説明

方杖構造体、システムコラム及び建造物

【課題】システムコラムの軽量化を図りつつ、システムコラムを用いた建造物の強度を維持・向上させることができる方杖構造体を提供するものである。
【解決手段】対向するトラス構造の側面構造体A1、A2を有する四角い筒状の第1構造体1と、対向するトラス構造の側面構造体B1、B2を有する四角い筒状を有し、第1構造体1の一端部に斜め方向に接合された第2構造体2と、対向する三角形側面構造体C1、C2を有し、第1構造体1と第2構造体2の接合部の内側角部に第1構造体1と第2構造体2にわたって接合された第3構造体3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方杖構造体、方杖構造体を備えたシステムコラム及びシステムコラムを備えた建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物では、補強構造体として建造物の屋根、壁、床等の建築構造物の荷重を支えるため、或いは建築現場では、足場として建築用資材の荷重を支えるため、トラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のシステムトラスが建造物の骨組みであるコラム(柱)やビーム(梁)として用いられている。
【0003】
関連する技術として、下記特許文献1、2に記載されたものがある。
【特許文献1】特開2007−262843号公報
【特許文献2】特開2008−8134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、特に建造物では一層の耐震性の向上が要求されており、システムトラス自体の強度向上が要求されるようになってきている。その要求に対して、システムトラスを構成する鋼材そのものを太く、或いは厚くして対応している。
【0005】
しかしながら、システムトラスを構成する鋼材そのものを太く、或いは厚くすると、システムトラスの重量が重くなるため、運搬に時間やコストがかかり、またシステムトラスを組み立てる際にも多大な労力を要する。
【0006】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、システムトラスの軽量化を図りつつ、システムトラスを用いた建造物の強度を維持・向上させることができる方杖構造体、方杖構造体を備えたシステムコラム、及びそのシステムコラムを備えた建造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一観点によれば、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状の第1構造体と、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状を有し、前記第1構造体の一端部に斜め方向に接合された第2構造体と、対向する三角形側面構造体を有し、前記第1構造体と前記第2構造体の接合部の内側角部に前記第1構造体と前記第2構造体にわたって接合された第3構造体とを有することを特徴とする方杖構造体が提供される。
【0008】
また、好ましくは、前記第3構造体の三角形側面構造体はトラス構造を有する。
【0009】
さらに、好ましくは、前記第1構造体、前記第2構造体及び前記第3構造体はそれぞれ、前記対向する側面構造体を連結する横材を有する。
【0010】
また、好ましくは、前記方杖構造体は、前記第1構造体及び前記第3構造体の各一部分と前記第2構造体とで構成された第1部分構造体と、前記第1構造体及び前記第3構造体の各他部分で構成された第2部分構造体とに分割され、かつ前記第1部分構造体と前記第2部分構造体とは接合可能になっている。
【0011】
さらに、好ましくは、前記第1部分構造体の前記第3構造体の一部分における側面構造体は四辺形状を有し、前記第2部分構造体の前記第3構造体の他部分における側面構造体は三角形状を有する。
【0012】
また、好ましくは、前記第1構造体の他端部に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のコラムが連結可能となっており、かつ前記第2構造体の端部に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のビームが連結可能となっている。
【0013】
本発明の他の観点によれば、上記の方杖構造体と、前記方杖構造体と連結する、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のコラムとを有することを特徴とするシステムコラムが提供される。
【0014】
本発明のさらに別の観点によれば、上記のシステムコラムを備えた建造物が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方杖構造体によれば、ともに対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状を有する第1構造体及び第2構造体であって、第1構造体の一端部に第2構造体が斜め方向に接合された第1構造体及び第2構造体と、対向する三角形側面構造体を有し、第1構造体と第2構造体の接合部の内側角部に第1構造体と第2構造体にわたって接合された第3構造体とを有する。
【0016】
この方杖構造体の第1構造体の他端部に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有するコラム(柱)を、また第2構造体の端部に、端部同士をつき合わせて斜め方向に、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のビーム(梁)をそれぞれ連結可能である。したがって、コラム(柱)とビーム(梁)の連結部の内側角部に方杖を備えた建造物を容易に作製できる。
【0017】
即ち、システムトラスに適した方杖部材及びつなぎ部材で構成された立体的な方杖を周囲のコラム(第1構造体)やビーム(第2構造体)とともに方杖構造体として一体化することができる。したがって、一度精密な強度計算をして十分な強度が得られるような形に方杖構造体として一体化しておけば、方杖構造体を備えたシステムトラスを用いた建造物は、容易な作業で組み立てられ、何度組み立てても、再現性良く十分な強度を得ることができる。ビーム及びコラムへの方杖部材やつなぎ部材の取り付け位置の微妙な相違が建造物の強度に大きい影響を与えるため、本発明と異なり立体的な方杖を一体化しない場合には、組み立て現場で、精密な強度計算に基づき方杖部材やつなぎ部材の取り付け位置を一つひとつ確認しつつ精密に溶接する必要があることに鑑みれば、本発明によれば、作業能率を大幅に向上させることができる。
【0018】
特に、コラムに斜め方向にビームを連結できるため、屋根材を載せる建造物最上部のビームと建造物端部のコラムとの連結部に適用できる。建造物の最上部端部では、コラムの片側だけに力がかかり、かつコラムに斜め方向にビームが取り付けられているため構造が複雑で強度が弱くなる傾向にある。これに対して、本発明によれば、立体的な方杖と周囲のコラムなどを方杖構造体として一体化しているため、その部分の強度を向上させることができる。しかも、方杖構造体の三角形側面構造体をトラス構造とすることで、その部分の強度が一層向上する。したがって、強度向上のためにシステムトラス自体の鋼材を太く、或いは厚くしなくてもよくなる。
【0019】
このように、本発明によれば、システムトラスの軽量化を図りつつ、システムトラスを備えた建造物の特に最上部の端部の強度を維持・向上させることができる。したがって、体育館などの建物の補強構造体や文化財等の修理用足場など、内部に大きな空洞を形成する必要があるため柱が少ないが耐震性能の高い建造物を構成する部材として最適である。
【0020】
さらに、方杖構造体を、複数の部分構造体(たとえば、第1部分構造体と第2部分構造体と)に分割することで、完成品で運搬するよりも多くの完成品相当の部分構造体を運搬可能であり、より効率的に、かつ低コストで運搬できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
最初に、システムコラムを用いた建造物(図1、図2)について説明し、続いて、システムコラムに備えられた方杖構造体(図3、図4、図5)と、方杖構造体を備えたシステムコラム(図2、図6)とを順次説明する。
【0023】
(1)本発明の実施形態に係るシステムコラムを用いた建造物
まず、本実施形態に係るシステムコラムを用いた建造物の構成について図1、図2を参照して説明する。図1は、その建造物の側面図である。図2は、システムコラムの部分拡大斜視図である。なお、図1において、コラムやビームのトラス構造は左上でのみ記載しているが、他では省略している。
【0024】
本実施形態の建造物は、図1に例示するように、縦方向に配置される柱に相当する5本の各種のシステムコラム101a、101bと、システムコラム101a、101bに斜め方向に及び横方向に取り付けられてシステムコラム101a、101bの間を連結する各種のシステムビーム(梁)102a、102bとで構成される。図1に示す建造物は、縦横寸法がそれぞれ50m前後に相当するものである。
【0025】
システムコラム101a、101b及びシステムビーム102a、102bは、対向する長方形状の側面構造体を有し、全体として四角い筒状を有する。側面構造体にはトラス構造が形成されている。
【0026】
最上部のビーム102aは、屋根材4を載せるため屋根の形に合わせて斜め方向にコラム101a、101bに取り付けられている。そのほかのビーム102bは水平方向にコラム101a、101bに取り付けられている。システムコラム101a、101bと最上部のビーム102aの連結部の内側角部には必要なところに、対向するトラス構造の三角形状の側面構造体を有する方杖3が設けられ、システムコラム101a、101bとそれらに横方向に取り付けられたシステムビーム102bとの連結部の内側角部には、対向するトラス構造の三角形状の側面構造体を有する方杖3が設けられている。
【0027】
本発明の方杖構造体51は、建造物の端部に配置されたコラム101aと、最上部のビーム102aとの連結部に設けられ、図2に例示するように、縦方向に配置され、コラム101aに連結される第1構造体1と、第1構造体1に斜め方向に接合され、ビーム102aに連結される第2構造体2と、第1構造体1と第2構造体2の接合部の内側角部に接合された三角形状の側面構造体を有する方杖(第3構造体)3とで構成される。本発明の方杖構造体51は、建造物の端部に配置されたコラム101aと最上部のビーム102aとを連結するとともに、第1構造体1と第2構造体2にわたって取り付けられた方杖という構造により、特にコラム片側だけに力がかかりかつコラムに斜め方向にビームが取り付けられて構造が複雑で強度が弱くなる傾向にある建造物の最上部端部の強度を向上させることができる。
【0028】
本発明のシステムコラム101aは、図2に例示するように、本発明の方杖構造体51と、その方杖構造体51の下端部T1に端部同士T1/T3をつき合わせて縦方向に連結されたベースコラム52とで構成される。ベースコラム52は、所定の建造物の高さが得られるように複数の部分コラムをボルトとナットを用いて接合することにより連結して用いられる。
【0029】
以上のように、本発明の建造物によれば、システムトラスのコラム(柱)及びコラムに斜め方向に連結したビーム(梁)の連結部に上述の方杖構造体1を備えることで、特に、建造物の端部最上部の強度の向上を図ることができる。したがって、強度向上のためにシステムトラスに太く、或いは厚い鋼材を用いなくてもよくなる。
【0030】
このように、本発明によれば、システムトラスの軽量化を図りつつ、システムトラスを備えた建造物の特に端部最上部の強度を維持・向上させることができる。したがって、体育館などの建物の補強構造体や文化財等の修理用足場など、内部に大きな空洞を形成する必要があるため柱が少ないが耐震性能の高い建造物を構成する部材として最適である。
【0031】
(2)本発明の実施形態に係る方杖構造体の構造
図3は、本発明の実施形態に係る方杖構造体51を示す斜視図である。図4及び図5はそれぞれ、方杖構造体51を分割して構成された第1部分構造体51a及び第2部分構造体51bを示す斜視図である。
【0032】
その方杖構造体51は、図3に示すように、第1構造体1と、第2構造体2と、第3構造体3とで構成され、縦の寸法が8m前後、横の寸法が5m前後、幅の寸法が0.8m前後となっている。
【0033】
第1構造体1は、対向するトラス構造の側面構造体A1、A2を有する四角い筒状を有し、筒の両端部がそれぞれ上下にくるように縦方向に配置される。第1構造体1の上端面は斜めに傾斜している。側面構造体A1、A2には図4に示す弦材(11a、11b)、(11c、11d)を連結する束材14と斜材15が形成されている。弦材(11a、11b)、(11c、11d)は、断面の肉厚6mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、束材14は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、斜材15は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプが用いられる。なお、図4では図面が見難くなるため側面構造体A2における束材14と斜材15の符号を省略しているが、それらは側面構造体A1における束材14及び斜材15と対称的に配置されている。さらに、対向する側面構造体A1/A2を連結する、図4及び図5に示す横材19及び斜材20を有し、これらは、図4及び図5に示す弦材(11a、11c)、(11b、11d)とともに対向する側面構造体A3/A4を構成している。横材19は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、斜材20は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプが用いられている。各部材の接合は溶接により行われる。
【0034】
第2構造体2は、対向するトラス構造の側面構造体B1、B2を有する四角い筒状を有し、第1構造体1の上端部(一端部)の側部に斜め方向に接合されている。第1構造体1の上端面と第2構造体2の上側側面とは滑らかに繋がり、全体として滑らかな斜めの面を形成している。側面構造体B1、B2には図4に示す弦材(12a、12b)、(12c、12d)を連結する束材16と斜材17が形成されている。弦材(12a、12b)、(12c、12d)は、断面の肉厚6mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、束材16は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、斜材17は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプが用いられる。
【0035】
なお、図4では図面が見難くなるため側面構造体B2における束材16と斜材17の符号を省略しているが、それらは側面構造体B1における束材16と斜材17と対称的に配置されている。さらに、対向する側面構造体B1/B2を連結する、図4に示す横材22を有し、これらは、弦材(12a、12c)、(12b、12d)とともに対向する側面構造体B3/B4を構成している。横材22は、断面の肉厚3.2mm、縦寸法10cm、横寸法10cmの角パイプが用いられている。各部材の接合は溶接により行われる。
【0036】
第3構造体3は、第1構造体1と第2構造体2の接合部の内側角部に第1構造体1と第2構造体2にわたって接合されている。第3構造体3は、対向する三角形側面構造体C1、C2を有し、その三角形側面構造体C1、C2は、図4に示すように、第1構造体1と第2構造体2にわたって斜め方向に接合された方杖部材13と、第1構造体1及び第2構造体2と方杖部材13とをつなぐつなぎ部材18とを有する。それらのつなぎ部材18はトラス構造を形成する。方杖部材13は、断面の肉厚6mm、縦寸法15cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、つなぎ部材18は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプ、及び断面の肉厚4.5mm、縦寸法10cm、横寸法10cmの角パイプが用いられる。
【0037】
なお、図4では図面が見難くなるため三角形側面構造体C2における方杖部材とつなぎ部材の符号を省略しているが、それらは三角形側面構造体C1における方杖部材13及びつなぎ部材18と対称的に配置されている。さらに、対向する側面構造体C1/C2を連結する、図4及び図5に示す横材23を有し、これらは方杖部材13とともに側面構造体C3を構成している。横材23は、断面の肉厚3.2mm、縦寸法10cm、横寸法10cmの角パイプが用いられている。各部材は溶接により接合される。
【0038】
側面構造体A1〜A4、B1〜B4、C1〜C3のトラス構造などは、精密な強度計算をして十分な強度が得られるように形成されている。
【0039】
図2に示すように、第1構造体51の下端(他端)T1に、端部同士T1/T3をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体A1、A2を有する四角い筒状のベースコラム52が縦方向に連結可能となっている。また、第2構造体2の端部T2に、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のビームが端部同士をつき合わせて斜め方向に連結可能となっている。
【0040】
また、方杖構造体51は、第1構造体1及び第3構造体3の各一部分1a、3aと第2構造体2とで構成された図4に示すヘッドコラム(第1部分構造体)51aと、第1構造体1及び第3構造体3の各他部分1b、3bで構成された図5に示すブラケットコラム(第2部分構造体)51bとに分割され、かつヘッドコラム51aとブラケットコラム51bとは図4及び図5に示す弦材11a〜11d及び方杖部材13の分割端に設けられた図3に示す接合部Th、Tbrでボルト・ナットにより接合可能になっている。
【0041】
ヘッドコラム51aの第3構造体3の一部分3aにおける側面構造体C1、C2は四辺形状を有し、ブラケットコラム51bの第3構造体3の他部分3bにおける側面構造体C1、C2は三角形状を有する。
【0042】
ブラケットコラム51bの第1構造体1の他部分1bには図4に示す対角の弦材11a/11d、11b/11cをそれぞれ繋ぐ図5に示すXクロス材21が2箇所形成されている。ヘッドコラム51aとベースコラム2の中間でそれらを連結し支えるのに、特に大きい強度が必要とされるためである。
【0043】
以上のように、本発明の実施形態の方杖構造体51によれば、ともに対向するトラス構造の側面構造体A1/A2、B1/B2を有する四角い筒状を有する第1構造体1及び第2構造体2であって、第1構造体1の一端部に第2構造体2が斜め方向に接合された第1構造体1及び第2構造体2と、対向する三角形側面構造体C1/C2を有し、第1構造体1と第2構造体2の接合部の内側角部に第1構造体1と第2構造体2にわたって接合された第3構造体3とを有する。
【0044】
この方杖構造体51の第1構造体1の他端部T1に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有するコラム(柱)を、また第2構造体2の端部に、端部同士をつき合わせて斜め方向に、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のビーム(梁)をそれぞれ連結可能である。したがって、システムトラスのコラム(柱)とビーム(梁)の連結部の内側角部に方杖部材及びつなぎ部材で構成された立体的な方杖を備えた建造物を容易に作製できる。
【0045】
即ち、システムトラスに適した方杖とその周囲のコラム(第1構造体)やビーム(第2構造体)を方杖構造体として一体化することができる。したがって、一度精密な強度計算をして十分な強度が得られるような形に方杖構造体として一体化しておけば、方杖構造体を備えたシステムコラムを用いた建造物は、容易な作業で組み立てられ、何度組み立てても、再現性良く十分な強度を得ることができる。
【0046】
また、ビーム及びコラムへの方杖部材やつなぎ部材の取り付け位置の微妙な相違が建造物の強度に大きい影響を与えるため、本発明と異なり立体的な方杖を一体化しない場合には、組み立て現場で、精密な強度計算に基づき方杖部材やつなぎ部材の取り付け位置を一つひとつ確認しつつ精密に溶接する必要があることに鑑みれば、一体化した方杖構造体を用いることで、作業能率を大幅に向上させることができる。
【0047】
特に、方杖構造体に斜め方向にビームを連結できるため、屋根材を載せる建造物の端部最上部のコラムとビームの連結部に適用できる。建造物の端部最上部では、コラムの片側だけに力がかかりかつコラムに斜めのビームが取り付けられて構造が複雑で強度が弱くなる傾向にあるが、立体的な方杖とその周囲のコラムやビームを方杖構造体として一体化することができるため、その部分の強度を向上させることができる。しかも、方杖構造体の三角形側面構造体はトラス構造を有するため、その部分の強度が一層向上する。したがって、強度向上のためにシステムトラス自体の鋼材を太く、或いは厚くしなくてもよくなる。
【0048】
このように、本発明によれば、システムトラスの軽量化を図りつつ、システムトラスを備えた建造物の強度を維持・向上させることができる。
【0049】
さらに、方杖構造体を、複数の部分構造体(たとえば、第1部分構造体と第2部分構造体と)に分割することで、完成品で運搬するよりも多くの完成品相当の部分構造体を運搬可能であり、より効率的に、かつ低コストで運搬できることになる。
【0050】
(3)本発明の実施形態に係る方杖構造体を備えたシステムコラムの構造
図2は、本発明の実施形態に係る方杖構造体を備えたシステムコラム101aの構造を示す斜視図である。なお、図2では、ベースコラム52は全体の一部しか記載されていない。図6は、ベースコラム52の構造を示す斜視図である。
【0051】
本発明のシステムコラム101aは、図2に示すように、方杖構造体51と、その方杖構造体51の下端部T1に端部T3により縦方向に連結されたベースコラム52とで構成される。
【0052】
方杖構造体51は、図3に示すような構造を有し、上記(2)項で詳細に説明した。
【0053】
ベースコラム52は、図6に示すように、4つの長尺の弦材11a〜11dが四角柱の側部稜線の相当部にそれぞれ配置された四角い筒状の本体フレームを有し、その本体フレームの側面にトラス構造が形成されている。トラス構造は、本体フレームの対向する側面構造体A1、A2では、それぞれ、弦材(11a、11b)、(11c、11d)同士を連結して設けられた束材14及び斜材15とで形成されている。また、本体フレームの他の対向する側面構造体A3、A4では、トラス構造は、それぞれ弦材(11a、11c)、(11b、11d)同士を連結して設けられた横材19及び斜材20とで形成されている。弦材(11a、11c)、(11b、11d)は、断面の肉厚6mm、縦寸法20cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、束材16は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法10cm、横寸法10cmの角パイプが用いられ、斜材17は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプが用いられる。
【0054】
本体フレームの対向する側面がそれぞれ長方形状の側面構造体A1、A2を構成し、予めこれらが作製され、これらを横材19及び斜材20とで連結してベースコラム52が作製される。たとえば、作業現場には、側面構造体A1、A2の状態で搬送し、作業現場でベースコラム52を組み立てるようにする。これにより、完成品で運搬するよりも多くの完成品相当の側面構造体を運搬可能であり、より効率的に、かつ低コストで運搬することができる。
【0055】
ベースコラム52には、方杖構造体51との連結部近くに対角の弦材11a/11d、11b/11cをそれぞれ繋ぐXクロス材21が形成されている。方杖構造体51を連結し支えるのに、特に大きい強度が必要とされるためである。Xクロス材21は、断面の肉厚4.5mm、縦寸法8cm、横寸法8cmの角パイプが用いられる。
【0056】
以上のように、本発明のシステムコラム101aによれば、コラム(柱)最上部のビーム(梁)との連結部に上述の方杖構造体51を備えることで、システムトラスを用いた建造物の端部最上部の強度向上を図ることができる。また、これにより、強度向上のためにシステムトラス自体の鋼材を太く、或いは厚くしなくてもよくなる。このように、本発明のシステムコラム101aは、軽量化を図りつつ、それを用いた建造物の特に端部最上部の強度の向上を図ることができるので、システムトラスを用いた建造物、特に内部に大きな空洞を形成する必要があるため柱が少ない体育館や、建築用足場或いは文化財等の修理用足場などの建築用部材に最適である。
【0057】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0058】
例えば、方杖構造体51は、図4及び図5に示すように、第1部分構造体51aと第2部分構造体51bに分割しているが、分割せずに一体として形成してもよい。この場合、接合部Th、Tbrは形成されない。また、接合部Th、Tbrが形成されない場合に強度が最適になるようにするため、第1構造体1及び第3構造体3の側面構造体A1、A2、C1、C2の形状を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の方杖構造体を備えたシステムコラムは、軽量化を図りつつ、それを用いた建造物の特に端部のコラムと最上部のビームの連結部の強度の向上を図ることができるので、本発明の方杖構造体及びシステムコラムは、体育館などの建物の補強構造体や文化財等の修理用足場など、内部に大きな空洞を形成する必要があるため柱が少ないが耐震性能の高い建造物を構成する部材として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態であるシステムコラムを備えた建造物を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態である方杖構造体を備えたシステムコラムの構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態である方杖構造体の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態である方杖構造体を分割したヘッドコラム(第1部分構造体)の構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態である方杖構造体を分割したブラケットコラム(第2部分構造体)の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態であるシステムコラムを構成するベースコラムの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 第1構造体
1a 第1構造体の一部分
1b 第1構造体の他部分
2 第2構造体
3 第3構造体(方杖)
3a 第3構造体の一部分
3b 第3構造体の他部分
11a〜11d、12a〜12d、13 弦材
14、16 束材
15、17、20 斜材
19、22、23 横材
21 Xクロス材
51 方杖構造体
51a ヘッドコラム(第1部分構造体)
51b ブラケットコラム(第2部分構造体)
52 ベースコラム
101a、101b システムコラム
102a、102b システムビーム
A1、A2、B1、B2、C1、C2 対向する側面構造体
A3、A4、B3、B4 他の対向する側面構造体
C3 側面構造体
T1、T2、T3、Th、Tbr 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状の第1構造体と、
対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状を有し、前記第1構造体の一端部に斜め方向に接合された第2構造体と、
対向する三角形側面構造体を有し、前記第1構造体と前記第2構造体の接合部の内側角部に前記第1構造体と前記第2構造体にわたって接合された第3構造体とを有することを特徴とする方杖構造体。
【請求項2】
前記第3構造体の三角形側面構造体はトラス構造を有することを特徴とする請求項1記載の方杖構造体。
【請求項3】
前記第1構造体、前記第2構造体及び前記第3構造体はそれぞれ、前記対向する側面構造体を連結する横材を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の方杖構造体。
【請求項4】
前記方杖構造体は、前記第1構造体及び前記第3構造体の各一部分と前記第2構造体とで構成された第1部分構造体と、前記第1構造体及び前記第3構造体の各他部分で構成された第2部分構造体とに分割され、かつ前記第1部分構造体と前記第2部分構造体とは接合可能になっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方杖構造体。
【請求項5】
前記第1部分構造体の前記第3構造体の一部分における側面構造体は四辺形状を有し、前記第2部分構造体の前記第3構造体の他部分における側面構造体は三角形状を有することを特徴とする請求項4記載の方杖構造体。
【請求項6】
前記第1構造体の他端部に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のコラムが連結可能となっており、かつ前記第2構造体の端部に、端部同士をつき合わせて、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のビームが連結可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方杖構造体。
【請求項7】
請求項6記載の方杖構造体と、
前記方杖構造体と連結する、対向するトラス構造の側面構造体を有する四角い筒状のコラムとを有することを特徴とするシステムコラム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムコラムを備えた建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−77628(P2010−77628A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245437(P2008−245437)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)