説明

旋回方向指示装置

【課題】主に自動車の各種制御用に用いられる旋回方向指示装置に関し、カム体と解除体との衝突音を低減し、確実な動作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】カム体25上面に複数の突条部25Gを設けると共に、突条部25Gとカバー2との間にグリースを介在させることによって、カム体25が動作した時に、複数の突条部25Gによりグリースが保持されて、カム体25の摺動範囲から外へ排出され難く、突条部25Gとカバー2面とのグリースによる抵抗力が安定して生じ、カム体25が解除体7の解除突部7Aと衝突する時に、カム体25の動作が低速となって衝撃力が弱まるため、これらの衝突音が小さくなり、動作音が静かで、確実な動作が可能な旋回方向指示装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングホイール(以降、ステアリングという)の近傍に配置され、操作レバーの操作によってターンシグナルランプを点消灯させる旋回方向指示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の操作レバーの操作によってターンシグナルランプを点消灯させる旋回方向指示装置において、旋回方向指示のため操作レバーを旋回方向へ回動して、操作レバーが保持された状態や、ステアリングの回動動作に応じて操作レバーを中立位置へ自動復帰させる際に、動作音の静かなものが求められている。
【0003】
このような従来の旋回方向指示装置について、図8から図10を用いて説明する。
【0004】
図8は従来の旋回方向指示装置の断面図、図9は同じく分解斜視図であり、同図において、1は作動体、2は略箱状のカバーで、カバー2の前部下面の軸受部2Aに作動体1上面の軸部1Aが軸支されて作動体1が左右方向へ回動可能にカバー2内に収容されている。
【0005】
そして、3は操作レバーで、先端方向に略筒状の操作部3Aが設けられると共に、根元には操作部3Aから作動体1方向へ駆動部3Bが延出している。
【0006】
また、駆動部3Bの両側の軸部3Cが作動体1前部の軸穴1Bに軸支され、操作レバー3が上下方向へ回動可能に作動体1に装着されている。
【0007】
さらに、5は作動体1上面に載置されたカム体で、略小判形で平面状の基部5Aの上面に上軸部5Bが、下面に上軸部5Bと同軸上に下軸部5Cが各々設けられると共に、前部に前カム部5D、後部に後カム部5Eが突出している。
【0008】
そして、2Bはカバー2の下面に前後方向へ延出すると共に上方へ窪んだ長孔状のガイド溝で、このガイド溝2Bに上軸部5Bが係合して、カム体5が前後方向への移動及び回転可能にカバー2に保持されている。
【0009】
なお、カム体5上面とカバー2下面との間にはグリースが塗布され、カバー2下面とカム体5上面との摺動摩擦を低減すると共に、グリースの粘性などによる抵抗力によってカム体5の急速な動作を緩和させるようになっている。
【0010】
そして、6はコイル状の付勢ばねで、両端がカバー2下面の所定箇所に係止されると共に、略中央部がカム体5下面の係合凹部5Fに係合して、カム体5を後方向へ付勢している。
【0011】
また、7は両端から後方向へ解除突部7Aが突出した略コ字状の解除体で、作動体1上面の略中間に保持されている。
【0012】
そして、9Aは節度ばね、9Bは節度ピンで、作動体1の後端部の穴部1Fに節度ばね9Aが撓んだ状態で節度ピン9Bと共に収容され、節度ピン9Bが対向するカバー2の節度カム2Dに弾接して節度手段9が構成され、この節度手段9によって、操作レバー3の中立位置で作動体1が保持されると共に、左右方向へ回動の際に節度感を伴って動作し、左右方向の所定位置で保持されるようになっている。
【0013】
また、10は上方開口のケースで、作動体1を軸部1Aと同軸上で回転可能に軸支すると共に、カバー2下方開口を覆い、操作レバー3が装着された作動体1等を収納している。
【0014】
さらに、11は上下面に複数の配線パターンが形成された絶縁樹脂製の配線基板、12は作動体1の駆動凹部1Gに上端が係合した摺動体で、配線基板11の所定箇所に固定接点(図示せず)が配設されると共に、摺動体12下面に固着された可動接片12Bが固定接点に弾接摺動することによって、これらの間の電気的接離が行われるようにして、スイッチ接点部12Aが形成されている。
【0015】
また、操作レバー3の左右方向への回動操作に伴う作動体1の回動により、スイッチ接点部12Aの電気的接離が行われると共に、配線基板11の下方を底板13が覆って旋回方向指示装置が構成されている。
【0016】
そして、このように構成された旋回方向指示装置が、自動車内の運転席前方のステアリング(図示せず)下方に操作部3Aが外方へ突出して装着され、図10(a)の動作説明図に示すように、ステアリングシャフト(図示せず)の回転に連動する略円弧状の複数のキャンセルカム20が作動体1の後方近傍に配置されると共に、カム体5の後カム部5Eがカバー2の開口2Cから外方へ突出し、配線基板11のコネクタ部11Aに外部接続用のリード線(図示せず)等が連結されて、スイッチ接点部12A等が車両の電子回路(図示せず)に電気的に接続されている。
【0017】
以上の構成において、図10(a)に示すように、操作レバー3が中立位置に保持されている時には、カム体5は付勢ばね6によってキャンセルカム20方向の後方向へ付勢されると共に、下軸部5Cが保持カム1Eの略三角状の頂点部に弾接し、後カム部5Eがキャンセルカム20の回転軌道から外方へ離れた非当接位置に位置すると共に、前カム部5Dが解除体7両端の対向する解除突部7Aの略中間に位置している。
【0018】
そして、例えば、自動車を右方向へ旋回させる際に、操作レバー3を右方向へ回動操作すると、図10(b)に示すように、操作レバー3は作動体1の軸部1Aを中心として作動体1と共に回動して、作動体1が右方向へ所定角度回動した第1の動作位置で節度手段9によって保持されると共に、カム体5の下軸部5Cが保持カム1Eの頂点部から傾斜面を弾接摺動して略三角状の両端近傍へ移動する。
【0019】
なお、同様に操作レバー3を左方向へ回動操作すると、作動体1が左方向へ所定角度回動した第2の動作位置で節度手段9によって保持されるようになっている。
【0020】
そして、作動体1が第1の動作位置で保持されている時、カム体5の後カム部5Eがキャンセルカム20の回転軌道内、即ち当接可能位置へ後退すると共に、前カム部5Dの先端部が解除突部7Aの内側面に当接する。
【0021】
また、作動体1の回動に伴って、スイッチ接点部12Aの電気的接離が行われ、この電気信号によって車両の電子回路を介して右側のターンシグナルランプが点滅する。
【0022】
次に、自動車を右方向へ旋回させるため、ステアリングを右方向の時計回りに回動操作すると、ステアリングに連動したキャンセルカム20が時計回りに回転して、カム体5の後カム部5Eに当接後、カム体5は上軸部5Bを中心に反時計回りに回転すると共に、係合凹部5Fに係合した付勢ばね6のねじれによる時計回りの付勢力を強めながら、前カム部5Dが解除突部7Aから離れる。
【0023】
さらに、ステアリングを時計回りに回動操作し続けると、後カム部5Eが弾接していたキャンセルカム20から離れて、キャンセルカム20によるカム体5の時計回りの回転規制が解除され、カム体5が付勢ばね6によって時計回りに回転付勢され、前カム部5Dが解除体7の右側の解除突部7A内側面に衝突する。
【0024】
なお、この時、カム体5上面とカバー2下面との間にはグリースが塗布されているが、温湿度の変化等の様々な環境の中で長期間使用されると、カム体5上面の平面状の基部5Aと摺動するカバー2下面の平坦面との間のグリースはこれらの摺動範囲から外方へ排出され、グリースによるカム体5の動作に及ぼす抵抗力が減少して、前カム部5Dが解除突部7Aに比較的大きな衝撃力で衝突し、大きな衝突音が生じ易いものであった。
【0025】
また、自動車の旋回が終了し、ステアリングを元の中立位置へ戻す時には、ステアリングを反対の反時計方向へ回転させると、図10(b)に示す状態から、反時計方向へ回転したキャンセルカム20が後カム部5Eを押圧して、カム体5が上軸部5Bを中心に時計方向へ回転すると共に、前カム部5Dの右側端が作動体1を反時計方向へ回動させ、図10(a)に示すように、作動体1が操作レバー3と共に中立位置へ復帰して保持された中立状態に戻り、点滅していたターンシグナルランプが消灯する。
【0026】
このように、自動車の旋回方向に応じて、操作レバー3を中立位置から右方向の第1の動作位置又は左方向の第2の動作位置へ回動操作すると、操作レバー3と共に作動体1が回動して、スイッチ接点部12Aの電気的接離が行われると共に、旋回方向のターンシグナルランプが点滅し、さらに、ステアリングを旋回方向へ回転操作後、反対方向へ回転操作させると、これに連動したキャンセルカム20がカム体5を押圧することによって、カム体5を介して作動体1が操作レバー3と共に元の中立位置へ復帰させて、ターンシグナルランプの点滅を止めるようにして、旋回方向指示装置が構成されているものであった。
【0027】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平8−167345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、前記従来の旋回方向指示装置においては、操作レバー3を右方向又は左方向へ回動操作し、作動体1が第1又は第2の動作位置に保持された状態で、ステアリングを操作レバー3の回動方向と同じ方向、即ち、順方向へ回転操作した時に、キャンセルカム20に押圧されたカム体5の後カム部5Eがキャンセルカム20から離れた際に、付勢ばね6の付勢力によって回転付勢されたカム体5の前カム部5Dが、解除体7の解除突部7Aに比較的大きな衝撃力で衝突して、大きな衝突音が発生し易いという課題があった。
【0030】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、カム体と解除体との衝突音を低減し、確実な動作が可能な旋回方向指示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0032】
本発明の請求項1に記載の発明は、カバー下面又は作動体上面との間に移動及び回転可能に保持されたカム体の、上面又は下面の少なくとも一方に複数の突条部を設けると共に、突条部とカバーまたは作動体の間にグリースを介在させて旋回方向指示装置を構成したものであり、カム体の上面又は下面に複数の突条部を設けることによって、操作レバーの回動操作やキャンセルカムの回転に伴って、カム体が前後方向への移動や左右方向への回動動作を行った時に、グリースは複数の突条部の間に保持されながら、カム体の上面又は下面に略均一に残存するため、カム体の突条部とカバー面又は作動体面とのグリースによる抵抗力が安定して生じ、カム体が付勢ばねの付勢力によって解除体の解除突部に衝突する時に、カム体の動作が低速となって衝撃力が弱まるため、これらの衝突音が小さくなり、動作音が静かで、確実な動作が可能な旋回方向指示装置を得ることができるという作用を有する。
【0033】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、カム体の突条部面にグリース保持窪部を設けたものであり、カム体の動作に伴って突条部に加えグリース保持窪部にもグリースが確実に溜まり、様々な環境で長期間使用した状態においてもカム体表面からグリースが切れ難く、カム体の動作時の抵抗力が安定するため、より安定してカム体の衝突音が小さく静かな動作音のものにすることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、カム体と解除体との衝突音を低減し、確実な動作が可能な旋回方向指示装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態による旋回方向指示装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同カバー下面の平面図
【図4】同カム体の斜視図
【図5】同動作説明図
【図6】同動作説明図
【図7】同動作説明図
【図8】従来の旋回方向指示装置の断面図
【図9】同分解斜視図
【図10】同動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0037】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0038】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による旋回方向指示装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1はポリオキシメチレンなどの絶縁樹脂製の作動体、2はポリアミドなどの絶縁樹脂製で略箱状のカバーで、カバー2の前部下面の上方へ窪んだ軸受部2Aに作動体1上面の軸部1Aが軸支されて、作動体1が左右方向へ回動可能にカバー2内に収容されている。
【0039】
そして、3はABSやポリアミドなどの絶縁樹脂製の操作レバーで、先端方向に略筒状の操作部3Aが設けられると共に、根元には操作部3Aから作動体1方向へ駆動部3Bが延出している。
【0040】
また、駆動部3Bの両側の軸部3Cが作動体1前部の両側面の軸穴1Bに軸支され、駆動部3B端部の穴部3Dに節度ばね4A及び節度ピン4Bが挿入されると共に、この節度ピン4Bが作動体1下部に設けられた凹凸状の節度カム1Cに弾接して、操作レバー3が上下方向へ節度感を伴って回動可能に作動体1に装着されている。
【0041】
さらに、25は作動体1上面に載置されたポリオキシメチレンなどの絶縁樹脂製のカム体で、略小判形の基部25Aの上面に上軸部25Bが、下面に上軸部25Bと同軸上に下軸部25Cが各々設けられると共に、前部に前カム部25D、後部に後カム部25Eが各々突出している。
【0042】
そして、2Bは、図3のカバー下面の平面図に示すように、カバー2の下面に前後方向へ延出すると共に上方へ窪んだ長孔状のガイド溝で、このガイド溝2Bに上軸部25Bが係合して、カム体25が前後方向への移動及び回転可能にカバー2に保持されている。
【0043】
なお、カム体25の基部25A及びその近傍の上面には、図4のカム体の表裏斜視図に示すように、カム体25の前後方向に対し略直交する方向へ延びると共に、所定間隔で略平行に複数の突条部25Gが基部25A面から上方へ突出すると共に、左右の突条部25Gの間には、基部25A面よりさらに窪んだグリース保持窪部25Jが上軸部25Bを挟んで前方向と後方向の両側に設けられている。
【0044】
また、カム体25上面とカバー2下面との間にはグリースが塗布され、カバー2下面とカム体25上面との摺動摩擦を防止すると共に、グリースの粘性などによる抵抗力によってカム体25の急速な動作を緩和させるようになっている。
【0045】
そして、6はコイル状の付勢ばねで、両端がカバー2下面の係止部2Eに各々係止されると共に、略中央部がカム体25の下軸部25Cの前部近傍の係合凹部25Fに係合して、カム体25を後方向へ付勢している。
【0046】
また、7は略コ字状でポリオキシメチレンなどの絶縁樹脂製の解除体で、両端から解除突部7Aが後方向へ突出すると共に、前部の穴部に保持ばね8Aやボール8Bが収容されると共に、ボール8Bが対向する作動体1の保持凹部1Dに弾接して、解除体7が作動体1上面の略中間に所定荷重以上で左右方向へ移動可能に保持されている。
【0047】
そして、9Aは節度ばね、9Bは節度ピンで、作動体1の後端部の穴部1Fに節度ばね9Aが撓んだ状態で節度ピン9Bと共に収容され、節度ピン9Bが対向するカバー2の節度カム2Dに弾接して節度手段9が構成され、この節度手段9によって、操作レバー3が中立位置で作動体1が保持されると共に、左右方向へ回動の際に節度感を伴って動作し、左右方向の所定位置で保持されるようになっている。
【0048】
また、10は上方開口でポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製のケースで、作動体1を軸部1Aと同軸上で回転可能に軸支すると共に、カバー2下方開口を覆って、操作レバー3が装着された作動体1等を収納している。
【0049】
さらに、11は上下面に複数の配線パターンが形成された絶縁樹脂製の配線基板で、12は作動体1の駆動凹部1Gに上端が係合した摺動体で、配線基板11の所定箇所に固定接点(図示せず)が配設されると共に、摺動体12下面に固着された可動接片12Bが固定接点に弾接摺動することによって、これらの間の電気的接離が行われるようにして、スイッチ接点部12Aが形成されている。
【0050】
また、操作レバー3の左右方向への回動に伴う作動体1の回動により、スイッチ接点部12Aの電気的接離が行われると共に、配線基板11の下方を底板13が覆って旋回方向指示装置が構成されている。
【0051】
そして、このように構成された旋回方向指示装置が、自動車内の運転席前方のステアリング(図示せず)下方に操作部3Aが外方へ突出して装着され、図5(a)の動作説明図に示すように、ステアリングシャフト(図示せず)の回転に連動する略円弧状の複数のキャンセルカム20が作動体1の後方近傍に配置されると共に、カム体25の後カム部25Eがカバー2の開口2Cから外方へ突出し、配線基板11のコネクタ部11Aに外部接続用のリード線(図示せず)等が連結されて、スイッチ接点部12A等が車両の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0052】
以上の構成において、図5(a)及び図6(a)のカム体主体の動作説明図に示すように、操作レバー3が中立位置に保持されている時には、カム体25は付勢ばね6によってキャンセルカム20方向の後方向へ付勢されると共に、下軸部25Cが保持カム1Eの略三角状の頂点部に弾接し、後カム部25Eがキャンセルカム20の回転軌道から外方へ離れた非当接位置に位置すると共に、前カム部25Dが解除体7両端の対向する解除突部7Aの略中間に位置している。
【0053】
そして、例えば、自動車を右方向へ旋回させる際に、操作レバー3を右方向の時計回りに回動操作すると、図5(b)、図6(b)に示すように、操作レバー3は作動体1の軸部1A等を中心として作動体1と共に回動して、作動体1が時計回りに所定角度回動した第1の動作位置で節度手段9によって保持される。
【0054】
なお、同様に操作レバー3を左方向の反時計回りに回動操作すると、作動体1が反時計回りに所定角度回動した第2の動作位置で節度手段9によって保持されるようになっている。
【0055】
そして、作動体1が第1の動作位置で保持される時、カム体25は下軸部25Cが保持カム1Eの頂点部から傾斜面を弾接摺動して略三角状の両端近傍へ移動しながら、上軸部25Bがガイド溝2Bに沿って後方向へ移動する。
【0056】
また、この時、カム体25の後カム部25Eがキャンセルカム20の回転軌道内である当接可能位置へ後退すると共に、前カム部25Dの先端部が右側の解除突部7Aの内側面に当接するが、カム体25の前後方向と略直交して配列された複数の突条部25G間の溝部25Hに溜まったグリースやグリース保持窪部25Jに溜まったグリースも、カム体25の動作に伴って保持されながら移動する。
【0057】
さらに、作動体1の回動に伴って、下端の駆動凹部1Gに係合した摺動体12が配線基盤11上を摺動することにより、スイッチ接点部12Aの電気的接離が行われ、この電気信号によって車両の電子回路を介して右側のターンシグナルランプが点滅する。
【0058】
次に、自動車を右方向へ旋回させるため、ステアリングを右方向の時計回りに回動操作すると、図5(c)、図6(c)に示すように、ステアリングに連動したキャンセルカム20が時計回りに回転して、カム体25の後カム部25Eに当接後、カム体25は上軸部25Bを中心に反時計回りに回転すると共に、係合凹部25Fに係合した付勢ばね6のねじれによる時計回りの付勢力を強めながら、前カム部25Dが解除突部7Aから離れる。
【0059】
なお、カム体25が反時計回りへ回動する際には、突条部25Gはカム体25前後方向と略直交して配列されているため、上軸部25Bを中心とした回動に対してグリースがカム体25上面から排出され難く、グリース保持窪部25Jにも確実にグリースが保持され易い。
【0060】
さらに、ステアリングを時計回りに回動操作し続けると、図5(d)、図6(d)に示すように、後カム部25Eが弾接していたキャンセルカム20から離れて、キャンセルカム20によるカム体25の時計回りの回転規制が解除され、カム体25が付勢ばね6によって時計回りに回転付勢され、前カム部25Dが解除体7の右側の解除突部7A内側面に衝突する。
【0061】
なお、この時、カム体25上面の複数の突条部25G面やグリース保持窪部25Jとカバー2下面との間には、粘性を有するグリースが介在しているため、カム体25上面がカバー2下面に対し摺動する際に、突条部25Gとグリースの間に抵抗力が生じ、回転付勢されたカム体25の動作が低速になって、前カム部25Dが解除体7の解除突部7Aに当接する時の衝撃力は低減されるため、これらの間の衝突音は、背景技術で説明したようなカム体上面が略平面状のものに比べ、はるかに小さく静かなものとなる。
【0062】
また、自動車の旋回が終了し、ステアリングを元の中立位置へ戻す時には、ステアリングを右方向とは反対の左方向へ回転させると、図7(a)の動作説明図に示すように、反時計回りに回動したキャンセルカム20が後カム部25Eを押圧して、カム体25が上軸部25Bを中心に時計回りに回転すると共に、図7(b)に示すように、前カム部25Dの右側端が解除体7を介して作動体1を反時計回りへ回動させる。
【0063】
さらに、前カム部25Dが作動体1を反時計回りへ回動させると、図7(c)に示すように、作動体1が操作レバー3と共に中立位置へ復帰して保持された中立状態に戻り、これに応じてスイッチ接点部12Aの電気的接離が行われ、点滅していたターンシグナルランプが消灯する。
【0064】
そして、自動車を左方向へ旋回する際には、操作レバー3を左方向の第2の動作位置へ回動操作することによって、上述した右方向の第1の動作位置への操作時の説明とは逆の方向へ作動体1やカム体25などが動作し、同じくカム体25の前カム部25Dが解除体7の解除突部7Aに当接する時には、カム体25は低速で当接し、衝突音は小さく静かな動作となる。
【0065】
なお、このように操作レバー3の左右方向への回動操作に伴って、カム体25は保持カム1Eに沿って前後方向へ移動する時には、カム体25の前後方向と略直交した複数の突条部25G間の溝部25H内にグリースがカム体25上面に保持されながらカム体25と共に後退し、カム体25の上面にグリースが残存し易くなっている。
【0066】
また、旋回方向指示装置が温湿度の変化等の様々な環境下で、長期間使用された状態でも、グリースはグリース保持窪部25J内に常に所定量溜り、カム体25の動作時に突条部25Gの面にも拡散されるため、カム体25とカバー2との間のグリース切れが生じ難くなっている。
【0067】
さらに、グリースは旋回方向指示装置が使用される温度範囲である−30℃の低温から90℃の高温内でも粘性等が安定して使用可能で、稠度200〜350の硬さを有した合成油系などのグリースが好ましい。
【0068】
なお、突条部25Gの高さは基部25A面に対して0.05〜1mmで、カム体25がカバー2に対し前後方向や回転方向へ摺動動作する際に、グリースが突条部25Gの間の溝部25Hに保持され易く、かつ、突条部25Gがグリースに対し壁となって押し進み、カム体25上面が平面状でグリースが塗布されている場合に比べ、高い抵抗力を生じ易くしている。
【0069】
また、グリース保持窪部25Jの深さは基部25A面に対して0.05〜1mmで、カム体25が摺動動作する際に、グリース保持窪部25Jにはグリースが所定量溜り、保持されて、グリースが突条部25Gや溝部25Hに拡散して供給され易くなっている。
【0070】
なお、操作レバー3を上下方向へ回動操作することによって、作動体1内の対応するスイッチ接点部(図示せず)の電気的接離が行なわれ、車両の電子回路を介してライトのハイやローなどの切換えが行われるようになっている。
【0071】
このように本実施の形態によれば、カバー2下面と作動体1上面との間に前後方向への移動及び回転可能に保持されたカム体25の上面に複数の突条部25Gを設けると共に、突条部25Gとカバー2との間にグリースを介在させることによって、操作レバー3の回動操作やキャンセルカム20の回転に伴って、カム体25が前後方向への移動や左右方向への回動動作した時に、複数の突条部25Gによりグリースは複数の突条部25Gの間に保持されながら、カム体25の上面に略均一に残存して、カム体25の摺動範囲から外へ排出され難いため、カム体25の突条部25Gとカバー2下面とのグリースによる抵抗力が安定して生じ、カム体25が付勢ばね6の付勢力によって解除体7の解除突部7Aに衝突する時に、カム体25の動作が低速になって衝撃力が弱まるため、これらの衝突音が小さくなり、動作音が静かで、確実な動作が可能な旋回方向指示装置を実現することができる。
【0072】
また、カム体25の複数の突条部25Gの間にグリース保持窪部25Jを設けることによって、カム体25の動作に伴って突条部25Gに加えグリース保持窪部にもグリースが確実に溜まり、様々な環境で長期間使用した状態においてもカム体25とカバー2間のグリースが切れ難く、カム体の動作時の抵抗力が安定するため、より安定してカム体の衝突音が小さく静かな動作音のものにすることができる。
【0073】
なお、以上の説明では、カム体25の上面のみに複数の突条部25Gやグリース保持窪部25Jを設けたものとして説明したが、カム体25の下面に複数の突条部やグリース保持窪部を設けると共に、カム体25下面と作動体1上面との間にグリースを介在させたものや、カム体25の上下面の両方に複数の突条部やグリース保持窪部を設けて、カム体25とカバー2及び作動体1の各間にグリースを各々介在させたものとしても本発明の実施は可能である。
【0074】
さらに、以上の説明では、突条部25Gの形状を、カム体の前後方向に対し略直交する方向へ延びると共に、略平行に複数配置し、左右の突条部25Gの間にグリース保持窪部25Jを設けたものとして説明したが、カム体上面に複数の突条部を前後方向と左右方向に交差する略格子状に形成したものなど、カム体の動作の際にグリースが突条部によって保持されて、摺動範囲から排出され難く、かつ、グリースとの抵抗力が生じ易い様々な形状としても本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明による旋回方向指示装置は、簡易な構成で、カム体と解除体との衝突音を低減し、静かで確実な動作が可能なものを得ることができ、主に自動車用として有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 作動体
1A、3C 軸部
1B 軸穴
1C、2D 節度カム
1D 保持凹部
1E 保持カム
1F、3D 穴部
1G 駆動凹部
2 カバー
2A 軸受部
2B ガイド溝
2C 開口
2D 節度カム
2E 係止部
3 操作レバー
3A 操作部
3B 駆動部
4A、9A 節度ばね
4B、9B 節度ピン
6 付勢ばね
7 解除体
7A 解除突部
8A 保持ばね
8B ボール
9 節度手段
10 ケース
11 配線基板
11A コネクタ部
12 摺動体
12A スイッチ接点部
12B 可動接片
20 キャンセルカム
25 カム体
25A 基部
25B 上軸部
25C 下軸部
25D 前カム部
25E 後カム部
25F 係合凹部
25G 突条部
25H 溝部
25J グリース保持窪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの回転に連動して回転するキャンセルカムの近傍に配置され、操作レバーの操作により中立位置から第1または第2の動作位置へ回動する作動体と、この作動体の回動に伴って電気的接離を行うスイッチ接点部と、前記作動体の上面に載置され、前部に突条の前カム部が、後部に突条の後カム部が各々設けられると共に、上面に上軸部が設けられたカム体と、このカム体の上方に装着され、前記上軸部を前後方向へ移動及び回転可能に保持するガイド溝が下面に設けられたカバーと、前記カバー下面に両端が係止されると共に、前記カム体下面に当接して、前記カム体を後方向のキャンセルカム側又は回転方向へ付勢する付勢ばねと、前記作動体の上面に、両端が後方向へ突出して略コの字状に形成されると共に、前記前カム部が前記略コの字状部の間に配設された解除体からなり、前記作動体が中立位置にある時に、前記カム体が前記キャンセルカムと非当接位置に前進し、前記作動体が第1または第2の動作位置に保持された時に、前記カム体の後カム部が前記キャンセルカムと当接可能位置に後退し、前記キャンセルカムの回動により、前記カム体が前記解除体を介して前記作動体を回動させ中立位置に復帰させる旋回方向指示装置であって、前記カム体の上面又は下面の少なくとも一方に複数の突条部を設けると共に、前記突条部と前記カバーまたは前記作動体の間にグリースを介在させた旋回方向指示装置。
【請求項2】
カム体の突条部面にグリース保持窪部を設けた請求項1記載の旋回方向指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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