説明

施用可能な硬化樹脂

本発明は、回路の実装で電磁気/無線周波混信(EMI/RFI)遮蔽及び熱制御をし易くするための方法、材料、及び装置を開示している。特に、改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法、熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法、及びEMI遮蔽及び熱制御装置。更に、特に本発明は、熱及び電気伝導性(又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性)の現場形成完全硬化配合物の粘度を調節し、それによりその配合物を施用可能にするための方法及び装置を明らかにしている。更に、熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法が開示されている。配合物は、粒状充填剤成分と予備硬化したゲル成分との混合物である。この方法は、配合物に剪断力を適用し、それによりその配合物を施用可能にすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年3月28日に出願された米国特許仮出願No.60/786,633の優先権の利益を主張するものであり、その明細書の記載は参照により本明細書の記載の一部とする。
【0002】
本発明は、一般に、電子回路の実装で改良された電磁気/無線周波混信(EMI/RFI)遮蔽及び熱制御(thermal management)のための方法、材料、及び装置に関する。特に本発明は、電子回路の実装でEMI/RFI遮蔽及び熱制御のために用いられる熱及び/又は電気伝導性、現場形成(form-in-place)完全硬化配合物の粘度を調節し、それによりその配合物を施用可能(dispensable)にするための方法、材料、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
テレビ、ラジオ、コンピューター、医療機器、業務機械、通信設備、等のようなモデム電子装置のための回路設計は、益々複雑で小型化されてきている。例えば、数十万個のトランジスタに相当するものを含むそれら及び他の装置のための集積回路が製造されてきている。設計の複雑性は増大するが、一層小さな電子部品を製造し、一層多くのそれら部品を益々小さな領域に詰め込む能力の向上により、装置の大きさは小さくなり続けてきている。
【0004】
電子部品が小さくなり、集積回路板及びチップに一層密に詰め込まれるようになってきたため、設計者及び製造業者は、それら部品により必然的に発生する熱を如何に放散させるかと言う問題に現在直面している。実際、特に多くの電子部品、トランジスタ及びマイクロプロセッサーのような出力半導体部品が、高温で一層損傷又は誤作動し易い事がよく知られている。従って、熱を放散させることができることが、屡々部品の性能の限定因子になっている。
【0005】
集積回路内の電子部品は、装置の囲い内で空気を強制又は対流により循環させることにより慣用的に冷却されてきた。これに関し、対流発生空気流に曝されるパッケージの表面積を増大するため、部品パッケージの構成部分として、又はそれに別個に取付けられるものとして、冷却用ひれが配備されてきた。囲い内で循環する空気の体積を増大するため、更に扇風機も用いられてきた。しかし、電流電子設計に典型的な、高出力回路及び一層小さいが、一層密に詰め込まれた回路については、単純な空気循環では、回路部品を適切に冷却するには不充分であることが屡々見出されている。
【0006】
単純な空気循環により得ることができる熱放散を越えた熱放散は、「冷却板(cold plate)」又は他の熱吸収体又は熱拡散体のような熱放散部材に電子部品を直接取付けることにより行うことができる。放散部材は、特別用途の熱伝導性セラミック又は金属板、又はヒレ付き構造体、又は単に装置のシャーシー又は回路基板でもよい。しかし、電子部品と放散部材との間の通常の温度勾配を越えたかなりの温度勾配が、それら物体の間の界面に熱界面インピーダンス又は接触抵抗として発生する。
【0007】
部品及び熱吸収体の接合熱界面表面は、巨視的又は微視的規模で不規則なのが典型的である。界面表面を合わせると、それらの間にポケット又は空隙が形成され、その中に空気が取り込まれることがある。これらのポケットは、界面内の全接触表面積を減少し、そのことが今度はその界面を通る熱移動面積及び全熱移動効率を減少する。更に、空気は比較的低い熱伝導体であることがよく知られているように、界面内に空気ポケットが存在すると、その界面を通る熱移動速度を減少する。
【0008】
界面を通る熱移動効率を向上させるため、熱吸収体と電子部品との間に熱伝導性電気絶縁性材料のパッド又は他の層を屡々介在させ、全ての表面不規則性の中に充填し、空気ポケットを無くすようにしている。この目的のために最初に用いられていたものは、酸化アルミニウムのような熱伝導性充填剤を充填したシリコーングリース又はワックスのような材料であった。そのような材料は、通常の室温では通常半液体又は固体であるが、高温では液化又は軟化し、界面表面の不規則性に一層よく順応し流れることができる。そのような材料の例は、米国特許第5,250,209号、第5,167,851号、第4,764,845号、第4,473,113号、第4,466,483号、及び第4,299,715号明細書に記載されており、その関連する開示は参照によりその全体を本明細書の記載の一部とする。
【0009】
しかし、当分野でこれまで知られてきた上述の型のグリース及びワックスは、一般に室温では自立性が無いか、さもなければ形状安定性を持たず、熱吸収体又は電子部品の界面表面に適用すると汚くなると考えられる。取扱い易さから屡々好まれているフイルムの形でこれらの材料を与えるには、基体、ウエブ、又は他のキャリヤーを与えなければならず、それが別の界面層を導入することになり、それらの中又は間で付加的空気ポケットが形成されることがある。更に、そのような材料を使用することは、典型的には、エレクトロニクス組立工員により手で適用されるか、又は重ねられることを含み、そのことが製造コストを増大する。
【0010】
別法として、シリコーングリース又はワックスの代わりに、硬化シート材料で置き換えるのが別のやり方である。そのような材料は、配合され、重合体結合剤中に分散した一種類以上の熱伝導性粒状充填剤を含んでいることがある。これらの材料は、硬化シート、テープ、パッド、又はフイルムの形で与えることができる。典型的な結合剤材料には、シリコーン、ウレタン、熱可塑性ゴム、及び他のエラストマーが含まれ、典型的な充填剤には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化硼素、及び窒化アルミニウムが含まれる。
【0011】
上記界面材料の例は、アルミナ又は窒化硼素−充填シリコーン又はウレタンエラストマーであり、それらはパーカー・ハニフィン社(Parker-Hannifin Corporation)により商標名CHO−サーム(THERM)及び商標名サーム−A−GAPとして市販されている。また、熱エネルギーを移動させるための硬化形状安定性シート状熱伝導性材料を開示した米国特許第4,869,954号明細書を参照のこと。その材料は、ウレタン結合剤、硬化剤、及び一種類以上の熱伝導性充填剤から形成されている。酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛を含む充填剤は、約1〜50μ(0.05〜2ミル)の粒径範囲にある。同様な材料は、米国特許第5,679,457号、第5,545,473号、第5,533,256号、第5,510,174号、第5,471,027号、第5,359,768号、第5,321,582号、第5,309,320号、第5,298,791号、第5,213,868号、第5,194,480号、第5,151,777号、第5,137,959号、第5,060,114号、第4,979,074号、第4,974,119号、第4,965,699号、第4,869,954号、第4,842,911号、第4,782,893号、第4,685,987号、第4,654,754号、第4,606,962号、第4,602,678号、及びWO 96/37915明細書に記載されている。ゲル又はゲル状結合剤又はキャリヤー充填剤を含む他の材料は、米国特許第6,031,025号、第5,929,138号、第5,741,877号、第5,665,809号、第5,467,251号、第5,079,300号、第4,852,646号明細書、及びWO 96/05602、WO 00/63968、及びEP643,551明細書に記載されている。これらの参考文献の夫々の開示は参照により本明細書の記載の一部とする。
【0012】
上記型のシート、パッド、及びテープは、米国特許第5,359,768号明細書に記載されている半導体チップ、即ち、ダイスのような電子部品組立体の伝導性冷却で界面材料として用いるのに一般的な容認を得ている。しかし、或る用途では、効果的な熱移動をさせるのに充分な表面を得るために、スプリング、クランプ、等のような強力な固定部材が、界面表面にそれらの材料を順応させる充分な力を適用するのに必要である。実際、或る用途では、高温で液化し、溶融し、又は軟化するグリース及びワックスのような材料が、比較的低い締め付け圧力で界面表面に一層良く順応させることができるものとして好まれ続けている。
【0013】
最近、取扱い易さから室温で自立性で形状安定性であるが、電子部品の作動温度範囲内の温度で液化するか、さもなくば軟化し、界面表面に一層良く順応する粘稠でチキソトロピー性相を形成する相変化材料が導入されていきている。自立性フイルムとして供給されるか、又は加熱して基体表面にスクリーンプリントすることができるこれらの相変化材料は、約35kPa(5psi)の比較的低い締め付け圧力で部品の作動温度内で順応流動する遥かにグリース及びワックスに似た機能を果たし、有利である。そのような材料は、同じ譲受け人に譲渡されている米国特許第6,054,198号及び1998年12月15日に出願され、「相変化界面材料適用法」(Method of Applying a Phase Change InterfaceMaterial)と題する米国特許出願No.09/212,111に更に記載されており、パーカー・ハニフィン社により商標名サームフロー(THERMFLOW)T310、T443、T705、T710、T725、及びT726として市販されている。他の相変化材料は、バーグクイスト社(Bergquist Company)(ミネソタ州ミネアポリス)により商標名HI−フロー(HI-FLOW)として、又サーマゴン社(Thermagon, Inc.)(オハイオ州クリーブランド)により商標名T−PCMとして、又オルカス社(Orcus, Inc.)(カンサス州スチルウェル)により商標名サーマフェイズ(THERMAPHASE)として市販されている。相変化材料/金属箔積層体も、サーマゴン社により商標名T−メイト(T-MATE)として市販されている。
【0014】
典型的な商業的用途のため、熱界面材料は、内側及び外側剥離ライナー及び熱配合物中間層を含むテープ又はシートの形態で供給されていることがある。熱配合物が本来粘着性でないならば、その配合物を熱吸収体の熱移動表面に適用するため、配合物層の片側を感圧性接着剤(PSA)の薄層で被覆してもよい。自動化施用(dispense)及び適用をし易くするため、テープ又はシートの外側剥離ライナー及び配合物中間層は、ダイカット(die cut)して所定の大きさの個々の一連のパッドを形成することができる。このようにして、夫々のパッドは内側剥離ライナーから剥がし、慣用的「ピール・アンド・スティック」(peel and stick)式適用法で接着剤層を用いて熱吸収体に結合することができ、それは熱吸収体製造業者により行われてもよい。
【0015】
熱吸収体又は熱拡散体のような熱放散部材の熱移動表面に接着されるパッド、及び保護カバーを形成する適所の外側ライナーを用いて、配合物層の外側表面、放散部材、及びパッドを一体的組立体として与えることができる。この組立体を装着する前に、外側剥離ライナーを配合物層から取り除き、パッドを電子部品の上に配置する。組立体を適所に固定するためにクランプを用いてもよい。
【0016】
他の材料は、米国特許第5,467,251号及び同じ譲受け人に譲渡されている米国特許第5,781,412号明細書に例示されている。パーカー・ハニフィン社により商標名サーム・ア・フォーム(THERM-A-FORM)として市販されている材料は、熱界面配合物、コーク(caulk)、現場形成(form-in-place)材料、又はカプセル化剤と一般に呼ばれている。これらの材料は、一つ以上のチューブ、容器、等内に詰めたものとして供給され、最も頻繁には、室温又は高温で硬化し、配合物が適用された空隙又は部品内で適所に形成される一液又は二液型又は別の流体型充填反応性系として供給されている。典型的なアプリケーター(applicator)には、カートリッジ又はチューブガン(tube gun)、又は他の施用装置が含まれる。
【0017】
上で例示したように、熱制御で使用するため入手できる種々の材料及び用途に鑑み、熱制御材料でそのような材料及び用途で継続した改良が、エレクトロニクス製造業者にとって有用であろうと予想することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法を開示する。この方法は、配合物の粘度を、その配合物に剪断力を適用することにより減少させることを含む。この粘度減少により配合物を施用可能にし、その配合物は集積回路上に施用され、熱及びEMI制御層を与える。配合物は、予備硬化したゲル成分及び粒状充填剤成分の混合物である。
【0019】
本発明は、回路の実装で電磁気/無線周波混信(EMI/RFI)遮蔽及び熱制御をし易くするための方法、材料、及び装置に関する。特に本発明は、改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法、熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法、及びEMI遮蔽及び熱制御装置に関する。更に、特に本発明は、熱及び/又は電気伝導性(又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性)の現場形成完全硬化配合物の粘度を調節し易くし、それによりその配合物を施用し易くするための方法、材料、及び装置に関する。
【0020】
本発明は、熱及び/又は電気伝導性であるか、又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性の現場形成完全硬化間隙充填剤材料の粘度を調節し、それによりその材料を施用可能にすることを与える幾つかの態様を含む。開示する態様への種々の修正が、当業者には容易に明らかになるであろうが、ここに記載する開示は、本発明及びそれに添付する特許請求の範囲の本質的及び範囲から離れる事なく他の態様及び用途に適用することができるであろう。従って、本発明は、記載した態様に限定されるものではなく、ここに記載する開示と一致する最大の範囲に与えられるべきである。
【0021】
本発明の原理に従う特定の態様を詳細に記述する前に、ここに記載する態様は単に例示のためだけを意図していることが認められるであろう。従って、方法工程及び装置の部品は、ここに与える記載を利用できる当業者に容易に明らかになるような詳細について開示を不明確にしないように、本発明の態様を理解することに関連した詳細を与えるように適当に例示されている。
【0022】
本明細書中、第一及び第二、等のような相関的用語は、単に一つの実体又は作用を別の実体又は作用から区別するために用いられており、そのような実際の関係又は順序関係にあるそのような実体又は作用を必ずしも要求又は意味するものではない。用語「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「からなる(comprised of)」、又はそれらの別の変更用語は、限界のない包含をカバーすることを意図しており、できるだけ包含されることを意図している。例えば、要素のリストを含む方法又は装置は、それらの要素だけを含むのではなく、そのような方法、装置、又はシステムに固有であるが、明白に列挙されていない他の要素も含むことができる。「含む」の中に入る要素は、その要素を含む方法、又は装置中に付加的同等な要素の存在を、一層束縛することなく、除外するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の或る特徴によれば、熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法が与えられる。その方法は、その配合物に剪断力を適用し、その配合物を施用可能にすることを含む。配合物は、粒状充填剤成分と、予備硬化したゲル成分との混合物である。
【0024】
本発明の或る別の特徴に従い、改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法が開示される。その方法は、剪断力の適用により配合物の粘度を調節し、それによりその配合物を施用可能にすることを含む。その配合物は、予備硬化したゲル成分と、粒状充填剤成分との混合物である。処理され、施用可能にされた配合物は、集積回路上に施用され、熱及びEMI制御層を与える。
【0025】
本発明の更に別の特徴に従い、第一領域を有する第一表面;前記第一表面とは反対側の、第二領域を有する第二表面;及び前記第一と第二の表面の中間にあり、それらの間に熱及び/又は電気伝導性通路を与える熱及び/又は電気伝導性の界面;を含み、然も、前記界面は;剪断力を適用することにより前記配合物の粘度を調節し、それにより前記配合物を施用可能にすること;を含む方法を実施することにより調製された熱及び/又は電気伝導性の配合物;を含み、前記配合物が予備硬化したゲル成分と、粒状充填剤成分との混合物である;EMI遮蔽及び熱制御組立体が与えられる。
【0026】
典型的には、半導体部品パッケージにより発生する熱は、周囲の環境へ移動させ、半導体部品パッケージの接合温度を安全な作動範囲内に維持しなければならない。この熱移動過程は、パッケージ表面から、熱を周囲環境へ一層効果的に移動することができる熱拡散体(又は熱放散体)への伝導を屡々含んでいる。熱拡散体又は放散体は、新たに形成されたその熱接合部の熱抵抗を最小にするようにパッケージに注意深く接合される。熱拡散体を半導体パッケージの表面に取付けるためには、二つの商業級表面を互いに緊密に接触させるようにする必要がある。これらの表面は、通常、それら表面に凹型、凸型、又は捩れ型を与えることがある巨視的非平面の上に重ねられた微視的表面粗さを特徴とする。そのような二つの表面を接合すると、高い点でしか接触が起きない。低い点は、一般に間隙と呼ばれている空気が満ちた空洞又は真空窓を形成する。
【0027】
或る態様では、EMI遮蔽及び熱制御組立体の形状及び実施を、本発明の原理に従い開示する。特に、熱及び/又は電気伝導性であるか、又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性の現場形成粘弾性完全硬化間隙充填剤の粘度を調節し、それによりそれらを施用可能にすることを与えるEMI遮蔽及び熱制御組立体を、回路の実装で用いることができる。
【0028】
EMI遮蔽及び熱制御組立体は、第一表面、第二表面、前記第一と第二の表面の中間にある熱及び/又は電気伝導性(又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性)界面からなる。第一表面は第一領域を覆うのに対し、第二表面は、前記第一表面とは反対側の第二領域を覆う。例えば、第一と第二の表面は、熱吸収体、冷却板、回路基板、囲い部分、電子部品、等のような二つの明確な部品の表面である。
【0029】
第一と第二の表面の間に挟まれた間隙が存在する。例えば、この間隙は、熱又はEMI遮蔽されることがある。この間隙は、種々の仕様及び大きさを有する。例えば、間隙は、約0.25〜3.0mm(又は0.010〜0.120inの範囲内)の厚さを有することができる。
【0030】
ここで用いられる用語「界面」とは、EMI遮蔽及び熱制御のために用いられる材料、配合物、又はそれらのどのような種々の組合せでも指している。本発明の範囲を何ら限定するものではないが、例として、界面のための適当な配合物及び材料の同定及び選択に関し考慮することができる或る一般的な仕様のリストを次に与えるが、それらに尽きるものではない:材料の型/等級、材料系(又は化学的/重合体系型)、充填剤材料、形状物/半完成ストック(又は形態/形)、樹脂又は配合物、配合物の種類、特徴及び工業、熱伝導性等のような熱的性質、機械的性質、電気抵抗率及び伝導度のような電気的及び光学的性質、粘度のような処理及び物理的性質、等々。
【0031】
通常、界面として用いられる材料又は配合物は、熱移動表面の間、例えば、マイクロプロセッサーと熱吸収体との間に介在する空隙を、熱移動効率を増大するため粗く不均一に接触した表面に順応させることにより無くす。その材料は、それに置き換えた空気よりも大きな熱伝導度を有するので、接合部を通る抵抗が減少し、それにより部品接合部温度を低下する。熱界面材料は或る範疇、即ち、相変化材料、熱テープ、絶縁パッド、空隙充填剤、及び適所硬化化合物に夫々分類することができることがここで認められるであろう。
【0032】
或る態様によれば、本発明の配合物は、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である。限定としてではなく、例として、予備硬化したゲル成分は、シリコーン樹脂のようなシリコーン重合体を含むことができる。本発明の配合物は、適当な仕様と、有利な属性の組合せを有する。或る態様では、配合物は、熱くなった部品(即ち、部品パッケージ)と熱吸収体(即ち、熱放散体又は拡散体)又は囲いとの間の熱伝導の原因になる。配合物は、表面の間に挟まれた種々の空隙仕様の空隙を充填するのに用いられる。慣用的「現場形成」即ち「FIP」材料とは異なって、チューブ、カートリッジ、又は他の容器の中に詰めてある時に、完全に架橋又は他の仕方で硬化されている。配合物は、チューブの中で完全に硬化され、詰め込まれている事によりさらに硬化又は混合工程を必要とせず、高度に順応性を有し、然も、液体配合物のように施用され、エレクトロニクス組立体中の高度に変化した誤差を満たす。特に、この配合物は、適用した圧力で施用可能であり、充填剤の認め得る程の沈降は示さない。配合物は室温で貯蔵することができ、そのため冷凍された或はどのような他の特別な貯蔵庫の必要性も無くしている。配合物は、施用する前の更に混合する工程、又は施用した後の硬化スケジュールの必要性が無いことにより、配合物は無期限の保存寿命及び有効時間を有し、一成分系として与えることができる。配合物は形状安定性であり、慣用的成形又は押出し帯、パッド、シート、又は他のプレフォームと同様に組立体に対して取扱うことができる。配合物は形状安定性で、柔らかく、高度に順応性を持つので、必要な力の偏向が少ないか、又は実質的に不要である。使用した場合、配合物は自動的施用設備を用いて適用することができ、さもなければ空気又は手で操作されるアプリケーター銃を用いて適用することができる。この配合物の適用し易さは、再操作及び現場での補修状況に対しそれを理想的なものにしている。
【0033】
或る配合で、本発明の配合物は、予備硬化した重合体ゲル成分と、粒状充填剤成分との流動性混合物である。ここで用いられている用語「流動性」とは、混合された成分が代表的流体流動特性を示し、加圧により与えられた流動速度で施用ノズル、針、又は他のオリフィスを通って押出すことができることを意味する。例えば、約620kPa(90psi)の印加圧力で1mm(0.047in)のオリフィスを通って約10cc/分又は約2g/分の流量が観察されることがある。
【0034】
本発明の原理に従う或る態様では、配合物は粘弾性であるか、又は粘弾的性質を有する。ここで用いる用語「粘弾性/粘弾的性質」(さもなければ非弾性として知られている)は、粘性と弾力性の両方の特徴を示す材料について述べたものである。特に、粘弾性は、これらの材料内部での分子再配列による。粘弾性材料又は化合物、例えば、重合体に応力(剪断応力又は剪断力)を適用すると、長い重合体鎖の一部分が位置を変化させることができる。この動き又は再配列は、クリープと呼ばれている。更に、用語「粘弾性材料/配合物」は、弾力性成分と粘稠性成分を有する配合物である。例えば、重合体は、それらの鎖の前記部分が応力に従うため再配列した時でも固体物質のままであり、これが起きると、その配合物に逆応力が生ずる。逆応力は適用応力と同じ大きさを持つが、材料はもはやクリープしない。最初の応力を取り除くと、蓄積した逆応力は重合体を元の形へ戻そうとするであろう。材料がクリープするとそれは接頭語「粘」を与え、その材料が完全に回復すると、それは接尾語「弾性」を与える。
【0035】
本発明の粘弾性配合物は、総形態学的特徴として、予備硬化したゲル成分の連続相と、その連続相中に分散した粒状充填剤成分に関する不連続相を示す。例えば、完全硬化配合物は粘弾性であり、例えば、ほぼ通常の室温、即ち、約25〜30℃で約15×10cpsであり、その組成物はノズル、針、又は他のオリフィスから一般に形状安定性ビーズ、塊、又は他の形態として施用することができる。或る別の態様では、配合物は約7.5×10cpsの粘度を有する。
【0036】
本発明の原理に従い、配合物は、チューブの中で自立しているので形状安定性であり、施用された時、実質的に圧縮力が無くても組立体圧力で変形し、はんだ接合点及びリードに応力を生じない状態にしているので粘弾性である。「形状安定性」とは、基体に適用された量の組成物が、定常状態で少なくとも通常の室温範囲以内の温度で実質的に認めることができない、即ち、25%以下のスランプ、撓み、流動、又は他の流れを示すことを意味する。
【0037】
「硬化」とは、予備硬化したゲル成分が、反応性助剤又は希釈剤を含まないならば、配合物自身が、エージングで通常発生させることができる場合を除き、更に認め得る程の重合、架橋、加硫、硬化、乾燥、又は他の同様な化学的又は物理的変化、例えば、その流動性ゲル形態から固体又は半固体の形態又は相への変化を示さないことを意味する。
【0038】
ここで用いられる用語「完全硬化」とは、配合物が、完全に硬化され、チューブの中に包装されていることにより、更に硬化又は混合を必要としないことを意味する。特に、配合物は施用前の更に混合する工程、又は施用後の硬化スケジュールを全く不要にしている。
【0039】
硬化とは、重合体鎖の架橋により重合体材料の靭性化又は硬化することを指すものと此処では認めることができるであろう。
【0040】
本発明に従い、本発明の配合物を用いて部品及び構造体中の間隙を充填し、それにより熱及び/又は電気伝導性(又は熱伝導性及び/又は電気絶縁性)経路をそれらの間に与える。ここで開示する「熱配合物/界面(熱伝導性)材料」は、部品の間又は完成電子製品内の基体上に熱伝導性層を形成するように設計された材料である。例えば、熱伝導性樹脂、熱可塑物、カプセル化剤、埋め込み配合物、テープ、パッド、接着剤、及びグリースが、熱発生装置(又は熱源)と熱吸収体との間に熱放散を改良するため屡々用いられている。或る態様では、本発明の配合物は約0.7W/m・Kの熱伝導度を有することができる。
【0041】
同様に、「電気伝導性配合物」は、静電防止又は静電気放電(ESD)制御、EMI/RFI遮蔽、熱膜金属化及びデバイスと基板との電気配線のような用途のための高度の電気伝導性(低抵抗率)を有する樹脂である。これに対し「電気絶縁性/誘電体材料」は、電気又は電子部品の間の障壁又は絶縁体を形成するために用いられる材料である。伝導体と伝導性部品との間の電位は、短絡を減少させるため絶縁耐力に基づく材料選択に影響を与えるであろう。誘電率及び損失正接は、絶縁回路通路間の漏洩を最小限にするのに重要なパラメーターである。更に、「EMI/RFI障壁材料」は、電磁気混信(EMI)又は無線周波混信(RFI)からの障壁を与えるように設計された重合体又はエラストマーである。これらの配合物は高度の電気伝導性を有するのが典型的である。
【0042】
ここに記載する「密封材(間隙充填/現場形成/FIPガスケット)」は、結合又は密封される二つの表面の間の間隙又は空間を満たすのに用いられる間隙充填又は下充填(under fill)配合物である。例えば、密封材又はFIP配合物(FIP、液体で粘稠な材料)と同様可撓性シート材料を、継ぎ目の間の間隙を満たすか、又は表面上に流体を含むように使用し、漏洩を防ぎ、望ましくない材料の侵入を防ぐ。
【0043】
本発明の原理に従う或る態様では、配合物は次の仕様を有することができる:約20〜80重量%の粒状充填剤成分の全重量%;約0.7W/m・Kの熱伝導度;約7.5×10cpsの粘度;約−50℃の最低温度からほぼ150℃の最高温度の範囲の作動温度;2.25の比重;150℃で24時間後に、熱重量分析(TGA)による測定で約0.2%の重量損失;約10cc/分の流量;6%の抽出可能シリコーン(即ち、予備硬化したゲル成分)の%;10ミルで、約1000Vac/ミルの絶縁耐力;約1×1014Ωcmの体積抵抗率;及び室温で18カ月の保存寿命。
【0044】
本発明の例示的態様として、配合物は、予備硬化したゲル成分と、熱及び/又は電気伝導性粒子又はその混合物でもよい粒状充填剤との混和物又は他の混合物として、間隙内又は表面に適用した時、適用圧力で流動性であり且つ形状安定性であるか又はそのように挙動するように配合されている。
【0045】
予備硬化したゲル成分は、例えば、熱可塑性ゲル又はシリコーンゲル、又はシリコーン樹脂でもよく、それはオルガノポリシロキサンでもよい。配合物は、現在の成形又は現場形成(FIP)材料によって示されている熱伝導度に匹敵する少なくとも約0.5W/m・K、又は0.7W/m・Kの熱伝導度を示すが、依然として慣用的設備を用いて施用することができるように、全重量で約20〜80%の導入レベルになるように充填されるのが有利であろう。
【0046】
古典的には、予備硬化した又は重合体ゲル成分として有用なゲルには、次のものが含まれる:シリコーンに基づく系、即ち、ポリオルガノシロキサンのようなポリシロキサンのみならず、熱可塑性また熱硬化性でもよい他の重合体に基づく系、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、フルオロポリマー、クロロスルホネート、ポリブタジエン、ブチル、ネオプレン、窒化物、ポリイソプレン、及びブナ−N、共重合体、例えば、エチレン・プロピレン(EPR)、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)、エチレン・プロピレン・ジエン単量体(EPDM)、ニトリル・ブタジエン(NBR)、スチレン・エチレン・ブタジエン(SEB)、及びスチレン・ブタジエン(SBR)、及びそれらの混合物、例えば、エチレン又はプロピレン・EPDM、EPR、又はNBR。
【0047】
ここで用いられている用語「重合体ゲル」は、或る意味では、連続的重合体相又は網状組織を含んでいてもよい流体増量重合体系の慣用的意味を有し、それは化学的には、例えばイオン性、共有結合性、又は物理的に架橋されていてもよく、シリコーン等のような油、可塑剤、未反応単量体、又は網状組織を膨潤させるか、又はさもなければその間隙を満たす他の流体増量剤でもよい。そのような網状組織の架橋密度及び増量剤の割合は、ゲルの柔らかさ及び他の性質のようなモジュラスを調整するように調節することができることに注意しなければならない。用語「重合体(又は任意選択的にシリコーン)ゲル」も、別法として、ゲルと同様な粘弾的性質を有する擬ゲル又はゲル状物として広く分類することができる材料で、比較的長い架橋鎖により形成された「ゆるい(loose)」架橋網状組織を有するが、例えば、流体増量剤を欠いているような材料も包含するものと理解すべきである。
【0048】
シリコーンゲルに関し、特にヌシル・テクノロジー(NuSil Technology)(カリフォルニア州カーピンテリア)により「GEL−8100」と言う名称で市販されているもののようなソフト・シリコーンゲルを挙げておく。硬化した状態のそのようなゲルは、ASTM D217に従って、約100×10−1mmの浸透値を有する。他のソフト・シリコーンゲルは、ダウ・コーニング(ミシガン州ミドランド)により「3−6636」の名称で市販されている。
【0049】
本発明の原理に一致する或る態様に従い、配合物の充填剤成分を用いて、硬化中に、予備硬化したゲル成分を充填する。繰り返すが、配合物は、予備硬化したゲル成分の連続相中に間分散した粒状充填剤成分に関する不連続相を示す。充填剤成分は、適当な材料特性を持つことができる。例えば、充填剤成分のために用いられる材料は、酸化物、窒化物、炭化物、二硼化物、黒鉛、及び金属粒子、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。充填剤成分は、0.25〜250mm(約0.01〜10in)の平均粒径を有することができる。充填剤成分は、本発明の原理に従い熱的及び/又は電気的性質を有することができる。限定するためではなく、例として、充填剤成分は、間隙が熱的である場合には、熱伝導性することができる。更に、充填剤成分は、少なくとも約20W/m・Kの熱伝導度を有するであろう。これとは対照的に、充填剤成分は、間隙がEMI/RFIによる場合には電気伝導性又は絶縁性にすることができる。
【0050】
本発明の或る特徴に従い、予備硬化したゲル成分は、一種類以上の熱伝導性粒状充填剤を含むことがある充填剤成分を導入することにより熱伝導性にされる。これに関し、予備硬化したゲル成分は、一般に熱伝導性充填剤が中に分散されている結合剤を形成する。充填剤は、目的とする用途に望ましい熱伝導性を与えるのに充分な割合で含有され、一般に配合物の全重量につき20〜80%で導入されるであろう。充填剤の粒径及び形は、本発明の目的にとって重要ではない。これに関し、充填剤はどのような一般的な形をもっていてもよく、中空又は非中空球状又は微小球フレーク、板状子、不規則な形、又は繊維状、例えば、細断されるか粉砕された繊維又はウィスカーを含めて「粒状」として広く言及されるであろうが、均一な分散及び均質な機械的熱的性質確実に与えるように粉末であるのが好ましいであろう。充填剤の粒径又は分散度は、0.25〜250mm(約0.01〜10ミル)の範囲にあるであろうが、それらは、直径、評価された直径、長さ、又は粒状物質の他の大きさでもよいが、更に充填される間隙の厚さによって変化するであろう。もし望むならば、充填剤は、配合物が誘電体か又は電気絶縁性及び熱伝導性の両方でもよいように、電気的に非伝導性になるように選択してもよい。別法として、充填剤は、電気絶縁が不必要な用途では電気伝導性であろう。
【0051】
本発明の或る別の特徴に従い、予備硬化したゲル成分は、電気伝導性充填剤を導入することにより電気伝導性にされ、その充填剤は、熱伝導性充填剤に加えて、即ち、それとの混合物として、又はその代わりに与えられてもよい。また、選択された特定の充填剤により、そのような充填剤は、熱伝導性及び電気伝導性の両方の充填剤としての機能を果たしてもよい。
【0052】
適当な熱伝導性充填剤には、一般に酸化物、窒化物、炭化物、二硼化物、黒鉛、及び金属粒子、及びそれらの混合物が含まれ、特に窒化硼素、二硼化チタン、窒化アルミニウム、炭化珪素、黒鉛、金属、例えば、銀、アルミニウム、及び銅、金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、及び酸化アンチモン、及びそれらの混合物が含まれる。そのような充填剤は、特徴として約20〜50W/m・Kの熱伝導度を示す。経済的理由から、酸化アルミニウム、即ち、アルミナが用いられるが、熱伝導性を改良する理由からは窒化硼素が一層好ましいと考えられるであろう。熱伝導性充填剤を導入した配合物は、ASTM D5470により少なくとも約0.5W/m・Kの熱伝導度及び同じくASTM D5470により約6℃・cm/W(1℃・in/W)より小さい熱インピーダンスを示してもよいが、配合物層の厚さにより変化するであろう。
【0053】
充填剤は、目的とする用途に対し望ましいレベルの電気伝導性及びEMI遮蔽効果を間隙内に与えるのに充分な割合で組成物に導入する。殆どの用途に対し、約10MHz〜10GHzの周波数範囲に亙って、少なくとも約10dB、通常少なくとも約20dB、好ましくは少なくとも約60dB以上のEMI遮蔽効果が許容可能であると考えられる。そのような効果は、任意選択的に配合物の全体積また重量に基づき、一般に約10〜80体積%また50〜90重量%の間にある充填剤の割合及び約1Ωcm以下の体抵抗率又は体積抵抗率に置き換えられるが、フェライト又はニッケル被覆黒鉛のようなEMI吸収性又は「高減衰性(lossy)」充填剤を用いることにより、匹敵するEMI遮蔽効果を一層低い伝導度レベルで達成することができることが知られている。また、最大遮蔽効果は、電気伝導性又は他の充填剤材料の量及びフイルムの厚さに基づき変化するであろうことも知られている。
【0054】
考慮されている特定の用途の必要条件により、配合物の配合中に付加的充填剤及び添加剤を含有させてもよい。そのような充填剤及び添加剤には、慣用的湿潤剤又は表面活性剤、顔料、染料及び他の着色剤、不透明化剤、発泡防止剤、静電防止剤、カップリング剤、例えば、チタネート、鎖伸長性油、粘着性化剤、顔料、潤滑剤、安定化剤、乳化剤、酸化防止剤、濃化剤、及び/又は難燃材、例えば、三水和アルミニウム、三酸化アンチモン、金属の酸化物及び塩、挿入黒鉛粒子、燐酸エステル、酸化デカブロモジフェニル、硼酸塩、燐酸塩、ハロゲン化化合物、ガラス、シリカ(ヒュームドシリカ又は結晶質シリカでもよい)、珪酸塩、雲母、及びガラス又は重合体微小球が含まれるであろう。典型的には、これらの充填剤及び添加剤は混合されるか、さもなければ配合物と混合され、その全体積に基づき約0.05〜80%以上を占めるであろう。
【0055】
好ましい態様として、本発明の配合物を製造する方法は、非珪素材料を剪断力を適用することにより混合することを含み、その材料の粘度を減少させ、それにより配合物を施用可能にすることを含む。例えば、エポキシ及びアクリルのような非珪素材料の多くは、本発明の配合物で用いられる珪素ゲルの軟粘弾性特性を持たない。そのような場合、その材料を、硬化型から粘度を剪断減少し、それによりそれを施用可能にする。
【0056】
或る態様として、配合物は、ロールミル又は他のどのような慣用的混合装置ででも、オリゴマー、プレポリマー、等のような一種類以上の樹脂又は他の重合体、任意選択的に架橋剤、触媒、及び増量剤(即ち、充填剤)、及び選択された添加成分の混合物として製造することができる。本発明の範囲をなんら限定しようとするものではないが、例として、配合物は、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物として製造してもよい。
【0057】
混合中又は混合の後で、混合物を更に重合(又は硬化)にかけ、それにより樹脂、オリゴマー、又はプレポリマーを流体又は非流体増量剤重合体ゲル成分へ転化するようにしてもよい。熱可塑性/ホットメルト、熱硬化性(架橋/加硫)、室温硬化/加硫、UV/輻射線硬化(電子ビーム、光によるものも)、単成分系、二成分系、等のような硬化型/技術の組合せが当分野で知られている。例えば、熱付加重合(即ち、架橋/加硫)系の場合のように、混合物を加熱してもよい。別法として、大気湿分の影響下(又は加水分解)で、又は紫外(UV)線、電子ビーム(EB)、又は無酸素硬化のような他の硬化機構への露出により、化学的又は物理的ゲル化反応を行なってもよい。
【0058】
更に、用いる化学的/重合体系により、無機又は有機溶媒又は他の希釈剤又はレオロジー剤を、使用する適用装置又は方法のために調節することができる最終的硬化配合物の粘度を調節するため添加してもよい。例えば、プラスチック化合物、エラストマー、樹脂、又は重合体は、シリコーン化学系に基づかせることができる。
【0059】
本発明の或る態様に従い、最終的配合物は粘弾性であるか、又は粘弾的性質を有する。粘弾性配合物は、総形態学的特徴(gross morphological aspect)として、予備硬化したゲル成分についての連続相と、その連続相中に分散した粒状充填剤成分についての不連続相とを示す。
【0060】
或る非ニュートン配合物又は材料の適用剪断力に対する反応により、非ニュートン配合物又は材料は、二つの型、即ち、夫々チキソトロピー型及びレオペクチック(rheopectic)型に分類することができる。特に、チキソトロピー性配合物又は材料は、剪断速度のステップ状変化に導入すると有限の時間量で平衡粘度に到達する剪断流動化(shear-thinning)配合物又は材料である。例えば、剪断力の適用により、チキソトロピー性配合物又は材料は、一層流動し易く(thinner)、即ち、粘性が低くなり、それにより粘度の減少がもたらされる。換言すれば、チキソトロピー性配合物又は材料は、それらのチキソトロピー性により一層流動し易くなるか、又は粘性が低くなることにより剪断力に反応する。チキソトロピーは、或る非ニュートン配合物又は材料が粘度に時間依存性変化を示す性質である。即ち、流体が剪断力により剪断を受ける時間が長くなるほど、その粘度は低くなる。
【0061】
この特性とは対照的に、レオペクチック配合物又は材料は、剪断力の適用により濃化又は一層粘稠になる。このように、レオペクチー又はレオペクシーは、或る非ニュートン流体が粘度に時間依存性変化を示す稀な性質である。即ち、流体が剪断を受ける時間が長くなるほど、その粘度は高くなる。或る潤滑剤のようなレオペチック流体は、振ると濃化又は固化する。
【0062】
或る態様では、熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法、及び改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法が開示される。
【0063】
最初に、その方法は、任意選択的に流体(即ち、粘稠性)形状安定性(即ち、弾力性)配合物の供給を与える初期工程を含む。特に、配合物の供給を与える工程は、日常的な仕事の分類、例えば、実在するものの同定、選択、及び実施、或は設計、構成、新規な方法の遂行、配合物を施用するための装置及びシステムを含む。本発明の原理に従い、適当なカートリッジ及び注射器システムを選択し、用いる、特にこれらのカートリッジシステムは、適当な仕様を持っていてもよい。カートリッジシステムは、取り外し可能な施用ノズル末端キャップ及びプランジャーを含む。これらのカートリッジシステムは、配合物を施用するか、又は注射器システムに充填するのに用いることができる。それに対し、注射器システムは、予め装填した細くなった先端をもつ注射器でもよく、それらは予め取付けられた円滑な流動ワイパーピストンをもって提供されている。本発明の範囲をなんら限定するものではないが、例として、任意選択的に選択され、ここで用いてもよい空圧ディスペンサーシステムは、セムコ(Semco)からの32オンスカートリッジ、即ち、セムコ・シーラント・ガン(Semco Sealant Gun)(セムコ型番号550、セムコ部品番号231551)及び/又はセムコからの30cc注射器、即ち、セムコ・セマティック・シリーズ(Semco Semmatic Series)1800、1900、又は2000空気施用システム(セムコ・シリーズ1800、セムコ部品番号233356;セムコ・シリーズ1900、セムコ部品番号233359;セムコ・シリーズ2000、セムコ部品番号233100)である。30cc注射器の小さなサイズが、それらを再作動及び/又は野外設置に対し望ましくしていることに、ここで注意しなければならない。別法として、一層大きな32オンスカートリッジは、一般に、カートリッジの再装填を最小限に維持できる場合、店舗フロアーを製造するために望ましいが、それに限定されるものではない。
【0064】
カートリッジ又は注射器システムのどちらかと共に用いるための空圧システムの選択に続き、本方法は、配合物の選択された容器からせ末端キャップを取り外す工程を含んでいてもよい。処理中にピストンが外れないように、予防策を講じてもよい。
【0065】
次に、本方法は、配合物の選択された容器を、空気システム製造業者のカートリッジ/注射器システムの設置に関する操作マニュアルにより指示されているように、空気システム中に設置する工程を含んでいてもよい。カートリッジが適切に設置され、オペレーター末端ディスペンサーが配合物を手動で又は自動的に施用するように準備又は設定されるまで、空気供給源に空気システムを接続しないように防止策を講じてもよい。
【0066】
続いて、施用先端を、希望の直径まで切断することができる。直径は、必要な流量で送れる大きさにすべきであることはここで認められねばならない。どのくらいの直径の先端が必要になるかを決定するのに役立つように、幾つかの流量値を下に列挙する。施用中に最大量の材料を送り出すためには、ノズルを、最短の長さで最大のオリフィスが与えられるように切断すべきである。次の例は、ディスペンサー先端をどこまで切り戻したらよいかを計量するのに用いることができる:0.150inの直径のオリフィスは、10cc/分の流量で送れるであろう。
【0067】
次に、空気ディスペンサーシステムを空気供給源に接続又は連結し、空気供給源を100psiに設定する。更に、ディスペンサー先端を、配合物が適用されなければならない表面上に設定する。注射器はその表面に対し約30°の僅かな角度で保持されなければならないことが推奨されている。
【0068】
連結後、空気ディスペンサーシステムを空気供給源に接続するか又は連結し、表面上に配合物が流すことができるようにするため、空気圧力を適用する。或る態様として、配合物をポンプで送り、剪断してその粘度を低下する。一つの特定のポンプを適用して、配合物をディスペンサーから7.5×10cpsの供給粘度でポンプにより送る。配合物が移動し、ポンプによりディスペンサーシステムを通って送られたならば、それは、その部分を1.5×10cpsに剪断する。
【0069】
或る態様では、本発明の配合物は、それが総形態学的特徴として、予備硬化したゲル成分についての連続相と、その連続相中に分散した粒状充填剤成分についての不連続相とを示すと言う事実によりチキソトロピー性/半固体相を維持する。典型的には、粘度は、チキソトロピー性配合物の場合には時間と共に低下する。チキソトロピー性配合物及び材料の幾つかの例は、シリカゲル、グリース、インク、ミルク、マヨネーズ、カルボキシメチルセルロース、ベントナイト、等である。一般的規則として、粘度は剪断速度に依存する(逆比例する)。即ち、粘度=剪断応力/剪断速度。チキソトロピー性配合物は、流動し易くなるか、又は粘性が低くなることにより、即ち、剪断による粘度減少により剪断力(又は剪断)に反応する。チキソトロピー性配合物は、剪断力を除けば、それらの元の粘度に戻る。即ち、それらは粘弾性である。ポンプで送ることは剪断力を生ずることに此処で注意しなければならない。
【0070】
操作で、多量の配合物を、圧力を印加して、熱吸収体、冷却板、回路基板、囲い部材、又は電子部品のような回路部品の下塗りした、又は下塗りしてない表面上に施用する。特に、回路部品の表面は、プラスチック、金属、又はセラミック材料を含むことがある。これに関し、カートリッジ、チューブ、又は他の容器に一成分系として詰めた配合物供給源を、ヘッドに結合されたホース又は他の導管を経て接続する。ヘッドはノズルを有する。ノズルは、今度はオリフィスを有する。
【0071】
印加圧力の下で計量された量の配合物をノズルから、処理中の前記表面上に放出することができる。限定するためではなく、例として、圧力は、手動で、或いは銃又は注射器を用いて適用することができ、或いは調合シリンダー(proportioning cylinder)、ポンプ、等のような空気又は無気計量装置により発生させることができる。適用した時、配合物主要部は、表面張力、粘着性、又は他の凝集力によるなどして、表面に実質的に自己接着することができる。グリース等とは異なり、配合物主要部は、配合物が適用される部分又は部品を、組立体として、又は他の仕方で取扱うことができるように、通常の室温で形状安定性を持つことが有利であろう。更に、表面に結合することができる慣用的現場形成配合物とは異なり、本発明の配合物は、再操作又は補修のため表面から容易にクリーニングすることができるか、又は他の仕方で除去することができる。
【0072】
本発明には、此処に含まれている概念から離れる事なく或る変化を行うことができることは予想されることであるが、上の記載に含まれる全ての事項は、単に例示として解釈され、限定する意味をもたないことを意図している。此処に引用した全ての優先権文書を含めた全ての文献は、言及により明白に本明細書の記載の一部とする。本発明は、種々の修正及び変化形態を受けることができるが、特定の態様を例として此処に示し、詳細に記述してきた。しかし、本発明は、開示した特定の形態に限定されるものではないことは、理解されるべきである。むしろ、本発明は、次に添付する特許請求の範囲により定められる本発明の本質及び範囲内に入る全ての修正、同等のもの、及び変更を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面及び/又はEMIシールドとして用いるための配合物を処理する方法であって、
前記配合物に剪断力を適用し、それにより前記配合物の粘度を調節し、前記配合物を施用可能にすること、
を含み、然も、前記配合物は、粒状充填剤成分と予備硬化したゲル成分との混合物である、方法。
【請求項2】
配合物が、全重量に基づき20〜80%のゲル及び充填剤成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充填剤成分が、0.25〜250mm(約0.01〜10in)の平均粒径を有する、請求項1に記載の方法
【請求項4】
配合物を、第一と第二の表面の中間にある間隙を満たすのに用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配合物が、間隙の大きさを変えるために施用可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
間隙が、約0.25mm(又は、0.010〜0.120inの範囲内)の厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
間隙が熱的間隙である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
熱的間隙が、熱伝導性である充填剤成分を有する配合物で満たされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
充填剤成分が、少なくとも約20W/m・Kの熱伝導度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
充填剤成分を、酸化物、窒化物、炭化物、二硼化物、黒鉛、及び金属粒子、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
配合物が、0.7W/m・Kの熱伝導度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
配合物が、約7.5×10cpsの粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
配合物が、約−50℃の最低温度から約150℃の最高温度の範囲の作動温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
配合物が、2.25の比重を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
配合物が、150℃で24時間後に、熱重量分析(TGA)による測定で約0.2%の重量損失を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
配合物が、約10cc/分の流量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
配合物が、約6%の抽出可能シリコーンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
配合物が、10ミルで、約1000Vac/ミルの絶縁耐力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
配合物が、約1×1014Ωcmの体積抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
配合物が、室温で18カ月の保存寿命を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
間隙が、EMI遮蔽間隙であり、充填剤成分が電気伝導性である、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
配合物が、約10MHz〜約10GHzの周波数範囲に亙って、少なくとも約60dBのEMI遮蔽効果を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
重合体ゲル成分が、シリコーン重合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
改良された熱及びEMI制御を具えた集積回路を実装する方法であって、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
前記配合物を、集積回路上に施用し、熱及びEMI制御層を与えること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法。
【請求項25】
改良された、熱及びEMI制御のための集積回路実装方法であって、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法。
【請求項26】
改良されたEMI遮蔽及び熱制御材料であって、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法を実施することにより製造された材料。
【請求項27】
改良された熱及び/又は電気伝導性密封材であって、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法を実施することにより製造された密封材。
【請求項28】
EMI遮蔽及び熱制御組立体において、
第一領域を有する第一表面;
前記第一表面とは反対側の、第二領域を有する第二表面;及び
前記第一と第二の表面の中間にあり、それらの間に熱及び/又は電気伝導性通路を与える熱及び/又は電気伝導性界面;
を含み、然も、前記界面が、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法を実施することにより製造された熱及び/又は電気伝導性配合物を含む組立体。
【請求項29】
配合物が完全に硬化されており、それにより自動化施用のための混合と硬化過程の必要性が除かれている、請求項28に記載の組立体。
【請求項30】
重合体ゲル成分がシリコーン重合体を含む、請求項28に記載の組立体。
【請求項31】
重合体ゲル成分がシリコーン樹脂である、請求項30に記載の組立体。
【請求項32】
配合物のために選択された樹脂が、前記配合物の施用性を可能にする架橋構造を有する、請求項31に記載の組立体。
【請求項33】
樹脂が、分岐鎖籠型オリゴシロキサン構造により形成された種類のシリコーン材料である、請求項32に記載の組立体。
【請求項34】
適用中、配合物がポンプで送られ、剪断される、請求項28に記載の組立体。
【請求項35】
ポンプによる送出及び剪断により、配合物に剪断力が作用し、それによりその粘度が低下する、請求項34に記載の組立体。
【請求項36】
配合物が、流動し易くなるか、又は粘性が少なくなることにより剪断力に反応し、それによりその粘度の低下がもたらされる、請求項35に記載の組立体。
【請求項37】
配合物が、粘弾的性質を有する、請求項28に記載の組立体。
【請求項38】
配合物が、その粘弾的性質により、剪断力を除去するとその元の粘度に戻ることができる、請求項37に記載の組立体。
【請求項39】
配合物をディスペンサーから、任意選択的に/好ましくは7.5×10cpsの供給粘度でポンプにより送り、それにより配合物を1.5×10cpsに剪断する、請求項35に記載の組立体。
【請求項40】
配合物が、非珪素材料を含む、請求項28に記載の組立体。
【請求項41】
非珪素材料が、エポキシ、アクリル等からなる群より選択される、請求項40に記載の組立体。
【請求項42】
非珪素材料が、シリコーンゲルの粘弾的性質を持たない、請求項40に記載の組立体。
【請求項43】
方法が、剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすることを含む、請求項28に記載の組立体。
【請求項44】
EMI遮蔽及び熱制御組立体において、
第一領域を有する第一表面;
前記第一表面とは反対側の、第二領域を有する第二表面;及び
前記第一と第二の表面の中間に介在させた改良された熱及び/又は電気伝導性密封材;
を含み、然も、前記密封材が、
剪断力の適用により配合物の粘度を低下させ、それにより前記配合物を施用可能にすること;
を含み、然も、前記配合物が、予備硬化したゲル成分と粒状充填剤成分との混合物である、方法を実施することにより製造されたものである組立体。

【公表番号】特表2009−531526(P2009−531526A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503018(P2009−503018)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/007864
【国際公開番号】WO2007/123645
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(597175961)パーカー.ハニフィン.コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】