説明

旋回可能な下ユニットを備えた転写フィルム送り装置

【課題】
転写成形に使用された使用済みのフィルムを廃棄する作業を、安全に、かつ効率よく容易に実施することができる転写フィルム送り装置を提供する。
【解決手段】
射出成形機(1)に設けられている転写フィルム送り装置(12)を、可動盤(9)の上部と下部に設けられている上ユニット(U1)と下ユニット(U2)とから構成する。上ユニット(U1)はフィルム送り出しユニット(13)と上横移動装置(10)とから、下ユニット(U2)はフィルム巻き取りユニット(14)と下横移動装置(15)とからそれぞれ構成する。下ユニット(U2)はヒンジ機構(28)を介して可動盤(9)に取り付けて、第1、2の回動位置を採ることができるようにする。第1の回動位置を採ると転写成形をすることができる。第2の回動位置を採ると下ユニット(U2)が、射出成形機(1)の側方に回動する。容易に使用済みフィルム(48’)を交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に絵付け用の箔が印刷されロール状に巻かれているフィルムを所定の長さ送り、該送られたフィルムを挟んで一対の金型を型締めして溶融樹脂を射出し、表面に前記箔が転写された成形品を得る、いわゆる転写成形を実施する射出成形機において、フィルム巻き取りユニットを含む下ユニットに特徴がある転写フィルム送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、文献を挙げるまでもなく周知であり、加熱シリンダと該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなる射出装置、可動側金型と固定側金型、これらの金型を型締めする型締装置等から概略構成されている。従って、射出材料である樹脂を射出装置において溶融し、型締装置によって型締めされた金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却固化を待って金型を型開きすると成形品が得られる。また、射出成形によって成形品を得るとき成形と同時に絵付けをする、いわゆる転写成形も周知である。転写成形においては、その表面に絵付け用の箔が印刷されていると共にロール状に巻かれたフィルムを使用する。このフィルムを箔が印刷された面が固定側金型に向くようにして、可動側金型のパーティング面に沿って所定の長さだけ送る。送られたフィルムを挟むようにして金型を型締し、溶融樹脂をキャビティ内に射出すると成形品が成形される。このときフィルムは溶融樹脂によって可動側金型のキャビティに押し付けられ、成形品の表面の樹脂は箔と一体化する。冷却固化を待って型開きすると、成形品の表面に箔が転写された状態で、フィルムと成形品が分離する。すなわち絵付けされた成形品を得ることができる。
【0003】
上記したような転写成形を実施するには、いわゆる転写フィルム送り装置を射出成形機に設ける必要がある。転写フィルム送り装置も、本出願人によって特許文献1において提案されているように従来周知であり、型締装置の可動盤に設けられている。転写フィルム送り装置は、可動盤の上部に固定されている上ユニットと、可動盤の下部に固定されている下ユニットと、これらを制御するコントローラとから概略構成され、上ユニットはフィルムを送り出すフィルム送り出しユニットとフィルムの水平位置を微調整する上横移動装置とから、下ユニットはフィルムを巻き取るフィルム巻き取りユニットとフィルムの水平位置を微調整する下横移動装置とから、それぞれ構成されている。フィルム送り出しユニットは、前述のロール状に巻かれているフィルムがセットされるフィルムロールと、送り出されるフィルムを所定のロールと摩擦部材とによって挟んで任意の位置で拘束できる上側クランプとから構成されている。フィルム巻き取りユニットは、所定のロールと摩擦部材とによってフィルムを挟んで拘束できる下側クランプと、フィルムを強制的に送る駆動ロールと、フィルムを巻き取るフィルム巻き取りロールとから構成されている。フィルムロールから供給されるフィルムは、上側クランプに掛け回されて下方に延び、可動側金型のパーティング面に沿ってさらに下方に延び、そして下側クランプと駆動ロールとに掛け回され、フィルム巻き取りロールに巻かれている。フィルムには等間隔に絵付け用の箔が印刷されており、同じ間隔でフィルムの縁部にマーキングが施されている。金型の上下には、このマーキングを検出する上センサと下センサとが設けられ、箔の位置を正確に検出できるようになっている。そして、この検出された信号に基づいて上横移動装置と下横移動装置が駆動されるようになっている。すなわち位置決めされるようになっている。このような転写フィルム送り装置が設けられている射出成形機においては次のように成形する。型締装置を型開きする。上側クランプと下側クランプを解除し、フィルムの拘束を解く。駆動ロールとフィルム巻き取りロールを駆動するとフィルムロールからフィルムが引き出され、フィルムが送られる。絵付け用の箔が可動側金型のキャビティに位置したら、駆動ロールとフィルム巻き取りロールを停止し、上・下横移動装置が同時に駆動して水平方向の位置決めをし、上側クランプと下側クランプとを駆動してフィルムがずれないように拘束する。型締して射出する。冷却固化を待って型開きすると箔が転写された成形品、換言すると絵付けされた成形品を得ることができる。同様にしてフィルムを送り成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特昭開61−297115号公報
【特許文献2】特開平11−175157号公報
【0005】
特許文献2には、転写フィルム送り装置を効率よく制御・駆動して、成形サイクルを短縮する制御方法が記載されている。所定の転写フィルム送り装置においては、転写フィルムを下方向に送るとき、最初に横方向にフィルムをスライドさせ、次いで下方向に送り、下方向への送りが完了した後に横方向の位置を調整するようにしている。特許文献2に記載の方法によるとこのような転写フィルム送り装置において、フィルムの下方向への送り開始と同時にフィルムを横方向へスライドさせ、下方向への送り終了前に横方向の位置の調整を開始するようにする。従って、フィルムの送り時間を短縮することができ、成形サイクルを短縮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような、従来の転写フィルム送り装置によっても、転写成形を実施することはできる。また特許文献2に記載の制御方法を実施すれば、所定の転写フィルム送り装置において成形サイクルを短縮することができ、生産性は向上する。従って、転写成形や制御方法に関しては格別に問題はない。しかしながら他の点に関しては改良すべき点が見受けられる。具体的には、安全と作業のし易さに関する問題を挙げることができる。これらについて説明する。
【0007】
転写フィルム送り装置は、前記したようにフィルム送り出しユニットにおいてロール状に巻かれたフィルムがセットされ、フィルムが送り出されるようになっており、使用されたフィルムはフィルム巻き取りユニットにおいて巻き取られるようになっている。フィルム送り出しユニットにはフィルムの終了を検出するセンサが設けられ、フィルムロールに巻かれているフィルムが無くなったらコントローラは転写フィルム送り装置を停止して警告を表示し作業者にフィルムの交換を促す。同様にフィルム巻き取りユニットにおいては満巻センサが設けられ、フィルム巻き取りロールに巻き取られている使用済みのフィルムが所定の径に達したら、コントローラは転写フィルム送り装置を停止して警告を表示し作業者に使用済みフィルムの廃棄を促す。従って、作業者は適宜新しいロール状のフィルムをフィルム送り出しユニットにセットしたり、フィルム巻き取りユニットから使用済みのフィルムを取り出して廃棄する作業をすることになるが、使用済みフィルムは嵩張っていて早期に満巻状態になってしまうので、後者の作業は比較的頻繁に実施する必要がある。ところで、射出成形機は、所定の枠体からなるベットに設置されており、型締装置もこのベッドの上に設けられている。従って可動盤の下部に設けられているフィルム巻き取りユニットは、ベット内の中央部、つまりベットを構成している枠体の中央に位置することになる。このように構成されているので使用済みのフィルムを取り出して廃棄する作業は、この枠体の中に手を入れて実施したり、作業者が直接入って実施する必要がある。機械の内部に手を入れたり体を入れる必要があるので危険である。また、枠体の位置は低く内部は狭いので作業は困難である。作業時間が長時間になってしまい、停止中の射出成形機において溶融樹脂が変質してしまうこともある。そうすると成形が再開されたときに不良品が成形されてしまう。つまり安全と作業のし易さに関して問題が見受けられる。
【0008】
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した、転写フィルム送り装置を提供することを目的としており、具体的には使用済みのフィルムを取り出して廃棄する作業を安全に、かつ効率よく容易に実施することができる転写フィルム送り装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、転写成形を実施する射出成形機に設けられている転写フィルム送り装置として構成する。この転写フィルム送り装置は、従来の装置と同様に可動盤の上部に固定される上ユニットと、可動盤の下部に設けられる下ユニットとから構成するが、下ユニットは、ヒンジ機構を介して可動盤に取り付ける。このヒンジ機構によって下ユニットは第1、2の回動位置を採ることができ、第1の回動位置を採るとフィルムが可動側金型に整合して転写成形をすることができ、第2の回動位置を採ると下ユニットに設けられているフィルム巻き取りロールが、射出成形機の側方に移動する。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、一方の面に絵付け用の箔が印刷されロール状に巻かれているフィルムを所定の長さ送り出し、該送り出されたフィルムを固定側金型と可動側金型のパーティング面間に挟んで型締めし、前記パーティング面間に構成されるキャビティに溶融樹脂を射出すると、表面に前記箔が転写された成形品が得られるようになっている射出成形機における、転写フイルム送り装置であつて、前記転写フィルム送り装置は、前記射出成形機の可動盤の上部に設けられている上ユニットと、前記可動盤の下部に設けられている下ユニットとからなり、前記ロール状に巻かれているフィルムは、前記上ユニットから引き出され、前記可動側金型の前記パーティング面に沿って送られ、そして前記下ユニットのフィルム巻き取りロールに巻き取られるようになっており、前記下ユニットはヒンジ機構を介して前記可動盤の下部に設けられ第1、2の回動位置を採ることができ、第1の回動位置を採ると前記フィルムは前記パーティング面に整合し、第2の回動位置を採ると前記フィルム巻き取りロールは前記射出成形機の側方寄りに移動するように構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の転写フィルム送り装置において、前記ヒンジ機構には該ヒンジ機構を駆動するピストンシリンダユニットと、該ヒンジ機構をロックするクランプシリンダとが設けられ、前記転写フィルム送り装置に設けられているコントローラによって制御されるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によると、転写成形を実施する射出成形機に設けられる転写フィルム送り装置は、射出成形機の可動盤の上部に設けられている上ユニットと、可動盤の下部に設けられている下ユニットとから構成され、ロール状に巻かれているフィルムは、上ユニットから引き出され、可動側金型のパーティング面に沿って送られ、そして下ユニットのフィルム巻き取りロールに巻き取られるようになっている。そして、下ユニットはヒンジ機構を介して可動盤に設けられ、第1、2の回動位置を採ることができるようになっている。第1の回動位置を採るとフィルムはパーティング面に整合するので、転写成形をすることができる。そして、第2の回動位置を採るとフィルム巻き取りロールは射出成形機の側方寄りに移動する。従って、使用済みのフィルムをフィルム巻き取りロールから取り出し易くなり、使用済みのフィルムを廃棄する作業を効率よく、容易に、かつ安全に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る転写フィルム送り装置を備えた射出成形機において、転写成形を実施する通常の運転状態を模式的に示す図で、その(ア)(イ)は射出成形機の一部と転写フィルム送り装置を示す正面図と側面図、その(ウ)は転写フィルム送り装置の一部を示す上面図である。
【図2】本実施の形態に係る転写フィルム送り装置を駆動するエアシリンダとクランプシリンダに関する空気圧回路図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る転写フィルム送り装置を備えた射出成形機において、保守作業を実施している状態を模式的に示す図で、その(ア)(イ)は射出成形機の一部と転写フィルム送り装置を示す正面図と側面図、その(ウ)は転写フィルム送り装置の一部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る射出成形機1も、所定の枠体からなるベッド2の上に、従来周知の射出成形機と同様に構成されている。すなわち、加熱シリンダとスクリュとからなる射出装置、可動側金型3と固定側金型4、これらの金型3、4を型締めする型締装置6、等から概略構成されている。図1の(ア)、(イ)には、型締装置6の一部が示されているが、型締装置6も従来周知のように、ベッド2に固定されている固定盤8、可動盤9、型締駆動部、可動盤9をガイドしている4本のタイバー11、11、…、等から構成されている。そして固定盤8には固定側金型4が、可動盤9には可動側金型3がそれぞれ取り付けられている。従って、型締駆動部を駆動すると金型3、4は型開閉される。
【0014】
本実施の形態に係る射出成形機1の可動盤9には、本実施の形態に係る転写フィルム送り装置12が設けられている。この転写フィルム送り装置12によって、表面に絵付け用の箔が印刷されたフィルムが送り出され、いわゆる転写成形ができるようになっている。この転写フィルム送り装置12は、可動盤9の上部に設けられている上ユニットU1と、下部に設けられている下ユニットU2とから構成されている。上ユニットU1は、箔が印刷されロール状に巻かれたフィルムを所定の長さずつ送り出すようになっているフィルム送り出しユニット13と、上ユニットU1の水平位置を調整する上横移動装置10とから構成されている。下ユニットU2は、転写成形に使用された使用済みのフィルムが巻き取られるフィルム巻き取りユニット14と、下ユニットU2の水平位置を調整する下横移動装置15とから構成されている。フィルムにはその縁部に所定の間隔でマーキングが施されており、前記した固定側金型4には、このマーキングを検出する上横センサS1と下横センサS2がその上部と下部とに設けられている。従って上横センサS1からの信号に基づいて上横移動装置10を、下横センサS2からの信号に基づいて下横移動装置15を、それぞれ駆動するとフィルムは正確に位置決めされることになる。
【0015】
上ユニットU1のフィルム送り出しユニット13は、従来の転写フィルム送り装置と同様に、上フレーム17、上フレーム17に設けられロール状のフィルムがセットされるフィルムロール18、フィルムロール18から引き出されたフィルムをガイドするガイドロール19、19、所定のロールと摩擦部材とからなりフィルムをロックしたりロックを解除する上クランプ20、等から構成されている。そしてフィルム送り出しユニット13は、従来の転写フィルム送り装置と同様に、可動盤9の上部に固定されているブラケット16に、前記した上横移動装置10を介して設けられている。
【0016】
下ユニットU2のフィルム巻き取りユニット14も、従来の転写フィルム送り装置と同様に、下フレーム21と、この下フレーム21に設けられている所定の装置と複数本のロールから構成されている。すなわち上クランプ20と同様の構造のクランプであって使用済みのフィルムをロックしたりロックを解除する下クランプ22、下クランプ22から送られるフィルムをガイドするガイドロール23、その下流でフィルムを強制的に送る駆動ロール24、フィルムをガイドするガイドロール25、使用済みフィルムを巻き取るフィルム巻き取りロール26、等から構成されている。このフィルム巻き取りユニット14も前記した下横移動装置15と共に下ユニットU2として可動盤9に取り付けられているが、本実施の形態においては、下ユニットU2の可動盤9への取付方法が従来の装置と異なっている。すなわち、下ユニットU2は、所定のヒンジ機構28を介して可動盤9に取り付けられている。このヒンジ機構28によってメンテナンス時に下ユニットU2を旋回、あるいは回動させることができる。
【0017】
ヒンジ機構28は、可動盤9の下部に固定されている固定板29と、この固定板29の一方の側部29aを中心として回動される旋回板31と、この旋回板31を回動するエアシリンダ32と、旋回板31を固定板29に接した状態でロックするクランプシリンダ33とから構成されている。下ユニットU2は、この旋回板31に固着され旋回板31と一体的に回動するようになっている。エアシリンダ32について詳しく説明すると、図1の(ウ)に示されているように、固定板29の側部には支持部29bが設けられ、エアシリンダ32は一方の端部がこの支持部29bの下端部に、他方の端部が旋回板31の下端部に、それぞれ回動自在に軸支されている。従って、エアシリンダ32を駆動して旋回板31が固定板29に接する位置、すなわち第1の回動位置にしても、あるいは旋回板31が固定板29に対して略90度になる位置、すなわち第2の回動位置にしても、エアシリンダ32は妨げにならない。
【0018】
エアシリンダ32とクランプシリンダ33は、転写フィルム送り出し装置12のコントローラからの指令によって、図2に示されているエア回路35によって駆動されるようになっている。コントローラは図には示されていない。エア回路35には、加圧空気を供給するエア供給源36と、空気を排気する排気弁37、37が設けられ、エアシリンダ32とクランプシリンダ33は、それぞれ第1、2の切換弁40、41を介してエア供給源36と排気弁37、37に接続されている。第1の切換弁40は、エア供給源36に連通するPポートと排気弁37、37に連通するRポート、Rポート、エアシリンダ32のA、B室のそれぞれに連通するAポート、Bポートとを備え、X、Y、Zの3位置を採って、それぞれのポートを連通させることが出来るようになっている。X位置を採るとエアシリンダ32のA、B室は共に排気弁37、37に連通してエアシリンダ32のピストン32aは停止する。Y位置を採るとA室はエア供給源36にB室は排気弁37にそれぞれ連通してピストン32aは左方向に駆動され、旋回板31は第2の回動位置に駆動される。そしてZ位置を採ると、B室はエア供給源36にA室は排気弁37にそれぞれ連通してピストン32aは右方向に駆動され、旋回板31は第1の回動位置に駆動される。第2の切換弁41は、エア供給源36に連通するPポートと排気弁37、37に連通するRポート、クランプシリンダ33のA、B室のそれぞれに連通するAポート、Bポートとを備え、X、Yの2位置を採って、それぞれのポートを連通させることが出来るようになっている。X位置を採るとクランプシリンダ33のA室とエア供給源36、B室と排気弁37が連通し、ロックバー33aが突き出されてロックされるようになっている。一方Y位置を採るとA室は排気弁37にB室はエア供給源36にそれぞれ連通してロックが解除されるようになっている。エアシリンダ32には、旋回板31が第1、2の回動位置に達したことを検出するリミッタスイッチ、すなわち旋回クローズLS43と旋回オープンLS44が設けられている。クランプシリンダ33には、ロック状態・解除状態を検出するリミッタスイッチ、すなわちクランプロックLS45、クランプリセットLS46が設けられている。コントローラはこれらのリミットスイッチ43〜46のONを検出して次の指令を出力するようになっている。このようにして転写フィルム送り装置12は、各装置が誤作動しないように制御され、転写フィルム送り装置12の動作が完了しないと射出成形機1がスタートできないようにインターロックが採られている。
【0019】
このように構成されている転写フィルム送り装置12には、ロールに巻かれているフィルムの径を検出するセンサが設けられている。すなわちフィルムロール18には、第1のセンサ50が設けられフィルムの残量が検出されるようになっており、フィルム巻き取りロール26には、第2のセンサ51が設けられ、フィルムの撤去が必要になる、いわゆる満巻状態が検出されるようになっている。
【0020】
本実施の形態に係る転写フィルム送り装置12及び射出成形機1の作用を説明する。従来と同様に一方の面に絵付け用の箔が印刷されロール状に巻かれているフィルム48を使用する。このフィルム48を最初に転写フィルム送り装置12にセットするには以下のようにする。まず、転写フィルム送り装置12のコントローラを操作して転写フィルム送り装置12を自動モードから手動モードに切り換える。射出成形機1のコントローラを操作して、射出成形機1を手動モードにし、型締装置6を駆動して所定の位置まで型開きし、エジェクターを前進させる。フィルムロール18に、ロール状のフィルム48をセットする。フィルム48を引き出して、ガイドロール19、19、上クランプ20に掛け回し、フィルム48を可動側金型3に沿って送り、弛める。次いで転写フィルム送り装置12のコントローラにおいて、自動旋回の要求を行う。そうすると、コントローラは第2の切換弁41をY位置にしてクランプシリンダ33のロックを解除する。クランプリセットLS46のONを検出したら、コントローラは第1の切替弁40をY位置に駆動する。エアシリンダ32が駆動され、図3の(ウ)に示されているように旋回板31は固定板29に対して略90度回動する。すなわち下ユニットU2は、図3の(ア)(イ)に示されているように第2の回動位置に駆動される。旋回オープンLS44がONされたら、コントローラは第1の切替弁40をX位置に戻す。下ユニットU2の旋回、あるいは回動が完了する。この状態において、フィルム巻き取りロール26は射出成形機1の側方寄りに移動している。そうすると、フィルム巻き取りロール26が射出成形機1の側方に実質的に露出するので、作業が容易になる。先ほど可動側金型3に沿って送ったフィルム48を引き出し、下クランプ22、ガイドロール23、駆動ロール24、ガイドロール25に掛け回し、フィルム巻き取りロール26に所定の巻数だけ巻き付ける。転写成形を開始すると可動側金型3より下方のフィルムは、使用済みのフィルムになるので、図においては符号48’を付して使用前のフィルム48と便宜的に区別している。転写フィルム送り装置12のコントローラにおいて、自動復帰の要求を行う。そうすると、コントローラは第1の切換弁40をZ位置にしてエアシリンダ32を駆動し、下ユニットU2は第1の回動位置に戻る。旋回クローズLS43がONしたらコントローラは第1の切換弁40をX位置に戻す。次いでコントローラは第2の切換弁41をX位置にして、クランプシリンダ33を駆動して旋回板31をロックする。クランプロックLS45のONが検出される。下ユニットU2の旋回あるいは回動が完了する。転写フィルム送り装置12のコントローラを操作して転写フィルム送り装置12を自動モードにする。以上によりフィルム48のセットは完了する。
【0021】
射出成形機1のコントローラにおいて自動モードに切り換えて運転を開始すると、従来周知の転写フィルム送り装置と同様に、本実施の形態に係る転写フィルム送り装置12も射出成形機1に連動して運転される。すなわち、射出成形サイクルに連動して、フィルム48が所定の長さずつ送られ、転写成形に使用され、使用後のフィルム48’がフィルム巻き取りロール26に巻き取られる。
【0022】
フィルム巻き取りロール26に巻かれている使用済みのフィルム48’が満巻状態になったら、第2のセンサ51がこれを検出する。そうすると転写フィルム送り装置12のコントローラはフィルム48’の撤去を促す警告を表示して、転写フィルム送り装置12は停止する。その結果、射出成形機1も停止した状態で維持される。転写フィルム送り装置12のコントローラを操作して転写フィルム送り装置12を自動モードから手動モードに切り換える。射出成形機1のコントローラを操作して、射出成形機1を手動モードにし、型締装置6を駆動して所定の位置まで型開きし、エジェクターを前進させる。次いで転写フィルム送り装置12のコントローラを操作して、フィルム48を所定の長さ送り出し、フィルム48を弛める。コントローラにおいて自動旋回の要求を行う。そうすると、前記したように動作して、下ユニットU2は第2の回動位置に回動する。フィルム巻き取りロール26は射出成形機の側方に露出する。フィルム48’をフィルム巻き取りロール26の直前で切断し、フィルム巻き取りロール26から満巻状態の使用済みフィルム48’を撤去する。切断されて残ったフィルム48’を所定の巻数だけフィルム巻き取りロール26に巻き付ける。転写フィルム送り装置12のコントローラにおいて、自動復帰の要求を行うと、前記したように下ユニットU2は第1の回動位置に戻り、旋回板31はクランプシリンダ33によってロックされる。転写フィルム送り装置12のコントローラを操作して転写フィルム送り装置12を自動モードにする。射出成形機1のコントローラにおいて自動モードに切り換える。射出成形サイクルが再開される。
【0023】
フィルムロール18にセットされているフィルム48の残量が無くなったら、第1のセンサ50がこれを検出する。そうすると転写フィルム送り装置12のコントローラは、フィルム48の交換を促す警告を表示し、転写フィルム送り装置12は停止する。その結果、射出成形機1も運転を停止する。既に説明しているフィルム48をセットする方法と同様の操作をして、フィルム48を交換しても良いが、より簡単にフィルム48を交換することもできる。すなわちフィルム48をフィルムロール18の近傍で切断する。フィルムロール18から古いフィルム48を撤去して、新しいフィルム48をセットする。新しいフィルム48の端部と、切断した古いフィルム48の端部とを粘着テープ等で繋ぐ。新しいフィルム48を所定の長さ送り出して、フィルム巻き取りロール26に巻き取らせる。フィルム48の交換が完了する。
【0024】
本実施の形態に係る転写フィルム送り装置12は、色々な変形が可能である。例えば、転写フィルム送り装置12は手動的に運転することもできる。つまりコントローラにおいて半自動モードを選択すれば、1成形サイクルだけ転写成形をすることができ、成形品の状態を確認しながら、成形条件を調整することができる。また、転写フィルム送り装置12は射出成形機1と連動させずに単独で運転することも可能であり、射出成形機1と独立に調整することもできる。また本実施の形態に係る転写フィルム送り装置12は、色々なタイプの射出成形機に設けることができ、トグル式型締装置を備えた射出成形機、直圧式型締装置を備えた射出成形機等に設けることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 射出成形機 2 ベッド
3 可動側金型 4 固定側金型
6 型締め装置 8 固定盤
9 可動盤 10 上横移動装置
11 タイバー 12 転写フィルム送り装置
13 フィルム送り出しユニット 14 フィルム巻き取りユニット
15 下横移動装置 18 フィルムロール
20 上クランプ 22 下クランプ
24 駆動ロール 26 フィルム巻き取りロール
28 ヒンジ機構 29 固定板
29a 側部 29b 支持部
31 旋回板 32 エアシリンダ
33 クランプシリンダ 35 エア回路
36 エア供給源 40 第1の切換弁
41 第2の切換弁 50 第1のセンサ
51 第2のセンサ
U1 上ユニット U2 下ユニット
S1 上横センサ S2 下横センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に絵付け用の箔が印刷されロール状に巻かれているフィルムを所定の長さ送り出し、該送り出されたフィルムを固定側金型と可動側金型のパーティング面間に挟んで型締めし、前記パーティング面間に構成されるキャビティに溶融樹脂を射出すると、表面に前記箔が転写された成形品が得られるようになっている射出成形機における、転写フイルム送り装置であつて、
前記転写フィルム送り装置は、前記射出成形機の可動盤の上部に設けられている上ユニットと、前記可動盤の下部に設けられている下ユニットとからなり、
前記ロール状に巻かれているフィルムは、前記上ユニットから引き出され、前記可動側金型の前記パーティング面に沿って送られ、そして前記下ユニットのフィルム巻き取りロールに巻き取られるようになっており、
前記下ユニットはヒンジ機構を介して前記可動盤の下部に設けられ第1、2の回動位置を採ることができ、第1の回動位置を採ると前記フィルムは前記パーティング面に整合し、第2の回動位置を採ると前記フィルム巻き取りロールは前記射出成形機の側方寄りに移動するようになっていることを特徴とする転写フィルム送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写フィルム送り装置において、前記ヒンジ機構には該ヒンジ機構を駆動するピストンシリンダユニットと、該ヒンジ機構をロックするクランプシリンダとが設けられ、前記転写フィルム送り装置に設けられているコントローラによって制御されるようになっていることを特徴とする転写フィルム送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171117(P2012−171117A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32874(P2011−32874)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】