説明

新規血清型のローソニア・イントラセルラリス細菌、その細菌に基づくワクチン、該新規ローソニア・イントラセルラリス血清型の特定に適した抗体および該抗体を製造するためのハイブリドーマ

本発明は、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4049として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−02−02により産生されるモノクローナル抗体INT−LIC−02−02には反応性であるが、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4048として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−01−28により産生される抗体INT−LIC−01−28には反応性でない血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌に関する。本発明はまた、それらの新規細菌に基づく、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する防御のためのワクチン、該新規ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)血清型を特定するのに適した抗体、および該抗体を製造するためのハイブリドーマに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌、それらの新規細菌に基づく、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する防御のためのワクチン、該新規ローソニア・イントラセルラリス血清型の特定に適した抗体および該抗体を製造するためのハイブリドーマに関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に全ての動物(ヒト、ウサギ、ウマ、イヌ、キツネ、ダチョウ、フェレット、モルモットなど)、特にブタにおける増殖性腸疾患(PE、また、腸炎または回腸炎とも称される)は、主に末端回腸における未熟陰窩上皮細胞の粘膜過形成を伴う臨床徴候および病的症候群を示す。冒されうる腸の他の部位には、空腸、盲腸および結腸が含まれる。主に幼いブタおよび若い成体ブタが、急速な体重減少および脱水症の典型的な臨床症状を示す。ブタにおける自然臨床疾患が世界中で生じている。該疾患は一貫して、現在ではローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)として公知の細胞内湾曲細菌に関連している。これらの細菌は、元々はイレアル・シンビオント・イントラセルラリス(Ileal symbiont intracellularis)と呼ばれていた新規分類属および種として1993年に同定された(International Journal of Systemic Bacteriology,Vol.43,No.3,533−538,1993;Gebhartら)。それは、前記参考文献にGebhartにより記載されており同じ論文雑誌(Vol.45,No.4,820−825,1995)にMcOristにより同定されている偏性細胞内湾曲グラム陰性細菌である。1995年以降、該細菌は一般にローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)と呼ばれている。
【0003】
一般に、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)に対するワクチン接種は、回腸炎を抑制するための及びブタの遺伝的な成長可能性の良好な利用を可能にするための経済的に効率的な手段であることが示されている(Porcine Proliferative Enteropathy Technical manual 3.0,2006年7月(Boehringer Ingelheimから入手可能))。
【0004】
最近、主要抗原はローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞の炭水化物であり、該炭水化物はこれらの細胞の外細胞膜と会合していることが判明した(2008年4月18日付けで出願されIntervet International B.V.に譲渡された特許出願EP 08154764.8およびUS 61/046,161を参照されたい)。該単離炭水化物を含有する組成物に基づくワクチンは、既存ワクチンと比較した場合、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する適度な防御をもたらしうるようである。実際、この炭水化物の抗原決定基に対するモノクローナル抗体は、欧州および米国における商業的に入手可能な生ワクチンであるEnterisol(登録商標)Ileitisにおいて使用されている株(それらの株は本明細書の以下においてはそれぞれBI;EUおよびBI;USAと称される)のような全ての公的に入手可能な株に反応性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願第08154764.8号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/046,161号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gebhartら,International Journal of Systemic Bacteriology,Vol.43,No.3,533−538,1993
【非特許文献2】McOrist,International Journal of Systemic Bacteriology,Vol.45,No.4,820−825,1995
【非特許文献3】Porcine Proliferative Enteropathy Technical manual 3.0,2006年7月(Boehringer Ingelheim)
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌が存在し、該細菌が、特に主要炭水化物抗原に関して、公知血清型の細菌と実質的に異なることが、本発明において見出された。この新規血清型は米国におけるブタに並びにオランダにおけるブタおよびウマに存在することが示されている。該新規血清型の細菌は、これが、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4049として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−02−02により産生されるモノクローナル抗体INT−LIC−02−02には反応性であるが、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4048として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−01−28により産生されるINT−LIC−01−28抗体には反応性でないことにより特徴づけられる。これらのモノクローナル抗体は共に、公知ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)血清型の主要炭水化物抗原の抗原決定基に対するものである。
【0008】
本発明の細菌は、任意の形態、例えば生野生型形態、生突然変異形態、特に生弱毒化形態、例えばEP 0 843 818から公知の形態(この突然変異体はまた、組換え体でありうる)、または死菌形態、例えば2008年4月18日付けで出願された前記特許出願から公知の形態でありうる。
【0009】
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌が前記モノクローナル抗体に反応性であるか否かは、分離細菌に関して後記実施例において「細菌および組織スライドの免疫特徴づけ」の節で記載されている免疫ブロット法で試験されうる。
【0010】
該新規血清型は既存血清型と免疫学的に異なるため、該新規血清型の特定は新規セットの抗体の使用を要する。さらに、該新規血清型は特に主要抗原に関して免疫学的に異なるため、公知血清型に基づく既存ワクチンは、該新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対してそれほど適度な防御をもたらさないか、あるいは更には該感染に対する防御を全くもたらさない、と理論的に予想される。本発明はまた、該新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌に基づくワクチンを含む。
【0011】
1つの実施形態においては、該ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌は、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4050として寄託された株から誘導される。この実施形態においては、「寄託された株」は、寄託された株の特性を有する株を意味する。誘導体は、例えば生弱毒化体、例えば、EP 0 843 818から公知のとおり該細菌を十分な継代数で継代することにより製造された又は組換え技術により製造された生弱毒化体でありうる。それはまた、死菌細菌、例えば欧州特許出願EP 08154764.8から公知の死菌細菌でありうる。もう1つの実施形態においては、該ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌は、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4050として寄託された株である。この株は米国において出現しており、この株からの抗原を含むワクチンはこの株または同一血清型の他の株に対する最適な防御をもたらすと考えられている。
【0012】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の請求項のいずれかに記載の細菌から誘導された単離画分に関する。そのような単離誘導画分は、該細菌自体の単離された成分または該成分の混合物、あるいは適用可能な場合には、その細菌の代謝産物、または該細菌のサブユニット、例えば該サブユニットを発現する組換え体産生微生物により発現された該細菌のサブユニットでありうる。単離画分は、該新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌による感染を評価するための診断キットの開発において有用でありうる。また、特に、該単離画分が、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する防御をもたらす関連抗原を含む場合、それはそのような感染に対する安全なワクチンにおいて成功裏に使用されうる。該細菌の単離画分は、動物に投与された場合、典型的には、野生型細菌の場合と同じ疾患や障害を引き起こさないか又は少なくともより低い度合で引き起こすであろう。
【0013】
1つの実施形態においては、該単離画分は非生炭水化物含有組成物を含み、該炭水化物は、生ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞において、これらの細胞の外細胞膜との会合状態でも見出される。ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)のそのような画分の入手方法は、例えば欧州特許出願EP 08154764.8の「実施例1」に記載されている。これはKrollら(Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology,2005年6月,693−699)からも公知である。
【0014】
本発明はまた、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する防御のためのワクチンに関するものであり、ここで、該ワクチンは、該新規血清型の細菌および/またはそのような細菌の単離画分を含む。本発明の場合の、微生物による感染に対する防御のためのワクチンは、動物に投与されると疾患または障害の予防、改善または治療を補助するように免疫応答を誘導する、場合によっては免疫刺激物質(アジュバント)を含む、典型的には医薬上許容される担体、例えば含水液と組合された、免疫学的に有効な量、すなわち、野生型微生物のチャレンジの負の効果を少なくとも軽減するのに十分な程度に標的動物の免疫系を刺激しうる量の1以上の抗原、例えば弱毒化もしくは死滅微生物および/またはそのサブユニットあるいは例えば生物の代謝産物のようないずれかの他の物質を含む、動物への適用に適した構造体である。
【0015】
一般に、医薬上許容される担体、例えば(場合によっては緩衝化された)水のような液体、または例えば凍結乾燥ワクチンを得るために一般に使用される固体担体と該抗原(または該抗原を含有する組成物)を混合することを基本的に含む当技術分野で公知の方法を用いることにより、ワクチンは製造されうる。該ワクチンにおいては、該抗原は、免疫学的に有効な量、すなわち、野生型微生物のワクチン接種後チャレンジの負の効果を少なくとも軽減するのに十分な程度に標的動物の免疫系を刺激しうる量で存在する。場合によっては、該ワクチンの意図される用途または要求される特性に応じて、他の物質、例えばアジュバント、安定剤、粘度改変剤または他の成分が加えられる。一般に、より良好な免疫学的応答(すなわち、抗原に対する全体的身体応答、特に、リンパ球により媒介されるもの、典型的には、特異的抗体または既に感作されたリンパ球による抗原の認識を含むもの)を最終的に招く、免疫事象のカスケードにおける個々の過程を促進する又は増幅しうる各物質は、アジュバントと定義されうる。該アジュバントは、一般に、前記の個々の過程が生じるためには必要とされないが、該過程を促進または増幅することに注目されたい。非経口ワクチン接種のためには、多数の形態が好適であり、特に、液体製剤(溶解、乳化または懸濁抗原を含有するもの)だけでなく、固体製剤、例えばインプラント、または中間形態、例えば、液体中に懸濁される抗原のための固体担体が好適である。非経口ワクチン接種および非経口ワクチン接種のための適当な(物理的)形態は200年以上前から公知である。
【0016】
もう1つの実施形態においては、該ワクチンは非生ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)抗原を含有し、少なくとも1×10(1E7)個のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞を含有する又はそれから誘導されたワクチン接種当たりの抗原用量での全身投与に適した形態である。少なくとも1×10(1E8)個のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞を含有する又はそれから誘導されたワクチン接種当たりの用量を適用することにより、尚も良好な防御が達成されうることを、本発明者らは示している。これらの結果に基づけば、1×10の用量が、非生抗原が全身投与された場合の適度な防御のための最小必要量であると考えられる。一般に、該用量の上限は存在しない。しかし、典型的には1×1011細胞/ml以上では、抗原量の高負荷のため、ワクチンを全身投与するのは困難であろう。サブユニットに場合、実用的な上限は、典型的には、1×1014細胞に対応する又はそれから誘導された1ml当たりの抗原量である。全身投与は、該ワクチンが身体の循環系(心血管系およびリンパ系を含む)に到達して胃腸管のような特定の部位ではなく全身に影響を及ぼす投与形態である。全身投与は、例えば、該抗原を筋肉組織内(筋肉内)、皮膚内(皮内)、皮膚下(皮下)、粘膜の下(粘膜下)、静脈の中(静脈内)などへ投与することにより行われうる。得られうる非常に良好な防御に加えて、非生ワクチンの重要な利点は、生ワクチンと比較してそれが本質的に安全であることである。この実施形態の用量は、この投与形態で許容防御を得るための最小値であるらしい。
【0017】
本発明はまた、新規ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)血清型を特定するのに適した抗体、特に、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにそれぞれCNCM I−4049およびCNCM I−4048として共に寄託されているハイブリドーマINT−LIC−02−02またはハイブリドーマINT−LIC−01−28により産生される群に属する抗体に関する。本発明はまた、これらのハイブリドーマに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、モノクローナル抗体INT−LIC−02−02を使用した場合の染色結果を示す。
【図2】図2は、モノクローナル抗体IT−LIC−01−028での染色結果を示す。
【0019】
本発明の実施形態の以下の実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明することとする。
【0020】
腸からのローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)の分離
米国で誕生し成長したブタの腸から組織材料を得た。該ブタは、組織学的に確認された増殖性腸疾患の自然発生症例を有していた。一般に公知の技術、とりわけ、Lawsonら(Journal of Clinical Microbiology,1993年5月,p.1136−1142)の「MATERIALS AND METHODS(材料および方法)」の「Source material(原料)」の段落から公知の技術を用いて、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌を集めた。当技術分野で確立されている方法(GuedesおよびGebhart,Veterinary Microbiology,93:159−166.2003)を用いて、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌を、T−175cmフラスコ中、マウス繊維芽細胞(McCoy)細胞系内で増殖させた。当技術分野において記載されているとおりに(GuedesおよびGebhart,Veterinary Microbiology,93:159−166.2003)、組織培養上清から、および感染McCoy細胞から、細菌を集めた。これらの細菌は本出願においてはローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)分離体SPAH06と称され、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4050として寄託されている。該細菌を該新規血清型の特徴づけ、およびワクチンの製造に使用した。
【0021】
オランダにおける動物からの組織サンプル
オランダで成長したウマおよびブタの腸から組織材料を得た。該動物は、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)により引き起こされる増殖性腸疾患を有すると疑われた。該ウマは、重篤な低タンパク血症および超音波走査による判定で肥厚腸壁を有する5月齢のフリージアン(Friesian)子ウマであった。それは獣医院にまわされた。その臨床徴候のため、それは、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染を有すると疑われた。該ブタも、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染を有すると疑われた。これを確認するために、これらの動物の腸からの組織サンプルを集め、中性緩衝化ホルマリン中で固定し、スライドに加工した(標準的な方法により行った)。これらのスライドを顕微鏡検査し、免疫組織化学検査に付した。該顕微鏡検査は、ローソニア(Lawsonia)(様)細菌が存在することを証明した。以下、該免疫組織化学に関する結果を説明する。
【0022】
モノクローナル抗体およびハイブリドーマの製造
モノクローナル抗体(モノクローナルとも称される)を以下のとおりに製造した。前記のLawsonら(1993)に記載されているのと実質的に同じ方法で、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌を感染ブタ腸組織から分離した。該分離細菌をパーコール勾配遠心分離により更に精製した。該精製細胞から、音波処理およびそれに続くN−ラウロイルサルコシン抽出により外膜調製物を調製した。該外膜調製物をパラフィン系油中水型エマルション中に配合し、Balb/cマウスの筋肉内に2回(6週間間隔)投与した。追加的な静脈内ブースターワクチン接種の1週間後、標準的なポリエチレングリコール(PEG)融合法を用いて該ワクチン接種マウスの脾細胞(B−リンパ球)をマウス骨髄腫細胞(NS−1)と融合することにより、ハイブリドーマを製造した。該ハイブリドーマをヒポキサンチン−アミノプテリン−チアミン(HAT)選択培地内で約2週間培養し、特異的ELISAおよび/または免疫蛍光(IF)試験でスクリーニングした。陽性クローンを拾い、液体窒素中で保存した。該モノクローナル抗体はINT−LIC−01−028およびINT−LIC−02−02と称される。特許出願EP 08154764.8の実施例1と合致して、それらのモノクローナル抗体は共に、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌の外膜会合炭水化物に反応性であることが確認された。
【0023】
細菌および組織スライドの免疫特徴づけ
標準的なブロット技術、すなわち、MOPS/MES SDSバッファーと共に還元条件下でNuPage 10%Bis−Trisゲルを使用するSDS−PAGEを用いて、分離ローソニア(Lawsonia)細菌の免疫特徴づけを行った。Towbin(Towbin,H;Staehlin,T.およびGordon,J.,Proc.Nat.Acad.Sci.76,4350,1979)に従う半乾燥ウエスタンブロット法を用いて、該ゲルをImmobilon PトランスファーメンブレンPVDF0.45μm(Millipore)上にブロットした。0.5% Tween20(pH=7.2)と1% m/v 粉乳とを含有する100mlの0.04M PBSで該ブロットを37℃で1時間ブロッキングした。該ブロットを0.04M PBSおよび0.5% Tween20(pH=7.2)で30秒間にわたり1回洗浄した。ついで、該モノクローナル抗体の1つの200倍希釈物を含有する1% 粉乳と0.05% Tween20とを含有する20mlの0.04M PBS中、該ブロットを37℃で1時間インキュベートし、ついで、0.5% Tween20(pH=7.2)を含有する100mlの0.04M PBSで5分間にわたり3回洗浄した。ついで該ブロットを、0.05% Tween20および1% 粉乳および1000倍希釈ヤギ抗マウス(IgG)−HRPを含有する20mlの0.04M PBSと共に37℃で1時間インキュベートし、ついで、0.5% Tween20(pH=7.2)を含有する100mlの0.04M PBSで5分間にわたり3回洗浄した。十分な発色が生じるまで、該ブロットを基質Vector SG溶液(ペルオキシダーゼ用Vector SG基質キット(Vector,SK−4700))中でインキュベートした。WFI(注射用水)中で5分間にわたり2回洗浄することにより、該反応を停止した。結果を図1および2に示す。図1は、モノクローナル抗体INT−LIC−02−02を使用した場合の染色結果を示す。このモノクローナル抗体は、約15kDaのバンドを有する公知株BI;EUおよびBI;USAと反応することが明らかである。また、プロテイナーゼKで処理されていない調製物(ProtK:−として表示)は分子量において若干異なるため、これらの2つの株は若干異なることも認められうる。株SPAH06との陽性反応も認められる。対照(McCoy細胞調製物)は染色を示していない。図2には、モノクローナル抗体IT−LIC−01−028での染色結果が示されている。このモノクローナル抗体は株BI;EUおよびBL;USAの同一炭水化物抗原と反応するようである。しかし、これらの状況下、本発明の意味におけるモノクローナルINT−LIC−01−028と株SPAH06の調製物との間の反応は認められない。なぜなら、この方法では、視認可能なバンドが見出されないからである。モノクローナルINT−LIC−01−028とのいくらかの若干のa特異的反応が該新規血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌で生じる可能性があるが、前記の状況下、示された可視化技術(すなわち、それらの2つのBI株に関して十分な発色が生じるまでのVector VGインキュベーションの停止)を用いた場合にそのようなa特異的反応を検出できなかったことが注目される。
【0024】
ローソニア(Lawsonia)に感染した腸の組織サンプルの免疫特徴づけを以下のとおりに行った。組織サンプルを中性緩衝化ホルマリン中で固定し、スライドに加工した(標準的な方法により行った)。該組織スライド中に存在するローソニア(Lawsonia)細菌をモノクローナルINT−LIC−01−28またはINT−LIC−02−02でプローブし、ついでマウス−EnVision(商標)System/HRP(DAKO,Carpinteria,CA,USAから入手可能)を使用して可視化した。「オランダにおける動物からの組織サンプル」の段落で前記において説明したオランダのウマおよびブタからの組織サンプルをこの免疫特徴づけ試験に付した。該組織スライドをプローブするためにモノクローナルINT−LIC−02−02を使用した場合には特異的染色が観察できたが、モノクローナルINT−LIC−01−28は特異的陽性染色を引き起こさなかった。
【0025】
これらの事例から、本明細書の前記導入部分および添付の特許請求の範囲において定義される新規免疫学的血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)株の幾つかは種々の動物種において存在すると結論づけられうる。これらの株のそれぞれは、増殖性腸疾患に対応する臨床徴候および組織病変に関連づけられる。
【0026】
ローソニア・イントラセルラリス分離体SPAH06でのワクチン接種研究
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)分離体SPAH06に基づく死菌ワクチンが、ローソニア(Lawsonia)により引き起こされる疾患に対する防御をもたらしうるかどうかを試験するために、ブタにおいて研究を行った。該生細菌をバイナリーエチレンイミン(BEI)の添加により不活化し、ついでEmunade(登録商標)アジュバント(Intervet Schering−Plough Animal Healthから入手可能)中に配合した。2種類の用量レベル、すなわち、1×10および5×10 細菌/用量で、該不活化およびアジュバント化細菌を試験した。ローソニア(Lawsonia)感染を有すると診断されたブタの腸から調製した腸ホモジネートでのチャレンジを第42日に行った。効力の一次尺度は、対照動物と比較した場合のワクチン接種動物の回腸における肉眼的および顕微鏡的病変の罹患率および重症度における有意(p<0.05)な減少に基づくものであった。該肉眼的病変は0〜3の尺度に基づいて得点化し、顕微鏡的病変は0〜4の尺度に基づいて得点化した。該研究計画および主要活動を表1に示す。この研究の結果を表2に示す。表2に示すデータは、ワクチン接種動物とプラセボ対照との間で回腸病変得点における有意な減少が認められたとを示している(t検定,p<0.05)。さらに、罹患回腸組織の免疫組織化学的染色による判定では、プラセボ対照と比較した場合のワクチン接種動物における定着の有意な減少が認められた。これらのデータは、不活化ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)分離体SPAH06に基づく細菌でのブタのワクチン接種が、このタイプの細菌により引き起こされる疾患に対する有意な防御をもたらすことを示している。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4049として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−02−02により産生されるモノクローナル抗体INT−LIC−02−02には反応性であるが、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4048として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−01−28により産生される抗体INT−LIC−01−28には反応性でないことを特徴とする血清型のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌。
【請求項2】
細菌が、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4050として寄託された株から得られたものであることを特徴とする、請求項1記載のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌。
【請求項3】
細菌が、フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4050として寄託された株であることを特徴とする、請求項1記載のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の細菌から得られた単離画分。
【請求項5】
単離画分が、非生炭水化物含有組成物を含むことを特徴とし、該炭水化物が、生ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞において、これらの細胞の外細胞膜との会合状態でも見出される、請求項4記載の単離画分。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の細菌および/または請求項4〜5のいずれかに記載の単離画分を含む、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対する防御のためのワクチン。
【請求項7】
ワクチンが、非生ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)抗原を含有し、少なくとも1×10個のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細胞を含有する又はそれから得られたワクチン接種当たりの抗原用量での全身投与に適した形態であることを特徴とする、請求項6記載のワクチン。
【請求項8】
フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにそれぞれCNCM I−4049およびCNCM I−4048として共に寄託されているハイブリドーマINT−LIC−02−02またはハイブリドーマINT−LIC−01−28により産生される群に属することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)細菌を特定するのに適した抗体。
【請求項9】
フランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4049として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−02−02およびフランス国パリのCollection Nationale de Cultures de Micro−organismes of the Institut PasteurにCNCM I−4048として寄託されたハイブリドーマINT−LIC−01−28よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8記載の抗体を製造するためのハイブリドーマ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528563(P2011−528563A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519139(P2011−519139)
【出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059279
【国際公開番号】WO2010/010055
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】