説明

昇降装置および移載装置

【課題】エネルギー消費を必要最小限に抑えると共に、可動部分に作業者の身体が接触することがあったとしても大きな推力が作業者に作用することがない安全性の高い昇降装置および移載装置を提供する。
【解決手段】ワークWを保持・解放可能に構成されたワーク保持部2と、このワーク保持部2と同程度の質量を有する基本重り3と、一端がワーク保持部2、他端が基本重り3に接続された索体4と、索体4が巻回されることによりワーク保持部2および基本重り3を索体4によって吊すことを可能とするプーリ5と、ワークWと同程度の質量を有し基本重りに係合する追加重り6と、前記ワーク保持部2によるワークの保持に連動して前記追加重り6を解放し、前記ワーク保持部2によるワークの解放に連動して前記追加重り6を保持する重り保持部7と、前記ワーク保持部2の昇降を行なうための駆動力を供給する昇降アクチュエータ8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置および移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来マニピュレータやローダのように昇降装置を利用したワークの移載装置は、ワークを積載していない状態でかつ上昇端を原位置としている。このように移載装置として組み込まれる昇降装置の構成は種々考えられる。
【0003】
例えば、図8〜図10の移載装置90は、基台91に対して回転自在に取付けられる回転テーブル92と、この回転テーブル92に立設する中心部フレーム93と、この中心部フレーム93に連結されて回転テーブル92の外周部に延接するアーム部94と、このアーム部94の遊端部から垂下してワークWを把持するワーク把持部95と、これらのアーム部およびワーク把持部95の両方を上下方向に移動させる動力を供給するシリンダ96とを備える。従って、前記部材93〜96はこの移載装置90の昇降装置97を構成する部分である。また、98はワーク把持部95の駆動用シリンダへのエアー供給用チューブとアンクランプ用オートスイッチへの信号線を収納可能に構成された配線保護チェーンとその取付けブラケットである。
【0004】
前記構成の移載装置90は、まず、ワークWを保持または解放可能に構成されたワーク把持部95を、ワーク把持のために下降させてワークWを把持させ、ワークWを把持したワーク把持部95を上昇させて、前記回転テーブル92を旋回させた状態で次の行程の作業エリアに再びワーク保持部95を下降させて、その把持を解除することによりワークWの移載を行なうことができる。このとき、作業者はワークW、アーム部94、ワーク把持部95などが上下移動するときにこれらから離れて安全性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−23631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来の昇降装置97は機械の構成、機械効率に無駄が多く、必然的に駆動力の大きい駆動源が使用されるので、アーム部94、ワーク把持部95などが上下移動するときに、昇降装置97に無駄なエネルギーの浪費を発生させることがあるだけでなく、作業者が不用意に触れたときには比較的大きな力が作業者の身体に加わる可能性があった。
【0007】
すなわち、ワーク把持部95をワーク把持のために下降させるとき、および、ワークを降ろしたワーク把持部95を上昇させるときに、最大でワーク質量の2倍程度の推力をシリンダ96が出力するように設計するので、この昇降装置97に直接触れる作業者は比較的大きな力の作用を身体に受けることが考えられる。また、制動時にも十分な制動能力を有するブレーキを備えることが必要となり、装置が大がかりになるという問題もある。
【0008】
また、シリンダ96がエアシリンダの場合には、効率50%程度で設定するために、ワークを把持した状態のワーク把持部95を上昇させるときや、ワーク把持部95をワークを降ろすために下降させるときにもワーク質量と同程度の余力が推力に残っているために作業者の身体が直接可動部に触れるときには、これにワーク質量と同程度の推力が作用することも考えられる。これらの余分な推力は全て無駄なエネルギーの消費となっている。
【0009】
なお、シリンダ96に変えて駆動モータなどのアクチュエータを採用した場合にも効率75%程度の設定をするので、上記と同様に可動部に作業者の身体が触れるときには、大きな力が作用する可能性を考える必要があり、それだけエネルギー消費が大であるという問題がある。
【0010】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、エネルギー消費を必要最小限に抑えると共に、可動部分に作業者の身体が接触することがあったとしても大きな推力が作業者に作用することがない安全性の高い昇降装置および移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1発明は、ワークを保持・解放可能に構成されたワーク保持部と、このワーク保持部と同程度の質量を有する基本重りと、一端がワーク保持部、他端が基本重りに接続された索体と、索体が巻回されることによりワーク保持部および基本重りを索体によって吊すことを可能とするプーリと、ワークと同程度の質量を有し基本重りに係合する追加重りと、前記ワーク保持部によるワークの保持に連動して前記追加重りを解放し、ワーク保持部によるワークの解放に連動して前記追加重りを保持する重り保持部と、前記ワーク保持部の昇降を行なうための駆動力を供給する昇降アクチュエータとを備えることを特徴とする昇降装置を提供する(請求項1)。
【0012】
前記ワーク保持部がコンベアなどの搬送装置である場合には、上流側のコンベアの下流端にワーク保持部が連結されるように配置させた保持位置において、ワークをワーク保持部内に搬入してこれを保持した後に、下流側のコンベアにワーク保持部が連結されるように配置させた解放位置においてワーク保持部からワークを下流側のコンベアに搬出することによりワークを解放する。一方、ワーク保持部がワークを把持する把持部を有するものである場合には、上流側のコンベアの下流端位置においてワークを把持することによりワーク保持部によって保持することができ、下流側のコンベアの上流端位置においてワークを解放して載置することができる。
【0013】
前記基本重りはワーク保持部と同程度の質量であるので、索体の両端部に基本重りとワーク保持部を接続することにより、その重量を釣り合わせて重量バランスをとることができる。同様に追加重りはワーク保持部によって保持されるワークの質量と同程度の質量であるので、この追加重りを基本重りに係合させることによってワーク保持部がワークを保持した状態であっても重量バランスを合わせることができる。つまり、重りは全体として重量可変式としてワークとバランスするようにしている。
【0014】
また、前記重り保持部はワーク保持部がワークを保持しているときには追加重りを解放し、ワーク保持部がワークを解放しているときには追加重りを保持するものであり、デッドボルトやフックのようなものであってもよい。つまり、基本重りと追加重りによって質量を可変とした重りを得ることができ、ワークを保持・解放可能に構成されたワーク保持部との重量バランスが良いので、ワーク保持部の昇降のために無駄に大きな動力を用いる必要がない。とりわけ、ワークの保持・解放をワークの下降端で行うことが好ましく、この場合、重り保持部は追加重りの上昇端部において追加重りの解放・保持を行なう。従って、使用者の身体が可動部に接触することがあったとしても、大きな力が加わることがないので、安全性が向上する。また、重りの重量を多段階に可変とすることも考えられる。
【0015】
前記索体は、チェーン、ワイヤー、丸ベルト、平ベルト、歯付ベルト、釣り糸などであり、プーリに巻回されることによりテンションをかける方向を変えることができ、ワークを保持した状態の質量を吊ることができる程度の強度を有するものであれば何でも用いることができる。すなわち、本発明は索体の本数、材質、形態として上述の構成に限定されるものではない。
【0016】
前記昇降アクチュエータによってワーク保持部を昇降移動させることができ、ワークをその保持位置から解放位置に移動させることができる。昇降アクチュエータはモータであれば小型でありながら、比較的大きなトルクを安定して出力できるので好ましいが、エアシリンダや油圧シリンダを用いた昇降アクチュエータを用いてもよい。昇降アクチュエータから出力される動力は重量バランスが取られたワーク保持部を昇降移動させるものであるから、必要最低限の動力で移動させることができる。
【0017】
前記ワーク保持部はワークをその両側部から把持することにより保持するロボットハンド、前記索体はベルト、前記昇降アクチュエータは駆動モータであり、前記基本重りと追加重りの可動範囲の周囲を覆うように設けた保護カバーを備える場合(請求項2)には、ロボットハンドによってワークをその両側部から把持することによりワークを上方から掴んで保持することができ、これを速やかに持ち上げることができる。索体はベルトであることにより、可動時の動作音を抑えることができ、駆動モータは安定し制御された速度およびトルクでワーク保持部を昇降移動させることができる。加えて、保護カバーを設けることにより作業者が可動部にふれるリスクをできるだけ小さくして更に安全性を向上させることができる。
【0018】
第2発明は、前記昇降装置を用いた移載装置であって、前記昇降装置をその基本重りと追加重りの部分が回転中心部に、ワーク保持部の部分が回転外周部に配置されるように回動自在に支持する回転台と、この回転台を所定角度回転させるための駆動力を供給する回転アクチュエータとを備えることを特徴とする移載装置を提供する(請求項3)。
【0019】
前記構成の移載装置は昇降装置によって上下方向に移動可能であるワーク保持部を、回転台の回転動作によって水平方向に移動させることができ、すなわち、上下方向のみならず水平方向に離れたワークの保持位置からワークの解放位置までワークを搬送させることができる。なお、ワークの水平方向の移動には必要最小限のエネルギーしか必要としておらず、万一利用者がこの水平方向の可動部分に触れることがあったとしても、安全性を確保することができる。
【0020】
前記回転台の回転中心部に立設する支柱と、この支柱の上端部から水平方向に延設されたアーム部とを備え、前記プーリは支柱上端部とワーク保持部の上部のそれぞれに少なくとも一つ備える場合(請求項4)には、アーム部による両プーリ間の距離を利用して前記回転台の回転角に対するワーク保持部の移動距離を長くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明によれば、極めて簡単な構成でありながら、必要最低限の駆動力を使ってワークを昇降移動させることができ、エネルギー消費を抑えることができ、かつ、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の昇降装置の全体構成および動作を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係る昇降装置および移載装置の構成を説明する平面図である。
【図3】前記昇降装置および移載装置の側面図である。
【図4】前記昇降装置および移載装置を別の角度から見た側面図である。
【図5】前記昇降装置および移載装置の斜視図である。
【図6】前記昇降装置および移載装置の変形例を示す図である。
【図7】前記昇降装置および移載装置の別の変形例を示す図である。
【図8】従来の昇降装置および移載装置の構成の側面図である。
【図9】前記従来の昇降装置および移載装置を別の角度から見た側面図である。
【図10】前記従来の昇降装置および移載装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1を用いて、本発明の昇降装置1の構成および動作を説明する。図1に示すように、本発明の昇降装置1は、ワークWを保持・解放可能に構成されたワーク保持部2と、このワーク保持部2と同程度の質量を有する基本重り3と、一端がワーク保持部2、他端が基本重り3に接続された索体4と、索体4が巻回されることによりワーク保持部2および基本重り3を索体4によって吊すことを可能とするプーリ5と、ワークWと同程度の質量を有し基本重り3に係合する追加重り6と、前記ワーク保持部2によるワークの保持・解放に連動して前記追加重り6の解放・保持する重り保持部7と、前記ワーク保持部2の昇降を行なうための駆動力を供給する昇降アクチュエータ8とを備える。
【0024】
この昇降装置1はワーク保持部2の下降端(保持位置)でワークを保持し、ワーク保持部2を上昇端まで上昇させた後に、ワーク保持部2を再び下降端まで下降させた状態(解放位置)でワークWを解放するものであり、図1(A)〜図1(F)はこの昇降装置1を用いてワークWを昇降移動させる手順を示す。以下、図1(A)〜図1(F)を用いて、本発明の昇降装置1の動作を説明する。
【0025】
まず、図1(A)に示すように、基本重り3を下降端、ワーク保持部2を上昇端に位置させた状態において追加重り6は上昇端において重り保持部7によってその位置に保持されている。つまり、索体4はその両端部に取付けられたワーク保持部2と基本重り3の質量によって生じる張力(テンション)を受けてプーリ5に巻回されるが、ワーク保持部2と基本重り3の質量はほぼ同程度となるように構成されているので、このワーク保持部2と基本重り3の間でバランスを取ることができる。
【0026】
ゆえに、昇降アクチュエータ8を用いて例えばプーリ5に図示時計回りにわずかな回転力を加えることによりワーク保持部2を下降させることができる。なお、このワーク保持部2を上昇端に位置させてワークを保持していない状態が原位置となる。また、昇降アクチュエータ8の具体的な実施形態は後述するが、その駆動力はワーク保持部2、基本重り3、プーリ5、索体4の何れに供給されるものであってもよい。
【0027】
図1(B)に示すように、ワーク保持部2を下降端まで下降させると、ワーク保持部2はワークWを保持できる保持位置に位置する。他方、前記基本重り3は上昇端に位置するので、追加重り6が基本重り3の上に乗るなどして係合する。
【0028】
次いで、図1(C)に示すように、ワーク保持部2がワークWを保持すると同時に前記重り保持部7は追加重り6を解放する。このとき、索体4の一端にはワーク保持部2とワークの合計の質量が張力(テンション)として作用し、索体4の他端には基本重り3と追加重り6の合計の質量がテンションとして作用する。追加重り6とワークWの質量は同程度であるから、両者はバランスするので、停止状態ではアクチュエータ8から大きな駆動トルクをかけなくてもよいだけでなく、ワークWの昇降移動に大きな動力をかける必要がない。
【0029】
ここで、昇降アクチュエータ8から出力される駆動力を用いてワークWが上昇すると、図1(D)に示すように、ワークWは上昇端まで移動して、基本重り3および追加重り6は下降端まで移動する。このとき、大きな動力が必要でないので昇降アクチュエータ8は昇降方向への移動に必要最低限の駆動力を供給しており、例え稼働中に作業者の身体が可動部に当たることがあったとしても極めて安全である。
【0030】
図1(E)に示すように、ワーク保持部2が再び下降端まで移動すると、ワーク保持部2はこの下降端においてワークWを解放すると同時に、前記重り保持部7を用いて追加重り6を保持する。つまり、この位置がワークWの解放位置である。
【0031】
そして、前記昇降アクチュエータ8を用いてワーク保持部2を引き上げると、図1(F)に示すように、ワーク保持部2は再び上昇し、基本重り3は下降端まで下降する。このとき、索体4の両端にはワークWを保持しないワーク保持部2と基本重り3が取付けられているので、これらの質量がバランスし、前記昇降アクチュエータ8はごく小さな駆動力を供給するだけで、ワーク保持部2を上昇端まで引き上げることができる。また、昇降アクチュエータ8から出力される駆動力が小さければ小さいほど省エネルギーであり、かつ、安全性を高めることができる。
【0032】
本発明の昇降装置1においてはワークWの保持位置と解放位置が同じ高さであるから、例えばワークWを載せるパレットの交換時などに使用可能であるが、この昇降装置1を用いて容易に移載装置を形成することができる。
【0033】
図2〜図5は本発明の第1実施形態に係る昇降装置および移載装置の構成を示す図である。図2〜図5に示す移載装置10は、水平方向に離れた位置にあるワークの保持位置P1と解放位置P2の間でワークWの移載を行なうものであり、昇降装置1をその基本重り3と追加重り6の部分が回転中心部Oに、ワーク保持部2の部分が回転外周部Aに配置されるように回動自在に支持する回転台11と、この回転台を所定角度回転させるための駆動力を供給する回転アクチュエータ12とを備える。また、13Aは基本重り3および追加重り6を回転中心部Oにおいて上下方向に摺動自在に支持する支柱、13Bはこの支柱13Aの上端部に水平方向に延設されてワーク保持部2を回転外周部Aに配置させるためのアーム部、13Cはアーム部13Bの水平方向を支持する支持アームであり、14は基本重り3および追加重り6の可動範囲を覆う保護カバーである。
【0034】
本実施形態のワーク保持部2はワークWをその両側部から把持することにより保持する2対の爪2A,2Bを備えるロボットハンドであり、ワークWの把持・解放を切り替えるための動力を供給する駆動モータ2Cと、把持状態を確認するセンサ2Dとを備える。また、2Eはワーク保持部2の上端に取付けられて索体4の一端が取付けられるL型アングルである。
【0035】
基本重り3には前記索体4の他端が取付けられる一対の取付け部3A,3B(特に図5参照)を備え、その上端部には前記追加重り6の下面を載せることにより安定して係合する係合部3Cを備える。基本重り3の重さはワーク保持部2と同程度の質量を有し、索体4によってワーク保持部2と接続されることにより両者がバランスを保って停止できる質量になるように調整されている。
【0036】
また、本実施形態において索体4は1対のベルト4A,4Bであり、これに伴って前記プーリ5は前記アームの両端部にそれぞれ1対の第1プーリ5A,5Bおよび第2プーリ5C,5Dを備える。本実施形態のように1対のベルト4A,4Bによってワーク保持部2と基本重り3を接続することにより、ワークWの移載に十分なテンションをかけることが可能となるだけでなく、ワーク保持部2の水平方向の回転を阻止することができ、安定的にワークWの搬送を行なうことができる。
【0037】
前記追加重り6はワークWの質量に合わせて質量が調整されたものであり、その上端部には重り保持部7を係合するための係合バー6Aを有し、その平面形状を略H字状に形成してベルト4A,4Bが間に配置できるように構成している。また、追加重り6の下端面には前記基本重り3の上端に設けた係合部3Cに係合するように角部を斜めに削った面取り部6Bを形成している。すなわち、追加重り6は解放状態において基本重り3の上に搭載されることにより基本重り3と追加重りが安定して係合する。
【0038】
前記保持部7は回動によって前記係合バー6Aに係合して追加重り6を保持する保持状態と、係合バー6Aから離れて追加重り6を解放する解放状態に切り替え可能に構成されたフック7Aと、このフック7Aを回転駆動する重り保持モータ7Bとを備える。この重り保持モータ7Bはフック7Aが係合バー6Aに係合される状態とこれが解放される状態を切り替えるのみであるから、その出力は数ワット程度でよい。また、7Cは追加重り6が上昇端にある状態を検知するセンサであり、このセンサ7Cが追加重り6を検知している状態において前記フック7Aを回動させて追加重り6の保持・解放を行なうように構成している。
【0039】
本実施形態において前記昇降アクチュエータ8はワーク保持部2の上端に連接されたラック8Aと、このラック8Aに噛み合うピニオン8Bと、このピニオン8Bを回転駆動する駆動モータ8Cとを備え、かつ、ラック8Aが上昇端にある状態を検出するセンサ8Dを備え、このセンサ8Dが上昇端を検知するまで駆動モータ8Cを駆動させることにより、ワーク保持部2を上昇端まで移動させることができる。なお、駆動モータ8Cはベルト4A,4Bの両端に重量がバランスするように適正な質量の重り3,6が取付けられているので、本実施形態の駆動モータ8Cは数ワット程度の駆動力を供給するものでよい。
【0040】
前記回転台11は床面に固定的に載置された脚部11Aと、この脚部11Aの上に水平に固定される固定平面部11Bと、この固定平面部11Bの中心に設けた回転軸11Cと、この回転軸11Cによって回転自在に支持される回転平面部11Dと、この回転平面部11Dに加重が加わった状態においても水平面を保つことができるように支持する回転支持部11Eとを備える。また、11Fは回転台11の回転角を定めるように固定平面部11Bの上面に設けたストッパ、11Gはこのストッパ11Fに当接する当たり部である。
【0041】
前記回転アクチュエータ12は回転平面部11Dの下面に回転力を供給する回転駆動モータからなり、その正逆回転によって回転平面部11Dを回転させることができるように構成している。なお、本実施形態では回転駆動モータ12の回転によって回転するゴムローラが回転平面部11Dの下面に当接することにより摩擦接触によって動力を伝えるように構成しており、これによって動作音を抑えることが可能である。しかしながら、回転駆動モータの回転軸に取付けられたギアと回転平面部11Dの下面に形成されたギアの噛み合わせによって動力を伝えるようにしてもよい。なお、この回転駆動モータ12はバランスの取れた昇降装置1を搭載した状態の回転平面部11Dを回転するだけであるから、数ワット程度の駆動力を供給するだけで十分である。
【0042】
前記アーム13の支柱13Aは回転平面部11Dの回転中心部Oに位置し、回転平面部11Dに対して垂直方向に立設するように4方向に支え部13Dを備え、回転平面部11Dと一緒に回転するものである。
【0043】
また、15はワーク保持部2に設けた駆動モータ2Cへの電源線、センサ2Dに接続される信号線を収納可能に構成された配線保護チェーンであり、上下方向に昇降移動するワーク保持部2の移動においても配線が外部に露出することによる引っかかりなどが発生することがない。加えて、16は基本重り3の下降端において、これが当接する当たり部であり、その高さを調整可能に構成している。
【0044】
上記構成の移載装置10を用いることにより、回転駆動アクチュエータ12を用いて前記回転平面部11Dを平面視時計回りの動作端まで回転させ、前記駆動モータ8Cを駆動してワーク保持部2を下降端まで移動させることにより、センサ2DがワークWを検知し、前記駆動モータ2Cを回動させることによりワーク保持部2によってワークWを把持する。他方前記重り保持部7は駆動モータ7Bを回転させてフック7Aを係合バー6Aから切り離すことができる。つまり、基本重り3の上に追加重り6を係合させることにより、ワークWを搭載したワーク保持部2と基本重り3および追加重り6をバランスさせることができる。
【0045】
つまり、ベルト4A,4Bの両端に設けたワーク保持部2およびワークWと、基本重り3及び追加重り6の重量バランスを取ることにより、ワークWを上昇させるときの駆動モータ8Cに求められる推力を可及的に小さくすることができ、ワークWの昇降時において作業者の身体が可動部に触れることがあったとしても大きな力が作業者に加わることがないので安全性を高めることができる。また、基本重り3と追加重り6の可動範囲を覆うように保護カバー14を設けているのでさらに安全性を高めることができる。
【0046】
上述の実施形態ではワーク保持部2の昇降にラック8Aと、ピニオン8Bと、駆動モータ8Cとを用いる例を示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、駆動モータはプーリ5A,5Bまたはプーリ5C,5Dに回転力を供給する駆動モータであっても、ロータリーアクチュエータであってもよい。
【0047】
図6は前記ワーク保持部2の昇降を行なうための駆動力を供給する別の構成の昇降アクチュエータとして、エアシリンダ8Eを用いる例を示す図である。図6に示すように、アーム部13Bの先端部に取付けられ、下方にロッド8Fを出退可能とするエアシリンダ8Eを設けた場合には、このロッド8Fにワーク保持部2を取付けることにより、ワーク保持部2の昇降をエアシリンダ8Eによって行なうことができる。
【0048】
図7は前記昇降アクチュエータのさらなる変形例を示す図である。すなわち、図7に示すように、昇降アクチュエータとしてアーム部13Bの先端部に上方にロッド8Hを出退可能とするエアシリンダ8Gを取付け、このロッド8Hに連結させたアングル8Iを介してワーク保持部2を連結することにより、このワーク保持部2の昇降をエアシリンダ8Gによって行なうことができる。
【0049】
同様に、図示は省略するが、基本重り3の昇降移動をシリンダで行なうことにより間接的にワーク保持部2を昇降移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 昇降装置
2 ワーク保持部
3 基本重り
4 索体
5 プーリ
6 追加重り
7 重り保持部
8 昇降アクチュエータ
10 移載装置
11 回転台
12 回転アクチュエータ
13A 支柱
13B アーム部
14 保護カバー
O 回転中心部
A 回転外周部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持・解放可能に構成されたワーク保持部と、
このワーク保持部と同程度の質量を有する基本重りと、
一端がワーク保持部、他端が基本重りに接続された索体と、
索体が巻回されることによりワーク保持部および基本重りを索体によって吊すことを可能とするプーリと、
ワークと同程度の質量を有し基本重りに係合する追加重りと、
前記ワーク保持部によるワークの保持に連動して前記追加重りを解放し、ワーク保持部によるワークの解放に連動して前記追加重りを保持する重り保持部と、
前記ワーク保持部の昇降を行なうための駆動力を供給する昇降アクチュエータと
を備えることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記ワーク保持部はワークをその両側部から把持することにより保持するロボットハンド、前記索体はベルト、前記昇降アクチュエータは駆動モータであり、前記基本重りと追加重りの可動範囲の周囲を覆うように設けた保護カバーを備える請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の昇降装置を用いた移載装置であって、前記昇降装置をその基本重りと追加重りの部分が回転中心部に、ワーク保持部の部分が回転外周部に配置されるように回動自在に支持する回転台と、この回転台を所定角度回転させるための駆動力を供給する回転アクチュエータとを備えることを特徴とする移載装置。
【請求項4】
前記回転台の回転中心部に立設する支柱と、この支柱の上端部から水平方向に延設されたアーム部とを備え、前記プーリは支柱上端部とワーク保持部の上部のそれぞれに少なくとも一つ備える請求項3に記載の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219237(P2011−219237A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91466(P2010−91466)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)