説明

新規炭酸エステル

【課題】工業的カルボニルソースとして有利な新規炭酸エステルを提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示す新規な炭酸エステル。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な炭酸エステル化合物に関し、詳しくはカルボニルソースとして使用される炭酸エステルであって、特にエステル交換法ポリカーボネート製造プロセスの中間体として有用な炭酸エステル化合物に関する。
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料用添加剤等の添加剤として使われるほか、電池電解質、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸エステルをカーボネートソースとして使用する場合、炭酸ジメチルが多くの場合使用されている。例えば、ポリカーボネートの原料として炭酸ジメチルを用いる場合は、簡略的に、芳香族ヒドロキシ化合物とエステル交換させて、炭酸アリールメチルや炭酸ジアリールを得る方法が採用され、例えば下式(2)から(4)のエステル交換反応で製造される。
【0003】
【化1】

【0004】
即ち、下記式(2)のように、フェノールとエステル交換して炭酸メチルフェニルを得、次いで下記式(3)に従って不均化反応を利用して炭酸ジフェニルを得、更に下記式(4)に従ってビスフェノールAとエステル交換してポリカーボネートを得る方法が広く知られている。
上記反応で炭酸メチルフェニル、炭酸ジフェニル、ポリカーボネートを製造する場合、上記反応式(2)から(4)はすべて平衡反応であり、特に反応式(2)の平衡は原料側に偏っている。一般的に平衡を生成物側にずらすためには、生成物のうちの一方または両方を系外に抜き出すことが有効である。しかし、炭酸ジメチルを使用した場合、生成物であるメタノールは原料の炭酸ジメチルと共沸組成を持つことが知られているため反応蒸留により生成物のみを除去することが難しい。この共沸を回避する多くの努力がなされてきた(例えば特許文献1等)。しかしながら、反応中に原料のジアルキルカーボネートを抜き出すため反応効率が悪いという根本的な問題は解決されていない。従って、一方の原料であるフェノールに対して大量の炭酸ジメチルを使用して、生成物のメタノールと共に系外に抜き出すというエネルギー消費の大きな方法がとられている。更に抜き出した炭酸ジメチルとメタノールの共沸混合物からメタノールを抜き出して炭酸ジメチルを濃縮する工程は技術的にも難しく、多くのエネルギーを消費する。以上から、炭酸ジアリールの原料となる炭酸メチルフェニルのような炭酸アルキルアリールを得る反応の平衡を生成系に簡単な方法で偏らせるという課題がある。
【0005】
炭酸アルキルアリールや炭酸ジアリールのカルボニルソースとして、ホスゲンや一酸化炭素を用いる方法も知られているが、これらの方法はホスゲンや一酸化炭素が猛毒であり、安全に製造するための安全確保に関する設備に多大な投資が必要であるという問題がある。
以上のように、炭酸ジアリールの製造に関する従来技術では、平衡が著しく原系に偏っていたり、原料と生成物の共沸があって、簡単な方法で平衡がずらせない、また猛毒の原料を用いるなどといった課題があった。上記課題のうちのいくつかは、炭酸ジメチルを電池電解質原料中間体とした場合にも同様である。炭酸ジメチルとメタノールの共沸があるために、他のアルコールとエステル交換して異なった構造の炭酸エステルを得ようとした場合にも、平衡を簡単にはずらせないといった課題がある。
【0006】
一方で、本発明者らが上記した課題を解決するために開発した炭酸エステルがある(特許文献2)、本発明は、該発明を更に進めて完成させたものである。
また、従来の炭酸エステルは疎水性が強く、種々の溶媒への溶解度が限られており、疎水性の低い炭酸エステルが望まれている。
【特許文献1】特開平7−330687号公報
【特許文献2】特開2005−015431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、芳香族炭酸エステルを効率よく製造するための原料として、取扱いが簡便で反応性が高い原料となる新規な炭酸エステルを提供すること、および該炭酸エステルを用いた、芳香族炭酸エステルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、原料と生成物に共沸があって簡単に平衡をずらせないといった課題を解決し、更に反応性を向上させることによって本発明を完成させた。
本発明の炭酸エステルを前記反応式(2)の炭酸ジメチルの代わりに使用した場合、驚くべきことに反応速度をも向上することを見いだし、本発明を完成させた。
即ち本発明は、以下のとおりである。
[1] 下記式(1)であらわされる炭酸エステル。
【0009】
【化2】

【0010】
[2] 上記[1]記載の炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換させることを特徴とする芳香族炭酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、芳香族炭酸エステルを効率よく製造するための原料として、取扱いが簡便で反応性が高い原料となる新規な炭酸エステルを提供すること、および該炭酸エステルを用いた、芳香族炭酸エステルの製造方法を提供できて、その新規な炭酸エステルを使用することで、生産性が向上し、産業上に大いに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭酸エステルは下式(1)であらわされる炭酸エステルである。
【0013】
【化3】

【0014】
本発明の炭酸エステルの製造方法は、公知の炭酸エステルの製造方法が好ましく使用される。例えばホスゲンとアルコールとから得る方法や一酸化炭素を用いる酸化的カルボニル化法、二酸化炭素とアルコールとから得る方法などが使用できる。本発明の炭酸エステルを反応原料として用いる場合には、極めて高純度であってもよいが、他の不純物を含んでいても構わないし、他の炭酸エステルとの混合物であっても構わないし、電解質として用いる場合などの場合は、必要な成分を加えた組成物であっても構わない。ただし、炭酸ジフェニルを製造する際には、含窒素化合物をなるべく含まないことが好ましい。含窒素化合物は炭酸エステル類と反応しやすく、不純物、副生物の生成を引き起こすため好ましくない成分である。各式(1)から(4)中の無名の折曲点および線端には化学量論的炭素原子と水素原子が存在する。
【0015】
本発明の炭酸エステルを製造する好ましい方法としては、二酸化炭素と2−isoプロピルオキシエタノールを原料する方法である。このような製造方法は、本発明者らが発明した方法(例えばPCT/JP02/13809号)が好ましく使用できる。ジブチル酸化スズと2−isoプロピルオキシエタノールとを反応させて蒸留によって水を除去し、スズアルコキシドを得、得られたスズアルコキシドを二酸化炭素と反応させて、本発明の炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)を得ることができる。この方法は、前記した好ましくない副生成物を発生させる尿素等を含まない炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)を得ることができる。本発明の炭酸エステルを用いれば、従来広く使用されている炭酸ジメチルの課題が解決できる。即ち、炭酸ジメチルでは炭酸ジメチルとメタノールの共沸があるために、平衡反応をずらすことが難しかった。本発明の炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物を反応させれば、炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)アリール、炭酸ジアリールを得ることができる。
【0016】
本発明で使用される芳香族ヒドロキシ化合物は、特に制限はない。
本発明で使用される芳香族ヒドロキシ化合物とは、下記一般式(5)で表されるものであり、芳香族基に直接ヒドロキシル基が結合しているものであれば、どの様なものであってもよい。
ArOH (5)
(式中、Arは炭素数5〜30の芳香族基を表す。)
【0017】
このようなArを有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール(各異性体)、キシレノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、テトラメチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、シクロヘキシルフェノール(各異性体)等の各種アルキルフェノール類;メトキシフェノール(各異性体)、エトキシフェノール(各異性体)等の各種アルコキシフェノール類が挙げられる。好ましい例としては、フェノール、クレゾール(各異性体)であり、工業的に最も有用な炭酸ジフェニルを得る
本発明の炭酸エステルから芳香族炭酸エステルを製造する方法は、主に炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物のエステル交換に基づく平衡反応であって、反応を有利に進めようとすれば、エステル交換反応で脱離生成するアルコールを抜き出しながら反応させることが好ましく、この場合には、使用する芳香族ヒドロキシ化合物の沸点が、炭酸エステルを構成するアルキルアルコールの沸点よりも高いことが好ましい。
【0018】
本発明の炭酸エステルを構成するアルキルアルコールは、2−isoプロピルオキシエタノールであって、最も沸点の低い芳香族ヒドロキシ化合物であるフェノールよりも沸点が低く、有利である。また、驚くべきことに、本発明の炭酸エステルを使用することで反応速度が著しく向上することを見いだし、本発明を完成させた。
上記した反応をおこなう際には、触媒を添加してもよい。
上記したように、反応は主にエステル交換反応であり、エステル交換によって、炭酸ジアルキルから炭酸アルキルアリールと若干の炭酸ジアリールを得るが、平衡が原系に偏っていることに加えて反応速度が遅いことから、この方法によって芳香族炭酸エステル類を製造する際には、これらを改良するためにいくつかの提案がされており、公知の方法が本発明においても好ましく使用できる。
【0019】
反応速度を速くするための触媒に関する提案に関するものは、数多くの金属含有触媒が知られている。公知のエステル交換反応触媒が本発明においても使用できる。
炭酸ジアルキルと芳香族ヒドロキシ化合物を反応させて炭酸アルキルアリールおよびまたは炭酸アルキルアリールと炭酸ジアリールを含んだ混合物を製造する方法における触媒として、例えば、遷移金属ハライド等のルイス酸又はルイス酸を生成させる化合物類〔特開昭51−105032号公報、特開昭56−123948号公報、特開昭56−123949号公報(西独特許公開公報第2528412号、英国特許第1499530号明細書、米国特許第4182726号明細書)〕、有機スズアルコキシドや有機スズオキシド類等のスズ化合物〔特開昭54−48733号公報(西独特許公開公報第2736062号)、特開昭54−63023号公報、特開昭60−169444号公報(米国特許第4554110号明細書)、特開昭60−169445号公報(米国特許第4552704号明細書)、特開昭62−277345号公報、特開平1−265063号公報〕、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩類及びアルコキシド類(特開昭57−176932号公報)、鉛化合物類(特開昭57−176932号公報)、銅、鉄、ジルコニウム等の金属の錯体類(特開昭57−183745号公報)、チタン酸エステル類〔特開昭58−185536号公報(米国特許第4410464号明細書)〕、ルイス酸とプロトン酸の混合物〔特開昭60−173016号公報(米国特許第4609501号明細書)〕、Sc、Mo、Mn、Bi、Te等の化合物(特開平1−265064号公報)、酢酸第2鉄(特開昭61−172852号公報)等が提案されている。
【0020】
芳香族炭酸エステルの生成は、エステル交換反応のみでも起こりうるが、エステル交換反応で生成した炭酸アルキルアリールの不均化反応によっても生成する。
ここでいう不均化反応とは、2分子の炭酸アルキルアリールから炭酸ジアルキルと芳香族炭酸エステルを生成する反応である。
炭酸アルキルアリールが更に芳香族ヒドロキシ化合物と反応して芳香族炭酸エステルになる反応も起こる。いずれの反応も平衡反応である。従って、上記したエステル交換触媒と共に、不均化反応を触媒する触媒を共存させても構わない。このような触媒の例も多く提案されている。
【0021】
このような触媒として、例えば、ルイス酸およびルイス酸を発生しうる遷移金属化合物〔特開昭51−75044号公報(西独特許公開公報第2552907号、米国特許第4045464号明細書)〕、ポリマー性スズ化合物〔特開昭60−169444号公報(米国特許第4554110号明細書)〕、一般式R−X(=O)OH(式中XはSn及びTiから選択され、Rは1価炭化水素基から選択される。)で表される化合物、〔特開昭60−169445号公報(米国特許第4552704号明細書)〕、ルイス酸とプロトン酸の混合物〔特開昭60−173016号公報(米国特許第4609501号明細書)〕、鉛触媒(特開平1−93560号公報)、チタンやジルコニウム化合物(特開平1−265062号公報)、スズ化合物(特開平1−265063号公報)、Sc、Mo、Mn、Bi、Te等の化合物(特開平1−265064号公報)等が提案されている。
【0022】
本発明の炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とから炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)アリールや炭酸ジアリールを得る反応を、反応方式を工夫することによって平衡をできるだけ生成系側にずらし、芳香族炭酸エステル類の収率を向上させる試みもある。例えば、反応器の上部に蒸留塔を設けた装置によって、反応で副生してくるアルコール類を反応混合物から留去する方法も知られている〔特開昭56−123948号公報(米国特許第4182726号明細書)の実施例、特開昭56−25138号公報の実施例、特開昭60−169444号公報(米国特許第4554110号明細書)の実施例、特開昭60−169445号 公報(米国特許第4552704号明細書)の実施例、特開昭60−173016号公報(米国特許第4609501号明細書)の実施例、特開昭61−172852号公報の実施例、特開昭61−291545号公報の実施例、特開昭62−277345号公報の実施例〕。
【0023】
炭酸ジアルキルと芳香族ヒドロキシ化合物を連続的に多段蒸留塔に供給し、該塔内で連続的に反応させ、副生するアルコールを含む低沸成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に、生成した炭酸アルキルアリールを含む成分を塔下部より抜き出す方法(特開平3−291257号公報)、及び炭酸アルキルアリールを連続的に多段蒸留塔に供給し、該塔内で連続的に反応させ、副生する炭酸ジアルキルを含む低沸成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に、生成した芳香族炭酸エステルを含む成分を塔下部より抜き出す方法(特開平4−9358号公報)等の提案も好ましく使用できる。
これらの方法は、芳香族炭酸エステル類を効率よく、かつ連続的に製造する方法であり、同様な連続的製造方法として、カラム型反応器内で接触エステル交換させる方法(特開平6−41022号公報、特開平6−157424号公報、特開平6−184058号公報)や、複数の反応槽を直列につなぐ方法(特開平6−234707号公報、特開平6−263694号公報)、気泡塔反応器を用いる方法(特開平6−298700号公報)、縦長反応槽を用いる方法(特開平6−345697号公報)等が提案されている。
これらの方法で芳香族炭酸エステル類を工業的に製造する場合、長期間安定に運転する方法についても提案されている。
【0024】
特開平6−157410号公報では、炭酸ジアルキルと芳香族ヒドロキシ化合物から芳香族炭酸エステル類を製造する際、反応器内の脂肪族アルコール類の濃度を2重量%以下にするように反応器に繋がった蒸留塔から脂肪族アルコールを抜き出す方法が開示され、安定した連続運転ができる事が記載されている。該公報は、蒸留塔内における触媒析出の問題を生じさせないためのものである。また、特表平9−11049号公報では系内の触媒を含む液状物中において芳香族多価ヒドロキシ化合物およびまたはその残基が触媒の金属成分に対して重量比で2以下に保つことで触媒の析出を防ぎ長期間の安定運転を可能とする方法が開示されている。
【0025】
芳香族炭酸エステルを製造する際に、高沸物質が副生することも知られている。例えば、特開昭61−172852号公報には炭酸ジメチルをフェノールでエステル交換して炭酸ジフェニルを製造する際、炭酸ジフェニルと同程度の沸点を持つ不純物を副生し、この不純物が炭酸ジフェニルに混入することにより、最終目的物、例えばポリカーボネートの着色を起こすことが記載されている。
該公報には具体的に記載されていないが、芳香族炭酸エステルと同程度の沸点を持つ不純物として、芳香族炭酸エステルのフリース転移による異性体であるアリーロキシカルボニル−(ヒドロキシ)−アレーンが挙げられる。例えば芳香族炭酸エステルが炭酸ジフェニルの場合には、アリーロキシカルボニル−(ヒドロキシ)−アレーンに対応する化合物としてサリチル酸フェニルが挙げられる。サリチル酸フェニルは炭酸ジフェニルより沸点が4〜5℃高い高沸物質である。反応を長時間行うと、上記の高沸物質が次第に系内に蓄積するので、製品である芳香族炭酸エステルに混入する該高沸物質が増加して製品純度が低下してしまう。また、高沸物質が増加するにしたがい反応液の沸点が上昇するので、高沸物質の副生がさらに加速されるなどの問題があるが、例えば、特開平11−92429号公報などの方法によれば、多量の該触媒を必要とせずに純度の高い芳香族炭酸エステルを安定して製造することができる。
【0026】
本発明で使用される炭酸エステル交換触媒とは、前記反応式(2)の反応を促進するエステル交換触媒であり、例えば下記の化合物から選択される。
<鉛化合物>PbO、PbO、Pb等の酸化鉛類;PbS、PbS等の硫化鉛類;Pb(OH)、Pb(OH)等の水酸化鉛類;NaPbO、KPbO、NaHPbO、KHPbO等の亜ナマリ酸塩類;NaPbO、NaPbO、KPbO、K[Pb(OH)]、KPbO、CaPbO、CaPbO等の鉛酸塩類;PbCO、2PbCO・Pb(OH)等の鉛の炭酸 塩及びその塩基性塩類;Pb(OCOCH、Pb(OCOCH、Pb(OCOCH・PbO・3HO等の有機酸の鉛塩及びその炭酸塩や塩基性塩類;BuPb、PhPb、BuPbCl、PhPbBr、PhPb(又はPhPb2)、BuPbOH、PhPbO等の有機鉛化合物類(Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。);Pb(OCH、(CHO)Pb(OPh)、Pb(OPh)等のアルコキシ鉛類、アリールオキシ鉛類;Pb−Na、Pb−Ca、Pb−Ba、Pb−Sn、Pb−Sb等の鉛の合金類;ホウエン鉱、センアエン鉱等の鉛鉱物類、及びこれらの鉛化合物の水和物;
【0027】
<銅族金属の化合物>CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、Cu(OAc)、Cu(acac)、オレフイン酸銅、BuCu、(CHO)Cu、AgNO、AgBr、ピクリン酸銀、AgCClO、Ag(ブルバレン)NO、[AuC≡C−C(CH]n、[Cu(C)Cl]等の銅族金属の塩及び錯体(acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。);
<アルカリ金属の錯体>Li(acac)、LiN(C等のアルカリ金属の錯体;
<亜鉛の錯体>Zn(acac)等の亜鉛の錯体;
<カドミウムの錯体>Cd(acac)等のカドミウムの錯体;
<鉄族金属の化合物>Fe(C10)(CO)、Fe(CO)、Fe(C)(CO)、Co(メシチレン)(PEtPh)、CoC(CO)、Ni−π−CNO、フェロセン等の鉄族金属の錯体;
【0028】
<ジルコニウム錯体>Zr(acac)、ジルコノセン等のジルコニウムの錯体;
<ルイス酸類化合物>AlX、TiX、TiX、VOX、VX、ZnX、FeX、SnX(ここでXはハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。)等のルイス酸及びルイス酸を発生する遷移金属化合物;
<有機スズ化合物>(CHSnOCOCH、(CSnOCOC、BuSnOCOCH、PhSnOCOCH、BuSn(OCOCH、BuSn(OCOC1123、PhSnOCH、(CSnOPh、BuSn(OCH、BuSn(OC、BuSn(OPh)、PhSn(OCH、(CSnOH、PhSnOH、BuSnO、(C17SnO、BuSnCl、BuSnO(OH)等の有機スズ化合物;
【0029】
もちろん、これらの触媒成分が反応系中に存在する有機化合物、例えば、アルコール類、芳香族ヒドロキシ化合物類、炭酸アルキルアリール類、芳香族炭酸エステル類、炭酸ジアルキル類等と反応したものであっても良いし、反応に先立って原料や生成物で加熱処理されたものであってもよい。これらのエステル交換触媒は、反応条件において反応液への溶解度の高いものであることが好ましい。好ましいエステル交換触媒としては、PbO、Pb(OH)、Pb(OPh);TiCl、Ti(OPh);SnCl、Sn(OPh)、BuSnO、BuSn(OPh);FeCl、Fe(OH)、Fe(OPh)等、又はこれらをフェノール又は反応液等で処理したもの等が挙げられる。
【0030】
本発明の炭酸エステルから芳香族炭酸エステルを得る反応は、先に示したように炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)と芳香族ヒドロキシ化合物のエステル交換によって芳香族炭酸エステルを得る工程であって、この平衡反応を有利に進めるためには、アルコールを抜き出しながら反応を進める方法が有利な方法である。不均化反応も平衡の制約を受けるため、芳香族炭酸エステルのうち、炭酸ジアリールを多く得ようとすれば、不均化反応で生成する炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)と芳香族炭酸エステルのうちの一方を系外に抜き出しながら反応させる方法が有利であり、炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)を系外に抜き出しながらおこなうことが好ましい。
上記した芳香族炭酸エステルの製造の際に、炭酸エステル交換反応触媒と共に不均化反応を触媒するような触媒を添加してよい。
【0031】
このような触媒として、例えば、ルイス酸およびルイス酸を発生しうる遷移金属化合物〔特開昭51−75044号公報(西独特許公開公報第2552907号、米国特許第4045464号明細書)〕、ポリマー性スズ化合物〔特開昭60−169444号公報(米国特許第4554110号明細書)〕、一般式R−X(=O)OH(式中XはSn及びTiから選択され、Rは1価炭化水素基から選択される。)で表される化合物、〔特開昭60−169445号公報(米国特許第4552704号明細書)〕、ルイス酸とプロトン酸の混合物〔特開昭60−173016号公報(米国特許第4609501号明細書)〕、鉛触媒(特開平1−93560号公報)、チタンやジルコニウム化合物(特開平1−265062号公報)、スズ化合物(特開平1−265063号公報)、Sc、Mo、Mn、Bi、Te等の化合物(特開平1−265064号公報)等が提案されている。
本発明で使用される不均化反応触媒とは、前記反応式(3)の反応を促進する不均化反応触媒であり、炭酸エステル交換反応触媒と同じものが使用できる。
例えば下記の化合物から選択される。
【0032】
<鉛化合物>PbO、PbO、Pb等の酸化鉛類;PbS、PbS等の硫化鉛類;Pb(OH)、Pb(OH)等の水酸化鉛類;NaPbO、KPbO、NaHPbO、KHPbO等の亜ナマリ酸塩類;NaPbO、NaPbO、KPbO、K[Pb(OH)]、KPbO、CaPbO、CaPbO等の鉛酸塩類;PbCO、2PbCO・Pb(OH)等の鉛の炭酸塩及びその塩基性塩類;Pb(OCOCH、Pb(OCOCH、Pb(OCOCH・PbO・3HO等の有機酸の鉛塩及びその炭酸塩や塩基性塩類;BuPb、PhPb、BuPbCl、PhPbBr、PhPb(又はPhPb)、BuPbOH、PhPbO等の有機鉛化合物類(Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。);Pb(OCH、(CHO)Pb(OPh)、Pb(OPh)等のアルコキシ鉛類、アリールオキシ鉛類;Pb−Na、Pb−Ca、Pb−Ba、Pb−Sn、Pb−Sb等の鉛の合金類;ホウエン鉱、センアエン鉱等の鉛鉱物類、及びこれらの鉛化合物の水和物;
【0033】
<銅族金属の化合物>CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、Cu(OAc)、Cu(acac)、オレフイン酸銅、BuCu、(CHO)Cu、AgNO、AgBr、ピクリン酸銀、AgCClO、Ag(ブルバレン)NO、[AuC≡C−C(CH]n、[Cu(C)Cl]等の銅族金属の塩及び錯体(acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。);
<アルカリ金属の錯体>Li(acac)、LiN(C等のアルカリ金属の錯体;
<亜鉛の錯体>Zn(acac)等の亜鉛の錯体;
<カドミウムの錯体>Cd(acac)等のカドミウムの錯体;
<鉄族金属の化合物>Fe(C10)(CO)、Fe(CO)、Fe(C)(CO)、Co(メシチレン)(PEtPh)、CoC(CO)、Ni−π−CNO、フェロセン等の鉄族金属の錯体;
【0034】
<ジルコニウム錯体>Zr(acac),ジルコノセン等のジルコニウムの錯体;
<ルイス酸類化合物>AlX、TiX,TiX、VOX、VX、ZnX、FeX、SnX(ここでXはハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。)等のルイス酸及びルイス酸を発生する遷移金属化合物;
<有機スズ化合物>(CHSnOCOCH、(CSnOCOC、BuSnOCOCH、PhSnOCOCH、BuSn(OCOCH、BuSn(OCOC1123、PhSnOCH、(CSnOPh、BuSn(OCH、BuSn(OC、BuSn(OPh)、PhSn(OCH、(CSnOH、PhSnOH、BuSnO、(C17SnO、BuSnCl、BuSnO(OH)等の有機スズ化合物;
【0035】
もちろん、これらの触媒成分が反応系中に存在する有機化合物、例えば、アルコール類、芳香族ヒドロキシ化合物類、炭酸アルキルアリール類、芳香族炭酸エステル類、炭酸ジアルキル類等と反応したものであっても良いし、反応に先立って原料や生成物で加熱処理されたものであってもよい。これらの不均化反応触媒は、反応条件において反応液への溶解度の高いものであることが好ましい。好ましい不均化反応触媒としては、PbO、Pb(OH)、Pb(OPh);TiCl、Ti(OPh);SnCl、Sn(OPh)、BuSnO、BuSn(OPh);FeCl、Fe(OH)、Fe(OPh)等、又はこれらをフェノール又は反応液等で処理したもの等が挙げられる。
【0036】
本発明の炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とから炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)アリールや炭酸ジアリールなどの芳香族炭酸エステルを製造する際に使用する芳香族ヒドロキシ化合物の量は、使用する炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)の量に対して、モル比で0.1倍以上10000倍以下の範囲で使用できる。該反応は、主に平衡反応であるから、芳香族ヒドロキシ化合物の量は多い方が有利であるが、使用量が増えれば反応器は大きくなり、後の生成物の分離にも大きな蒸留塔等が必要とされるため、本発明の炭酸エステルである炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)に対して1倍以上1000倍の範囲が好ましい。
【0037】
該反応に供給する化合物は、主に炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)、芳香族ヒドロキシ化合物、必要であれば触媒であるが、反応に特に悪影響を与えない不純物が混入していてもかまわない。
本発明で触媒を用いる場合の触媒の量は、使用する触媒の種類、反応器の種類、及び芳香族ヒドロキシ化合物の種類やその量比、反応温度並びに反応圧力等の反応条件の違い等によっても異なるが、供給原料である炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)及び芳香族ヒドロキシ化合物の合計重量に対する割合で表わして、通常0.0001〜50重量%で使用される。また固体触媒を使用する場合には、反応器の空塔容積に対して、0.01〜75体積%の触媒量が好ましく用いられる。
【0038】
これらの供給原料中に、生成物であるアルコール、炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)アリール、及び炭酸ジアリール等が含まれていてもよいが、本反応は可逆反応であるため、これらの生成物のうち、濃度があまり高い場合には原料の反応率を低下させるため好ましくない場合がある。
供給する炭酸ジアルキルと芳香族ヒドロキシ化合物との量比は、触媒の種類及び量、並びに反応条件によっても変わり得るが、通常、供給原料中の該炭酸ジアルキルに対して該芳香族ヒドロキシ化合物はモル比で0.01〜1000倍の 範囲で供給するのが好ましい。
【0039】
該反応の反応時間は、反応条件や反応器の種類や内部構造によっても異なるが、通常0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、より好ましくは0.05〜5時間である。反応温度は、反応器内の温度であり、用いる原料化合物である炭酸ジアルキル及び芳香族ヒドロキシ化合物の種類によって異なるが、通常50〜350℃、好ましくは100〜280℃の範囲で行われる。また反応圧力は、用いる原料化合物の種類や反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常10Pa〜20MPaの範囲で行われる。
本発明においては、必ずしも溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒、例えば、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン変脂肪族炭化水素類、ハロゲン芳香族炭化水素類等を反応溶媒として用いることができる。また、反応に不活性な物質として窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを反応系に共存させてもよいし、生成する低沸点副生成物の留去を加速する目的で連続多段蒸留塔の下部より、上記の不活性ガスや反応に不活性な低融点有機化合物をガス状で導入してもよい。
【0040】
上記反応終了後は、公知の方法で触媒、炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)、芳香族炭酸エステル、芳香族ヒドロキシ化合物、アルコールを分離し、芳香族炭酸エステルを得る。上記反応で使用する反応器の形式に特に制限はなく、攪拌槽方式、多段攪拌槽方式、多段蒸留塔を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。これらの反応器はバッチ式、連続式のいずれでも使用できる。平衡を生成系側に効率的にずらすという点で、多段蒸留塔を用いる方法が好ましく、多段蒸留塔を用いた連続法が特に好ましい。多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が2段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能なものであるならばどのようなものであってもよい。このような多段蒸留塔としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のものなど、通常多段蒸留塔として用いられるものならばどのようなものでも使用することができる。
【0041】
さらには棚段部分と充填物の充填された部分とをあわせもつ棚段−充填混合塔方式のものも好ましく用いられる。多段蒸留塔を用いて連続法を実施する場合、出発物質と反応物質とを連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該蒸留塔内において金属含有触媒の存在下に液相または気−液相で両物質間のエステル交換や不均化反応を行わせると同時に、製造される芳香族炭酸エステルまたは芳香族炭酸エステル混合物を含む高沸点反応混合物を該蒸留塔の下部から液状で抜き出し、一方生成する副生物を含む低沸点反応混合物を蒸留によって該蒸留塔の上部からガス状で連続的に抜き出すことにより芳香族炭酸エステル類が製造される。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
1)NMR分析方法
装置:日本電子(株)社製JNM−A400 FTNMRシステム
(1)H、13C−NMR分析サンプル溶液の作成
生成物を0.1から0.5gの範囲で計り取り、重クロロホルムを約0.9g加えてNMR分析サンプル溶液とする。
【0043】
2)炭酸エステルのガスクロマトグラフィー分析法
装置:(株)島津製作所製GC−2010システム
(1)分析サンプル溶液の作成
反応溶液約0.20g量り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加える。
さらに内部標準としてジフェニルエーテル約0.06gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とする。
(2)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(3)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施する。
【0044】
2)炭酸エステルのガス質量分析法
装置:Agilentテクノロジー GC6890A、5973N Mass
Aelective Detector
(1)分析サンプル溶液の作成
反応溶液約0.02g量り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加え,ガス質量分析サンプル溶液とする。
(2)ガス質量分析条件
カラム:DB−5(J&W Scientific)
液相:95%メチルポリシロキサン,5%フェニルメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:0.25μm
カラム温度:50℃で5分後、10℃/分で200℃まで昇温し、5分おいた後、300℃まで更に昇温した、
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:電子衝撃法
【0045】
「実施例1」
<炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)の製法>
温度計、窒素導入管、コンデンサーを備えた容量2L三口フラスコに、ジメチルカーボネート(東京化成社製)431.6g(4.8モル)、2−isoプロピルオキシエタノール1333g(12.8モル)及び酸化鉛3.3g(0.05モル)と攪拌のための攪拌子を入れ、温度調節器を備えたオイルバスに浸漬した。窒素導入しながら液温を約90℃〜125℃に徐々に昇温して10時間攪拌して反応させた。反応液を真空ポンプと真空コントローラー(岡野製作所社製)を用いて減圧下において蒸留・分離することによりジメチルカーボネート、メタノール、2−isoプロピルオキシエタノールを除去し、透明な生成物として炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)を含んだ液体約290gを得た。
NMR分析結果を図1(H−NMR)及び図2(13C−NMR)に示した。
H−NMR(CDCl3)δ:4.2(4H、t)、3.6(6H、m)、1.1(12H、d)、13C−NMR:154ppm、71ppm、66ppm、65ppm、21ppm)。
元素分析結果:C(56.4%)、H(9.5%)、O(34.1%)
【0046】
「実施例2」
炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)とフェノールとからの炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)フェニルの製法
フェノール40gと一酸化鉛8gを180℃で10時間加熱し、生成する水をフェノールと共に留去することにより触媒Aを調整した。両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブに炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)0.54g(約2.3ミリモル)、フェノール0.46g(4.9ミリモル)及び触媒Aを8.4mg(鉛分が全液量の約400ppmとなるような量)を仕込み、スェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して1.5時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところ炭酸(2−isoプロピルオキシエチル)フェニルが2.6重量%、ジフェニルカーボネートが0.03重量%得られた。
【0047】
「比較例」
炭酸ジメチルとフェノールとからの炭酸メチルフェニルの製法
フェノール40gと一酸化鉛8gを180℃で10時間加熱し、生成する水をフェノールと共に留去することにより触媒Aを調整した。両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブに炭酸ジメチル0.21g(約2.3ミリモル)、フェノール0.46g(4.9ミリモル)及び触媒Aを8.4mg(鉛分が全液量の約400ppmとなるような量)を仕込み、スェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して1.5時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところ炭酸メチルフェニルが1.4重量%、ジフェニルカーボネートは0.01重量%であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1で製造した炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)のNMR分析(H−NMR)図である。
【図2】本発明の実施例1で製造した炭酸ビス(2−isoプロピルオキシエチル)のNMR分析(13C−NMR)図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)であらわされる炭酸エステル。
【化1】

【請求項2】
請求項1記載の炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換させることを特徴とする芳香族炭酸エステルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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