説明

既設窓ガラスの表面塗装装置

【課題】既設の建築物用窓ガラスに対する赤外線および/または紫外線遮蔽塗料の塗布作業を機器的手段に代替することにより安全性を含む施工性を改善する。
【解決手段】既設窓ガラスの表面塗装装置Wが、伸縮可能なステー要素により立脚支持され窓枠の上端にガラス面Fに対し垂直に取り付けて水平保持された上部固定架台Kと、該上部固定架台Kに索条3,3aを介して上下移動可能に懸垂吊持され、該索条3,3aを繰り出すことにより下降しながらガラス面Fに対する塗布をおこなう塗布操作架台Aを具備するとともに、塗布操作架台Aが、板状の体部に、索条3,3aの巻取り巻戻し駆動手段1と、ガラス面Fに臨む体部辺縁に回動支持され先端に塗布用のスポンジバーDを設けた可動板Bと、該可動板Bの回転駆動手段1aを有する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、既設の建築物用窓ガラスに対して赤外線および/または紫外線遮蔽機能を付与するために当該機能性材料の塗布膜を形成する既設窓ガラスの表面塗装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、既設の建築物用窓ガラスに対して赤外線および/または紫外線遮蔽塗布材を塗布する際に、図6に示すように人手作業により作業者がガラス面に正対し上部から下部へ中断なく一気に塗布する方法で施工していた。
【0003】
ここでは施工技術においてできるだけ均一な塗布膜(塗装面)の形成が要請される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布作業に係る移動速度、圧力、水平保持動作等は作業者個々の熟練度に依存するしかなく、施工性(精度)の均一化という点で難易度が高いものであった。また、熟練者の確保という点では人的コストは負担増となる。
【0005】
さらに、高所位置での施工には足場や脚立を使用するので、危険な作業となっていた。
【0006】
もちろん、赤外線および/または紫外線遮蔽ガラスといった機能傾斜ガラスは市場提供されているが、既設の建築物用窓ガラスをこの種のものに取り替えることは窓枠の解体やコスト面での問題があり容易でない。
【0007】
本考案は、このような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、塗布作業を機器的手段に代替することにより安全性を含む施工性を改善した既設窓ガラスの表面塗装装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するため本考案は、既設の建築物用窓ガラスに対して赤外線および/または紫外線遮蔽機能を付与するために当該機能性材料の塗布膜を形成する既設窓ガラスの表面塗装装置であって、伸縮可能なステー要素により立脚支持され窓枠の上端にガラス面に対し垂直に取り付けて水平保持された上部固定架台と、該上部固定架台に索条を介して上下移動可能に懸垂吊持され、該索条を繰り出すことにより下降しながらガラス面に対する塗布をおこなう塗布操作架台を具備するとともに、前記塗布操作架台が、板状の体部に、前記索条の巻取り巻戻し駆動手段と、ガラス面に臨む体部辺縁に回動支持され先端に塗布用のスポンジバーを設けた可動板と、該可動板の回転駆動手段を有し、前記索条の巻取り状態において前記スポンジバーをガラス面に当接させ、巻戻し操作することにより前記塗布操作架台の水平姿勢とガラス面への一定した押圧力を維持して窓ガラスの上端から下端へ移動しながら塗布作業を実行してゆき、リミットスイッチにより移動終端直前に前記塗布操作架台の下降を停止するとともに、該リミットスイッチに応動して前記可動板を回転駆動させ、前記スポンジバーを窓ガラス下端の見切りに至るまで摺動密着させて塗布作業を完了するようにした移動塗布機構を有したことを特徴とするものである。
【0009】
【考案の実施の形態】
本考案の実施の形態は、上記構成において、索条が3本からなり、そのうちの2本は両端吊下索条であって、各一端を上部固定架台のガラス面に対向する辺縁の両端部下面に対向係止して固定吊り元とし、該固定吊り元からそれぞれ垂下し、各他端を塗布操作架台のガラス面に対向する辺縁の両端に設けたプーリーを経由して巻取り巻戻し駆動手段の左右のドラム又はローラーにそれぞれ巻回可能に繋設している。
【0010】
他の1本は中央吊下索条であって、一端を上部固定架台の中央部枠体の長手方向に弾性的に係止して変動吊り元とし、他端を塗布操作架台の巻取り巻戻し駆動手段の中央のドラム又はローラーに巻回可能に繋設している。
【0011】
また、可動板は塗布操作架台のガラス面に臨む体部辺縁に蝶番軸を介し、かつ、その下面の開閉部にばね弾性を付勢して結合したフラップ要素からなり、回転駆動手段と自由端の中央部間に巻取り巻戻し可能に制御索条を繋設し、該制御索条をリミットスイッチに応動して巻戻し操作することによりばね弾性の蓄積エネルギーを解放しながら、蝶番軸を回動軸として窓ガラス下端の見切りに至る塗布操作をおこなうようにしている。
【0012】
【実施例】
本考案の一実施例を添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は実施例装置の斜視構成概要説明図である。
【0014】
図2は同じく側面視構成概要説明図である。
【0015】
図3は同じく背面視構成概要説明図である。
【0016】
図4は同じく移動塗布機構を示す側面視説明図である。
【0017】
図5は同じく可動板の取付構造を示す斜視説明図である。
【0018】
図1〜図4に示すように、本考案装置(W)は、伸縮可能なステー要素により立脚支持され窓枠の上端にガラス面(F)に対し垂直に取り付けて水平保持された上部固定架台(K)と、該上部固定架台(K)に索条(3,3a)を介して上下移動可能に懸垂吊持され、該索条(3,3a)を繰り出すことにより下降しながらガラス面(F)に対する塗布をおこなう塗布操作架台(A)を具備する。したっがって、対象となるガラスは、建築物の垂直壁面(窓)に施装された板ガラスであり、窓ガラス一枚ごとに本考案装置(W)を対向設置し一連の作業をおこなう。
【0019】
ここで、塗布操作架台(A)は、板状の体部に、前記索条(3,3a)の巻取り巻戻し駆動手段(1)と、ガラス面(F)に臨む体部辺縁に回動支持され先端に塗布用のスポンジバー(D)を設けた可動板(B)と、該可動板(B)の回転駆動手段(1a)を有している。スポンジバー(D)に含浸させる塗料は、その都度少なくとも窓ガラス一枚分の塗布量であり、次の作業に掛かる場合は差替える。また、対象となる窓ガラスの大きさに合わせてスポンジバー(D)の尺寸を変更・差替えすることにより種々の窓ガラスに対応可能である。
【0020】
また、索条は3本からなり、そのうちの2本は両端吊下索条(3a,3a)であって、各一端を上部固定架台(K)のガラス面(F)に対向する辺縁の両端部下面に対向係止して固定吊り元(4a,4a)とし、該固定吊り元(4a,4a)からそれぞれ垂下し、各他端を塗布操作架台(A)のガラス面(F)に対向する辺縁の両端に設けたプーリー(2a,2a)を経由して巻取り巻戻し駆動手段(1)の左右のドラム又はローラー(2,2)にそれぞれ巻回可能に繋設している。
【0021】
他の1本は中央吊下索条(3)であって、一端を上部固定架台(K)の中央部枠体(k)の長手方向に弾性的に係止して変動吊り元(4)とし、他端を塗布操作架台(A)の巻取り巻戻し駆動手段(1)の中央のドラム又はローラー(2)
に巻回可能に繋設している。ここで、弾性的な係止は、引きばね〔例えばコイルスプリング〕(6)を介設することによりなされる。
【0022】
そして、各索条(3,3a)の巻取り状態においてスポンジバー(D)をガラス面(F)に当接させ、巻戻し操作することにより塗布操作架台(A)の水平姿勢とガラス面(F)への一定した押圧力を維持して窓ガラスの上端から下端へ移動しながら塗布作業を実行してゆき、リミットスイッチ(図示省略)により移動終端直前に前記塗布操作架台(A)の下降を停止するとともに、該リミットスイッチに応動して前記可動板(B)を回転駆動させ、前記スポンジバー(D)を窓ガラス下端の見切りに至るまで摺動密着させて塗布作業を完了するようにした移動塗布機構を有したものとしている。
【0023】
また、図5に示すように、可動板(B)は塗布操作架台(A)のガラス面(F)に臨む体部辺縁に蝶番軸(E)を介し、かつ、その下面の開閉部にばね弾性を付勢して結合したフラップ要素からなり、回転駆動手段(1a)と自由端の中央部間に巻取り巻戻し可能に制御索条(C)を繋設し、該制御索条(C)をリミットスイッチ(図示省略)に応動して巻戻し操作することによりばね弾性の蓄積エネルギーを解放しながら、蝶番軸(E)を回動軸として窓ガラス下端の見切りに至る塗布操作をおこなうようにしている。ここで、ばね弾性による付勢は、蝶番軸(E)の両端に軸装したキックばね(H)による。
【0024】
移動塗布機構に係る機器操作及び動作(作用)を以下説明する。〔主に図4を参照〕
【0025】
まず、本考案装置(W)を窓ガラス(F)に対向設置する。ここで、上部固定架台(K)は、伸縮可能なステー要素により立脚支持して窓枠の上端にガラス面(F)に対し垂直に取り付けて水平保持する。塗布操作架台(A)は、両端吊下索条(3a,3a)を固定吊り元(4a)にセットして巻取り状態とし上部固定架台(K)の直下(初期位置)に置く。ガラス面(F)への押圧力の初期調整は、引きばねの固定端(5)の位置調整、及び引きばね(6)の強弱種別(ばね定数)の変更によりおこなう。
【0026】
次に、可動板(B)先端のスポンジバー(D)を下向きに回転駆動(正回転)
した最終姿勢の動作状態で、巻取り巻戻し駆動手段(1)を回転駆動(正回転)
して塗布操作架台(A)を下降させ、スポンジバー(D)が窓ガラス(F)下端の見切り(最下部)に当接した点で機器停止するようリミット調整する。
【0027】
リミット調整後、巻取り巻戻し駆動手段(1)を回転駆動(逆回転)して再び塗布操作架台(A)を初期位置に戻し、回転駆動手段(1a)を駆動(逆回転)して可動板(B)も通常姿勢の動作状態に戻す。
【0028】
次に、スポンジバー(D)に塗料を含浸して、窓ガラス(F)の最上端に当接させる。
【0029】
そして、巻取り巻戻し駆動手段(1)を始動して、塗布操作を開始する。なお、巻取り巻戻し駆動手段(1)及び回転駆動手段(1a)の発停は、リモコンスイッチにより遠隔操作可能としている。
【0030】
始動開始後、塗布操作架台(A)が水平姿勢とガラス面(F)への一定した押圧力を維持して窓ガラス(F)の上端から下端へ移動しながら塗布作業を実行してゆき、リミットスイッチ(図示省略)により移動終端直前に塗布操作架台(A)の下降を停止するとともに、該リミットスイッチに応動して可動板(B)を回転駆動し、スポンジバー(D)がガラス面(F)を摺動しながら下端の見切りに至って停止する。
【0031】
ここで、可動板(B)は、回転駆動手段(1a)と自由端の中央部間に巻取り巻戻し可能に制御索条(C)を繋設しており、該制御索条(C)をリミットスイッチ(図示省略)に応動して巻戻し操作することによりキックばね(H)の蓄積エネルギーを解放しながら、下向きに回動し最終姿勢に至る。なお、通常姿勢への復帰は、最終姿勢から回転駆動手段(1a)の逆回転に基づきキックばね(H)の復元力に抗しながら上向きに回動させる。
【0032】
最後に、塗布操作架台(A)を手前(装置背面方向)に引いて当該施工完了窓ガラス(F)から離して仮置きし、ついで装置(W)を移動撤去する。
【0033】
なお、塗布作業中、塗布操作架台(A)のガラス面(F)に対する押圧力の維持について以下説明しておく。
【0034】
塗布操作架台(A)は、塗布作業開始時点では最上部に在り、引きばね(6)
の一端の変動吊り元(4)は引きばね固定端(5)から図中「4−■」の位置まで引き伸ばした状態にある。そして、塗布操作架台(A)の下降移動とともに変動吊り元(4)は引きばね(6)の復元力により引きばね固定端(5)に向けて引き戻されてゆく。(図中「4−■」→「4−■」)
【0035】
この間、中央吊下索条(3)と塗布操作架台(A)とのなす角度(X)は常に一定となり、ガラス面(F)に対する押圧力を一定に維持し、かつ、塗布操作架台(A)の水平姿勢を維持する。したがって、均一な塗布膜(塗装面)を形成することができるのである。
【0036】
【考案の効果】
本考案は以上の構成よりなるものであり、これによれば既設の建築物用窓ガラスに対して、赤外線および/または紫外線遮蔽塗料を半自動的に表面塗装することができ、現場作業を格段に改善することができる。
【0037】
また、本考案装置の設置スペースさえ確保できれば、高所低所を問わず均一な表面塗装が可能で、安全かつ短時間に簡単施工できる。しかも、作業者の巧拙を問わないので人的コストも軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例装置の斜視構成概要説明図である。
【図2】同じく側面視構成概要説明図である。
【図3】同じく背面視構成概要説明図である。
【図4】同じく移動塗布機構を示す側面視説明図である。
【図5】同じく可動板の取付構造を示す斜視説明図である。
【図6】従来の施工方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 巻取り巻戻し駆動手段
1a 回転駆動手段
2 ドラム又はローラー
2a プーリー
3 中央吊下索条
3a 両端吊下索条
4 変動吊り元(中央)
4a 固定吊り元(両端)
5 引きばね固定端
6 引きばね(コイルスプリング)
A 塗布操作架台
B 可動板
C 制御索条
D スポンジバー
E 蝶番軸(回動軸)
F ガラス面(又は窓ガラス)
G スポンジバーの頂角部
H キックばね
I 駆動ベルト
J 駆動ローラー
K 上部固定架台
k 中央部枠体
X 中央吊下索条と塗布操作架台がなす角度
W 表面塗装装置(本考案装置)
イ ドラム又はローラーの回転方向
ロ 塗布操作架台の移動方向
ハ 中央索条の変動吊り元が移動する方向
ニ ガラス面への当接方向(圧力方向)
ホ 制御索条の延伸方向
ヘ 可動板の回動方向

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 既設の建築物用窓ガラスに対して赤外線および/または紫外線遮蔽機能を付与するために当該機能性材料の塗布膜を形成する既設窓ガラスの表面塗装装置であって、伸縮可能なステー要素により立脚支持され窓枠の上端にガラス面に対し垂直に取り付けて水平保持された上部固定架台と、該上部固定架台に索条を介して上下移動可能に懸垂吊持され、該索条を繰り出すことにより下降しながらガラス面に対する塗布をおこなう塗布操作架台を具備するとともに、前記塗布操作架台が、板状の体部に、前記索条の巻取り巻戻し駆動手段と、ガラス面に臨む体部辺縁に回動支持され先端に塗布用のスポンジバーを設けた可動板と、該可動板の回転駆動手段を有し、前記索条の巻取り状態において前記スポンジバーをガラス面に当接させ、巻戻し操作することにより前記塗布操作架台の水平姿勢とガラス面への一定した押圧力を維持して窓ガラスの上端から下端へ移動しながら塗布作業を実行してゆき、リミットスイッチにより移動終端直前に前記塗布操作架台の下降を停止するとともに、該リミットスイッチに応動して前記可動板を回転駆動させ、前記スポンジバーを窓ガラス下端の見切りに至るまで摺動密着させて塗布作業を完了するようにした移動塗布機構を有したことを特徴とする既設窓ガラスの表面塗装装置。
【請求項2】 索条が3本からなり、そのうちの2本は両端吊下索条であって、各一端を上部固定架台のガラス面に対向する辺縁の両端部下面に対向係止して固定吊り元とし、該固定吊り元からそれぞれ垂下し、各他端を塗布操作架台のガラス面に対向する辺縁の両端に設けたプーリーを経由して巻取り巻戻し駆動手段の左右のドラム又はローラーにそれぞれ巻回可能に繋設したものであり、他の1本は中央吊下索条であって、一端を上部固定架台の中央部枠体の長手方向に弾性的に係止して変動吊り元とし、他端を塗布操作架台の巻取り巻戻し駆動手段の中央のドラム又はローラーに巻回可能に繋設したものである請求項1記載の既設窓ガラスの表面塗装装置。
【請求項3】 可動板が塗布操作架台のガラス面に臨む体部辺縁に蝶番軸を介し、かつ、その下面の開閉部にばね弾性を付勢して結合したフラップ要素からなり、回転駆動手段と自由端の中央部間に巻取り巻戻し可能に制御索条を繋設し、該制御索条をリミットスイッチに応動して巻戻し操作することによりばね弾性の蓄積エネルギーを解放しながら、蝶番軸を回動軸として窓ガラス下端の見切りに至る塗布操作をおこなうようにしたものである請求項1記載の既設窓ガラスの表面塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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