説明

昇降浴槽の安全システム

【課題】入浴者を搭載した搭載部を昇降浴槽から外部へ移送する際に安全を確保できる。
【解決手段】昇降浴槽1には、ストレッチャーの台車が昇降浴槽にロックされていることを検知するロック検知部を設ける。固定浴槽に対して可動浴槽を昇降させるリフターの上部テーブル16に下降端作動片26と下降中間作動片27を設ける。下部テーブル15には下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4を設ける。下降中間作動片27を下降端作動片26より下方に設置することで、下降中間リミットスイッチLS4に先に当接してONする。台車が昇降浴槽1にロックされていないことをロック検知部で検知した場合に、可動浴槽は担架本体が移動できない下降中間位置に停止する。台車が昇降浴槽1にロックされている場合には、下降中間リミットスイッチLS4がONしても可動浴槽は停止せず、下降端リミットスイッチLS3に当たるまで降下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば身体の不自由な人等の入浴者を載せたストレッチャーや入浴用車椅子等の搭載部を昇降浴槽の支持台に移動させた状態で、可動浴槽を昇降させることで入浴させることができるようにした昇降浴槽の安全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体が不自由で介助が必要な者(以下、要介助者と記す。)を入浴させる際に用いられる補助具として、例えば下記特許文献1、2に記載された昇降浴槽が提案されている。昇降浴槽は固定浴槽に対して昇降可能な可動浴槽を備えている。昇降浴槽を用いて要介助者を入浴させる場合、先ず、要介助者を載置させた、例えばストレッチャーの台車を昇降浴槽の側部に位置決め固定する。
この状態で、昇降浴槽の昇降可能で湯を満たした可動浴槽を最下端位置に保持する。そして、ストレッチャーの台車に支持されて要介助者を載置させた担架本体を台車のレールから固定浴槽の支持台に設けたレールまで移動させて入浴状態にさせる。
【0003】
昇降浴槽内で支持台上に固定支持される担架本体に対して、湯を満たした可動浴槽を最上端位置まで上昇させて湯面が例えば肩または首まで到達することで入浴状態に保持する。入浴終了後には、可動浴槽を最下端位置まで降下させて支持台上から担架本体を台車に移動させることになる。
従来の昇降浴槽は、担架本体に載せられた要介助者が入浴状態になる最上端位置と、担架本体を支持台とストレッチャーとの間で出し入れ可能な最下端位置と、の間を可動浴槽が昇降可能なように上昇スイッチと降下スイッチとがそれぞれ設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−56905号公報
【特許文献2】特開2000−116744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、入浴終了後の要介助者を浴槽から退出させる場合等に、可動浴槽を最下端位置まで降下させた際、ストレッチャーの台車が昇降浴槽の側部にロックされてない場合があり、このような状態で、誤って担架本体を昇降浴槽内の支持台から台車へ移動させると、担架本体が台車に載らず、昇降浴槽外で床面に落下してしまうことがあった。
また、可動浴槽を最上端位置まで上昇させる際、入浴者が小柄であったり斜めに傾斜した姿勢で担架本体に搭載されている場合、湯を満たした可動浴槽を最上端位置まで上昇させると水没するおそれがあった。しかも、介助者が可動浴槽を上昇させるスイッチを押した後、他の作業をして要介助者から目を逸らしていると、上昇する可動浴槽の湯面により担架本体上の要介助者が水没したり湯面が口元まで到達して湯を飲み込んだりするおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、入浴者を搭載した搭載部を昇降浴槽から外部へ移送する際に入浴者の安全を確保できるようにした昇降浴槽の安全システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による昇降浴槽の安全システムは、昇降浴槽内の支持台に入浴者を載置させた搭載部を保持した状態で、可動浴槽を昇降させて入浴者の入浴と退出を行えるようにした昇降浴槽において、搭載部を受ける台車が昇降浴槽にロックされていることを検知するロック検知部と、該ロック検知部で台車がロックされていないことを検知した場合に可動浴槽を降下させる際に搭載部が入退出可能な下降端位置より高い下降中間位置で停止させる下降中間停止手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明による昇降浴槽の安全システムによれば、入浴終了後に可動浴槽を下降端位置に降下させて搭載部を昇降浴槽から排出させる際、台車が昇降浴槽にロックされていないことをロック検知部で検知した場合、可動浴槽を下降端位置より高い下降中間位置で下降中間停止手段によって停止させることができる。これにより、搭載部が可動浴槽内から外部に移送することを防止できる。
【0008】
また、可動浴槽を降下させる際、ロック検知部で台車がロック状態にあることを確認した場合に、搭載部を下降中間手段で停止させることなく下降端位置まで下降させる下降制御部を備えることが好ましい。
入浴ユニットの台車が昇降浴槽にロックされている場合、下降制御部によって、下降する可動浴槽を下降中間位置で停止させることなく下降端まで降下させて下降端停止手段で停止させることで、搭載部を昇降浴槽から外部に固定した台車へ落下させることなく移送できる。
【0009】
また、下部テーブルに対して昇降可能な上部テーブルを可動浴槽に連結し、上部テーブルと下部テーブルの一方に下降中間停止手段と下降端停止手段とを備え、他方に下降中間停止手段を作動させる下降中間作動部と下降端停止手段を作動させる下降端作動部とを備え、可動浴槽の下降時に先に下降中間作動部が下降中間停止手段をONさせるようにすることが好ましい。
上部テーブルと共に上部テーブルに連結された可動浴槽を降下させることで、下部テーブルとの間で、先に下降中間作動部が下降中間停止手段を導通させ、入浴ユニットの台車が昇降浴槽にロックされているかいないかをロック検知部で検知することで、上部テーブル及び可動浴槽を、搭載部を外部へ移送できない下降中間位置で停止させるか、搭載部を外部へ移送できる下降端位置まで降下させるかを識別できる。
【0010】
また、可動浴槽を上昇させる際、上昇端位置より下方の上昇中間位置で停止させる上昇中間停止手段を備えていることが好ましい。
入浴時に可動浴槽を上昇させる際、介助者が可動浴槽内の搭載部に搭載された入浴者から目を逸らした場合でも、可動浴槽は上昇中間停止手段によって上昇端位置に到達しない上昇中間位置で停止させられるから、湯面が上昇しすぎて入浴者が水没したり湯を飲んだりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による昇降浴槽の安全システムによれば、台車が昇降浴槽にロックされていることを検知するロック検知部と、該ロック検知部で台車がロックされていないことを検知した場合に可動浴槽を降下させる際に搭載部を入退出可能な下降端位置より高い下降中間位置で停止させる下降中間停止手段とを備えたから、台車が昇降浴槽にロックされていないことを検知した場合には、搭載部を下降端位置より高い下降中間位置で停止させることになるため搭載部を昇降浴槽から外部へ移送させることはできず、搭載部を可動浴槽から外部へ移送する際に下方に落下することを防ぐことができる。また、その場合でも、要介助者を搭載部から外して引き上げることができる。そのため、搭載部の退出安全性を確保すると共に要介助者を搭載部から外して引き上げて昇降浴槽から退出させることができて作業性を良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による昇降浴槽を示すものであり、(a)は昇降浴槽とリフターとを示す正面図、(b)は同じく側面図である。
【図2】図1に示す昇降浴槽と担架本体を示すもので、可動浴槽が下降端位置にある正面図である。
【図3】図1に示すリフターの正面図である。
【図4】図3に示すリフターの上部テーブルを除いた平面図である。
【図5】図1(b)に示す昇降浴槽の下降端リミットスイッチと下降中間リミットスイッチを説明する拡大図である。
【図6】昇降浴槽の安全装置のブロック図である。
【図7】昇降浴槽に担架本体を設置した状態で、可動浴槽を上昇させた場合の担架本体と可動浴槽との関係を示す正面図であり、(a)は可動浴槽が上昇端位置にある正面図、(b)は上昇中間位置にある正面図である。
【図8】昇降浴槽に担架本体を設置した状態で、可動浴槽が下降中間位置に下降した正面図である。
【図9】昇降浴槽の可動浴槽において、操作パネルを示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示す昇降浴槽1は、床面に設置された固定浴槽2に対してその外側に略四角形筒状に形成された可動浴槽3が昇降可能に保持されている。図2は可動浴槽3が固定浴槽2の下降端位置(最下端位置)まで降下した状態を示すものであり、固定浴槽2の上部中央には、例えばストレッチャーの台車4に載置される担架本体5を固定保持するための支持台6が設けられている。支持台6には一対のレール7が設けられ、このレール7の上を担架本体5の車輪8が摺動することで図示しないストレッチャーの台車4に設けたレールから支持台6のレール7へ担架本体5を移動させて位置決め固定可能とされている。
担架本体5は、略板状で要介助者の臀部から下半身を受ける着座部5aと背部及び頭部からなる上半身を受ける背もたれ部5bとを備え、着座部5aの両側部に設けた下部側部8aと、背もたれ部5bの両側部に設けた上部側部8bとを備えている。背もたれ部5bは着座部5aに対して傾斜角度を調整可能であり、図に示す通常の状態では背もたれ部5bを上方に傾斜して保持させている。
【0014】
また、昇降浴槽1の固定浴槽2には、側部にストレッチャーの台車4をロックして固定するための係止部10が取り付けられており、この係止部10と固定浴槽2との間隙に可動浴槽3が昇降して出入り可能とされている。係止部10には、ストレッチャーの台車4に設けたロック機構を固定浴槽2に係止させるロック手段11と、ロック手段11とロック機構とのロック状態を検知するロック検知部12とが設けられている。
図1及び図3に示す昇降浴槽1には、可動浴槽3を昇降させるためのリフター14が設けられている。リフター14は、固定浴槽2に取り付けられていてベースフレーム13上に設けられた下部テーブル15と、可動浴槽3に取り付けられた上部テーブル16と、両テーブル15,16の対向する両側面部に略X字状に交差して設けられていて上部テーブル16を昇降させる各一対のアーム部17とが設けられている。上部テーブル16と下部テーブル15は例えば平面視略四角枠形状に形成されている。
【0015】
図3に示すアーム部17は、第一アーム部18と第二アーム部19が長さ方向の中央の支軸20で回転可能に支承されており、第一アーム部18にはアーム部17を昇降させるための油圧シリンダ21が連結されている。油圧シリンダ21は管路22を介して油圧ポンプ23に連結されている。
図3及び図4に示すアーム部17において、例えば第二アーム部19はその下端の軸部19aが下部テーブル15に回転可能に支持されており、上端の軸部19bは上部テーブル16に形成した長穴16aに摺動可能に支持されている。また、第一アーム部18はその下端に軸部18bを有する車輪18cが下部テーブル15に摺動可能に支持され、上端の軸部18aが上部テーブル16に回転可能に支持されている。
【0016】
また、図4に示す平面図は、図の上下に示す二組のアーム部17のうち図の下側に示す一組のアーム部17は支軸20を中心として下方に位置する第一アーム部18と第二アーム部19を示し、図の上側に示す他の組のアーム部17はその中心線に対して下側が下部の第一アーム部18及び第二アーム部19を示し、図の上側が上部の第一アーム部18及び第二アーム部19を示している。
図4において、下部テーブル15の中央には上部テーブル16及び可動浴槽3を中央で昇降可能に支持するガイド支柱24が設けられている。
そのため、油圧シリンダ21を伸張させることによってアーム部17の第一アーム部18を起立させる方向に押すと、第一アーム部18及び第二アーム部19は一方の軸部18a,19a(図3で右側)を中心に揺動しつつ起立するため、他方の軸部18bは下部テーブル15上を車輪18cによって、他方の軸部19bは上部テーブル16の長穴16aに沿って、一方の軸部18a,19aに近づく方向に摺動する。これによって上部テーブル16が下部テーブル15と平行に上昇するため、上部テーブル16に連結された可動浴槽3が上昇することになる。可動浴槽3が下降する場合も油圧シリンダ21を収縮させることで、アーム部17が逆方向に同様に作動する。
【0017】
図3及び図4において、下部テーブル15には、一方の第一アーム部18の軸部18bの水平移動を検知する上昇端リミットスイッチLS1と、他方の第一アーム部18の軸部18bの水平移動を検知する上昇中間リミットスイッチLS2とがそれぞれ設けられている。
ここで、上昇端リミットスイッチLS1は、支持台6に要介助者が搭載された担架本体5が固定された状態において、可動浴槽3が上昇端位置(最上端位置)まで上昇した位置で停止させるものである(図7(a)参照)。そのために、図4に示すように、上昇端リミットスイッチLS1は、下部テーブル15に摺動可能に設けられた軸部18bによって、第二アーム部19の軸部19a側に最も近接した位置で叩かれて検知できるように配置されている。
【0018】
また、上昇中間リミットスイッチLS2は、可動浴槽3が上昇端位置より高さが若干低い上昇位置で停止させるものである(図7(b)参照)。そのために、図4に示すように、上昇中間リミットスイッチLS2は、下部テーブル15に摺動可能に設けられた軸部18bによって、第二アーム部19の軸部19aに対して上昇端リミットスイッチLS1より若干早い段階で叩かれて検知できるように配置されている。
そのため、図4に示すように、上昇端リミットスイッチLS1の方が上昇中間リミットスイッチLS2より第二アーム部19の軸部19aに近い位置に設置されている。
【0019】
また、図5において、下部テーブル15の一端辺部には、下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4がそれぞれ設けられている。また、上部テーブル16の下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4に対向する位置には、各リミットスイッチLS3とLS4をそれぞれ叩いて下降する可動浴槽3を停止させるための作動片26,27が設けられている。
下降端リミットスイッチLS3を叩く下端作動片26は下降中間リミットスイッチLS4を叩く中間作動片27よりも下部テーブル16から離間した位置にある。そのため、下降端リミットスイッチLS3を下端作動片26で叩いて可動浴槽3を停止させた状態で、可動浴槽3は下降端位置にあり(図2参照)、支持台6に取り付けられた担架本体5を可動浴槽3内からストレッチャーの台車4へ移動可能である。また、下降中間端リミットスイッチLS4を中間作動片27で叩いて可動浴槽3を停止させた状態で、可動浴槽3は下降端位置より若干上方にあり(図8参照)、支持台6に取り付けられた担架本体5を可動浴槽3内から台車4へ移動不可能である。
【0020】
図6は可動浴槽3の上昇と下降を制御する安全装置29を示すブロック図である。図6に示す安全装置29において、上昇端リミットスイッチLS1と上昇中間リミットスイッチLS2は制御手段30における上昇制御部31に接続されている。これらリミットスイッチLS1、LS2のいずれかがONすると、油圧シリンダ21に停止信号を出力して可動浴槽3の上昇を停止させる。
また、下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4は制御手段30の下降制御部32に接続されている。リミットスイッチLS3、LS4のいずれかがONすると、油圧シリンダ21に停止信号を出力して可動浴槽3の下降を停止させる。
【0021】
可動浴槽3が上昇して軸部18bが上昇端リミットスイッチLS1を叩いて停止した場合には、図7(a)に示すように可動浴槽3は担架本体5の背もたれ部5bにおける頭部の一部のみが可動浴槽3から突出する上昇端位置にある。また、軸部18bが上昇中間リミットスイッチLS2を叩いて停止した場合には、図7(b)に示すように可動浴槽3は担架本体5の上昇端位置より若干降下した背もたれ部5bの頭部全体が可動浴槽3から突出した上昇中間位置にある。
また、可動浴槽3が下降して上部テーブル16が下降端リミットスイッチLS3を叩いて停止した場合には、図2に示すように可動浴槽3は担架本体5と支持台6の上部が可動浴槽3から突出する下降端位置にある。この下降端位置で担架本体5を昇降浴槽1の支持台6とストレッチャーの台車4との間で出し入れ可能である。また、上部テーブル16が下降中間リミットスイッチLS4を叩いて停止した場合には、図8に示すように可動浴槽3は担架本体5の背もたれ部5bが突出して着座部5aが隠れた下降中間位置にある。
【0022】
また、ストレッチャーの台車4が昇降浴槽1の固定浴槽2に係止されているか否かを判別するロック検知部12も下降制御部32に接続されている。そして、油圧シリンダ21によって可動浴槽3が降下する際、ロック検知部12で台車4がロックされていることを検知した場合には下降中間リミットスイッチLS4がONしても可動浴槽3の下降を停止せず、下降端リミットスイッチLS3がONすると可動浴槽3の下降を停止させる。しかし、ロック検知部12で台車4がロックされていないことを検知した場合には下降中間リミットスイッチLS4がONした時点で可動浴槽3を停止させる。
【0023】
なお、図9は昇降浴槽1の可動浴槽3の上面に設けた操作パネル35を示す図である。操作パネル35には湯の供給と排出等の処理を行う複数の操作ボタンが設けられている。操作パネル35は各種コードを束ねて接続すると共に図示しない軸体を中心に回動可能とされており、昇降浴槽1のそばで作業する介助者が操作し易いように任意の方向を向かせることができるようになっている。
また、昇降浴槽1の側面に立って作業する介助者が操作し易いように、可動浴槽3の両側面に別の操作部36がそれぞれ設けられている。この操作部36に設けられた操作ボタンは例えば可動浴槽3の上昇ボタン37、下降ボタン38、停止ボタン39等である。上昇ボタン37が押されると可動浴槽3が上昇を開始し、停止ボタン39が押されるか、上昇中間リミットスイッチLS2がONすることで停止させられる。その後、上昇端リミットスイッチLS1がONするまでは、上昇ボタン37は押している間だけ可動浴槽3を上昇させるものである。下降ボタン38は押されると可動浴槽3が下降を開始し、停止ボタン39が押されるか、リミットスイッチLS3、LS4がONすることで停止させられる。
【0024】
本実施形態による昇降浴槽1の安全システムは上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
先ず、図2において、ストレッチャーの台車4を昇降浴槽1における固定浴槽2の係止部10のロック手段11にロックした状態で、可動浴槽3を下降端位置に保持する。そして、要介助者を搭載した担架本体5を台車4から可動浴槽3内の支持台6に移送して固定する。
この状態から、操作部36の上昇ボタンを押すと、湯を満たした可動浴槽3が支持台6上の担架本体5の上方に向けて上昇する。即ち、図3に示すように、油圧シリンダ21の伸張作動によりリフター14の第一アーム部18が揺動しつつ持ち上げられ、支軸20によって連結された第二アーム部19が第一アーム部18と一体に揺動しつつ持ち上げられる。
【0025】
リフター14は第一アーム部18と第二アーム部19の各一端の軸部18a、19aが上部テーブル16及び下部テーブル15に回転可能に支持されているため、第一及び第二アーム部18,19の持ち上がり動作により、各アーム部18,19の他端側の軸部18b、19bが上部テーブル16及び下部テーブル15に沿って一方の軸部18a,19aに近づく方向に直線移動する。そして、第一及び第二アーム部18、19の持ち上がりによって、下部テーブル15に対して上部テーブル16が平行状態を維持しながら上昇する。これにより、上部テーブル16に連結された可動浴槽3が上昇する。
可動浴槽3の上昇に応じて、図4に示すように、第一アーム部18及び第二アーム部19の他端側の軸部18b、19bが下部テーブル15及び上部テーブル16に沿って一端側の軸部18a,19a方向に摺動すると、一対の下部テーブル15に沿って移動する軸部18bの一方が先に上昇中間リミットスイッチLS2を叩く。これを検知した上昇制御部31から停止信号が油圧シリンダ21に出力されてリフター14の作動を停止させる。
【0026】
この状態で、湯を満たした可動浴槽3は担架本体5における背もたれ部5bの頭部を可動浴槽3から上部に突出させた上昇中間位置で停止し、要介助者は入浴状態になる。そのため、担架本体5に搭載された要介助者は入浴状態になると共に頭部が湯面から突出しており、誤って湯を飲み込んだり水没したりするおそれはない。また、介助者は可動浴槽3を上昇させる際に上昇ボタン37を押しながら他の仕事をすることがあり、介助者が担架本体5に搭載された要介助者から目を離した場合でも、可動浴槽3は必ず上昇中間位置で停止するから要介助者が水没するおそれはない。
【0027】
なお、要介助者が例えば大柄である場合、可動浴槽3の上昇中間位置で湯面が要介助者の肩口より低いことがあり、その場合には再度上昇スイッチ37を押すことで油圧シリンダ21を駆動させて可動浴槽3を上昇中間位置から更に上昇させて湯面を上昇させる。そして、可動浴槽3の上昇によって他方の軸部18bが更に下部テーブル15に沿って一方の軸部18a側に移動すると、上昇端リミットスイッチLS1を叩くことで油圧シリンダ21を停止させ、可動浴槽3を図7(a)に示す上昇端位置で停止させる。
この状態で、担架本体5の背もたれ部5bの頭部の一部は可動浴槽3から突出しており、大柄な要介助者を適切な湯面で入浴状態にできる。或いは、上昇ボタン37を離すことで、上昇端位置に至る前の任意の高さ位置で担架本体5を停止させることができる。
【0028】
次に、入浴終了後に要介助者を昇降浴槽1から退出させる場合、操作部36の降下ボタン38を押すことで油圧シリンダ21を収縮作動させて第一アーム部18及び第二アーム部19を一方の軸部18a,19a回りに下方に回動させつつ降下させる。しかも、他方の軸部18b、19bが下部テーブル15及び上部テーブル16に沿って一方の軸部18a、19aから離間する方向に摺動し、上部テーブル16が下部テーブル15と平行状態を維持しながら降下することで可動浴槽3も降下する。
そして、可動浴槽3の降下が進むと、上部テーブル16に設けた下降中間作動片27が下部テーブル15に設けた下降中間リミットスイッチLS4を叩く。このとき、固定浴槽2の係止部10にストレッチャーの台車4がロックされている場合には、下降制御部32にはロック検知部12からの検知信号が入力されているため、そのまま可動浴槽3の下降を継続する。
【0029】
そして、上部テーブル16に設けた下降端作動片26が下降端リミットスイッチLS3を叩くことで、下降制御部32から停止信号が出力され、油圧シリンダ21を停止させて上部テーブル16及び可動浴槽3を停止させる。
すると、可動浴槽3は図2に示すように下降端位置に停止し、担架本体5及び支持部6の上部が可動浴槽3の上部に露出した状態になる。この状態で、担架本体5を支持部6から外してストレッチャーの台車4に移送できる。こうして、入浴を終了した要介助者を昇降浴槽1から退出させることができる。
【0030】
また、可動浴槽3の降下時に、固定浴槽2の係止部10からストレッチャーの台車4が外れたりして台車4がロックされていない場合には、ロック検知部12の検知信号が下降制御部32に入力されていない。この場合、上部テーブル16に設けた下降中間作動片27が下部テーブル15に設けた下降中間リミットスイッチLS4を叩くことで、油圧シリンダ21の駆動が停止させられ、リフター14が停止し、上部テーブル16及び可動浴槽3の下降が停止する。
すると、可動浴槽3は図8に示すように降下中間位置に停止し、担架本体5の背もたれ部5bが可動浴槽3の上部に露出し着座部5aが可動浴槽3に隠れた状態になる。そのため、担架本体5を昇降浴槽1から取り外すことができない。台車4が固定浴槽2に固定されていないため、担架本体5を誤って支持台6から可動浴槽3の外側へ移送して落下することを防止できる。しかも、例えば入浴中に気分の悪くなった要介助者を昇降浴槽1の担架本体5から外して外部へ運び出すことができる。
【0031】
上述のように本実施形態による昇降浴槽1における安全システムによれば、入浴時に可動浴槽3の上昇に際して、上昇端位置より下側の上昇中間位置に上昇中間リミットスイッチLS2により停止させることで、可動浴槽の上昇時に介助者が他の仕事をしていて担架本体5に搭載された要介助者から目をそらしたとしても、可動浴槽3が、上昇端まで上がって要介助者が湯を飲んだり水没したりすることなく、入浴状態に保持できる。そして、必要に応じて可動浴槽3を更に上昇端位置まで上昇できる。
また、入浴終了後に可動浴槽3を降下させる際、ストレッチャーの台車4が固定浴槽2の係止部10にロックされていない場合には、下降端位置より上側の下降中間位置に下降中間リミットスイッチLS4で停止させることができる。これにより、担架本体5を可動浴槽3の外部へ移送できないから、誤って支持台6から可動浴槽3の外側へ移送して落下させることを防止できる。しかも、例えば入浴中に気分の悪くなった要介助者を昇降浴槽1の担架本体5から取り外して外部へ運び出すことができる。
また、台車4が固定浴槽2の係止部10にロックされている場合には、可動浴槽3を下降中間位置で停止させることなく下降端位置まで降下させて、担架本体5を支持台6からストレッチャーの台車4まで移送したり、新たな入浴者を搭載させた担架本体5を支持台6に移送できる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、昇降時に可動浴槽3を停止させるための4種のリミットスイッチLS1,2,3,4を設けたが、少なくとも降下時における下降端スイッチLS3と下降中間スイッチLS4が設けられていれば良く、上昇端スイッチLS1と上昇中間スイッチLS2は必ずしも設けなくても良い。この場合、上昇ボタン37を押し続けることで可動浴槽3を適宜高さまで上昇させることができる。
また、上述の実施形態において、昇降浴槽1の可動浴槽3の昇降時に停止させるためにリミットスイッチLS1,2,3,4を設けたがリミットスイッチに限らず、光検知スイッチ等の適宜のスイッチを採用できる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、下降端作動片26と下降中間作動片27を上部テーブル16に設置し、下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4を下部テーブル15に設置したが、これとは逆に下降端作動片26と下降中間作動片27を下部テーブル15に設置し、下降端リミットスイッチLS3と下降中間リミットスイッチLS4を上部テーブル16に設置してもよい。
また、上述した上昇端リミットスイッチLS1等は上昇端停止手段、上昇中間リミットスイッチLS2等は上昇中間停止手段、下降端リミットスイッチLS3等は下降端停止手段、下降中間リミットスイッチLS4等は下降中間停止手段をそれぞれ構成する。
また、本発明の本実施の形態では、入浴用ユニットとして、ストレッチャー(担架)について説明したが、ストレッチャーに代えて、台車4に傾斜可能な椅子部が着脱可能に設けられた入浴用車椅子等にも本発明を採用できる。この場合、ストレッチャーの担架本体5と入浴用車椅子等の椅子部は、搭載部を構成する。
【符号の説明】
【0034】
1 昇降浴槽
2 固定浴槽
3 可動浴槽
4 台車
5 担架本体
6 支持台
10 係止部
12 ロック検知部
14 リフター
15 下部テーブル
16 上部テーブル
18 第一アーム部
19 第二アーム部
18a、19a 一方の軸部
18ba、19b 他方の軸部
20 支軸
21 油圧シリンダ
26 下降端作動片
27 下降中間作動片
29 安全装置
30 制御部
31 上昇制御部
32 下降制御部
LS1 上昇端リミットスイッチ
LS2 上昇中間リミットスイッチ
LS3 下降端リミットスイッチ
LS4 下降中間リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降浴槽内の支持台に入浴者を搭載させた搭載部を保持した状態で、可動浴槽を昇降させて入浴者の入浴と退出を行えるようにした昇降浴槽において、
前記搭載部を受ける台車が前記昇降浴槽にロックされていることを検知するロック検知部と、該ロック検知部で台車がロックされていないことを検知した場合に前記可動浴槽を降下させる際に前記搭載部を入退出可能な下降端位置より高い下降中間位置で停止させる下降中間停止手段と、を備えたことを特徴とする昇降浴槽の安全システム。
【請求項2】
前記可動浴槽を降下させる際、前記ロック検知部で台車がロック状態にあることを確認した場合に、前記搭載部を前記下降中間手段で停止させることなく前記下降端位置へ下降させる下降制御部を備えた請求項1に記載された昇降浴槽の安全システム。
【請求項3】
下部テーブルに対して昇降可能な上部テーブルを前記可動浴槽に連結し、前記上部テーブルと下部テーブルの一方に下降中間停止手段と下降端停止手段とを備え、他方に下降中間停止手段を作動させる下降中間作動部と下降端停止手段を作動させる下降端作動部とを備え、前記可動浴槽の下降時に先に前記下降中間作動部が下降中間停止手段をONさせるようにした請求項1または2に記載された昇降浴槽の安全システム。
【請求項4】
前記可動浴槽を上昇させる際、上昇端位置より下方の上昇中間位置で停止させる上昇中間停止手段を備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載された昇降浴槽の安全システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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