説明

旗の製造方法及び旗

【課題】画像品質も維持され、かつ光触媒も固着された旗の製造方法及び旗を提供すること。
【解決手段】本発明は、旗の所望のデザインの中の白地部分に光触媒を固着させる製造方法と、その製造方法によって得られる旗に関するものである。また、光触媒には酸化チタンを用い、光触媒を固着させる製造方法としては、シルクスクリーン印刷を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旗の製造方法及び旗に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化チタンに代表される光触媒の酸化・還元反応を利用して、防汚性、消臭性、防菌性、防カビ性、窒素酸化物除去性等の機能を付与する技術が提案されている。旗の分野においても、光触媒を旗に固着させて、光触媒による効果を得ようとする試みがなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、光触媒を付着させた垂れ幕などが開示されている。特許文献2には、光触媒機能製品の例として、広告用の旗が開示されている。特許文献3には、旗の表面又は表裏面に光触媒効果を有するガラス膜層を形成することが表示されている。特許文献4には、一面に光触媒を備える垂れ幕が開示されている。非特許文献1には、光触媒に関する記載がある。このように、光触媒機能を備える旗は各種提案されている。
【特許文献1】特開2001−149448号公報 段落0010
【特許文献2】特開2002−370026号公報 段落0017、0020
【特許文献3】特開2004−252393号公報 段落0013
【特許文献4】特開平10−290020号公報 図17
【非特許文献1】中小企業整備基盤機構、“新連携支援四国戦略会議”、[omline]、 [平成19年3月6日検索]、インターネット<URL:http://www.smrj.go.jp/shin renkei/renraku/shikoku/nintei/anken6/01533.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の技術を、旗にそのまま適用することは、品質面で問題がある。旗の印刷に使う色糊は、繊維布生地面に色を接着するための固着剤であるバインダーと、色素成分である液体顔料を混合することによって作成される。たとえば、色糊に光触媒の粉末を加えることを考える。光触媒の粉末として、たとえば、酸化チタンの粉末を用いた場合、当該粉末は白色である。このような白色の粉末を色糊に加え、印刷した場合、色彩そのものが白っぽく、パステル調になり、宣伝面である表面が所望の色彩を発揮しないということになる。近年の画像処理技術の発展に伴い、印刷面の色彩品質に対する要求は高まっており、品質面の問題を克服しない限り、光触媒を固着させた旗の実用化は難しい。
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、画像品質も維持され、かつ光触媒も固着された旗の製造方法及び旗を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、繊維布生地に所望のデザインの印刷を施す際、白地部分に光触媒を固着することを特徴とする。
【0007】
一実施形態において、白地部分に使用する光触媒は、酸化チタンを使用するとよい。
【0008】
一実施形態において、光触媒は、シルクスクリーン印刷で固着するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白地部分に光触媒が固着するため、画像品質も維持された旗を製造することが可能となる。
【0010】
例えば自動車メーカーの販売店舗に当該印刷を施した旗を備え付けることにより、商品の宣伝広告のみならず、その自動車メーカーの環境意識の高さを、消費者にアピールすることも可能である。また行政サービス等の環境啓発事業にも当該旗を使用することによって、市民にアピールすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る旗は、繊維布生地の一方面に所望のデザインの印刷を施す際、白地部分に光触媒を固着することを特徴とする。
【0012】
ここで、旗とは、宣伝用の幟旗や、横断幕、懸垂幕、社旗、校旗、優勝旗、国旗、会旗、団旗、労働旗、手旗、応援旗、信号旗、安全旗、安全衛生旗、船旗、敬弔旗、神社旗、門幕、山車幕、紋幕、泥幕、応援幕、水引幕、舞台幕、盆幕、見送幕、神社幟、相撲幟、武者幟、鯉幟、桃太郎幟、背幟、役者(歌舞伎)幟、タペストリー、バナーなど、あらゆる旗のことをいう。
【0013】
繊維布生地とは、繊維で織られた布生地である。繊維布生地としては、たとえば、化学繊維で織られた布生地や、天然繊維で織られた布生地がある。化学繊維で織られた布生地として、宣伝用の幟旗では、ポンジーやトロピカルと呼ばれる生地が良く用いられる。ポンジーとは、縦糸及び横糸がそれぞれ75デニールで織られた織物のことをいう。トロピカルとは、縦糸及び横糸がそれぞれ150デニールで織られた織物のことをいう。なお、本発明において用いられる繊維布生地は、化繊布や天然生地、ポンジーやトロピカルに限定されるものではない。
【0014】
光触媒とは、そのバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射すると光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などの公知の金属化合物半導体を1種または2種以上用いることができる。特に、優れた光触媒機能を有し、化学的に安定でかつ無害である酸化チタンが好ましい。酸化チタンとは、酸化チタンの他、含水酸化チタン、水和酸化チタン、オルソチタン酸、メタチタン酸、水酸化チタン酸と一般に呼ばれるものを含み、結晶型は限定されないが、アナターゼ型が好ましい。
【0015】
所望のデザインを印刷する面は、繊維布生地のどちらの面であってもよい。所望のデザインを印刷する工程では、シルクスクリーン印刷を用いる。主要な印刷方式としては、凹版を用いるグラビア印刷、平板を用いるオフセット印刷、活版を用いる凸版印刷、孔版を用いるスクリーン印刷等がある。本発明に用いるシルクスクリーン印刷ではステンシルと呼ばれる画像部が貫通した版を用い版の下に印刷物である繊維布生地を置く。スクリーン版の内側の一端に色糊をのせスキージを往復させて色糊をスクリーンの紗の下に押し出し印刷する。
【0016】
ここでスクリーン版の製版方法を説明する。まず、版枠に紗を張り乳剤をコーティングする。原稿(透過ポジタイプ)を貼り付け、水銀灯にて露光し、その後現像する。水洗いによって露光されない部分が孔版となり、色糊の転移部分となる。最近では、デザイン原稿は透過ポジではなく、インクジェットプリンターによるダイレクト製版方法も使用されている。
【0017】
スクリーンの版枠には、木材、アルミ、ステンレス、プラスチックなどがあるが加工法、軽量性、コスト面などトータル面から考慮してアルミ材が圧倒的に多い。
【0018】
紗の素材は、シルク、ナイロン、テトロン、ステンレス等があるが、比較的多く使われているのがテトロン紗である。スクリーン印刷がいまだにシルクスクリーンと呼ばれるのはナイロン、テトロン、ステンレス等の糸素材が出現する以前に最も適した糸素材としてシルク(絹)が用いられた(シルクしか適当でなかった)ところからこの名称が残っている。
【0019】
白地部分に光触媒をシルクスクリーン印刷によって固着する場合、最初に色糊を印刷し、最後に光触媒を固着する方法、或いは最初に光触媒を固着し、次に色糊を印刷していく方法がある。いずれの場合でも、光触媒を旗に固着することが可能である。よりこのましくは、シルクスクリーン印刷の順序として、白地部分への光触媒のシルクスクリーン印刷による固着を、最後に行うと良い。最初に光触媒によるシルクスクリーン印刷による固着を行うと、後工程の色部分の印刷の折に、版に張られた紗が生地より光触媒を奪い取る現象が起こる。そうすると、光触媒の固着量が減少することにより、光触媒性能が落ちる可能性がある。
【0020】
光触媒を固着させる方法として、たとえば、以下のような方法がある。水にキレート分散剤を添加して、撹拌し、溶解する。次に、得られた溶液を撹拌しながら、光触媒粒子を徐々に添加して、光触媒粒子を均一に分散させる。その後、撹拌しながら超音波振動を加え、ペースト液を作成する。当該ペースト液にバインダー樹脂を添加して、混合する。その後、アクリル系増粘剤を用いて、粘度を調整して、配合液を得る。当該配合液を、シルクスクリーン印刷を用いて、白地部分に印刷し、予備乾燥を行う。さらに、ベーキング(熱入れ)を行って、繊維布生地の白地部分に、光触媒を固着させる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
繊維布生地として、縦糸及び横糸が75デニールで織られたポンジーを用いる。所望のデザインの白地部分に光触媒を固着させるための配合液を準備する。当該配合液は、以下のようにして準備した。水150重量部に対して、キレート分散剤15重量部を添加して、撹拌し、溶解する。次に、得られた溶液を撹拌しながら、光触媒酸化チタン(石原産業株式会社製:ST―30L)20重量部を徐々に添加して、光触媒粒子を均一に分散させる。その後、撹拌しながら超音波振動を加え、ペースト液を作成する。当該ペースト液に、水85重量部及びバインダー樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:F−15)125重量部を添加して、混合する。その後、アクリル系増粘剤を用いて、粘度を8000〜10000CPS(20℃)に調整して、配合液を得る。当該配合液はシルクスクリーンを用いて、120g/m2(Wet)繊維布生地に印捺し、105℃にて5分間予備乾燥を行う。さらに、150℃にて3分間ベーキング(熱入れ)を行って、繊維布生地の白地部分に、光触媒を固着させて、実施例1に係る旗を得た。
【0023】
(比較例1)
実施例1の配合液100重量部に、液体顔料ピンク2重量部(大日本インキ化学工業株式会社製:R/W Brilliant Pink FFB)を加え混合した。当該配合液はシルクスクリーンを用いて、120g/m2(Wet)繊維布生地に印捺し、105℃にて5分間予備乾燥を行う。さらに、150℃にて3分間ベーキング(熱入れ)を行って、繊維布生地に、光触媒を固着させて、比較例1に係る試料を得た。
【0024】
(比較例2)
実施例1の配合液100重量部に、液体顔料10重量部(大日本インキ化学工業株式会社製:R/W Red GRX)を加え混合した。それ以外は比較例1と同様である。
【0025】
(比較例3)
実施例1の配合液100重量部に、液体顔料ブルー1重量部(大日本インキ化学工業株式会社製:Dexcel Blue HG/C)を加え混合した。それ以外は比較例1と同様である。
【0026】
比較例1及び比較例2及び3の色彩を目視により確認した。主要カラーである、ピンク、レッド、ブルーのいずれの場合も、実施例1の配合液に液体顔料を入れると色彩がパステル調になった。光触媒が配合されていない従来の色彩と同等の品質を出すことが難しいと判明した。よって、従来の旗と同等の色彩を保持しつつ、光触媒を担持した旗を製作するためには、実施例1にあるように白地に光触媒を固着することが有効であることが確認できた。
【0027】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種種の改良や変形を行うことができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る旗の製造方法は、所望のデザイン品質を落とすことなく光触媒を担持させた各種旗の製造分野等において、有用である。また旗を広告宣伝手段のみならず、環境貢献型企業であることをアピールできる旗ともいえる。行政組織にとっても、市民に対して環境意識の向上及び環境教育を行う上で有効な手段である。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布生地の一方面に所望のデザインの印刷を施す際、白地部分に光触媒を固着することを特徴とする、旗の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする、請求項1に記載の旗の製造方法。
【請求項3】
前記光触媒は、シルクスクリーン印刷で固着されることを特徴とする、請求項1に記載の旗の製造方法。
【請求項4】
繊維布生地の一方面に所望のデザインの印刷が施された旗であって、前記所望のデザイ
ンのうち、白地部分は光触媒が固着されている旗。
【請求項5】
前記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする、請求項4に記載の旗。
【請求項6】
前記光触媒は、シルクスクリーン印刷で固着されることを特徴とする、請求項4に記載の旗。




















【公開番号】特開2008−266795(P2008−266795A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106704(P2007−106704)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(594101260)井上染工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】