説明

既設杭の支持力確認方法

【課題】杭圧入機により引抜き力が作用した既設杭の支持力確認方法を提供すること。
【解決手段】杭圧入機10を用いて杭を施工する過程において、既設杭Pに引抜き力が作用した場合に、その支持力を確認する方法であって、前記引抜き力が作用した既設杭Pに対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを繰り返して行い、前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭Pの支持力とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野における、杭圧入機を用いた杭の支持力確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の支持力を確認する方法として、載荷装置に反力抵抗体を必要とする静的押し込みによる支持力確認方法と、載荷装置に概して反力抵抗体を必要としない動的あるいは急速載荷による支持力確認方法とがある。本発明は、静的押し込みによる支持力確認方法に属する。
前記の静的な支持力確認方法として、従来、杭を地盤に圧入または回転圧入施工し、しかも極力、杭の摩擦抵抗を低減させる施工を行い、所定の深さまで圧入された既設杭の支持力確認方法として、圧入施工後に、前記既設杭に静荷重を任意の圧入速度で繰返し載荷することで、杭先端地盤の力学的性質を弾性化させ、前記静荷重による圧入力により、杭先端支持力の弾性限界荷重を確認し、設計等に反映させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−290888号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】地盤工学会基準 杭の鉛直載荷試験方法・同解説-第一回改訂版、社団法人地盤工学会、平成14年5月発行、第2頁
【非特許文献2】地盤工学会基準 杭の鉛直載荷試験方法・同解説-第一回改訂版、社団法人地盤工学会、平成14年5月発行、第220頁〜第221頁
【非特許文献3】地盤工学会基準 杭の鉛直載荷試験方法・同解説-第一回改訂版、社団法人地盤工学会、平成14年5月発行、第34頁
【非特許文献4】杭基礎設計便覧 平成18年度改訂版 平成19年1月 社団法人 日本道路協会、第132頁〜第133頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術は、杭周側面の地盤を乱し、杭の摩擦抵抗を低減させた状態で、杭の支持力を確認方法であり、杭先端部のみの支持力を発揮させて、これを確認する方法である。
前記の従来技術は、一般的な施工時における支持力確認方法であって、杭圧入機の施工の過程で引抜き力が作用した杭を打止めるという特殊な状況に対応する方法ではない。また、杭の保有する支持力のうち、杭先端支持力のみを確認しており、杭周面摩擦抵抗力を評価していない。
これに対して、本出願人は、杭周面摩擦抵抗力と杭先端支持力の両方を杭支持力として見込むように、杭周側面の地盤を極力乱さないように施工された既設杭の支持力確認方法であり、しかも、杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、既設杭に引抜き力が作用した場合に、その支持力を確認する方法で、特に、杭周面摩擦抵抗力を含めた杭支持力を評価できる既設杭の支持力確認方法として、下記のような技術を出願している。
この技術は、地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入するための杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、反力を取られ引抜き力が作用した前記既設杭に対して、施工時の最終工程において前記杭圧入機によって再び圧入力を載荷して、その既
設杭に支持力を発現させて、その圧入力をもって支持力を確認する方法である。
しかし、前記の杭の支持力を確認する技術は、打止め荷重の具体的な載荷方法として、打止め荷重の大きさや、打止め荷重載荷時の杭の変位制限値、打止め荷重の荷重保持時間および杭圧入機により引抜き力が作用した既設杭の打止めに関する基準など具体的方法を設定する必要があり、また、圧入力と実際の鉛直載荷試験より確認される支持力との関係性が明らかにされてはいない。
本発明は、杭圧入機により引抜き力が作用した既設杭の支持力確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の既設杭の支持力確認方法においては、杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、既設杭に引抜き力が作用した場合に、その支持力を確認する方法であって、前記引抜き力が作用した既設杭に対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを繰り返して行い、
前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とすることを特徴とする。
また、第2発明の既設杭の支持力確認方法においては、既設杭から反力をとる杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、前記杭圧入機による引抜き力が作用した既設杭の支持力確認方法であって、前記引抜き力が作用した既設杭に対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを前記杭圧入機により繰り返して行い、前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とすることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の既設杭の支持力確認方法において、前記圧入力が、少なくとも前記既設杭に必要とされる支持力と同じ大きさの圧入力であることを特徴とする。
また、第4発明では、第1発明または第2発明の既設杭の支持力確認方法において、前記圧入力が、前記既設杭に必要とされる支持力よりも小さい圧入力であることにより、必要な反力が小さくなるという特徴がある。
また、第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの既設杭の支持力確認方法において、前記圧入力を載荷保持する前記一定時間が、1分以上30分未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、既設杭に引抜き力が作用した場合に、その支持力を確認する方法であって、前記引抜き力が作用した既設杭に対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを繰り返して行い、前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とするので、杭圧入機により施工された既設杭について、その杭先端支持力と杭周面摩擦力とを発揮させた杭の支持力を容易に正確に確認することで既設杭の支持力が明確になるので、信頼性の高い杭を、杭圧入機を用いて、容易に施工できる効果が得られる。また、杭先端支持力と周面摩擦力とを見込んだ基礎杭とすることができるので、基礎杭を設計する場合、合理的な設計を行うことができるという効果が得られる。
また、既設杭の打止める際の杭の変位制限値が10mm以下に設定されているので、前記の変位制限値を超えた場合にのみ、杭圧入機による再載荷と除荷のサイクルを繰り返すようにすればよいので、載荷と除荷のサイクルを行う条件が明確になっており、施工も容易である効果が得られる。
第2発明によると、第1発明の既設杭の支持力確認方法において、前記圧入力の載荷が杭圧入機により行われるので、第1発明よりもさらに簡便に支持力確認を行うことができるという効果が得られる。
第3発明によると、既設杭を打止める際の圧入力(載荷荷重)が、少なくとも既設杭に必要とされる支持力と同じ圧入力を載荷することで、確実に既設杭の支持力を確認することができる効果が得られる。
第4発明によると、第1発明または第2発明の既設杭の支持力確認方法において、前記圧入力の大きさが、前記既設杭に必要とされる支持力よりも小さいことであることにより、必要な反力が小さくなるため、既設杭へ作用する引抜き力の負荷が軽減されるという効果がある。これにより、大きな引抜き抵抗力が期待できないN値の小さい地盤などでも支持力確認を行うことができる効果がある。
第5発明によると、既設杭を打止める際の荷重保持時間が、前記圧入力を載荷保持する前記一定時間が、1分以上30分未満と明確に設定されているので、杭圧入機による再載荷と除荷のサイクルを効率よく繰り返すことができ、既設杭の支持力を確認する施工効率を向上させることができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】杭圧入機を用いて本発明の既設杭の支持力確認方法を実施している状態を示す側面図である。
【図2】杭圧入機における載荷機構部を備えるクランプ装置を示す上面図(a)と、側面図(b)である。
【図3】杭圧入機における載荷機構部を備えるクランプ装置の内部を示す上面図であって、把持部の縮径時(a)と、把持部の拡径時(b)を示す説明図である。
【図4】杭圧入機における載荷機構部を備えるクランプ装置の内部を示す側面図であって、載荷油圧シリンダの初期状態(a)と、載荷油圧シリンダの作動状態(b)を示す説明図である。
【図5】実施形態2の杭圧入機を示す側面図である。
【図6】実施形態3の杭圧入機を示す側面図である。
【図7】(a)は杭について載荷試験した場合の杭頭荷重―杭頭変位量と、本発明の杭の支持力確認方法による杭頭荷重―杭頭変位量との関係を示すグラフ、(b)は(a)の一部を拡大して示すグラフである。
【図8】本発明の杭の支持力確認方法により、圧入力を載荷した後、その圧入力を除荷し、再度圧入力を載荷した場合の杭頭変位量と載荷荷重との関係を示すグラフである。
【図9】杭先端支持力と杭周面摩擦力との関係を示す説明図である。
【図10】杭について載荷試験した場合の杭頭荷重―杭頭変位量と、本発明の杭の支持力確認方法による杭頭荷重―杭頭変位量との関係を示すグラフであり、圧入力を降伏荷重や短期設計荷重と評価する場合の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
先ず、本発明の杭の支持力確認方法において使用する杭圧入機の第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0011】
図1に示す杭圧入機10は、所定の杭(例えば、鋼管杭など)を地盤Gに圧入または回転圧入(以下、単に圧入」)する圧入機であり、既に地盤Gに圧入された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数(例えば、3つ)のクランプ装置11を備えたサドル12と、そのサドル12に対して前後移動可能なスライドベース13と、そのスライドベース13上で左右に旋回可能なリーダマスト14と、そのリーダマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、前記リーダマスト14に対して前記チャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ(油圧ジャッキ)16等を備えている。
【0012】
前記のクランプ装置11は、先に圧入された既設の杭である鋼管杭の上端側に挿入され
た状態で、クランプ用油圧シリンダ2c(図3参照)により水平方向に広げられるように拡径して、その鋼管杭の内壁面を押圧することで、その鋼管杭(既設杭)の上端側を掴むことによって、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に支持させる。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに杭を圧入することができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に設置するようになっている。
なお、前記の複数のクランプ装置11は、例えば、先頭の基準となるクランプ装置11(11f)を除いて、サドル12に対して左右や前後に移動可能となっており、これにより円弧等の湾曲した線に沿って並んで圧入された複数の杭の上端側を複数のクランプ装置11でそれぞれ掴むことが可能となっているとともに、杭列の各杭の間隔が多少異なることがあって対応できるようになっている。
【0013】
そして、前記の杭圧入機10は、図1に示すように、前記チャック装置15に最も近い配置となる前側のクランプ装置11fと、前記チャック装置15から最も離れた配置となる後側のクランプ装置11bと、前記各クランプ装置11fとクランプ装置11bの間の配置となる中央側のクランプ装置11cとの、3つのクランプ装置11(11f、11b11c)を備えている。
【0014】
前記の後側のクランプ装置11bは、図2(a)(b)に示すように、サドル12に支持される支持部1と、既設杭Pである鋼管杭の内壁面に対して拡径してその鋼管杭を把持して支持する把持部2と、所定の既設杭Pを把持した状態の把持部2を杭圧入機10(サドル12)と接離する方向に移動させて、そのクランプ装置11bが支持する所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部である載荷油圧シリンダ3と、を備えている。
【0015】
前記の支持部1には、前記載荷油圧シリンダ3の基部が固定されている。
なお、このクランプ装置11bには、左右一対の2つの載荷油圧シリンダ3が備えられている。
【0016】
前記の把持部2は、前記載荷油圧シリンダ3を介して支持部1に接続されている固定部2aと、その固定部2aに対して接離する可動部2bと、その可動部2bを移動させるクランプ用油圧シリンダ2cと、を備えている。なお、このクランプ装置11bにおける把持部2には、載荷油圧シリンダ3の左右にそれぞれ3つ、計6つのクランプ用油圧シリンダ2cが備えられている。また、把持部2の上部には、既設杭Pの上端面に当接する鍔部2eが形成されている。
このクランプ用油圧シリンダ2cがロッド部2dを前後方向に押し伸ばすことによって、図3(a)(b)に示すように、固定部2aから可動部2bが押し出されて、把持部2が拡径することとなって、把持部2が既設杭Pの上端側を把持して支持するようになっている。
【0017】
前記の載荷油圧シリンダ3は、そのロッド部3aを上下方向に押し伸ばすことによって、図4(a)(b)に示すように、把持部2を杭圧入機10(サドル12)から離間する方向に移動させて、その把持部2が把持する所定の既設杭Pを押圧する載荷機構部として機能する。
【0018】
なお、前側のクランプ装置11fと中央側のクランプ装置11cは、後側のクランプ装置11bにおける載荷油圧シリンダ3を備えない構成であり、その他の構成は同様な構成であって、それらクランプ装置11f、11cの各把持部2が既設杭Pの上端側を把持して支持するようになっている。
【0019】
前記スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動してチャック装置15を水平
に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、二本の杭を前後方向に並べて順次圧入可能となっている。
前記リーダマスト14は、前記スライドベース13に対し左右に旋回可能とされることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角にまげたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
これらスライドベース13とリーダマスト14とにより、圧入機本体の複数のクランプ装置11を備えたサドル12に対してチャック装置15を水平方向に移動可能となっている。
【0020】
前記チャック装置15は、その背面側がリーダマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
また、チャック装置15の内部には、所定の油圧シリンダの駆動により作動して、上下に貫通した状態の杭を外側の四方から押圧して把持する図示しない杭把持部が設けられている。
そして、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭を把持してチャック装置15を下降させることと、杭を離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、1ストローク分ずつ杭を圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭を地中に圧入することが可能になっている。
【0021】
なお、杭圧入機10は、順次杭を圧入する際に、新たに圧入した杭に対してクランプ装置11を備えるサドル12を移動させるようにして、杭の一本分に対応して前進することができる。この杭圧入機10の杭上の移動に関する動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0022】
前記のような杭圧入機10を用いる杭の施工方法の特徴としては、前記杭圧入機10は、1本または複数本の既設杭Pと地盤Gの間に作用する周面摩擦力F(図9参照)を引抜き抵抗力として反力を確保することにより、新たに圧入する杭P1を地盤Gに押し込むための反力を得ている。
【0023】
したがって、前記のような杭圧入機10を用いて杭の圧入施工を行う場合、前記既設杭Pには引抜き力が作用することになる。このような引抜き力が作用した前記既設杭Pは、打ち止めを行った支持層40から浮き上がる可能性があり、そのような杭では、杭の支持力が不明確となるため、支持杭として利用する場合には、再び前記既設杭Pに圧入力を載荷して打ち止める必要がある。また、打止め時の圧入力により支持力を確認し、前記既設杭Pの支持杭としての性能を明確化することは、杭圧入機により支持杭を構築する施工方法の信頼性向上に繋がる。
【0024】
ただし、このように前記既設杭Pの打止めを行ない、支持力を確認するに当たっては、打止め圧入力の載荷を停止する打止めの判断基準や、打止める際の圧入力(以下、打止め荷重とも言う)と既設杭Pが保有する支持力との関係が明確である必要がある。
【0025】
以下、引抜き力が作用した既設杭Pについての本発明の支持力確認方法について具体的に説明する。
【0026】
図1に示すような状態から、引抜き力が作用した最後部の既設杭Pに、載荷油圧シリンダ3により最後部の既設杭Pに圧入力を載荷する。
【0027】
前記の圧入力を載荷する時は、既設杭Pの杭頭部における沈下量を変位量(mm)とし
て計測する。この沈下量(mm)は、打止め荷重としての圧入力を載荷する前の既設杭Pの杭頭のレベルを不動点として、打止め荷重としての圧入力を載荷中あるいは載荷後の前記既設杭Pの杭頭のレベルの差とする。
支持力を確認するために、圧入力を載荷している既設杭Pの変位量(mm)を計測する方法としては、支持力確認が終了した既設杭Pと、圧入力を載荷する既設杭Pとで、一方に光線照射装置を、他方にターゲットを地上部において設置することで計測するようにしてもよい。また、メイン油圧シリンダ16のロッドによる移動量(mm)を計測することで、圧入力を載荷している既設杭Pの変位量(mm)を計測するようにしてもよい。
【0028】
まず初めに、打止め荷重としての圧入力の範囲について説明すると、打止め荷重としての圧入力の下限値は、既設杭Pが最低限保有すると考えられる設計上の支持力とする。既設杭Pが、鋼管杭で、杭径318.5mm、 板厚6.9mmの開端杭である場合、既設杭Pが最低限保有すると考えられる設計上の支持力は、打止め荷重としての圧入力であり、下記の式より求める。下記式において、支持層の地盤固さ指標であるN値は最小値の30としている。この値より、既設杭Pには51.8kN以上の支持力があるので、打止め荷重は50kN以上とする。
【0029】
(打止め荷重としての圧入力)=α×N×Ap=51.8kN≧50kN
α:先端支持力係数(α=300)
N:地盤固さ指標(N値=30)
Ap:杭の純断面積(Ap=0.00576m、鋼管杭の腐食代として外周側1mm厚を考慮)
【0030】
次に、打止め荷重としての圧入力の最大値については、杭圧入機の最大載荷荷重は3000kNであるため、この値を最大値とする。
したがって、打止め荷重としての圧入力の範囲は、50kN以上3000kN以下とする。
【0031】
次に、本発明の載荷方法の実施形態について述べる。以下の載荷方法は、50kN以上3000kN以下の範囲の打止め荷重としての圧入力のもとでの載荷方法である。
【0032】
打止め荷重としての圧入力を載荷する際には、一定時間圧入力としての載荷荷重を保持し、既設杭の支持力を確認するようにしている。この打止め荷重としての圧入力の保持時間について上限値と下限値を示す。
一般的に、支持力を確認するために荷重を杭に載荷する場合、その荷重の保持時間は杭の沈下速度が一定値に安定するまで極力長い時間とするのが望ましい。しかしながら、30分を超えるような長い時間を保持する場合、施工能率が格段に低下し現実的ではないので、荷重の保持時間は30分を上限とする。したがって、打止め荷重の保持時間は30分以内とする。
【0033】
次に、本発明の杭の支持力確認方法における荷重保持時間の下限値について説明すると、一般に、杭の支持力を確認するための載荷方法には、動的載荷、急速載荷、静的載荷の3種類があるが、載荷荷重を杭に作用させた場合、荷重に対する杭の抵抗成分の基本概念としては、「杭の全抵抗=杭の静的抵抗成分+杭の動的抵抗成分」が考えられ、前記3つの載荷方法のうち動的載荷、急速載荷の場合、杭に載荷した荷重から動的抵抗成分を抽出した上で支持力を評価しなければならず、手間が掛かる。
したがって、打止め荷重としての圧入力は、静的載荷を行っていると位置付けられる程度、圧入力としての載荷荷重を保持することが望ましい。杭が鋼材の場合、杭長10m〜100mの範囲において、2〜20秒の載荷時間を保持することは静的載荷を実施していると位置付けられているが、本発明の杭の支持力確認方法においては、載荷時間を1分程
度に設定しておけば十分であるので、打止め荷重としての圧入力の保持時間は1分以上とする。
以上のことから、打止め荷重としての圧入力の載荷荷重の保持時間は、1分以上30分未満とする。
【0034】
前記のように、打止め荷重としての圧入力の保持時間について上下限値を示したが、静的な圧入力としての荷重を杭に載荷して支持力を確認する場合、杭の沈下速度が一定値になるまで、載荷荷重を十分な時間保持する必要があるが、一方で、施工能率の向上のため、載荷荷重保持時間は短い方が望ましく、例えば、5分以上30分未満に設定することより、より効率的に杭の支持力を確認することができる。
【0035】
前記の開端杭について、図1に示す杭圧入機を使用して、打止め荷重としての圧入力の保持時間を30分とした場合の載荷試験時における杭頭載荷荷重としての杭頭荷重(kN)と、杭頭変位(mm)を、図7(a)に白四角でプロットして示すと共に、打止め荷重としての圧入力の保持時間は出来るだけ短くするほうが杭の施工能率の向上するため、圧入力の載荷荷重保持時間を5分とした場合の載荷試験を図7(a)に菱形で示す。また、図7(b)には図7(a)の一部の拡大図が示されている。
図7(a)または図7(b)に示すように、打ち止め荷重としての圧入力を30分保持した場合と、5分保持した場合とでは、概ね載荷する杭頭荷重(kN)と杭頭変位(mm)との関係は両者ともほぼ一致しており、打止め荷重としての圧入力の載荷保持時間を5分とした場合であっても、設計上必要とされる杭の支持力を十分発揮しており、実用上は問題が無いことが確認出来る。この実験結果よりからしても、圧入力を載荷保持する荷重保持時間は5分以上、30分未満とする。
【0036】
次に、本発明の杭支持力の確認方法において、既設杭Pに圧入力を載荷した場合の杭頭変位(mm)した場合の杭頭変位制限値(mm)について説明する。
本発明では、既設杭Pを打止める際の変位制限値(mm)は、過度に既設杭Pに残留変位を発生させて施工に支障が生じことない弾性範囲内に抑えることにした。この弾性範囲内としては、一般的に、杭の沈下量が10mm以内であれば、十分弾性範囲内にあるとされることにより、変位制限値は10mm以下と設定するのがよいとされている。
ただし、一般的に杭の保有する支持力は、杭径の10%の変位が生じたときの荷重により評価し、これ以上の変位が生じるような荷重を載荷した場合、杭の支持機能が喪失すると考えられており、打止め荷重により既設杭Pの杭径の10%の変位以上まで生じさせることは適切ではないとされている。
前記のように、本発明では、既設杭Pの弾性範囲内に抑えるために、杭頭変位制限値(mm)は、杭径の10%未満で、10mm以内とする。
【0037】
前記のように設定された杭頭載荷荷重としての圧入力(打止め荷重)を、一定時間載荷保持するように、引抜き力が作用した既設杭Pに載荷した時に、この既設杭Pの下降変位量が、10mmの変位制限値を超えた場合は、前記の圧入力(打止め荷重)を除荷するサイクル(工程)を繰り返すようにし、再度前記の既設杭Pに杭頭載荷荷重としての圧入力(打止め荷重)を載荷する。
この場合、前記の圧入力(打止め荷重)を除荷した後に、再び載荷するまでの時間としては、特に設定する必要はなく、圧入力(打止め荷重)の除荷が、完全に行われた特に、再度、杭頭載荷荷重としての圧入力(打止め荷重)を載荷するようにすればよい。
なお、圧入力(打止め荷重)の除荷する場合には、杭頭からクランプ装置11bを離反させた状態でも、杭頭にクランプ装置11bを装着した状態で載荷荷重が負荷されてないことを油圧計等により計測する。この場合、作業員により杭頭変位量の計測および載荷荷重が負荷されてないことを確認することにより載荷運転をするようにしてもよく、杭頭変位量の計測および載荷荷重を自動計測して自動運転するようにしてもよい。
引き抜き力が作用した既設杭Pの上端部を不動点とした場合、前記のように載荷した場合、既設杭Pの上端レベルは下降しているため、圧入力(打止め荷重)を除荷した場合の既設杭Pの杭頭レベルを、再度圧入力(打止め荷重)を載荷する場合の不基準点(0点)として、前記既設杭Pに再び杭頭載荷荷重としての圧入力(打ち止め荷重)を一定時間載荷保持するように載荷し、杭頭が降下する変位量(mm)を測定し、杭頭の変位量が10mm以下になるまで、このような工程を繰り返す。
このように、本発明では、既設杭Pの支持力を確認する場合に、杭頭の変位量(mm)を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを繰り返して行うことを特徴としている。そして、本発明では、前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記杭頭変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とすることで、既設杭の支持力を確認するようにし、また、そのように確認して打ち止めるようにしている。
このように、本発明では、既設杭Pに対して、圧入力の載荷とその除荷を組み合わせるサイクル(工程)を繰り返す載荷方法を採用することにより、既設杭Pに生じる変位は次第に小さくなるので、変位制限値の10mm以内に収束するまで、打止め荷重としての圧入力の載荷とその除荷のサイクルを繰り返す。
【0038】
次に、本発明の実施例について説明する。
この実施例においても、前記の形態と同様に、打ち止め荷重として圧入力の載荷と載荷荷重の除荷のサイクルを繰り返し、既設杭Pに生じる変位が収束し変位制限値内と設定した10mm以内に収まるまで、再載荷とその除荷のサイクルを繰り返すことにより、既設杭Pに生じる変位が変位制限値内と設定した10mm以内に収束し、このように、変位制限値内と設定した10mm以内に収まることをもって、打止めとする。
【0039】

次に、既設杭Pの支持力を確認する方法について述べる。前記のように本発明の載荷と除荷を繰り返す方法の杭支持力確認方法および打止め方法より得られる杭頭荷重(kN)と杭頭変位(mm)のグラフ(図7における菱形)と、既設杭Pの鉛直載荷試験結果により得られる杭頭荷重と杭頭変位(mm)のグラフ(図7における白四角)とを図7に示すように、両者の荷重(kN)と変位(mm)関係は、ほぼ一致している。
したがって、本発明のような圧入力の載荷方法によれば、別個に、鉛直載荷試験を行う代わりに、すべての既設杭Pの支持力を、本発明の杭支持力の確認方法により確認することができる。
また、このときに杭頭において圧入力(載荷荷重、打ち止め荷重)を計測することにより確認する既設杭Pの支持力は、当然、既設杭Pの杭先端支持力と周面摩擦力の和の支持力であるので、既設杭Pの保有する支持力を過小評価あるいは過大評価することはなく、実際の支持力である利点があり、設計にそのまま利用することができる。
【0040】
本発明のように、引き抜き力が作用した既設杭に圧入力の載荷と除荷を繰り返す打止め方法によって、杭圧入機10により引抜き力が作用した既設杭Pに圧入力を載荷する事により、その既設杭Pの支持力を確認出来ることで、既設杭Pの支持杭としての性能を明らかにし、信頼性の高い支持杭を構築することが可能となる。
【0041】
前記のようにして、本発明の方法による圧入力(載荷荷重、打ち止め荷重)により確認した既設杭Pの支持力に関しては、設計に反映することが出来る。したがって、前記のように、既設杭Pの保有する支持力を過小評価することがないので、設計において必要な杭本数や 板厚などを減らすことが可能であり、経済的な設計などを行うことが出来、設計上有利になる。
【0042】
本発明による圧入力により評価する既設杭Pの支持力を、設計に適用する場合、短期設
計荷重、降伏荷重または極限支持力として設計することなどが可能であり、どの設計支持力として扱うかは、設計による。
具体的には、前記圧入力が、少なくとも前記既設杭に必要とされる支持力と同じ大きさの圧入力であり、載荷したときの杭頭変位が10mm以内であるときの前記圧入力を、杭頭変位が杭径の10%であるときの杭頭荷重である極限支持力と評価する事は、安全側の評価であることは自明なことである。
前記圧入力の上限値としては、前記既設杭に必要とされる支持力を長期設計荷重と見なすことで、前記圧入力の大きさを前記既設杭に必要とされる支持力の3倍とすることができる。前記既設杭に必要とされる支持力の3倍の大きさである前記圧入力を載荷した場合であっても、載荷したときの杭頭変位が10mm以内であれば、前記圧入力を極限支持力と評価する事は安全側の評価である。
すなわち、前記圧入力の範囲を前記既設杭に必要とされる支持力の1倍から3倍に設定することが可能である。
次に、前記圧入力を降伏荷重や短期設計荷重と評価する場合、すなわち、前記圧入力が、前記既設杭に必要とされる支持力よりも小さい圧入力である場合について述べる。
図10は、杭について載荷試験した場合の杭頭荷重―杭頭変位量と、本発明の杭の支持力確認方法による杭頭荷重―杭頭変位量との関係を示すグラフであり、より具体的には、同図は、杭圧入機によりN値35よりも大きい地盤に杭径の1倍の長さを根入れされた、杭長15mの杭の場合における、載荷試験した実験結果であるが、杭頭変位量が10mmであるときの杭頭荷重の約2.0倍より大きい極限支持力が発揮されている。
このことより、杭頭変位が10mm以内であるときの杭頭荷重である、前記圧入力を降伏荷重と評価し、前記圧入力の1.5倍を極限支持力と評価することや、短期設計荷重と評価し、前記圧入力の2.0倍を極限支持力と評価することが可能である。
前記圧入力は、杭圧入機により、N値35以上85以下の支持層である砂又は砂礫地盤に、杭径の1倍以上から5倍以下まで根入れされた、杭長5m以上100m以下の杭の場合において、前記既設杭に必要とされる支持力の、1.5分の1から2分の1とすることが出来る。
なお、前記範囲の上限値については、実験結果をもとに85以下の砂又は砂礫地盤とし、また、支持層への根入れ長は杭径の5倍以上根入れすると完全閉塞杭となり、一般に杭径の5倍よりも長く根入れしないこと、杭圧入機の圧入施工では、杭長が5mから100mの範囲で施工されていることより、設定した。
【0043】
さらに、具体的に図8を参照して説明すると例えば、引き抜き力が作用した既設杭Pをクランプ装置11bにより把持した状態で、杭頭に載荷した場合の載荷荷重―杭頭変位量曲線が、図8に示されている。図8中、点線および白四角でプロットとしたグラフは、引き抜き力が作用した既設杭Pに対して、1回目に載荷したグラフである。前記と同様、鋼管杭で、杭径800.0mm、 板厚16mmの開端杭であり、杭頭載荷荷重は1500kNを10分間載荷した場合、変位量が16mmと、変位制限値の10mmを超えたので、除荷している。除荷した時点で、杭頭レベルは、地盤の弾性抵抗により多少上昇するように戻るが、その戻った杭頭を、次に、杭頭に第2回目の載荷荷重を負荷し変位量を計測する場合の0点とする。
図8に実線および白丸でプロットして示すように、第2回目の載荷荷重として、1500kNの載荷荷重を10分間載荷した時、変位量が4mm程度であったので、その既設杭Pの位置で、杭支持力が1500kNであると確認できたことにし、第2回目の載荷荷重を除荷したところ、既設杭Pが上昇し、変位量が2mmに戻った。なお、クランプ装置11bにより載荷・除荷のサイクルが2回繰り返された既設杭Pのトータルの下降した変位量は、18mm程度である。
なお、杭頭の変位を測定する場合に、例えば、図1において、載荷完了杭(支持力確認完了杭)のうち最も近い位置にある杭側を基準にして、変位計測装置を設け、確認しようとする既設杭Pにターゲットを設けて、既設杭Pの変位を計測するようにすればよい。
【0044】
本発明についての引き抜き力が作用した既設杭Pに対して、圧入力を載荷し、その支持力を確認する施工する場合のポイントは以下のようになる。
(1)圧入力(載荷荷重)を既設杭Pに載荷するときは、既設杭Pの杭頭部における変位量(mm)を計測する。
(2)圧入力(載荷荷重)の最大値を既設杭Pに掛けた時には、一定時間荷重を保持する。その圧入力は50kN以上、例えば、100kN以上とする。
(3)圧入力の最大値を掛けた時に一定時間荷重を保持し、沈下速度を所定の値に収束させることが重要であるが、本発明では、変位制限値として10mm以下に収束させるために、杭頭に載荷と除荷のサイクルを、繰り返すようにしている。
(4)なお、前記の沈下速度は、杭に生じた変位量を、圧入力載荷時間で割った単位時間当りの沈下量であって、5mm/分以下を目安とするとよい。
ただし、圧入力を載荷した時に過度の変位が生じることは、杭の支持力に問題があることとなるので、圧入力を載荷したときに生じる変位には変位制限値を設定する。この変位制限値としては、荷重載荷時間を1分から30分とした場合、杭の弾性範囲内程度(杭が塑性変形することなく弾性変形内に収まる範囲)である10mm以内とする。この変位制限値を超え、20mm程度になると、既設杭Pは塑性化する部分を生じるので好ましくない。
(5)一度、反力体として利用されて引抜き力が既設杭Pに作用し、既設杭Pに浮き上がりが生じたために、既設杭Pを打止めるために、圧入力(載荷荷重)を杭頭に載荷した時に、杭頭の変位量(mm)が、一定所定時間内において、10mmを超えた場合は、載荷荷重としての圧入力を除荷した後、再度同じように圧入力としての載荷荷重を杭頭に載荷する。
(6)圧入力の載荷と除荷を繰り返すことにより、既設杭Pの杭頭の変位は、徐々に一定の変位に収束してゆく。この変位が10mm以内程度まで変位が収束するまで圧入力の載荷と除荷を繰返す。
(7)一定時間杭頭に既設杭Pに載荷して、その既設杭Pの杭頭の変位が、10mm以下に収束した時点で打止めとする。
(8)この時、杭頭部において、計測した圧入力変位関係は、図7に示すように、別途、実施した鉛直載荷試験の荷重―変位関係のグラフと、杭の弾性範囲内においては、ほぼ一致している。
(9)したがって、このような圧入力の載荷方法によれば、鉛直載荷試験を行う代わりに、すべての既設杭の支持力を簡易に確認することができる。
(10)また、このときに、杭頭において圧入力を計測することにより、確認する支持力は、杭先端支持力と周面摩擦力の和の支持力であるので、本発明の場合には、杭の保有する支持力を過小評価することない。
(11)圧入力により確認した杭の支持力に関しては、設計に反映することが出来る。したがって、前項のように杭の保有する支持力を過小評価することがなければ設計を有利に行うことができる。
(12)前記のように、本発明の場合は、支持力を過小評価することがないために、設計において必要な杭本数や 板厚などを減らすことが可能であり、経済的な設計などを行うことが出来る。
(13)本発明の適用例としては、圧入力により評価する既設杭Pの支持力の設計へ反映する場合は、前記の圧入力を、短期設計荷重、降伏荷重または極限支持力として設計することなどが可能であり、設計により適宜設定される。

【0045】
(杭圧入機の他の例)
図1〜図4に示す実施形態においては、本発明の杭支持力確認方法において使用可能な杭圧入機10の一形態を示したが、前記杭圧入機10以外の形態でも可能な他の杭圧入機10の形態について説明する。
【0046】
図5に示す形態の杭圧入機20では、複数のクランプ装置11を備えており、チャック装置15に近い配置となる前側のクランプ装置11fと、チャック装置15から離れた配置となる後側のクランプ装置11bとの、2つのクランプ装置11を備えている。
そして、後側のクランプ装置11bに、そのクランプ装置11bが支持する所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部である載荷油圧シリンダ3が配設されている。
【0047】
このように、2つのクランプ装置11を備えている杭圧入機20であれば、前側のクランプ装置11fで支持する既設杭Pを反力杭として利用し、後側のクランプ装置11bが支持する圧入力載荷対象の既設杭Pに荷重を掛けて、前記実施形態と同様に既設杭Pの支持力を確認することができる。
そして、実施形態1の杭圧入機10と同様に、この杭圧入機20を用いて複数の杭を連設する過程で、杭圧入機20によって載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を実行することができる。
【0048】
また、図6に示すような杭圧入機30でもよいので、この形態について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について、主に説明する。
【0049】
図6に示す形態の杭圧入機30では、複数(例えば、2つ)のクランプ装置11を備えており、それら複数のクランプ装置11を挟んで、前方のチャック装置15の反対側となる後方の位置に、所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部33を備えている。
【0050】
前記の載荷機構部33は、既設杭Pに圧入力を載荷するために、載荷対象の既設杭Pの上端に当接する載荷部33aと、その載荷部33aを杭圧入機10(サドル12)と接離する方向に移動させて、既設杭P側に押し出す載荷油圧シリンダ3と、を備えている。
そして、この載荷機構部33は、2つのクランプ装置11が支持する既設杭Pの後方の配置に連設されている既設杭Pに載荷部33aを押し付けるように載荷油圧シリンダ3を駆動させることによって、その既設杭Pに圧入力(荷重)を掛けることができる。
【0051】
このように、杭圧入機30は、2つのクランプ装置11より後方に位置する既設杭Pに荷重を掛けて、既設杭Pの支持力を簡易に確認することができる。具体的には、杭圧入機30は、2つのクランプ装置11が支持する既設杭Pの後方に並設されている既設杭Pに荷重を掛けることができる載荷機構部33を備えているので、その載荷機構部33の作動によって、支持力確認対象の既設杭Pに圧入力(荷重)を掛けて、その既設杭Pの支持力を容易に確認することができる。
つまり、この杭圧入機30であれば、2つのクランプ装置11で支持する既設杭Pを反力杭として利用し、載荷機構部33の載荷部33aが当接する支持力確認対象の既設杭Pに圧入力(荷重)を掛けて、支持力を確認する載荷を行うことができる。
そして、実施形態1の杭圧入機10と同様に、この杭圧入機30を用いて複数の杭を連設する過程で、杭圧入機30によって、支持力確認対象の既設杭Pに圧入力(荷重)を掛けて、荷重を載荷して、既設杭の支持力を確認することができる。
【0052】
なお、本発明において使用する杭圧入機としては、上記実施形態に限られるものではない。
例えば、杭圧入機10、20、30におけるチャック装置15を下降させることで、既設杭Pに荷重を掛けて既設杭の支持力を確認するようにしてもよい。
この場合、杭圧入機(10、20、30)を、既設杭P上を後退移動させながら、後方の配置となったチャック装置15で既設杭Pに圧入力(荷重)を掛けることが好ましい。なお、杭圧入機(10、20、30)を後退移動させる際には、チャック装置15に既設杭Pの杭頭を挟持・解放可能な周知のアタッチメントを取り付けることとなる。
【0053】
また、前記各実施形態では、クランプ装置11は、鋼管杭の内壁面を押圧することで、その鋼管杭(既設杭)の上端側を掴む形態としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、クランプ装置は、鋼管杭などの既設杭の外面や上面を把持し、その既設杭の上端側を掴む構成であってもよい。
【0054】
また、以上の実施の形態においては、クランプ装置11が2つや3つの場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、クランプ装置11は4つ以上の任意の数であってもよい。
【0055】
本発明において使用した杭圧入機については、これを実施する場合、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0056】
本発明の既設杭の確認方法により、確認した既設杭Pの支持力を、基礎の設計に反映することにより、基礎杭の合理的な設計を行うことができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
1 支持部
2 把持部
2a 固定部
2b 可動部
2c クランプ用油圧シリンダ
3 載荷油圧シリンダ(載荷機構部)
10 杭圧入機
11b クランプ装置
11c クランプ装置
11f クランプ装置
15 チャック装置
20 杭圧入機
30 杭圧入機
11 クランプ装置
33 載荷機構部
33a 載荷部
40 支持層
P 既設杭
P1 杭
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、既設杭に引抜き力が作用した場合に、その支持力を確認する方法であって、
前記引抜き力が作用した既設杭に対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを繰り返して行い、
前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とすることを特徴とする既設杭の支持力確認方法。
【請求項2】
既設杭から反力をとる杭圧入機を用いて杭を施工する過程において、前記杭圧入機による引抜き力が作用した既設杭の支持力確認方法であって、
前記引抜き力が作用した既設杭に対して、杭頭の変位量を測定しつつ、圧入力を一定時間載荷保持した後除荷するサイクルを前記杭圧入機により繰り返して行い、
前記圧入力を一定時間載荷保持している間の前記変位量が10mm以下となったときに、前記圧入力を既設杭の支持力とすることを特徴とする既設杭の支持力確認方法。
【請求項3】
前記圧入力が、少なくとも前記既設杭に必要とされる支持力と同じ大きさの圧入力であることを特徴とする請求項1または2に記載の、既設杭の支持力確認方法。
【請求項4】
前記圧入力が、前記既設杭に必要とされる支持力よりも小さい圧入力であることを特徴とする請求項1または2に記載の、既設杭の支持力確認方法。
【請求項5】
前記圧入力を載荷保持する前記一定時間が、1分以上30分未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の既設杭の支持力確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−189901(P2010−189901A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34222(P2009−34222)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)