説明

新規アルケニル置換ナジイミド、その製法並びにその硬化方法

【目的】 機械的強度、靱性、コーティング剤として用いたときの基材に対する密着性、接着性および耐熱性に優れた新規アルケニル置換ナジイミドとその製法並びに硬化方法を提供する。
【構成】 一般式[1]:
【化1】


{式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基、Eは一般式[2]:
【化2】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す)で表されるアルキレン・フェニレン基を表す}で表されるアルケニル置換ナジイミド。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた作業性を有し、かつ優れた耐熱性、力学的性質、電気的性質を有する熱硬化性樹脂である新規アルケニル置換ナジイミド、その製法並びにその硬化方法に関するものである。この新規アルケニル置換ナジイミドは積層材料、注型材料、成形材料、コーティング剤、塗料、接着剤、充填材料あるいはガラスおよび炭素繊維等を強化材とする複合材料用マトリックス樹脂等として有用である。特に、金属、ガラス、セラミックおよびプラスチック等のコーティング剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】科学技術の進歩に伴い、使用される材料もより高性能化、高機能化が求められ、それに応えるべく各種材料が開発されている。その中で、熱硬化性樹脂は、航空機などの構造材料や、半導体の封止剤、積層板、コーティング剤および接着剤などの電気、電子材料への用途の拡大に伴い、耐熱性の優れたものが求められている。また、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドおよびポリイミド等、いわゆるスーパーエンプラ(エンジニアリングプラスチック)と呼ばれている各種高性能ポリマーも市場に相当出回っているが、とりわけポリイミドに対する今後の期待が大きい。
【0003】両末端にノルボルネン環を有し、かつ分子内に芳香族基を有するビスナジイミドは、耐熱性の極めて高い付加型ポリイミド樹脂原料として従来から注目され、それらの一部はいわゆる先端複合材料用マトリックスとして実用化されている。しかし、該ビスナジイミドは一般に融点が高く、溶媒に対する溶解性も悪いため取り扱いにくく、また反応性に乏しいため、高分子量化するには苛酷な反応条件(たとえば300℃のような高温成形)を必要とするという欠点がある。過酷な反応条件下では、目的とする高分子量化反応の他に、ノルボルネン環の逆Diels-Alder反応が一部起こり、そこで発生する揮発性の高いシクロペンタジエンが成形体中に著しい気泡(ボイド)を生じ、成形体の物性低下の原因となる。そのため、このビスナジイミドでは、成形手段が、高温加圧下で反応させるような方法(たとえばオートクレーブ成形法)に限定されたり、あるいは当該イミドの原料である酸無水物(エステル)とジアミンとを溶媒に溶かしてオリゴマー化し、ワニスとして使用する等、その使用法がかなり限定されるという問題もあった。
【0004】そこで、上記のナジイミドの上記諸欠点を改善するために、そのノルボルネン環に適当な置換基を導入する方法が各種検討されている。
【0005】その1つとして、アリル基またはメタリル基といったアルケニル基を導入する方法が各種提案された(たとえば特開昭59−80662号公報、特開昭60−124619号公報、特開昭60−178862号公報、特開昭61−18761号公報、特開昭61−73710号公報、特開昭61−197556号公報、特開昭62−111967号公報、特開昭62−253607号公報、特開昭63−95263号公報、特開昭63−150311号公報、特開昭63−170358号公報、特開昭63−310884号公報、特開昭63−317530号公報、特開平1−197516号公報等)。
【0006】当該提案によると、アリル基またはメタリル基といったアルケニル基を導入することによって、ナジイミドの融点が下がり、溶媒に対する溶解性が増加し、硬化温度をある程度下げることができ、また硬化の際、揮発成分が発生せず、しかも得られた硬化物の物性低下は少なかったと述べられている。すなわち、このアルケニル置換ナジイミドは、良好な作業性を有し、またその硬化物は優れた耐熱性、力学的性質、電気的性質、化学的安定性を有しており、積層材料、成形材料、複合材料、コーティング剤、塗料および接着剤等として有用である。しかし、このアルケニル置換ナジイミドは、力学的性質、特に靱性、基材への密着性、接着性の点で、未だ満足のゆくものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記の従来から知られているアルケニル置換ナジイミドの硬化物の優れた特性である耐熱性、電気的特性を損なうことなく、上記のような問題点が解決されて、力学的性質、特に靱性、基材に対する密着性、接着性が著しく改善された硬化物を与える新規なアルケニル置換ナジイミドとその製法を提供することにあり、さらにはその硬化方法も提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アルケニル置換ナジイミドを構成するジアミン成分が従来採用されたことのない特定の構造のジアミン成分である新規なアルケニル置換ナジイミドの硬化物が、従来のアルケニル置換ナジイミドの硬化物に比べて、特異な性質を有する、すなわち、機械的強度、靱性、コーティング剤として用いたときの基材に対する密着性、接着性および耐熱性が優れていることを見出して本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明の要旨は、第一には、一般式[1]:
【化6】


{式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基、Eは一般式[2]:
【化7】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す。}で表されるアルキレン・フェニレン基を表す。)で表されるアルケニル置換ナジイミドに存し、第二には、一般式[3]:
【化8】


(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基を表す。)で表されるアルケニル置換ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物誘導体と、一般式[4]:
【化9】


{式中、Eは一般式[2]:
【化10】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す。}で表されるアルキレン・フェニレン基を表す。}で表されるジアミンを反応させることを特徴とする上記アルケニル置換ナジイミドの製法に存し、第三には、上記アルケニル置換ナジイミドを硬化触媒の存在下または不存在下、80〜400℃で0.001〜30時間加熱することを特徴とする上記アルケニル置換ナジイミドの硬化方法に存する。
【0010】本発明についてさらに詳述すると、本発明の一般式[1]で表されるアルケニル置換ナジイミドは、従来から知られているアルケニル置換ナジイミドの合成に用いられると同様の、一般式[3]:
【化11】


(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基を表す。)で表されるアルケニル置換ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物誘導体(以下、「アルケニル置換ナジック酸無水物誘導体」と略す。)と、一般式[4]:
【化12】


{式中、Eは一般式[2]:
【化13】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す。}で表されるアルキレン・フェニレン基を表す。}で表される特定構造のジアミンとの反応によて合成される。
【0011】一般式[3]で表されるアルケニル置換ナジック酸無水物誘導体の代表的なものとして、たとえば、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物およびメタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物があげられる。
【0012】また、一般式[4]で表されるジアミンとして、Eが、フェニレン・アルキレン構造の、たとえば、フェニレン・メチレン基(ここで、フェニレンは、o−、m−またはp−のいずれの結合形態でもよく、以下同様とする。)、フェニレン・エチレン基、フェニレン・トリメチレン基、フェニレン・テトラメチレン基、フェニレン・ブチリデン基、フェニレン・s−ブチリデン基、フェニレン・1,2−ジメチルエチレン基、フェニレン・1,1−ジメチルエチレン基、フェニレン・1,2−シクロペンテニレン基、フェニレン・1,3−シクロペンテニレン基、フェニレン・1,4−シクロペンテニレン基、フェニレン・2−メチル−1,4−シクロペンテニレン基、フェニレン・2,3−ジメチル−1,4−シクロペンテニレン基、フェニレン・1,2−シクロヘキセニレン基、フェニレン・1,4−シクロヘキセニレン基、フェニレン・2−メチル−1,3−シクロヘキセニレン基、フェニレン・3−メチル−1,4−シクロヘキセニレン基、フェニレン・3−エチル−1,4−シクロヘキセニレン基、フェニレン・1,3−シクロヘプテニレン基、フェニレン・3−メチル−1,4−シクロヘプテニレン基、フェニレン・4−メチル−1,3−シクロヘプテニレン基、フェニレン・1,3−シクロオクテニレン基およびフェニレン・1,4−シクロオクテニレン基等、またアルキレン・フェニレン・アルキレン構造の、たとえばo−、m−またはp−キシリレン基、メチレン・フェニレン・エチレン基、メチレン・フェニレン・トリメチレン基、メチレン・フェニレン・1,2−ジメチルエチレン基、メチレン・フェニレン・1,4−シクロペンテニレン基、エチレン・フェニレン・ブチリデン基、エチレン・フェニレン・エチレン基、エチレン・フェニレン・1,3−シクロペンテニレン基、ブチリデン・フェニレン・ブチリデン基、トリメチレン・フェニレン・s−ブチリデン基、トリメチレン・フェニレン・1,3−シクロオクテニレン基、1,4−シクロペンテニレン・フェニレン・1,4−シクロペンテニレン基、1,3−シクロペンテニレン・フェニレン・3−エチル−1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−シクロオクテニレン・フェニレン・1,3−シクロオクテニレン基および1,4−シクロヘキセニレン・フェニレン・1,3−シクロオクテニレン基等があげられるがこれらに限定されない。
【0013】本発明の一般式[1]で表されるアルケニル置換ナジイミドの合成は、従来のアルケニル置換ナジイミドの合成法に従えばよい。
【0014】すなわち、上記のアルケニル置換ナジック酸無水物誘導体とジアミンを、溶媒の存在下、または不存在下、80〜220℃の温度で、0.5〜20時間保持することにより、両成分が化学量論的に反応し、本発明のアルケニル置換ナジイミドが合成される。
【0015】また、他の方法として、上記のアルケニル置換ナジック酸無水物誘導体とジアミンを、溶媒の存在下、比較的低温で反応させて先ずイミドの中間体であるアミック酸を生成させた後、触媒として第三級アミン、または必要に応じて酢酸ニッケルを併用したものを用い、無水酢酸を脱水剤に使用して閉環、イミド化する二段階反応で合成することもできる。
【0016】上記合成において、使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、テトラリン、クロロホルム、トリクレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN−メチルピロリドン等があげられる。
【0017】本発明のアルケニル置換ナジイミドは、80〜400℃で0.001〜30時間加熱することにより重合、硬化することができる。より低い温度、短い時間で硬化反応を完結するには、触媒を共存させることが望ましい。
【0018】本発明のアルケニル置換ナジイミドの硬化触媒としては、■カチオン触媒、■オニウム塩、または■有機過酸化物および/または■有機遷移元素化合物等があげられる。こららのうち、■カチオン触媒としては、たとえば、硫酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、硫酸アニリン、硫酸・ピリジン、燐酸、亜燐酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、燐酸トリエチル、燐酸ジメチル、燐酸ジフェニル、亜燐酸フェニル、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸・トリフェニルアミン錯体、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート、ピリジニウム−m−ニトロベンゼンスルホネート、α−またはβ−ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチルおよびN−(2−ベンゼンスルホニルオキシエチル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(ANI−BsE)等の酸または酸を遊離するブレンステッド酸またはそのエステルおよびそのアミン錯体、また三塩化硼素、三弗化硼素、三弗化硼素・エーテル錯体、三弗化硼素・ピペラジン錯体、塩化第二鉄、塩化ニッケル、四塩化錫、四塩化チタン、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム・エーテル錯体、塩化アルミニウム・ピリジン錯体、臭化アルミニウム、塩化亜鉛および五塩化アンチモン等の元素の周期律表の2〜5族元素のルイス酸性を示すハロゲン化物またはその塩基との錯体等があげられる。■オニウム塩としては、たとえば、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリ−n−ブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリ−n−ブチルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムパークロレート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、m−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムブロミドおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート等のアンモニウム化合物、メチルトリフェニルホスホニウムアイオダイト、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミドおよび3−ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド等のホスホニウム化合物、ベンジルトリフェニルアルソニウムクロリド、テトラフェニルアルソニウムブロミドおよびテトラ−n−ブチルアルソニウムクロリド等のアルソニウム化合物、ベンジルトリフェニルスチボニウムクロリドおよびテトラフェニルスチボニウムブロミド等のスチボニウム化合物、トリフェニルオキソニウムクロリドおよびトリフェニルオキソニウムブロミド等のオキソニウム化合物、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ(p−トリル)スルホニウムテトラフルオロボレート、ジメチルフェナシルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェナシルスルホニウムテトラフルオロボレートおよびジフェニルフェナシルスルホニウムテトラフルオロボレート等のスルホニウム化合物、トリフェニルセレノニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルセレノニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルセレノニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびp−(t−ブチルフェニル)ジフェニルセレノニウムヘキサフルオロアルセネート等のセレノニウム化合物、トリフェニルスタンノニウムクロリド、トリフェニルスタンノニウムブロミド、トリ−n−ブチルスタンノニウムブロミドおよびベンジルジフェニルスタンノニウムクロリド等のスタンノニウム化合物、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムパークロレート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(2−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジ(p−トリル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートおよびジ(p−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート等のヨードニウム化合物等があげられる。■有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−アミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジ−i−ブチリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、パーオキシ琥珀酸、t−ブチルヒドロパーオキシド、シクロヘキシルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボナートおよび2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等があげられる。■有機遷移元素化合物としては、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、ランタン、セリウム、ハフニウム、タンタルおよびタングステン等の遷移元素のアセチルアセトン塩、有機カルボン酸塩、メタロセン、アルコラート、キレート化合物および有機金属化合物、好ましくはバナジウム、マンガン、鉄、セリウム等のアセチルアセトン塩があげられる。■有機過酸化物と■有機遷移元素化合物は併用することもできる。
【0019】上記各硬化触媒の使用量は特に制限されず広い範囲内で適宜選択すれば良いが、通常、アルケニル置換ナジイミドに対し、0.005〜10wt%、好ましくは0.01〜5wt%共存させるのが良い。
【0020】本発明のアルケニル置換ナジイミドは、その範疇に属する個々の化合物を混合して用途に供しても良いし、またオリゴマーとして用途に供することもできる。
【0021】本発明のアルケニル置換ナジイミドは、種々の用途に用いることができる。たとえば、本発明のアルケニル置換ナジイミドを成形物とする場合は、本発明のアルケニル置換ナジイミドを、必要に応じて硬化触媒と溶融混合した後、注型成形、射出成形または圧縮成形等の成形法を用い、80〜280℃、好ましくは120〜260℃の温度で、0.01〜8時間、好ましくは0.05〜5時間加熱することによって硬化させて成形物とすることができる。
【0022】また、コーティング剤または塗料として使用する場合は、本発明のアルケニル置換ナジイミドを、無溶媒、または溶媒存在下で、必要に応じて硬化触媒と共に混合し、それを金属、ガラス、セラミックまたはプラスチック等の基材に塗布し、必要に応じて溶媒を除去した後、80〜400℃、好ましくは120〜380℃の温度で、0.001〜2時間、好ましくは0.005〜1時間加熱することによって硬化させて、薄膜、被覆膜とすることができる。
【0023】上記のようにして得られた成形物、薄膜および被覆膜等は、必要に応じて150〜350℃の温度で、0.5〜30時間さらに熱処理してもよい。
【0024】また、本発明のアルケニル置換ナジイミドは、接着剤、充填材、有機、無機物の結合材としても使用することも可能である。
【0025】また、該アルケニル置換ナジイミドは複合材料用マトリックス樹脂としても有用であり、各種充填材、たとえばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、石膏、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、石英粉末、カーボンブラック等を該アルケニル置換ナジイミド100部に対し10〜500部混合しても差し支えない。
【0026】
【実施例】以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の内容はこれらによって限定されるものではない。
【0027】実施例1窒素置換した内容量500mlのフラスコに、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物154.3g(0.756mol)およびキシレン200mlを仕込み、加熱、攪拌しながら、キシレンの還流下、p−キシリレンジアミン50g(0.37mol)を30分かけて加えた。生成した水を水分分離器で分離、除去しながら反応を4時間続けた後、微量の固形残渣を濾別し、溶媒のキシレンを留去した。つぎに内容物を200℃、1Torrの減圧下で1.5時間攪拌しながら熱処理したところ、目的物であるN,N´−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)183.6g{アミン基準の収率97%(以下同様);構造式を一般式[5]に示す。;以下「BANI−pX」と略す。}が得られた。
【0028】
【化14】


【0029】BANI−pXのIRおよび1H−NMスペクトル(60MHz)を、それぞれ図1および図2に示す。
【0030】IRスペクトルでは、アルケンC−H伸縮 :3074、2978cm-1
芳香族C−H伸縮 :2978cm-1
アルカンC−H伸縮 :2943cm-1
イミドC=O伸縮 :1769、1699cm-1
C=C伸縮 :1641cm-1
−CH2−N−メチレンはさみ振動 :1429cm-1
イミドC−N伸縮 :1393cm-1等が帰属される。
【0031】1H−NMRスペクトルでは、a〜dのプロトン(4H) :7.0〜7.3ppmのピーク;
e〜gのプロトン(8H) :4.7〜5.9ppmのピーク;
hのプロトン(4H) :4.2〜4.7ppmのピーク;
i〜mのプロトン(12H) :2.2〜3.4ppmのピーク;
nのプロトン(4H) :0.8〜2.0ppmのピーク等が帰属される。
【0032】元素分析の結果は、C:75.0wt%、H:6.1wt%、N:5.5wt%(理論値は、それぞれ75.57wt%、6.34wt%、5.51wt%)であった。
【0033】なお、該BANI−pXはつぎのような性質を有している。
1)微量融点測定装置による融点:約55℃の淡黄色固体2)N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびトルエン等に容易に溶解し、ヘキサンおよびメタノールには不溶である。
【0034】実施例2窒素置換した内容量1000mlのフラスコに、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物257.4g(1.26mol)およびキシレン300mlを仕込み、加熱、攪拌しながら、キシレンの還流下、m−キシリレンジアミン81.4g(0.60mol)を1.5時間かけて加えた。生成した水を水分分離器で分離、除去しながら反応を3時間続けた後、溶媒のキシレンを留去した。つぎに内容物を200℃、1Torrの減圧下で1時間攪拌しながら熱処理したところ、目的物であるN,N´−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)301.8g(収率99%;構造式を一般式[6]に示す。;以下「BANI−mX」と略す。}が得られた。
【0035】
【化15】


【0036】BANI−mXのIRおよび1H−NMスペクトル(60MHz)を、それぞれ図3および図4に示す。
【0037】IRスペクトルでは、アルケンC−H伸縮 :3075、2979cm-1
芳香族C−H伸縮 :2979cm-1
アルカンC−H伸縮 :2943cm-1
イミドC=O伸縮 :1769、1701cm-1
C=C伸縮 :1641cm-1
−CH2−N−メチレンはさみ振動 :1428cm-1
イミドC−N伸縮 :1394cm-1等が帰属される。
【0038】1H−NMRスペクトルでは、a〜dのプロトン(4H) :7.0〜7.3ppmのピーク;
e〜gのプロトン(8H) :4.7〜6.0ppmのピーク;
hのプロトン(4H) :4.2〜4.7ppmのピーク;
i〜mのプロトン(12H) :2.2〜3.4ppmのピーク;
nのプロトン(4H) :0.8〜1.9ppmのピーク等が帰属される。
【0039】元素分析の結果は、C:75.3wt%、H:6.4wt%、N:5.4wt%(理論値は、それぞれ75.57wt%、6.34wt%、5.51wt%)であった。
【0040】なお、該BANI−mXはつぎのような性質を有している。
1)微量融点測定装置による融点:約42℃の淡黄色固体2)比重(23℃/23℃):1.2133)粘度:4.0×104mPa・s(80℃)
3.5×103mPa・s(100℃)
4)N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびトルエン等に容易に溶解、メタノールに一部溶解し、ヘキサンには不溶である。
【0041】実施例3窒素置換した内容量300mlのフラスコに、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物61.7g(0.302mol)およびキシレン100mlを仕込み、加熱、攪拌しながら、キシレンの還流下、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン20g(0.15mol)を30分かけて加えた。生成した水を水分分離器で分離、除去しながら反応を4時間続けた後、微量の固形残渣を濾別し、溶媒のキシレンを留去した。つぎに内容物を200℃、1Torrの減圧下で1時間攪拌しながら熱処理したところ、目的物であるN,N´−(p−フェニレン)・エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)70.7g(収率88%;構造式を一般式[7]に示す。;以下「BANI−PE」と略す。}が得られた。
【0042】
【化16】


【0043】BANI−PEのIRおよび1H−NMスペクトル(60MHz)を、それぞれ図5および図6に示す。
【0044】IRスペクトルでは、アルケンC−H伸縮 :3075、2977cm-1
芳香族C−H伸縮 :2977cm-1
アルカンC−H伸縮 :2943cm-1
イミドC=O伸縮 :1772、1709cm-1
C=C伸縮 :1641cm-1
−CH2−N−メチレンはさみ振動 :1434cm-1
イミドC−N伸縮 :1394cm-1等が帰属される。
【0045】1H−NMRスペクトルでは、a〜dのプロトン(4H) :6.8〜7.4ppmのピーク;
e〜gのプロトン(8H) :4.7〜6.0ppmのピーク;
h〜nのプロトン(16H) :2.5〜3.9ppmのピーク;
oのプロトン(4H) :0.8〜1.9ppmのピーク等が帰属される。
【0046】元素分析の結果は、C:75.8wt%、H:6.2wt%、N:5.4wt%(理論値は、それぞれ75.57wt%、6.34wt%、5.51wt%)であった。
【0047】なお、該BANI−PEはつぎのような性質を有している。
1)微量融点測定装置による融点:約83℃の琥珀色固体2)N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびトルエン等に容易に溶解し、ヘキサンおよびメタノールには不溶である。
【0048】実施例4窒素置換した内容量1000mlのフラスコに、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物172.0g(0.843mol)およびキシレン200mlを仕込み、加熱、攪拌しながら、キシレンの還流下、2−アミノベンジルアミン50g(0.41mol)を30分かけて加えた。生成した水を水分分離器で分離、除去しながら反応を4時間続けた後、溶媒のキシレンを留去した。つぎに内容物を200℃、1Torrの減圧下で1時間攪拌しながら熱処理したところ、目的物であるN,N´−(o−フェニレン)・メチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)156.7g(収率77%;構造式を一般式[8]に示す。;以下「BANI−PM」と略す。}が得られた。
【0049】
【化17】


【0050】BANI−PMのIRおよび1H−NMスペクトル(60MHz)を、それぞれ図7および図8に示す。
【0051】IRスペクトルでは、アルケンC−H伸縮 :3074、2977cm-1
芳香族C−H伸縮 :2977cm-1
アルカンC−H伸縮 :2943cm-1
イミドC=O伸縮 :1780、1709cm-1
C=C伸縮 :1642cm-1
−CH2−N−メチレンはさみ振動 :1434cm-1
イミドC−N伸縮 :1394cm-1等が帰属される。
【0052】1H−NMRスペクトルでは、a〜dのプロトン(4H) :6.5〜7.4ppmのピーク;
e〜gのプロトン(8H) :4.5〜5.9ppmのピーク;
hのプロトン(2H) :4.1〜4.5ppmのピーク;
i〜mのプロトン(12H) :2.3〜3.6ppmのピーク;
nのプロトン(4H) :0.8〜1.9ppmのピーク等が帰属される。
【0053】元素分析の結果は、C:75.0wt%、H:6.1wt%、N:5.5wt%(理論値は、それぞれ75.28wt%、6.11wt%、5.66wt%)であった。
【0054】なお、該BANI−PMはつぎのような性質を有している。
1)微量融点測定装置による融点:約116℃の黒色固体2)N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびトルエン等に容易に溶解、メタノールに一部溶解し、ヘキサンには不溶である。
【0055】実施例5〜11実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、表1に示す各種カチオン触媒0.05gを均一に混合し、その1部を200℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表1のような結果が得られた。
【0056】
表1 実施例 カチオン触媒 ゲル化時間 5 塩化アルミニウム 11分00秒 6 塩化第二鉄 12分00秒 7 塩化ニッケル 15分30秒 8 p−トルエンスルホン酸メチル 10分00秒 9 ANI−BsE 12分00秒 10 硫酸アニリン 10分30秒 11 β−ナフタレンスルホン酸 8分00秒ANI−BsE:N−(2−ベンゼンスルホニルオキシエチル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド
【0057】実施例12〜15実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、表2に示す各種カチオン触媒0.05gを均一に混合し、その1部を180℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表2のような結果が得られた。
【0058】
表2 実施例 カチオン触媒 ゲル化時間 12 p−トルエンスルホン酸 20分00秒 13 硫酸・ピリジン 20分00秒 14 ピリジニウム−p−トルエンスルホネート 20分00秒 15 ジメチル硫酸 12分00秒
【0059】実施例16〜18実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、表3に示す各種オニウム塩触媒0.05gを均一に混合し、その1部を200℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表3のような結果が得られた。
【0060】
表3 実施例 オニウム塩 ゲル化時間 16 ジフェニルヨードニウムパークロレート 4分00秒 17 ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ ホスフェート 15分00秒 18 ジフェニルヨードニウムテトラフルオロ ボレート 17分00秒
【0061】実施例19〜22実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、表4に示す各種有機遷移元素化合物0.05gを均一に混合し、その1部を200℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表4のような結果が得られた。
【0062】
表4 実施例 有機遷移元素化合物 ゲル化時間 19 ステアリン酸第二鉄 10分00秒 20 マンガン(III)アセチルアセトン塩 12分00秒 21 アセチルフェロセン 10分30秒 22 セリウム(III)アセチルアセトン塩 8分00秒
【0063】実施例23〜24実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、表5に示す各種有機過酸化物0.05gを均一に混合し、その1部を200℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表5のような結果が得られた。
【0064】
表5 実施例 有機過酸化物 ゲル化時間 23 ジクミルパーオキシド 18分00秒 24 クメンヒドロパーオキシド 20分00秒
【0065】実施例25〜27実施例2で合成したBANI−mXの粉末5gに、ジクミルパーオキシド0.025gおよび表6に示す各種有機遷移元素化合物0.025gを均一に混合し、その1部を200℃の空気に暴露したホットプレート上に乗せ、その温度を保ちながらかき混ぜゲル化時間を測定したところ、表6のような結果が得られた。
【0066】
表6 実施例 有機遷移元素化合物 ゲル化時間 25 マンガン(III)アセチルアセトン塩 8分30秒 26 ニッケル(II)アセチルアセトン塩 13分00秒 27 バナジウム(III)アセチルアセトン塩 12分00秒
【0067】実施例28実施例1で合成したBANI−pXを真空下、200℃で30分間溶融脱気してから金型に流し込み、常圧下、250℃で24時間加熱したところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0068】
ガラス転移温度(TMA法、Tg) :308℃ 熱膨張係数(室温〜Tg) :5.19×10-5(1/℃)
5%重量減少温度(窒素中、TGA法) :444℃ 曲げ強度 :10.8Kg/mm2 曲げ弾性率 :355Kg/mm2
【0069】実施例29実施例2で合成したBANI−mXを真空下、200℃で30分間溶融脱気してから金型に流し込み、常圧下、260℃で20時間加熱したところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0070】
比重(23℃/23℃) :1.222 ガラス転移温度(TMA法、Tg) :308℃ 熱膨張係数(室温〜Tg) :4.83×10-5(1/℃)
荷重たわみ温度 :311℃ 5%重量減少温度(窒素中、TGA法) :437℃ 曲げ強度 :14.3Kg/mm2 曲げ弾性率 :391Kg/mm2 引っ張り強度 :7.7Kg/mm2 引っ張り弾性率 :370Kg/mm2 圧縮強度 :18.2Kg/mm2 アイゾット衝撃値 :1.8kj/m2 ロックウェル硬度 :127HRM 体積抵抗率(500V D.C 1分値):9.41×1016Ω・cm 表面抵抗(500V D.C 1分値) :2.81×1016Ω 誘電率(1MHz) :3.09 誘電正接(1MHz) :1.11×10-2
【0071】実施例30実施例2で合成したBANI−mXを170℃に加熱して溶融し、それに1wt%のジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを加えて溶解させ、2分間真空脱気してから金型に流し込み、常圧下、200℃で10時間加熱したところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0072】
ガラス転移温度(TMA法、Tg) :221℃ 曲げ強度 :16.0Kg/mm2 曲げ弾性率 :380Kg/mm2
【0073】実施例31実施例30において1wt%のジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートの代わりに1wt%のピリジニウム−p−トルエンスルホネートを使用する以外は、実施例30と同様な方法で硬化させたところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0074】
ガラス転移温度(TMA法、Tg) :216℃ 曲げ強度 :13.5Kg/mm2 曲げ弾性率 :403Kg/mm2
【0075】実施例32実施例3で合成したBANI−PEを真空下、200℃で30分間溶融脱気してから金型に流し込み、常圧下、250℃で24時間加熱したところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0076】
ガラス転移温度(TMA法、Tg) :306℃ 熱膨張係数(室温〜Tg) :5.23×10-5(1/℃)
5%重量減少温度(窒素中、TGA法) :444℃ 曲げ強度 :11.1Kg/mm2 曲げ弾性率 :340Kg/mm2
【0077】実施例33実施例4で合成したBANI−PMを真空下、200℃で30分間溶融脱気してから金型に流し込み、常圧下、250℃で24時間加熱したところ、5%重量減少温度(窒素中、TGA法):403℃の硬化物が得られた。
【0078】比較例1特開昭59−80662号公報に記載された方法により合成したビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタンを実施例29と同様な方法で硬化させたところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0079】
比重(23℃/23℃) :1.219 ガラス転移温度(TMA法、Tg) :336℃ 熱膨張係数(室温〜Tg) :5.15×10-5(1/℃)
荷重たわみ温度 :348℃ 5%重量減少温度(窒素中、TGA法) :445℃ 曲げ強度 :13.8Kg/mm2 曲げ弾性率 :336Kg/mm2 引っ張り強度 :4.0Kg/mm2 引っ張り弾性率 :296Kg/mm2 圧縮強度 :19.4Kg/mm2 アイゾット衝撃値 :1.1kj/m2 ロックウェル硬度 :128HRM 体積抵抗率(500V D.C 1分値):1.74×1017Ω・cm 表面抵抗(500V D.C 1分値) :1.87×1017Ω 誘電率(1MHz) :3.18 誘電正接(1MHz) :1.20×10-2
【0080】比較例2特開昭59−80662号公報に記載された方法により合成したN,N´−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)を実施例29と同様な方法で硬化させたところ、つぎに示す物性の硬化物が得られた。
【0081】
比重(23℃/23℃) :1.196 ガラス転移温度(TMA法、Tg) :309℃ 熱膨張係数(室温〜Tg) :6.73×10-5(1/℃)
荷重たわみ温度 :307℃ 5%重量減少温度(窒素中、TGA法) :438℃ 曲げ強度 :11.6Kg/mm2 曲げ弾性率 :201Kg/mm2 引っ張り強度 :5.5Kg/mm2 引っ張り弾性率 :244Kg/mm2 圧縮強度 :14.2Kg/mm2 アイゾット衝撃値 :1.5kj/m2 ロックウェル硬度 :123HRM 体積抵抗率(500V D.C 1分値):3.22×1017Ω・cm 表面抵抗(500V D.C 1分値) :>1.00×1017Ω 誘電率(1MHz) :2.88 誘電正接(1MHz) :1.04×10-2
【0082】実施例34〜37および比較例3〜6各種アルケニル置換ナジイミドのキシレン溶液(30重量%)をスプレーで軟鋼板に塗布し、大気中、200℃で20分間焼き付けを行ったところ、いずれの場合も密着性および耐溶剤性の優れた、10〜15ミクロンの厚さの塗膜が得られた。
【0083】つぎにこれらの試験片を大気中、300℃の恒温槽に保持し一定時間経過した後の密着性を調べたところ、表7のような結果が得られた。
【0084】


密着性試験法:JIS−K5400 1mm碁盤目試験、○:100;△:99〜95;×:95>BANI−PM:実施例4で合成したN,N´−(o−フェニレン)・メチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−PE:実施例3で合成したN,N´−(p−フェニレン)・エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−pX:実施例1で合成したN,N´−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−mX:実施例2で合成したN,N´−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−H :N,N´−ヘキサミチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−M :ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタンBANI−PD:N,N´−m−フェニレン)−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
BANI−TD:N,N´−(1−メチル−2,4−フェニレン)−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)
【0085】実施例38〜41および比較例7〜10各種アルケニル置換ナジイミドのキシレン溶液(30重量%)をスプレーでアルミ板に塗布し、大気中、200℃で20分間焼き付けを行ったところ、いずれの場合も密着性および耐溶剤性の優れた、10〜15ミクロンの厚さの塗膜が得られた。
【0086】つぎにこれらの試験片を大気中、300℃の恒温槽に保持し一定時間経過した後の密着性を調べたところ、表8のような結果が得られた。
【0087】


密着性試験法および略号は表7と同様。
【0088】
【発明の効果】本発明の新規アルケニル置換ナジイミドは、従来のアルケニル置換ナジイミドと同様に、各種溶媒に対する優れた溶解性を有し、かつその硬化物は、従来のアルケニル置換ナジイミドの硬化物に比べて、優れた耐熱性、力学的性質、電気的性質、特に機械的強度、靱性、コーティング剤として用いたときの基材に対する密着性、接着性および耐熱性に優れている。したがって、本発明のアルケニル置換ナジイミドは、積層材料、注型材料、成形材料、コーティング剤、塗料、接着材または充填材料等として有用であり、またガラス、炭素繊維等を強化材とする複合材料用マトリックス樹脂としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたBANI−pXのIRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたBANI−pXの1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたBANI−mXのIRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたBANI−mXの1H−NMRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたBANI−PEのIRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られたBANI−PEの1H−NMRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られたBANI−PMのIRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたBANI−PMの1H−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式[1]:
【化1】


{式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基、Eは一般式[2]:
【化2】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す。}で表されるアルキレン・フェニレン基を表す。)で表されるアルケニル置換ナジイミド。
【請求項2】 一般式[1]において、R1およびR2がいずれも水素である請求項1記載のアルケニル置換ナジイミド。
【請求項3】 一般式[1]において、Eがフェニレン・メチレン基、フェニレン・エチレン基またはキシリレン基である請求項1または2記載のアルケニル置換ナジイミド。
【請求項4】 一般式[3]:
【化3】


(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基を表す。)で表されるアルケニル置換ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物誘導体と、一般式[4]:
【化4】


{式中、Eは一般式[2]:
【化5】


(式中、aは0または1の整数、R3およびR3'はそれぞれ独立に選ばれたC1〜C4のアルキレン基またはC5〜C8のシクロアルキレン基を表す。}で表されるアルキレン・フェニレン基を表す。}で表されるジアミンを反応させることを特徴とする請求項1ないし3記載のアルケニル置換ナジイミドの製法。
【請求項5】 請求項1ないし3記載のアルケニル置換ナジイミドを硬化触媒の存在下または不存在下、80〜400℃で0.001〜30時間加熱することを特徴とする請求項1ないし3記載のアルケニル置換ナジイミドの硬化方法。
【請求項6】 硬化触媒が■カチオン触媒、■オニウム塩、または■有機過酸化物および/または■有機遷移元素化合物である請求項5記載の硬化方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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