数超音波放射クーラントタンク
3A 低周波数超音波発振子
3B 中周波数超音波発振子
3C 高周波数超音波発振子
4A 底部低周波数超音波発振子
4B 底部中周波数超音波発振子
4C 底部高周波数超音波発振子
5A 第一移送ポンプ
5B 第二移送ポンプ
6 供給ポンプ
7 不水溶性切削油剤
8 水溶性切削油剤
10 水
20 区画クーラントタンク
20A 低周波数超音波放射区画
20B 中周波数超音波放射区画
20C 高周波数超音波放射区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその粘度が200センチポアズ以上の鉱油を、所要容積のクーラントタンク内に貯留し、その放射周波数が20乃至50KHzの低周波数で且放射強度が1.0乃至5.0W/cm、及びその放射周波数が100乃至300KHzの中周波数で且放射強度が20乃至120/cmの超音波を、上面若しくは下面或いは上下面より放射せしめて強力なキャビテーション並びに緻密且緩やかなキャビテーションとにより、パラフィン炭化水素結合鎖を切断せしめて、その粘度が8乃至1,000センチポアズ程度に安定した低粘度化させたうえ、優れた潤滑性や浸透性とフラッシング性及び抗菌性を保持させてなる不水溶性切削油剤。
【請求項2】
鉱油に低周波数並びに中周波数の超音波放射をなし低粘度化された不水溶性切削油剤に、その放射周波数が500乃至2,000KHzの高周波数で、且その放射強度が20乃至120W/cmの超音波を放射せしめて高融点潤滑性及び境界潤滑性並びに表面保護性を付与せしめてなる請求項1記載の不水溶性切削油剤。
【請求項3】
適宜粘度の鉱油に水を30乃至70容量%割合で混合し所要容積のクーラントタンク内に貯留し、その放射周波数が20乃至50KHzの低周波数で且放射強度が1.0乃至5.0W/cm、及びその放射周波数が100乃至300KHzの中周波数で且放射強度が20乃至120W/cmの超音波を、上面若しくは下面或いは上下面より放射せしめて二液相界面にキャビラリー波を発生させ且その破断で液滴を生成させ、而して超音波振動面と接触させて固体面上キャビテーションにより微粒化させ、以って鉱油と水とが短時に分散乳化され所要の粘度で浸透性や冷却性並びに極圧潤滑性を保持してなる水溶性切削油剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77279(P2012−77279A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237977(P2010−237977)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(501489786)
【Fターム(参考)】