説明

施肥装置

【課題】メンテナンス及び清掃作業が効率良く行える施肥装置を提供する。
【解決手段】肥料を収容するホッパ133と、ホッパ133の下部に配設され肥料を所定量ずつ繰出す繰出部136を有する上部施肥機130と、前記繰出部136より繰出される肥料を施肥部152近傍まで案内する施肥搬送部151を有する下部施肥機150と、前記上部施肥機130と下部施肥機150を支持する施肥フレーム110と、前記上部施肥機130の左右一側に設けられる回動支持軸162を枢支する枢支ブラケット161と、前記回動支持軸162または前記施肥フレーム110の何れか一方に固定される複数の爪201aを有する爪体201と、前記回動支持軸162または前記施肥フレーム110の何れか他方に取付けられて前記爪体201と係合可能とされる係止部材202とから成る係止機構200を備え、上部施肥機130を係止機構200により所定角度で保持可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の作業機械に具備され、圃場に肥料を供給する施肥装置の技術に関し、特に施肥装置内の肥料の排出及び清掃の効率化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機等の作業機に搭載される施肥装置は、肥料を貯留するホッパと、貯留された肥料を繰出す施肥繰出機構と、繰出された肥料を圧送する施肥送機を備えているものがある。
特許文献1に示す施肥装置では、前記施肥装置を田植機に搭載し、作業車本機に対して機体幅方向に沿って移動可能に連結された、施肥装置を支持する可動部材を備えている。一方、作業車本機に対して相対移動不能とされた固定側レールも、さらに備えている。前記可動部材は可動側レールを有し、この可動側レールが前記固定側レールに機体幅方向に沿って移動可能に連結されると共に施肥装置を支持している。
よって、施肥装置上部を機体外側方へ車輌幅方向に沿って移動可能に構成されその下方よりメンテナンス等を行う施肥機の技術は公知となっている。
【特許文献1】特開2007−75069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の施肥機においては、施肥機を側方へスライドさせて排出口から残留肥料を排出できるようにしているが、施肥装置毎に設けた排出口より排出する必要があるため、面倒な排出作業となっていた。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、施肥後に不要となった肥料を施肥装置から容易に取出すことができ、メンテナンス及び清掃作業が効率良く行える施肥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、肥料を収容するホッパと、該ホッパの下部に配設され肥料を所定量ずつ繰出す繰出部とを有する上部施肥機と、前記繰出部より繰出される肥料を施肥部近傍まで案内する施肥搬送部を有する下部施肥機と、前記上部施肥機と前記下部施肥機を支持する施肥フレームと、前記上部施肥機の左右一側に設けられる回動支持軸を枢支する枢支ブラケットと、前記回動支持軸または前記施肥フレームの何れか一方に固定される複数の爪を有する爪体と、前記回動支持軸または前記施肥フレームの何れか他方に取付けられて前記爪体と係合可能とされる係止部材と、から成る係止機構を備え、上部施肥機を係止機構により所定角度で保持可能とするものである。
【0007】
請求項2においては、前記係止部材は、レバーの一端に係止爪を形成し、他端に係止部材を係止方向に付勢する付勢部材の取付部と操作部を形成し、中央部に係止部材を回動自在に枢支する枢支部を形成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、上部施肥機の回動を段階的(所定角度)に行うことができるため、残留肥料の量や排出速度等に合わせて上部施肥機の角度を設定することが可能となる。また、作業者が上部施肥機を支えることなく、上部施肥機の予期せぬ転倒によって、作業者が負傷したり、上部施肥機の分離位置より設置位置への急激な戻りによる施肥装置等破損したりすることを防ぐことができる。
【0010】
請求項2においては、上部施肥機と下部施肥機が分離位置から設置位置に、容易に位置変化可能となる。上部施肥機の重心が、回動支持軸よりも外方に位置した場合でも、安定した保持を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る乗用田植機の全体的な構成を示した側面図、図2は施肥機周辺を示した側断面図、図3は施肥機周辺を示した後方斜視図、図4は施肥機周辺を示した正面図、図5は施肥機を示した側面図、図6は係止機構周辺を示した前方斜視図、図7は上部施肥機の設置位置における係止機構周辺を示した部分正面図、図8は上部施肥機の分離位置における係止機構周辺を示した部分正面図、図9は上部施肥機が最回動された分離位置における係止機構周辺を示した部分正面図である。
【0012】
次に、本発明に係る施肥装置の実施の一形態である施肥装置100を具備する四条用の乗用田植機(以下、単に「田植機」と記す)1について説明する。
なお、以下では説明上、図中の矢印Aの方向を「前方」と定義し、この前方に向かって左右及び後方を決定する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態における田植機1は、主に走行装置10、昇降装置30、植付装置40、施肥装置100等を備えている。
【0014】
田植機1の走行装置10は、主に車体フレーム11、前輪12・12、後輪13・13、エンジン14、ボンネット15、車体カバー16、ダッシュボード17、操向ハンドル18、運転席19、支柱フレーム20等を備えている。
【0015】
田植機1の骨格を成す車体フレーム11は、車体フレーム11両側の前部を前輪12・12、後部を後輪13・13によって支持されている。車体フレーム11の前部には、エンジン14が搭載されており、エンジン14を覆うようにボンネット15が配設されている。
【0016】
ボンネット15の両側及びその後方には、車体フレーム11の上面を覆うように車体カバー16が配置されている。
車体カバー16は、前低後高の略階段状に形成され、車体カバー16の前部を、作業者が田植機1に乗り込む際のステップとしている。
【0017】
ボンネット15の後部には、田植機1を操作するレバーやスイッチ等の操作装置を具備するダッシュボード17が配置されている。また、田植機1を操向するための操向ハンドル18は、ボンネット15の上方に突出するよう配設されている。
操向ハンドル18の後方、車体フレーム11の前後略中央上部には、作業者が着座するための運転席19が配置されている。
【0018】
車体フレーム11の後部両側には左右一対の支柱フレーム20が立設され、該支柱フレーム20の上部に図示しない横梁フレームが横設されている。該支柱フレーム20と横梁フレーム上に後述する施肥フレーム110が固設されている。
【0019】
そして、走行装置10の後方には、昇降装置30が配置されており、田植機1は昇降装置30によって、後述する植付装置40を昇降自在に連結している。
【0020】
植付装置40は、圃場に苗を植え付けるものであり、主に苗載台41、植付部42(ロータリケース44、植付爪45)、フロート43等を備えている。
【0021】
苗載台41は、車体フレーム11の後方に、前高後低に傾斜するように配設され、その苗載台41後方下部に植付部42が配置されている。
植付部42は、エンジン14からの駆動力で回転するロータリケース44、ロータリケース44に取付けられ苗を圃場に植付ける植付爪45等を備えている。
【0022】
フロート43は、植付装置40を支えて圃場を整地するものであって、苗載台41の下方に配置されている。
【0023】
このようにして、田植機1は、前進走行とともに苗載台41を横送り機構により左右に往復運動(摺動)させ、この往復運動に同期させてロータリケース44と植付爪45を駆動して、各条に一株分の苗を掻き取りながら、連続的に植付け作業を行う。
【0024】
以下では、本発明に係る施肥装置の実施の一形態である施肥装置100について説明する。なお、本実施形態において、施肥装置100は、田植機1に対応した四条用であるものとして説明するが、本発明は当該条数を限定するものではない。
【0025】
図4に示すように、施肥装置100は、植付装置40による苗の植え付けに合わせて、圃場に肥料を供給するものである。施肥装置100は、運転席19の後方かつ植付装置40の前方に配置される。施肥装置100は、主として施肥フレーム110、第一動力伝達機構120、第一上部施肥機130、第二上部施肥機140、下部施肥機150、第一回動機構160、第二回動機構170、連結機構180、解除機構190等を具備する。
【0026】
図2から図4までに示すように、施肥フレーム110は、第一上部施肥機130、第二上部施肥機140、下部施肥機150等を支える構造体である。施肥フレーム110は、主として支持板111・111、上フレーム112・112、下フレーム113・113、連結フレーム114・114、補助支持板115・115・・・等を具備する。
【0027】
支持板111・111は、左右一対に立設される板状の部材であり、互いに所定の間隔をおいて配置される。
【0028】
上フレーム112・112は、矩形断面を有する中空棒状の部材であって(図2参照)、支持板111・111の上側前後部にそれぞれ横設される。
【0029】
下フレーム113・113は、円形断面を有する中空棒状の部材であって(図2参照)、支持板111・111の下側前後部にそれぞれ横設される。よって、上フレーム112・112、下フレーム113・113は支持板111・111を互いに連結する。
【0030】
連結フレーム114・114は、板状の部材を背面視略U字状に折曲成形された部材である。連結フレーム114・114は、左右一対に配置され、前後の下フレーム113・113を互いに連結する。これによって、施肥フレーム110の剛性を高めている。
【0031】
補助支持板115・115・・・は、板状の部材であって、支持板111・111の間に、互いに所定間隔をおいて支持板111・111と平行に配置される。
【0032】
図2、図4及び図5に示すように、第一動力伝達機構120は、エンジン14から伝達された動力を、変速して伝達するものである。第一動力伝達機構120は、ブラケット121を介して施肥フレーム110の前部に設けられる。第一動力伝達機構120は、主として第一伝動軸122、変速装置123、第二伝動軸124、クラッチ125等を具備する。
【0033】
第一伝動軸122は、その一端を図示せぬトランスミッションに連動連結されるものである。
【0034】
変速装置123は、伝達される動力を変速するものである。変速装置123は、動力を変速するための歯車や軸等の部材から構成される。変速装置123には、その下方から第一伝動軸122の他端が連動連結される。
【0035】
第二伝動軸124は、変速装置123において変速された動力を伝達するものである。第二伝動軸124の一端(前端)は、変速装置123に連動連結される。第二伝動軸124の他端(後端)は、変速装置123の後方に向かって突出される。
【0036】
クラッチ125は、第二伝動軸124による動力の伝達を断接するものである。クラッチ125は、第二伝動軸124の中途部に設けられ、第二伝動軸124を前後に分離することにより、第二伝動軸124による動力の伝達を遮断することができる。
【0037】
このように構成された第一動力伝達機構120において、エンジン14から第一伝動軸122へと伝達された動力は、変速装置123によって変速され、第二伝動軸124へと伝達される。
【0038】
図2から図5までに示すように、第一上部施肥機130は、主として第二動力伝達機構131、第一入力軸132、第一ホッパ133・133、蓋134、第一把持部135、第一繰出部136・136等を具備する。
【0039】
図3または図5に示すように、第二動力伝達機構131は、第一動力伝達機構120から伝達された動力を、前後方向から左右方向に変更して、第一入力軸132に伝えるものであり、ベベルギヤ等を備え、第一動力伝達機構120の後方に配置される。第二動力伝達機構131には、第二伝動軸124の他端(後端)が連動連結される。
【0040】
第一ホッパ133・133は、第二動力伝達機構131の左右にそれぞれ並設され、肥料を収容する容器である。第一ホッパ133・133の上部及び下部は開口される。第一ホッパ133・133の下部は、漏斗状に形成される。第一ホッパ133・133は、互いに固設される。
第一ホッパ133・133が互いに対向する側の側面には、それぞれ切り欠き部133a・133aが形成され、当該切り欠き部133a・133aにより、互いの内部空間が連通される。本実施例では第一ホッパ133・133は一体的に形成されている。第一ホッパ133・133のうち右方の第一ホッパ133の右側面には、その内部と外部とを連通する連通孔133bが形成される(図3参照)。通常、連通孔133bは、当該連通孔133bを閉塞することが可能な栓体等により閉塞される。
【0041】
蓋134は、第一ホッパ133・133の上部を覆い、開口された第一ホッパ133・133の上部を閉塞するものである。
【0042】
図4に示すように、第一把持部135は、棒状の部材を平面視略U字状に折曲成形された部材である。第一把持部135は、第二動力伝達機構131の左方に配設される第一ホッパ133に固設される。より詳細には、第一把持部135の一端は、第一ホッパ133の下部前側面に固設される。第一把持部135の他端は、ブラケット135aを介して第一ホッパ133の下部左側面に固設される。
【0043】
図2及び図4に示すように、第一繰出部136・136は、第一ホッパ133・133の下方にそれぞれ配設され、第一ホッパ133・133に収容された肥料を所定量ずつ下方へ繰出すものである。第一繰出部136は、主として上収容部136a、繰出し機構136b、下収容部136c等を具備する。
【0044】
上収容部136aは、第一ホッパ133から落下した肥料を受け入れる容器である。上収容部136aの上部及び下部は開口される。開口された上収容部136aの上部は、開口された第一ホッパ133の下部と接続される。
【0045】
繰出し機構136bは、上収容部136aに収容された肥料を所定量ずつ繰出すものである。繰出し機構136bは、第一入力軸132に固設される駆動ベベルギヤ136d、駆動ベベルギヤと噛合する従動ベベルギヤ136e、及び従動ベベルギヤ136eに固設される繰出し軸136fを介して伝達される動力により駆動される。
【0046】
下収容部136cは、繰出し機構136bを介して供給される肥料を受け入れる容器である。下収容部136cは、繰出し機構136bの下方に配置される。下収容部136cの上部及び下部は開口される。下収容部136cは、漏斗状に形成される。
【0047】
このように構成された第一上部施肥機130において、第一動力伝達機構120から第二動力伝達機構131へと伝達された動力は、第二動力伝達機構131において変速され、第一入力軸132へと伝達される。第一入力軸132へと伝達された動力は、駆動ベベルギヤ136d及び従動ベベルギヤ136eを介して繰出し軸136fへと伝達される。繰出し軸136fに伝達された動力により、繰出し機構136bが駆動され、第一ホッパ133内に収容された肥料は、上収容部136a及び繰出し機構136bを介して下収容部136cへと供給される。
【0048】
図2から図5までに示すように、第二上部施肥機140は、主として第二入力軸142、第二ホッパ143、蓋144、第二把持部145、第二繰出部146等を具備する。第二上部施肥機140は、第一上部施肥機130の左方に並設される。
【0049】
第二入力軸142は、第二動力伝達機構131において変速された動力を伝達するものである。第二入力軸142は、第一入力軸132と同一軸線上に配置される。第二入力軸142は、連結機構180を介して、第一入力軸132と連動連結される。また、連結機構180による第一入力軸132と第二入力軸142との連結は、解除機構190により解除することができる。
【0050】
第二ホッパ143・143は、第一ホッパ133・133の左方に並設され、肥料を収容する容器である。第二ホッパ143・143の構成は、前述した第一ホッパ133・133の構成と略同一であるため、その説明については省略する。
第二ホッパ143・143のうち、左方の第二ホッパ143の左側面には、その内部と外部とを連通する連通孔143bが形成される(図3参照)。通常、連通孔143bは、当該連通孔143bを閉塞することが可能な栓体143c等により閉塞される。
【0051】
蓋144は、第二ホッパ143・143の上部を覆い、開口された第二ホッパ143・143の上部を閉塞するものである。
【0052】
図4に示すように、第二把持部145は、棒状の部材を平面視略U字状に折曲成形された部材である。第二把持部145は、2つの第二ホッパ143・143のうち右方の第二ホッパに固設される。より詳細には、第二把持部145の一端は、第二ホッパ143の下部前側面に固設される。第二把持部145の他端は、ブラケット145aを介して第二ホッパ143の下部右側面に固設される。
【0053】
図3に示すように、第二繰出部146・146は、第二ホッパ143・143の下部にそれぞれ配設され、第二ホッパ143・143に収容された肥料を所定量ずつ繰出すものである。第二繰出部146・146は、第二入力軸142により伝達される動力により駆動される。
第二繰出部146の構成は、前述した第一繰出部136の構成と略同一であるため、その説明については省略する。
【0054】
図1から図4までに示すように、下部施肥機150は、主として施肥搬送部151・151・・・、施肥部152・152・・・、送風部153等を具備する。
【0055】
図2に示すように、施肥搬送部151・151・・・は、第一繰出部136及び第二繰出部146より繰出される肥料を案内するものである。施肥搬送部151は、主として接続管151a、搬送ホース151b等を具備する。
【0056】
接続管151aは、長手方向が前後方向となるように配置された略筒状の部材である。接続管151aの中途部には、第一繰出部136(または第二繰出部146)の下部がそれぞれ接続される。
【0057】
搬送ホース151bは、軟質合成樹脂等により形成された屈曲可能な部材である。搬送ホース151bの一端は、接続管151aの後端に接続される。搬送ホース151bの他端は、植付部42近傍まで延設される(図1参照)。
【0058】
図1に示すように、施肥部152・152・・・は、圃場面に作溝して、その部分に肥料を落下させるものである。施肥部152は、植付部42近傍において、搬送ホース151bの他端に接続される。
【0059】
図2から図4までに示すように、送風部153は、施肥搬送部151内に風を供給し、肥料の搬送を補助するものである。送風部153は、主として送風機153a、送風管153b等を具備する。
【0060】
送風機153aは、空気に圧力を加えて吐出するものであり、施肥フレーム110の左前端部にブラケット等を介して、送風機回動軸153c・153cに枢支される。送風機153aは、ファンやブロワ等により構成される。
【0061】
送風管153bは、長手方向が左右方向となるように配置された略筒状の部材である。送風管153bの一端は、送風機153aの吐出口に接続され、他端は閉塞される。送風管153bは、その中途部において、接続管151aの前端とそれぞれ接続される。
【0062】
このように構成された下部施肥機150において、第一上部施肥機130及び第二上部施肥機140から接続管151aへと供給された肥料は、送風部153から供給される風により、搬送ホース151bを介して施肥部152へと搬送される。施肥部152は、圃場に溝を作りながら、肥料を圃場に放出する。
【0063】
図4及び図5に示すように、第一回動機構160は、第一上部施肥機130を施肥フレーム110に対して上方回動可能に支持するものである。第一回動機構160は、主として第一枢支ブラケット161・161、第一回動支持軸162等を具備する。
【0064】
第一枢支ブラケット161は、第一上部施肥機130の右側面に固設される、板状の部材であり、その下端は、支持板111の右側上部まで下方に延設される。
【0065】
第一回動支持軸162は、軸線方向を前後方向として、支持板111の右側面に支持される。第一回動支持軸162は、第一枢支ブラケット161の下端部を回動可能に支持する。
【0066】
第二回動機構170は、第二上部施肥機140を施肥フレーム110に対して上方回動可能に支持するものである。第二回動機構170は、主として第二枢支ブラケット171・171、第二回動支持軸172等を具備する。
【0067】
第二枢支ブラケット171は、第二上部施肥機140の左側面に固設される、板状の部材である。第二枢支ブラケット171の下端は、支持板111の左側上部まで下方に延設される。
【0068】
第二回動支持軸172は、軸線方向を前後方向として、支持板111の左側面に支持される。第二回動支持軸172は、第二枢支ブラケット171の下端部を回動可能に支持する。
【0069】
このように構成された第一回動機構160により、第一上部施肥機130は、第一回動支持軸162を中心として上方に回動可能に構成される。
また、第二回動機構170により、第二上部施肥機140は、第二回動支持軸172を中心として上方に回動可能に構成される。
【0070】
以下では、図4から図9までを用いて、第一上部施肥機130、第二上部施肥機140の係止機構200・200について説明する。
【0071】
本実施例の施肥装置100の位置は、「接続位置」と「分離位置」とに大きく分けられる。
前者の「接続位置」とは、第一上部施肥機130(第二上部施肥機140)と、下部施肥機150とが接続され施肥可能な位置を意味する。例えば、施肥装置100が施肥を行う時や、田植機1が倉庫に格納される時等の状態である。
また、後者の「分離位置」とは、第一上部施肥機130(第二上部施肥機140)が、第一回動支持軸162(第二回動支持軸172)を中心に機体外側方へと回動し、機体外側へと第一上部施肥機130(第二上部施肥機140)が下部施肥機150と離れた位置を意味する。例えば、田植機1を収納する前に、第一ホッパ133・133(第二ホッパ143・143)内の肥料を取出す時に、肥料を取出し易いように機体外側方に第一上部施肥機130(第二上部施肥機140)を移動させた時等である。
【0072】
第二上部施肥機140は、その側方に送風機153aが配設されている。その為、第二上部施肥機140と下部施肥機150を分離位置にする場合、進行方向左側にある送風機153aは、前方へと回動し退避させる。つまり図4に示すように、送風機回動軸153c・153cを中心に、送風機153a全体を前方へと回動させることで、支持板111前方へ送風機153aを退避させ、第二上部施肥機140側方に空間を形成させる。よって、第二上部施肥機140が機体側方へ回動した際に、送風機153aと接触することなく第二上部施肥機140が回動することができる。
【0073】
「接続位置」より「分離位置」へと施肥装置100の位置を変えるには、作業者は先ず、解除機構190によって第一入力軸132と第二入力軸142との連結を解除する。次に、機体右側の第一把持部135を把持しながら、第一回動支持軸162を中心に、第一上部施肥機130を右外方へと回動させる。よって、作業者には、第一上部施肥機130の自重や、第一ホッパ133・133内の肥料の重量等を支える力を要する。また、作業者の所望位置(角度)に、第一上部施肥機130を静止させることは、さらに相当の力を要する。
よって、以下の係止機構200を第一回動支持軸162及び第二回動支持軸172付近に配設することで第一上部施肥機130(第二上部施肥機140)を上方へ回動したときにその途中の角度で保持可能とする。
【0074】
以下に詳説する係止機構200・200は、本実施例において機体左右側に配設され、左右対称であるので、進行方向左側の係止機構200の説明は省略する。
【0075】
係止機構200は、作業者が第一上部施肥機130を機体外側方へと回動させる際、所望位置(角度)に段階的に第一上部施肥機130を係止するための機構である。
本実施例において、係止機構200は、第一回動支持軸162付近に配設され、主に、爪体201、係止部材202、付勢部材203、受部材204等によって構成されている。
【0076】
図7に示すように、爪体201は、後述する係止部材202と係合しつつ第一上部施肥機130の回動角度決めを行う部材であり、爪体201は第一枢支ブラケット161前方(または後方)の第一回動支持軸162の前端部上に固設される。つまり、爪体201は第一回動支持軸162を介して第一枢支ブラケット161と一体的に固定され共に回動される。図7に示すように、爪体201は外周に爪201aを所定間隔をあけて形成され、中心部に第一回動支持軸162が固設される。該爪体201は本実施例では、半円板状であって、外周部201bに鋸歯状の爪201a・201a・・・が複数形成されている。この爪201a・201aの数だけ段階的に回動することが可能である。
爪体201近傍の支持板111には、機体内方へと爪201aが移動することができる開口部111aが開口されている。
【0077】
一方、図6から図9のいずれかに示すように、係止部材202は、正面視略L字状に形成されてレバーとし、レバーの中央(L字の角にあたる箇所)が後述する受部材204の回転軸204cに回転自在に支持される。
係止部材202の一端は、前記爪201aに係合するように、下方に突出した爪状の係止爪202aが形成されている。こうしてラチェットの如く形成されている。係止部材202の他端は、後述する付勢部材203を取付可能とするため、下方に突出する取付部202bを備えている。取付部202bの上方には、作業者が押圧して解除操作し易いように側面視逆L字状に後方へと屈曲された操作部202cが形成される。
【0078】
受部材204は、係止部材202を支持すると共に、後述する付勢部材203を受ける部材であって、爪体201後方の支持板111の機体内側に取付けられている。詳しくは、支持板111に対し、板状の受部材204は垂直に固設され、支持板111よりも上方に突出するように上部204aが形成されている。上部204aには前方に突出するように回転軸204cが固設される。また、受部材204の下部には、機体内側斜め上方に突出するように傾斜部204bが形成されている。
【0079】
付勢部材203は、コイルバネ等の弾性部材で構成され、係止部材202を付勢する役割を果たし、係止部材202の取付部202bと受部材204の傾斜部204bとに嵌合される。つまり、付勢部材203は、回転軸204cを中心に係止部材202の操作部202c側を上方へと付勢している。なお、操作部202cを付勢部材により上方へ引っ張ったり、係止爪202a側を機体内方向へ引っ張ったり、付勢部材203は捩じりバネによって構成して、該捩じりバネを回転軸204cに外嵌して受部材204と係止部材202の間に介装して、係止部材202の係止爪202aが爪201aに係止するように付勢する構成としたりすることも可能であり、付勢部材203の構造及び配置は限定するものではない。よって、付勢部材203は回転軸204cを中心に係止部材202の係止爪202a側を下方へと付勢することとなり、係止爪202aと爪201aとが係合される。
こうして、第一上部施肥機130を機体外方へ回動した際、係止爪202aが爪201aと係合し、第一上部施肥機130がその重量により下方へ回動しようとしても係止爪202aと爪201aとの係合によりその回動位置が保持されるのである。
【0080】
次に、ホッパ内の残留肥料を排出する場合やメンテナンス等で、第一上部施肥機130を上昇させた時の具体的な動きを説明する。まず、図4に示す前記解除機構190を操作して連結機構180における第一入力軸132と第二入力軸142間の連結を解除し、作業者が第一把持部135を持って持ち上げる。すると、図7に示す第一上部施肥機130と下部施肥機150との接続位置から、図8に示す第一回動支持軸162を中心に第一上部施肥機130が機体外方(上方)へと回動する。そして、第一回動支持軸162上の爪体201が第一回動支持軸162の動きと共に、付勢部材203の付勢力に抗して、爪201aが係止爪202a内側外周に沿うように回転し、係止爪202aと爪201aが係合する状態となる。
この状態で、作業者が第一把持部135(図4参照)より手を離した場合等、係止爪202aが爪201aに係止されているので、第一上部施肥機130はその回動位置を保持できる。この場合、第一上部施肥機130に大量の肥料が残っておりその肥料を排出する場合等で、小さな傾斜角度に保持できる。そして、残留肥料が少ないほど大きく回動し、第一上部施肥機130はその回動に応じて段階的(本実施例では爪201aが四箇所あるので四段階)に停止可能となる。こうしてそれ以上第一上部施肥機130が、機体内方へ回動することを防ぎ、第一上部施肥機130が急激に接続位置へ戻ってしまう恐れをなくすことができる。
【0081】
そして第一上部施肥機130を機体外方へ最大回動させると、図9に示すように、爪体201の端部が支持板111の外側面と当接し、それ以上、第一上部施肥機130が外方(下方)に回動することができなく、また、第一上部施肥機130の重心は第一回動支持軸162よりも外側(支点越え)に位置しているため、その状態が保持される。
【0082】
図8、図9に示す分離位置から図7に示す接続位置へと第一上部施肥機130を移動(回動)させる際には、作業者は、操作部202cを下方へと押圧する。操作部202cを下方へと押圧することで、付勢部材203の付勢力に抗して、回転軸204cを中心に操作部202cが下方に回動し、係止爪202aが上方へと回動し、係止爪202aと爪201aとの係合関係が解消される。その状態で、第一上部施肥機130を機体中央へと回動させて、下部施肥機150と接合することで、図7に示す設置位置へと戻すことが可能な構成となっている。
【0083】
上記構成において、第一回動支持軸162(第二回動支持軸172)に爪体201を固設し、施肥フレーム110の支持板111に受部材204を介して、係止部材202を配置した。しかし、第一回転支持軸162(第二回動支持軸172)に固設し、施肥フレーム110に受部材204を介して、爪体201を配置してもよく限定するものではない。
【0084】
以上の如く、本実施形態に係る施肥装置100は、肥料を収容するホッパ133・143と、該ホッパ133・143の下部に配設され肥料を所定量ずつ繰出す繰出部136・146を有する上部施肥機130・140と、前記繰出部136・146より繰出される肥料を施肥部152近傍まで案内する施肥搬送部151を有する下部施肥機150と、前記上部施肥機130と前記下部施肥機150を支持する施肥フレーム110と、前記上部施肥機130の左右一側に設けられる回動支持軸162・172を枢支する枢支ブラケット161・171と、前記回動支持軸162・172または前記施肥フレーム110の何れか一方に固定される複数の爪201aを有する爪体201と、前記回動支持軸162・172または前記施肥フレーム110の何れか他方に取付けられて前記爪体201と係合可能とされる係止部材202とから成る係止機構200を備え、上部施肥機130を係止機構200により所定角度で保持可能とする。
【0085】
このように構成することにより、上部施肥機130・140の回動を段階的(所定角度)に行うことができる。また、作業者が上部施肥機130を支えることなく、上部施肥機130の予期せぬ転倒によって、作業者が負傷したり、分離位置より接続位置への急激な戻りによる施肥装置100等の破損をしたりすることを防ぐことができる。
【0086】
よって、前記係止部材202は、レバーの一端に係止爪202aを形成し、他端に係止部材202を係止方向に付勢する付勢部材203の取付部202bと操作部202cを形成し、中央部に係止部材202を回動自在に枢支する枢支部を形成する。
【0087】
このように構成することにより、施肥機回動状態から施肥機設置状態に、容易に状態変化可能となり、上部施肥機130・140の重心が、回動支持軸162・172よりも外方へと位置した場合でも、安定性を備えた施肥装置100の構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例に係る乗用田植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】施肥機周辺を示した側断面図。
【図3】施肥機周辺を示した後方斜視図。
【図4】施肥機周辺を示した正面図。
【図5】施肥機を示した側面図。
【図6】係止機構周辺を示した前方斜視図。
【図7】上部施肥機の設置位置における係止機構周辺を示した部分正面図。
【図8】上部施肥機の分離位置における係止機構周辺を示した部分正面図。
【図9】上部施肥機が最回動された分離位置における係止機構周辺を示した部分正面図。
【符号の説明】
【0089】
100 施肥装置
110 施肥フレーム
130 上部施肥機、第一上部施肥機
140 上部施肥機、第二上部施肥機
133 ホッパ、第一ホッパ
143 ホッパ、第二ホッパ
136 繰出部、第一繰出部
146 繰出部、第二繰出部
150 下部施肥機
151 施肥搬送部
152 施肥部
161 枢支ブラケット、第一枢支ブラケット
171 枢支ブラケット、第二枢支ブラケット
162 回動支持軸、第一回動支持軸
172 回動支持軸、第二回動支持軸
200 係止機構
201 爪体
201a 爪
202 係止部材
202a 係止爪
202b 取付部
202c 操作部
203 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を収容するホッパと、該ホッパの下部に配設され肥料を所定量ずつ繰出す繰出部とを有する上部施肥機と、
前記繰出部より繰出される肥料を施肥部近傍まで案内する施肥搬送部を有する下部施肥機と、
前記上部施肥機と前記下部施肥機を支持する施肥フレームと、
前記上部施肥機の左右一側に設けられる回動支持軸を枢支する枢支ブラケットと、
前記回動支持軸または前記施肥フレームの何れか一方に固定される複数の爪を有する爪体と、
前記回動支持軸または前記施肥フレームの何れか他方に取付けられて前記爪体と係合可能とされる係止部材と、から成る係止機構を備え、
上部施肥機を係止機構により所定角度で保持可能とすることを特徴とする施肥装置。
【請求項2】
前記係止部材は、レバーの一端に係止爪を形成し、他端に係止部材を係止方向に付勢する付勢部材の取付部と操作部を形成し、中央部に係止部材を回動自在に枢支する枢支部を形成することを特徴とする請求項1に記載の施肥装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate