説明

旅客機用乗降機のデッキ接続装置

【課題】起伏式デッキを搭乗口の床に確実に着地でき上下変動に追従できる。
【解決手段】搭乗通路のフロア部の前端部に上下方向に回動自在に支持された接続デッキ52を、起立状態の格納姿勢(ア)と倒伏状態の使用姿勢(イ)の間で起伏可能なデッキ起伏装置61を設け、デッキ起伏装置61に、接続デッキ52を回動させる油圧式の起伏シリンダ63と、起伏シリンダ63に油圧を供給、排出して駆動するデッキ起伏用油圧供給装置64と、使用姿勢(イ)とこの使用姿勢(イ)手前の準備姿勢(ウ)との間で接続デッキ52を検出するリミットスイッチ65とを設け、デッキ起伏用油圧供給装置64に、起伏シリンダ63の進展室63rと収縮室63fとを連通させるパイパス管71と、パイパス管71に介在されてリミットスイッチ65の検出信号によりバイパス管71を連通するシャットオフバルブ69とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式車両に設けられて旅客機の搭乗口に起伏式デッキを接続し、乗客等の乗降に使用される旅客機用乗降機のデッキ接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降自在なカ−ゴ室と旅客機の搭乗口とを接続するために、起伏式の接続デッキを設けたものが、たとえば特許文献1に開示されている。これはカ−ゴ室の出入口に設けられた渡し床を、床動作部により自動的に倒伏して、その先端部を搭乗口に接続するものである。
【0003】
また特許文献2には、リフターにより昇降自在なテーブルに、複数のステップを有する起伏通路と、手動ウインチにより起伏自在な渡し板を設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-137427号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−167054号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、旅客機の乗降口は、乗客の搭乗数や荷の積み下ろしにより、重量が変化して高さが変化する。このため、特許文献1では、渡し床の先端部の位置を床動作部の設定により変化させる必要があり、また乗降途中の変動にも追従させる必要があるが、これらの点は開示されていない。また特許文献2では、手動ウインチにより渡し位置を起伏させるため、掛け渡し時と搭乗口の上昇については問題がないものの、搭乗口の下降時に渡し板と搭乗口の床面とに段差が生じる恐れがある。
本発明は、上記問題点を解決して、起伏式デッキを搭乗口の床に確実に着地でき、搭乗口の上下変動にも確実に追従できる旅客機用乗降機の接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、旅客機の搭乗口に接近離間自在な自走式車両の車体に、乗客が通行可能な搭乗通路を設け、当該搭乗通路のフロア部と搭乗口とを接続可能な旅客機用乗降機のデッキ接続装置であって、
前記搭乗通路のフロア部の前端部に上下方向に回動自在に支持された接続デッキを設け、
起立状態の格納姿勢と倒伏状態の使用姿勢の間で前記接続デッキを起伏可能なデッキ起伏装置を設け、
前記デッキ起伏装置に、前記接続デッキを回動させる油圧式の起伏シリンダと、当該起伏シリンダに油圧を供給、排出して駆動するデッキ起伏用油圧供給装置と、使用姿勢とこの使用姿勢手前の準備姿勢との間で前記接続デッキを検出するデッキ検出器とを設け、
前記デッキ起伏用油圧供給装置に、前記起伏シリンダの進展室と収縮室とを連通させるバイパス管と、当該バイパス管に介在されて前記デッキ検出器の検出信号により当該バイパス管を連通するフリー用操作弁とを設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
バイパス管に、進展室と収縮室との間で出入りする油量を絞る可変絞りバルブを設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、デッキ起伏装置により格納姿勢から使用姿勢に倒伏される接続デッキを、使用姿勢手前の準備姿勢でデッキ傾斜角検出器により検出し、この検出信号に基づいてフリー用操作弁を操作してバイパス管を連通して起伏シリンダを伸縮自在とし、接続デッキを下降可能なフリー状態とすることにより、接続デッキが自重で下方に降下して先端部が搭乗口の床部に着地される。したがって、デッキ起伏装置により格納姿勢から準備姿勢まで接続デッキを降下させるので、接続デッキを掛け渡す時間を短縮することができるとともに、搭乗口の床部の高さが変位されていても、接続デッキの先端部を確実に床部に着地させて接続させることができる。またこの接続姿勢では、搭乗人員や荷の変化により旅客機の機体が上下に変位しても、起伏シリンダが伸縮自在であるため、接続デッキが搭乗口の床部の高さに追従して上下に揺動することができ、搭乗口の床部と接続デッキとの間に隙間が生じるようなことはなく、安定して接続することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、可変絞り弁により、フリー状態の接続デッキの下降速度や追従速度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(c)は本発明に係る旅客機用乗降機の実施例を示し、(a)は接続状態を示す全体平面図、(b)は接続前の状態を示す全体側面図、(c)は接続状態を示す全体側面図である。
【図2】フード接続装置の滑車群を示す概略斜視図である。
【図3】フード接続装置およびデッキ接続装置の接続前の状態を示す拡大縦断面図である。
【図4】フード接続装置およびデッキ接続装置の接続途中の状態を示す拡大縦断面図である。
【図5】フード接続装置およびデッキ接続装置の接続状態を示す拡大縦断面図である。
【図6】(a)および(b)は接続デッキとデッキシフト装置を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図7】デッキ起伏装置を示す構成図である。
【図8】可動手摺り機構を示す平面図である。
【図9】可動フロア手摺りを示す一部切り欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係るフード接続装置を有する旅客機用乗降機の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(乗降機全体)
この乗降機は、図1に示すように、オープンスポットを走行し小型旅客機10の搭乗口10Eに接近して停止し、旅客機10に対して車椅子の利用者を含む乗客等の乗降を行うもので、自走式車両の車体11と、当該車体11に搭載されて旅客および車椅子が通行可能な乗降用の搭乗通路21とを具備し、搭乗通路21の後部に上端部を支点として上下揺動可能な階段装置22と車椅子用のリフター23とが設けられている。また搭乗通路21の前部に、本発明に係るフード接続装置31と、搭乗口10Eに接続デッキ52を掛け渡す起伏式のデッキ接続装置51とが設けられている。
【0012】
車両本体11は、左右一対の前輪12および左右一対の後輪13と、車体11の前部でたとえば左側に設けられた運転席14と、車体11の前後で左右両側にそれぞれ設けられたアウトリガー15とを具備し、これら4個のアウトリガー15により、車体11を固定するとともに、アウトリガー15の伸縮ストロークの範囲で搭乗通路21を昇降して、旅客機10の搭乗口10Eの高さに合わせて搭乗通路21の高さを調整することができる。なお、上下方向に揺動自在な階段装置22を設置したが、下端部を伸縮自在として下端部を着地させることにより、搭乗通路21の昇降に対応させることもできる。
【0013】
搭乗通路21は、天井部材21Rおよびフロア部材21Fならびに窓25を有する左右の側面部材21Sからなる通路構成材により形成され、フロア部材21Fの前部左側に、運転席14が配置されている。また搭乗通路21の後部で天井部材21Rに、階段装置22とリフター23を覆うスライド式のレインルーフ24が所定範囲で出退自在に設けられている。
【0014】
[フード接続装置]
本発明に係るフード接続装置31は、図1〜図5に示すように、搭乗通路21の前部に設けられ、搭乗通路21の前部に前方に出退自在に外嵌されたスライドフード32と、スライドフード32の前部に前傾方向に拡開、縮閉自在に設けられたジャバラ部材33と、ジャバラ部材33の前部に前傾自在に取り付けられたフードフレーム34と、これらスライドフード32、ジャバラ部材33およびフードフレーム34を出退するフード出退装置35とを具備している。
【0015】
すなわち、スライドフード32は、天井面を覆う天井板32Rと、搭乗通路21の上半分を覆う左右のサイド板32Sとで、搭乗通路21を形成する天井部材21Rと側面部材21Sに外嵌される門形状に形成されている。そして、左右のサイド板32Sの内面に、所定角度αで前部下方に傾斜する上下一対の前傾レール36がそれぞれ所定間隔をあけて互いに平行に取り付けられ、搭乗通路21の左右の側面部材21Sに、前傾レール36に移動自在に嵌合する被ガイド体であるスラストベアリング37(またはガイドローラ)が取り付けられている。前傾レール36の傾斜角αを所定以上とすることにより、スライドフード32が自重により前傾レール36に沿って前方に前進され、前傾レール36の後端部に設けられた移動限となるストッパ36aにより停止される。なお、搭乗通路21の左右の側面部材21Sに前傾レール36を取り付け、左右のサイド板32Sの内面にスラストベアリング37を取り付けてもよい。
【0016】
スライドフード32の前部に取り付けられたジャバラ部材33は、折り畳み自在な防水布からなるフードシート33aと、フードシート33aの折り畳んだ頂辺部内面に配置される門形状の複数の揺動支持枠33bからなり、左右のサイド板32Sの下端部から前方に延びる支持アーム38に、ヒンジ39Aを介して揺動支持枠33bの下端部が前後方向に回動自在に支持されている。またフードフレーム34は、上辺部34Rと左右の側辺部34Sとで門形状に形成され、前部内に旅客機10の機体10Fに接触しても傷付けることがないように弾性材34Eが内装されている。そして、左右の側辺部34Sの下端部が支持アーム38にヒンジ39Bを介して回動自在に支持され、フードフレーム34が僅かに前傾する起立姿勢と、前傾して旅客機10の機体10Fに接触する接続姿勢との間で傾動自在に支持される。したがって、フードフレーム34がフード出退装置35により前傾を規制されていない状態では、自重によりフードフレーム34がヒンジ39Bを中心に起立姿勢から接続姿勢に前傾され、これに従ってジャバラ部材33がヒンジ39Aを中心に前方に拡開される。
【0017】
フード出退装置35は、図2に示すように、1本のワイヤロープ(索体)41と左右のガイド滑車群42と駆動滑車群43と1本の油圧式出退シリンダ(出退駆動装置)44とを具備している。そして、この1本の出退シリンダ44を出退駆動することにより、ワイヤロープ41を介してスライドフード32、ジャバラ部材33およびフードフレーム34の自重による前傾速度を規制するとともに、前傾した接続姿勢のスライドフード32の起立、後退と、ジャバラ部材33の縮閉とフードフレーム34の後退を行って格納姿勢にすることができる。しかも、搭乗口10Eの開口面に垂直な軸に対して搭乗通路21が傾斜していても、左右両側にワイヤロープ41が押し引き自在であることから、フードフレーム34の幅方向に傾斜されて機体10Fに密に接触させることができる。
【0018】
前記ガイド滑車群42は、スライドフード32のサイド板32Sの上位前部に設置された前可動ガイド滑車42Aと、上位後部に設けられた後可動ガイド滑車42Bと、サイド板32Sで上下の前傾レール36間の中央位置に対応して設置された位置調整用の可動調整滑車42Cと、搭乗通路21の側面部材21Sの前部で可動調整滑車42Cに対して前傾レール36と平行な後方に設置された固定調整滑車42Dと、当該固定調整滑車42Dの上方で搭乗通路21の上辺コーナー部に設けられた転向固定滑車42Eとで構成されている。そして、可動調整滑車42Cから固定調整滑車42Dに案内されるワイヤロープ41が前傾レール36に平行となるように構成している。
【0019】
また駆動滑車群43は、搭乗通路21の天井部材21Rに固定された支持板45の左右両側部と中央部に設置された3個の固定滑車43A,43Bと、これら固定滑車43A,43B間の後方で可動板46に設置された左右一対の動滑車43Cとを具備し、可動板46が出退シリンダ44のピストンロッドに連結されて前後方向に移動可能に構成されている。そしてこれら駆動滑車群43と出退シリンダ44は駆動部カバー47に覆われている。
【0020】
前記ワイヤロープ41は、フードフレーム34の上コーナー部の固定端41aに両端部が連結され、固定端41aから後方に延びてガイド滑車群42の前可動ガイド滑車42Aから後可動ガイド滑車42Bに案内され、さらに後可動ガイド滑車42Bから下方に導出された後、可動調整滑車42Cに巻き掛けられる。さらに可動調整滑車42Cから導出されたワイヤロープ41が、前傾レール36と平行に後方に延びて固定調整滑車42Dに巻き掛けられた後、転向固定滑車42Eから駆動滑車群43の左右の固定滑車43Bに導入される。さらに固定滑車43Bから動滑車43Cに掛け回されて中央の固定滑車43Aに導入されて左右部分のワイヤロープ41が連続されて1本となる。したがって、この駆動滑車群43により、出退シリンダ44の出退速度の1/2の速度でワイヤロープ41を繰り出し、引き込み駆動することができる。
【0021】
このフード出退装置35において、スライドフード32が後退されジャバラ部材33が縮閉されフードフレーム34が起立された格納姿勢から、出退シリンダ44が進展されて動滑車43Cを前方に移動されてワイヤロープ41が繰り出されると、自重により、スライドフード32がジャバラ部材33およびフードフレーム34と共に前傾レール36に沿って前進されて機体10Fに接近され、スラストベアリング37がストッパ36aに当接されてスライドフード32が移動限で停止される。さらにワイヤロープ41が繰り出されると、フードフレーム34が自重により前傾されてジャバラ部材33が拡開され、フードフレーム34が前傾して機体10Fに接触し、この接続姿勢でワイヤロープ41の繰り出しが停止される。この時、搭乗口10Eの開口面に対して垂直な軸から搭乗通路21が傾斜していても、フードフレーム34の両側部が1本のワイヤロープ41で連結されていることから、ワイヤロープ41の左右部分が自在に押し引き移動されて、フードフレーム34の両側部が前後に傾動し、フードフレーム34の前面全体が機体10Fに均一に接触させることができる。これにより、フードフレーム34と機体10Fとの間に隙間が生じることなく、荒天時に雨風が吹き込むことがない。また可動調整滑車42Cと固定調整滑車42Dとにより、上下の前傾レール36間の中心位置で前傾レール36と平行にワイヤロープ41を張って押し引きすることにより、スライドフード32をスムーズに安定して前進、後退させることができる。
【0022】
そして接続姿勢から格納姿勢にする時には、出退シリンダ44を収縮させることにより、上記と逆の手順でフードフレーム34の起立、ジャバラ部材33の縮閉、スライドフード32の後退が行われる。
【0023】
[デッキ接続装置]
次に、搭乗口10Eとの間に接続デッキ52を掛け渡すデッキ接続装置51を、図3,図6〜図8を参照して説明する。
【0024】
このデッキ接続装置51は、搭乗通路21のフロア部材21F前端部でヒンジ部53を介して起伏フレーム54が水平軸心周りに回動自在に支持され、起伏フレーム54上に、デッキシフト装置81により幅方向にシフト自在で車椅子が通過可能な接続デッキ52が設置されている。そして、この接続デッキ52を、垂直に起立する格納姿勢(ア)と、略水平に倒伏される使用姿勢(イ)との間で起伏フレーム54を介して起伏可能なデッキ起伏装置61が設けられている。
【0025】
(デッキ起伏装置)
デッキ起伏装置61は、図3,図6に示すように、起伏フレーム54の裏面に取り付けられて後方に延びる駆動アーム62と、フロア部材21Fの裏面に支持されてピストンロッドがピンを介して駆動アーム62に回動自在に連結された油圧式の起伏シリンダ63と、この起伏シリンダ63に油圧を供給、排出して駆動する図7に示すデッキ起伏用油圧供給装置64と、たとえば水平の使用姿勢(イ)より所定の設定角θ手前の準備姿勢(ウ)で接続デッキ52(起伏フレーム54)を検出するリミットスイッチ65(デッキ検出器)とを具備している デッキ起伏用油圧供給装置64は、油圧ポンプ66とオイルタンク76から電磁式の起伏操作バルブ67を介して起伏シリンダ63の進展室63rと収縮室63fに圧油を給排出する圧油給排管68A,68Bと、この圧油給排管68A,68Bと起伏シリンダ63の進展室63fと収縮室63rとを連通するバイ管71と、このバイ管71に介在されリミットスイッチ65の検出信号によりバイ管71を連通させ起伏シリンダ63をフリー状態とする電磁式のシャットオフバルブ(フリー用操作バルブ)69とを具備している。また起伏操作バルブ67の出口側の圧油給排管68A,68Bに、反対側の圧油給排管68A,68Bのクラッキング圧を検出して開放するパイロットチェックバルブ70A,70Bが介在されている。なお、シャットオフバルブ69は、解除レバーや解除ボタンによる手動操作で連通するII位置から遮断するI位置に操作可能に構成されている。
【0026】
前記バイ管71は、一方の圧油給排管68A,68Bからシャットオフバルブ69を介して他方の圧油給排管68B,68Aに接続し、圧油給排管68A,68Bに接続された入口バイ部71a,71bにシャットオフバルブ69側にのみ流入を許す入口チェックバルブ72A,72Bが介在され、また入口バイ部71a,71bからシャットオフバルブ69に接続される合流バイ部71cに、接続デッキ52の準備姿勢(ウ)から使用姿勢(イ)までの倒伏速度を調整可能な可変絞りバルブ73が介在されている。さらにシャットオフバルブ69から圧油給排管68A,68Bに接続された出口バイ部71d,71eに、圧油給排管68A,68B側にのみ流出を許す出口チェックバルブ74A,74Bが介在されている。なお、このバイ管71とオイルタンク76との間には、起伏シリンダ63のピストンロッドによる容積変動に対処する余剰油給排管75が接続されている。
【0027】
上記構成において、接続デッキ52の準備姿勢(ウ)から使用姿勢(イ)の間は、リミットスイッチ65がオンされてシャットオフバルブ69が連通されており、バイ管71を介して進展室63fと収縮室63rとが連通されて起伏シリンダ63がフリー状態となっている。したがって、起伏フレーム54や接続デッキ52などの自重と可変絞りバルブ73の開度とにより決定される所定の倒伏速度で、接続デッキ52が準備姿勢(ウ)から下降され、接続デッキ52の先端部が搭乗口10Eの床面に接する使用姿勢(イ)で停止される。これにより、搭乗口10Eの高さの変化に追従して接続デッキ52を停止させることができる。また使用姿勢(イ)ではシャットオフバルブ69が連通して起伏シリンダ63のフリー状態が継続されることから、旅客機10に客の乗降、荷の積み下ろしによって機体10Fの高さが変化して搭乗口10Eの高さが変わった場合でも、接続デッキ52が上下方向に揺動して追従することができ、搭乗口10Eの床面と接続デッキ52との間に隙間ができることがない。
【0028】
また、準備姿勢(ウ)の設定角θは、たとえば10°〜25°の範囲に設定され、これは設定角θが25°を越えると、準備姿勢(ウ)から使用姿勢(イ)までの降下時間が長くかかりすぎるからであり、設定角θが10°未満では、搭乗口10Eの高さが高い時に接続デッキ52の先端部が搭乗口10Eの床部に衝突するおそれがあるからである。また通常、接続デッキ52の使用姿勢(イ)である略水平とは、+5°から−5°の範囲をいい、準備姿勢(ウ)から使用姿勢(イ)までの接続デッキ52がフリーとなる範囲は、設定角θ+β(β=−5°)の範囲となる。
【0029】
(デッキシフト装置)
デッキシフト装置81は、図6に示すように、起伏フレーム54上で接続デッキ52を幅方向に案内するデッキガイド部82と、接続デッキ52をシフトするデッキシフト駆動部83と、図8に示すフロア部材21Fの前部に設けられた可動手摺り機構84とを具備している。
【0030】
デッキガイド部82は、起伏フレーム54の上面に幅方向に敷設された前後一対のガイドレール85と、接続デッキ52の底面に設けられてガイドレール85にスライド自在に係合されたスライド部材(リニアモーションガイド)86とで構成されている。またデッキシフト駆動部83は、接続デッキ52の底面に設けられてピストンロッドが起伏フレーム54に連結されたデッキシフトシリンダ87と、電源によりデッキシフトシリンダ87を伸縮駆動する油圧駆動ユニット88とで構成されている。
【0031】
ところで、接続デッキ52は、床板52Fと左右のサイド板52Sとにより溝形断面に形成され、左右側部にデッキ手摺り55R,55Lを立設している。通常、フロア部材21Fの前部にも左右のフロア手摺りを設置するが、デッキシフト装置81により接続デッキ52がシフトされると、両手摺り間の隙間δが20cmを超えて拡大され、小児などが隙間δをすり抜けて落下する恐れがある。このため、この手摺り間の隙間δの拡大を防ぐために可動手摺り機構84が設けられている。この可動手摺り機構84は、フロア部材の21Fの左右両側に後端側を中心に幅方向に揺動自在な可動フロア手摺り89R,89Lを設け、これら可動手摺り89R,89Lの前端側に位置調整可能な手摺り着脱具90が設けられている。
【0032】
可動フロア手摺り89R,89Lは、図9に示すように、後端側の固定端ポスト91と前部の遊端ポスト92とを上下の横桟パイプ93で連結し、遊端ポスト92に遊端側に張出すコの字形の延長ガイド94を取り付けている。そして、固定端ポスト91の下端部がフロア部材21Fに形成された支持床穴95に回動自在に嵌合されて抜け止めされている。またフロア部材21Fの左右両側に、複数のアジャスト床穴96が形成されており、遊端ポスト92の手摺り着脱具90が連結される。この手摺り着脱具90は、下端部がアジャスト床穴96に嵌合離脱自在な固定ロッド97が遊端ポスト92の中空穴に出退自在に嵌合され、この固定ロッド97が内装されたコイルばね98により下方に付勢されている。そして遊端ポスト92の上端から突出する固定ロッド97の上端部に離脱用ノブ99が取り付けられている。
【0033】
これにより、デッキシフト装置81により左右にシフトされた接続デッキ52に対応して目的のアジャスト床穴96を選択し、離脱用ノブ99により固定ロッド97をアジャスト床穴91から抜き出して可動フロア手摺り89R,89Lの固定を解除する。そして可動フロア手摺り89R,89Lを目的のアジャスト床穴91まで揺動させて離脱用ノブ99を離し、固定ロッド97の下端部を目的のアジャスト床穴91に装着する。これによりデッキ手摺り55R,55Lと可動フロア89R,89Lの隙間δを小さくできて乗客の落下を防止できる。
【0034】
[搭乗機の接続手順]
次に旅客機10に対する乗降機の接続作業を説明する。
1)運転席14に乗車した作業員により車体11を走行させ、目的の旅客機10で開閉扉10Gが開けられたの搭乗口10Eに向かって、機体10Fの軸心に略直角方向から接近させる。そして搭乗通路21のフロア部材21Fの前端部に設置された距離センサ16でセンシングし、機体10Fとの距離がたとえば700mmとなると、車体11を停止する。
【0035】
2)アウトリガー15をそれぞれ進展して地面に着地させ、車体11を固定するとともに、旅客機10の搭乗口10Eの高さに対応して車体11、すなわち搭乗通路21の高さを調整する。
【0036】
3)階段装置22を下方に回動して下端部を着地させる。
4)デッキ起伏用油圧供給装置64により起伏シリンダ63を進展させて格納姿勢(ア)の接続デッキ52を前傾させ、遊端部を降下させる。
【0037】
5)接続デッキ52の先端側が扉付き手摺り10Sに接近する中間調整姿勢(エ)たとえば傾斜角が30°〜45°付近で接続デッキ52を一端停止させる。そして、デッキシフト装置81のデッキシフトシリンダ87を駆動して接続デッキ52を幅方向に変位させ、接続デッキ52が扉付き手摺り10Sに接触しないように幅方向の位置位置を調整する。
【0038】
6)起伏シリンダ63を進展させて接続デッキ52をさらに降下させ、準備姿勢(ウ)になると、所定の設定角αでリミットスイッチ65が接続デッキ52を検出し、この検出信号に基づいてシャットオフバルブ69が遮断位置(I位置)から連通位置(II位置)に操作される。これにより、接続デッキ52がフリー状態となり、自重により使用位置(イ)まで下降して先端部が搭乗口10Eの床部に着地される。
【0039】
7)接続デッキ52をシフトさせることにより、デッキ手摺り55R,55Lと可動フロア手摺り89R,89Lとの隙間δを200mm以下とするために、最も接近するアジャスト床穴96を選択し、遊端部の手摺り着脱具90の離脱用ノブ99を引き上げて固定ロッド97をアジャスト床穴96から外して可動フロア手摺り89R,89Lを回動させ、固定ロッド97をアジャスト床穴96に嵌め込み、可動フロア手摺り89R,89Lを固定する。
【0040】
8)雨天時には、フード出退装置35の出退シリンダ44を進展させて動滑車43Cを前進させ、ワイヤロープ41を繰り出すと、まず傾斜レール36の作用でスライドルーフ32が前部下方に沿って前進し、傾斜レール36のストッパ36aで停止される。
【0041】
9)出退シリンダ44を進展させてワイヤロープ41をさらに繰り出すと、フードフレーム34が前傾されてジャバラ部材33が拡開され、フードフレーム34が搭乗口10E上部の機体10Fに接触して停止される。
【0042】
10)旅客機10に乗車する場合、一般客は階段装置22から搭乗通路21のフロア部材21Fに上がり、接続デッキ52から搭乗口10Eを介して旅客機10に搭乗する。また車椅子の利用者は、リフター23により搭乗通路21のフロア部材21Fに移動し、接続デッキ52から搭乗口10Eを介して旅客機10に搭乗する。
【0043】
乗降装置の離脱手順は、レバーによりシャットオフバルブ69を遮断操作して起伏シリンダ63を駆動状態とした後、上記と逆の手順で行えばよい。
(フード接続装置の効果)
フード接続装置31の構成によれば、一本のワイヤロープ41の両端部をフードフレーム34の遊端側で左右両側の固定端41aに連結し、出退シリンダ44によりワイヤロープ41の中間部が移動自在に掛止された動滑車43cを前進させてワイヤロープ41を繰り出し、ジャバラ部材33を展開してフードフレーム34を前傾させてジャバラ部材33を拡開させ、フードフレーム34を搭乗口10E上部の機体10Fに接触させる。この時、ワイヤロープ41が中間部で動滑車43Cにより移動自在に掛止されることから、ワイヤロープ41が左右両側に移動されて連結端41aが前後方向に移動自在となり、フードフレーム34の左右両側部で前後方向の傾斜に追従することができ、機体10Fとフードフレーム34との間に隙間ができることがない。したがって、簡単な構造で搭乗口10Eの開口面に垂直な軸に対して乗降通路21が傾いていても、フードフレーム34を機体10Fに均一に接触させることができ、荒天時に搭乗口10Eと搭乗通路21との接続部で風雨が吹き込むのを確実に防止することができる。
【0044】
また搭乗通路21の構成部材とジャバラ部材33との間に、前傾レール36とスラストベアリング37を介して自重で前進自在なスライドルーフ32を設けたので、出退シリンダ44によりワイヤロープ41を繰り出すことで、スライドルーフ32を前進させることができる。これによりスライドルーフ32専用の出退装置が不要となり、またフードフレーム34の出退ストロークを長く確保することができる。したがって、旅客機10から車体までの停止距離を十分確保できて安全に接続作業を行うことができる。さらに、前傾レール36とスラストベアリング37により、搭乗通路21に自重で前進可能なスライドルーフ32を容易に設置することができる。
【0045】
さらにまた、フード出退装置35において、ガイド滑車群42と駆動滑車群43とを介してワイヤロープ41をスムーズに繰り出し、引き込みすることができ、ワイヤロープ41によりスライドルーフ32のスムーズな出退と、ジャバラ部材33の展開、縮閉と、フードフレーム34の前傾、起立とを行うことができる。
【0046】
また、可動調整滑車42Cと固定調整滑車42Dとにより上下の前傾レール36間で前傾レール36と平行にワイヤロープ41を張設し、前傾レール36と平行にワイヤロープ41を押し引きすることで、スライドルーフ32を安定してスムーズに前進、後退させることができる。
【0047】
(デッキ起伏装置の効果)
上記デッキ起伏装置61の構成によれば、接続デッキ52が格納姿勢(ア)から使用姿勢(イ)に倒伏される途中の準備姿勢(ウ)でリミットスイッチ65により接続デッキ52を検出し、この検出信号に基づいてシャットオフバルブ69を操作し起伏シリンダ63の進展室63rと収縮室63fとを連通させることにより起伏シリンダ63を伸縮自在とし、接続デッキ52を下降自在なフリー状態とすることにより、接続デッキ52は自重で下方に降下して先端部が搭乗口10Eの床部に着地される。したがって、搭乗口10Eの床部の高さが変化していても、接続デッキ52の先端部を確実に搭乗口10Eの床部に着地させることができる。また使用姿勢(イ)でも、シャットオフバルブ69がII位置で起伏シリンダ63のフリー状態が継続されることから、旅客機の搭乗人員の乗降や荷の搬入出により、機体10Fの変位に従って搭乗口10Eの床部が上下に変位しても、接続デッキ52が搭乗口10Eの床部に追従して上下に変位させることができ、搭乗口10Eの床部と接続デッキ52との間に隙間が生じるようなことはない。
【0048】
また、リミットスイッチ65の検出信号によりシャットオフバルブ(フリー用操作弁)を操作してバイ管71により圧油給排管68A,68Bを互いに接続するとともに、余剰油給排管75によりピストンロッドの容積分の余剰油をオイルタンク76に吸引排出することにより、起伏シリンダ63を伸縮自在に保持することができ、接続デッキを昇降自在なフリー状態とすることができる。さらに入口バイ管70a,70bに介在された可変絞りバルブ73により、フリー状態の接続デッキ52の下降速度や追従速度を調整することができ、接続デッキ52を任意の速度で降下させて掛け渡すことができる。
【0049】
(デッキシフト装置の効果)
上記構成によれば、デッキ起伏装置61により起立した格納姿勢(ア)の接続デッキ52を倒伏して準備姿勢(ウ)の手前で、接続デッキ52の先端部が搭乗口10Eや開閉扉10Gの扉付き手摺り10Sに接近する中間調整姿勢(エ)で一旦停止させ、デッキシフト装置81のデッキシフトシリンダ87を作動して接続デッキ52を幅方向にシフトし、その先端部が扉付き手摺り10Sなどに接触しないように位置調整することができる。したがって、搭乗口10Eに対して車体11が停止する位置がずれて搭乗通路21の接続デッキ52と搭乗口10Eとが幅方向にずれた場合であっても、デッキシフト装置81により接続デッキ52をシフトさせることで、接続デッキ52の先端部を精度良く搭乗口10Eの床部に掛け渡すことができ、接続デッキ52が扉付き手摺り10Sに接触することがない。
【0050】
また搭乗通路21の前部のフロア部材21Fに、可動フロア手摺り89R,89Lを有する可動手摺り機構84を設けたので、幅方向にシフトされた接続デッキ52に対応して、可動フロア手摺り89R,89Lを揺動してその前部遊端をデッキ手摺り55R,55Lに最も接近する位置に位置調整し手摺り着脱具90により固定することができる。これにより、接続デッキ52を幅方向にシフトさせても、デッキ手摺り55R,55Lと可動フロア手摺り89R,89Lとの間に大きな隙間が生じることなく、安全に乗降することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 旅客機
10E 搭乗口
10S 扉付き手摺り
11 車体
14 運転席
15 アウトリガー
16 距離センサ
21 搭乗通路
21F フロア部材
22 階段装置
23 リフター
24 レインルーフ
31 フード接続装置
32 スライドルーフ
33 ジャバラ部材
34 フードフレーム
35 フード出退装置
36 前傾レール
37 スラストベアリング(被ガイド体)
41 ワイヤロープ(索体)
41a 固定端
42 ガイド滑車群
43 駆動滑車群
43A,43B 固定滑車
43C 動滑車
44 出退シリンダ(出退駆動装置)
51 デッキ接続装置
52 接続デッキ
53 ヒンジ部
54 起伏フレーム
55R,55L デッキ手摺り
61 デッキ起伏装置
63 起伏シリンダ
63f 進展室
63r 収縮室
64 デッキ起伏用油圧供給装置
65 リミットスイッチ(デッキ検出器)
66 油圧ポンプ
67 起伏操作バルブ
69 シャットオフバルブ(フリー用操作弁)
71 バイ管
73 可変絞りバルブ
75 余剰油給排管
81 デッキシフト装置
83 デッキシフト駆動部
84 可動手摺り機構
85 ガイドレール
86 スライド部材
87 デッキシフトシリンダ
89R,89L 可動フロア手摺り
90 手摺り着脱具
96 アジャスト床穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客機の搭乗口に接近離間自在な自走式車両の車体に、乗客が通行可能な搭乗通路を設け、当該搭乗通路のフロア部と搭乗口とを接続可能な旅客機用乗降機のデッキ接続装置であって、
前記搭乗通路のフロア部の前端部に上下方向に回動自在に支持された接続デッキを設け、
起立状態の格納姿勢と倒伏状態の使用姿勢の間で前記接続デッキを起伏可能なデッキ起伏装置を設け、
前記デッキ起伏装置に、前記接続デッキを回動させる油圧式の起伏シリンダと、当該起伏シリンダに油圧を供給、排出して駆動するデッキ起伏用油圧供給装置と、使用姿勢とこの使用姿勢手前の準備姿勢との間で前記接続デッキを検出するデッキ検出器とを設け、
前記デッキ起伏用油圧供給装置に、前記起伏シリンダの進展室と収縮室とを連通させるバイパス管と、当該バイパス管に介在されて前記デッキ検出器の検出信号により当該バイパス管を連通するフリー用操作弁とを設けた
ことを特徴とする旅客機用乗降機のデッキ接続装置。
【請求項2】
バイパス管に、進展室と収縮室との間で出入りする油量を絞る可変絞りバルブを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の旅客機用乗降機のデッキ接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−208509(P2010−208509A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57251(P2009−57251)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)