旋回光線放射装置
【課題】救助ヘリコプターを緊急離発着場に確実に誘導できる標識用の光線を放射できるとともに、災害発生場所の近隣住民に避難勧告を発する場合の非常発生報知灯、救助活動での安全避難場所への住民の避難誘導灯および災害復旧の夜間作業現場を照らす照明灯などの広範囲な用途に好適に兼用できるような旋回光線放射装置を提供する。
【解決手段】筒状の一端部に光前方放射口7が開口され、且つ光前方放射口7の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口10A,10Bが形成された外装筒体4と、外装筒体4に内装された放電ランプ21と、両面に反射面8a,8bを有して外装筒体1内に回転自在に設けられ、回転に伴って放電ランプ21の発光光線を一方の光側方放射口10A、光前方放射口7および他方の光側方放射口10Bに向け順次反射して旋回させる回転反射板8と、回転反射板8を連続的に回転駆動する電動モータ32とを備えている。
【解決手段】筒状の一端部に光前方放射口7が開口され、且つ光前方放射口7の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口10A,10Bが形成された外装筒体4と、外装筒体4に内装された放電ランプ21と、両面に反射面8a,8bを有して外装筒体1内に回転自在に設けられ、回転に伴って放電ランプ21の発光光線を一方の光側方放射口10A、光前方放射口7および他方の光側方放射口10Bに向け順次反射して旋回させる回転反射板8と、回転反射板8を連続的に回転駆動する電動モータ32とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害が発生した非常時の特に夜間において救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、救助活動での安全避難場所への近隣住民の誘導灯、災害発生を近隣住民に報知して避難勧告を発する場合の避難勧告灯、或いは災害復旧の夜間作業時の照光灯等の広範囲な用途に好適に用いることができる旋回光線放射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等の災害が発生した非常時には、機動性に富みながらも比較的狭い離発着場でも容易に離発着できる簡便な飛行手段である救助ヘリコプターが災害救助活動に広く活用されており、この救助ヘリコプターを臨時に離発着させるための緊急離発着場が災害発生地の近傍の適当な場所に設定される。このように救助ヘリコプターの緊急離発着場を臨時に設定した場合には、特に夜間において救助ヘリコプターを安全裡に離発着できるように誘導するための標識灯を設置することが必要となる。このような用途の標識灯に用いられる従来の照光装置としては、照明制御盤の手動操作または防災センター等からの遠隔操作により放射ビーム光の点灯と消灯とを繰り返すようにしたものが一般的に採用されている。
【0003】
ところが、上述の誘導標識灯としての照光装置は、直線光線としての強い光ビームが上方の一定方向に向けて常時投射されているので、緊急離発着場から離れた上空からは目的場所を確認し易いが、救助ヘリコプターが緊急離発着場に近づいたときに、救助ヘリコプターの操縦士にとって必ずしも確実に視認できる見易い標識灯とはならない。しかも、上記照光装置は、近隣の多くの街明かりの光と判別する目的で放射光ビームが点滅されるようになっていることから、光ビームが消灯する毎に瞬間的であっても目標とする緊急離発着場を見失うにことになるので、救助ヘリコプターの誘導標識灯として最適のものとは言い難い。
【0004】
そこで、従来では、上述した不具合の解消を図ったヘリコプター緊急離発着場用標識灯が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この標識灯は、複数個を並べた発光ダイオードにより平行光線を放射する発光部がこれの光軸方向が鉛直方向上方を向く配置でパネル基材上に設けられたランプ本体と、このランプ本体に覆設されて各発光ダイオードの光を透過させるカバー体と、このカバー体における発光部の真上に位置する頂部側から略漏斗状に垂設されて外周面が鏡面に形成された反射ミラーとを備えている。この標識灯は、発光部からの平行光が反射ミラーにより周囲側方へ反射されて、その光軸が水平方向から上方へ向け30度程度の任意角度の範囲内に拡散照射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−23405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のヘリコプター緊急離発着場用標識灯は、照光の光軸が水平方向から上方へ向け30度程度の任意角度の範囲内に拡散照射されるので、救助ヘリコプターが緊急離発着場の近くまで飛来した場合に、直線光線の光ビームに比較して目的場所を視認し易い照光となる利点がある反面、救助ヘリコプターが緊急離発着場から遠く離れた上空を飛行中には、近隣に点在する多くの照明光と区別して緊急離発着場の照光であると認定
するのが難くなる。そこで、このヘリコプター緊急離発着場用標識灯においても、トグルスイッチなどのスイッチを手動操作して発光部を点滅させるようになっており、やはり照明光を点滅させることによる上述の課題が存在する。
【0007】
ところで、現在では、夜間において上空に向け光放射する装置として、上述のヘリコプター緊急離発着場用標識灯やライトアップ等のイベント用が主なものであり、地震、台風、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害の発生時において、異常発生を近隣住民に迅速に報知したり、或いは所定の緊急避難場所に誘導できるような特殊な照光を放射するような報知誘導灯が見当たらないのが実情である。また、例えば河川の崩壊や土砂崩れなどが発生した場合にその復旧工事の夜間作業を行うに際しては、対岸の堤防に設置して作業場所を照らし出す照光装置が用いられている。このように各用途にそれぞれ専用の照光放射装置を製作することは非常に不経済である。そこで、救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、災害発生場所の近隣住民に避難勧告を報知するための非常発生報知灯、救助活動での安全避難場所への住民の避難誘導灯および災害復旧の夜間作業現場を照らし出す照明灯などの広範囲な用途に兼用できるような照光放射装置の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、救助ヘリコプターを緊急離発着場に確実に誘導できる標識用の光線を放射できるとともに、災害発生場所の近隣住民に避難勧告を発するための非常発生報知灯、救助活動での安全避難場所への住民の避難誘導灯および災害復旧の夜間作業現場を照らし出す照明灯などの広範囲な用途にも好適に兼用できるような旋回光線放射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の旋回光線放射装置は、筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、前記外装筒体に内装された放電ランプと、両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータとを備えている。
【0010】
請求項2に係る発明の旋回光線放射装置は、筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、前記外装筒体に内装された放電ランプと、両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータと、前記放電ランプの発光光線を反射して前記光前方放射口に向けた平行光線に変換する椀状の反射鏡とを備え、前記回転反射板が、前記反射鏡の開口端内周面よりも小さい外形を有して前記反射鏡に対し同心の相対配置で設けられている。
【0011】
請求項3に係る発明の旋回光線放射装置は、請求項1または2に係る旋回光線放射装置において、前記回転反射板が、円形または多角形を有し、回転支軸を介して前記外装筒体内に回転自在に支持されている。
【0012】
請求項4に係る発明の旋回光線放射装置は、請求項1から3の何れか一項に係る旋回光線放射装置において、前記回転反射板が、回転支軸で支持される中央部位を境界として分
割された二つの半部を有するとともに、これら二つの半部が90度以下の所要角度で一体に連接されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る旋回光線放射装置によれば、放電ランプからの発光が回転反射板に当たることなく光前方放射口から一定方向へ向け常時放射される直進光線と、放電ランプからの発光が回転反射板の反射面で反射して回転反射板の回転に伴い一方の光側方放射口、光前方放射口および他方の光側方放射口から側方に向けて順次放射するように旋回される旋回光線との二種の光線を放射するとともに、直線光線および旋回光線の各々の照光範囲が回転反射板の回転に伴って変化する。このように一方向へ向けた直進光線と側方へ向け旋回する旋回光線との二種の光線が組み合わされているので、従来の種々の標識灯から発せられる不動光とは異なり極めて判別が容易な光線となることから、緊急離発着場の近傍に多くの照明光などが点在している場合であっても、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸目標となる緊急離発着場を正確に判別することができる。したがって、この旋回光線放射装置は、災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識装置として極めて好適なものとなる。
【0014】
また、この旋回光線放射装置は、照光範囲が順次変化しながら一方向へ向けて放射される直進光線と、照光範囲が変化しながら側方の一方向に向け旋回する旋回光線との二種の光線の組み合わせになっており、現在までに全く存在しない極めて特殊な光線を放射するものになっているため、災害発生場所に設置して近隣住民に対し避難勧告を促す報知灯や、救助活動において近隣住民に安全避難場所へ導くための誘導灯などに有効に活用することができる。さらに、回転反射板を放電ランプの光線と平行な角度に位置決め停止させれば、放電ランプの発光光線のほぼ全てを光前方放射口から不動光として放射させることができるので、災害復旧の夜間作業時の照明灯としても有効に活用することもできる。このように、この旋回光線放射装置は、一台で種々の用途に兼用することができるから、大きな経済的効果が得られる利点がある。
【0015】
請求項2に係る旋回光線放射装置によれば、反射鏡により放電ランプの発光を平行光線に変換して回転反射板に導くことにより、旋回光線の旋回角度を大きく設定することができる。また、直進光線が、光前方放射口から前方へ向けた不動光として消灯することなく常に放射され続けるとともに、その照光範囲が最大範囲まで大きくなったのちに最小範囲まで小さくなるように可変するから、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸地点である緊急離発着場を常に見失うことなく確実に確認し続けることができる。
【0016】
請求項3に係る旋回光線放射装置によれば、回転反射板を円形とすれば、外装筒体も回転反射板に対応した円筒形状として装置の小型化を図ることができ、回転反射板を、多角形、特に四角形にすれば、円板形状に比べて反射面の反射面積が大きくなり、側方回りに旋回させる旋回光線の光強度が大きくなって、光線を一層遠方まで到達させることができるので、特に、避難勧告を促す報知灯や近隣住民を安全避難場所へ導くための誘導灯として用いる場合に一層有効なものとなる。
【0017】
請求項4に係る旋回光線放射装置によれば、回転反射板の一対の半部の放電ランプからの発光の全てを遮ることのできる大きな面積としながらも、左右の少なくとも何れか一方から直進光線を常に放射させて標識光とすることができるから、反射面の面積が大きくなる分だけ旋回光線の照光範囲が大きくなって広範囲に放射することができ、しかも、装置の大型化を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る旋回光線放射装置を示す全体斜視図である。
【図2】同上の旋回光線放射装置における放射装置本体を示す切断側面図である。
【図3】同上の放射装置本体を示す切断平面図である。
【図4】同上の放射装置本体を示す正面図である。
【図5】同上の放射装置本体における回転反射板が0度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図6】同上の回転反射板が25度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図7】同上の回転反射板が45度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図8】同上の回転反射板が70度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図9】同上の回転反射板が90度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る旋回光線放射装置の放射装置本体を示す切断側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る旋回光線放射装置の放射装置本体の回転反射板が0度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図12】同上の回転反射板が45度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図13】同上の回転反射板が90度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図14】同上の回転反射板が135度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る旋回光線放射装置を示す全体斜視図である。この旋回光線放射装置は、旋回光線を放射する放射装置本体1と、この放射装置本体1を搭載して運搬する可搬台車2および放射装置本体1に駆動電力を供給する可搬型電源装置3とを備えて構成されている。放射装置本体1は、円筒状の外装筒体4の内部に後述する発光機構が内装されており、外装筒体4の一端部が開口して光前方放射口7が設けられ、外装筒体4の内部における光前方放射口7の近傍箇所に、円板状の回転反射板8が上下2本の回転支軸9により外装筒体4に回転自在に支持されている。また、放射装置本体1には、両回転支軸9に対する両側方位置にそれぞれ、回転反射板8よりも僅かに大きな径を有するほぼ半円形状に切り欠かれて光前方放射口7にそれぞれ連通する一対の光側方放射口10A,10Bが形成されている。
【0020】
前記可搬台車2は、二対四つの車輪11により走行可能になっており、ほぼV字形状の支持台12が、これの下端中央部を回転盤13上に載置して固定されることにより、回転盤13を介して回動自在に取り付けている。支持台12の両側上端部には放射装置本体1が支持軸14回りに回動可能に支持されている。これにより、放射装置本体1は、支持軸14回りに回動させることにより、光前方放射口7の仰角を任意の角度に変更して設定することができるとともに、支持台12を回転盤13回りに回動させることにより、光前方放射口7を水平方向の360度における任意の向きに変更して設定することができるようになっている。なお、図示省略しているが、放射装置本体1を変更後の仰角および向きに仮固定する機構が設けられているのは勿論である。
【0021】
前記可搬型電源装置3は、自己発電機能を有する直流発電機(図示せず)を内蔵し、二対四つの車輪17により走行可能になっている。この可搬型電源装置3と放射装置本体1とは、複数の配電線18により相互に電気的接続されて、電源装置3の発電電力が放電装
置本体1の発光機構部に対し駆動電力として供給されるようになっている。なお、この電源装置3は、直流発電機に代えて、商用交流電源を使用することも可能になっている。
【0022】
図2は前記放射装置本体1の切断側面図、図3はその切断平面図、図4はその正面図をそれぞれ示す。図2および図3に示すように、外装筒体4は、本体筒部19の前方側(図の右方側)に本体筒部19よりも径の小さい導光筒部20が連結されてなり、本体筒部19の内側中心部には、強い光を発する放電ランプ21が本体筒部19の軸心に沿った配置で取り付けられている。放電ランプ21としては、この実施形態において、キセノンガス中のアーク放電による光を利用したキセノンランプを用いている。放電ランプ21は、本体筒部19内に固定された後壁板22と支持扞23とに架け渡す配置で取り付けられており、給電線24を介して電源装置3からの駆動電力が供給されるようになっている。また、放電ランプ21は、調整つまみ27を手動操作することにより、その位置を微調整できるようになっている。
【0023】
図2〜図4に明示するように、前記本体筒部19内には、放電ランプ21に対し同心状の相対配置で外側から囲むように位置された反射鏡28が、4本の保持扞29により本体筒部19内の中央部に固定されている。この反射鏡28は、椀状形状の内面全体が反射面に形成されて、放電ランプ21の発光を反射することにより平行光線に変換して光前方放射口7に向けて導く。
【0024】
図2に示すように、前記回転反射板8を回転自在に支持する上下2本のうちの下方の回転支軸9は、軸受30により回転自在に保持され、上方の回転支軸9は、導光筒部20の外面に取付板31を介して固着された電動モータ32のモータ軸(図示せず)に直結されている。放射装置本体1には、図示省略しているが、電動モータ32の回転速度の変更や回転停止位置を手動操作により設定できる制御部が設けられている。なお、上方の回転支軸9は、減速機を介在して電動モータ32のモータ軸に連結するようにしてもよい。
【0025】
前記回転反射板8は、例えばステンレスからなる円板の両面を鏡面仕上げすることにより、両面が反射面8a,8bに形成されている。また、回転反射板8は、椀状形状の反射鏡28の開口端の内径よりも小さい直径に形成されて、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ向け延長した仮想円と回転反射板8の周端との間には、図4に縦平行線で明示するように、リング状の間隙Rが存在する。前記光側方放出口10A,10Bは、回転反射板8の径よりも僅かに大きな径を有する半円形状に形成されている。
【0026】
図2および図3に2点鎖線で示すように、本体筒部19の先端部には、導光筒部20の全体を覆う形状の保護カバー33が着脱自在に取り付けられる。この保護カバー33は、旋回光線放射装置の運搬時等に回転反射板8を保護する目的で取り付けられ、使用時に取り外されるものである。なお、保護カバー33は、光透過性に優れた素材により形成すれば、取り付けた状態のままで放電装置本体1を使用することができる。また、外装筒体4には、前記保護カバー33に代えて、モールガラスまたは型板ガラスなどからなる光拡散部材を導光筒部20を覆う配置で取り付けることもできる。
【0027】
つぎに、第1実施形態の旋回光線放射装置の使用形態および作用について、図5ないし図9を参照しながら詳述する。災害が発生して救助ヘリコプターを使用する救助活動の必要が生じた場合には、災害発生地の適当な場所に救助ヘリコプターの緊急離発着場が臨時に設営される。この緊急離発着場が設けられたときには、前記旋回光線放射装置をトラック等に積載して緊急離発着場まで運搬したのち、所要場所に設置する。その場合、放射装置本体1を搭載した可搬台車2および電源装置3は、それぞれ車輪11、17が設けられていることから、走行させて容易に設置することができる。設置が完了すれば、可搬台車2の支持台12を回転盤13回りに回動させて放射装置本体1の光前方放射口7を所要の
向きに設定したのち、放射装置本体1を支持軸14回りに回動させて光前方放射口7の仰角を所要の角度に設定する。続いて、電源装置3の発電機を作動させて、その発電電力を放射装置本体1に給電することにより、放電ランプ21を発光駆動させるとともに電動モータ32を回転駆動させる。
【0028】
図5に示すように、放電ランプ21からの発光は反射鏡28で反射することにより、1点鎖線で図示するように平行光線となって光前方放射口7に向けて導かれる。回転反射板8は、電動モータ32により一方向へ向け設定回転速度で連続的に回転されるが、いま、図5に示すように、回転反射板8が平行光線に対し直交する位置を回転角度が0度と仮定して説明する。回転反射板8が0度の回転角度に位置している場合には、反射鏡28からの平行光線の殆どが回転反射板8の内方側の反射面8aに反射されて光前方放射口7から放射されず、回転反射板8の周端の外側を通る平行光線のみが光前方放射口7から放射される。この光前方放射口7から放射される平行光線は、回転反射板8の回転角度にかかわらず常に放射される直進光線L1である。この回転反射板8が0度の回転角度に位置している場合、光前方放射口7からは、図4に示した間隙Rの形状に対応する断面リング状の照光範囲を有する直進光線L1が放射される。回転反射板8は、回転角度が0度の位置から矢印方向に向け回転される。
【0029】
図6は回転反射板8が0度から25度の回転角度まで回転した状態を示す。図5の0度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲が徐徐に大きくなるように変化していくととともに、平行光線が回転反射板8の内側の反射面8aで反射して、この反射光線が旋回光線L2として一方の光側方放射口10Aを通って放射装置本体1の斜め後方へ向け放射される。
【0030】
図7は回転反射板8がさらに45度の回転角度まで回転した状態を示す。図6の25度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲がさらに大きくなるように変化していくととともに、旋回光線L2が、照光範囲が大きくなるよう変化しながら、図6の放射方向から回転反射板8の回転方向へ向け旋回されていく。回転反射板8が45度の回転角度に達した時点では、旋回光線L2が外装筒体1の軸心に対し直交方向へ向けた放射方向まで旋回し、且つ照光範囲が最大となる。
【0031】
図8は回転反射板8がさらに70度の回転角度まで回転した状態を示す。図7の45度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲がさらに大きくなるように変化していくととともに、旋回光線L2が、図7の最大照光範囲から小さくなるよう変化しながら、図7の放射方向から回転反射板8の回転方向へ向けて旋回されていき、一方の光側方放射口10Aから光前方放射口7から放射装置本体1の斜め前方へ向け放射されるようになる。
【0032】
図9は回転反射板8がさらに90度の回転角度まで回転した状態を示し反射鏡2からの平行光線の殆どが常時放射光L1として光前方放射口7から放射される。したがって、回転反射板8が0度の回転角度から90度の回転角度まで回転する過程では、断面リング状の照光範囲を有する直進光線L1が最小範囲から最大範囲まで変化していく。このとき、一方の光側方放射口10Aを通って外方へ放射される旋回光線L2が、回転反射板8の回転方向に沿った方向に旋回されていくとともに、その照光範囲が、回転反射板8の回転に伴い大きくなっていき、回転角度が45度のときに最大となったのち、45度から90度の回転角度まで回転するのに伴って小さくなっていき、回転角度が90度のときに瞬間的に無くなる。
【0033】
また、回転反射板8の両面が反射面8a,8bに形成されているから、回転反射板8が
90度の回転角度から180度まで回転する過程では、直進光線L1の照光範囲および旋回光線L2の放射方向が、図8、図7、図6および図5に対し放射装置本体1の軸線に対し線対称の照光範囲および放射方向に順次変化していく。したがって、回転反射板8が0度の回転角度から180度の回転角度まで半回転する過程では、光前方放射口7から直線状に放射される直進光線L1の照光範囲が、回転角度0から大きくなって回転角度が90度のときに最大となったのちに小さくなっていき、回転角度が180度のときに最小となる。一方、旋回光線L2は、一方側の光側方放射口10Aを通る一方向斜め後方への放射方向から回転反射板8の回転方向に向け旋回されていき、且つ照光範囲が大きくなっていき、照光範囲が回転角度が45度のときに最大となったのちに小さくなっていき、回転角度が90度のときに直進光線L1と一体となり、回転角度が90度を超えたときに再び他方向斜め前方へ向け放射され始め、その照光範囲が、回転に伴って大きくなっていき、回転角度が135度のときに最大となり、そののち、小さくなっていき、回転角度が155度程度になってときに消滅する。
【0034】
このように、旋回光線L2は、回転反射板8が半回転するのに伴って側方へ向けた300度程度の角度範囲内を一方向に向けて旋回しながら放射されるので、従来の種々の標識灯から発せられる不動光とは異なり極めて判別が容易な光線となることから、緊急離発着場の近傍に多くの照明光などが点在している場合であっても、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸目標となる緊急離発着場を正確に判別することができる。また、直進光線L1は、光前方放射口7から前方へ向けた不動光として消灯することなく常に放射され続けるとともに、その照光範囲が最大範囲まで大きくなったのちに最小範囲まで小さくなるように変化するから、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸地点である緊急離発着場を常に見失うことなく確実に確認し続けることができる。したがって、前記旋回光線放射装置は、災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識装置として極めて好適なものとなる。
【0035】
また、前記旋回光線放射装置は、前方へ向けて常時放射され、かつ照光範囲が順次変化する直進光線L1と、側方へ向けた約300度の角度範囲内を照光範囲が変化しながら一方向に向け旋回する旋回光線L2との2種の光線の組み合わせになっており、現在までに全く存在しない極めて特殊な光線を放射するものになっている。そのため、この旋回光線放射装置は、二種の光線L1、L2を組み合わせた放射によって近隣住民に何らかの緊急異常事態が発生したことを報知する用途にも有効に活用することができる。すなわち、前記旋回光線放射装置は、災害発生場所に設置して近隣住民に対し避難勧告を促す報知灯や、救助活動において近隣住民に安全避難場所へ導くための誘導灯などに有効に活用することができる。この場合には、電動モータ32の回転速度を切り換えて回転反射板8を高速回転させたり、回転速度を複数段階に変化させるようにすれば、緊急異常事態の発生を一層有効に報知して、安全避難場所へ効果的に誘導することができる。
【0036】
また、この旋回光線放射装置は、図9に示すように、回転反射板8を90度の回転角度に位置決め設定して停止させれば、放電ランプ21の発光を反射鏡28で反射させて変換した反射光のほぼ全てを、光前方放射口7から不動光として放射させるとができるので、災害復旧の夜間作業時の照明灯としても有効に活用することができる。このように、この旋回光線放射装置は、一台で種々の用途に兼用することができるから、大きな経済的効果が得られる利点がある。
【0037】
図10は本発明の第2実施形態に係る旋回光線放射装置を示す切断側面図であり、同図において、図2と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態が第1実施形態と主に相違するのは、第1実施形態の円板形状の回転反射板8に代えて、四角形の回転反射板34を用いた構成のみである。回転反射板34は両面が反射面34a,34bに形成されており、導光筒部20には、四角形の回転反射板
34に対応して両側面を四角形に切り欠いた左右一対の光側方放出口37が形成されている。
【0038】
第2実施形態の旋回光線放射装置においても、第1実施形態と同様に作用して、上述したと同様の効果が得ることができ、これに加えて、円板形状に比べて反射面積の大きな反射面34a、34bを有する四角形の回転反射板34を備えているから、側方回りに旋回させる旋回光線の光強度が大きくなって、光線を一層遠方まで到達させることができるので、特に、避難勧告を促す報知灯や近隣住民を安全避難場所へ導くための誘導灯として用いる場合に一層有効なものとなる。
【0039】
図11は本発明の第3実施形態に係る旋回光線放射装置を示す切断平面図であり、同図において、図2と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態が第1実施形態と主に相違するのは、第1実施形態の円板形状の回転反射板8に代えて、この回転反射板8を両側の回転支軸9を結ぶ中心を通る線に沿って所定角度(この実施形態において25度)に屈曲した形状の回転反射板38、つまり半円形状の一対の反射板半部39、40が所定角度の相対配置で一体に連接された形状の回転反射板38を用いた構成のみである。この回転反射板38も両面が反射面38a、38bに形成されている。但し、回転反射板38の反射板半部39、40は、反射鏡28の開口端内径とほぼ同一の半径を有する半円形状を有しており、したがって、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ延長した仮想円と各反射板半部39、40の周端面との間には、第1実施形態で説明したような間隙Rが存在しない。
【0040】
回転反射板38は、電動モータ32により図11の矢印で示す一方向へ向け設定回転速度で連続的に回転されるが、いま、図11に示すように、回転反射板38の一方の反射板半部39が反射鏡28からの平行光線に対し直交する位置を回転角度が0度と仮定して説明する。回転反射板38が0度の回転角度に位置している場合には、反射鏡28からの平行光線が回転反射板8の一方の反射板半部39の内方側の反射面38aで反射されて光前方放射口7から放射されない。他方の反射板半部40は、反射鏡28からの平行光線に対し直交していないため、当該反射板半部40の外端部が、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ延長した仮想円よりも内方に位置し、この仮想円と他方の反射板半部40の外端部との間の範囲を通る平行光線が直進光線L1として光前方放射口7から放射される。また、平行光線が他方の反射板半部40の内側の反射面38aで反射して、この反射光線が旋回光線L2として一方の光側方放射口10を通って放射装置本体1の一方向斜め後方へ向け放射される。
【0041】
図12は回転反射板38が0度から45度の回転角度まで回転した状態を示す。図11の0度の回転角度の場合との比較から明らかなように、光前方放射口7の一方側(図の上方側)の直進光線L1は、回転反射板38の回転に伴って照光範囲が大きくなるように変化していくとともに、光前方放射口7の他方側(図の下方側)からも直進光線L1が放射され始め、この他方側の直進光線L1は、一方側の直進光線L1よりも小さい照光範囲で放射される。一方、旋回光線L2は、照光範囲が小さくなるよう変化しながら、図11の放射方向から回転反射板38の回転方向へ向けて旋回されていき、回転反射板38が45度の回転角度に達した時点で、外装筒体1の軸心に対し直交方向へ向け放射される。この旋回光線L2とは別に、光前方放射口7からは、一方向前方斜めに向けた照光範囲の小さい旋回光線L2が放射される。
【0042】
図13は回転反射板38がさらに90度の回転角度まで回転した状態を示す。図12の45度の回転角度の場合との比較から明らかなように、一方の直進光線L1は、僅かに大きな照光幅に変化するだけであるが、他方の直進光線L1は、回転反射板38の回転に伴って照光範囲が大きくなるよう変化していく。図12の旋回光線L2は、回転反射板38
の回転に伴って照光範囲が小さくなるように変化していき、やがて消滅する。他の旋回光線L2は、反射板半部40が外装筒体1の軸心方向に向いたときに一旦消滅したのち、他方向前方斜めに向けた方向に光前方放射口7を通って放射されるように出現して、照光範囲が大きくなるよう変化しながら、回転反射板28の回転方向へ向けて旋回される。
【0043】
図14は回転反射板38がさらに135度の回転角度まで回転した状態を示す。一方の直進光線L1は照光範囲が小さくなるように変化していき、他方の直進光線L1も照光範囲が小さくなるように変化していき、回転角度が135度になって時点で一旦消滅する。一方、他方の旋回光線12は、照光範囲が大きくなるように変化しながら回転反射板38の回転方向に向けて旋回されていき、光前方放射口7を通る放射方向から他方の光側方放射口10を通る放射方向に向きを変えていく。回転反射板38が図14の回転角度からさらに180度の回転角度まで回転したときには、図11と同一の照光範囲の直進光線L1のみが光前方放射口7の他方側(図の下方側)から放射されることになり、以後、上述したとほぼ同様の光線の照光幅の変化および光線の旋回が繰り返される。
【0044】
この第3実施形態の旋回光線放射装置では、第1実施形態で説明したと同様の効果が得ることができ、これに加えて、回転反射板38の一対の反射板半部39、40を反射鏡28の開口端内周面の径と同一の半径を有する半円形状としながらも、直進光線を左右の少なくとも何れか一方から常に放射させて標識光とすることができるから、同一寸法の反射鏡28を用いる場合に第1実施形態の回転反射板8の反射面8a、8bよりも反射面38a、38bの面積が大きくなり、その分だけ旋回光線L2の照光範囲が大きくなって広範囲に放射することができ、しかも装置の大型化を招くことがない。また、この旋回光線放射装置では、図12に示すように、互いに放射方向の異なる二種の旋回光線L2を同時に放射させることができるので、標識効果および誘導効果が一層高くなる。
【0045】
なお、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の旋回光線放射装置は、地震、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、救助活動での安全避難場所への近隣住民の誘導灯、災害発生を近隣住民に報知して避難勧告を発するための避難勧告灯、或いは災害復旧の夜間作業時の照光灯等の広範囲な用途に一台で対応して好適に兼用できるものである。
【符号の説明】
【0047】
7 光前方放射口
4 外装筒体
8 回転反射板
8a、8b 反射面
10A、10B 光側方放射口
21 放電ランプ
28 反射鏡
32 電動モータ
34 回転反射板
34a、34b 反射面
38 回転反射板
38a、38b 反射面
39、40 半部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害が発生した非常時の特に夜間において救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、救助活動での安全避難場所への近隣住民の誘導灯、災害発生を近隣住民に報知して避難勧告を発する場合の避難勧告灯、或いは災害復旧の夜間作業時の照光灯等の広範囲な用途に好適に用いることができる旋回光線放射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等の災害が発生した非常時には、機動性に富みながらも比較的狭い離発着場でも容易に離発着できる簡便な飛行手段である救助ヘリコプターが災害救助活動に広く活用されており、この救助ヘリコプターを臨時に離発着させるための緊急離発着場が災害発生地の近傍の適当な場所に設定される。このように救助ヘリコプターの緊急離発着場を臨時に設定した場合には、特に夜間において救助ヘリコプターを安全裡に離発着できるように誘導するための標識灯を設置することが必要となる。このような用途の標識灯に用いられる従来の照光装置としては、照明制御盤の手動操作または防災センター等からの遠隔操作により放射ビーム光の点灯と消灯とを繰り返すようにしたものが一般的に採用されている。
【0003】
ところが、上述の誘導標識灯としての照光装置は、直線光線としての強い光ビームが上方の一定方向に向けて常時投射されているので、緊急離発着場から離れた上空からは目的場所を確認し易いが、救助ヘリコプターが緊急離発着場に近づいたときに、救助ヘリコプターの操縦士にとって必ずしも確実に視認できる見易い標識灯とはならない。しかも、上記照光装置は、近隣の多くの街明かりの光と判別する目的で放射光ビームが点滅されるようになっていることから、光ビームが消灯する毎に瞬間的であっても目標とする緊急離発着場を見失うにことになるので、救助ヘリコプターの誘導標識灯として最適のものとは言い難い。
【0004】
そこで、従来では、上述した不具合の解消を図ったヘリコプター緊急離発着場用標識灯が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この標識灯は、複数個を並べた発光ダイオードにより平行光線を放射する発光部がこれの光軸方向が鉛直方向上方を向く配置でパネル基材上に設けられたランプ本体と、このランプ本体に覆設されて各発光ダイオードの光を透過させるカバー体と、このカバー体における発光部の真上に位置する頂部側から略漏斗状に垂設されて外周面が鏡面に形成された反射ミラーとを備えている。この標識灯は、発光部からの平行光が反射ミラーにより周囲側方へ反射されて、その光軸が水平方向から上方へ向け30度程度の任意角度の範囲内に拡散照射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−23405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のヘリコプター緊急離発着場用標識灯は、照光の光軸が水平方向から上方へ向け30度程度の任意角度の範囲内に拡散照射されるので、救助ヘリコプターが緊急離発着場の近くまで飛来した場合に、直線光線の光ビームに比較して目的場所を視認し易い照光となる利点がある反面、救助ヘリコプターが緊急離発着場から遠く離れた上空を飛行中には、近隣に点在する多くの照明光と区別して緊急離発着場の照光であると認定
するのが難くなる。そこで、このヘリコプター緊急離発着場用標識灯においても、トグルスイッチなどのスイッチを手動操作して発光部を点滅させるようになっており、やはり照明光を点滅させることによる上述の課題が存在する。
【0007】
ところで、現在では、夜間において上空に向け光放射する装置として、上述のヘリコプター緊急離発着場用標識灯やライトアップ等のイベント用が主なものであり、地震、台風、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害の発生時において、異常発生を近隣住民に迅速に報知したり、或いは所定の緊急避難場所に誘導できるような特殊な照光を放射するような報知誘導灯が見当たらないのが実情である。また、例えば河川の崩壊や土砂崩れなどが発生した場合にその復旧工事の夜間作業を行うに際しては、対岸の堤防に設置して作業場所を照らし出す照光装置が用いられている。このように各用途にそれぞれ専用の照光放射装置を製作することは非常に不経済である。そこで、救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、災害発生場所の近隣住民に避難勧告を報知するための非常発生報知灯、救助活動での安全避難場所への住民の避難誘導灯および災害復旧の夜間作業現場を照らし出す照明灯などの広範囲な用途に兼用できるような照光放射装置の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、救助ヘリコプターを緊急離発着場に確実に誘導できる標識用の光線を放射できるとともに、災害発生場所の近隣住民に避難勧告を発するための非常発生報知灯、救助活動での安全避難場所への住民の避難誘導灯および災害復旧の夜間作業現場を照らし出す照明灯などの広範囲な用途にも好適に兼用できるような旋回光線放射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の旋回光線放射装置は、筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、前記外装筒体に内装された放電ランプと、両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータとを備えている。
【0010】
請求項2に係る発明の旋回光線放射装置は、筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、前記外装筒体に内装された放電ランプと、両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータと、前記放電ランプの発光光線を反射して前記光前方放射口に向けた平行光線に変換する椀状の反射鏡とを備え、前記回転反射板が、前記反射鏡の開口端内周面よりも小さい外形を有して前記反射鏡に対し同心の相対配置で設けられている。
【0011】
請求項3に係る発明の旋回光線放射装置は、請求項1または2に係る旋回光線放射装置において、前記回転反射板が、円形または多角形を有し、回転支軸を介して前記外装筒体内に回転自在に支持されている。
【0012】
請求項4に係る発明の旋回光線放射装置は、請求項1から3の何れか一項に係る旋回光線放射装置において、前記回転反射板が、回転支軸で支持される中央部位を境界として分
割された二つの半部を有するとともに、これら二つの半部が90度以下の所要角度で一体に連接されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る旋回光線放射装置によれば、放電ランプからの発光が回転反射板に当たることなく光前方放射口から一定方向へ向け常時放射される直進光線と、放電ランプからの発光が回転反射板の反射面で反射して回転反射板の回転に伴い一方の光側方放射口、光前方放射口および他方の光側方放射口から側方に向けて順次放射するように旋回される旋回光線との二種の光線を放射するとともに、直線光線および旋回光線の各々の照光範囲が回転反射板の回転に伴って変化する。このように一方向へ向けた直進光線と側方へ向け旋回する旋回光線との二種の光線が組み合わされているので、従来の種々の標識灯から発せられる不動光とは異なり極めて判別が容易な光線となることから、緊急離発着場の近傍に多くの照明光などが点在している場合であっても、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸目標となる緊急離発着場を正確に判別することができる。したがって、この旋回光線放射装置は、災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識装置として極めて好適なものとなる。
【0014】
また、この旋回光線放射装置は、照光範囲が順次変化しながら一方向へ向けて放射される直進光線と、照光範囲が変化しながら側方の一方向に向け旋回する旋回光線との二種の光線の組み合わせになっており、現在までに全く存在しない極めて特殊な光線を放射するものになっているため、災害発生場所に設置して近隣住民に対し避難勧告を促す報知灯や、救助活動において近隣住民に安全避難場所へ導くための誘導灯などに有効に活用することができる。さらに、回転反射板を放電ランプの光線と平行な角度に位置決め停止させれば、放電ランプの発光光線のほぼ全てを光前方放射口から不動光として放射させることができるので、災害復旧の夜間作業時の照明灯としても有効に活用することもできる。このように、この旋回光線放射装置は、一台で種々の用途に兼用することができるから、大きな経済的効果が得られる利点がある。
【0015】
請求項2に係る旋回光線放射装置によれば、反射鏡により放電ランプの発光を平行光線に変換して回転反射板に導くことにより、旋回光線の旋回角度を大きく設定することができる。また、直進光線が、光前方放射口から前方へ向けた不動光として消灯することなく常に放射され続けるとともに、その照光範囲が最大範囲まで大きくなったのちに最小範囲まで小さくなるように可変するから、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸地点である緊急離発着場を常に見失うことなく確実に確認し続けることができる。
【0016】
請求項3に係る旋回光線放射装置によれば、回転反射板を円形とすれば、外装筒体も回転反射板に対応した円筒形状として装置の小型化を図ることができ、回転反射板を、多角形、特に四角形にすれば、円板形状に比べて反射面の反射面積が大きくなり、側方回りに旋回させる旋回光線の光強度が大きくなって、光線を一層遠方まで到達させることができるので、特に、避難勧告を促す報知灯や近隣住民を安全避難場所へ導くための誘導灯として用いる場合に一層有効なものとなる。
【0017】
請求項4に係る旋回光線放射装置によれば、回転反射板の一対の半部の放電ランプからの発光の全てを遮ることのできる大きな面積としながらも、左右の少なくとも何れか一方から直進光線を常に放射させて標識光とすることができるから、反射面の面積が大きくなる分だけ旋回光線の照光範囲が大きくなって広範囲に放射することができ、しかも、装置の大型化を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る旋回光線放射装置を示す全体斜視図である。
【図2】同上の旋回光線放射装置における放射装置本体を示す切断側面図である。
【図3】同上の放射装置本体を示す切断平面図である。
【図4】同上の放射装置本体を示す正面図である。
【図5】同上の放射装置本体における回転反射板が0度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図6】同上の回転反射板が25度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図7】同上の回転反射板が45度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図8】同上の回転反射板が70度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図9】同上の回転反射板が90度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る旋回光線放射装置の放射装置本体を示す切断側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る旋回光線放射装置の放射装置本体の回転反射板が0度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図12】同上の回転反射板が45度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図13】同上の回転反射板が90度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【図14】同上の回転反射板が135度の回転角度のときの光線の放射状態を示す切断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る旋回光線放射装置を示す全体斜視図である。この旋回光線放射装置は、旋回光線を放射する放射装置本体1と、この放射装置本体1を搭載して運搬する可搬台車2および放射装置本体1に駆動電力を供給する可搬型電源装置3とを備えて構成されている。放射装置本体1は、円筒状の外装筒体4の内部に後述する発光機構が内装されており、外装筒体4の一端部が開口して光前方放射口7が設けられ、外装筒体4の内部における光前方放射口7の近傍箇所に、円板状の回転反射板8が上下2本の回転支軸9により外装筒体4に回転自在に支持されている。また、放射装置本体1には、両回転支軸9に対する両側方位置にそれぞれ、回転反射板8よりも僅かに大きな径を有するほぼ半円形状に切り欠かれて光前方放射口7にそれぞれ連通する一対の光側方放射口10A,10Bが形成されている。
【0020】
前記可搬台車2は、二対四つの車輪11により走行可能になっており、ほぼV字形状の支持台12が、これの下端中央部を回転盤13上に載置して固定されることにより、回転盤13を介して回動自在に取り付けている。支持台12の両側上端部には放射装置本体1が支持軸14回りに回動可能に支持されている。これにより、放射装置本体1は、支持軸14回りに回動させることにより、光前方放射口7の仰角を任意の角度に変更して設定することができるとともに、支持台12を回転盤13回りに回動させることにより、光前方放射口7を水平方向の360度における任意の向きに変更して設定することができるようになっている。なお、図示省略しているが、放射装置本体1を変更後の仰角および向きに仮固定する機構が設けられているのは勿論である。
【0021】
前記可搬型電源装置3は、自己発電機能を有する直流発電機(図示せず)を内蔵し、二対四つの車輪17により走行可能になっている。この可搬型電源装置3と放射装置本体1とは、複数の配電線18により相互に電気的接続されて、電源装置3の発電電力が放電装
置本体1の発光機構部に対し駆動電力として供給されるようになっている。なお、この電源装置3は、直流発電機に代えて、商用交流電源を使用することも可能になっている。
【0022】
図2は前記放射装置本体1の切断側面図、図3はその切断平面図、図4はその正面図をそれぞれ示す。図2および図3に示すように、外装筒体4は、本体筒部19の前方側(図の右方側)に本体筒部19よりも径の小さい導光筒部20が連結されてなり、本体筒部19の内側中心部には、強い光を発する放電ランプ21が本体筒部19の軸心に沿った配置で取り付けられている。放電ランプ21としては、この実施形態において、キセノンガス中のアーク放電による光を利用したキセノンランプを用いている。放電ランプ21は、本体筒部19内に固定された後壁板22と支持扞23とに架け渡す配置で取り付けられており、給電線24を介して電源装置3からの駆動電力が供給されるようになっている。また、放電ランプ21は、調整つまみ27を手動操作することにより、その位置を微調整できるようになっている。
【0023】
図2〜図4に明示するように、前記本体筒部19内には、放電ランプ21に対し同心状の相対配置で外側から囲むように位置された反射鏡28が、4本の保持扞29により本体筒部19内の中央部に固定されている。この反射鏡28は、椀状形状の内面全体が反射面に形成されて、放電ランプ21の発光を反射することにより平行光線に変換して光前方放射口7に向けて導く。
【0024】
図2に示すように、前記回転反射板8を回転自在に支持する上下2本のうちの下方の回転支軸9は、軸受30により回転自在に保持され、上方の回転支軸9は、導光筒部20の外面に取付板31を介して固着された電動モータ32のモータ軸(図示せず)に直結されている。放射装置本体1には、図示省略しているが、電動モータ32の回転速度の変更や回転停止位置を手動操作により設定できる制御部が設けられている。なお、上方の回転支軸9は、減速機を介在して電動モータ32のモータ軸に連結するようにしてもよい。
【0025】
前記回転反射板8は、例えばステンレスからなる円板の両面を鏡面仕上げすることにより、両面が反射面8a,8bに形成されている。また、回転反射板8は、椀状形状の反射鏡28の開口端の内径よりも小さい直径に形成されて、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ向け延長した仮想円と回転反射板8の周端との間には、図4に縦平行線で明示するように、リング状の間隙Rが存在する。前記光側方放出口10A,10Bは、回転反射板8の径よりも僅かに大きな径を有する半円形状に形成されている。
【0026】
図2および図3に2点鎖線で示すように、本体筒部19の先端部には、導光筒部20の全体を覆う形状の保護カバー33が着脱自在に取り付けられる。この保護カバー33は、旋回光線放射装置の運搬時等に回転反射板8を保護する目的で取り付けられ、使用時に取り外されるものである。なお、保護カバー33は、光透過性に優れた素材により形成すれば、取り付けた状態のままで放電装置本体1を使用することができる。また、外装筒体4には、前記保護カバー33に代えて、モールガラスまたは型板ガラスなどからなる光拡散部材を導光筒部20を覆う配置で取り付けることもできる。
【0027】
つぎに、第1実施形態の旋回光線放射装置の使用形態および作用について、図5ないし図9を参照しながら詳述する。災害が発生して救助ヘリコプターを使用する救助活動の必要が生じた場合には、災害発生地の適当な場所に救助ヘリコプターの緊急離発着場が臨時に設営される。この緊急離発着場が設けられたときには、前記旋回光線放射装置をトラック等に積載して緊急離発着場まで運搬したのち、所要場所に設置する。その場合、放射装置本体1を搭載した可搬台車2および電源装置3は、それぞれ車輪11、17が設けられていることから、走行させて容易に設置することができる。設置が完了すれば、可搬台車2の支持台12を回転盤13回りに回動させて放射装置本体1の光前方放射口7を所要の
向きに設定したのち、放射装置本体1を支持軸14回りに回動させて光前方放射口7の仰角を所要の角度に設定する。続いて、電源装置3の発電機を作動させて、その発電電力を放射装置本体1に給電することにより、放電ランプ21を発光駆動させるとともに電動モータ32を回転駆動させる。
【0028】
図5に示すように、放電ランプ21からの発光は反射鏡28で反射することにより、1点鎖線で図示するように平行光線となって光前方放射口7に向けて導かれる。回転反射板8は、電動モータ32により一方向へ向け設定回転速度で連続的に回転されるが、いま、図5に示すように、回転反射板8が平行光線に対し直交する位置を回転角度が0度と仮定して説明する。回転反射板8が0度の回転角度に位置している場合には、反射鏡28からの平行光線の殆どが回転反射板8の内方側の反射面8aに反射されて光前方放射口7から放射されず、回転反射板8の周端の外側を通る平行光線のみが光前方放射口7から放射される。この光前方放射口7から放射される平行光線は、回転反射板8の回転角度にかかわらず常に放射される直進光線L1である。この回転反射板8が0度の回転角度に位置している場合、光前方放射口7からは、図4に示した間隙Rの形状に対応する断面リング状の照光範囲を有する直進光線L1が放射される。回転反射板8は、回転角度が0度の位置から矢印方向に向け回転される。
【0029】
図6は回転反射板8が0度から25度の回転角度まで回転した状態を示す。図5の0度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲が徐徐に大きくなるように変化していくととともに、平行光線が回転反射板8の内側の反射面8aで反射して、この反射光線が旋回光線L2として一方の光側方放射口10Aを通って放射装置本体1の斜め後方へ向け放射される。
【0030】
図7は回転反射板8がさらに45度の回転角度まで回転した状態を示す。図6の25度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲がさらに大きくなるように変化していくととともに、旋回光線L2が、照光範囲が大きくなるよう変化しながら、図6の放射方向から回転反射板8の回転方向へ向け旋回されていく。回転反射板8が45度の回転角度に達した時点では、旋回光線L2が外装筒体1の軸心に対し直交方向へ向けた放射方向まで旋回し、且つ照光範囲が最大となる。
【0031】
図8は回転反射板8がさらに70度の回転角度まで回転した状態を示す。図7の45度の回転角度の場合との比較から明らかなように、直進光線L1は、回転反射板8の回転に伴って照光範囲がさらに大きくなるように変化していくととともに、旋回光線L2が、図7の最大照光範囲から小さくなるよう変化しながら、図7の放射方向から回転反射板8の回転方向へ向けて旋回されていき、一方の光側方放射口10Aから光前方放射口7から放射装置本体1の斜め前方へ向け放射されるようになる。
【0032】
図9は回転反射板8がさらに90度の回転角度まで回転した状態を示し反射鏡2からの平行光線の殆どが常時放射光L1として光前方放射口7から放射される。したがって、回転反射板8が0度の回転角度から90度の回転角度まで回転する過程では、断面リング状の照光範囲を有する直進光線L1が最小範囲から最大範囲まで変化していく。このとき、一方の光側方放射口10Aを通って外方へ放射される旋回光線L2が、回転反射板8の回転方向に沿った方向に旋回されていくとともに、その照光範囲が、回転反射板8の回転に伴い大きくなっていき、回転角度が45度のときに最大となったのち、45度から90度の回転角度まで回転するのに伴って小さくなっていき、回転角度が90度のときに瞬間的に無くなる。
【0033】
また、回転反射板8の両面が反射面8a,8bに形成されているから、回転反射板8が
90度の回転角度から180度まで回転する過程では、直進光線L1の照光範囲および旋回光線L2の放射方向が、図8、図7、図6および図5に対し放射装置本体1の軸線に対し線対称の照光範囲および放射方向に順次変化していく。したがって、回転反射板8が0度の回転角度から180度の回転角度まで半回転する過程では、光前方放射口7から直線状に放射される直進光線L1の照光範囲が、回転角度0から大きくなって回転角度が90度のときに最大となったのちに小さくなっていき、回転角度が180度のときに最小となる。一方、旋回光線L2は、一方側の光側方放射口10Aを通る一方向斜め後方への放射方向から回転反射板8の回転方向に向け旋回されていき、且つ照光範囲が大きくなっていき、照光範囲が回転角度が45度のときに最大となったのちに小さくなっていき、回転角度が90度のときに直進光線L1と一体となり、回転角度が90度を超えたときに再び他方向斜め前方へ向け放射され始め、その照光範囲が、回転に伴って大きくなっていき、回転角度が135度のときに最大となり、そののち、小さくなっていき、回転角度が155度程度になってときに消滅する。
【0034】
このように、旋回光線L2は、回転反射板8が半回転するのに伴って側方へ向けた300度程度の角度範囲内を一方向に向けて旋回しながら放射されるので、従来の種々の標識灯から発せられる不動光とは異なり極めて判別が容易な光線となることから、緊急離発着場の近傍に多くの照明光などが点在している場合であっても、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸目標となる緊急離発着場を正確に判別することができる。また、直進光線L1は、光前方放射口7から前方へ向けた不動光として消灯することなく常に放射され続けるとともに、その照光範囲が最大範囲まで大きくなったのちに最小範囲まで小さくなるように変化するから、救助ヘリコプターの操縦士は、着陸地点である緊急離発着場を常に見失うことなく確実に確認し続けることができる。したがって、前記旋回光線放射装置は、災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識装置として極めて好適なものとなる。
【0035】
また、前記旋回光線放射装置は、前方へ向けて常時放射され、かつ照光範囲が順次変化する直進光線L1と、側方へ向けた約300度の角度範囲内を照光範囲が変化しながら一方向に向け旋回する旋回光線L2との2種の光線の組み合わせになっており、現在までに全く存在しない極めて特殊な光線を放射するものになっている。そのため、この旋回光線放射装置は、二種の光線L1、L2を組み合わせた放射によって近隣住民に何らかの緊急異常事態が発生したことを報知する用途にも有効に活用することができる。すなわち、前記旋回光線放射装置は、災害発生場所に設置して近隣住民に対し避難勧告を促す報知灯や、救助活動において近隣住民に安全避難場所へ導くための誘導灯などに有効に活用することができる。この場合には、電動モータ32の回転速度を切り換えて回転反射板8を高速回転させたり、回転速度を複数段階に変化させるようにすれば、緊急異常事態の発生を一層有効に報知して、安全避難場所へ効果的に誘導することができる。
【0036】
また、この旋回光線放射装置は、図9に示すように、回転反射板8を90度の回転角度に位置決め設定して停止させれば、放電ランプ21の発光を反射鏡28で反射させて変換した反射光のほぼ全てを、光前方放射口7から不動光として放射させるとができるので、災害復旧の夜間作業時の照明灯としても有効に活用することができる。このように、この旋回光線放射装置は、一台で種々の用途に兼用することができるから、大きな経済的効果が得られる利点がある。
【0037】
図10は本発明の第2実施形態に係る旋回光線放射装置を示す切断側面図であり、同図において、図2と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態が第1実施形態と主に相違するのは、第1実施形態の円板形状の回転反射板8に代えて、四角形の回転反射板34を用いた構成のみである。回転反射板34は両面が反射面34a,34bに形成されており、導光筒部20には、四角形の回転反射板
34に対応して両側面を四角形に切り欠いた左右一対の光側方放出口37が形成されている。
【0038】
第2実施形態の旋回光線放射装置においても、第1実施形態と同様に作用して、上述したと同様の効果が得ることができ、これに加えて、円板形状に比べて反射面積の大きな反射面34a、34bを有する四角形の回転反射板34を備えているから、側方回りに旋回させる旋回光線の光強度が大きくなって、光線を一層遠方まで到達させることができるので、特に、避難勧告を促す報知灯や近隣住民を安全避難場所へ導くための誘導灯として用いる場合に一層有効なものとなる。
【0039】
図11は本発明の第3実施形態に係る旋回光線放射装置を示す切断平面図であり、同図において、図2と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態が第1実施形態と主に相違するのは、第1実施形態の円板形状の回転反射板8に代えて、この回転反射板8を両側の回転支軸9を結ぶ中心を通る線に沿って所定角度(この実施形態において25度)に屈曲した形状の回転反射板38、つまり半円形状の一対の反射板半部39、40が所定角度の相対配置で一体に連接された形状の回転反射板38を用いた構成のみである。この回転反射板38も両面が反射面38a、38bに形成されている。但し、回転反射板38の反射板半部39、40は、反射鏡28の開口端内径とほぼ同一の半径を有する半円形状を有しており、したがって、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ延長した仮想円と各反射板半部39、40の周端面との間には、第1実施形態で説明したような間隙Rが存在しない。
【0040】
回転反射板38は、電動モータ32により図11の矢印で示す一方向へ向け設定回転速度で連続的に回転されるが、いま、図11に示すように、回転反射板38の一方の反射板半部39が反射鏡28からの平行光線に対し直交する位置を回転角度が0度と仮定して説明する。回転反射板38が0度の回転角度に位置している場合には、反射鏡28からの平行光線が回転反射板8の一方の反射板半部39の内方側の反射面38aで反射されて光前方放射口7から放射されない。他方の反射板半部40は、反射鏡28からの平行光線に対し直交していないため、当該反射板半部40の外端部が、反射鏡28の開口端内周面を光前方放射口7方向へ延長した仮想円よりも内方に位置し、この仮想円と他方の反射板半部40の外端部との間の範囲を通る平行光線が直進光線L1として光前方放射口7から放射される。また、平行光線が他方の反射板半部40の内側の反射面38aで反射して、この反射光線が旋回光線L2として一方の光側方放射口10を通って放射装置本体1の一方向斜め後方へ向け放射される。
【0041】
図12は回転反射板38が0度から45度の回転角度まで回転した状態を示す。図11の0度の回転角度の場合との比較から明らかなように、光前方放射口7の一方側(図の上方側)の直進光線L1は、回転反射板38の回転に伴って照光範囲が大きくなるように変化していくとともに、光前方放射口7の他方側(図の下方側)からも直進光線L1が放射され始め、この他方側の直進光線L1は、一方側の直進光線L1よりも小さい照光範囲で放射される。一方、旋回光線L2は、照光範囲が小さくなるよう変化しながら、図11の放射方向から回転反射板38の回転方向へ向けて旋回されていき、回転反射板38が45度の回転角度に達した時点で、外装筒体1の軸心に対し直交方向へ向け放射される。この旋回光線L2とは別に、光前方放射口7からは、一方向前方斜めに向けた照光範囲の小さい旋回光線L2が放射される。
【0042】
図13は回転反射板38がさらに90度の回転角度まで回転した状態を示す。図12の45度の回転角度の場合との比較から明らかなように、一方の直進光線L1は、僅かに大きな照光幅に変化するだけであるが、他方の直進光線L1は、回転反射板38の回転に伴って照光範囲が大きくなるよう変化していく。図12の旋回光線L2は、回転反射板38
の回転に伴って照光範囲が小さくなるように変化していき、やがて消滅する。他の旋回光線L2は、反射板半部40が外装筒体1の軸心方向に向いたときに一旦消滅したのち、他方向前方斜めに向けた方向に光前方放射口7を通って放射されるように出現して、照光範囲が大きくなるよう変化しながら、回転反射板28の回転方向へ向けて旋回される。
【0043】
図14は回転反射板38がさらに135度の回転角度まで回転した状態を示す。一方の直進光線L1は照光範囲が小さくなるように変化していき、他方の直進光線L1も照光範囲が小さくなるように変化していき、回転角度が135度になって時点で一旦消滅する。一方、他方の旋回光線12は、照光範囲が大きくなるように変化しながら回転反射板38の回転方向に向けて旋回されていき、光前方放射口7を通る放射方向から他方の光側方放射口10を通る放射方向に向きを変えていく。回転反射板38が図14の回転角度からさらに180度の回転角度まで回転したときには、図11と同一の照光範囲の直進光線L1のみが光前方放射口7の他方側(図の下方側)から放射されることになり、以後、上述したとほぼ同様の光線の照光幅の変化および光線の旋回が繰り返される。
【0044】
この第3実施形態の旋回光線放射装置では、第1実施形態で説明したと同様の効果が得ることができ、これに加えて、回転反射板38の一対の反射板半部39、40を反射鏡28の開口端内周面の径と同一の半径を有する半円形状としながらも、直進光線を左右の少なくとも何れか一方から常に放射させて標識光とすることができるから、同一寸法の反射鏡28を用いる場合に第1実施形態の回転反射板8の反射面8a、8bよりも反射面38a、38bの面積が大きくなり、その分だけ旋回光線L2の照光範囲が大きくなって広範囲に放射することができ、しかも装置の大型化を招くことがない。また、この旋回光線放射装置では、図12に示すように、互いに放射方向の異なる二種の旋回光線L2を同時に放射させることができるので、標識効果および誘導効果が一層高くなる。
【0045】
なお、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の旋回光線放射装置は、地震、河川崩壊、大規模火災または津波等の災害が発生した非常時に救助ヘリコプターを緊急離発着場に安全裡に誘導するための誘導標識灯、救助活動での安全避難場所への近隣住民の誘導灯、災害発生を近隣住民に報知して避難勧告を発するための避難勧告灯、或いは災害復旧の夜間作業時の照光灯等の広範囲な用途に一台で対応して好適に兼用できるものである。
【符号の説明】
【0047】
7 光前方放射口
4 外装筒体
8 回転反射板
8a、8b 反射面
10A、10B 光側方放射口
21 放電ランプ
28 反射鏡
32 電動モータ
34 回転反射板
34a、34b 反射面
38 回転反射板
38a、38b 反射面
39、40 半部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、
前記外装筒体に内装された放電ランプと、
両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、
前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータとを備えたことを特徴とする旋回光線放射装置。
【請求項2】
筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、
前記外装筒体に内装された放電ランプと、
両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、
前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータと、
前記放電ランプの発光光線を反射して前記光前方放射口に向けた平行光線に変換する椀状の反射鏡とを備え、
前記回転反射板が、前記反射鏡の開口端内周面よりも小さい外形を有して前記反射鏡に対し同心の相対配置で設けられていることを特徴とする旋回光線放射装置。
【請求項3】
前記回転反射板が、円形または多角形を有し、回転支軸を介して前記外装筒体内に回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の旋回光線放射装置。
【請求項4】
前記回転反射板が、回転支軸で支持される中央部位を境界として分割された二つの半部を有するとともに、これら二つの半部が90度以下の所要角度で一体に連接されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の旋回光線放射装置。
【請求項1】
筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、
前記外装筒体に内装された放電ランプと、
両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、
前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータとを備えたことを特徴とする旋回光線放射装置。
【請求項2】
筒状の一端部に光前方放射口が開口され、且つ前記光前方放射口の両側部にそれぞれ連通する一対の光側方放射口が対向両側部にそれぞれ形成された外装筒体と、
前記外装筒体に内装された放電ランプと、
両面が反射面に形成されて前記外装筒体内における前記一対の光側方放射口の間に回転自在に設けられ、回転するのに伴って前記放電ランプの発光光線を一方の前記光側方放射口、前記光前方放射口および他方の前記光側方放射口に向け順次反射させて旋回させる回転反射板と、
前記回転反射板を一方向に連続的に回転駆動する電動モータと、
前記放電ランプの発光光線を反射して前記光前方放射口に向けた平行光線に変換する椀状の反射鏡とを備え、
前記回転反射板が、前記反射鏡の開口端内周面よりも小さい外形を有して前記反射鏡に対し同心の相対配置で設けられていることを特徴とする旋回光線放射装置。
【請求項3】
前記回転反射板が、円形または多角形を有し、回転支軸を介して前記外装筒体内に回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の旋回光線放射装置。
【請求項4】
前記回転反射板が、回転支軸で支持される中央部位を境界として分割された二つの半部を有するとともに、これら二つの半部が90度以下の所要角度で一体に連接されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の旋回光線放射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−216383(P2011−216383A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84847(P2010−84847)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(305001917)有限会社アークコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(305001917)有限会社アークコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】
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