説明

新規キャンディ組成物およびそれを用いた新規キャンディ

【課題】 キシリトールの冷涼感を活かしつつ、口腔内でのザラツキを防止し口腔内で滑らかな改良された食感を持ち、長時間(約5〜10分間程度)口腔内でキシリトールの甘苦さを抑制した香味の優れた冷涼のある安価な新規キャンディ組成物およびそれを用いた新規キャンディの提供。
【解決手段】 単糖類、二糖類およびそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5〜15質量%の食用有機酸を配合した新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分2を公知のキャンディ部分3に混合せず公知のキャンディ部分3に併設して備えた新規キャンディ1により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キャンディ組成物およびそれを用いた新規キャンディに関するものであり、さらに詳しくはキシリトールの有する甘苦さを抑制した新規キャンディ組成物およびそれを用いた新規キャンディに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キシリトールは虫歯予防や冷涼感の付与などのために広く食品に用いられる糖アルコールであり、キシリトールを含有するキャンディも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、キシリトールを多量に含むキャンディ組成物を用いた場合、それを一旦溶融させ、そして冷却固化する際に、結晶性が強すぎるため、粗い結晶が生成し、結晶化したキシリトールが脆く割れ易く、それを用いてキャンディとして製剤化した際に、口腔内でのザラツキが発生し、食感が非常に悪いという問題があった。
【0003】
キシリトールの粗い結晶に起因する問題を解決し、口腔内でのザラツキを防止し、食感を改良する目的で、キシリトールにソルビトールを加えたキャンディ組成物を用い、キシリトールの結晶の均一化、微細化を行うことが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−47222号公報
【特許文献2】特許第3460187号公報
【特許文献3】特開平5−201899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、キシリトールは、本来独特の甘苦さを持っており、キシリトールを配合したキャンディを一定の時間口腔内に滞留させて、口腔内で舐め続けると徐々に甘苦さが助長され、香味が悪くなる問題を有している。
そこで、キシリトールの甘苦さを抑えるため、キシリトールの配合量を減らしたり、キシリトールに香料などを配合して香味を付与し、甘苦さをマスキングする方法が一般的にとられる。
しかし、キシリトールの配合量を減らすと、キャンディにキシリトールを添加する目的の一つである冷涼感が薄れ、キシリトール添加の効果が薄れてしまうという新たな問題が発生する。また、キシリトールに微量の香料や甘味料などを添加することにより、口腔内にキャンディを投入した後の甘苦さをマスキングする方法が考えられるが、このキャンディは口腔内に投入した直後はマスキング可能であっても、長時間(例えば、約3〜10分間程度)口腔内でキシリトールの甘苦さを抑えることは困難であるという問題があった。
【0005】
本発明の第1の目的は、従来の問題を解決し、キシリトールの冷涼感を活かしつつ、口腔内でのザラツキを防止し口腔内で滑らかな改良された食感を持つキャンディ組成物であって、キシリトールの配合量を減らしたりせず、またキシリトールに香料や甘味料などを配合しなくても、長時間(約3〜10分間程度)口腔内でキシリトールの甘苦さを抑制した香味の優れた冷涼のある安価な新規キャンディ組成物を提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのようなキャンディ組成物を用いた新規キャンディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の発明は、単糖類、二糖類およびそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5〜15質量%の食用有機酸を配合したことを特徴とする新規キャンディ組成物である。
【0007】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の新規キャンディ組成物において、前記食用有機酸がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の新規キャンディ組成物において前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を備えたことを特徴とする新規キャンディである。
【0010】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の新規キャンディにおいて、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を公知のキャンディ部分に混合せず公知のキャンディ部分に併設して備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5記載の新規キャンディにおいて、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分が公知のキャンディ部分によってサンドイッチされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の新規キャンディ組成物は、単糖類、二糖類およびそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5〜15質量%の食用有機酸を配合したので、
キシリトールの結晶の均一化、微細化を行うことができ、キシリトールの冷涼感を活かしつつ、口腔内でのザラツキを防止し、口腔内で滑らかな改良された食感を有する上、食用有機酸を所定量配合したので、キシリトールの配合量を減らしたりキシリトールに高価な香料や甘味料などを配合しなくても、長時間(約3〜10分間程度)口腔内でキシリトールの甘苦さを抑え香味の優れた冷涼のある安価な新規キャンディ組成物を提供できるという、顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の新規キャンディ組成物において、前記食用有機酸がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸から選ばれる少なくとも1つであるので、キシリトールの甘苦さを確実に抑え、かつキャンディ組成物に適した香味を確実に付与でき、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の新規キャンディ組成物において、前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つであるので、キシリトールの結晶の均一化および微細化を確実に行うことができ、口腔内でのザラツキを確実に防止し、食感を確実に改良できる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を備えたことを特徴とする新規キャンディであり、
適度な固さを有し、キシリトールの冷涼感を活かしつつ、キシリトールの結晶が均一かつ微細であるので口腔内でのザラツキがなく口腔内で滑らかであり食感に優れる上、口腔内でキシリトールの甘苦さが長時間(約3〜10分間程度)抑えられるので、口腔内で舐め続けても甘苦さが抑えられ、優れた香味が長時間持続し、優れた冷涼を有し安価であるという、顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の新規キャンディにおいて、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を公知のキャンディ部分に混合せず公知のキャンディ部分に併設して備えたことを特徴とするものであり、キシリトールを単純にキャンディ主体の部分に混合するだけではキシリトールの冷涼感が乏しくなるのを避けるために、キシリトールをキャンディ部分に混合せずに公知のキャンディ部分に併設して備えたので、口腔内で舐めた時にキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、併設した公知のキャンディ部分の美味しさも同時にあるいは舐め初めと終わりでは食感が異なるなど時間をおいて変化する美味しさを味わうことができるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5記載の新規キャンディにおいて、請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分が公知のキャンディ部分によってサンドイッチされていることを特徴とするものであり、公知の製造法により容易に製造でき、口腔内でキシリトール甘苦さ抑制部分を舐めた時にはキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、公知のキャンディ部分を舐めた時にはその美味しさも同時にあるいは時間をおい味わうことができるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の新規キャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。
図1において、1は本発明の新規キャンディを示し、2は、単糖類、二糖類、およびそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5〜15質量%の食用有機酸を配合した本発明の新規キャンディ組成物からなる層状のキシリトール甘苦さ抑制部分を示し、3は層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール甘苦さ抑制部分2が対応する2つの層状の公知のキャンディ部分3の間にサンドイッチされている。
【0019】
図2は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図2において、1Aは本発明の新規キャンディを示し、2は図1に示した本発明の新規キャンディ組成物からなる層状のキシリトール甘苦さ抑制部分を示し、3は図1に示した層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール甘苦さ抑制部分2が対応する層状の公知のキャンディ部分3に積層されている。
【0020】
図3は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図3において、1Bは本発明の新規キャンディを示し、2は図1に示した本発明の新規キャンディ組成物からなる球状のキシリトール甘苦さ抑制部分を示し、3は2の球状のキシリトール甘苦さ抑制部分を被覆する公知のキャンディ部分を示す。
【0021】
図4は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図4において、1Cは本発明の新規キャンディを示し、2は本発明の新規キャンディ組成物からなる柱状のキシリトール甘苦さ抑制部分を示し、3は2の柱状のキシリトール甘苦さ抑制部分の外周を被覆する筒状の公知のキャンディ部分を示す。
【0022】
図5は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図5において、1Dは本発明の新規キャンディを示し、本発明の新規キャンディ組成物からなる楕円状のキシリトール甘苦さ抑制部分2のみから形成されている。
【0023】
本発明で用いる単糖類、二糖類、およびそれらを還元したキシリトール以外の糖アルコール類、キシリトール、食用有機酸などは、それぞれ食品あるいは食品添加物として、厚生省告示の「食品、添加物等の規格基準」にその性状など規格が定められている。これらは固形物あるいは液状物(水溶液)が市販されているが、いずれも使用可能である。
【0024】
本発明で用いる単糖類、二糖類、およびそれらを還元したキシリトール以外の糖アルコール類は特に限定されるものではないが、キャンディ組成物を一旦溶融させ、そして冷却固化する際に、キシリトールの粗い結晶の生成を防止し、結晶化したキシリトールが脆化するのを防止し、キシリトール結晶の微細化を行う目的で検討した結果、糖鎖が短く(単糖類又は二糖類)、還元末端を有する糖質や糖アルコール類を配合することにより、特にキシリトールの再結晶化を抑え、非常に微細な結晶を形成させることができることが見いだされた。
【0025】
本発明で用いる単糖類は炭素原子3個以上のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、グルコース、フラクトース、エリトロース、キシロース、ソルボース、ガラクトース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0026】
これらの単糖類の中でも、グルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つを用いると、キシリトールの結晶の均一化および微細化を確実に行うことができ、口腔内でのザラツキを確実に防止し、食感を確実に改良できる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0027】
本発明で用いる二糖類は単糖が2個結合した形のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、シュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0028】
これらの二糖類の中でも、シュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つを用いると、キシリトールの結晶の均一化および微細化を確実に行うことができ、口腔内でのザラツキを確実に防止し、食感を確実に改良できる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0029】
本発明で用いる糖アルコールは糖類のアルデヒドやケトンのカルボニル基を還元(水素添加)して得られる鎖状多価アルコールであり、具体的には例えば、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、ガラクチトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールなどを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0030】
これらの糖アルコールの中でも、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つを用いると、キシリトールの結晶の均一化および微細化を確実に行うことができ、口腔内でのザラツキを確実に防止し、食感を確実に改良できる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0031】
本発明で用いる単糖類、二糖類、およびそれらを還元したキシリトール以外の糖アルコール類の配合量は特に限定されるものではないが、キャンディ組成物全体に対して5質量%以上20質量%以下、好ましくは5質量%以上10質量%以下配合することにより、キシリトールの再結晶化を特に抑え、非常に微細な結晶を形成させることができる。
【0032】
本発明においては、口腔内で長時間(約3分間〜10分間程度)、キシリトールの甘苦さを抑え、かつキャンディ組成物に適した香味を付与するために食用有機酸を配合することが必要である。
食用有機酸の配合量は、キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量に対して1.5〜15質量%であることが肝要であり、好ましくは1.5〜10質量%である。
【0033】
1.5質量%未満では長時間におよぶマスキング効果が得られない恐れがあり、逆に15質量%を超えるとキャンディ組成物に不必要な香味を付与する恐れがあり、好ましくない。
【0034】
この長時間におよぶマスキング効果はキャンディ組成物全体中のキシリトール配合量に対して1.5質量%以上15質量%以下配合された食用有機酸に特有のものであり、香料、甘味料ではこのような長時間におよぶマスキング不可能である。香料、甘味料の場合は、口腔内でキャンディが解ける際に瞬時に香味を発現し、比較的短い時間で消滅するのに対し、食用有機酸の場合は口腔内で香味が滞留し、長時間持続されるために生じるものと考えられる。
【0035】
キシリトールと単糖類、二糖類、およびそれらを還元したキシリトール以外の糖アルコール類、食用有機酸以外の成分については、通常キャンディの生産に用いられるもの、たとえば香料、着色料、果汁、乳製品、各種薬効成分など特に限定はないが、キシリトールの結晶化に影響を与えない範囲にとどめるべきである。
【0036】
本発明の新規キャンディを製造する方法は特に限定されるものではない。具体的には次のような方法を挙げることができる。
(1)前記各成分を加熱溶融し、溶融状態の成分に種結晶を投入し、キシリトールなどの結晶化を進めたり、あるいは溶融状態の成分に種結晶を投入し撹拌により微細結晶を析出させながらキシリトールなどの結晶化を進めた後、所定の成形を行い、冷却固化する。
(2)前記各成分を加熱溶融し、得られた溶融液をキシリトールの融点以下でかつその流動性が維持される温度に保持して、キシリトールの一部又は大部分が結晶化した流動体とし、この流動体を所望の形状に成形し、得られた成形体を室温まで冷却する。
【0037】
(2)の方法で本発明の新規キャンディを製造するためには、まず、キシリトールと単糖類、二糖類、およびそれらを還元したキシリトール以外の糖アルコール類、食用有機酸などを含有する組成物を、溶融状態にする。その場合、粉体状のキシリトールと単糖類などを混合し、これを加熱溶融した後に残りの他の成分を添加混合してもよいし、粉体状のキシリトールに水溶液状の単糖類などと適量の水を混合し加熱溶解した後、さらに加熱および減圧濃縮によって水分を蒸発させ、これに他の成分を添加混合してもよく、各成分が均一に混合されかつ溶融状態になっていればよい。
【0038】
次に溶融状態の組成物をキシリトールの融点以下まで冷却し、含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させる。結晶を析出させる方法は、微細な種結晶を添加混合してもよいし、攪拌により起晶させてもよい。結晶を析出させる温度は、キシリトールの含有量に対する単糖類などの種類や含有量の割合によってその最適値は異なるが、およそ60〜85℃の範囲が好適である。
本発明の新規キャンディは、含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させた後、引き続きおよそ60〜85℃の温度を保つことによって、結晶部分の割合が一定の範囲に維持され、任意の形に自由に成形できる流動性を長時間保持することができる。所定の成形を行い、成形後室温まで冷却すれば速やかに固化する。
【0039】
本発明の新規キャンディの成形方法は特に限定されないが、含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させた状態で、保温により十分な流動性を保持できることから、型に流し込むことにより成形する方式に非常に適している。他の成形方式としては、例えば、型押し方式、押出し方式、球断方式などが採用できる。
【0040】
以上のように、キシリトールと単糖類などを併用すると、キシリトールの結晶化の進行を緩慢にし、そして、温度コントロールして流動性を維持したまま、キシリトールの一部が非結晶状態を維持し、キシリトールの結晶部分の割合を一定の範囲に維持することができ、流動性がある間に所望の形状に成形し、得られた成形体を室温まで冷却することにより口腔内でザラツキを確実に防止し、滑らかで、適度の固さを有し、舐めた時にはキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、長時間キシリトールの甘苦さが抑えられ、そして香味を有する本発明の新規キャンディを製造できるので好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
キシリトール88.25質量%にソルビトール10.0質量%、香料(アップルフレーバー)0.3質量%、高甘味度甘味料(スクラロース)0.05質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]1.3質量%、赤色色素(サンレッドNo.5)0.1質量%(合計100質量%)を添加混合し本発明の新規キャンディ組成物(新規キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の1.5質量%の食用有機酸が配合されている)を調製した。本発明の新規キャンディ組成物を100℃にて溶解混合を実施した後、金型にデポジットし、冷却固化させたものを試験サンプルとして用いた。
その後、試験サンプルをモニター10人(男性5名、女性5名;年齢25〜40)に試食してもらい、食感について評価を行った。
モニター試験の結果を表1に示す。表中の数字はキシリトールの甘苦さ(不快感)を感じたモニターの合計人数である。
【0042】
(実施例2)
キシリトール87.55質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]2.0質量%(新規キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の2.3質量%の食用有機酸が配合されている)とした以外は実施例1と同様にして試験サンプルを調製し、実施例1と同様にして食感について評価を行い、モニター試験の結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
キシリトール84.55質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]5.0質量%(新規キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の5.9質量%の食用有機酸が配合されている)とした以外は実施例1と同様にして試験サンプルを調製し、実施例1と同様にして食感について評価を行い、モニター試験の結果を表1に示す。
【0044】
(実施例4)
キシリトール79.55質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]10.0質量%(新規キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の12.6質量%の食用有機酸が配合されている)とした以外は実施例1と同様にして試験サンプルを調製し、実施例1と同様にして食感について評価を行い、モニター試験の結果を表1に示す。
【0045】
(比較例1)
キシリトール88.55質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]1.0質量%(キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の1.1質量%の食用有機酸が配合されている)とした以外は実施例1と同様にして試験サンプルを調製し、実施例1と同様にして食感について評価を行い、モニター試験の結果を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
キシリトール74.55質量%、食用有機酸[クエン酸、リンゴ酸、乳酸(90%)、酒石酸のいずれか]15.0質量%(キャンディ組成物全体中のキシリトール配合量の20質量%の食用有機酸が配合されている)とした以外は実施例1と同様にして試験サンプルを調製し、実施例1と同様にして食感について評価を行い、モニター試験の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、食用有機酸配合量を組成物全体中のキシリトール配合量の1.5質量%(実施例1)以上20質量%(比較例2)以下とすることにより、キシリトールの持つ甘苦い香味(不快感)が抑制されることが確認できた。しかし、食用有機酸配合量を酸味料を15質量%以上とすることにより、キャンディとしては非常になめづらくなるため、食用有機酸配合量の上限値は15質量%とすることが必要であることが確認できた。そして、食用有機酸配合量は好ましくは1.5〜5質量%であることが確認できた。
【0049】
(実施例5)
キシリトール90gに還元パラチノース10g、クエン酸2g、香料(ソーダーフレーバー)0.3g、青色色素(マリンブルーAM)0.1g(合計108.4g)を添加混合し本発明の新規キャンディ組成物を調製した。本発明の新規キャンディ組成物を100℃にて溶解混合した後、金型にデポジットし、本発明のソーダーキャンディ(1層キャンディ)を調製した。
得られた本発明のソーダーキャンディ(1層キャンディ)は、口腔内でザラツキがなく滑らかで、適度の固さを有し、舐めた時にはキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、長時間キシリトールの甘苦さが抑えられ、そして香味を有していた。
【0050】
(実施例6)
キシリトール90gにエリスリトール10g、酒石酸2g、香料(ミントフレーバー)0.3g、緑色色素(ワサビ色)0.1g(合計102.4g)を添加混合し本発明の新規キャンディ組成物を調製した。本発明の新規キャンディ組成物を100℃にて溶解混合した後、金型にデポジットしキャンディ(1層キャンディ)を調製した。
一方、還元麦芽糖水飴(煮詰め後)100g、リンゴ酸1.5g、香料(アップルフレーバー)0.3g、赤色色素(サンレッドNo.5)0.1g(合計101.4g)の組成を有する公知のキャンディ組成物を調製した。
得られたキャンディ(1層キャンディ)と前記キャンディ組成物を用いて公知の成形方法により積層して2層構造の本発明の新規キャンディ(アップルあんどミントキャンディ)を調製した。
本発明の新規キャンディは、口腔内でザラツキがなく滑らかで、適度の固さを有し、舐めた時にはキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、併設した公知のキャンディ部分の美味しさも同時に味わうことができ、そして、長時間キシリトールの甘苦さが抑えられ、香味を有していた。
【0051】
(実施例7)
キシリトール90gに還元パラチノース10g、クエン酸5g、香料(レモンフレーバー)0.3g、黄色色素(ローデニアイエローAYNo.8)0.1g(合計105.4g)を添加混合し本発明の新規キャンディ組成物を調製した。本発明の新規キャンディ組成物を100℃にて溶解混合した後、金型にデポジットし、キャンディ(1層キャンディ)を調製した。
一方、還元麦芽糖水飴(煮詰め後)100g、高甘味度甘味料(ステビア)0.1g、香料(ハニーフレーバー)0.3g、茶色色素(コクヨカラメル)0.1g(合計100.5g)の組成を有する公知のキャンディ組成物を調製した。 得られたキャンディ(1層キャンディ)を前記キャンディ組成物を用いて公知の成形方法によりサンドイッチ積層して3層構造の本発明の新規キャンディ(ハニー&レモンキャンディ)を調製した。
本発明の新規キャンディは、口腔内でザラツキがなく滑らかで、適度の固さを有し、舐めた時にはキシリトール結晶が融解する吸熱作用により、冷涼感が得られるとともに、上下に積層した公知のキャンディ部分を舐めた時にはその美味しさも同時に味わうことができ、そして、長時間キシリトールの甘苦さが抑えられ、香味を有していた。
【0052】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の新規キャンディ組成物は、キシリトールの結晶の均一化、微細化を行うことができ、キシリトールの冷涼感を活かしつつ、口腔内でのザラツキを防止し、口腔内で滑らかな改良された食感を有する上、食用有機酸を所定量配合したので、キシリトールの配合量を減らしたりキシリトールに高価な香料や甘味料などを配合しなくても、長時間(約3〜10分間程度)口腔内でキシリトールの甘苦さを抑え香味の優れた冷涼のある安価な新規キャンディ組成物を提供できるという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
また本発明の新規キャンディ組成物は、適度な固さを有し、キシリトールの冷涼感を活かしつつ、キシリトールの結晶が均一かつ微細であるので口腔内でのザラツキがなく口腔内で滑らかであり食感に優れる上、口腔内でキシリトールの甘苦さが長時間抑えられるので、口腔内で舐め続けても甘苦さが抑えられ、優れた香味が長時間持続し、優れた冷涼を有し安価であるという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の新規キャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。
【図2】本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図3】本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図4】本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図5】本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B、1C、1D 本発明の新規キャンディ
2 キシリトール甘苦さ抑制部分
3 公知のキャンディ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖類、二糖類およびそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5〜15質量%の食用有機酸を配合したことを特徴とする新規キャンディ組成物。
【請求項2】
前記食用有機酸がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の新規キャンディ組成物。
【請求項3】
前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の新規キャンディ組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を備えたことを特徴とする新規キャンディ。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分を公知のキャンディ部分に混合せず公知のキャンディ部分に併設して備えたことを特徴とする請求項4記載の新規キャンディ。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の新規キャンディ組成物からなるキシリトール甘苦さ抑制部分が公知のキャンディ部分によってサンドイッチされていることを特徴とする請求項5記載の新規キャンディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−280214(P2006−280214A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101316(P2005−101316)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(593090662)三星食品株式会社 (7)
【Fターム(参考)】