説明

施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機及び施設園芸ハウスの空調方法

【課題】
施設園芸ハウス内の所望のエリアに対し容易に除湿、空調することを可能にする。
【解決手段】
施設園芸ハウス内の暖房、冷房及び除湿を行う施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機3は、筐体3aと、この筐体内に設けられた圧縮機14、凝縮器4、蒸発器5などを備える。ハウス内の空気は凝縮器用ファン8により凝縮器に導かれ熱交換されて温風になり、温風ダクト6から筐体外に吹き出される。また、ハウス内の空気は蒸発器用ファンにより蒸発器5に導かれて熱交換されて除湿、冷却され、冷風ダクト7から筐体外に吹き出される。前記ダクト6,7は、蒸発器で除湿冷却された冷風、凝縮器で加温された温風をハウス内の所望の方向に導くことができるように、それぞれ伸縮及び方向変更可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビニールハウスや温室などの施設園芸ハウス内の空調用に用いられる施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機及び施設園芸ハウスの空調方法に関し、特に薔薇などの植物やトマトやメロンなどの作物を栽培するハウス内の除湿に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
施設園芸ハウス内の空調用に用いられるヒートポンプ式空気調和機としては特許文献1や特許文献2に記載のものなどがある。
【0003】
特許文献1に記載のものでは、ヒートポンプ式空気調和機を利用して施設園芸ハウス内の冷房と除湿を行うことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2のものでは、ヒートポンプ式空気調和機を利用して施設園芸ハウス内の冷房、除湿、暖房を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−308859号公報
【特許文献2】特開昭58−175764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの文献のものは、何れも施設園芸ハウスの外部に室外熱交換器を含む室外機を設置し、室内には室内熱交換器を含む室内機を設置して、これら室内外機を冷媒配管で接続しているもので、これらの空調機器を一度設置すると、空調機器の移動は基本的に困難なものであった。また、前記室内機から施設園芸ハウス内に吹き出される空気量にも限界があり、容積の大きな施設園芸ハウス内全体を空調するには極めて大容量の空気調和機が必要となり、コストを考えると、現実的にはヒートポンプ式空気調和機を採用することは困難であった。
【0007】
特に、除湿運転時には、従来のヒートポンプ式空気調和機では温度を低下させないようにするため、風量を低下させるものが一般的であり、施設園芸ハウス内全体の湿度を低下させたり、施設園芸ハウス内の所望のエリアに対し随時除湿をすることも困難であった。
【0008】
また、施設園芸ハウス内は、夏には40℃以上もの高温になることも多く、更に施設園芸ハウス内では消毒薬剤(農薬)や肥料が使用されるが、そのような高温条件や薬剤などに対する配慮も為されていない。
【0009】
本発明の目的は、施設園芸ハウス内の所望のエリアに対し容易に除湿、空調することが可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、除湿運転時の風量を増大させて施設園芸ハウス内を効果的に除湿することのできる施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、高温条件や薬剤などの環境に対しても十分な能力を発揮でき、薬剤などに対する腐食も防止して信頼性の高い施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、施設園芸ハウス内の全域に亘り容易に除湿、空調の行える施設園芸ハウスの空調方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、施設園芸ハウス内の暖房、冷房及び除湿を行う施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、筐体と、この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、前記ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、前記凝縮器用ファンから筐体外に吹き出される温風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な温風ダクトと、前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトとを備えていることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記圧縮機、凝縮器及び蒸発器は耐腐食コーティングされた銅製の冷媒配管で接続するようにすると良い。また、農薬及び肥料を除去可能なフィルタを、前記凝縮器又は前記蒸発器への吸込口の少なくとも何れかに設けるようにすると良い。
【0015】
前記凝縮器を構成する熱交換器は、前記蒸発器を構成する熱交換器より大きく、且つ前記凝縮器用ファンはプロペラファンとし、前記蒸発器用ファンはシロッコファンとして凝縮器用ファンの風量を蒸発器用ファンの風量より大風量となるように構成すると、ハウス内が高温となっても能力を確保できる。
【0016】
また、湿度センサを設け、該湿度センサで検出された湿度が第1の設定値になると電源回路をONにして圧縮機を駆動し、第2の設定値まで低下すると前記電源回路をOFFして前記圧縮機を停止させる構成とすれば、簡単な構成で施設園芸ハウス内の湿度コントロールを自動的に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の他の特徴は、上記構成の空気調和機を施設園芸ハウス内に設置し、除湿運転を行う場合には、冷風ダクトからの冷風及び温風ダクトからの温風を同時に施設園芸ハウス内に吹き出し、冷風吹出し運転を行う場合には、前記冷風ダクトからの冷風をハウス内に吹き出すと共に、温風ダクトからの温風をハウス外に排出し、温風吹出し運転を行う場合には、前記温風ダクトからの温風をハウス内に吹き出すと共に、前記冷風ダクトからの冷風をハウス外に排出することを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法にある。
【0018】
ここで、前記冷風ダクト及び温風ダクトのうち、ハウス内に吹き出すダクトについては、施設園芸ハウス内の所望のエリアに向けて作物などに直接当らないように水平方向に吹き出すようにすると良い。
【0019】
本発明の更に他の特徴は、施設園芸ハウス内の空調を行う施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、筐体と、この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、前記ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトと、前記蒸発器で凝縮された凝縮水を受けるドレンパンとを備えていることにある。
【0020】
本発明の更に他の特徴は、筐体と、この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、施設園芸ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトとを備えるヒートポンプ式空気調和機を前記施設園芸ハウス内に設置し、前記ハウス内の空気を前記蒸発器用ファンで吸込んで前記蒸発器に導き、この空気を冷却除湿して前記施設園芸ハウス内に吹き出すと共に、前記ハウス内の空気を前記凝縮器用ファンで吸込み前記凝縮器に導いて加温し、この加温された空気も前記施設園芸ハウス内に吹き出すことで前記施設園芸ハウス内の除湿を行う施設園芸ハウスの空調方法にある。
【0021】
ここで、前記凝縮器用ファンから筐体外に吹き出される温風を所望の方向に導く伸縮可能な温風ダクトを前記ヒートポンプ式空気調和機に備え、この伸縮可能な温風ダクトを介して温風ダクトからの温風を前記施設園芸ハウス外に排出すると共に、前記冷風ダクトからの冷風をハウス内に吹き出すことで施設園芸ハウス内への冷風吹出し運転を行うことができる。
【0022】
また、前記伸縮可能な冷風ダクトを介して冷風ダクトからの冷風を前記施設園芸ハウス外に排出すると共に、前記ハウス内の空気を前記凝縮器用ファンで前記凝縮器に導いて加温し、この加温された空気を前記施設園芸ハウス内に吹き出すことで施設園芸ハウス内への温風吹出し運転を行うことも可能となる。
【0023】
なお、前記ヒートポンプ式空気調和機にキャスタを設置すれば、台車やクレーンなどを使用することなく、前記施設園芸ハウス内の空調対象エリア又はその近傍に前記ヒートポンプ式空気調和機を移動させて空調対象エリアの空調を容易に行うことができる。
【0024】
本発明の更に他の特徴は、ヒートポンプ式空気調和機による施設園芸ハウスの空調方法において、前記ヒートポンプ式空気調和機の筐体内に、圧縮機、蒸発器、前記蒸発器よりも大きい凝縮器、冷風ダクト、温風ダクト、蒸発器用ファン、前記蒸発器用ファンよりも風量の大きい凝縮器用ファンが収納され、前記温風ダクトにより前記凝縮器用ファンで吹き出す温風を案内すると共に、前記冷風ダクトにより前記凝縮器用ファンで吹き出す冷風を案内するヒートポンプ式空気調和機を用い、前記ハウス内の空気を前記筐体内に吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後、前記蒸発器用ファンにより冷風を前記筐体外に吹き出すと共に、前記ハウス内の空気を前記筐体内に吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後、前記蒸発器用ファンによるよりも大きな風量で前記凝縮器用ファンにより温風を前記筐体外に吹き出し、更に前記冷風ダクトにより前記冷風を前記ハウス内の所望の方向に案内し、前記温風ダクトにより前記温風を前記ハウス内の所望の方向に案内することで前記ハウス内の除湿を行うことにある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、凝縮器及び蒸発器を有し、施設園芸ハウス内に温風及び冷風を吹き出し可能な構成にすると共に、蒸発器からの冷風を所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトを備えているので、施設園芸ハウス内の所望のエリアに対し容易に除湿、空調することが可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機及び施設園芸ハウスの空調方法を得ることができる。
【0026】
また、除湿運転時には、除湿された冷風だけでなく、温風も施設園芸ハウス内に吹き出すようにしているので、除湿運転時の風量を増大させて施設園芸ハウス内を効果的に除湿することが可能となる。
【0027】
更に、前記圧縮機、凝縮器及び蒸発器は耐腐食コーティングされた銅製の冷媒配管で接続するようにすれば、薬剤などの環境に対しても十分な能力を発揮でき、薬剤などに対する腐食も防止して信頼性の高い施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機及び施設園芸ハウスの空調方法の実施例1を説明する模式図で、除湿運転をしている状態を示す図。
【図2】図1に示す実施例1の空気調和機により冷却、除湿運転をしている状態を示す模式図。
【図3】図1に示す実施例1の空気調和機により加温、除湿運転をしている状態を示す模式図。
【図4】実施例1における空気調和機の具体的構成を一部破断して示す正面図。
【図5】図4に示す空気調和機を一部破断して示す側面図。
【図6】図4に示す空気調和機の平面図。
【図7】実施例1の冷凍サイクル構成図。
【図8】本発明の実施例2を示す空気調和機の正面図。
【図9】図8の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1〜図7は、本発明の施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機及び施設園芸ハウスの空調方法の実施例1を説明する図で、図1〜図3は施設園芸ハウス内に空気調和機を設置して使用している態様を説明する模式図、図4〜図6は本実施例における空気調和機の具体的構成を示す図、図7は本実施例における冷凍サイクル構成図である。
【0031】
図1〜図3において、1はビニールハウスや温室(例えばグラスハウス)などの施設園芸用のハウスで、この施設園芸ハウス内では薔薇などの草木や、メロン、トマト、きゅうり、苺などの作物が栽培されるものである。また、1aはハウスの天井面、1bはハウスの外壁、1cは天井面1bに設けた天窓である。2はこのハウス1の上部に張られたカーテンである。3はこのハウス1内の所望の箇所に置かれたヒートポンプ式の空気調和機で、この空気調和機3は凝縮器4及び蒸発器5の両方を内蔵する一体型の冷却機として構成されている。即ち、一体型の冷却機として構成された本実施例の空気調和機は、筐体3aの内部に前記凝縮器4及び蒸発器5が隔壁3bを介して配置され、更に前記凝縮器4を通過して加温された温風を吹き出す温風ダクト6、及び前記蒸発器5で冷却された冷風を吹き出す冷風ダクト7が前記筐体1の上部に、取付け取外し可能に設置されている。前記ダクト6,7は、例えば蛇腹のように、吹出方向を自由に変えることができ、またその長さも、図2,図3に示すように伸縮自在に構成されている。
【0032】
このような一体型の冷却機として構成された空気調和機3は、従来のように、凝縮器はハウス外に、蒸発器はハウス内に別々に設置して冷媒配管で接続するような構成とはしていないので、ハウス1内の所望の箇所に、いつでも自由に移動して設置することが可能である。
【0033】
図1はハウス1内の除湿運転をしている状態を示す図である。除湿運転時には、前記温風ダクト6及び前記冷風ダクト7の両方共に、植物などが栽培されているハウス内にその吹出口を開口し、温風及び冷風をハウス内に吹き出す。除湿は蒸発器5で行われるが、その蒸発器5からの冷風だけでなく、凝縮器4からの温風もハウス内に吹き出すので、ハウス内の温度は低下も上昇もしない。なお、冷風と温風は同一方向に吹き出して互いに混合されるようにすればハウス内全体の温度むらを低減できる。また、比較的低温を好む植物には冷風を送り、高温を好む植物には温風を送ることも可能である。
【0034】
なお、除湿運転時において、従来のものでは、ハウス内の温度低下を防止するため、吹出し風量を低下させる必要があり、ハウス内全体をむらなく除湿することは困難であった。これに対し、本実施例のものでは、凝縮器からの温風もハウス内に吹き出すため、除湿運転時の風量を従来のものに比べ、少なくとも2倍以上に増大でき、4倍以上に大幅に増大させることも容易に可能となる。この結果、ハウス内の気流の循環も良くなり、ハウス内全体の湿度や温度のばらつきを低減できる効果がある。この効果は非常に大きく、特に薔薇などの栽培における病害対策や病害予防に極めて効果が大きい。即ち、湿度が高いと、うどんこ病などの原因菌が繁殖し、湿度が低くなると生長した原因菌が破裂して胞子が飛散し、薔薇の葉などに付着するとうどん粉病などの病気が発生する。本実施例により、ハウス内の除湿をし、湿度ムラも低減できることにより、うどんこ病などの病気の発生を効果的に抑制することが可能になる。
【0035】
前記ダクト6,7からの冷風又は温風が直接植物に当たらず、遠方まで吹出風が届くように、ダクトの吹出口は水平になるように、或いはやや上方に向けて使用すると良い。
【0036】
図2はハウス1内に冷風を送り、ハウス内を除湿すると共に冷却する場合の状態を示している。ハウス内を除湿、冷却する場合には、温風ダクト6を上方に伸ばして、ハウスの天井面1aとカーテン2との間の天井空間1dに開口させる。これにより凝縮器4で加温された温風はダクト6を介して天井空間1dに吹出され、天井空間1dから天窓1cを介してハウス外に排出される。従って、ハウス1内には蒸発器5で冷却され除湿された冷風のみが冷風ダクト7から吹き出され、ハウス内を除湿すると共に冷却することができる。
【0037】
図3はハウス1内に温風を送り、ハウス内を暖める(加温する)と共に除湿する場合の状態を示している。ハウス内を除湿、加温する場合には、冷風ダクト7を上方に伸ばして、ハウスの天井面1aとカーテン2との間の天井空間1dに開口させる。また、温風ダクト6は縮めてハウス1内に開口させる。これにより蒸発器5で冷却された冷風はダクト7を介して天井空間1dに吹出され、天井空間1dから天窓1cを介してハウス外に排出される。従って、ハウス1内には温風ダクト6からの温風のみが吹き出され、ハウス内を暖めると共にハウス内の相対湿度を低減できる。また、前記蒸発器5では導入した空気中の水分を凝縮するので、ハウス内の絶対湿度も低下させることができる。
【0038】
このように本実施例のものでは、ハウス内を除湿できるだけでなく、冷却や加温もでき、更には空気調和機をハウス内の所望のところに台車やクレーンを利用して自由に移動させたり、ダクトの方向を変化させたり伸縮することで、随時所望のエリアの空調も可能になるものである。
【0039】
図1〜図3に示す空気調和機の具体的な構成の一例を図4〜図6により説明する。図4は本実施例の空気調和機を一部破断して内部構造がわかるようにした正面図、図5は図4の空気調和機を左側から見た側面図で、図4と同様内部構造がわかるように一部破断して示す図、図6は図4の平面図である。これらの図において図1〜図3と同一符号を付した部分は同一又は相当する部分を示している。
【0040】
図4〜図6において、3aは空気調和機の筐体で、この筐体3a内は隔壁3bで仕切られ、一方の部屋には凝縮器4と、この凝縮器4に空気を導入して熱交換して加温された温風をダクト6から吹き出すための凝縮器側送風機8が設けられ、この送風機8は電動機9で駆動される。筐体内の他方の部屋には、蒸発器5と、この蒸発器5に空気を導入して熱交換させ、冷却、除湿された冷風をダクト7から吹き出すための蒸発器側送風機10が設けられている。前記送風機10は前記隔壁3aに取り付けられた電動機11で駆動される。蒸発器5の下方には蒸発器で凝縮された凝縮水を受けるドレンパン12が設けられており、このドレンパンに溜まった凝縮水を外部へ排出するためのドレン排水孔13も筐体下部に設けられている。14は圧縮機、15は圧縮機の吸込側に設けられたアキュームレータ、16は圧縮機14や前記送風機8,10を駆動するための電気品が設けられた電気品箱である。
【0041】
図6に示すように、凝縮器4及び蒸発器5が設置されている部分の筐体3aには、空気を凝縮器4又は蒸発器5に導入するための凝縮器吸込口3c及び蒸発器吸込口3dが形成されている。また、凝縮器吸込口3cの入口及び蒸発器吸込口3dの入口には、図4,図5に示すように、それぞれ吸込フィルタ17,18が設置され、肥料粉や農薬などの粉塵が空気調和機内に入って、銅製の冷媒配管を腐食させたり、各種機器、電気品などの故障の原因にならないようにしている。なお、凝縮器側の吸込フィルタ17については保護網程度の簡単なフィルタとし、蒸発器側のフィルタ18についてはロングライフフィルタなどを使用することも可能である。
【0042】
なお、図6では、図4や図5に示すダクト6,7を省略している。筐体3aの上面には温風の吹出口と3eと冷風の吹出口3fが設けられ、これらの吹出口3e,3fに接続されるように前記ダクト6,7は前記筐体3a上面に取り付けられている。
【0043】
図7は本実施例における冷凍サイクル構成図で、この図において図1〜図6と同一符号を付した部分は同一又は相当する部分を示している。圧縮機14は圧縮機モータ14aで駆動され、このモータ14aは商用電源19に接続されている。このモータ14aと商用電源19を接続する電気回路にはマグネットスイッチ20が設けられており、このマグネットスイッチ20は空気調和機3に設けた湿度センサ21からの信号で開閉され、例えば湿度が第1の設定値まで上昇するとマグネットスイッチ20がONされ、湿度が前記第1の設定値より低い第2の設定値まで下がるとOFFされるように構成されている。
【0044】
圧縮機14で圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、冷媒配管22を介して凝縮器4に送られ、凝縮器側送風機8により導入された空気と熱交換して凝縮し、その後キャピラリチューブなどの減圧装置で減圧されて蒸発器5に送られる。この蒸発器5において、低温低圧の冷媒は、蒸発器用ファン10により導入された空気と熱交換して蒸発し、アキュームレータ24を経て再び前記圧縮機14に吸入される。25は圧縮機14の吐出側の冷媒配管22と吸入側の冷媒配管26を接続するバイパス回路27に設けられた定圧力式の膨張弁である。この定圧力式膨張弁25は、外気温が低く、凝縮器4への吸込空気が低い場合に作動する。即ち、凝縮器4への吸込空気の温度が低下すると凝縮圧力が低下し、吐出側冷媒配管22内の圧力が一定圧力まで低下すると定圧力式膨張弁25が作動して開となる。これにより、高温高圧のガス冷媒の一部はバイパス回路27を介して吸込側に流れ、圧縮機吸込側の温度、圧力を上昇させることで圧縮機吐出圧力、吐出温度を確保し、圧縮機14への液冷媒の溜まり込みを防止して圧縮機を保護することができる。
【0045】
なお、上記の定圧力式膨張弁を有するバイパス回路を設ける代わりに、前記凝縮器用ファン8の回転数を可変できるようにし、外気温度を検出して、外気温度が低下して凝縮器への吸込空気の温度が低下した場合には、ファン8の回転数を下げるようにしても良い。このようにすれば、凝縮器での凝縮能力を低下させることができ、圧縮機の吐出圧力、吐出温度を確保することが可能となり、圧縮機が液圧縮して破損することなどを防止できる。
【0046】
なお、図7に示す例では、湿度センサ21を設けて湿度に応じて圧縮機をON/OFFするものを示したが、これに限られず、湿度センサ21の代わりに温度センサを用いて圧縮機をON/OFFしたり、湿度センサ及び温度センサの両方を設けて制御するようにしても良い。また、温度センサや湿度センサを用いて、ファン8,10をON/OFFするように構成することも有効である。
【0047】
ビニールハウスなどの施設園芸ハウス内は、夏は非常に高温になり40℃を超える環境、例えば40〜48℃という高温の環境でも能力を出せるようにすることが好ましい。本実施例では、このような高温環境化でも、除湿及び冷却ができるようにしている。即ち、凝縮器4の大きさ(熱交換面積、熱交換容量)を蒸発器5よりも大とし、更に凝縮器用ファン8はプロペラファンとし、蒸発器用ファン10はシロッコファンとすることで、凝縮器側の風量を蒸発器側の2〜3倍として凝縮能力を十分に確保できるようにしている。蒸発器用ファンはシロッコファンとしているため、静圧を高くできるから、冷風ダクト7を長くして冷風を遠方まで送風することが可能となっている。なお、凝縮器用ファンとしてシロッコファンやターボファンを使用すれば、静圧をより高くできるから温風ダクト6も長くして、温風を遠くまで送ることが可能となる。また、蒸発器用ファンとしてターボファンを採用すれば、高効率で騒音の小さい空気調和機が得られる。
【0048】
また、施設園芸ハウスでは、薔薇や野菜などの栽培において、病気の発生を防止したり肥料を与えるため、硫黄やアンモニアを含む腐食性の農薬や肥料を散布するが、硫黄などが空気調和機に流入し、銅パイプで構成された冷媒配管などに触れると銅パイプなどが腐食しやすくなる。このため、本実施例において、好ましくは銅パイプにアクリル系樹脂塗装などの耐腐食コーティングをすると良い。また、熱交換器(凝縮器や蒸発器)本体についてもカチオン電着塗装によるコーティングをすることが好ましい。更に、電気品箱内の電気部品(基板など)はヒューミシールによるコーティングをすると良い。
【実施例2】
【0049】
図8及び図9は、本発明の実施例2を示すもので、図8は正面図、図9は側面図である。この実施例において、実施例1と同一符号を付した部分は同一又は相当する部分を示している。
【0050】
この実施例においては、空気調和機3を自由に移動可能にするため、空気調和機3の筐体3aの下部にキャスタ28を設けている。このようにキャスタ28を備えることにより、台車やクレーンなどを使用することなく、空気調和機を、施設園芸ハウス内を自由に移動させることができる。従って、空調や除湿をしたい施設園芸ハウス内の空調対象エリアに随時容易に移動させて、必要な箇所の除湿や空調を容易に行うことが可能になる。
【0051】
特に、施設園芸ハウス内に舗装路を設けたり、舗装路がない場合でもコンパネ(ベニア合板)などを地面に敷くことで、空気調和機の移動はより容易に可能となる。
【0052】
なお、上記実施例においては、何れも温風ダクト6と冷風ダクト7を備えるものについて説明したが、温風ダクト6については、必ずしも必要ではなく、除湿及び冷風吹出し運転のみで良い場合にはなくても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 施設園芸ハウス(1a:天井面、1b:外壁、1c:天窓、1d:天井空間)
2 カーテン
3 空気調和機(3a:筐体、3b:隔壁、3c:凝縮器吸込口、3d:蒸発器吸込口)
4 凝縮器
5 蒸発器
6 温風ダクト
7 冷風ダクト
8 凝縮器用ファン
9,11 電動機
10 蒸発器用ファン
12 ドレンパン
14 圧縮機(14a:圧縮機モータ)
16 電気品箱
17,18 吸込フィルタ
21 湿度センサ
25 定圧力式膨張弁
28 キャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設園芸ハウス内の暖房、冷房及び除湿を行う施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、
筐体と、
この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、
前記ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、
前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、
前記凝縮器用ファンから筐体外に吹き出される温風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な温風ダクトと、
前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトと
を備えていることを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、前記圧縮機、凝縮器及び蒸発器は耐腐食コーティングされた銅製の冷媒配管で接続されていることを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2において、農薬及び肥料を除去可能なフィルタを、前記凝縮器及び前記蒸発器への吸込口の少なくとも何れかに設けたことを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記凝縮器を構成する熱交換器は、前記蒸発器を構成する熱交換器より大きく、且つ前記凝縮器用ファンはプロペラファンとし、前記蒸発器用ファンはシロッコファンとして凝縮器用ファンの風量を蒸発器用ファンの風量より大風量となるように構成したことを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、湿度センサを設け、該湿度センサで検出された湿度が第1の設定値になると電源回路をONにして圧縮機を駆動し、第2の設定値まで低下すると前記電源回路をOFFして前記圧縮機を停止させる構成としたことを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項6】
請求項1に記載の空気調和機を施設園芸ハウス内に設置し、
除湿運転を行う場合には、冷風ダクトからの冷風及び温風ダクトからの温風を同時に施設園芸ハウス内に吹き出し、
冷風吹出し運転を行う場合には、前記冷風ダクトからの冷風をハウス内に吹き出すと共に、前記温風ダクトを介して温風ダクトからの温風をハウス外に排出し、
温風吹出し運転を行う場合には、前記温風ダクトからの温風をハウス内に吹き出すと共に、前記冷風ダクトを介して前記冷風ダクトからの冷風をハウス外に排出する
ことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項7】
請求項6において、前記冷風ダクト及び温風ダクトのうち、ハウス内に吹き出すダクトについては、施設園芸ハウス内の所望のエリアに向けて作物などに直接当らないように水平方向に吹き出すことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項8】
施設園芸ハウス内の空調を行う施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、
筐体と、
この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、
前記ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、
前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、
前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトと、
前記蒸発器で凝縮された凝縮水を受けるドレンパンと
を備えていることを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項9】
筐体と、この筐体内に設けられた、圧縮機、凝縮器、蒸発器と、施設園芸ハウス内の空気を吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための凝縮器用ファンと、前記ハウス内の空気を吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後前記筐体外に吹き出すための蒸発器用ファンと、前記蒸発器用ファンから筐体外に吹き出される冷風を前記ハウス内の所望の方向に導く伸縮可能な冷風ダクトとを備えるヒートポンプ式空気調和機を前記施設園芸ハウス内に設置し、
前記ハウス内の空気を前記蒸発器用ファンで吸込んで前記蒸発器に導き、この空気を冷却除湿して前記施設園芸ハウス内に吹き出すと共に、前記ハウス内の空気を前記凝縮器用ファンで吸込み前記凝縮器に導いて加温し、この加温された空気も前記施設園芸ハウス内に吹き出すことで前記施設園芸ハウス内の除湿を行う
ことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項10】
請求項9において、前記凝縮器用ファンから筐体外に吹き出される温風を所望の方向に導く伸縮可能な温風ダクトを前記ヒートポンプ式空気調和機に備え、この伸縮可能な温風ダクトを介して温風ダクトからの温風を前記施設園芸ハウス外に排出すると共に、前記冷風ダクトからの冷風をハウス内に吹き出すことで施設園芸ハウス内への冷風吹出し運転を行うことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記伸縮可能な冷風ダクトを介して冷風ダクトからの冷風を前記施設園芸ハウス外に排出すると共に、前記ハウス内の空気を前記凝縮器用ファンで前記凝縮器に導いて加温し、この加温された空気を前記施設園芸ハウス内に吹き出すことで施設園芸ハウス内への温風吹出し運転を行うことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項12】
請求項9〜11の何れかにおいて、前記ヒートポンプ式空気調和機にキャスタを設置し、前記施設園芸ハウス内の空調対象エリア又はその近傍に前記ヒートポンプ式空気調和機を移動させて空調対象エリアの空調を行うことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。
【請求項13】
ヒートポンプ式空気調和機による施設園芸ハウスの空調方法において、
前記ヒートポンプ式空気調和機の筐体内に、圧縮機、蒸発器、前記蒸発器よりも大きい凝縮器、冷風ダクト、温風ダクト、蒸発器用ファン、前記蒸発器用ファンよりも風量の大きい凝縮器用ファンが収納され、前記温風ダクトにより前記凝縮器用ファンで吹き出す温風を案内すると共に、前記冷風ダクトにより前記凝縮器用ファンで吹き出す冷風を案内するヒートポンプ式空気調和機を用い、
前記ハウス内の空気を前記筐体内に吸込んで前記蒸発器に導き熱交換させた後、前記蒸発器用ファンにより冷風を前記筐体外に吹き出すと共に、前記ハウス内の空気を前記筐体内に吸込んで前記凝縮器に導き熱交換させた後、前記蒸発器用ファンによるよりも大きな風量で前記凝縮器用ファンにより温風を前記筐体外に吹き出し、更に
前記冷風ダクトにより前記冷風を前記ハウス内の所望の方向に案内し、前記温風ダクトにより前記温風を前記ハウス内の所望の方向に案内することで前記ハウス内の除湿を行う
ことを特徴とする施設園芸ハウスの空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−101603(P2011−101603A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256858(P2009−256858)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】