説明

既製耳あな型補聴器

【課題】 外耳道を密閉することなく、装着時のこもり感をなくし、圧迫感や違和感などを低減する既製耳あな型補聴器を提供する。
【解決手段】 外耳道を密閉することなく装用される既製耳あな型補聴器1であって、ケース本体2と、このケース本体2と略L字形状を形成する挿入部3と、この挿入部3の先端に取り付ける先端導音掛着部4からなり、ケース本体2の一部が耳甲介腔11内に当接して収まると共に、先端導音掛着部4が外耳道15の第一カーブ16の突出部分16aに掛着される。マイクロホンの集音部6や電池収納部7などは、ケース本体2の側面2bに設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外耳道を密閉することなく装用することができる既製耳あな型補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
既製耳あな型補聴器は、装用者の耳型からケース本体を製作するオーダーメード耳あな型補聴器とは異なり、特定の形状でケース本体などを製作する耳あな型補聴器である。この既製耳あな型補聴器は、ケース本体とそのケース本体から外耳道に挿入する挿入部が設けられており、挿入部の先端には傘部を有した耳栓が取付けられている。装用時には、既製耳あな型補聴器自体を、この耳栓で保持することになり、耳栓の傘部と外耳道の内壁とは、全周にわたって接触することになる。このため、圧迫感や違和感などが生じる。また、外耳道内は密閉されるので、こもり感もある。
【0003】
耳栓の中には、耳かけ型補聴器で使用しているように、耳栓の傘部に開口を設けたオープンタイプのものがあり、外耳道内を密閉しないで、こもり感、圧迫感や違和感などを大幅に軽減したものがある。しかし、オープンタイプの耳栓は、耳栓の傘部に開口を設けるので柔らかく、使用者の動きなどにより、既製耳あな型補聴器が振られて保持しきれない。
【0004】
また、特許文献1に記載のように、補聴器本体の音声出力孔の側に、耳穴に装着する耳穴装着部を有する補聴器であって、この耳穴装着部の基端部の周縁に取り付けた、伸縮性及び柔軟性のあるリング状クッションと、このリング状クッションの一端を固定するように、前記耳穴装着部の先端部の周縁に取り付けた、伸縮性及び柔軟性のあるイヤチップとを有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−98797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の補聴器においては、伸縮性及び柔軟性の部材を用いたリング状クッションを設け、外耳道の内壁の全周にわたり密着性がよいので、こもり感、圧迫感や違和感などがあると共に、装着時間が長くなると、痛みやかゆいなどを感じることが推測される。
【0007】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外耳道を密閉することなく、装着時のこもり感をなくし、圧迫感や違和感などを低減する既製耳あな型補聴器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、外耳道を密閉することなく装用される既製耳あな型補聴器であって、ケース本体と、このケース本体と略L字形状を形成する挿入部と、この挿入部の先端に取り付ける先端導音掛着部からなり、前記ケース本体の一部が耳甲介腔内に当接して収まると共に、前記先端導音掛着部が外耳道の第一カーブの突出部分に掛着されるものである。
【0009】
また、前記先端導音掛着部は、前記挿入部に対して取付角度及び/又は取付深さを可変にすることができる。また、マイクロホンの集音部を前記ケース本体の側面に設けるとよい。更に、前記ケース本体の表面に取換自在なカバーを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外耳道を密閉することなく装用でき、外耳道内壁にケース本体が全周にわたって接触することがなく、外耳道内で密着する部分が少ないため、長時間使用しても、装用感がよい。
【0011】
また、マイクロホンの集音部をケース本体の側面に設ければ、風切り音の影響が少なく、完全に外耳道に挿入するCIC(Completely In the Canal)タイプの補聴器と同程度の耳介による集音効果を得ることができる。また、CICタイプの補聴器に比べ、ケース本体を大きく作れるので、高機能のDSPやワイヤレス通信コイルなどを搭載することができる。
【0012】
また、ケース本体の表面には、マイクロホンの集音部や電池収納部などが設けられていないので、装用者の服装に合わせたデザインや色彩のカバーを取り付けることができ、ファッション性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る既製耳あな型補聴器の説明図で、(a)は先端導音掛着部を分離した斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図
【図2】装用時における右耳の概要外観図
【図3】装用時における右耳付近の略水平断面図
【図4】挿入部に対する先端導音掛着部の取付角度を示す平面図で、(a)は取付角度が0°の場合、(b)は取付角度がα1の場合
【図5】カバーを取り付けた既製耳あな型補聴器の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は側面図
【図6】本発明に係る既製耳あな型補聴器の別実施の形態を表わす図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図、(h)は電池収納部が開状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る既製耳あな型補聴器1は、図1に示すように、ケース本体2と、挿入部3と、先端導音掛着部4からなる。ケース本体2と挿入部3と先端導音掛着部4は、一体で形成することもできる。
【0015】
ケース本体2は、耳甲介腔に収まる形状で略楕円形状に形成されている。ケース本体2の内部には、補聴処理部としてのDSP(Digital Signal Processor)、マイクロホン、電池などが設置される。ケース本体2の側面2bには、マイクロホンの集音部6、電池収納部7が設けられている。なお、ケース本体2は略楕円形状に限定されるものではない。
【0016】
また、ケース本体2は、図2に示すように、耳介10の耳甲介腔11内に収まり、ケース本体2の厚みは、ケース本体2の表面2aが耳介10の対珠12や耳珠13の内側に接する程度に形成されている。
【0017】
挿入部3は、図1に示すように、ケース本体2の裏面2cで、長手方向のセンタラインL1の一端に、ケース本体2と略L字形状をなすように形成されている。この挿入部3の内部には、イヤホンを設置するとよい。挿入部3の外観形状は、円筒形状でよいが、ここではケース本体2側が太く、先端導音掛着部4側が細くなるように、なめらかな傾斜になるように形成している。なお、図1では、ケース本体2と挿入部3が一体に形成されているが、別体でもよい。
【0018】
先端導音掛着部4は、外耳道の第一カーブと掛着するために、その先端は略半円形状をなしており挿入部3に取り付ける取付部のセンター軸に対して傾けて形成されている。また、略半円形状の頂点付近にはイヤホンから鼓膜側へ音を導く導音孔が形成されている。先端導音掛着部4の材質としては、ケース本体などに用いられるABS樹脂を使用することもできるが、望ましくはシリコンゴムなどの弾性材を用いるとよい。
【0019】
また、各装用者によって、外耳道15の第一カーブ16のサイズは異なるので、各装用者に合わせるために、図3に示すように、挿入部3の先端に先端導音掛着部4を挿入する際の先端導音掛着部4の挿入量(矢印A方向の取付深さ)を調整することができるようにしている。
【0020】
また、各装用者によって、外耳道15の第一カーブ16の曲がりが異なるので、各装用者に合わせるために、図4に示すように、挿入部3に対する先端導音掛着部4のセンタラインL1を基準とした取付角度αを調整することができるようになっている。図4(a)は取付角度αが0°の場合、図4(b)は取付角度αがα1の場合である。
【0021】
挿入部3に対する先端導音掛着部4の取付深さや取付角度αを調整することにより、各装用者の耳甲介腔11の形状に対応して安定した装用状態を得ることができる。
【0022】
そして、図3に示すように、外耳道15は、直線ではなく、第一カーブ16から第二カーブ17、更に鼓膜方向へ三次元的に曲がっており、既製耳あな型補聴器1を装着すると、ケース本体2の裏面2cは耳甲介腔11の壁面11aに当接し、ケース本体2の側面2bは耳珠13の側壁13aに当接している。
【0023】
また、挿入部3の先端に設けた先端導音掛着部4は、外耳道15の第一カーブ16の突出部分16aに掛着される。なお、先端導音掛着部4は、第一カーブ16の突出部分16aに掛着するように、予め取付角度や取付深さを調整しておく。
【0024】
既製耳あな型補聴器1は、耳甲介腔11の側壁や壁面11a、そして耳珠13の側壁13aなどの一部に当接すると共に、先端導音掛着部4が外耳道15の第一カーブ16の突出部分16aに掛着されることにより、外耳道15を密閉することなく装着されて保持される。
【0025】
挿入部3及び先端導音掛着部4は、外耳道15を密閉することがないサイズで外耳道15の内壁との接触箇所が少ないので、この既製耳あな型補聴器1を装用しても、こもり感がなく、圧迫感や違和感なども低減され、長時間使用しても、装用感がよい。
【0026】
また、図1に示すように、マイクロホンの集音部6は装着時に挿入部3の反対側になる位置に設けられる。また、装着時にマイクロホンの集音部6が塞がらないように3つの孔からなり、この3つの孔はケース本体内部で連通している。
【0027】
マイクロホンの集音部6をケース本体2の側面2bに設けることにより、風切り音の影響が少なく、且つマイクロホンの集音部6は耳甲介腔内となるので、完全に外耳道に挿入するCIC(Completely In the Canal)タイプの耳あな型補聴器と同程度の耳介による集音効果を得ることができる。
【0028】
また、マイクロホンの集音部6や電池収納部7などを、ケース本体2の表面2aではなく側面2bに設けるので、図5に示すように、ケース本体2の表面2aに、装用者の服装に合わせたデザインや色彩のカバー5を取換自在に取り付けることができる。そうすれば、ファッション性に優れた補聴器20を構成することができる。
【0029】
なお、図6は本発明に係る既製耳あな型補聴器の先端導音掛着部を外した別実施の形態を表わす図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図、(h)は電池収納部が開状態の斜視図である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、外耳道を密閉することなく装用でき、こもり感をなくし、圧迫感や違和感などを低減すると共に、長時間使用しても、装用感がよい既製耳あな型補聴器を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1,20…既製耳あな型補聴器、2…ケース本体、2a…表面、2b…側面、2c…裏面、3…挿入部、4…先端導音掛着部、5…カバー、6…マイクロホンの集音部、7…電池収納部、10…耳介、11…耳甲介腔、11a…壁面、12…対珠、13…耳珠、13a…側壁、15…外耳道、16…第一カーブ、16a…突出部分、17…第二カーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道を密閉することなく装用される既製耳あな型補聴器であって、ケース本体と、このケース本体と略L字形状を形成する挿入部と、この挿入部の先端に取り付ける先端導音掛着部からなり、前記ケース本体の一部が耳甲介腔内に当接して収まると共に、前記先端導音掛着部が外耳道の第一カーブの突出部分に掛着されることを特徴とする既製耳あな型補聴器。
【請求項2】
請求項1に記載の既製耳あな型補聴器において、前記先端導音掛着部は、前記挿入部に対して取付角度及び/又は取付深さが可変であることを特徴とする既製耳あな型補聴器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の既製耳あな型補聴器において、マイクロホンの集音部が前記ケース本体の側面に設けられていることを特徴とする既製耳あな型補聴器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の既製耳あな型補聴器において、前記ケース本体の表面に取換自在なカバーが取り付けられていることを特徴とする既製耳あな型補聴器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−58880(P2013−58880A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195568(P2011−195568)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)