説明

昇降式足場装置

【課題】モータ等に電源供給するための電源ケーブルにおける不具合を回避することのできる昇降式足場装置を提供する。
【解決手段】本発明の昇降式足場装置は、上下方向に延びた第1及び第2タワー1,2と、第1及び第2タワー1,2に沿って昇降自在に設けられた第1及び第2昇降部11,12と、第1及び第2昇降部11,12の略側方方向に延びて第1及び第2昇降部11,12に連結され、かつ第1及び第2昇降部11,12の昇降によって昇降する足場部3と、第1及び第2昇降部11,12を昇降させるための第1及び第2モータ13,14と、第1及び第2モータ13,14に供給するための電源電圧を蓄電するバッテリ33と、バッテリ33からの電圧を所定の電圧に変換して第1及び第2モータ13,14に供給する電圧変換装置32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル等の建築工事において敷設される仮設足場に用いられ、特に作業床が昇降移動可能な昇降式足場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、例えばビル等の建築工事において建築物に沿うようにして設けられ、作業者が作業を行うための作業床を有している。近年では、作業床が上下方向に昇降移動することが可能な昇降式足場装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2881677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記昇降式足場装置の中には、例えば2本のタワーを有し、これらのタワー間に作業床を有する足場部が連結され、この足場部が水平状態を維持したまま昇降するものが知られている。すなわち、この昇降式足場装置は、建築物が立設された地盤において例えば2本のタワーが所定の間隔を隔てて並設され、各タワーに沿って上下方向に昇降可能な昇降部がそれぞれ備えられている。各昇降部は、例えばモータの回転駆動によって昇降される。
【0005】
この昇降式足場装置によれば、両昇降部が同時に昇降されるので、足場部がほぼ水平を維持したまま上昇及び下降する。例えば、足場部が所定の高さ位置まで上昇して停止されると、足場部に搭乗している作業者は、所定の高さ位置で高所作業を行うことができる。
【0006】
上記昇降式足場装置では、足場部を上下方向に昇降移動させるためのモータには、電源電圧を供給するための電源ケーブルがいわゆるバスケット方式で接続されて敷設されている。すなわち、電源ケーブルは、その一部が、地盤上に設けられたバスケットの内部に、とぐろを巻いた状態で収納されてあり、他の一部が、バスケットから空中を介して昇降部に設けられたモータに接続されている。したがって、電源ケーブルは、昇降部が上昇する場合には、バスケットから引き出され、昇降部が下降する場合には、自重によりバスケットの内部に落とし込まれる。
【0007】
しかしながら、電源ケーブルには、例えばキャブタイヤケーブルが用いられるので、電源ケーブルの長さが長ければ長くなるほどケーブル全体の重量が大となりその取扱いが困難となる。そのため、上記したバスケット方式では、昇降部の昇降動作に応じて電源ケーブルがバスケットに適切に収納されないことが生じる。例えば、電源ケーブルがバスケットの上端や昇降式足場装置の筐体等と接触して、電源ケーブルに不測の負荷がかかり、場合によっては断線に至るときがある。また、電源ケーブルは、昇降部が昇降移動するたびに屈曲が繰り返されるため、その耐用年数が非常に短く、定期的に交換する必要がある。
【0008】
さらに、例えば足場部が所定の高さまで上昇し、その際に電源ケーブルが断線するようなことがあれば、モータに電源ケーブルを介して電源電圧が供給されなくなるので、足場部が下降することができず、作業者が地上に降りることができないといった不具合が生じることがある。
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、モータ等に電源供給するための電源ケーブルにおける不具合を回避することのできる昇降式足場装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって提供される昇降式足場装置は、上下方向に延びたタワー部と、前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、前記昇降部の略側方方向に延びて前記昇降部に連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、前記昇降部を昇降させるための駆動手段と、前記駆動手段に供給するための電源電圧を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段からの電圧を所定の電圧に変換して前記駆動手段に供給する電圧変換手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の昇降式足場装置において、前記電圧変換手段は、前記蓄電手段の直流出力電圧を所望のレベルの直流電圧に変換する直流−直流コンバータと、前記直流−直流コンバータの直流出力電圧を所望の三相交流電圧に変換し、前記駆動手段に供給する三相インバータとによって構成されるとよい。
【0012】
本発明の昇降式足場装置において、前記昇降部の昇降時に通常供給される基本電源を伝達するための電源ケーブルと、前記基本電源と前記蓄電手段からの蓄電電源とを切り替えて、前記駆動手段に対して供給する電源切替手段とを備え、前記基本電源による前記駆動手段への供給が不可のとき、前記駆動手段に対する電源供給先が、前記電源切替手段によって前記基本電源から前記蓄電電源に切り替えられるとよい。
【0013】
本発明の昇降式足場装置において、前記タワー部の設置箇所近傍には、前記蓄電手段を充電するための充電手段が備えられ、前記蓄電手段は、前記駆動手段の駆動により前記昇降部が前記タワー部の下部まで下降移動したとき、前記充電手段による充電が可能とされるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄電手段によって駆動手段に対して電源電圧が供給されるので、従来の構成のように、例えばバスケット方式で敷設される電源ケーブルを介して電源電圧を供給する必要がなくなる。したがって、電源供給するための電源ケーブルにおける不具合を回避することができる。すなわち、電源ケーブルを取扱う際の困難さを回避でき、電源ケーブルが断線した場合の復旧処置、及び電源ケーブルの交換処置等を実施する手間を省くことができる。
【0015】
また、本発明によれば、駆動手段に対して電源を供給する電圧変換手段の構成を、蓄電手段の直流出力電圧を所望のレベルの直流電圧に変換する直流−直流コンバータ、及びその直流出力電圧を所望の三相交流電圧に変換する三相インバータといった容易な構成で実現することができる。また、直流−直流コンバータの直流出力を三相インバータに直接的に入力するので、ロスの少ない高効率な電力供給が可能となる。そのため、結果的に蓄電手段の容量を小さくすることができ、省エネルギー化に寄与することができる。
【0016】
また、本発明によれば、基本電源を供給する例えば電源ケーブルが敷設された場合に、当該電源ケーブルが断線したときには、電源切替手段によって電源供給元が基本電源からの蓄電電源に切替えられる。したがって、たとえ電源ケーブルが断線した場合でも駆動手段を駆動して足場部を強制的に下降させることができ、作業者を足場部から地盤上に支障なく降ろすことができる。
【0017】
また、本発明によれば、タワー部の設置箇所近傍に設けられた充電手段によって蓄電手段が充電されるので、蓄電手段を継続的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る昇降式足場装置を示す正面図である。
【図2】第1モータと第1ラックの位置関係を示し、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図3】制御盤及び操作ボックスを示す正面図である。
【図4】昇降式足場装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る昇降式足場装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る昇降式足場装置(以下、単に「足場装置」という)を示す正面図である。この足場装置は、例えば建築工事の仮設足場に用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。
【0021】
足場装置は、図1に示すように、2本のタワーを備えている。足場装置は、所定の高さを有する第1タワー1と、所定の間隔を隔てて並設された第2タワー2と、両タワー1,2に支持された昇降移動可能な足場部3とを備えている。第1タワー1及び第2タワー2は、ほぼ同様の構成とされている。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
【0022】
各タワー1,2は、これを支持するためのベース部4をそれぞれ有している。ベース部4は、略平板状に形成されており、ベース部4の角部には、複数のジャッキ機構5が設けられている。ジャッキ機構5は、それぞれの高さを調整することにより、ベース部4を水平状態に維持するものである。ベース部4には、アウトリガー機構6が設けられている。アウトリガー機構6は、ベース部4から放射状に延びた複数の部材からなり、各タワー1,2を地盤Gに対して支持するためのものである。ベース部4には、図示しない移動用車輪が設けられ、移動用車輪は、各タワー1,2を建築現場の所定位置に移動させる。
【0023】
第1及び第2タワー1,2は、外形が略直方体の枠状に形成された枠部材7が複数個連接された構成とされている。具体的には、第1及び第2タワー1,2は、ベース部4の中央部において最下段の枠部材7が取付けられ、その枠部材7の上方に他の枠部材7が積み重ねられて構成される。
【0024】
第1タワー1の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第1ラック8が設けられている。第1ラック8は、長尺状に形成され、図2(b)に示すように、その一方側端面に複数のピニオン10が歯合される歯合部8aが形成されている。同様に、第2タワー2の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第2ラック9が設けられている。第2ラック9は、第1ラック8と同様の構成とされている。
【0025】
第1タワー1には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第1昇降部11が設けられている。第1昇降部11は、高さ方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。第1昇降部11は、図略のガイドローラを介して枠部材7の外表面に沿って昇降される。また、第2タワー2には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第2昇降部12が設けられている。第2昇降部12は、第1昇降部11と同様の構成とされている。
【0026】
第1昇降部11には、図1及び図2に示すように、これを昇降させるための第1モータ13が取付けられている。第1モータ13は、誘導モータとされ、その回転を停止させるブレーキ機構が備えられている。なお、第1モータ13は、実際には並設された2つのモータによって構成され、一方のモータが故障した場合等に他方のモータを使用するといった非常時の安全性を考慮したものとされている。よって、以下の説明では、2つのモータを総称して第1モータ13と呼称する。
【0027】
図2に示すように、第1モータ13の回転軸13aには、ピニオン10が取付けられている。このピニオン10には、第1ラック8の歯合部8aが歯合されている。第1モータ13が回転駆動されると、ピニオン10と第1ラック8とが協動し、第1昇降部11が第1タワー1の枠部材7に沿って昇降移動される。
【0028】
一方、第2昇降部12には、これを昇降させるための第2モータ14が取付けられている。第2モータ14は、第1モータ13と同様の構成とされている。
【0029】
第1昇降部11には、それを覆うようにかつ前後方向(図1において紙面の手前又は奥行き方向)に水平移動自在な第1水平移動部15が設けられている。また、第2昇降部12には、それを覆うようにかつ前後方向に水平移動自在な第2水平移動部16が設けられている。第1及び第2水平移動部15,16は、足場部3を前後方向に移動させるためのものである。第1及び第2水平移動部15,16は、それぞれ前後方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。
【0030】
足場部3は、第1及び第2水平移動部15,16の間及び第1及び第2水平移動部15,16の側方に略水平方向に延びて設けられている。足場部3は、略直方体の枠状に形成された本体部3aと、本体部3aの上面に配された作業床(図略)と、作業者の転落を防止するための手摺3bとを有している。
【0031】
より詳細には、足場部3は、第1及び第2水平移動部15,16の間に設けられた中間部18と、第1水平移動部15の左方向に延びた第1側方部19と、第2水平移動部16の右方向に延びた第2側方部20とによって構成されている。第1側方部19には、左方向に進退自在とされた第1進退部21が設けられている。また、第2側方部20には、右方向に進退自在とされた第2進退部22が設けられている(図1は、第1進退部21及び第2進退部22がそれぞれ進出した状態を示している。)。
【0032】
第1水平移動部15の周囲には、中間部18と第1側方部19とを結ぶ第1補助部23が設けられ、第2水平移動部16の周囲には、中間部18と第2側方部20とを結ぶ第2補助部24が設けられている。これら第1補助部23及び第2補助部24が設けられることにより、足場部3の作業床は、右端に配される第1進退部21から左端に配される第2進退部22にわたってその作業床がほぼ面一とされる。したがって、足場部3に搭乗した作業者は、第1進退部21から第2進退部22に一旦足場部3から降りることなく移動することができる。
【0033】
第1及び第2タワー1,2には、足場部3の中間部18、第1側方部19及び第2側方部20を担持支持するための担持機構25が設けられている。
【0034】
第1側方部19及び第2側方部20の手摺3bには、制御盤27がそれぞれ設けられている。制御盤27には、制御部31(後述)が内装されている。制御盤27の前面には、図3に示すように、モニタ部28及び非常停止ボタン29が設けられている。モニタ部28は、タッチパネルを有する液晶表示器によって構成されている。非常停止ボタン29は、緊急時に足場部3の昇降を強制的に停止するために押下されるものである。
【0035】
2つの制御盤27のうちいずれか一方の制御盤27には、操作ボックス30が接続されている。操作ボックス30は、足場部3の上昇及び下降等の昇降動作を作業者が操作入力するためのものである。操作ボックス30は、図3の円内に示すように、上昇スイッチ30a及び下降スイッチ30bを備えている。
【0036】
上昇スイッチ30aは、足場部3を上昇させるためのものであり、下降スイッチ30bは、足場部3を下降させるためのものである。なお、上昇スイッチ30a及び下降スイッチ30bは、押下した場合にのみ制御部31に操作信号が伝達されるモーメンタリ型のスイッチとされる。
【0037】
図4は、本足場装置の電気的構成を示すブロック図である。この足場装置では、制御盤27に例えばシーケンサからなる制御部31が備えられている。制御部31には、モニタ部28及び非常停止ボタン29が接続されている。制御部31は、モニタ部28に対して表示すべき表示データを送出するとともに、モニタ部28からのタッチパネルによる操作信号に基づいて各種のデータ処理を行う。制御部31は、非常停止ボタン29からの押下信号が入力されると、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を無条件で強制的に停止させるよう制御する。
【0038】
制御部31には、第1モータ13及び第2モータ14が接続されている。制御部31は、第1及び第2モータ13,14に対して駆動信号をそれぞれ送出する。これにより、第1及び第2モータ13,14は、この駆動信号に応じて独立にオン、オフ動作する。
【0039】
制御部31には、操作ボックス30が接続され、操作ボックス30から上昇スイッチ30a及び下降スイッチ30bによる操作信号が入力される。制御部31は、それらの操作信号に基づいて第1及び第2モータ13,14をオン、オフ動作させ、これにより、足場部3を昇降動作させる。
【0040】
本実施形態では、第1及び第2モータ13,14には、電圧変換装置32を介してバッテリ33が接続されている。バッテリ33は、第1及び第2モータ13,14並びに制御盤27に対して電源電圧を供給するためのものである。すなわち、本第1実施形態に係る足場装置では、従来の構成のように第1及び第2モータ13,14に電源電圧が電源ケーブルによって供給されることに代えて、電源電圧がバッテリ33によって供給される構成とされている。
【0041】
バッテリ33は、出力電圧として例えばDC48Vを出力する。バッテリ33は、充電装置(図略)によって蓄電することが可能とされている。充電装置は、地盤G上の所定位置に設置され、バッテリ33に充電を行うためのケーブルと、その端部に設けられたコネクタ(いずれも図略)とが接続されている。バッテリ33の外表面には、このコネクタが接続可能な接続口(図略)が形成されている。
【0042】
例えば足場部3が下降して最下位位置(作業者が乗降可能な位置)にある場合、バッテリ33の接続口には、作業者によって充電装置のケーブルのコネクタが接続される。これにより、バッテリ33は、充電装置によって蓄電される。なお、充電装置は、例えば下部にキャスター等が設けられ、移動自在とされてもよい。
【0043】
電圧変換装置32は、DC−DC(直流−直流)コンバータ34と、三相インバータ35と、DC−AC(直流−交流)コンバータ36とを備えている。DC−DCコンバータ34は、バッテリ33の直流出力電圧(例えばDC48V)を所望のレベルの直流電圧(例えばDC300V)に変換するものである。三相インバータ35は、DC−DCコンバータ34の直流出力電圧を所望の三相交流電圧に変換し、第1及び第2モータ13,14に供給するものである。DC−ACコンバータ36は、バッテリ33の直流出力電圧を所望のレベルの交流電圧(例えばAC100V)に変換し、制御盤27に供給するものである。
【0044】
バッテリ33には、第1及び第2モータ13,14への電源供給経路として、DC−DCコンバータ34が接続され、DC−DCコンバータ34には、三相インバータ35が接続され、三相インバータ35には、第1及び第2モータ13,14がそれぞれ接続されている。また、バッテリ33には、制御盤27への電源供給経路として、DC−ACコンバータ36が接続されている。
【0045】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0046】
本足場装置では、作業者によって操作ボックス30を介して上昇スイッチ30a又は下降スイッチ30bが押下操作されると、制御部31にその操作信号が入力され、制御部31は、その操作信号に応じて第1及び第2モータ13,14を駆動する。第1及び第2モータ13,14が駆動されると、第1及び第2タワー1,2が上昇又は下降され、すなわち足場部3が上昇又は下降される。
【0047】
このとき、第1及び第2モータ13,14には、バッテリ33から電圧変換回路32を介して三相交流電圧が供給される。より詳細には、バッテリ33の直流出力電圧は、電圧変換装置32のDC−DCコンバータ34によってレベル変換される。次いで、DC−DCコンバータ34の出力電圧は、三相インバータ35によって三相交流電圧に変換される。第1及び第2モータ13,14には、三相インバータ35の出力電圧である三相交流電圧が供給される。
【0048】
また、制御盤27には、バッテリ33から電圧変換回路32を介して交流電圧が供給される。より詳細には、バッテリ33の直流出力電圧は、DC−ACコンバータ36によって交流電圧に変換されて制御盤27に供給される。当該交流電圧は、制御盤27内の電源電圧として用いられる。
【0049】
このように、第1及び第2モータ13,14への電源供給は、従来の構成のように例えばバスケット方式で敷設される電源ケーブルにより行うのではなく、バッテリ33及び電圧変換回路32を介して行うので、電源ケーブルが敷設されることによる不具合を回避することができる。すなわち、電源ケーブルを取扱う際の困難さを回避でき、電源ケーブルが断線した場合の復旧処置、及び電源ケーブルの交換処置等を実施する手間を省くことができる。
【0050】
また、電圧変換回路32は、バッテリ33の直流出力電圧を所望のレベルの直流電圧に変換するDC−DCコンバータ34、及びその直流出力電圧を所望の三相交流電圧に変換する三相インバータ35といった容易な構成で実現することができる。さらに、上記構成によれば、DC−DCコンバータ34の直流出力を三相インバータ35に直接的に入力するので、ロスの少ない高効率な電力供給が可能となる。そのため、結果的にバッテリ33の容量を小さくすることができ、省エネルギー化に寄与することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、バッテリ33は、例えば大容量の電圧が蓄電可能であればよいのであるが、例えば少ない容量しか蓄電できないのであれば、少なくとも足場部3を二度程度、昇降往復させることが可能なくらいの、第1及び第2モータ13,14を駆動できる容量を有することが望ましい。
【0052】
また、上記構成において、足場装置が作業者の乗降が可能な最下位位置に達した場合には、作業者によって地盤G上に設置された充電装置(図略)によりバッテリ33に対して充電されればよい。したがって、作業工程において充電時間を許容することができるのであれば、バッテリ33を継続して用いることができる。なお、この場合、例えばバッテリ33の容量の低下を外部に報知させるようにしてもよい。報知の方法としては、パトライト等を用いて表示又は音声等で行うようにすればよい。
【0053】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る足場装置の電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る足場装置は、第1及び第2モータ13,14並びに制御盤27に対して電源電圧を供給するための電源ケーブルが敷設されている点及び電源供給を切替えるための切替装置38が設けられている点で、上記した第1実施形態に係る足場装置と相違する。その他の構成については、第1実施形態に係る足場装置の構成と略同様である。
【0054】
この第2実施形態の足場装置は、例えば足場部3が所定の高さまで上昇され、その際に何らかの原因で電源ケーブルが断線し、第1及び第2モータ13,14に電源電圧が供給されなくなり、下降不可となった非常時に用いることができるものである。
【0055】
切替装置38は、電源ケーブルを介して供給される基本電源(通常、地盤G上に設けられた電源装置(図略)から供給される)と、バッテリ33からの蓄電電源とを切り替えて、いずれかの電源を第1及び第2モータ13,14並びに制御盤27に対して供給するものである。切替装置38は、例えば電源切替用の電磁接触器からなり、作業者によって手動で切り替え可能とされている。
【0056】
切替装置38は、通常、電源ケーブル側に設定されており、この状態では、第1及び第2モータ13,14並びに制御盤27に電源ケーブルからの基本電源が供給される。この際、上記したように、電源ケーブルが断線して足場部3が下降不可となった場合、作業者によって手動でバッテリ33側(図5参照)に切り替えられる。これにより、第1及び第2モータ13,14には、バッテリ33からDC−DCコンバータ34及び三相インバータ35を介して三相交流電圧が供給される。また、制御盤27には、バッテリ33からDC−ACコンバータ36を介して交流電圧が供給される。
【0057】
このように、足場部3が所定の高さ位置で下降不可となった場合、バッテリ33からの出力電圧によって第1及び第2モータ13,14並びに制御盤27に電源電圧が供給される。そのため、供給された電源電圧によって第1及び第2モータ13,14が駆動され、足場部3が下降動作を行うことができる。したがって、足場部3は強制的に下降され、作業者は、足場部3から地盤G上に支障なく降りることができる。
【0058】
なお、第2実施形態に係る足場装置では、バッテリ33は、少なくとも一度だけ足場部3を下降させるための、第1及び第2モータ13,14を駆動させる容量を有しておればよい。
【0059】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態では、第1及び第2タワー1,2、足場部3、第1及び第2昇降部11,12、制御盤27、バッテリ33、電圧変換装置32並びに切替装置38等の構成は、適宜設計変更可能である。
【0060】
また、本実施形態の足場装置では、第1タワー1及び第2タワー2を有していたが、この構成に限らず、例えば一つのタワーで構成されていてもよい。また、制御盤27は、いずれか一方の制御盤27のみが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 第1タワー
2 第2タワー
3 足場部
11 第1昇降部
12 第2昇降部
13 第1モータ
14 第2モータ
27 制御盤
30 操作ボックス
31 制御部
32 電圧変換装置
33 バッテリ
34 DC−DCコンバータ
35 三相インバータ
36 DC−ACコンバータ
38 切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びたタワー部と、
前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
前記昇降部の略側方方向に延びて前記昇降部に連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、
前記昇降部を昇降させるための駆動手段と、
前記駆動手段に供給するための電源電圧を蓄電する蓄電手段と、
前記蓄電手段からの電圧を所定の電圧に変換して前記駆動手段に供給する電圧変換手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場装置。
【請求項2】
前記電圧変換手段は、
前記蓄電手段の直流出力電圧を所望のレベルの直流電圧に変換する直流−直流コンバータと、
前記直流−直流コンバータの直流出力電圧を所望の三相交流電圧に変換し、前記駆動手段に供給する三相インバータとによって構成される、請求項1に記載の昇降式足場装置。
【請求項3】
前記昇降部の昇降時に通常供給される基本電源を伝達するための電源ケーブルと、
前記基本電源と前記蓄電手段からの蓄電電源とを切り替えて、前記駆動手段に対して供給する電源切替手段とを備え、
前記基本電源による前記駆動手段への供給が不可のとき、前記駆動手段に対する電源供給先が、前記電源切替手段によって前記基本電源から前記蓄電電源に切り替えられる、請求項1又は2に記載の昇降式足場装置。
【請求項4】
前記タワー部の設置箇所近傍には、前記蓄電手段を充電するための充電手段が備えられ、
前記蓄電手段は、
前記駆動手段の駆動により前記昇降部が前記タワー部の下部まで下降移動したとき、前記充電手段による充電が可能とされる、請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降式足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−184636(P2012−184636A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63175(P2011−63175)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000167233)光洋機械産業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】