説明

日負荷予測曲線の逐次補正方法および装置

【課題】配電線に連系される分散型電源の発電量による影響を考慮して日負荷予測曲線を逐次補正するための技術を提供する。
【解決手段】背後負荷の予測曲線が予め生成される。配電線を通過する通過電流に基づいて通過電流負荷が算出される。さらに、複数の分散型電源の逆潮流電力量が計測されるとともにその計測値に基づいて逆潮流電力量の合計が算出される。複数の分散型電源の最大発電可能量の合計が予め算出される。予測曲線から得られる背後負荷が、通過電流負荷と逆潮流電力量の合計との和よりも大きく、かつ、通過電流負荷と複数の分散型電源の最大発電可能量の合計との和よりも小さくなる関係が満たされるように予測曲線が補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の負荷管理に用いられる日負荷予測曲線を逐次補正するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日負荷予測曲線は、1日の配電線の負荷を予測した曲線であり、配電線の負荷管理に用いられる。たとえば日負荷予測曲線は、フィーダーの出口を通過する電流、あるいは配電線に設けられた区分開閉器を通過する電流に基づいて、配電線区間単位で作成される(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、省エネルギーなどを目的として、太陽光発電装置を代表とする分散型電源が多く用いられる。分散型電源が配電系統に連系されると、その発電量に相当する電流が配電線に流入するため、フィーダーの出口あるいは区分開閉器を通過する電流は、分散型電源の発電量分だけ差し引かれる。このため、需要家設備の実際の負荷(背後負荷)と、フィーダーの出口あるいは区分開閉器の通過電流より求まる負荷(通過電流負荷)との間には乖離が生じる。
【0005】
しかし、太陽光発電装置のような小容量の分散型電源は、個々の発電量が小容量であるため、わずかな小容量の乖離を是正するために個々に計測設備を配備することは、コスト等の面で課題が大きい。このため、配電線単位で見たときの分散型電源導入量が小さい場合には、通過電流負荷と背後負荷との垂離は小さいとして、通過電流負荷から日負荷予測曲線が作成される。
【0006】
しかしながら、太陽光発電装置のような小容量の分散型電源であっても、配電線に多数かつ集中的に連系された場合には分散型電源の発電量が大きな値となり、通過電流負荷と背後負荷とを大きく乖離させることになる。
【0007】
この状況で、配電線事故などによって配電線に停電が生じた場合には、当該配電線に連系していた分散型電源が切り離される(停電時の単独運転防止のための解列)。―方、早期の停電範囲縮小のために、事故が継続している区間(事故区間)以外の健全停電区間については、他の配電線区間(例えば隣接する正常な配電線)から、区分開閉器を通して電力が融通される。
【0008】
この際に、健全停電区間の救済対象負荷量を、通過電流負荷に基づいて設定した場合には、実際の背後負荷よりも小さい値が見積もられる可能性がある。したがって実際に融通をした場合に、例えば隣接する正常な配電線の供給余力を超えてしまう可能性がある。この場合、融通した配電線が過負荷となり、隣接配電線に不要な停電が波及してしまう可能性がある。
【0009】
そのような状態が発生することを避けるために、救済対象負荷量を見積もる際に、発電設備の最大発電量(例えば定格設備容量)を通過電流負荷に上乗せすることが考えられる。しかし、この場合には、上記の場合とは逆に、実際の背後負荷よりも大きい値が見積もられる可能性がある。健全停電区間の救済対象負荷量が、隣接する正常な配電線の供給余力を超える値であると(誤)判定されると、実際には融通可能であるにも関わらず隣接配電線からの融通が実施されないため、停電範囲の縮小がなされず、健全停電区間の停電が継続する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、配電線に連系される分散型電源の発電量による影響を考慮して日負荷予測曲線を逐次補正するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に係る日負荷予測曲線の逐次補正装置は、逆潮流を行なう複数の分散型電源が連系された配電線の背後負荷を予測するために用いられる日負荷予測曲線の逐次補正装置であって、背後負荷の予測曲線を予め生成する予測曲線生成部と、配電線を通過する通過電流を計測する第1の計測部と、第1の計測部により計測された通過電流に基づいて、通過電流負荷を算出する通過電流負荷算出部と、複数の分散型電源にそれぞれ対応して設けられて、対応する分散型電源から配電線に逆流する電力量である逆潮流電力量を計測する複数の第2の計測部と、複数の第2の計測部により計測された逆潮流電力量に基づいて、複数の分散型電源の逆潮流電力量の合計を算出する逆潮流電力量算出部と、複数の分散型電源の最大発電可能量の合計値を予め記憶する記憶部と、補正部とを備える。補正部は、予測曲線から得られる背後負荷が、通過電流負荷と逆潮流電力量の合計との和よりも大きく、かつ、通過電流負荷と複数の分散型電源の最大発電可能量の合計との和よりも小さくなる関係が満たされるように予測曲線を補正する。
【0012】
好ましくは、複数の第2の計測部の各々は、所定の時間間隔で逆潮流電力量を計測する。補正部は、予測曲線において、複数の第2の計測部が逆潮流電力量を計測した最新の時刻以後の背後負荷を補正する。
【0013】
好ましくは、補正部は、最新の時刻における背後負荷の予測値が、通過電流負荷と逆潮流電力量との合計に一致するように、予測曲線を補正する。
【0014】
本発明の他の局面に係る日負荷予測曲線の逐次補正方法は、逆潮流を行なう複数の分散型電源が連系された配電線の背後負荷を予測するために用いられる日負荷予測曲線の逐次補正方法であって、背後負荷の予測曲線を予め生成するステップと、複数の分散型電源の最大発電可能量の合計値を予め準備するステップと、配電線を通過する通過電流を計測する第1の計測部により計測された通過電流に基づいて、通過電流負荷を算出するステップと、複数の分散型電源にそれぞれ対応して設けられて、対応する分散型電源から配電線に逆流する電力量である逆潮流電力量を計測する複数の第2の計測部により計測された逆潮流電力量に基づいて、複数の分散型電源の逆潮流電力量の合計を算出するステップと、予測曲線を補正するステップとを備える。予測曲線を補正するステップは、予測曲線から得られる背後負荷が、通過電流負荷と逆潮流電力量の合計との和よりも大きく、かつ、通過電流負荷と複数の分散型電源の最大発電可能量の合計との和よりも小さくなる関係が満たされるように予測曲線を補正するステップである。
【0015】
好ましくは、複数の第2の計測部の各々は、所定の時間間隔で逆潮流電力量を計測する。補正するステップは、予測曲線において、複数の第2の計測部が逆潮流電力量を計測した最新の時刻以後の背後負荷を補正する。
【0016】
好ましくは、補正するステップは、最新の時刻における背後負荷の予測値が、通過電流負荷と逆潮流電力量との合計に一致するように、予測曲線を補正する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配電線に連系される分散型電源の発電量による影響を考慮して日負荷予測曲線を逐次補正することができる。これにより、たとえば、配電線事故による停電の発生時に、隣接する正常な配電線から適切な救済対象負荷量を融通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る逐次補正装置によって補正された日負荷予測曲線によって管理される配電系統100の構成例を概略的に示した図である。
【図2】図1における区分開閉器SWの制御装置20および結合開閉器TSWの制御装置30の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の配電系統100の一部を取り出した構成図である。
【図4】中央装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図5】図4に示した中央装置の構成の一例を示した図である。
【図6】実際の背後負荷と、日負荷予測曲線によって逐次される背後負荷との関係を説明するための図である。
【図7】実際の背後負荷の範囲を説明した図である。
【図8】図7に示した実際の背後負荷の一日の変動をより詳細に説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態による日負荷予測曲線の逐次補正方法の手順の例を説明した図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る日負荷予測曲線の逐次補正処理のための準備の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係る日負荷予測曲線の逐次補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】配電系統100Aの一部の配電線に事故が発生した時の救済融通を説明するための図である。
【図13】図12に示された事故の発生から復旧までの一連の流れを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る逐次補正装置によって補正された日負荷予測曲線によって管理される配電系統100の構成例を概略的に示した図である。
【0021】
図1を参照して、配電系統100は、発電所の発電機2から送電線3を介して送電された電力を降圧する配電用変圧器11と、配電用変圧器11に接続された母線12と、母線12に接続された複数の遮断器CBを含む。配電用変圧器11、母線12、および遮断器CBは、変電所に設置される。配電系統100は、母線12から遮断器CBを介して引き出された複数の配電線Fと、各配電線Fに設けられた複数の区分開閉器SWと、各配電線Fを相互に連系するための結合開閉器TSWとを含む。図1では、符号CB,F,SWおよびSの各々の後に付されたローマ数字I,II,IIIによって、回線番号が区別される。
【0022】
遮断器CBは、配電線Fに短絡または地絡などの故障が生じたときに、配電線Fに供給される電力を遮断する。故障時における遮断器CBの遮断および再閉路を制御するために継電器14が設けられる。
【0023】
区分開閉器SWは、電磁石の励磁により閉路する一方で電磁石の減磁により開路する接点を有する。通常の送電時には、区分開閉器SWは、接点が閉路したオン状態(入状態、投入状態)になる。一方、配電線Fの故障時に配電線電圧が低下すると、減磁によって接点が開路する。これにより区分開閉器SWはオフ状態(切状態、開放状態)になる。
【0024】
この区分開閉器SWによって、配電線Fは複数の区間Sに分割される。図1の例では、配電線FI,FII,FIIが、母線12から遮断器CBI,CBII,CBIIIを介してそれぞれ引き出される。遮断器CBI〜CBIIIから引き出された各配電線Fは、2個の区分開閉器SWによって、3つの区間Sに分割される。代表的に第1番目の配電線FIについて説明すると、配電線FIには、遮断器CBIに近い側から順に、区分開閉器SWI−1,SWI−2が設置される。区分開閉器SWI−1,SWI−2によって、配電線FIは、遮断器CBIに近い側から順に、区間SI−1,SI−2,SI−3の3区間に分割される。配電線FII,FIIIについても同様である。
【0025】
結合開閉器TSWは、通常はオフ状態(接点が開路した状態)で用いられる。ある配電線に故障が生じた場合、その配電線の故障区間を回避して送電するために結合開閉器TSWの接点が閉路する。
【0026】
1つの結合開閉器TSWによって2つの配電線Fが相互に接続される。図1の例では、配電線FIの区間SI−2と配電線FIIの区間SII−2とは結合開閉器TSW−1によって接続される。配電線FIIの区間SII−3と配電線FIIIの区間SIII−2とは、結合開閉器TSW−2を介して接続される。配電線FIの区間SI−3と配電線FIIIの区間SIII−3とは結合開閉器TSW−3を介して接続される。
【0027】
配電系統100には、配電自動化システム1が配備される。配電自動化システム1は、複数の区分開閉器SWのそれぞれに設けられる複数の制御装置20と、複数の結合開閉器TSWに設けられる複数の制御装置30と、複数の制御装置20,30を遠隔制御する中央装置40と、制御装置20,30と中央装置40との間を接続する通信路である自動化伝送路41とを含む。なお、自動化伝送路41には、光ファイバケーブル、メタルケーブルなどが用いられる。通信用の専用線である自動化伝送路41を用いる代わりに、電力線搬送または無線方式によって中央装置40と制御装置20,30との間の通信を行なってもよい。
【0028】
図2は、図1における区分開閉器SWの制御装置20および結合開閉器TSWの制御装置30の構成例を示すブロック図である。図2では、複数の制御装置20,30を代表して、配電線FIに接続された区分開閉器SWI−1の制御装置20、および結合開閉器TSW−3の制御装置30の構成を示す。
【0029】
図2を参照して、区分開閉器SWの制御装置20は、検出部23と、制御部24と、子局通信部25とを含む。検出部23は、区分開閉器SWの接点の開閉状態、および区分開閉器SWの両側の配電線の電圧を検出する。配電線電圧を検出するために、区分開閉器SWの両側の配電線と検出部23との間に、制御用変圧器22a,22bが設置される。制御部24は、区分開閉器SWの開閉を制御する。制御部24は、マイクロプロセッサなどによって構成される。子局通信部25は、検出部23の検出結果を、自動化伝送路41を通じて送信する。
【0030】
結合開閉器TSWの制御装置30は、検出部33と、制御部34と、子局通信部35とを含む。検出部33と結合開閉器TSWの両側の配電線との間に制御用変圧器32a,32bが設けられる。検出部33、制御部34、および子局通信部35の機能は検出部23、制御部24、および子局通信部25の機能とそれぞれ同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0031】
図3は、図1の配電系統100の一部を取り出した構成図である。図1および図3を参照して、配電系統100は、さらに、配電線Fの各区間Sに接続された複数の柱上変圧器を含む。図3には、これらの複数の柱上変圧器を代表して、区間SI−2の配電線FIに接続された1つの柱上変圧器50が示される。柱上変圧器50は、その1次側端子51の電圧を降圧して2次側端子52に出力する。たとえば、日本国内の配電系統の場合、通常、6.6kVの電圧が柱上変圧器によって105Vまたは210Vの電圧に降圧される。
【0032】
柱上変圧器50の2次側端子51には複数の需要家設備が接続される。図3では、代表的に、1つの需要家設備60が示される。需要家設備60は、分散型電源としての太陽光発電パネル62を有する。
【0033】
太陽光発電パネル62によって発電された直流電力は、インバータ装置63によって商用周波数の交流電力に変換される。インバータ装置63は、直流電力を交流電力に変換するとともに、出力する交流電力の有効電力の大きさおよび無効電力の大きさを制御する。インバータ装置63から出力された交流電力は、需要家設備60内の負荷装置64で消費されるとともに、余剰電力は配電線FIに向けて送電(逆潮流)される。
【0034】
需要家設備60には、逆潮流電力量計65と、順潮流電力量計66とが設けられる。逆潮流電力量計65は、逆潮流される電力量を測定する。逆潮流電力量計65は、自動化伝送路41と光ファイバケーブルなどの信号伝送路55を介して接続される。光ファイバケーブルに代えてPHS(Personal Handyphone System)などの無線通信が用いられてもよい。逆潮流電力量計65で測定されたデータは、信号伝送路55および自動化伝送路41を介して配電自動化システム1の中央装置40に送信される。なお、中央装置40に代えて電力量検針サーバに送信されてもよい。
【0035】
順潮流電力量計66は、順潮流される電力量、すなわち配電線FIから需要家設備60に送られる電力量を測定する。
【0036】
配電自動化システム1の中央装置40は、自動化伝送路41および信号伝送路55を介して逆潮流電力量計65の測定データを収集する。なお電力量検針サーバから収集してもよい。逆潮流によって、配電線を通過する電流に基づく負荷(通過電流負荷)と需要家設備60の実際の負荷(背後負荷)との間に乖離が生じる。後に詳細に説明するように、中央装置40は、逆潮流電力量計65の測定データに基づいて、予め作成された日負荷予測曲線を逐次補正する。
【0037】
図4は、中央装置の構成を示した機能ブロック図である。図4を参照して、中央装置40は、初期予測曲線生成部71と、通過電流負荷算出部72と、設備情報記憶部73と、容量算出部74と、逆潮流電力量算出部75と、受信部76と、補正判定部77と、補正部78と、監視部79と、送信部80とを備える。
【0038】
初期予測曲線生成部71は、配電線区間ごとに、背後負荷の日負荷予測曲線を初期生成する。この曲線が初期予測曲線とされる。たとえば過去の情報(前日の通過電流負荷、背後負荷の日負荷曲線など)に基づいて、当日の予測曲線が初期作成される。
【0039】
通過電流負荷算出部72は、配電線区間ごとに、通過電流負荷を算出する。具体的には、通過電流負荷算出部72は、区分開閉器SWの制御装置20から自動化伝送路41を介して送られた通過電流の計測値を、受信部76を介して取得する。通過電流負荷算出部72は、この計測値に基づいて、配電線区間ごとに通過電流負荷を算出する。
【0040】
設備情報記憶部73は、太陽光発電パネル(分散型電源)が設置された需要家設備が、どの配電線のどの区間に連系しているかを特定するための設備情報データを記憶する。たとえば太陽光発電パネルの設置時に設置場所および太陽光発電パネルの定格設備容量を需要家が電力会社に届け出ることで、設備情報データが中央装置40に入力されて設備情報記憶部73に格納される。
【0041】
容量算出部74は、設備情報記憶部73に格納された設備情報データに基づいて、配電線区間ごとに、太陽光発電パネル(分散型電源)の最大発電可能量の合計を算出する。
【0042】
逆潮流電力量算出部75は、配電線区間ごとに、逆潮流電力量を算出する。具体的には、逆潮流電力量算出部75は、太陽光発電パネル(分散型電源)が設置された需要家設備の逆潮流電力量計から信号伝送路55および自動化伝送路41を介して送られた逆潮流電力量の計測値を、受信部76を介して取得する。電力量検針サーバを介して送られた計測値であってもよい。逆潮流電力量算出部75は、この計測値に基づいて、配電線区間ごとに逆潮流電力量を算出する。
【0043】
補正判定部77は、予測曲線(初期予測曲線、あるいは一旦補正した後の予測曲線)を補正すべきかどうかを判定する。具体的には、補正判定部77は、予測曲線によって得られる背後負荷の値を、通過電流負荷と逆潮流電力量との和と比較するとともに、通過電流負荷と分散型電源の最大発電可能量の合計値との和と比較する。最大発電可能量は、たとえば同期発電機においては定格設備容量相当であり、太陽光発電においては、定格設備容量に、時刻によって変化する日射量強度(太陽光の日内変動係数であり、日の出とともに立上がり、正午頃に最大となり、日没移行は0である)を乗じた値である。
【0044】
補正判定部77は、以下の式(1)に示された関係が満たされる場合に、背後負荷の予測値の補正が不要と判断する。
【0045】
(通過電流負荷+逆潮流電力量)<(背後負荷の予測値)<(通過電流負荷+分散型電源の最大発電可能量の合計値) ・・・(1)
一方、上記式(1)の関係が満たされている場合、補正判定部77は、背後負荷の予測値の補正が必要と判断する。
【0046】
補正部78は、補正判定部77の判定結果に基づいて、日負荷予測曲線を補正する。監視部79は、補正部78によって補正された日負荷予測曲線に基づいて、配電線の負荷管理を行なう。具体的には、監視部79は、区間開閉器および結合開閉器を制御するための信号を出力する。この信号は送信部80によって自動化伝送路41に送られて、区分開閉器の制御装置20あるいは結合開閉器の制御装置30へと送られる。
【0047】
図5は、図4に示した中央装置の構成の一例を示した図である。図5を参照して、中央装置40は、設備データベース(DB)70Aと、オフラインサーバ70Bと、自動化サーバ70Cと、計量システムサーバ70Dとを備える。
【0048】
設備データベース70Aは、オフラインサーバ70Bに接続されて、設備情報データを格納する。オフラインサーバ70Bは、設備データベース70Aに格納された設備情報データに基づいて、配電線区間ごとに、太陽光発電パネル(分散型電源)の最大発電可能量の合計を算出する。また、オフラインサーバ70Bは、配電線負荷ごとに、逆潮流電力量を算出する。
【0049】
自動化サーバ70Cは、配電線区間ごとに、背後負荷の日負荷予測曲線を初期作成する。さらに、自動化サーバ70Cは、配電線区間ごとに、通過電流負荷を算出する。自動化サーバ70Cは、初期作成した日負荷予測曲線を補正すべきかどうかを判定して、日負荷予測曲線を補正する必要がある場合に日負荷予測曲線を補正する。さらに自動化サーバ70Cは、ある配電線に停電などの事故が発生した時には、隣接する正常な配電線から適切な救済対象負荷量を融通するように、区分開閉器あるいは結合開閉器を制御する。
【0050】
計量システムサーバ70Dは、太陽光発電パネルが設置された需要家の逆潮流電力量計から送られる逆潮流電力量の計測値を収集する。この計測値は、自動化サーバ70Cを介してオフラインサーバ70Bに送られる。
【0051】
なお、区分開閉器SWの制御装置20は、通過電流をリアルタイムで計測してその計測結果を送信する。これに対して、計量システムサーバ70Dは、間欠的に、逆潮流電力量計65の計測値を収集する。たとえば計量システムサーバ70Dは、30分単位で遠隔検針を行なって、逆潮流電力量計65の計測値を収集する。このため、最新の計測値と前回計測値との差を得るまでには、30(分)×2=60(分)つまり1時間を要する。
【0052】
なお30分は一つの具体例であり、最新の計測値と前回計測値との差を得るまでの時間が、計量システムサーバ70Dの遠隔検針の時間間隔の2倍の時間を要することを示したものである。
【0053】
図4および図5を対比して説明すると、設備データベース70Aは、設備情報記憶部73に対応する。オフラインサーバ70Bは、容量算出部74および逆潮流電力量算出部75を含む。自動化サーバ70Cは、初期予測曲線生成部71と、通過電流負荷算出部72と、補正判定部77と、補正部78と、監視部79と、送信部80とを含む。さらに、自動化サーバ70Cは、受信部76による通過電流の計測値の受信機能を実現する。計量システムサーバ70Dは、受信部76による逆潮流電力量の計測値の受信機能を実現する。
【0054】
図6は、実際の背後負荷と、日負荷予測曲線によって逐次される背後負荷との関係を説明するための図である。図6を参照して、配電線FIの区間SI−2に、太陽光発電パネルが設置された複数の需要家設備が連系されている。図示の都合上、図6では需要家設備の数は、需要家設備60a〜60dの4つとする。各需要家設備における発電電力量および負荷をそれぞれGおよびLと表わす。
【0055】
需要家設備60aにおいては、太陽光発電パネル62aの発電量Gが負荷Lを上回る。このため(G−L)の電力量が逆潮流する。逆潮流電力量計65aは、この逆潮流する電力量(G−L)を計量する。一方、順潮流電力量計66aは、逆転が防止され、その計量値が保持される。
【0056】
同じく需要家設備60bにおいては、太陽光発電パネル62bの発電量Gが、負荷Lを上回る。逆潮流電力量計65bは、この逆潮流する電力量(G−L)を計量する。順潮流電力量計66bは、逆転が防止され、その計量値が保持される。
【0057】
一方、需要家設備60c,60dにおいては、負荷が太陽光発電パネルの発電量を上回る。需要家設備60cでは(L−G)の電力量が順潮流する。順潮流電力量計66cは、順潮流する電力量(L−G)を計測する。一方、逆潮流電力量計65cは、逆転が防止され、その計量値が保持される。
【0058】
需要家設備60dでは(L−G)の電力量が順潮流する。順潮流電力量計66dは、順潮流する電力量(L−G)を計測する。一方、逆潮流電力量計65dは、逆転が防止され、その計量値が保持される。
【0059】
実際の背後負荷は各需要家設備の負荷の合計であるので、(L+L+L+L)となる。一方、区分開閉器SWI−1を通過する電流Iは、順潮流電力量から逆潮流電力量を引いたものとなるので、以下の式(2)に従って表わされる。
【0060】
I=−(G−L)−(G−L)+(L−G)+(L−G
=(L+L+L+L)−(G+G+G+G) ・・・(2)
式(2)から、実際の背後負荷(L+L+L+L)は、以下の式(3)に従って表わされる。
【0061】
+L+L+L=I+(G+G+G+G) ・・・(3)
,L≧0およびG,G≧0である。したがって式(3)から、以下の式(4)に示す関係が導かれる。
【0062】
+L+L+L=I+(G+G+G+G)≧I+(G+G)≧I+(G−L)+(G−L) ・・・(4)
すなわち実際の背後負荷(L+L+L+L)は、通過電流負荷と逆潮流電力量との和(I+(G−L)+(G−L))よりも大きくなる。通過電流負荷と逆潮流電力量とが分かれば、それらの合計よりも大きくなるように背後負荷を見積もることができる。
【0063】
一方、逆潮流電力量の最大値は、太陽光発電パネル62a〜62dの最大発電可能量の合計に等しい。なお、逆潮流電力量が太陽光発電パネル62a〜62dの最大発電可能量の合計に等しい場合とは、太陽光発電パネル62a〜62dの発電電力量が各パネルの最大発電可能量に等しく、かつ、負荷L〜Lがすべて0の場合である。したがって背後負荷の上限値は、通過電流負荷に逆潮流電力量の最大値を加えた値、すなわち通過電流負荷に太陽光発電パネル62a〜62dの最大発電可能量を加えた値となる。
【0064】
図7は、実際の背後負荷の範囲を説明した図である。図7を参照して、通過電流および逆潮流電力量は実測によって得られる。通過電流の実測値に逆潮流電力量の実測値を加えた値が、実際の背後負荷の取りうる下限値となる。また、ある配電線区間における発電設備(太陽光発電パネル)の最大発電可能量は設備情報記憶部73(設備データベース70A)に記憶される。通過電流の実測値に発電設備の最大発電可能量の合計値を加えた値が、実際の背後負荷の取りうる上限値となる。
【0065】
実際の背後負荷を正確に測定するためには、発電設備の発電量そのものを把握する必要がある。しかし、そのためには発電設備の発電量を計量する電力量計を発電設備ごとに設置する必要がある。さらにその電力量計の計測値を計量システムサーバ70Dに収集するための仕組みも必要となる。このためコスト等の面で課題がある。
【0066】
実際の背後負荷を測定することは容易ではないが、実際の背後負荷は、図7に示した範囲内の値に限定されている。そこで本発明では、日負荷予測曲線で得られる背後負荷の値が、この範囲内となるように予測曲線を補正する。逆潮流電力量の計測値は、現在よりも1時間前の値である。したがって、「予測曲線での値」も、現在よりも1時間前の値が採用される。
【0067】
図8は、図7に示した実際の背後負荷の一日の変動をより詳細に説明するための図である。図8を参照して、時刻t1においては、日射が強いため、太陽光発電パネル(PV)の発電電力量が大きくなる。このため、逆潮流電力量も大きくなりやすい。時刻t1において背後負荷を通過電流負荷に等しいと予測した場合、その予測値は、実際の背後負荷よりも大幅に小さな値となる。
【0068】
一方、時刻t2において、日が陰ることで日射が弱くなったとする。この場合、太陽光発電パネルの発電電力量が低下するので逆潮流電力量も低下する。したがって実際の背後負荷と通過電流負荷との差が小さくなる。しかしながらこのタイミングで、(通過電流負荷+発電設備の最大発電可能量)として背後負荷を予測した場合、その予測値は、実際の背後負荷よりも大幅に大きな値となる。
【0069】
本発明の実施の形態では、背後負荷の予測値が(通過電流負荷+逆潮流電力量)と(通過電流負荷+発電設備の最大発電可能量)との間にあるように、その予測値を補正する。発電設備の発電電力が1日のうちに変動しても、図8に示されるように、実際の背後負荷は、(通過電流負荷+逆潮流電力量)と(通過電流負荷+発電設備の最大発電可能量)との間にある。上記のように背後負荷の予測値を補正することによって、背後負荷の予測値と、実際の背後負荷との間の乖離を小さくすることができる。
【0070】
図9は、本発明の実施の形態による日負荷予測曲線の逐次補正方法の手順の例を説明した図である。図9(A)は、初期曲線を示した図である。図9(B)は、予測曲線の値よりも、通過電流負荷と逆潮流電力量との合計値が大きい場合における、予測曲線の補正を説明した図である。図9(C)は、予測曲線の値よりも、通過電流負荷と逆潮流電力量との合計値が小さい場合における日負荷予測曲線の補正を説明した図である。
【0071】
図9(A)に示されるように、まず、当日の日負荷予測曲線が準備される。計量システムサーバ70Dには、逆潮流電力量計から送られた、AM9時における逆潮流電力量の計測値が入力される。また、自動化サーバ70C(逆潮流電力量算出部75)によって、AM9時における通過電流負荷が算出される。また、オフラインサーバ70B(通過電流負荷算出部72)によって、AM9時における逆潮流電力が算出される。
【0072】
次に、図9(B)に示されるように、AM10時において、AM9時における背後負荷の推定値(予測値)と、AM9時における逆潮流電力量および通過電流負荷の合計とが比較される。図9(B)に示されたケースでは、逆潮流電力量および通過電流負荷の合計が背後負荷の推定値よりも大きい。この場合、自動化サーバ70C(補正部78)は、AM9時以後の予測曲線を上に移動させて、AM9時における予測曲線の値(推定値)を、通過電流負荷および逆潮流電力量の合計に等しくする。これにより、AM9時以後の背後負荷の推定値(予測値)が割増補正される。
【0073】
続いて、図9(C)に示されるように、AM11時において、AM10時における背後負荷の推定値(予測値)と、予測値は、図9(B)に示された方法によって補正された予測曲線から得られる。
【0074】
AM10時における予測値と、AM10時における逆潮流電力量および通過電流負荷の合計とが比較される。図9(C)に示されたケースでは、背後負荷の推定値(AM10時に補正された値)は、通過電流負荷および逆潮流電力量の合計よりも大きい。ただし、背後負荷の推定値は、通過電流負荷と発電設備の最大発電可能量との和を上回っている。この場合、自動化サーバ70C(補正部78)は、AM10時以後の予測曲線を下に移動させて、AM10時における予測曲線の値(推定値)を、通過電流負荷および発電設備の最大発電可能量の合計に等しくする。これにより、AM10時以後の背後負荷の推定値(予測値)が割引補正される。
【0075】
補正の方法は、逆潮流電力量および通過電流負荷の合計と背後負荷の推定値との差分を一律に背後負荷の推定値に加算あるいは減算してもよいし、逆潮流電力量および通過電流負荷の合計と背後負荷の推定値との比を一律に背後負荷の推定値に乗じてもよい。
【0076】
図10は、本発明の実施の形態に係る日負荷予測曲線の逐次補正処理のための準備の処理を説明するためのフローチャートである。図4および図10を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、容量算出部74は、設備情報記憶部73に記憶された設備情報に基づいて、配電線区間ごとに発電設備の最大発電可能量の合計を算出する。ステップS2において、初期予測曲線生成部71は、配電線区間ごとに、背後負荷の初期予測曲線を作成する。なお、ステップS1,S2の処理はこの順に実行されるものと限定されるものではなく、たとえば逆順に実行されてもよいし並列に実行されてもよい。
【0077】
図11は、本発明の実施の形態に係る日負荷予測曲線の逐次補正処理を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、配電線区間ごとに実行される。図4および図11を参照して、ステップS11において、通過電流負荷算出部72は、区分開閉器SWの制御装置20によって検出された通過電流に基づいて通過電流負荷を算出する。ステップS12において、逆潮流電力量算出部75は、需要家設備の逆潮流電力量計から送られた計測値に基づいて、配電線区間における逆潮流電力量の合計を算出する。たとえば、決まった時刻(たとえば毎時0分)ごとに逆潮流電力量が計測されるのであれば、通過電流負荷算出部72は、逆潮流電力量の計測時刻における通過電流負荷の値を保存する。これにより、以下に説明する補正処理を実行することができる。
【0078】
ステップS13において、補正判定部77は、(通過電流負荷+逆潮流電力量)≦(日負荷予測曲線から得られる背後負荷の推定値)という関係が成立するかどうかを判定する。上記関係が成立する場合(ステップS13においてYES)、処理はステップS15に進む。一方、上記関係が成立しない場合、すなわち、(通過電流負荷+逆潮流電力量)>(背後負荷の推定値)である場合(ステップS13においてNO)、処理はステップS14に進む。
【0079】
ステップS14において、補正部78は、割増補正を行なう。この場合には、補正部78は、予測曲線を上に移動させて、予測曲線の値(推定値)を通過電流負荷および逆潮流電力量の合計に等しくする(図9(B)を参照)。
【0080】
一方、ステップS15において、補正判定部77は、(日負荷予測曲線から得られる背後負荷の推定値)≦(通過電流負荷+発電設備の最大発電可能量)という関係が成立するかどうかを判定する。上記関係が成立する場合(ステップS15においてYES)、予測曲線の補正は不要である。したがって、予測曲線が補正されずに全体の処理が終了する。一方、上記関係が満たされない場合、すなわち、(背後負荷の推定値)>(通過電流負荷+発電設備の最大発電可能量)である場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS16に進む。
【0081】
ステップS16において、補正部78は、割引補正を行なう。この場合には、補正部78は、予測曲線を下に移動させて、予測曲線の値(推定値)を、通過電流負荷および発電設備の合計に等しくする(図9(C)を参照)。
【0082】
図11に示されるように背後負荷の推定値を逐次補正することによって、配電線事故による停電の発生時に、隣接する正常な配電線から適切な救済対象負荷量を融通することができる。
【0083】
図12は、配電系統100Aの一部の配電線に事故が発生した時の救済融通を説明するための図である。図12を参照して、配電線FIIIの区間SIII−2において事故(たとえば地絡)が発生したとする。配電線FIIIの救済融通として、結合開閉器TSW−2が閉路することによる配電線FIIからの電力の融通、あるいは結合開閉器TSW−3が閉路することによる配電線FIからの電力の融通が考えられる。
【0084】
図13は、図12に示された事故の発生から復旧までの一連の流れを例示した図である。図13を参照して、配電線FIIIの区間SIII−2において、事故(地絡)が発生する。この場合、遮断器CBIIIが遮断されるのと同時に、区分開閉器SWIII−1,SWIII−2が開路する。次に中央装置40は所定の再閉路時間の経過後に遮断器CBIIIを再閉路する。遮断器CBIIIの再閉路から予め定められた投入時限X1(たとえば7秒)が経過した後に、区分開閉器SWIII−1が閉路する。
【0085】
区間SIII−2には故障点があるため、区分開閉器SWIII−1の閉路と同時に故障が再び検出される。これにより遮断器CBIIIが再び遮断される。中央装置40は、遮断器CBIIIが再閉路してから再び遮断状態となるまでの経過時間(X1)によって、区間SIII−2を故障区間として特定する。この場合、区分開閉器SWIII−1は開放状態でロックされる。
【0086】
続いて中央装置40は遮断器CBIIIを再々閉路する。健全区間であるSWIII−3を救済するために、中央装置40は、区間SIII−3での背後負荷を日負荷予測曲線から推定するとともに、その推定値に対応する負荷を融通できる配電線を配電線FIおよびFIIの中から特定する。中央装置40は、その特定された配電線と配電線FIIIとの間に設けられた結合開閉器(すなわち結合開閉器TSW−2,TSW−3,TSW−4のいずれか)を閉路する。これにより、自動融通が開始される。事故発生から健全区間(SWIII−3)を自動救済するまでの時間は、たとえば10分程度である。
【0087】
次に電力会社の営業所から作業員が緊急出動して、事故点を調査する。事故点の特定に要するまでの時間は、たとえば事故発生から1時間である。続いて、応急処置のための機材を手配して、現地(事故点)にて復旧作業が行なわれる。これにより事故原因が除去されるとともに、事故が生じた区間SIII−2が健全状態に復元される。区間SIII−2が健全状態に復元されるまでの時間は、たとえば事故発生から2時間である。なお、場合によっては、事故の発生した配電線区間を健全状態に復元するまでの時間が数時間にも及ぶことも考えられる。
【0088】
健全区間の自動救済を開始してから事故区間を健全状態に復元するまでの間、隣接する健全な配電線(配電線FI,FIIのいずれか)が事故配電線の負荷を融通し続けなければならない。しかしこのためには、事故が起きた配電線区間の背後負荷、および、健全な配電線から融通可能な救済対象負荷量をできるだけ正確に推定することが必要である。
【0089】
この点を分かりやすく説明するために、以下、数値を用いて説明する。なお数値は、単に説明のために用いたものであり、本発明を限定するものではない。
【0090】
図12に戻り、たとえば区間SIII−3の背後負荷が40A(アンペア)であり、区間SIII−3に連系された太陽光発電パネル(PV)の逆潮流電力量が20Aであったとする。この場合、通過電流負荷は20Aとなる。
【0091】
一方、配電線FIの救済可能負荷量が30Aであり、配電線FIIの救済可能負荷量が40Aであったとする。停電が発生した場合、太陽光発電パネルは区間SIII−3から解列される。したがって、配電線FI,FIIの少なくとも一方から、区間SIII−2の背後負荷(40A)に相当する電力量を融通する必要がある。
【0092】
区間SIII−3の事故以前の通過電流負荷は20Aである。区間SIII−3の通過電流負荷にのみに基づいて救済可能な配電線が決定される場合、中央装置40は、配電線FI(救済可能負荷量30A)を救済可能な配電線に選択する可能性がある。
【0093】
しかし、事故によって太陽光発電パネル(PV)は、区間SIII−3から解列される。このため、実際の背後負荷である40Aを融通する必要がある。結合開閉器TSW−3を閉路することで配電線FIから区間SIII−3に電力を融通した場合、配電線FIが過負荷となり、遮断器CBIが遮断する可能性がある。すなわち配電線FIにおいても停電が発生する可能性がある。
【0094】
このような問題を防ぐために、区間SIII−3に救済すべき負荷量を、(通過電流+太陽光発電パネルの最大発電可能量の合計)と見積もることが考えられる。太陽光発電パネルの最大発電可能量の合計が60Aであったとすると、区間SIII−2の事故時には、中央装置40は、区間SIII−3に20A+60A=80Aを救済することが必要と判断する。しかし、上記のように、配電線FI,FIIからは、それぞれ30Aおよび40Aしか融通できないので配電線FI,FIIの両者から融通可能な負荷量の合計は70Aとなる。この値は区間SIII−3に救済すべき負荷量として算出された80Aより小さいので、中央装置40は、配電線FI,FIIの両方から区間SIII−3を救済しても、配電線FI,FIIが過負荷になると判定する。この場合には区間SIII−3を救済できなくなる。
【0095】
本発明の実施の形態によれば、区間SIII−3の背後負荷を(通過電流負荷+逆潮流電力量)より大きく、かつ(通過電流負荷+太陽光発電パネルの最大発電可能量の合計)より小さいという関係が満たされるように、その背後負荷の予測値を逐次補正する。これにより、背後負荷の予測値は、20+20=40Aより大きく、かつ、20+60=80Aより小さくなるように逐次補正される。たとえば、40Aと80Aとの間の60Aに補正されれば、配電線FI,FIIの両方から区間SIII−3を救済可能である。したがって中央装置40は、結合開閉器TSW−1,TSW−3を閉路することによって、配電線FI,FIIから区間SIII−3に救済対象負荷量を融通する。区間SIII−3の実際の背後負荷は40Aであるので、区間SIII−3を救済することが可能になる。
【0096】
このように本発明の実施の形態によれば、配電線に連系される分散型電源の発電量による影響を考慮して日負荷予測曲線を逐次補正することで、実際の救済対象負荷との乖離を抑制することができるので、適切な自動救済が可能になる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0098】
1 配電自動化システム、2 発電機、3 送電線、11 配電用変圧器、12 母線、14 継電器、20,30 制御装置、22a,22b,32a,32b 制御用変圧器、23,33 検出部、24,34 制御部、25,35 子局通信部、40 中央装置、41 自動化伝送路、50 柱上変圧器、51 1次側端子、52 2次側端子、55 信号伝送路、60,60a〜60d 需要家設備、62,62a〜62d 太陽光発電パネル、63 インバータ装置、64 負荷装置、65,65a〜65d 逆潮流電力量計、66,66a〜66d 順潮流電力量計、70A 設備データベース、70B オフラインサーバ、70C 自動化サーバ、70D 計量システムサーバ、71 初期予測曲線生成部、72 通過電流負荷算出部、73 設備情報記憶部、74 容量算出部、75 逆潮流電力量算出部、76 受信部、77 補正判定部、78 補正部、79 監視部、80 送信部、100,100A 配電系統、CB 遮断器、F 配電線、S 区間、SW 区分開閉器、TSW 結合開閉器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆潮流を行なう複数の分散型電源が連系された配電線の背後負荷を予測するために用いられる日負荷予測曲線の逐次補正装置であって、
前記背後負荷の予測曲線を予め生成する予測曲線生成部と、
前記配電線を通過する通過電流を計測する第1の計測部と、
前記第1の計測部により計測された前記通過電流に基づいて、通過電流負荷を算出する通過電流負荷算出部と、
前記複数の分散型電源にそれぞれ対応して設けられて、対応する分散型電源から配電線に逆流する電力量である逆潮流電力量を計測する複数の第2の計測部と、
前記複数の第2の計測部により計測された前記逆潮流電力量に基づいて、前記複数の分散型電源の逆潮流電力量の合計を算出する逆潮流電力量算出部と、
前記複数の分散型電源の最大発電可能量の合計値を予め記憶する記憶部と、
前記予測曲線から得られる前記背後負荷が、前記通過電流負荷と前記逆潮流電力量の合計との和よりも大きく、かつ、前記通過電流負荷と前記複数の分散型電源の最大発電可能量の合計との和よりも小さくなる関係が満たされるように前記予測曲線を補正する補正部とを備える、日負荷予測曲線の逐次補正装置。
【請求項2】
前記複数の第2の計測部の各々は、所定の時間間隔で前記逆潮流電力量を計測し、
前記補正部は、前記予測曲線において、前記複数の第2の計測部が逆潮流電力量を計測した最新の時刻以後の背後負荷を補正する、請求項1に記載の日負荷予測曲線の逐次補正装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記最新の時刻における前記背後負荷の予測値が、前記通過電流負荷と前記逆潮流電力量との合計に一致するように、前記予測曲線を補正する、請求項2に記載の日負荷予測曲線の逐次補正装置。
【請求項4】
逆潮流を行なう複数の分散型電源が連系された配電線の背後負荷を予測するために用いられる日負荷予測曲線の逐次補正方法であって、
前記背後負荷の予測曲線を予め生成するステップと、
前記複数の分散型電源の最大発電可能量の合計値を予め準備するステップと、
前記配電線を通過する通過電流を計測する第1の計測部により計測された前記通過電流に基づいて、通過電流負荷を算出するステップと、
前記複数の分散型電源にそれぞれ対応して設けられて、対応する分散型電源から配電線に逆流する電力量である逆潮流電力量を計測する複数の第2の計測部により計測された前記逆潮流電力量に基づいて、前記複数の分散型電源の逆潮流電力量の合計を算出するステップと、
前記予測曲線から得られる前記背後負荷が、前記通過電流負荷と前記逆潮流電力量の合計との和よりも大きく、かつ、前記通過電流負荷と前記複数の分散型電源の最大発電可能量の合計との和よりも小さくなる関係が満たされるように前記予測曲線を補正するステップとを備える、日負荷予測曲線の逐次補正方法。
【請求項5】
前記複数の第2の計測部の各々は、所定の時間間隔で前記逆潮流電力量を計測し、
前記補正するステップは、前記予測曲線において、前記複数の第2の計測部が逆潮流電力量を計測した最新の時刻以後の背後負荷を補正する、請求項4に記載の日負荷予測曲線の逐次補正方法。
【請求項6】
前記補正するステップは、前記最新の時刻における前記背後負荷の予測値が、前記通過電流負荷と前記逆潮流電力量との合計に一致するように、前記予測曲線を補正する、請求項5に記載の日負荷予測曲線の逐次補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−196046(P2012−196046A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57960(P2011−57960)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】